次に、本発明の一実施形態に係るフィードバック制御装置1の構成について説明する。
図1に示すように、フィードバック制御装置1は、制御対象2と、PID制御器5と、制御量yの検出手段6と、制御偏差計算手段7と、制御量yの目標値y*の指示手段(不図示)と、むだ時間補償器10と、補正手段20とを具備する。
制御対象2は、アクチュエータ等で構成される。制御対象2の伝達関数は、むだ時間を含む、G(s)e―Lsとして表される。ここで、伝達関数G(s)を実モデル3として表し、伝達関数e―Lsをむだ時間4として表す。実モデル3は、一次遅れ系や、二次遅れ系等を含む。むだ時間4は、例えば、単位ステップを入力してからL秒後に応答するモデルである。sはラプラス演算子である。
PID制御器5は、制御対象2の操作量U(s)を演算する操作量計算手段である。PID制御器5には、後述する補正された制御偏差14aが入力される。PID制御器5においては、補正された制御偏差14aに比例した値(P動作)と、補正された制御偏差14aを時間積分した値(I動作)と、補正された制御偏差14aを時間微分した値(D動作)とがそれぞれ加算され、その演算値となる操作量U(s)が得られる。操作量U(s)は、むだ時間補償器10の第二出力値計算手段12と、補正手段20の操作量補正手段22とに入力される。PID制御器5は伝達関数C(s)で表される。PID制御器5の制御ゲイン(比例ゲイン)や積分ゲイン(積分時間)や微分ゲイン(微分時間)は、制御パラメータとして制御対象2の伝達関数G(s)、すなわち実モデル3に応じて適宜調整される。
検出手段6では、前記制御対象2の出力値である制御量yが検出される。前記制御対象2の出力値である制御量yは、制御偏差計算手段7と、むだ時間補償器10の第一出力値計算手段11とに入力される。
制御偏差計算手段7においては、指示手段で指示された目標値y*から制御量yが減算されて、制御偏差7aが得られる。制御偏差7aは、むだ時間補償器10の制御偏差補正手段14と、補正手段20の第五出力値計算手段21とに入力される。
むだ時間補償器10は、第一出力値計算手段11と、第二出力値計算手段12と、第三出力値計算手段13と、制御偏差補正手段14とから構成される。
第一出力値計算手段11は、前記実モデル3の逆数(逆モデル)としており、伝達関数1/Gn(s)として表し、詳細は後述する。第一出力値計算手段11においては、むだ時間4を除いた制御対象2の伝達関数の逆モデル1/Gn(s)に、制御量yが入力されて、第一出力値11aが得られる。第一出力値11aは、第二出力値計算手段12に入力される。
第二出力値計算手段12は、前記PID制御器5から出力された操作量U(s)から、前記第一出力値計算手段11の第一出力値11aが減算されて、第二出力値12aを得られる。第二出力値12aは、第三出力値計算手段13に入力される。
第三出力値計算手段13は、前記実モデル3としており、伝達関数Gn(s)として表し、詳細は後述する。第三出力値計算手段13においては、むだ時間4を除いた制御対象2の伝達関数Gn(s)に、第二出力値12aが入力されて、第三出力値13aが得られる。第三出力値13aは、制御偏差補正手段14に入力される。
制御偏差補正手段14は、前記制御偏差7aから、前記第三出力値13aが減算されて、補正された制御偏差14aが得られる。補正された制御偏差14aは、前記PID制御器5に入力される。
補正手段20は、第五出力値計算手段21と、操作量補正手段22と、から構成される。
第五出力値計算手段21は、入力値に比例した値を出力する比例要素で構成される。制御ゲイン(比例ゲイン)はKdistとされる。第五出力値計算手段21においては、前記制御偏差7aにKdistが乗算されて、第五出力値21aが得られる。第五出力値21aは、操作量補正手段22に入力される。
操作量補正手段22においては、前記PID制御器5から出力される操作量U(s)に、前記第五出力値21aが加算されて、補正された操作量22aが得られる。補正された操作量22aは、制御対象2に入力される。
