JP5276196B2 - 眼鏡レンズおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、切削加工面に、有機ケイ素化合物と金属酸化物微粒子とからなるハードコート膜を形成することにより、切削加工面の粗さを改善することが提案されている。
眼鏡レンズ等の光学レンズには、製品として出荷する前に各種検査が行われ、屈折率、アッベ数、分光透過率等の各種特性が所定レベル以上であるレンズが製品として出荷される。このような製品レンズの検査項目の1つに外観検査がある。これは、例えばJIS-T7313の付属書Aに示されている視覚的な検査や、レンズに所定の光を入射させて出射側に配置したスクリーンに加工痕や傷等の表面欠陥の投影像が現れるか否かで良品・不良品を判定する投影検査である。例えば旋盤で切削加工を行ったレンズ基材に対して投影検査を行うと、渦状の加工痕跡が現れるのに対し、研削加工後に研磨を施したレンズ基材では、このような加工痕跡は観察されない。つまり、切削加工後の研磨工程には、表面粗さを改善するだけではなく、加工痕等の表面欠陥を除去する作用もある。しかし、本発明者らの検討の結果、特許文献2に記載の方法によって表面粗さが改善されたレンズ基材に前記外観検査を行うと、切削加工痕が現れることが判明した。つまり、特許文献2に記載の方法では、表面粗さの問題は改善できるものの、前述の表面欠陥の問題は改善できない。
通常、レンズ基材と被膜との屈折率を同じにするか、または屈折率差を小さくすれば、レンズ基材と被膜との界面での反射が抑制され、界面は観察されなくなると考えられる。しかし、特許文献2に記載の方法では、レンズ基材とハードコート膜との屈折率差を小さくしても、外観検査で界面に存在する機械加工痕が観察されてしまう。この点について、本発明者らは検討を重ね、以下の知見を得た。
ハードコート膜は、屈折率の低い有機ケイ素化合物と屈折率の高い微粒子状金属酸化物を分散させて形成される。そのため、ハードコート膜全体としてはレンズ基材と同等の屈折率を有する場合でも、ハードコート膜内部には屈折率の分布があるため、微小領域で見れば、ハードコート膜とレンズ基材との屈折率は異なる。本発明者らは、このハードコート膜内部の屈折率分布が、ハードコート膜を形成しても外観検査によって表面欠陥が観察される原因ではないかと推定した。
そこで、本発明者らは、上記知見に基づき更に検討を重ねた結果、研削および/または切削加工後のレンズ表面に所定の塗布液を塗布することにより、表面粗さと表面欠陥の問題を同時に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[1]レンズ基材の少なくとも一方の面を研削および/または切削加工する工程と、
研削および/または切削加工した面上に被膜を形成する工程と、
を含むレンズの製造方法であって、
前記被膜は、少なくとも一種のポリイソシアナート化合物と少なくとも一種のポリチオール化合物を含む塗布液を塗布し、次いで該塗布液に硬化処理を施すことによって形成される、前記レンズの製造方法。
[2]前記研削および/または切削加工後のレンズ基材は、JIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察される[1]に記載のレンズの製造方法。
[3]前記被膜と前記レンズ基材との屈折率差は0.05以下である[1]または[2]に記載のレンズの製造方法。
[4]前記レンズ基材は、ポリチオウレタンを主成分とする[1]〜[3]のいずれかに記載のレンズの製造方法。
[5]前記塗布液はレベリング剤を更に含む[1]〜[4]のいずれかに記載のレンズの製造方法。
[6]前記レベリング剤は、ポリオキシアルキレン−ジメチルポリシロキサンコポリマーである[5]に記載のレンズの製造方法。
[7]JIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察されるレンズ基材上にポリチオウレタンを主成分とする被膜を有するレンズ。
[8]前記レンズは、JIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察されない請求項7に記載のレンズ。
[9]前記被膜と前記レンズ記載との屈折率差は0.05以下である[7]または[8]に記載のレンズ。
[10]前記レンズ基材は、ポリチオウレタンを主成分とする[7]〜[9]のいずれかに記載のレンズ。
[11]前記被膜はレベリング剤を更に含む[7]〜[10]のいずれかに記載のレンズ。
[12]前記レベリング剤は、ポリオキシアルキレン−ジメチルポリシロキサンコポリマーである[11]に記載のレンズ。
[13]少なくとも一種のポリイソシアナート化合物と少なくとも一種のポリチオール化合物を含むレンズ表面欠陥補修用塗布液。
[14]前記レンズはポリチオウレタンを主成分とするレンズである[13]に記載のレンズ表面欠陥補修用塗布液。
