JP3098615U - 高温超伝導体の表面を金属コーティングするための電気メッキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】銅−酸素基本構造を有する高温超電導体の表面に金属をコーティングするための金属メッキ装置を提供する。
【解決手段】金属製陽極と、高温超伝導体(HTS)の陰極と、一定またはパルス状の電流を供給する直流電源3と、前記金属製陽極1とHTS陰極2間に電気化学材料を移送するための電解浴手段と、及び、電気化学的相互作用に影響を与える付加的磁石5及び超音波源によって構成され、銅−酸素基本構造を有する高温超伝導体(HTS)上、特に化学量論的または非化学量論的な組成のRE123超伝導体(RE=Y、Nd、Sm、Yb)とビスマスHTS上に金属銅を被着させて、低い電気的および/または熱的な接触抵抗値を持つ金属層を形成し、HTSと金属層の間に、金属層の銅と銅−酸素基本HTS構造間の独特の結合作用により安定したメタライゼーションを得ることを特徴とする高温超伝導体に金属コーティングするための電気メッキ装置を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】金属製陽極と、高温超伝導体(HTS)の陰極と、一定またはパルス状の電流を供給する直流電源3と、前記金属製陽極1とHTS陰極2間に電気化学材料を移送するための電解浴手段と、及び、電気化学的相互作用に影響を与える付加的磁石5及び超音波源によって構成され、銅−酸素基本構造を有する高温超伝導体(HTS)上、特に化学量論的または非化学量論的な組成のRE123超伝導体(RE=Y、Nd、Sm、Yb)とビスマスHTS上に金属銅を被着させて、低い電気的および/または熱的な接触抵抗値を持つ金属層を形成し、HTSと金属層の間に、金属層の銅と銅−酸素基本HTS構造間の独特の結合作用により安定したメタライゼーションを得ることを特徴とする高温超伝導体に金属コーティングするための電気メッキ装置を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、銅−酸素構造を有する高温超伝導体(HTS)の表面に金属コーティングするための電気メッキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高温超伝導体(HTS)は、その極めて優れた技術的特性に基づいて、エネルギ技術における電気的装置として使用されている。高温超伝導体は、Bi2Sr2CaCu2O8+x(Bi2212)ないしBi2Sr2Ca2Cu3O10+y(Bi2223)または123系のREBa2Cu3O7− δ(RE=Y、Nd、Sm、Yb)、特にY1Ba2Cu3O7− δ(Y123)等の化学的組成物である。技術的用途のための化合物は、電気的または熱的な接点、電気的または熱的シャントあるいは不働態化および安定化を目的とする表面層を必要とする。Y123超伝導体は、優れた物理的特性を有しているが、これまで長い導電体を形成することに成功していない。それに対してBi超伝導体は、すでにkm単位のものが生産されている。銀マトリックスは、Biワイヤにとって不可欠であるとされるが、しかしながらこの銀マトリックスは、電流供給や短絡電流制限器(FCL)への直接的な使用といったある種の応用の妨げになっている。銀の高い電気的および熱的な伝導性は、望まれる低い熱伝導性を増大させる(電流供給)。電気的な短絡を効果的に抑制するためには、できるだけ高い抵抗を迅速に構築することが必要とされるが、銀マトリックスは迅速な抑制作用を妨げる。可能性のある代案としては、AgAu/Ag系ないしはAg/AgMg系の合金であって、それらはBiHTSと組合わせることにより、金属Agに比較してより低い電気的伝導性と、小さい熱伝導性係数を有する。この型の伝導体の欠点は、銀マトリックスの使用により高いコストを要することである。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
特許公報DE−C2−4220925には、HTS材料上に電気的な接点を形成するための粉末冶金方法が開示されており、同方法においては接点はコールドアイソスタティックでプレスされて、次に焼結される。プレスすべき粉末としては、HTS−材料または非超伝導前駆物質が使用される。さらに、DE−A1−4418050によれば、超伝導中空円筒を用いて短絡電流を誘導的に制御する方法が知られており、同方法においては、局所的な過熱、いわゆる「ホットスポット」が、77Kにおいて固有抵抗>1μΩcm2を有する金属層、特に鉛、アンチモン、インジウム、ビスマス、鋼、錫、亜鉛あるいはそれらの合金からなる金属導体によって克服される。上記においては、電流制限回路内で電流を抑制するために補強された金属シャントで包まれたHTSチューブが記載されている。前記シャントの物理的なキーポイントは、金属層とセラミック超伝導体間の電気的接触の質である.大部分の金属と合金は,新しい超伝導体(ビスマスを除く)の組成要素ではないので、強力な結合が得られないからである。これらの金属は,酸化されやすく、金属−HTS化合物の安定性に好ましくない影響を与え、長期的には劣化を生じる。Bi2212HTSと、金属導体、好ましくはAg、Au、Ru、Os、Rh、Ir、PdまたはPtのような貴金属との組合わせは、DE−A1−4124980に記載されている。Bi2212チューブは、DE−OS3830092に従っていわゆる溶融鋳造方法で成形される。成形の間に金属ワイヤ、たとえば銀ワイヤは全長にわたって、あるいは両端部において包含される。前記ワイヤは超伝導体を安定化するとともに両エンドギャップからの電流リード機能を果たすが、この現場的方法は、コストが高く、超伝導体の均質な組織を損なう可能性がある。さらに超伝導ではない異相の発生が、870℃の温度において生じる可能性がある。
【0004】