以上の構成により、フィードバック制御装置1は、次のフィードバック制御方法を用いてフィードバック制御を行う。すなわち、図2に示すように、フィードバック制御装置1は、むだ時間を含む制御対象2の制御量yをむだ時間4を除いた前記制御対象の伝達関数の逆モデル1/Gn(s)に入力して、第一出力値11aを演算し(S1)、この第一出力値11aを前記制御対象2の操作量U(s)から減算して、第二出力値12aを演算し(S2)、この第二出力値12aをむだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数Gn(s)に入力して、第三出力値13aを演算し(S3)、この第三出力値13aを制御偏差から減算して、補正された制御偏差14aを演算する(S4)。そして、フィードバック制御装置1は、補正された制御偏差14aに基づいてフィードバック制御を行うのである(S5)。
また、フィードバック制御装置1は、図3(a)に示す構成としてもよい。
すなわち、フィードバック制御装置1のむだ時間補償器10は同じ構成として、補正手段22の第五出力値計算手段21は、積分制御器とされる。積分制御器の制御ゲイン(積分ゲイン)はIdistとされる。前記制御偏差7aがIdistに対応した時間だけ積分されて第五出力値21aが得られる。第五出力値21aは、操作量補正手段22に入力される。
また、フィードバック制御装置1は、図3(b)に示す構成としてもよい。
すなわち、フィードバック制御装置1は、補正手段20の代わりに、第四出力値計算手段15を具備する。
第四出力値計算手段15は、特定の周波数成分のみを通過させるフィルタ、詳細には、設定した周波数以上の周波数成分のみを通過させるハイパスフィルタとしており、伝達関数F(s)として表す。第四出力値計算手段15においては、伝達関数F(s)に、第三出力値計算手段13から出力される第三出力値13aが入力されて、第四出力値15aが得られる。第四出力値15aは、制御偏差補正手段14に入力される。
制御偏差補正手段14においては、前記制御偏差7aから、前記第四出力値15aが減算されて、補正された制御偏差14aが得られる。補正された制御偏差14aは、PID制御器5に入力される。
PID制御器5においては、補正された制御偏差14aから操作量U(s)が得られる。操作量U(s)は、前記制御対象2と、むだ時間補償器10の第二出力値計算手段12とに入力される。
以上の構成により、フィードバック制御装置1は、次のフィードバック制御方法を用いてフィードバック制御を行う。すなわち、図4に示すように、フィードバック制御装置1は、むだ時間4を含む制御対象2の制御量yをむだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数の逆モデル1/Gn(s)に入力して、第一出力値11aを演算し(S11)、この第一出力値11aを前記制御対象2の操作量U(s)から減算して、第二出力値12aを演算し(S12)、この第二出力値12aをむだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数Gn(s)に入力して、第三出力値13aを演算し(S13)、この第三出力値13aを伝達関数F(s)に入力して、第四出力値15aを演算し(S14)、この第四出力値15aを制御偏差7aから減算して、補正された制御偏差14aを演算する(S15)。そして、フィードバック制御装置1は、補正された制御偏差14aに基づいてフィードバック制御を行うのである(S16)。
次に、むだ時間補償器10と、補正手段20を前述の構成とした根拠を、図5から図9を用いて説明する。
smithのむだ時間補償器63(図15)では、むだ時間を制御パラメータ(詳細には定数L)とするため、制御対象61のむだ時間の定数Lと、制御対象61のモデル化によるむだ時間推定値の定数Lnとの間に誤差が生じると、制御が不安定となる。そこで、制御対象61のむだ時間を外乱として扱い、外乱オブザーバで外乱を補償することにより、制御対象61のむだ時間を補償する。
図5(a)において、むだ時間の伝達関数e―Lsを含む制御対象61の実モデル65を伝達関数G(s)として、PID制御器62によりフィードバック制御を行うものとする。ここで、制御対象61のむだ時間の伝達関数e―Lsを外乱dとして、図5(a)を等価変換すると図5(b)のように表すことができる。外乱dの信号は以下の数1で表される。
次に、前記外乱dを補償するため、外乱オブザーバにより外乱dを推定する。