本発明のレンズの製造方法は、レンズ基材の少なくとも一方の面を研削および/または切削加工する工程と、研削および/または切削加工した面上に被膜を形成する工程とを含み、前記被膜を、前記研削および/または切削加工した面上に、少なくとも一種のポリイソシアナート化合物と少なくとも一種のポリチオール化合物を含む塗布液を塗布し、次いで該塗布液に硬化処理を施すことによって形成するものである。
前述のように、研削および/または切削加工面を有するレンズ基材に対し、JIS-T7313に示されている視覚的な検査を行うと切削加工痕が目視で観察される。また、前記レンズ基材に所定の光を入射させると、出射側に配置したスクリーンに切削加工痕の投影像が観察される。更に、研削および/または切削加工時等にレンズ基材表面に傷が生じた場合には、その傷も前述の視覚的な検査および投影検査で確認されることがある。このような表面欠陥が観察されるレンズは、製品レンズとして出荷することはできない。更に、研削および/または切削加工後のレンズ表面は、そのままでは平滑性に劣りレンズとして使用することは困難である。
それに対し、本発明では、研削および/または切削加工後のレンズ表面に前記塗布液を塗布して被膜を形成することにより、前記JIS-T7313に示される視覚的な検査で研削および/または研削の加工痕等の表面欠陥が観察されないレンズ、更には前記投影検査により表面欠陥の投影像が観察されないレンズを得ることができる。更に、前記被膜によるマスキング効果により、レンズ表面の平滑性を高めることができる。
例えば、屈折率(ne)1.55以下の被膜を形成するために好ましい組み合わせの一例としては、ポリイソシアナート化合物としてヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、テトラメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも一種と、ポリチオール化合物としてペンタエリスリトールメルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート、ジメルカプトエチルスルフィドからなる少なくとも一種との組み合わせを挙げることができる。
また、屈折率(ne)1.55〜1.65の被膜を形成するための組み合わせの例としては、イソシアナート化合物としてヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、テトラメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナートジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナートメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタンからなる群から選ばれる少なくとも一種と、ポリチオール化合物としてペンタエリスリトールメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリスメルカプトアセテート、ジメルカプトエチルスルフィド、ビス(メルカプトエチル)チオメルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンからなる群から選ばれる少なくとも一種との組み合わせを挙げることができる。
さらに屈折率(ne)1.65超の被膜を形成するために好ましい組み合わせの一例としては、イソシアナート化合物として、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチル)−1,4−ジチアンからなる群から選ばれる少なくとも一種と、ポリチオール化合物としてビス(メルカプトエチル)チオメルカプトプロパン、トリメルカプトプロパン、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナートメチル)−1,4−ジチアン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種との組み合わせを挙げることができる。
それに対し、本発明では、前記加工後のレンズ基材表面に、前述の被膜を形成することにより、前記視覚的な検査によって前記表面欠陥が観察されないレンズを得ることができる。なお、本発明における「表面欠陥」は、前記切削加工痕のように機械加工の刃物により残される加工痕跡や、レンズ基材製造時、機械加工時等に生じた傷等のレンズ基材表面に生じた欠陥を含むものとする。
Rt(μm)= ― Σ Xi Xi(i=1,- - - - ,n)
n i=1
前記ハードコート膜の材料は、特に限定されず、公知の有機ケイ素化合物及び金属酸化物コロイド粒子よりなるコーティング組成物を使用することができる。