従って本考案は、銅−酸素基本構造を有する高温超電導体の表面に金属をコーティングするための金属メッキ装置を提供することを重要な課題とする。本考案によって開示されるメッキ装置の利点は、低い電気的及び熱的伝導抵抗性を有し、金属層の安定した電気接点を安価で容易に作成できることを主な利点とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案によれば、金属製陽極と、高温超伝導体(HTS)の陰極と、一定またはパルス状の電流を供給する直流電源と、前記金属製陽極とHTS陰極間に電気化学材料を移送するための電解浴手段と、及び、電気化学的相互作用に影響を与える付加的磁石及び超音波源によって構成され、銅−酸素基本構造を有する高温超伝導体(HTS)上、特に化学量論的または非化学量論的な組成のRE123超伝導体(RE=Y、Nd、Sm、Yb)とビスマスHTS上に金属銅を被着させて、低い電気的および/または熱的な接触抵抗値を持つ金属層を形成し、HTSと金属層の間に、金属層の銅と銅−酸素基本HTS構造間の独特の結合作用により安定したメタライゼーションを得ることを特徴とする高温超伝導体に金属コーティングするための電気メッキ装置が提供される。
【0006】
なお、本考案の好ましい構成によれば、前記HTS表面の銅は全体にメッキされるか、又は表面にマスキングを施すことにより銅組織が部分的に電着される。また、電気メッキが、硫酸銅浴内により行われ、該硫酸銅浴が超音波によって励起され、それによって銅層の硬度が増加し、かつ深さ選択性が減少するように構成することもできる。さらに、前記陽極は銅合金で形成され、前記電解浴は合金成分に適合し、金属合金がメッキされる。銅合金が、銅ニッケル化合物の形でメッキされる。また、銅合金を、銅亜鉛化合物とすることもできる。ガルバーニ電池が、永久磁場および/または交番磁場と組み合わされる。
【0007】
さらに、改良された電着界面として作用する銅合金のガルバーニ層を設け、さらにガルバーニ金属層、特に貴金属から選ばれた、銀、金、白金、イリジウム、ルテニウム、レニウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、並びにニッケル、クロム、モリブデンおよびバナジウムがメッキされるように構成することもできる。ガルバーニ電池がメッキされた金属層を形成し、これらの層は化学的および/または熱的な処理で反応させることにより、安定的な酸化物を形成する。銅/銅合金の熱処理は、約80−100℃の温度において行われてCu2Oの形態の安定した酸化物が形成される。
【0008】
【考案の実施の形態】
以下に、高温超伝導体表面に銅ないし銅合金からなる金属層を電着するための本考案に基づく電気メッキ装置を図面を参照しながら詳細に説明する。請求項1に示されるこの形式の電着の主な利点は、全ての新規のHTS材料の化学的及び構造的担体としての銅元素の特異で独特な特性による。銅または銅合金層の物理的及び化学的親和性と表面及び境界面とHTS間の構造によって、本考案では強力な金属−HTS化合物が、特に長期間にわたって得られる。本考案のメッキ装置は、電気的及び熱的及び光学的接点を形成する手段としてHTS上に金属層を電着する方法を提供するものである。例えば、真空法などのような他の層形成法ないしはコーティング法は全て大規模な装置の利用あるいは高コストで時間を浪費の招くという大きな欠点がある。本考案に開示される電着技術は実施が容易で迅速かつ経済的である。
【0009】
驚くべきことは、ガルバーニ及び電気化学的メッキが、セラミック超伝導体に実施可能であることである。電気メッキには、室温において材料上で失われることのない電気伝導性が要求される。この新規の超伝導体への実際の利用に、金属メッキは材料特性と利用パラメータの改善を与えることが出来る。塊状、薄膜及び厚膜状、ワイヤ及びテープ状のHTSへの銅及び銅合金を電気メッキすることは、以下の多くの利点を有する。
【0010】
(1)HTSの表面は、化学的および機械的攻撃に対してシール(不働態化)される。
(2)高い電気的負荷の下で、超伝導体の電流および電圧安定性が改良される。
(3)微細な亀裂や孔の表面からの充填により、機械的な特性(抗張力、硬度)が高められる。
(4)銅金属層は中間層としてさらなる金属層、特に銀、金、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、タングステンなどの貴金属とニッケル、クロム、レニウムおよびそれらの合金からなる層の付着および接着能力を改善する。
(5)銅金属層が低温源での超伝導体の熱力学的な結合を改善する。
(6)銅金属層がHTSの表面の粗さを改善し、光学的研磨面として用いる事の出来るほど高度な平滑さを付与する。
(7)銅金属層が接続端子を形成するためのHTSの半田付けを容易にし、HTS各部材の接続を容易にする。
(8)銅金属層の好ましい実施の形態ではHTS上のプレス接触および挟持接触が得られる。
(9)多結晶HTS上への電気めっき層は効果的なバイパス特性を有し、移動電流はHTS導体中の粒界障害物及び他の電気的障害物を迂回することが出来、それにより電気的安定性を改善する。
【0011】
ここに開示される本考案では、高温超伝導体を銅ないし銅合金によってコーティングすることは、高い電気的な負荷、特に短絡と過電圧などの変化する負荷、機械的負荷、化学的腐蝕の下での、あるいは低温障害の下での超伝導構成物や装置の安定性を実質的に改善することを示している。
【0012】
図1に示すように、陽極1と陰極2を有する電解装置は電解工程を実施するために直流電流源3によって操作される。高温超伝導体上への銅の電着は、硫酸銅浴4を使用して高い電流密度により行うことが最も効果的である。本考案の電着は、アルカリシアン化銅浴を用いても可能である。
【0013】
HTS上への銅合金のメッキは、本考案によれば、溶媒中の電解質のイオン濃度を選択することにより、個々の合金の電流電位カーブを共通の電着電位が得られるようにシフトさせる電解メカニズムを利用するものである。
【0014】
本考案の他の態様では、金属層の均質化とさらに金属層の粒子を微細化するために、メッキ装置は並行的に物理的装置と組合わせられる:
これらの技術は、
(a)電解浴の超音波処理の適用と電解浴の励起。
(b)メッキ処理中での磁場の適用。
(c)パルス電流によるメッキ(正/逆)。
この付加的な処理段階は単独でも又は組合わせても適用できる。
【0015】
