JP5275505B1 - 柱の補強構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 鋼板と帯状繊維シートの両者の特性を十分に活かして、補強効果をより高めることができる柱の補強構造を提供すること。
【解決手段】 建造物の柱1の周囲をその柱の表面との間に間隔を保って複数の鋼板2で囲み、これら隣り合う各鋼板2の連結部2a,2bを重ねあわせて結合手段5により結合するとともに、これら鋼板2の外周面に接着剤を塗布し、この接着剤の塗布面に帯状繊維シート3を巻き付けてなり、柱1と鋼板2のとの間にグラウト材4を充填する一方、上記結合手段5のせん断強度を、上記鋼板2の降伏点強度よりも小さくした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、既存の柱を補強するための柱の補強構造に関する。
既存の建造物の柱を補強するものとして、例えば特許文献1に示す補強構造が従来から知られている。
この従来の補強構造は、添付の図6に示すように、断面四角形の柱1の周囲を4枚の鋼板2で囲うが、これら鋼板2はその柱1の軸方向に直交する面での断面をL字状にしたもので、各鋼板2の直角部をそれぞれ柱1の4つの角に対応させて設置する。そして、図6に示すように、互いに隣接する一方の鋼板2に、他方の鋼板が重ね合わされるようにする。このとき、上記鋼板2は、それら重ね合わせ部分が互いに移動可能にしている。
また、各鋼板2と柱1の側面との間には、ほぼ一定の間隔を設けるとともに、これら鋼板2の外周に帯状繊維シート3を巻きつけて、各鋼板2を結束する。
上記のように帯状繊維シート3で4枚の鋼板2を結束したら、今度は、4枚の鋼板2と柱1との間に形成した空間にグラウト材4を充填する。このグラウト材4が固化すると、柱1の側面に密着したグラウト材4と鋼板2とが一体化して柱1が補強される。
また、上記鋼板2はそれらの重ね合わせ部分で互いに移動可能にしているため、地震などによって柱が変形したときには隣り合う鋼板2が相対移動する。このように鋼板2が相対移動するので、そのときには、帯状繊維シート3が荷重を支えることになる。
特許第3861079号公報
上記鋼板及び帯状繊維シートの引っ張り試験における変形特性は、図7に示すとおりである。図7において細線で示すグラフxが鋼板の変形特性であり、破線で示すグラフyが帯状繊維シートの変形特性である。
図示の通り、鋼板は、降伏点P1を超えるまでは荷重に対する伸びが小さく、この間は弾性変形するが、降伏点P1を超えると荷重が増加しなくても伸び続け、荷重を除いても元に戻らなくなってしまう。
これに対し、帯状繊維シートは、低荷重領域においては鋼板に比べて伸びが大きいが、荷重がかなり大きくなるまで一定の伸び率を保つことができる。
上記特許文献1の補強構造は、このような特性を有する鋼板2と帯状繊維シート3とを用いることによって必要な補強強度を得るものであるが、実際に大きな地震が発生して荷重が作用したとき、鋼板2はそれが移動し始めるまでの初期段階だけ荷重を受けることになる。言い換えると、これら鋼板2とグラウト材4との接着力以上の力が作用すると、グラウト材4に対して鋼板2が移動するとともに、互いに隣り合う鋼板2同士も相対移動してしまうので、これら鋼板2は荷重を受けることができなくなる。
このように鋼板2が動いてしまうと、その後は、上記帯状繊維シート3が全ての荷重を受けることになる。
このように、上記従来の補強構造では、鋼板2が荷重を受けるのは地震などによる荷重発生の初期段階のみで、その後はほとんどの荷重を帯状繊維シート3のみで受けることになる。
しかしながら、この帯状繊維シート3の変形特性は、図7のグラフyに示すように低荷重領域においても変形量が大きいので、柱の変形を十分に支えきれない。そのために地震発生時に柱が大きく変形しやすくなり、柱の破壊の原因になるという問題があった。
一方で、鋼板2で荷重を受けるようにするために、隣り合う鋼板2同士が相対移動しないように強固に固定してその周囲を帯状繊維シート3で囲うことも考えられる。
