JP5272933B2 - めっき基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、めっき基板の製造方法に関し、更に詳しくは、寸法特性の劣化が無く、かつ大がかりな装置を必要とせず、銅めっき層の再結晶化が完了されためっき基板の製造方法に関する。
電子部品実装用部材の一つにフレキシブル配線板がある。このフレキシブル配線板はポリイミドフィルム等の絶縁性樹脂フィルムの表面に接着剤層を介して、あるいは直接導電層を設けたフレキシブル銅張り積層板を加工して得られる。このフレキシブル配線板は、可撓性を有し、繰り返しの屈曲に耐えうること、かつ高密度配線化が可能なことより、携帯電話機等の屈曲部の配線部品や、狭い空間での立体的な配線部品や、ケーブル、あるいはコネクター機能を付与した複合部品としての用途が拡大してきている。
フレキシブル銅張り積層板には、前記したように、絶縁性樹脂フィルム表面に接着剤層を介して銅箔を貼り合わせた3層フレキシブル銅張り積層基板(特許文献1 第1頁参照。)と、絶縁性樹脂フィルム表面に直接金属層を設けて、これを導電層とした2層フレキシブル銅張り積層板とがある。そして、2層フレキシブル銅張り積層板には、例えば、絶縁性樹脂フィルム表面に薄い導電層を乾式めっき法で設け、その上に更に乾式めっき法で薄い銅層を設け、その上に電解銅めっきを施して得られる、いわゆるめっき基板(特許文献2 第1頁参照)と所定の厚さの銅箔上に、ポリアミド樹脂を1層又は複数層塗布し、これを乾燥し、イミド化して形成する、いわゆるキャスト基板(特許文献3 第1頁参照)とがある。
これらの中で、3層フレキシブル銅張り積層基板を用いた場合には、サブトラクティブ法によって基板上に所望の配線パターンを形成するため、簡単、かつ低コストでプリント配線板を製造することができる。このことより、従来では3層フレキシブル銅張り積層板の使用が主流となっていた。
しかし、サブトラクティブ法で配線パターンを形成する際に、配線部の側面もエッチングされてしまう、いわゆるサイドエッチングを発生させるために配線部の断面形状が、矩形形状ではなく、裾広がりの台形になり易いという問題がある。従って、配線部間の電気的絶縁性を確保するまでエッチングをおこなうと配線ピッチ幅(配線間隔)が広くなり過ぎるという問題がある。特に、従来一般的に使用されている35μm厚さの銅箔を用いた3層フレキシブル銅張り積層基板を用いる限り、フレキシブル配線板における配線部の高密度化、即ち狭ピッチ化をおこなうには限界がある。また、接着剤層の厚さも20〜40μmと厚いことから、フレキシブル基板全体の厚みがかなり厚くなってしまうという問題もある(特許文献4 第3頁参照)。
近時、電子機器の小型化、高密度化に伴いフレキシブル配線板の配線部に求められる配線幅と配線間隔とはすでに25μmを下回り、20μmにもなろうとしている。断面が矩形形状の配線を、この幅で、且つこの間隔で形成するためには、導電層の厚さを14μm以下にすることが求められている。こうしたことより、3層フレキシブル銅張り基板の代わりに2層フレキシブル銅張り積層基板を用いることが主流となってきている。
また、このように高密度化された配線を有するフレキシブル配線板は、より小さな曲率半径の屈曲部で使用されるようになるが、このため、フレキシブル配線板の配線に対する耐屈性の向上が望まれている(特許文献5 第3頁、特許文献6 第3頁、特許文献7 第3頁 参照)。
2層フレキシブル銅張り積層基板では、用いる銅箔の耐屈性向上を図るべく、例えば、その表面を100℃以上で加熱したカーボン量18ppm以下の銅箔を用いる方法(特許文献8 第1頁参照)や、伸び率が20〜40%の電解銅箔を圧下率40〜80%の圧延加工して得られた銅箔を用いる方法(特許文献9 第1、2頁参照 )が提案されている。
しかし、これらの方法は、いずれも銅箔自体に対してしか適用することができず、こうして得た銅箔を用いてキャスト基板を作成し、これを用いざるを得ない。しかし、前記したような厚さ14μm以下の銅箔を得ようとすると、得られた銅箔は極めて高価なものにならざるを得ず、現実的なものとなっていない。
ところで、めっき基板は、前記したように、絶縁性樹脂フィルム、一般にはポリイミド樹脂フィルム表面にめっき法を用いて金属薄膜を設け、その後、金属薄膜の上に電気銅めっきを施して得ている。この場合、電気銅めっきで得た銅めっき膜では、めっき直後から室温での再結晶(セルフアニール)化が進行し、結晶子径が少しずつ大きく成長していくことが知られている。再結晶化の進行中は結晶子径(結晶粒径)が少しずつ大きく成長していくことから、再結晶化が完了しない間では、膜硬度が変化するために密着性や耐屈折性などの膜特性が変化してしまう。そして、銅めっき膜の前記再結晶化が終了し、皮膜特性が安定して屈曲部に用いるプリント配線板用として使用可能になるには、めっき終了後に10日以上の自然放置が必要とされている。