本考案によれば、次の銅合金が電着される:
銅−亜鉛合金(真鍮);メッキ工程におけるCu:Zn=1:1化学量論的比率はCu:Zn=70:30の合金層が得られる。
銅−錫合金(錫ブロンズ)
銅−アルミニウム合金(アルミニウムブロンズ)
銅−ニッケル合金(モネル)
銅−ベリリウム合金(ベリリウムブロンズ−高強度)
【0016】
合金のメッキには、化学的分極を考慮しなければならず、その分極は多数の成分の電着を促進したり、最悪の場合には如何なる電着もされない場合がある。
【0017】
メッキ装置を効率よく稼動するためには、電解浴は不純物を除去し、高化学電流密度の下でHTS表面上に反応生成物が付着するのを防ぐために循環工程において連続的にまたは周期的に移動される。
【0018】
本考案の好ましい態様では、電流源は、低いHTS陰極伝導性に設けられ、電流を正方向、逆方向、または広範囲の比率でのパルス電流によるメッキを可能にしている。正電流、ゼロ、負電流間の周期比率は、0.001Hz(1000s)から1kHz(1ms)の範囲で変更可能である。パルス電流によるメッキにより、より迅速な電着を可能にする実質的に高い電流密度値が適用できる。その結果メッキ層は微細粒子となりかつ機械的に安定する。
【0019】
他の好ましい態様においては、陽極および/または陰極の近傍に磁気装置5によって磁場6が生じる。その結果もたらされるローレンツ力は、
F=Cu2+/Me2+(v×B)
であり、ここでvは負荷されるイオンの速度で、Bは磁束密度である。このローレンツ力は、触媒浴の流動とともに、均質で微粒子のめっき層構造のためのより良好な状態をもたらす。
【0020】
表1に、銅合金と高温超伝導体の電気的特性を総括する。
表1:異なる温度下での銅合金とBiおよびY123HTSの比電気抵抗値ρの比較
【表1】
【0021】
本考案の更に他の態様では、高短絡電流の場合にHTS導体の均一化と安定性を得るために、短絡電流制限器(FCL)内に、銅ニッケル合金からなるシャント(迂回回路)を設けることができる。CuNi層はほぼ温度に無関係に比電気抵抗を与え、超伝導状態において電流はほとんど流れず、超伝導体を抵抗状態(短絡電量により生じる)に切替えたときに、一時的な高電流は、ホット・スポットないしは弱いHTS導体部分を迂回して隣接する金属層を流れる。このシャントにより超伝導体は保護される。
【0022】
HTS表面上へのCuNiの電着は、銅リン酸溶液またはアルカリシアン化銅溶液を使用することにより行われる。HTS上に50%までのNiの電着を行うための銅ニッケルメッキ工程浴は触媒組成を有する。
銅ピロリン酸塩 Cu2P2O7 5−10g/l
塩化ニッケル NiCl2×6H2O 40−90g/l
カリウムまたはナトリウムピロリン酸塩
(K/Na)4P2O7×10H2O 300−400g/l
【0023】
図2は、エネルギ供給設備内で短絡電流を迅速に制限するための、銅ニッケル表面電着層を有するYBCO−HTSメアンダーモヂュール7の可能な形状を示している。
【0024】
効果的に短絡電流を制限するために重要なことは、通常電流を大きな損失なく移送することが出来る断面8を有する長尺の超伝導体を用いることである。実質的に臨界電流密度よりも高い電流の急速な増加を伴った短絡電流の場合に、超伝導体は1ms以下という極めて僅かな時間で抵抗状態に切替わリ電流を制限する。この制限方法の利点は、(電気装置による)トリガー・シグナルを必要としないことである。抵抗状態への切リ替えは、短絡電流自体により生じる。この性質のために、FCL装置は新しい超伝導体に有効に使用することができる。
【0025】
この抵抗FCL型の移行状態において、制御過程ではごく短時間のジュール熱を超伝導体中に発生する。従って、FCLの設計と組み立ては、電流や電圧などの電気的パラメータに従って計算される。両パラメータによって、超伝導体の長さ1当たりの金属シャントが無い場合の必要抑制抵抗(R1)と金属シャントがある場合の必要抑制抵抗(R1 B)が定められる。
R1=ρ1/A 金属シャント無し
R1 B=(ρSC+ρm)l/(ASC+Am) 金属シャント有り
ρSCとρmは比電気抵抗値で、ASCとAmは、それぞれ超伝導体及び金属シャントの導体断面パラメータである。
【0026】
上記の操作は、全ての形式の抵抗超伝導体制限器について一般的である。技術的な装置のデザインと操作についてのキーポイントは、いわゆる「ホットスポット」を取り除くことである。超伝導体と高抵抗金属銅合金層9、好ましくはCuNi層短絡電流制限機能における超伝導材料の均一性と安定性を改善する。表1によれば、急冷直後の短絡電流の場合には、HTSの比抵抗は、金属層の比抵抗よりも実質的に大きく、電流は金属を通して流れるので超伝導体は保護される。FCL装置は、約2000アンペア程の通常電流を流すようにデザインされる。短絡電流の場合には、電流は急速に通常値の何倍にも増大する。同時に、約10kA/cm2の臨界移送電流密度と6×8mm2=0.48cm2の断面を持った超伝導体では、約5kAに短絡電流は制限される。
【0027】
10kVの電力供給では、約77mの長さの伝導体が得られるよう約16個の4.8mの長さの制御YBCOモジュールが必要である。
【0028】
FCL装置の制限状況は,図3によれば超伝導体の臨界電流密度Jc、超伝導体−金属の組合わせのデザイン(断面の比)及び伝導体の全長に依存する。効果的に制限するためには、1msの切替え時間定数を必要とする。図3の計算によれば、溶融組織を持ったYBCO材料パラメータ(電気的及び熱的係数)を含んで、約1msの切替え時間を得るためには、約4kA/cm2臨界電流密度が必要である。もしこの時間定数が例えば5msのように長くなると、HTS抵抗はさらにゆっくりと展開するので制限はより高い電流に相当する移行過程後に始まる。
【0029】