しかし、鋼板2が互いに強固に固定されてしまうと、瞬間的にでも上記降伏点P1を超える荷重が作用したときに鋼板2は損傷し、元に戻らなくなってしまう。このように損傷された鋼板2が帯状繊維シート3で囲われたままになっていると、それを修復することが難しくなるという問題があった。
この発明の目的は、鋼板と帯状繊維シートの両者の特性を十分に活かして、補強効果をより高めることができる柱の補強構造を提供することである。
第1の発明は、建造物の柱の周囲をその柱の表面との間に間隔を保って複数の鋼板で囲み、この囲み方向において隣り合う鋼板の重ね合わせ部分からなる連結部を結合手段により結合するとともに、上記鋼板の外周面に接着剤を塗布し、この接着剤の塗布面に帯状繊維シートを巻き付けてなり、柱と鋼板のとの間にグラウト材を充填する一方、上記結合手段のせん断強度を、上記鋼板の降伏点強度よりも小さくし、せん断力によって上記結合手段がせん断して、上記隣り合う鋼板の上記連結部が相対移動可能になった後、上記帯状繊維シートが耐力を発揮する構成にしたことを特徴とする。
第2の発明は、上記鋼板の外周全面に接着剤を塗布し、この接着剤の塗布面に帯状繊維シートを貼り付けたことを特徴とする。
第3の発明は、上記結合手段が、上記一組の鋼板において互いに隣り合う鋼板の連結部を固定するネジ部材であり、このネジ部材を柱の軸方向に間隔を保って複数設け、これらネジ部材のせん断強度を、上記鋼板の降伏点強度よりも小さくしたことを特徴とする。
第4の発明は、上記ネジ部材のネジ部の長さを、上記連結部の重ね合わせ部分の合計厚さよりも長くし、重ね合わせた連結部を上記ネジ部材で結合したとき、上記ネジ部材の先端が柱と鋼板との間に突出する構成にしたことを特徴とする。
第5の発明は、上記ネジ部材のネジ部の長さが、上記連結部の重ね合わせ部分の合計厚さの2倍以上であることを特徴とする。
第6の発明は、上記結合手段が、互いに隣り合う鋼板の連結部を、柱の軸方向に所定の間隔を保って溶接する溶接部であり、これら溶接部のせん断強度を、上記鋼板の降伏点強度よりも小さくしたことを特徴とする。
第1の発明によれば、囲み方向において隣り合う鋼板の重ね合わせ部分からなる連結部を結合手段により結合するとともに、この結合手段のせん断強度を鋼板の降伏点強度よりも小さくしたので、鋼板が降伏点を超える前に、結合手段が大きく変形するかあるいはせん断される。したがって、隣り合う鋼板の連結部を結合する結合手段が大きく変形あるいはせん断するまでは、連結部の相対移動を押さえられ、鋼板の耐力を最大限利用することができる。そして、結合手段が変形あるいはせん断したときには、連結部が相対移動可能になるが、帯状繊維シートが荷重を支え、柱及びグラウト材に対する拘束力を維持するので、上記結合手段が大きく変形あるいはせん断されたからといって直ちに柱の強度が損なわれることはない。
また、結合手段のせん断強度を鋼板の降伏点強度よりも小さく設定しているので、結合手段がせん断されたとしても鋼板そのものが損傷されるわけではない。したがって、結合手段がせん断されても鋼板まで損傷することはなく、それらの補修も簡単になる。
第2の発明では、鋼板の外周全面に接着剤を塗布して鋼板と帯状繊維シートとを一体化したので、鋼板と帯状繊維シートとの両方の耐力が合成されることになり、その分、大きな耐力が期待できる。特に、従来の補強構造では、ほとんど帯状繊維シートの耐力だけに頼っていたが、この発明によれば、帯状繊維シートと鋼板との合成耐力を利用できるので、さらに大きな耐力を期待できる。
第3の発明では、結合手段をネジ部材で構成したので、このネジ部材で鋼板をネジ締めするだけで、それら鋼板を簡単に結合することができる。したがって、火花が発生する溶接作業のように、火を使ってよいかどうかを考慮しながら作業現場を選択しなければならないという制限はなくなる。また、溶接作業は熟練を要するので、作業者によって固定強度のばらつきが出やすいが、ネジ締め作業では個人差が出にくい。
第4の発明では、ネジ部材の先端がグラウト材中に突出して、その突出部がグラウト材で固定される。したがって、ネジ部材を支持する点が多くなるが、その支持する点が多くなればなるほど、ネジ部材のせん断荷重が分散される。このようにネジ部材のせん断荷重が分散されるので、実質的にせん断強度が上がることになる。