前記有機ケイ素化合物としては、例えば下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物が挙げられる。
(R91)a’(R93)b’Si(OR92)4−(a’+b’) ・・・(I)
(式中、R91は、グリシドキシ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等を有する有機基、R92は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基または炭素数6〜10のアリール基、R93は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基、a’およびb’はそれぞれ0または1を示す。)
前記R92の炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記R92の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
前記R93の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記R93の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
更に、本発明は、JIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察されるレンズ基材上にポリチオウレタンを主成分とする被膜を有するレンズに関する。前記被膜は、好ましくは前述の塗布液を塗布および硬化することによって形成された被膜である。前記レンズの詳細は、先に本発明のレンズの製造方法について述べた通りである。
更に、本発明は、少なくとも一種のポリイソシアナート化合物と少なくとも一種のポリチオール化合物を含むレンズ表面欠陥補修用塗布液に関する。本発明のレンズ表面欠陥補修用塗布液の詳細は、本発明のレンズの製造方法において使用される塗布液について述べた通りである。前述のJIS規格の検査で表面欠陥が観察されるレンズ表面に、前記塗布液を塗布して硬化することにより、前記検査によって表面欠陥が観察されない高品質なレンズを得ることができる。更には、前記投影検査によって表面欠陥の投影像が観察されるレンズ表面に、前記塗布液を塗布して硬化することにより、前記投影検査によって表面欠陥の投影像が観察されない高品質なレンズを得ることができる。前記塗布液は、表面欠陥を有するレンズ表面全面に塗布することもでき、レンズ表面の表面欠陥を含む一部分のみに塗布することもできる。前記塗布液の塗布は、スプレー法、ディッピング法、スピンコート法等の公知の方法で行うことができる。補修の対象となる表面欠陥は、前述のように、切削加工痕のように機械加工の刃物により残される加工痕跡や、レンズ基材製造時、機械加工時等に生じた傷等のレンズ基材表面に生じた欠陥が含まれる。また、補修対象となるレンズとしては、先に記載の各種プラスチックレンズを挙げることができ、中でもポリチオウレタンを主成分とするレンズが好ましい。
(1)レンズ基材の切削加工
シュナイダー社のHSC101GThカーブジェネレータを使用して、セミフィニッシュレンズ基材(屈折率(ne)1.596、HOYA(株)製EYAS材)の凸面側を切削加工することにより光学面を作製した。切削加工に際しては、荒加工を行ったあと、中仕上げ加工をして、その後、仕上げ加工を行なった。仕上げ加工の切削刃物として単結晶ダイヤモンドを使用した。
切削加工後のレンズ基材に対してJIS-T7313に示される視覚的な検査および前記シュリーレン法を応用した投影検査を行ったところ、いずれの検査でも渦状の切削加工痕が観察された。更に、切削加工されたレンズ基材の光学面に対して、フォームタリサーフ装置を用いて粗さ測定を行ったところ、表面粗さRt値は0.32μmであった。粗さパラメータRt値の算出において、カットオフ値(Lc)は0.8mmとし、バンド幅は300:1とした。評価長さは粗さ曲線の基準長さの5倍とした。
ビーカーにポリイソシアナート化合物としてビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンを47.53質量部、紫外線吸収剤としてシプロ化成(株)製SEESORB707を0.1質量部、触媒としてジメチルチンジクロリドを0.45質量部加えて溶解させた後、ポリチオール化合物としてペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテートを26.47質量部、ビスメルカプトメチルジチアンを26.00質量部加え混合した。