基本的に、いわゆる「磁束(フラックス)流」抵抗による短絡電流の場合には、非常に長い伝導体が電流制限効果を有する。この制限は、短絡電流制限器の「オーム」抵抗制限において約100V/mの電界であるのに対比して、電界が1−10V/mの範囲であることに基づくものである。10kVの電力網の磁束流の場合においては、低い電界のために、導電体の長さを1000m以上にしなければならない。消費されるエネルギーExJは小さいが、導電体の長さが長いので装置の費用が増大する。そのため、伝導体における電界が100−300V/mに限られる場合でも、より短い長さの抵抗短絡電流制限器とすることは経済的により魅力的である。制限される抵抗は、臨界温度上で超伝導される材料により決定される(表1参照)。抵抗を数百msまでのより長い時間保持する場合には、伝導体温度は急速に数百℃に上昇することに注意すべきである。そのため、少なくとも、300−400ms後通常の電気スイッチでFCL装置を電力線から閉ざさなければならない。FCL機能で重要なことは、電気的負荷を伝導体の全長にわたりシンメトリになるように均一に分配するようにすることである。さらに、急冷後の伝導体の最高温度は全超伝導体の容量に対してより低い制限を与える。
【0030】
本考案における重要な目的は、HTS上にCuNi層を電着させることにより伝導体の均一性を改善することである。この方法では、伝導体におけるホットスポットの生成確立を低下させて、FCL装置の電流負荷をより高め、制限短絡電流と実際の短絡電流及び通常の電流の間により良好な比率を与えることが出来る。
【0031】
本考案のさらに別の目的は、HTS上にCuNi層を電着させることにより、HTS電流リードにより良好な安定性を与えることである。超伝導電流リードは、室温から低温にいたるまで、コールドボックスへの熱移動なしに高い水準の直流または交流電流を移送するために用いられる。これにより、超伝導体は金属に対するヴィーデマン・フランツの法則に従うことなく、(金属の)電気伝導性が常に熱伝導度と対になるようにして利用されるので、超伝導体は最小限の熱で(高)電流を移送することができる。
【0032】
電流リードにおける電気的シャントの設計機能は、いくつかの特許出願や公報(DE4430408A1、DE19729987C1、US5、432、297)で見ることができる。しかし、これらのシャント技術と設計はあまり正確ではない。金属シャントの品質と機能は、より低音リザーバへの好ましくない熱移動を制限するために主として熱伝導性の熱係数に依存する。(高熱伝導係数を有する)シャントとしての銀材料の場合には、AgAu/Ag合金が使用に最適であるが、これら貴金属は高価なので好ましくない。
【0033】
本考案のさらに別の目的は、安定性を向上させるためにHTS電流リード上にメッキ装置によって低い熱伝導をもったCuNi合金のガルバーニ金属メッキを施すことである。実際には、電気化学的方法によって77Kにおいて、0.1W/cm Kの熱伝導係数を有するCuNi80/20合金が電着される。銅線の半田付けをするための接点部分には、金属銅の電着を施すことが好ましい。それにより、HTS上の金属銅層は、表面のCuがHTS内のCuと相互に結合するので高い強度を示し、それに加えて、銅は超伝導セラミックの亀裂や孔に充填されるので金属層とHTS間に低い接触抵抗値(約10−7Ωcm2)を与えることができる。
【0034】
クエン酸のような電解浴組成を有する電気化学方法装置を用いて、棒状または塊状の超伝導体に銅合金を完全にコーティングすることができる。
硫酸銅CuSO4×5H2O 5−20g/l
硫酸ニッケルNiSO4×7H2O 30−100g/l
レモン酸C6H8O7×H2O 80−100g/l
塩化ナトリウムNaCl 3−5g/l
【0035】
好ましい実施の態様におけるガルバーニ装置は、定電流またはパルス電流の直流電源で操作した。特に、正負のパルス電流により電着の微妙な調節が可能である。
【0036】
他の好ましい実施の形態ではガルバーニ電池の磁界により電着層の均一性が向上した。
【0037】
シアン化アルカリ電解浴に比較して、より環境汚染性の低い電解浴を使用して、新たな高温超電導体上に銅合金のガルバーニ電着を施すことがきる。
炭酸ナトリウムNa2CO3×10H2O 20−30g/l
重硫酸ナトリウムNa2SO3×9H2O 20−30g/l
酢酸銅 20g/l
シアン化カリウムKCN 20g/l
【0038】
本考案のさらに優れた利点は、HTS表面上に真鍮またはCuNiの電着を施すことによって超伝導体の機械的安定性を向上させることができることである。これは、0.1nのシアン化銅と0.1のシアン化亜鉛の混合浴を利用して実施できる。HTS上に均一の真鍮層を理想的に電着させるための銅と亜鉛の電流電位曲線は0.1−0.3A/dm2の電流密度において互いに対し0.2Vしか離れていない。他の方法として、いわゆるガルバーニ・熱プロセスにおいて銅と亜鉛の層を別々に電着させて、その後300から600℃の間の温度で合金化する方法がある。
【0039】
同様にして、HTS表面上にCu/CuNiのハイブリッド層を電着させて、超伝導体の機械的安定性を改善することができる。
【0040】
安定化効果は、HTS材料内に銅及びニッケル原子または片が浸透することにより得られる(銅は極めて小さい原子を持つ−銅の浸透力は高い)。本考案による電気メッキ装置の利点は、HTS材料が半田付け可能で高い強度を有することである。従って、超伝導体は図4に示されるようにモジュール方式で容易に組み立て可能である。シングル・モジュール8は、より長い長さに連結され、半田付けされる。部材組み立ての重要な特徴は銅及び銅合金層10を高温超電導体表面上に電着させ、半田付け工程下で機械的及び化学的安定性を得ることができることである。
【図面の簡単な説明】
【図1】HTSのための電気メッキ装置を概略図である。
【図2】短絡電流を制限するための、蛇行状のコーティングされた超伝導体の概略図である。
【図3】臨界電流密度Jcの関数としての超伝導FCLの計算による臨界急冷時間を示している。
【図4】表面金属層による継ぎ合わされた超伝導体の概略図である。
【符号の説明】
1 陽極
2 陰極
3 直流電流源
4 硫酸電解浴
5 磁気装置
6 磁場
7 高温超電導体(HTS)モジュール
8 超伝導体
9 銅合金
10 半田
【考案の属する技術分野】