また、グラウト材内にネジ部材の先端を突出させることによって、ネジ部材のアンカー効果を期待できる。このようなアンカー効果が発揮されれば、グラウト材と鋼板との結合力がさらに高まり、結果として柱とグラウト材及び鋼板が一体化して補強効果が向上する。
特に、グラウト材中に突出する部分にネジ山が形成されているので、グラウト材がネジ山間に入り込んでネジ部材とグラウト材との接着面積が大きくなる。そのため、ネジ部材に対するグラウト材の接着力が大きくなる。したがって、柱とグラウト材及び鋼板の一体化がさらに進む。
第5の発明では、ネジ部材のネジ部の長さを、連結部の重ね合わせ部分の合計厚さのほぼ2倍以上にしたので、連結部からグラウト材側に突出する突出長さが長くなる。その分、ネジ部材の先端を固定する固定力が大きくなって、ネジ部材の実質的なせん断強度を上げることができる。
また、ネジ部の突出長さが長い分、ネジ部材とグラウト材との接触面積が大きくなって、より大きなアンカー効果を得ることができる。
第6の発明では、溶接によって連結部を固定するようにしたので、ネジ部材の頭部のように鋼板の外周面に突出する部分をなくすことができる。そのため、ネジ部材の頭部と鋼板との段差を小さくするような処理をしなくても帯状繊維シートを密着させることができる。
また、溶接のほうがネジ締めによる結合よりも結合強度を高くすることができる。ただし、第3の発明と第6の発明とでは、それらの用途や作業現場の状況などを考慮して、いずれかを選択すればよい。
図1はこの発明の第1実施形態の断面図である。 図2は第1実施形態の補強柱の正面図である。 図3は第1実施形態における鋼板の連結部の断面図である。 図4は第1実施形態の補強構造における変形を説明するためのグラフである。 図5は第2実施形態における鋼板の連結部の断面図である。 図6は従来例の柱の補強構造を示す斜視図である。 図7は一般的な、鋼板と、帯状繊維シートの変形特性グラフである。
図1〜図4に示す第1実施形態の補強構造は、断面四角形の柱1の周囲を4枚の鋼板2で囲うが、これら鋼板2はその柱1の軸方向に直交する面での断面をL字状にしたもので、各鋼板2の直角部をそれぞれ柱1の4つの角に対応させ、柱1との間に間隔を保って設置する。さらに、上記柱1の周囲を囲む囲い方向において隣接する一方の鋼板2に、他方の鋼板重ね合わせて、この重ね合わせた部分を連結部2a,2bとしている。また、この鋼板2は柱1の軸方向を長手方向とするとともに、この長手方向の長さを柱1の軸方向長さとほぼ等しくしている。
このように柱1の周囲を囲んだ鋼板2の連結部2a,2bは、複数のネジ部材5で結合している。このネジ部材5は上記連結部2a,2bの重ね合わせた部分のほぼ中央に、柱1の軸方向に所定の間隔を保って固定したものである。
そして、上記連結部2a,2bの結合部分の拡大断面図が図3である。この図3からも明らかなように、上記ネジ部材5は頭部5aとネジ部5bとからなり、ネジ部5bの先端を尖らせたドリリングタッピングネジからなっている。
また、鋼板2の連結部のうち、外側に位置させた連結部2aには、ネジ部材5のネジ部5bを貫通するための複数の貫通孔2cを、柱1の軸方向に沿って予め形成しているが、他方の連結部2bには何も形成せず、貫通孔2cを貫通させたネジ部材5を他方の連結部2bに向かって回転させることによって上記連結部2a,2bをネジ結合している。
また、上記ネジ部材5のネジ部5の長さL3を、図3に示すように鋼板2の連結部2aの厚さL1と連結部2bの厚さL2との合計厚さよりも長くし、連結部2a,2bを結合したとき、ネジ部5bの先端が連結部2bから突出するようにしている。この突出した部分は、鋼板2と柱1との間に充填したグラウト材4内に固定されることになる。
上記のように隣り合う鋼板2の連結部2a,2b同士を重ねてネジ部材5で結合することによって、4枚の鋼板2が筒状を維持する。