図6(a)に示すように、伝達関数e―Lsを含まない制御対象61の実モデル65の逆モデル(逆モデル推定値67と呼ぶ)を形成して、この逆モデル推定値67に制御量yを入力する。この時、逆モデル推定値67は、伝達関数1/Gn(s)で表される。そして、制御量yは、以下の数2で表される。
ここで、PID制御器62の出力である操作量U(s)から、前記逆モデル推定値67に制御量yを入力し、その出力(演算値)を減算した値は、以下の数3で表される。
ここで、G(s)とGn(s)が等しく、モデルに誤差がないとするならば、G(s)=Gn(s)となり、数3は、以下の数4で表される。
すなわち、数4は数1と等しくなるので、数4の計算値を求めることで、外乱dの推定値を求めることができる。
次に、図6(b)に示すように、伝達関数e―Lsを含まない制御対象61のモデル(実モデル推定値68と呼ぶ)を形成して、この実モデル推定値68に推定した外乱dを入力する。このとき、実モデル推定値68は、伝達関数Gn(s)で表される。そして、この実モデル推定値68の出力に制御量yを足し合わせると、演算値は以下の数5で表される。
ここで、G(s)とGn(s)が等しく、モデルに誤差がないとするならば、G(s)=Gn(s)となり、数5は、以下の数6で表される。
数6の演算値(フィードバック値69)は、むだ時間の伝達関数e−Lsを除いた制御対象61の伝達関数G(s)、即ち実モデル65に操作量U(s)を入力したときの出力であり、むだ時間の影響を取り除いた制御量yを意味する。言い換えれば、外乱オブザーバによって制御パラメータにむだ時間を用いることなく、フィードバックループ(フィードバック値69)からむだ時間を追い出せたこととなる。従って、むだ時間に関係なくPID制御器62の制御ゲイン(フィードバックゲイン)を大きくできるため、制御の応答性を良くすることができる。
また、制御対象のむだ時間に変化が生じて、推定したむだ時間の誤差が増大(L1からL4になるにつれて誤差が増大)した場合には、smithのむだ時間補償では、制御量yが発散してシステムが不安定となるが(図7(a)参照)、外乱オブザーバによるむだ時間補償では、むだ時間の影響を外乱として検出するので、あらゆるむだ時間に対応でき、制御量yが発散せず、システムが不安定とならない(図7(b)参照)。
このように、フィードバック制御でのむだ時間補償は、むだ時間を取り除くのではなく、むだ時間をフィードバックループの外に追い出して、制御ゲインを増大させることで、制御性能を向上させることとしている。
次に、モデルの誤差による影響について検討する。前述のように、外乱オブザーバによるむだ時間補償は、制御対象61のむだ時間の伝達関数e−Lsを含まない実モデル65、即ちG(s)を制御パラメータとして用いる。モデルに誤差があれば、つまりG(s)≠Gn(s)であれば、数6は、以下の数7で表される。
すなわち、制御対象の実モデル65に基づいたフィードフォワード制御を行うのと等価であり、制御量yにモデルの誤差分の定常偏差などが発生する。
このモデルの誤差の影響を補償する要素を図6(b)に追加すると図8(a)のようになる。つまり、外乱オブザーバによる補償要素を、目標値y*と制御量yとの偏差を求めた後に減算して、モデルの誤差の影響を制御偏差として求められる形とする。そして、その制御偏差と比例制御器70における制御ゲインKdistの積をモデルの誤差の補償要素として、PID制御器62の出力である操作量U(s)に加算する(補正手段20)。このように構成することで、モデルの誤差による制御量yの定常偏差を抑えることができる。
尚、前記比例制御器70は、制御対象の特性により積分制御器としてもよく、PI制御器(比例積分制御器)としてもよい。
また、図8(b)のように構成して、モデルの誤差の影響を補償する要素を追加してもよい。つまり、実モデル推定値68の出力値を特定の周波数成分、本実施形態においては、設定した周波数以上の周波数成分のみを通過させるハイパスフィルタ71に入力させてから、制御偏差を減算する構成とする。これにより、むだ時間の影響により不安定になる高い周波数域のみでむだ時間補償を有効にし、それ以下の周波数では補償要素が無効となるので、モデルの誤差による制御量yの定常偏差を抑えることができる。