本考案は、銅−酸素構造を有する高温超伝導体(HTS)の表面に金属コーティングするための電気メッキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高温超伝導体(HTS)は、その極めて優れた技術的特性に基づいて、エネルギ技術における電気的装置として使用されている。高温超伝導体は、Bi2Sr2CaCu2O8+x(Bi2212)ないしBi2Sr2Ca2Cu3O10+y(Bi2223)または123系のREBa2Cu3O7− δ(RE=Y、Nd、Sm、Yb)、特にY1Ba2Cu3O7− δ(Y123)等の化学的組成物である。技術的用途のための化合物は、電気的または熱的な接点、電気的または熱的シャントあるいは不働態化および安定化を目的とする表面層を必要とする。Y123超伝導体は、優れた物理的特性を有しているが、これまで長い導電体を形成することに成功していない。それに対してBi超伝導体は、すでにkm単位のものが生産されている。銀マトリックスは、Biワイヤにとって不可欠であるとされるが、しかしながらこの銀マトリックスは、電流供給や短絡電流制限器(FCL)への直接的な使用といったある種の応用の妨げになっている。銀の高い電気的および熱的な伝導性は、望まれる低い熱伝導性を増大させる(電流供給)。電気的な短絡を効果的に抑制するためには、できるだけ高い抵抗を迅速に構築することが必要とされるが、銀マトリックスは迅速な抑制作用を妨げる。可能性のある代案としては、AgAu/Ag系ないしはAg/AgMg系の合金であって、それらはBiHTSと組合わせることにより、金属Agに比較してより低い電気的伝導性と、小さい熱伝導性係数を有する。この型の伝導体の欠点は、銀マトリックスの使用により高いコストを要することである。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
特許公報DE−C2−4220925には、HTS材料上に電気的な接点を形成するための粉末冶金方法が開示されており、同方法においては接点はコールドアイソスタティックでプレスされて、次に焼結される。プレスすべき粉末としては、HTS−材料または非超伝導前駆物質が使用される。さらに、DE−A1−4418050によれば、超伝導中空円筒を用いて短絡電流を誘導的に制御する方法が知られており、同方法においては、局所的な過熱、いわゆる「ホットスポット」が、77Kにおいて固有抵抗>1μΩcm2を有する金属層、特に鉛、アンチモン、インジウム、ビスマス、鋼、錫、亜鉛あるいはそれらの合金からなる金属導体によって克服される。上記においては、電流制限回路内で電流を抑制するために補強された金属シャントで包まれたHTSチューブが記載されている。前記シャントの物理的なキーポイントは、金属層とセラミック超伝導体間の電気的接触の質である.大部分の金属と合金は,新しい超伝導体(ビスマスを除く)の組成要素ではないので、強力な結合が得られないからである。これらの金属は,酸化されやすく、金属−HTS化合物の安定性に好ましくない影響を与え、長期的には劣化を生じる。Bi2212HTSと、金属導体、好ましくはAg、Au、Ru、Os、Rh、Ir、PdまたはPtのような貴金属との組合わせは、DE−A1−4124980に記載されている。Bi2212チューブは、DE−OS3830092に従っていわゆる溶融鋳造方法で成形される。成形の間に金属ワイヤ、たとえば銀ワイヤは全長にわたって、あるいは両端部において包含される。前記ワイヤは超伝導体を安定化するとともに両エンドギャップからの電流リード機能を果たすが、この現場的方法は、コストが高く、超伝導体の均質な組織を損なう可能性がある。さらに超伝導ではない異相の発生が、870℃の温度において生じる可能性がある。
【0004】
従って本考案は、銅−酸素基本構造を有する高温超電導体の表面に金属をコーティングするための金属メッキ装置を提供することを重要な課題とする。本考案によって開示されるメッキ装置の利点は、低い電気的及び熱的伝導抵抗性を有し、金属層の安定した電気接点を安価で容易に作成できることを主な利点とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案によれば、金属製陽極と、高温超伝導体(HTS)の陰極と、一定またはパルス状の電流を供給する直流電源と、前記金属製陽極とHTS陰極間に電気化学材料を移送するための電解浴手段と、及び、電気化学的相互作用に影響を与える付加的磁石及び超音波源によって構成され、銅−酸素基本構造を有する高温超伝導体(HTS)上、特に化学量論的または非化学量論的な組成のRE123超伝導体(RE=Y、Nd、Sm、Yb)とビスマスHTS上に金属銅を被着させて、低い電気的および/または熱的な接触抵抗値を持つ金属層を形成し、HTSと金属層の間に、金属層の銅と銅−酸素基本HTS構造間の独特の結合作用により安定したメタライゼーションを得ることを特徴とする高温超伝導体に金属コーティングするための電気メッキ装置が提供される。
【0006】
なお、本考案の好ましい構成によれば、前記HTS表面の銅は全体にメッキされるか、又は表面にマスキングを施すことにより銅組織が部分的に電着される。また、電気メッキが、硫酸銅浴内により行われ、該硫酸銅浴が超音波によって励起され、それによって銅層の硬度が増加し、かつ深さ選択性が減少するように構成することもできる。さらに、前記陽極は銅合金で形成され、前記電解浴は合金成分に適合し、金属合金がメッキされる。銅合金が、銅ニッケル化合物の形でメッキされる。また、銅合金を、銅亜鉛化合物とすることもできる。ガルバーニ電池が、永久磁場および/または交番磁場と組み合わされる。
【0007】
さらに、改良された電着界面として作用する銅合金のガルバーニ層を設け、さらにガルバーニ金属層、特に貴金属から選ばれた、銀、金、白金、イリジウム、ルテニウム、レニウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、並びにニッケル、クロム、モリブデンおよびバナジウムがメッキされるように構成することもできる。ガルバーニ電池がメッキされた金属層を形成し、これらの層は化学的および/または熱的な処理で反応させることにより、安定的な酸化物を形成する。銅/銅合金の熱処理は、約80−100℃の温度において行われてCu2Oの形態の安定した酸化物が形成される。
【0008】