ほぼ均一になったところで日本ユニカー(株)Y−7006(ポリオキシアルキレン−ジメチルポリシロキサンコポリマー)を0.06質量部加えて混合し、1333Paの真空下で攪拌しながら30分間脱気を行い、平均孔径5μmのPTFEメンブレンフィルターにより異物を除去して塗布液を得た。得られた塗布液の粘度は45mPa・s(20℃)であった。
上記(2)で得られた塗布液を、前記(1)で得られた切削加工後のレンズ基材凸面にスピンコーターを用いて、約70rpmの回転速度でレンズ基材表面中心から円周方向に向かいコーティング液5g程度を全面に広がるように塗り付け、最終的には1000rpmの速度で10秒間回転させて膜厚が約20μmになるようにした。
塗布液を塗布したレンズ基材を電気炉に導入した後、電気炉内で20℃から120℃まで24時間かけて緩やかに昇温加熱し、120℃で2時間保温して塗布液を硬化させて被膜を形成した。得られた被膜の屈折率を測定したところ、屈折率(ne)1.596であった。得られたレンズに対してJIS-T7313に示される視覚的な検査および前記シュリーレン法を応用した投影検査を行ったところ、いずれの検査でも切削加工痕等の表面欠陥は観察されず、光学的に均一なレンズが得られたことが確認された。更に、前記被膜の表面粗さRt値は0.017μmであり、前記被膜によって切削加工面の粗さをマスキングすることができた。なお、前記被膜の表面粗さはフォームタリサーフ装置を用いて測定した。粗さパラメータRt値の算出では、カットオフ値(Lc)は0.08mmとし、バンド幅は30:1とした。評価長さは粗さ曲線の基準長さの11倍とした。また、複数回の粗さ測定を行って、それぞれ粗さパラメータRt値の算出を行ってその相加平均を求めた。
切削加工条件を変えて、表面粗さRt値が0.48μmの切削加工面を作製し、ポリイソシアナート化合物としてキシリレンジイソシアナート44.00質量量部、ポリチオール化合物としてペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート56.00質量部、触媒としてジメチルチンジクロリド0.05質量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で被膜付きレンズを得た。実施例2において使用した塗布液の粘度は50mPa・s(20℃)であった。形成した被膜の屈折率(ne)は1.596であった。
切削加工後のレンズ基材に対してJIS-T7313に示される視覚的な検査および前記シュリーレン法を応用した投影検査を行ったところ、いずれの検査でも渦状の切削加工痕が観察された。一方、被膜形成後のレンズに対して同様の外観検査を行ったところ、切削加工痕等の表面欠陥の投影像は観察されなかった。また、前記被膜の表面粗さRt値を測定したところ、0.011μmであった。実施例2における粗さパラメータRt値の算出は実施例1と同様の方法で行った。
屈折率(ne)1.669のセミフィニッシュレンズ基材(HOYA(株)製EYNOA材)の凸面に対して実施例1における切削加工に準じて切削加工を施し、切削加工面を作製した。この切削加工面上に、ポリイソシアナート化合物としてキシリレンジイソシアナート47.00質量部、ポリチオール化合物としてビス(メルカプトエチル)チオメルカプトプロパン43.35質量部、触媒としてジメチルチンジクロリド0.05質量部を使用した以外は実施例1と同様の方法で被膜付きレンズを得た。実施例3において使用した塗布液の粘度は25mPa・s(20℃)であった。形成した被膜の屈折率(ne)は1.665であった。
切削加工後のレンズ基材に対してJIS-T7313に示される視覚的な検査および前記シュリーレン法を応用した投影検査を行ったところ、いずれの検査でも渦状の切削加工痕が観察された。一方、被膜形成後のレンズに対して同様の外観検査を行ったところ、切削加工痕等の表面欠陥は観察されなかった。
ポリイソシアナート化合物としてビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン44.29質量部、ポリチオール化合物としてペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート55.71質量部、触媒としてジメチルチンジクロリド0.45質量部を使用した以外は実施例2と同様の方法で被膜付きレンズを得た。実施例4において使用した塗布液の粘度は50mPa・s(20℃)であった。形成した被膜の屈折率(ne)は1.546であった。なお、実施例4において被膜を形成したレンズ基材は、実施例2と同様に屈折率(ne)が1.596、切削加工面の表面粗さRt値は0.48μmであった。切削加工後のレンズ基材に対してJIS-T7313に示される視覚的な検査および前記シュリーレン法を応用した投影検査を行ったところ、いずれの検査でも渦状の切削加工痕が観察された。一方、被膜形成後のレンズに対して同様の外観検査を行ったところ、JIS-T7313に示される視覚的な検査では切削加工痕等の表面欠陥は観察されなかった。前記投影検査では、やや切削痕らしき表面欠陥が観察されたが、製品として許容されるレベルであった。また、前記被膜の表面粗さRt値を測定したところ、0.011μmであった。粗さパラメータRt値の算出は実施例1と同様の方法で行った。