このような鋼板2で構成された筒で柱1の周囲を囲んだら、上記鋼板2の外周全面に接着剤を塗布し、この接着剤の上から帯状繊維シート3を巻き付けるようにしている。ここでは、上記鋼板2の長手方向の長さよりも短い幅の帯状繊維シート3を鋼板2の長手方向に少しずつずらして接着し、上記鋼板2の外周全面を覆うようにしている。
ただし、上記鋼板2の長さが柱1の軸方向長さより短いものを用いることもできる。この場合には、4枚一組の鋼板2を柱1の軸方向に複数組積み上げてこれら鋼板2を上下方向に連続させることになる。
なお、帯状繊維シート3を巻き付ける際には、帯状繊維シート3を鋼板2に塗布した接着剤に強く押し付け、上記接着剤を繊維の間に十分浸透させるとともにこの接着剤が帯状繊維シート3の表面まで押し出されるようにする。このようにすれば、接着剤が硬化したとき、帯状繊維シート3が接着剤と一体化してその強度が向上する。
上記のようにして鋼板2と帯状繊維シート3とを一体化したら、上記鋼板2と柱1との間のすき間にグラウト材4を充填する。この充填したグラウト材4が固化すれば、鋼板2がグラウト材4に接着され、補強構造が完成する。
なお、この第1実施形態では、上記連結部2a,2bを、頭部5aを有するネジ部材5で結合したので、図1,3に示すように、鋼板2の外周面には頭部5aが突出して段差が形成されてしまう。この場合には、頭部5aの周囲にパテなどを塗布して上記段差を少なくしてから上記帯状繊維シート3を貼りつければ、帯状繊維シート3の鋼板2に対する密着性を高めることができる。
また、図1及び図3において、二点鎖線で示した帯状繊維シート3は一層に限らず、複数層接着してもよい。帯状繊維シート3を多層にすれば、その分、帯状繊維シート3の強度が高まることになる。このように帯状繊維シート3を多層にする場合にも、それら帯状繊維シート3間にも接着剤を塗布するとともに、それら各層に接着剤を浸透させる。
さらに、上記ネジ部材5は、一組の鋼板2の長手方向に複数設けられるが、これら複数のネジ部材5のせん断強度を、鋼板2の降伏点強度より小さく設定している。
上記鋼板2の降伏点強度とは、図4、7に細線で示すグラフx上の降伏点P1に相当する耐力のことである。
また、上記ネジ部材5のせん断強度とは、ネジ部材5が、結合している一対の連結部2a,2b間に作用するせん断力によってせん断される限界耐力で、この実施形態では図4に示す降伏点P1に相当する荷重よりも小さい点P2に対応する力である。
上記のように構成したので、ネジ部材5にせん断強度P2を超える荷重が作用したときには、鋼板2が降伏点に達する前にネジ部材5がせん断される。ネジ部材5がこのようにせん断されれば、隣り合う鋼板2の結合力がなくなり、隣り合う鋼板2同士が相対移動可能になる。
なお、上記複数のネジ部材5が全てせん断された場合には、隣り合う鋼板2同士が全体的に相対移動可能になるが、一部のネジ部材5のみがせん断された場合にも、そのせん断された部分において隣り合う鋼板2が相対移動可能になる。
また、ネジ部材5がせん断されるまでには、ネジ部材5が変形するが、この変形によっても、隣り合う鋼板2が相対移動可能になる。
そして、ネジ部材5のせん断強度P2を上記鋼板2の降伏点P1に近づければ近づけるほど、鋼板2の耐力を極限まで有効に利用できることになる。ただし、上記降伏点P1とせん断強度P2とを等しくすると、ネジ部材5がせん断されると同時に、鋼板2が降伏点を超える危険性が大きくなり、鋼板2が損傷される恐れがある。したがって、上記のように、せん断強度P2を降伏点P1よりも小さくしておけば、鋼板2が降伏点P1を超える前に、ネジ部材5を確実にせん断させることができる。
上記のように構成した柱の補強構造では、図4に示すように、グラフzの0点からネジ部材5のせん断強度に対応する点P2まではネジ部材5の結合力が保たれている状態である。このようにネジ部材5による結合力が保たれ、4枚の鋼板2が結合している領域では、鋼板2自体が弾性変形するが、各鋼板2が個別に移動することはない。なお、この弾性変形領域において荷重を取り除けば、鋼板2は元の状態に復帰する。