【考案の実施の形態】
以下に、高温超伝導体表面に銅ないし銅合金からなる金属層を電着するための本考案に基づく電気メッキ装置を図面を参照しながら詳細に説明する。請求項1に示されるこの形式の電着の主な利点は、全ての新規のHTS材料の化学的及び構造的担体としての銅元素の特異で独特な特性による。銅または銅合金層の物理的及び化学的親和性と表面及び境界面とHTS間の構造によって、本考案では強力な金属−HTS化合物が、特に長期間にわたって得られる。本考案のメッキ装置は、電気的及び熱的及び光学的接点を形成する手段としてHTS上に金属層を電着する方法を提供するものである。例えば、真空法などのような他の層形成法ないしはコーティング法は全て大規模な装置の利用あるいは高コストで時間を浪費の招くという大きな欠点がある。本考案に開示される電着技術は実施が容易で迅速かつ経済的である。
【0009】
驚くべきことは、ガルバーニ及び電気化学的メッキが、セラミック超伝導体に実施可能であることである。電気メッキには、室温において材料上で失われることのない電気伝導性が要求される。この新規の超伝導体への実際の利用に、金属メッキは材料特性と利用パラメータの改善を与えることが出来る。塊状、薄膜及び厚膜状、ワイヤ及びテープ状のHTSへの銅及び銅合金を電気メッキすることは、以下の多くの利点を有する。
【0010】
(1)HTSの表面は、化学的および機械的攻撃に対してシール(不働態化)される。
(2)高い電気的負荷の下で、超伝導体の電流および電圧安定性が改良される。
(3)微細な亀裂や孔の表面からの充填により、機械的な特性(抗張力、硬度)が高められる。
(4)銅金属層は中間層としてさらなる金属層、特に銀、金、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、タングステンなどの貴金属とニッケル、クロム、レニウムおよびそれらの合金からなる層の付着および接着能力を改善する。
(5)銅金属層が低温源での超伝導体の熱力学的な結合を改善する。
(6)銅金属層がHTSの表面の粗さを改善し、光学的研磨面として用いる事の出来るほど高度な平滑さを付与する。
(7)銅金属層が接続端子を形成するためのHTSの半田付けを容易にし、HTS各部材の接続を容易にする。
(8)銅金属層の好ましい実施の形態ではHTS上のプレス接触および挟持接触が得られる。
(9)多結晶HTS上への電気めっき層は効果的なバイパス特性を有し、移動電流はHTS導体中の粒界障害物及び他の電気的障害物を迂回することが出来、それにより電気的安定性を改善する。
【0011】
ここに開示される本考案では、高温超伝導体を銅ないし銅合金によってコーティングすることは、高い電気的な負荷、特に短絡と過電圧などの変化する負荷、機械的負荷、化学的腐蝕の下での、あるいは低温障害の下での超伝導構成物や装置の安定性を実質的に改善することを示している。
【0012】
図1に示すように、陽極1と陰極2を有する電解装置は電解工程を実施するために直流電流源3によって操作される。高温超伝導体上への銅の電着は、硫酸銅浴4を使用して高い電流密度により行うことが最も効果的である。本考案の電着は、アルカリシアン化銅浴を用いても可能である。
【0013】
HTS上への銅合金のメッキは、本考案によれば、溶媒中の電解質のイオン濃度を選択することにより、個々の合金の電流電位カーブを共通の電着電位が得られるようにシフトさせる電解メカニズムを利用するものである。
【0014】
本考案の他の態様では、金属層の均質化とさらに金属層の粒子を微細化するために、メッキ装置は並行的に物理的装置と組合わせられる:
これらの技術は、
(a)電解浴の超音波処理の適用と電解浴の励起。
(b)メッキ処理中での磁場の適用。
(c)パルス電流によるメッキ(正/逆)。
この付加的な処理段階は単独でも又は組合わせても適用できる。
【0015】
本考案によれば、次の銅合金が電着される:
銅−亜鉛合金(真鍮);メッキ工程におけるCu:Zn=1:1化学量論的比率はCu:Zn=70:30の合金層が得られる。
銅−錫合金(錫ブロンズ)
銅−アルミニウム合金(アルミニウムブロンズ)
銅−ニッケル合金(モネル)
銅−ベリリウム合金(ベリリウムブロンズ−高強度)
【0016】
合金のメッキには、化学的分極を考慮しなければならず、その分極は多数の成分の電着を促進したり、最悪の場合には如何なる電着もされない場合がある。
【0017】
メッキ装置を効率よく稼動するためには、電解浴は不純物を除去し、高化学電流密度の下でHTS表面上に反応生成物が付着するのを防ぐために循環工程において連続的にまたは周期的に移動される。
【0018】
本考案の好ましい態様では、電流源は、低いHTS陰極伝導性に設けられ、電流を正方向、逆方向、または広範囲の比率でのパルス電流によるメッキを可能にしている。正電流、ゼロ、負電流間の周期比率は、0.001Hz(1000s)から1kHz(1ms)の範囲で変更可能である。パルス電流によるメッキにより、より迅速な電着を可能にする実質的に高い電流密度値が適用できる。その結果メッキ層は微細粒子となりかつ機械的に安定する。
【0019】
他の好ましい態様においては、陽極および/または陰極の近傍に磁気装置5によって磁場6が生じる。その結果もたらされるローレンツ力は、
F=Cu2+/Me2+(v×B)
であり、ここでvは負荷されるイオンの速度で、Bは磁束密度である。このローレンツ力は、触媒浴の流動とともに、均質で微粒子のめっき層構造のためのより良好な状態をもたらす。
【0020】
表1に、銅合金と高温超伝導体の電気的特性を総括する。
表1:異なる温度下での銅合金とBiおよびY123HTSの比電気抵抗値ρの比較
【表1】
【0021】
本考案の更に他の態様では、高短絡電流の場合にHTS導体の均一化と安定性を得るために、短絡電流制限器(FCL)内に、銅ニッケル合金からなるシャント(迂回回路)を設けることができる。CuNi層はほぼ温度に無関係に比電気抵抗を与え、超伝導状態において電流はほとんど流れず、超伝導体を抵抗状態(短絡電量により生じる)に切替えたときに、一時的な高電流は、ホット・スポットないしは弱いHTS導体部分を迂回して隣接する金属層を流れる。このシャントにより超伝導体は保護される。