例えば、特許文献5、6、7のそれぞれの実施例には、結晶子径(結晶粒径)と耐屈性の関係が示されているが、各文献内では結晶子径(結晶粒径)と耐屈性との間に良好な比例関係が示されているものの、各文献間ではその比例関係の傾きに大きな差がみられる。この差は、測定方法等の差異にもよるが、銅めっき膜の再結晶化の程度の差にも影響を受けていると思われる。前記再結晶化の進行は銅めっき膜の形成条件、即ちめっき条件により大きく異なり、めっき終了後数時間で完了するものから数週間かけて完了するものがあることが知られているからである。
そこで、めっき後の再結晶化の進行を早め、膜特性が経時変化しないめっき基板を得るために、リール トウ リール方式でポリイミド樹脂フィルム表面に電気銅めっき膜を設けた後に80℃で12時間乾燥させ、次いで200℃で2時間、銅めっき層をポリイミド樹脂フィルムごと加熱して銅めっき層の再結晶化を完了させ、その後に、リールに巻き取る方法が提案されている(特許文献6 第9頁参照)。
しかしながら、前記した再結晶化の進行を促進させる方法は、搬送張力が印加されたままポリイミド樹脂フィルム毎銅めっき膜を200℃で2時間加熱することから、得られるめっき基板の寸法特性を劣化させるという問題がある。また、従来のめっき装置にオーブン加熱装置を追加することになり、設備が大がかりとなり、設備利用効率も低下することになり、安価なめっき基板の製造には実用的とは言い難い。
こうした状況下に、これまでの2層フレキシブル銅張り積層板、特にめっき基板の製造方法がもつ問題点を解消し、寸法特性の劣化が無く、かつ大がかりな装置を必要とせず、銅めっき層の再結晶化が完了されためっき基板の製造方法の開発が求められている。
特開平07−202417号公報 第1頁参照 特開2006−013152号公報 第1頁参照 特開2009−019132号公報 第1頁参照 特開2007−069561号公報 第3頁参照 特開2006−224571号公報 第3頁参照 特開2007−262493号公報 第3頁参照 特開2008−130585号公報 第3頁参照 特開平8−283886号公報 第1頁参照 特開平6−269807号公報 第1、2頁参照
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、製品寸法特性の劣化が無く、かつ大がかりな装置を必要とせず、銅めっき層の再結晶化が完了されためっき基板の製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決すべく種々の検討を行った結果、めっき基板を製造する際に、銅めっき層形成直後に超音波振動を該銅めっき膜に与えることで、銅めっき膜の再結晶化が容易、かつ速やかに完了することを見いだして本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、その表面にめっき法で設けられた導電層を有する長尺の絶縁性樹脂フィルムを基材として用い、巻き出し工程、表面処理工程、洗浄工程、電気銅めっき工程、温水洗浄工程、および巻き取り工程を順次行なうことによりめっき基板を製造するに際して、電気銅めっき工程にて前記基材上に銅めっき膜を設け、次いで温水洗浄工程にて温水洗浄槽内で前記銅めっき膜に超音波振動を付与することを特徴とするめっき基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、前記第1の発明において、前記超音波振動を与える際の浴温を30〜70℃とし、超音波発振子の出力を0.1〜10W/cmとし、超音波振動を与える時間を5〜60秒とすることを特徴とするめっき基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、前記第2の発明において、前記めっき基板に10〜300N/mの張力をかけることを特徴とする請求項2記載のめっき基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、前記第1〜第3のいずれかの発明において、前記電気銅めっき工程で用いられるめっき液が硫酸銅めっき液であることを特徴とするめっき基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記電気銅めっき工程でのめっき電流密度が1〜10A/dmであり、形成されるめっき膜の厚さが1〜14μmであることを特徴とするめっき基板の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、前記第1〜第6のいずれかの発明において、前記絶縁性樹脂フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とするめっき基板の製造方法が提供される。