一方、荷重が図4の点P2に達し、上記ネジ部材5のせん断強度を超えると、ネジ部材5はせん断される。ただし、ネジ部材5がせん断される場合には、その過程でネジ部材5が大きく変形する。いずれにしても、上記ネジ部材5のせん断強度を鋼板2の降伏点強度よりも小さくしておけば、鋼板2が降伏点に達する前に、各鋼板2が移動可能になる。各鋼板2が移動可能になれば、荷重は帯状繊維シート3に伝達され、帯状繊維シート3が荷重を支える。
したがって、この第1実施形態の補強構造では、ネジ部材5が大きく変形したりあるいはせん断されたりするまでは、鋼板2の特性を利用できる。
そして、荷重が上記図4の点P2以上になって、ネジ部材5がせん断されてしまえば、グラフyに平行な帯状繊維シート3の変形特性に完全に移行する。
荷重が作用する初期段階から鋼板2の特性がほとんど活かされることがない従来例の場合には、補強した柱の特性は最初からグラフyに示す帯状繊維シート3の変形特性に近くなる。しかし、この第1実施形態における変形特性はグラフzで示すようになり、上記グラフyと比べて荷重に対する伸び、すなわち柱の変形量が小さくなることが分かる。
しかも、この第1実施形態では、鋼板2の外周全面に帯状繊維シート3を接着して鋼板2と帯状繊維シート3とを完全に一体化しているので、両者の複合体としての特性が期待できる。
上記のように複合体としての特性を期待できるので、図4に示すグラフzよりもさらに変形量を小さくして柱1を破壊し難くすることが可能になる。
また、ネジ部材5がせん断された後は、上記複合体としての機能はなくなるが、帯状繊維シート3の拘束力によって柱1の耐力を維持することができ、柱1の崩壊を防止できる。
上記のようにネジ部材5は、鋼板2の降伏点強度よりも小さい荷重でせん断されるので、鋼板2自体が降伏点を超えることはない。このようにネジ部材5がせん断されても鋼板2は損傷されないため、もしネジ部材5がせん断されても鋼板2を交換することなく、この補強構造を簡単に修復することができる。
また、この第1実施形態では、ネジ部5bの先端を固化したグラウト材4中に突出させているため、ネジ部材5を支持する点が多くなるが、その支持する点が多くなればなるほど、ネジ部材5に作用するせん断荷重が分散される。このようにせん断荷重が分散されるので、実質的にネジ部材5のせん断強度が上がることになる。
また、上記のようにグラウト材4内にネジ部材5の先端を突出させることによって、ネジ部材5のアンカー効果を期待できる。このようなアンカー効果が発揮されれば、グラウト材4と鋼板2との結合力がさらに高まり、結果として柱とグラウト材4及び鋼板2が一体化して補強効果が向上する。
特に、グラウト材中に突出する部分にネジ山が形成されているので、グラウト材がネジ山間に入り込んで鋼板とグラウト材との接着面積が大きくなる。したがって、柱とグラウト材及び鋼板の一体化がさらに進む。
なお、ネジ部材5のネジ部5bの長さを上記連結部の重ね合わせ部分の合計厚さの2倍以上にすれば、上記ネジ部5bの突出量が多くなるので、上記アンカー効果がさらに高められるとともに、ネジ部材5が支持される長さも長くなるので、ネジ部材5に作用するせん断荷重をさらに分散させ、ネジ部材5の実質的なせん断強度を上げることができる。
また、上記のように結合手段としてネジ部材5を用いた場合には、溶接と比べて、現場で火花を発生しないというメリットがある。さらに、ネジ締め作業は溶接に比べて個人差が出にくいので、作業性が安定する。
この第1実施形態は、上記のように結合手段としてネジ部材5を用いたが、このネジ部材5に替えてボルト及びナットを結合手段として用いてもよい。
図5は、第2実施形態の補強構造における鋼板2の連結部分の拡大断面図である。
この第2実施形態では、上記ネジ部材5に替えて溶接部によって結合手段を構成したことが特徴である。その他の構成は上記第1実施形態と同じである。第1実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を用いるとともに、以下の説明にも図2、4を参照する。
第2実施形態では、図5に示すように隣り合う鋼板2の連結部2aと2bとのうち、柱1とは反対側となる外側の連結部2aに貫通孔2cを形成し、この貫通孔2cを介して連結部2a,2bを栓溶接している。そして、この栓溶接の溶接部分6がこの発明における溶接部を構成している。