(1)レンズ基材の切削加工
実施例1において使用したセミフィニッシュレンズ基材(屈折率(ne)1.596)と同様のセミフィニッシュレンズ基材を3つ用意し、各レンズ基材に対して実施例1における切削加工に準じて切削加工を施し、表1に示す表面粗さの切削加工面を有する3つのレンズ基材を得た。これらレンズ基材に対してJIS-T7313に示される視覚的な検査および前記シュリーレン法を応用した投影検査を行ったところ、いずれの検査でも渦状の切削加工痕が観察された。なお、表1中の3種類の表面粗さの違うレンズ基材を投影検査で比較すると、表面粗さが最も粗い試料1は粗い加工痕跡の投影像が目視で観察でき、表面粗さが小さい試料3は細かい加工痕跡の投影像が目視で観察でき、試料1と試料3の中間の表面粗さを有する試料2では試料1と試料3との間に位置するレベルの加工痕跡の投影像が目視で観察できた。つまり、表面粗さが粗いレンズ基材で観察される加工痕跡の投影像は粗く、より細かい表面粗さを有するレンズ基材で観察される加工痕跡の投影像はより細かく見えた。
5℃雰囲気下、変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム−酸化タングステン−酸化珪素複合体メタノールゾル45質量部とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン15質量部およびテトラエトキシシラン3質量部とを混合し、1時間攪拌した。その後、0.001モル/L濃度の塩酸4.5質量部を添加し、50時間攪拌した。その後、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)25質量部、ダイアセトンアルコール(DAA)9質量部およびアルミニウムトリスアセチルアセトネート(AL−AA)1.8質量部、過塩素酸アルミニウム0.05質量部を順次添加し、150時間攪拌した。得られた溶液を平均孔計0.5μmのフィルターでろ過してハードコート液を得た。
得られたハードコート液を、上記(1)で作製したレンズ基材の切削加工面上に塗布し、1500〜1800rpmの回転数で数秒間スピンを行い、次に80℃〜120℃の温度を1〜2時間かけて加熱硬化を行った。この工程を2回繰り返してハードコート層を形成した。
Claims (8)
- ポリチオウレタンを主成分とするレンズ基材の少なくとも一方の面を研削および/または切削加工する工程と、
研削および/または切削加工した面上に被膜を形成する工程と、
を含む眼鏡レンズの製造方法であって、
前記被膜は、少なくとも一種のポリイソシアナート化合物と少なくとも一種のポリチオール化合物を含む塗布液を塗布し、次いで該塗布液に硬化処理を施すことによって形成されるポリチオウレタンを主成分とし、かつ粒径1nm以上の粒状物を実質的に含まない被膜であり、
その上に前記被膜が形成される前記面は、JIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察される面であり、該面上に研磨加工を経ることなく前記被膜を形成することによりJIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察されない眼鏡レンズを得る、前記眼鏡レンズの製造方法。 - 前記被膜と前記レンズ基材との屈折率差は0.05以下である請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
- 前記塗布液はレベリング剤を更に含む請求項1または2に記載の眼鏡レンズの製造方法。
- 前記レベリング剤は、ポリオキシアルキレン−ジメチルポリシロキサンコポリマーである請求項3に記載の眼鏡レンズの製造方法。
- JIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察されるポリチオウレタンを主成分とするレンズ基材上にポリチオウレタンを主成分とし、かつ粒径1nm以上の粒状物を実質的に含まない被膜を有する、JIS-T7313に示される視覚的な検査により表面欠陥が観察されない眼鏡レンズ。
- 前記被膜と前記レンズ基材との屈折率差は0.05以下である請求項5に記載の眼鏡レンズ。
- 前記被膜はレベリング剤を更に含む請求項5または6に記載の眼鏡レンズ。
- 前記レベリング剤は、ポリオキシアルキレン−ジメチルポリシロキサンコポリマーである請求項7に記載の眼鏡レンズ。
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