本発明の方法では、銅めっき膜形成直後に超音波振動を該銅めっき膜に与えることで、銅めっき膜の再結晶化を完了させものであり、めっき基板に張力を掛けた状態で数時間加熱することはない。したがって、得られるめっき基板に寸法特性の劣化はない。
また、本発明の方法では、電気銅めっきを施して得ためっき基板を温水洗浄する際に、同一槽内で超音波振動をめっき基板に付与する。したがって、超音波振動を付与するための新たな槽の新設は不要であり、既設のめっき装置をそのまま適用できるので装置が大がかりなものとはならない。
また、本発明の方法で得られるめっき基板では銅めっき膜の再結晶化は完了しているため、皮膜特性の安定しためっき基板となる。
本発明の実施例3で得られた超音波処理あり/なしでのMIT測定結果を示した図である。
本発明は、めっき基板を製造するに際して、銅めっき膜形成直後に超音波振動を該銅めっき膜に与えることで、銅めっき膜の再結晶化を完了させるものである。すなわち、温水洗浄時に洗浄槽内でめっき基板に超音波振動を付与して再結晶化を完了させるものであり、ロールに巻き取った後に超音波振動を与え再結晶化化させるものではない。
本発明において超音波を用いるのは、製品寸法特性を劣化させることなく、銅めっき膜の再結晶化を完了させるためである。
本発明では、その表面にめっき法で設けられた導電層を有する長尺の絶縁性樹脂フィルム(以下、単に「基材」と示す)を用い、巻き出し工程、表面処理工程、洗浄工程、電気銅めっき工程、温水洗浄工程、巻き取り工程を含むめっき基板の製造方法において、電気銅メッキ工程で基材に銅めっきを施して得ためっき基板に温水洗浄工程の洗浄槽内で超音波振動を付与する。
前記基材は、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート等の絶縁性樹脂フィルム、好ましくはポリイミドフィルムの表面にスパッタ法、蒸着法等の乾式めっき法により形成し、あるいは、無電解めっき法により、Ni、Co、Cr、Mo、W、Cu、Zn、及びこれらを主成分とする合金製の薄膜を形成して得られる。
この基材の導電層表面に電気銅めっきを施すに際して用いる装置は、該基材の導電層表面が水平方向に搬送される横型めっき装置でも、被めっき面が鉛直方向に搬送される縦型めっき装置でもよい。
銅めっきに際しては、まず、ロールから巻き出された基材の導電層表面に付着している汚れや油、ゴミ等を表面処理工程で除去し、その後洗浄工程で水洗して導電層表面を清浄化する。
表面が清浄化された基材は銅めっき工程で銅めっきが施される。銅めっき工程で使用しうるめっき液としては、硫酸銅めっき液、シアン化銅めっき液、ピロ燐酸銅など各種の市販のめっき液を用いうるが、排水処理や取り扱い性を考慮すると硫酸銅めっき液を用いることが好ましい。
また、めっき液には、得られる銅めっき膜の表面を平滑、且つ良好にするために添加剤としてキャリア、レベラー、ブライトナーを添加するが、硫酸銅めっき液に添加するキャリアとしては、ポリエチレングリコール(PEG)に代表されるようなノニオン系界面活性剤であるポリエーテル化合物を用いることができ、レベラーとしては窒素化合物であるチオ尿素やフェナジン系染料であるヤーヌス グリーン B(JGB)やポリアミン誘導体を用いることができ、ブライトナーとしてはビス(3−スルホプロピル)ベルスルフィド(SPS)に代表されるスルホン基を有する有機硫黄化合物を用いることができる。
銅めっき条件は、原則として用いる銅めっき液に推奨される条件とすることが好ましいが、銅めっき液として硫酸銅めっき液を用いる場合には、浴温は30〜70℃、電流密度を1〜10A/dmとすることが推奨される。
銅めっき膜が設けられためっき基板は、表面に付着しているめっき液などを除去するために、温水洗浄工程で洗浄される。用いうる温水の温度は、めっき浴温度と同一、もしくは少し上とすることが洗浄効果を上げるためにより好ましい。したがって、めっき液として硫酸銅めっき液を用いる場合には、温水の温度は30〜70℃とすることが好ましい。