図9は、モデルの誤差による影響を示すグラフである。図9(a)は、G(s)=Gn(s)であり、モデルの誤差がない場合である。これによると目標値y*と制御量yの定常的な偏差である定常偏差は発生せず、制御量yは目標値y*に収束する。図9(b)は、G(s)≠Gn(s)であり、モデルの誤差が50%程度ある場合である。これによると定常偏差が発生する。図9(c)は、G(s)≠Gn(s)であり、モデルの誤差が50%程度ある場合に、モデルの誤差の影響を補償する要素を追加した場合である。これによると定常偏差が発生せず、制御量yは目標値y*に収束する。
次に前述の一実施形態と同様のフィードバック制御装置40を作業車両100におけるHST(Hydro Static Transmission)の斜板角度制御に適用した場合を説明する。
はじめに、図10を用いて、作業車両100の全体構成を説明する。作業車両100は、エンジン30と、フライホイール31と、エンジン制御装置32と、HST33と、差動装置34と、タイヤ36と、速度レバー37と、変化率制限手段38と、μ設定ダイヤル39と、フィードバック制御装置40とを備える。
エンジン30は、作業車両100が駆動するための回転動力を発生するものである。エンジン30のクランク軸30aは、フライホイール31と連動連結される。エンジン30の回転動力は、クランク軸30aを介してフライホイール31に伝達される。
フライホイール31は、慣性力を蓄えることによりエンジン30を滑らかに回転させるものである。フライホイール31は、クランク軸30aにより伝達される回転動力により回転する。フライホイール31の回転数は、磁気ピックアップ式のセンサや、ロータリエンコーダ等の回転数センサ31aにより検出される。
エンジン制御装置32は、エンジン30の回転数の制御を行うものである。エンジン制御装置32は、回転数センサ31aに接続される。エンジン制御装置32は、回転数センサ31aにより検出されるフライホイール31の回転数に基づいて、エンジン30の回転数の制御を行う。
HST33は、可変容量型の油圧ポンプをエンジン30により駆動させて、発生した油圧を固定容量型の油圧モータで回転力に変換する。HST33は、油圧ポンプに備えられた可動斜板33aの角度に応じて当該油圧ポンプによる作動油の吐出量や吐出方向を変化させて、油圧モータの回転数及び回転方向を調整する。これにより、油圧ポンプの入力軸33bから入力されたエンジン30の回転動力が無段階に変速されて、油圧モータの出力軸33cに出力される。油圧ポンプの入力軸33bの一端は、フライホイール31と連動連結され、エンジンの回転動力がHST33に伝達される。
差動装置34は、回転動力を分配するものである。差動装置34には、油圧モータの出力軸33cの一端が連動連結されて、HST33で変速されたエンジン30の回転動力が伝達される。当該伝達される回転動力は、差動装置34により左右に分配される。
差動装置34の左右には、車軸35の一端がそれぞれ連動連結される。車軸35は、差動装置34により分配された回転動力を伝達する。
タイヤ36には、車軸35の他端が連動連結され、車軸35から伝達される回転動力により回転する。
速度レバー37は、タイヤ速度(タイヤ36の回転数)を設定するものである。作業者は速度レバー37を操作して、タイヤ速度を調整する。
変化率制限手段38は、可動斜板33aの目標値y*を所定の変化率に制限するものである。μ設定ダイヤル39で設定されたμ(摩擦係数)の値に応じて変化率の制限値が決定される。μの値は、タイヤ36の接地面の状況に応じて適宜変更される。
可動斜板33aの目標値y*の変化率と、前記μ設定ダイヤル39で設定された変化率の制限値とを比較して、可動斜板の目標値y*が決定される。変化率制限手段38から、目標値y*が出力される。
フィードバック制御装置40は、後述するように、アクチュエータ41と、PID制御器42と、外乱オブザーバによるむだ時間補償器45と、補正手段46と、を具備する。アクチュエータ41の回転軸には、HST33の可動斜板33aが連動連結される。フィードバック制御装置40には、アクチュエータ41の回転軸の目標角度(目標値y*)が入力され、アクチュエータ41の回転軸の角度(制御量y)が出力される。
