JP5272449B2 - 探針の製造方法 - Google Patents
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本件の発明者は、極めてデリケートな作業である電解研磨を複数回行うことなく、高い精度で所期の尖端な探針(プローブ針)を得るべく種々の実験を重ね、鋭意検討した結果、電解研磨を行う前に、プローブ針の母材となる線状部材の状態において、その結晶性及び表面の清浄度が特に重要であることに想到した。
以下、本件を適用した具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態によるプローブ針の製造方法を工程順に示すフロー図である。
ステップS2は、以下のステップS11〜S13により構成される。
先ず、W線1を純水内に浸漬させて超音波を印加し、その表面を洗浄する(ステップS11)。
詳細には、耐酸化性の雰囲気、例えば窒素(N2)などの不活性ガス雰囲気内において、電流制御部12による電流制御により、W線1に例えば0.8A以上1.0A以下、好ましくは0.8A以上0.9A以下の範囲内の直流電流を例えば0.5秒以上3秒以下程度印加する。本実施形態では例えば、直流電流を0.85Aで1秒間の条件により、当該通電工程を実行する。また、N2雰囲気に代わり、水素(H2)雰囲気内、HeやAr等の不活性ガス等の耐酸化性の雰囲気内で当該通電工程を行うようにしても良い。
この通電により、W線1の結晶性が整えられるとともに、W線1の表面に付着していた塵芥等の微細な異物が除去され、表面が清浄化される。このステップS12については、その実験結果について後述する。
プローブ針の母材となる線状部材として例えばタングステン(W)線10を用意する。W線10としては例えば長さが50cm程度、直径が0.05mm程度のものが好適である。W線1と同様に、線状部材としてはWに限定されるものではない。
この通電により、W線10の結晶性を整えられるとともに、W線10の表面に付着していた塵芥等の微細な異物が除去され、表面が清浄化される。
以下、W線10には、W線1と同様に後述する各ステップS3〜S5が施される。
詳細には、図6に示すように、W線1をその中央部位で切断し、それぞれ一端に鋼管2が設けられた長さ2mm程度の一組のW線1aとする。
なお、W線10の場合には、W線10から所期の長さ(2mm〜3mm程度)の各W線を切り出し、図6と同様に、各W線の一端に基材として例えば鋼管2を取り付ける。
詳細には、W線1aの先端から例えば2mm程度までKOH水溶液に浸漬させた状態として、鋼管2の一端からW線1aに交流電源15から交流電圧を印加する。印加する交流電圧としては、周波数が180Hz以上250Hz以下、振幅が4V以上5V以下、電圧オフセットが0V又は1Vの範囲内の各条件とする。本実施形態では例えば、周波数が200Hz、振幅が4V、オフセット電圧が0V又は1V(ここでは1V)の各条件により、当該電解研磨工程を1回実行する。
このステップS5については、その実験結果について後述する。
以下、上記したステップS12の実験結果について説明する。
この実験は、ステップS12の通電工程について、両端に鋼管2が取り付けられたW線1に、0.72A〜1.0Aの範囲内で1秒間、直流電流の通電を行い、通電後のW線1の表面状態、ここではサンプル1〜8の表面状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するものである。
先ず、通電工程を施さない未処理のサンプルでは、W線1の表面には微細な異物が付着しており、Wの結晶状態は不良である。
この実験結果において、サンプル1〜4では、W線1の表面には未だ微細な異物が付着していた。また、Wの結晶状態は良好であるとは言えない。これに対してサンプル5〜8では、W線1の表面には微細な異物の残存が見られず、Wの結晶状態は極めて良好であった。ここで、サンプル8の条件である1.0Aの通電では、W線1の表面には微細な異物の残存が見られないが、後の実験結果でごくまれにWの結晶状態が良いとは言えない場合が見られた。
このように、電解研磨工程の前処理として、当該範囲内の電流をW線1へ通電することにより、W線1の結晶性が整えられるとともに、W線1の表面に付着していた塵芥等の微細な異物が除去され、表面が清浄化されることが確認された。
以下、上記したステップS5の実験結果について説明する。
先ず始めに、当該電解研磨工程において、W線1aに印加する交流電圧の周波数、振幅、電圧オフセットのそれぞれの貢献について調べた。なお、交流電圧の周波数、振幅、電圧オフセットは図9のように定義される。
このように、周波数のみで見た場合、周波数が高い方が先端径の小さいプローブ針が形成される。