本発明では、温水洗浄工程で用いる洗浄槽内に超音波発振子を設け、洗浄槽内で超音波振動を基材に銅めっき膜を設けためっき基板に付与する。この際、超音波発振子の出力は0.1〜10W/cmとすることが好ましい。これより出力が下回ると、いくら洗浄槽を大きくして超音波振動を付与する時間を長くしても、銅めっき膜の再結晶化は洗浄槽内で完了させられないからである。また、出力が高ければ高いほど早く銅めっき膜の再結晶化は完了するが、前記範囲より出力が上回ると基材や洗浄槽等を損傷する可能性が出てくるからである。現実に用いる超音波発振子の出力は、価格面を考慮すれば、前記洗浄槽での処理長に配慮して選択することが好ましい。
超音波処理時間は、前記の出力と同様に前記洗浄槽の処理長に影響されるが、前記出力範囲の超音波発振子を用いる場合には、5〜60秒で銅めっき膜の再結晶化は完了する。これより短い時間では、洗浄槽内で再結晶化は完了せず、これより長くかけても電力の無駄となるのみである。
本発明は、絶縁性樹脂フィルム表面に前記した厚さ1〜14μmの銅めっき膜が設けられためっき基板の製造に適用すれば、良好な結果を得ることが可能である。
なお、本発明の方法を適用する連続めっき装置では、横型、縦型を問わず、基材を搬送する際に巻き出し工程から巻き取り工程の間で10〜300N/mの範囲の張力を掛けると良好な結果が得られる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例に示す銅の結晶子サイズの測定方法、およびめっき基板のMIT耐折性の評価法は、以下のとおりである。
1.結晶子サイズの測定方法
銅の結晶子サイズは、X線回折装置を用いて、200面の結晶子サイズの測定を行った。用いたXRD装置はPANalytical社製 型式X’Pert PROであり、XRD測定条件は40kV、20mAでスキャンレート0.5°/分、スキャンステップ0.02°、2θを43°から95°とした。
2.MIT耐折性の評価法
MIT耐折性は、JIS−P−8115のMIT試験法のパターンをフォトリソグラフィーにて形成し、これらをJIS−P−8115のMIT試験機にセットし、R=0.38mm、荷重500g、屈折回転数175rpmの条件下で電圧が無限大になり装置が停止するまでの屈折回数を求め、MIT耐折性を評価した。
(実施例1)
ポリイミド樹脂フィルム表面に、銅をターゲットとして用いたスパッタリング法により膜厚500〜3000Åの銅シード層を形成した。これを基材として以下の処理を行った。めっき装置としては、縦型めっき装置を用いた。
基材表面をアルカリ洗浄し、その後30℃の温水で温水洗浄し、銅シード層の上に銅めっきを施した。
用いためっき浴組成は、硫酸銅160g/l、硫酸200g/l、塩素50mg/lの基本浴組成に、添加剤として市販のエンソン製「ST2000」を使用し、キャリア成分とレベラー成分を含む添加剤成分を20ml/l、ブライトナー成分を含む補正剤成分が2.0ml/lとなるようにした。浴温は28℃であり、基材の搬送速度を1m/分とした、めっき槽内ではエアバブリングによるめっき液の攪拌はせず、めっき液の噴流のみで銅めっき皮膜を形成した。
銅めっき皮膜形成時の電流密度は8A/dmとし、得られる銅めっき皮膜の厚さを1μm、7μm、14μmとし、温水洗浄槽での温水温度を30℃、70℃とし、超音波振動子の出力を0、150W(0.1W/cm)、600W(1.2W/cm)、1000W(10W/cm)とし、超音波処理時間を、5秒、30秒、60秒として製造試験を行った。
得られた銅めっき皮膜の結晶子径を求めた。温水温度を30℃として得られた結果を表1に示し、温水温度を70℃として得られた結果を表2に示した。
(比較例1)
実施例1において、超音波処理時間を0秒とした以外は、実施例1と同様にして銅めっき皮膜の結晶子径を求めた。温水温度を30℃として得られた結果を表1に示し、温水温度を70℃として得られた結果を表2に示した。
(実施例2)
実施例1と同じ基材を準備し搬送張力による製品寸法特性を調べた。めっき条件は実施例1と同一としたが、超音波処理条件を、出力10W/cm、浴温70℃、時間60秒に固定し、搬送張力を10〜300N/mの範囲で4水準設定した。
得られた各めっき基板は各々枚葉に切り出し四隅につけたマーキング間の長さを測定し、その後銅めっき皮膜を溶解除去し、再度四隅のマーキング間の長さを測定してめっき基板の伸縮率を算出した。この伸縮率が小さいほど、またばらつきが小さいほど寸法変化率は小さいと判断され、好ましいめっき基板とされる。なお、同一条件で3回計測し、その平均値を表3に示した。表3において、伸縮率の+は基材の伸び、−は基材の縮みを示す。
得られた結果を表3に示した。
(比較例2)
実施例2において、めっき後に超音波処理をすることなく、温水洗浄し、乾燥して得た銅めっき基板を枚葉に切り出してサンプルを得、表3に示した張力をかけながらオーブン内で、温度180℃で1分間加熱した。その後、実施例2と同様にして伸縮率を算出した。