この第2実施形態の貫通孔2cは、鋼板2の長手方向に所定の間隔を保って複数形成したものであり、この貫通孔2c介して栓溶接の溶接部分6は、図2に示す第1実施形態のネジ部材5に替わるものであり、柱1の軸方向に所定の間隔を保って複数設けられる。
また、これら複数の溶接部分6のせん断強度を鋼板2の降伏点強度よりも小さく設定している。例えば、溶接部分6のせん断強度を図4の点P2に設定すれば、この第2実施形態の補強構造も、第1実施形態と同様に図3の太線グラフzに示す特性となる。
したがって、鋼板2の耐力を有効に利用しながら、鋼板2の損傷を防止し、帯状繊維シート3の靱性や拘束効果も利用できる。
また、鋼板2の外周全面に帯状繊維シート3を接着することによって、帯状繊維シート3と鋼板2とが一体化することによる相乗効果を期待できることも第1実施形態と同様である。
この第2実施形態では、連結部2a,2bの結合手段として栓溶接を利用しているが、結合手段は栓溶接に限らない。例えば、連結部2a,2bの端部に沿って連続する溶接部を形成してもよい。但し、上記のような栓溶接の場合には、一方の連結部2aに予め貫通孔2cを形成しておくので、溶接位置が明確になって現場での作業性が良い。
また、栓溶接の場合には、結合後の鋼板2の外周面に、上記ネジ部材の頭部5aや溶接部が突出しないため、帯状繊維シート3の密着性を保つために段差の修正作業が必要ないというメリットもある。
上記第1、第2実施形態では、鋼板1の外周全面に接着剤によって帯状繊維シート3を接着しているが、帯状繊維シート3の接着範囲は鋼板2の外周全面に限らない。ただし、帯状繊維シート3の接着面積が大きいほど、鋼板2と帯状繊維シート3との合成耐力が大きくなる。
なお、上記各実施形態においては、柱1の断面形状を四角形にしたが、柱の断面形状は特に限定されない。例えば、円形やどのような多角形でも構わない。ただし、この柱の断面形状にあわせた鋼板を用いることは当然である。
鋼板の特性を効果的に利用することができる柱の補強構造に最適である。
1 柱
2 鋼板
2a,2b 連結部
3 帯状繊維シート
4 グラウト材
5 ネジ部材
5b ネジ部
6 (溶接)部分
L1 (連結部の)厚さ
L2 (連結部の)厚さ
L3 (ネジ部の)長さ

Claims (6)

  1. 建造物の柱の周囲をその柱の表面との間に間隔を保って複数の鋼板で囲み、この鋼板の囲み方向において隣り合う鋼板の重ね合わせ部分からなる連結部を結合手段により結合するとともに、上記鋼板の外周面に接着剤を塗布し、この接着剤の塗布面に帯状繊維シートを巻き付けてなり、柱と鋼板のとの間にグラウト材を充填する一方、上記結合手段のせん断強度を、上記鋼板の降伏点強度よりも小さくし、せん断力によって上記結合手段がせん断して、上記隣り合う鋼板の上記連結部が相対移動可能になった後、上記帯状繊維シートが耐力を発揮する構成にした柱の補強構造。
  2. 上記鋼板の外周全面に接着剤を塗布し、この接着剤の塗布面に帯状繊維シートを貼り付けた請求項1に記載の柱の補強構造。
  3. 上記結合手段は、上記一組の鋼板において互いに隣り合う鋼板の連結部を固定するネジ部材であり、このネジ部材は柱の軸方向に間隔を保って複数設け、これらネジ部材のせん断強度を、上記鋼板の降伏点強度よりも小さくした請求項1又は2に記載した柱の補強構造。
  4. 上記ネジ部材のネジ部の長さを、上記連結部の重ね合わせ部分の合計厚さよりも長くし、重ね合わせた連結部を上記ネジ部材で結合したとき、上記ネジ部材の先端が柱と鋼板との間に突出する構成にした請求項3に記載した柱の補強構造。
  5. 上記ネジ部材のネジ部の長さは、上記連結部の重ね合わせ部分の合計厚さの2倍以上である請求項4に記載の柱の補強構造。
  6. 上記結合手段は、互いに隣り合う鋼板の連結部を、柱の軸方向に所定の間隔を保って溶接する溶接部であり、これら溶接部のせん断強度を、上記鋼板の降伏点強度よりも小さくした請求項1に記載した柱の補強構造。
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