このように、振幅のみで見た場合、振幅が小さい方が先端径の小さいプローブ針が形成される。
このように、電圧オフセットのみで見た場合、電圧オフセットの変化はプローブ針の先端径に殆ど影響を与えない。なお、電圧オフセットを高く設定すると、電解研磨時に泡が発生しなくなる。
この実験結果から判るように、印加する交流電圧の振幅が2Vの場合には、電解研磨によるW線1aの先端部分のエッチングにバラツキが生じている。振幅を小さく設定すると、エッチング時間が長くなり、これに起因してバラツキが発生するものと思われる。これに対して、振幅が4Vの場合には、電解研磨におけるエッチングのバラツキは殆ど見られない。なお実験結果は示さないが、振幅が5V程度まではエッチングのバラツキがない結果が得られるが、5Vを超える値、例えば6V以上となると、逆にエッチング時間が短くなり過ぎ、先端径の小さいプローブ針が作製できない。従って、当該電解研磨における交流電圧の振幅の訂正範囲は、4V以上5V以下であると結論付けることができる。
以上から、当該電解研磨工程における印加交流電圧は、周波数が180Hz以上250Hz以下、振幅が4V以上5V以下の範囲内が適正範囲であることが判る。なお、電圧オフセットは0V又は1Vであるが、例えば0V〜2Vであれば特に問題はない。
本実施形態で得られたプローブ針の具体的形態について、従来技術で作製された比較例のプローブ針との比較に基づき、以下で説明する。
本実施形態によるプローブ針は、上記したように、通電工程を0.85Aで1秒間行うとともに、周波数が200Hz、振幅が4V、電圧オフセットが1Vとして、1回の電解研磨を行った。
比較例によるプローブ針21では、先端が尖った先細り形状の先端部分21aの縦断面を見た場合に、側面に沿った線が直線状となっている。
これに対して本実施形態によるプローブ針22では、先端部分22aが凹湾曲状の側面を有する先細り形状、即ち、先端が尖った先細り形状の先端部分22aの縦断面を見た場合に、側面に沿った線が凹状の曲線となっている。本実施形態によるプローブ針22は、その先端部分22aが、先端径が80nm以下で且つ先端角度が20°以下であり、先端部分22aの根元部位23で比較的大きな凹湾曲状で、先端部分22aの根元部位23以外の部位では、当該根元部位23に比べて緩やかな凹湾曲状となっている。プローブ針22では、この形状とされることにより、耐久性に優れ、また電気的特性検査時の当接部位への接触状態が良好となる。
45nmテクノロジーのトランジスタでは、その配線構造のビア部(上下の配線間を接続する接続部分)の直径は80nm程度となる。
これに対して、本実施形態によるプローブ針の先端を直径80nm程度のビア部に当接させる場合、例えば図15(b)に示すように、先端径及び先端角度が比較例よりも小さく、45nmテクノロジーのトランジスタに適応した小値とされているため、プローブ針22にビア部24が隠れることなく、プローブ針22のビア部24への接触状態を十分に確認(SEM等を用いた視認)することができる。
これに対して、本実施形態による複数のプローブ針の先端を各ビア部にそれぞれ当接させる場合、例えば図16(b)に示すように、各プローブ針22の先端を適宜ビア部24に当接させることができる。従って、各ビア部24について同時に電気的特性を測定することが可能である。
2 鋼管2
11 電源
12 電流制御部
13 ワニ口クリップ
14 基台
15 交流電源
21,22 プローブ針
21a,22a 先端部分
23 根元部位
24 ビア部
Claims (4)
- 探針を製造するに際して、
前記探針の母材となる線状部材は、Wを材料とし、その直径が0.05mmであり、
前記線状部材に、0.8A以上0.9A以下の電流を0.5秒以上3秒以下の通電時間で通電する工程と、
前記通電後の前記線状部材の先端部分を電解研磨する工程と
を含むことを特徴とする探針の製造方法。 - 前記線状部材に通電する工程は、不活性ガス雰囲気中で実行されることを特徴とする請求項1に記載の探針の製造方法。
- 前記線状部材に通電する工程は、その前又は後に、前記線状部材を純水内に浸漬させて超音波を印加して洗浄する前処理工程又は後処理工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の探針の製造方法。
- 前記線状部材を電解研磨する工程において、周波数が180Hz以上250Hz以下、振幅が4V以上5V以下の条件で、前記線状部材に交流電圧を印加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の探針の製造方法。
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