【0022】
HTS表面上へのCuNiの電着は、銅リン酸溶液またはアルカリシアン化銅溶液を使用することにより行われる。HTS上に50%までのNiの電着を行うための銅ニッケルメッキ工程浴は触媒組成を有する。
銅ピロリン酸塩 Cu2P2O7 5−10g/l
塩化ニッケル NiCl2×6H2O 40−90g/l
カリウムまたはナトリウムピロリン酸塩
(K/Na)4P2O7×10H2O 300−400g/l
【0023】
図2は、エネルギ供給設備内で短絡電流を迅速に制限するための、銅ニッケル表面電着層を有するYBCO−HTSメアンダーモヂュール7の可能な形状を示している。
【0024】
効果的に短絡電流を制限するために重要なことは、通常電流を大きな損失なく移送することが出来る断面8を有する長尺の超伝導体を用いることである。実質的に臨界電流密度よりも高い電流の急速な増加を伴った短絡電流の場合に、超伝導体は1ms以下という極めて僅かな時間で抵抗状態に切替わリ電流を制限する。この制限方法の利点は、(電気装置による)トリガー・シグナルを必要としないことである。抵抗状態への切リ替えは、短絡電流自体により生じる。この性質のために、FCL装置は新しい超伝導体に有効に使用することができる。
【0025】
この抵抗FCL型の移行状態において、制御過程ではごく短時間のジュール熱を超伝導体中に発生する。従って、FCLの設計と組み立ては、電流や電圧などの電気的パラメータに従って計算される。両パラメータによって、超伝導体の長さ1当たりの金属シャントが無い場合の必要抑制抵抗(R1)と金属シャントがある場合の必要抑制抵抗(R1 B)が定められる。
R1=ρ1/A 金属シャント無し
R1 B=(ρSC+ρm)l/(ASC+Am) 金属シャント有り
ρSCとρmは比電気抵抗値で、ASCとAmは、それぞれ超伝導体及び金属シャントの導体断面パラメータである。
【0026】
上記の操作は、全ての形式の抵抗超伝導体制限器について一般的である。技術的な装置のデザインと操作についてのキーポイントは、いわゆる「ホットスポット」を取り除くことである。超伝導体と高抵抗金属銅合金層9、好ましくはCuNi層短絡電流制限機能における超伝導材料の均一性と安定性を改善する。表1によれば、急冷直後の短絡電流の場合には、HTSの比抵抗は、金属層の比抵抗よりも実質的に大きく、電流は金属を通して流れるので超伝導体は保護される。FCL装置は、約2000アンペア程の通常電流を流すようにデザインされる。短絡電流の場合には、電流は急速に通常値の何倍にも増大する。同時に、約10kA/cm2の臨界移送電流密度と6×8mm2=0.48cm2の断面を持った超伝導体では、約5kAに短絡電流は制限される。
【0027】
10kVの電力供給では、約77mの長さの伝導体が得られるよう約16個の4.8mの長さの制御YBCOモジュールが必要である。
【0028】
FCL装置の制限状況は,図3によれば超伝導体の臨界電流密度Jc、超伝導体−金属の組合わせのデザイン(断面の比)及び伝導体の全長に依存する。効果的に制限するためには、1msの切替え時間定数を必要とする。図3の計算によれば、溶融組織を持ったYBCO材料パラメータ(電気的及び熱的係数)を含んで、約1msの切替え時間を得るためには、約4kA/cm2臨界電流密度が必要である。もしこの時間定数が例えば5msのように長くなると、HTS抵抗はさらにゆっくりと展開するので制限はより高い電流に相当する移行過程後に始まる。
【0029】
基本的に、いわゆる「磁束(フラックス)流」抵抗による短絡電流の場合には、非常に長い伝導体が電流制限効果を有する。この制限は、短絡電流制限器の「オーム」抵抗制限において約100V/mの電界であるのに対比して、電界が1−10V/mの範囲であることに基づくものである。10kVの電力網の磁束流の場合においては、低い電界のために、導電体の長さを1000m以上にしなければならない。消費されるエネルギーExJは小さいが、導電体の長さが長いので装置の費用が増大する。そのため、伝導体における電界が100−300V/mに限られる場合でも、より短い長さの抵抗短絡電流制限器とすることは経済的により魅力的である。制限される抵抗は、臨界温度上で超伝導される材料により決定される(表1参照)。抵抗を数百msまでのより長い時間保持する場合には、伝導体温度は急速に数百℃に上昇することに注意すべきである。そのため、少なくとも、300−400ms後通常の電気スイッチでFCL装置を電力線から閉ざさなければならない。FCL機能で重要なことは、電気的負荷を伝導体の全長にわたりシンメトリになるように均一に分配するようにすることである。さらに、急冷後の伝導体の最高温度は全超伝導体の容量に対してより低い制限を与える。
【0030】
本考案における重要な目的は、HTS上にCuNi層を電着させることにより伝導体の均一性を改善することである。この方法では、伝導体におけるホットスポットの生成確立を低下させて、FCL装置の電流負荷をより高め、制限短絡電流と実際の短絡電流及び通常の電流の間により良好な比率を与えることが出来る。
【0031】
本考案のさらに別の目的は、HTS上にCuNi層を電着させることにより、HTS電流リードにより良好な安定性を与えることである。超伝導電流リードは、室温から低温にいたるまで、コールドボックスへの熱移動なしに高い水準の直流または交流電流を移送するために用いられる。これにより、超伝導体は金属に対するヴィーデマン・フランツの法則に従うことなく、(金属の)電気伝導性が常に熱伝導度と対になるようにして利用されるので、超伝導体は最小限の熱で(高)電流を移送することができる。
【0032】
電流リードにおける電気的シャントの設計機能は、いくつかの特許出願や公報(DE4430408A1、DE19729987C1、US5、432、297)で見ることができる。しかし、これらのシャント技術と設計はあまり正確ではない。金属シャントの品質と機能は、より低音リザーバへの好ましくない熱移動を制限するために主として熱伝導性の熱係数に依存する。(高熱伝導係数を有する)シャントとしての銀材料の場合には、AgAu/Ag合金が使用に最適であるが、これら貴金属は高価なので好ましくない。