得られた結果を表3に示した。
(実施例3)
銅めっき皮膜形成時の電流密度は8A/dmとし、得られる銅めっき皮膜の厚さを7μmとし、温水洗浄槽での温水温度を70℃とし、超音波振動子の出力を600W(1.2W/cm)とし、超音波処理時間を30秒とした以外は実施例1と同様にしてめっき基板を得た。そして、JIS−P−8115のMIT試験法のパターンをフォトリソグラフィーにて形成し、これらをJIS−P−8115のMIT試験機にセットし、R=0.38mm、荷重500g、屈折回転数175rpmの条件下で完全に断線して通電不能となる状態までの屈折回数を求めた。
得られた結果を表4、図1に示した。なお、表4には、n=20で求めた値の平均値、最大値、最小値を記載した。
(比較例3)
実施例1において、銅めっき皮膜形成時の電流密度は8A/dmとし、得られる銅めっき皮膜の厚さを7μmとし、温水洗浄槽での温水温度を70℃とし、超音波振動子の出力を0W(0W/cm)とした以外は、実施例1と同様にしてめっき基板を得、前記同様にしてMIT耐折性を求めた。得られた結果を表4、図1に示した。
Figure 0005272933
Figure 0005272933
Figure 0005272933
Figure 0005272933
表1、2より、比較例1では、超音波処理しなかったため、結晶粒子径は423〜511Åと小さいのに対し、実施例1では、超音波処理をしたため、結晶粒子径はいずれも2500Å以上となっており、再結晶化が十分に進行し完了していることが確認できた。
また、表3より、比較例2では、加熱処理をしたため、搬送張力が大きくなるほど、伸縮率の値は大きくなり、ばらつきも大きくなったが、実施例2では、超音波処理をしたため、搬送張力が大きくなっても伸縮率の増加は抑制され、さらにばらつきも小さく維持されていた。
さらに、表4、及び図1より、比較例3では、超音波処理しなかったため、再結晶化完了までに数週間を要し、かつその進行度はめっき基板面内で不均一であるため、MIT測定を実施すると測定値にバラつきが生じることがわかる。一方、実施例3では、超音波処理をしたため、めっき皮膜の再結晶化が水洗槽内で促進・完了し、MIT測定を実施するとばらつきの極めて少ない測定結果が得られることがわかる。
本発明では、基材上へ銅めっきした直後のめっき基板の温水洗浄時に、温水洗浄槽内でめっき基板に超音波振動を付与することにより銅めっき膜の再結晶化を促進させ、完了させる。したがって、めっき基板に張力を掛けた状態で、高温度で加熱することもないため、寸法特性の劣化はない。また、前記したように、洗浄槽内でめっき基板に超音波振動を付与するため、新たな処理槽を必要とすることもなく、装置利用効率の低下は招かない。加えて、得られるめっき基板は再結晶化が完了しているため、皮膜特性の安定しためっき基板となるので、このめっき基板を用いて得たフレキシブル配線板の信頼性は高いものとなる。よって、本発明の持つ産業上の価値は極めて高い。

Claims (6)

  1. その表面にめっき法で設けられた導電層を有する長尺の絶縁性樹脂フィルムを基材として用い、巻き出し工程、表面処理工程、洗浄工程、電気銅めっき工程、温水洗浄工程、および巻き取り工程を順次行なうことによりめっき基板を製造するに際して、
    電気銅めっき工程にて前記基材上に銅めっき膜を設け、次いで温水洗浄工程にて温水洗浄槽内で前記銅めっき膜に超音波振動を付与することを特徴とするめっき基板の製造方法。
  2. 前記超音波振動を与える際に、浴温を30〜70℃とし、超音波発振子の出力を0.1〜10W/cmとし、超音波振動を与える時間を5〜60秒とすることを特徴とする請求項1記載のめっき基板の製造方法。
  3. 前記超音波振動を与える際に、前記めっき基板に10〜300N/mの張力をかけることを特徴とする請求項2記載のめっき基板の製造方法。
  4. 前記電気銅めっき工程で用いられるめっき液が硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のめっき基板の製造方法。
  5. 前記電気銅めっき工程でのめっき電流密度が1〜10A/dmであり、形成されるめっき膜の厚さが1〜14μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のめっき基板の製造方法。
  6. 前記絶縁性樹脂フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のめっき基板の製造方法。
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