【0033】
本考案のさらに別の目的は、安定性を向上させるためにHTS電流リード上にメッキ装置によって低い熱伝導をもったCuNi合金のガルバーニ金属メッキを施すことである。実際には、電気化学的方法によって77Kにおいて、0.1W/cm Kの熱伝導係数を有するCuNi80/20合金が電着される。銅線の半田付けをするための接点部分には、金属銅の電着を施すことが好ましい。それにより、HTS上の金属銅層は、表面のCuがHTS内のCuと相互に結合するので高い強度を示し、それに加えて、銅は超伝導セラミックの亀裂や孔に充填されるので金属層とHTS間に低い接触抵抗値(約10−7Ωcm2)を与えることができる。
【0034】
クエン酸のような電解浴組成を有する電気化学方法装置を用いて、棒状または塊状の超伝導体に銅合金を完全にコーティングすることができる。
硫酸銅CuSO4×5H2O 5−20g/l
硫酸ニッケルNiSO4×7H2O 30−100g/l
レモン酸C6H8O7×H2O 80−100g/l
塩化ナトリウムNaCl 3−5g/l
【0035】
好ましい実施の態様におけるガルバーニ装置は、定電流またはパルス電流の直流電源で操作した。特に、正負のパルス電流により電着の微妙な調節が可能である。
【0036】
他の好ましい実施の形態ではガルバーニ電池の磁界により電着層の均一性が向上した。
【0037】
シアン化アルカリ電解浴に比較して、より環境汚染性の低い電解浴を使用して、新たな高温超電導体上に銅合金のガルバーニ電着を施すことがきる。
炭酸ナトリウムNa2CO3×10H2O 20−30g/l
重硫酸ナトリウムNa2SO3×9H2O 20−30g/l
酢酸銅 20g/l
シアン化カリウムKCN 20g/l
【0038】
本考案のさらに優れた利点は、HTS表面上に真鍮またはCuNiの電着を施すことによって超伝導体の機械的安定性を向上させることができることである。これは、0.1nのシアン化銅と0.1のシアン化亜鉛の混合浴を利用して実施できる。HTS上に均一の真鍮層を理想的に電着させるための銅と亜鉛の電流電位曲線は0.1−0.3A/dm2の電流密度において互いに対し0.2Vしか離れていない。他の方法として、いわゆるガルバーニ・熱プロセスにおいて銅と亜鉛の層を別々に電着させて、その後300から600℃の間の温度で合金化する方法がある。
【0039】
同様にして、HTS表面上にCu/CuNiのハイブリッド層を電着させて、超伝導体の機械的安定性を改善することができる。
【0040】
安定化効果は、HTS材料内に銅及びニッケル原子または片が浸透することにより得られる(銅は極めて小さい原子を持つ−銅の浸透力は高い)。本考案による電気メッキ装置の利点は、HTS材料が半田付け可能で高い強度を有することである。従って、超伝導体は図4に示されるようにモジュール方式で容易に組み立て可能である。シングル・モジュール8は、より長い長さに連結され、半田付けされる。部材組み立ての重要な特徴は銅及び銅合金層10を高温超電導体表面上に電着させ、半田付け工程下で機械的及び化学的安定性を得ることができることである。
【図面の簡単な説明】
【図1】HTSのための電気メッキ装置を概略図である。
【図2】短絡電流を制限するための、蛇行状のコーティングされた超伝導体の概略図である。
【図3】臨界電流密度Jcの関数としての超伝導FCLの計算による臨界急冷時間を示している。
【図4】表面金属層による継ぎ合わされた超伝導体の概略図である。
【符号の説明】
1 陽極
2 陰極
3 直流電流源
4 硫酸電解浴
5 磁気装置
6 磁場
7 高温超電導体(HTS)モジュール
8 超伝導体
9 銅合金
10 半田
Claims (10)
- 金属製陽極と、
高温超伝導体(HTS)の陰極と、
一定またはパルス状の電流を供給する直流電源と、
前記金属製陽極とHTS陰極間に電気化学材料を移送するための電解浴手段と、及び、
電気化学的相互作用に影響を与える付加的磁石及び超音波源によって構成され、
銅−酸素基本構造を有する高温超伝導体(HTS)上、特に化学量論的または非化学量論的な組成のRE123超伝導体(RE=Y、Nd、Sm、Yb)とビスマスHTS上に金属銅を被着させて、低い電気的および/または熱的な接触抵抗値を持つ金属層を形成し、HTSと金属層の間に、金属層の銅と銅−酸素基本HTS構造間の独特の結合作用により安定したメタライゼーションを得ることを特徴とする高温超伝導体に金属コーティングするための電気メッキ装置。 - 前記HTS表面の銅は全体にメッキされるか、又は表面にマスキングを施すことにより銅組織が部分的に電着される請求項1に記載の電気メッキ装置。
- 電気メッキが、硫酸銅浴内により行われ、該硫酸銅浴が超音波によって励起され、それによって銅層の硬度が増加し、かつ深さ選択性が減少する請求項1に記載の電気メッキ装置。
- 前記陽極は銅合金で形成され、前記電解浴は合金成分に適合し、金属合金がメッキされる請求項1に記載の電気メッキ装置。
- 銅合金が、銅ニッケル化合物の形でメッキされる請求項1または請求項4に記載の電気メッキ装置。
- 銅合金が、銅亜鉛化合物である請求項1または請求項4に記載の電気メッキ装置。
- ガルバーニ電池が、永久磁場および/または交番磁場と組み合わされる請求項1に記載の電気メッキ装置。
- 改良された電着界面として作用する銅合金のガルバーニ層を設け、さらにガルバーニ金属層、特に貴金属から選ばれた、銀、金、白金、イリジウム、ルテニウム、レニウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、並びにニッケル、クロム、モリブデンおよびバナジウムがメッキされる請求項1に記載の電気メッキ装置。
- ガルバーニ電池がメッキされた金属層を形成し、これらの層は化学的および/または熱的な処理で反応させることにより、安定的な酸化物を形成する請求項1に記載の電気メッキ装置。
- 銅/銅合金の熱処理は、約80−100℃の温度において行われてCu2Oの形態の安定した酸化物を形成する請求項1または請求項9に記載の電気メッキ装置。
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