このような構成において、作業者は、速度レバー37とμ設定ダイヤル39を操作することにより、変化率制限手段38からアクチュエータ41の目標値y*がフィードバック制御装置40に入力される。そして、フィードバック制御装置40から出力されるアクチュエータ41の制御量yに基づいて、HST33の油圧ポンプにおける可動斜板33aの角度が変更されて、当該油圧ポンプによる作動油の吐出量や吐出方向が変更され、エンジン30からフライホイール31を介して伝達された回転動力が変速される。変速された回転動力は、差動装置34、車軸35を介して、タイヤ36に伝達される。
尚、本実施形態においては、タイヤ速度の制御において、フィードバック制御装置40以降はオープン制御となり、制御量yに応じた斜板の角度により、タイヤ速度が決定される構成となっているが、これに限定するものでなく、例えば、出力軸33cに回転数センサを設け、タイヤ36の回転数等をフィードバックして、タイヤ速度の制御を行う構成としてもよい。
次に、図11を用いて、フィードバック制御装置40の構成について説明する。
フィードバック制御装置40は、制御対象となるアクチュエータ41と、PID制御器42と、制御量yの検出手段となる角度センサ43と、制御偏差計算手段44と、外乱オブザーバによるむだ時間補償器45と、補正手段46とを具備する。前述のように、フィードバック制御装置40には、アクチュエータ41の回転軸の目標角度(目標値y*)が入力され、アクチュエータ41の回転軸の角度(制御量y)が出力される。
アクチュエータ41は、前記HST33の可動斜板33aの傾斜角度を変更するものである。アクチュエータ41は、サーボモータ等により構成される。アクチュエータ41の伝達関数は、むだ時間を含む、G(s)e―Lsとして表される。
PID制御器42は、アクチュエータ41の操作量U(s)を演算する操作量計算手段である。PID制御器42には、後述する補正された制御偏差50aが入力される。PID制御器42においては、制御偏差50aに比例した値(P動作)と、制御偏差50aを時間積分した値(I動作)と、制御偏差50aを時間微分した値(D動作)とがそれぞれ加算され、その演算値となる操作量U(s)が得られる。この操作量U(s)は、むだ時間補償器45の第二出力値計算手段48と、補正手段46の操作量補正手段52と、に入力される。PID制御器42は伝達関数C(s)で表され、PID制御器42の制御ゲイン(比例ゲイン)や積分ゲイン(積分時間)や微分ゲイン(微分時間)は、制御パラメータとしてアクチュエータ41の伝達関数G(s)に応じて適宜調整される。
角度センサ43は、ロータリエンコーダや、ホールセンサ等で構成される。この角度センサ43によりアクチュエータ41の制御量yが検出される。制御量yは制御偏差計算手段44と、外乱オブザーバによるむだ時間補償器45の第一出力値計算手段47とに入力される。
尚、該角度センサ43は、前記アクチュエータ41と一体的に構成されてもよい。
制御偏差計算手段44においては、前記変化率制限手段38から指示されたアクチュエータ41の回転軸における角度の目標値y*から、前記角度センサ43が検出した制御量yが減算され、制御偏差44aが得られる。制御偏差44aは、外乱オブザーバによるむだ時間補償器45の制御偏差補正手段50と、補正手段46の第五出力値計算手段51とに入力される。
外乱オブザーバによるむだ時間補償器45は、第一出力値計算手段47と、第二出力値計算手段48と、第三出力値計算手段49と、制御偏差補正手段50とで構成される。
第一出力値計算手段47は、むだ時間を除いたアクチュエータ41の推定された伝達関数の逆数(逆モデル推定値)であり、伝達関数1/Gn(s)として表される。第一出力値計算手段47においては、むだ時間を除いたアクチュエータ41の伝達関数の逆モデル1/Gn(s)に、前記角度センサ43で検出された制御量yが入力されて、第一出力値47aが得られる。第一出力値47aは、第二出力値計算手段48に入力される。
第二出力値計算手段48においては、前記PID制御器42から出力された操作量U(s)から、前記第一出力値計算手段47の第一出力値47aが減算されて、第二出力値48aが得られる。第二出力値48aは、第三出力値計算手段49に入力される。
第三出力値計算手段49は、むだ時間を除いたアクチュエータ41の推定された伝達関数Gn(s)として表される。第三出力値計算手段49においては、むだ時間を除いたアクチュエータ41の伝達関数Gn(s)に、第二出力値48aが入力されて、第三出力値49aが得られる。第三出力値49aは、制御偏差補正手段50に入力される。
制御偏差補正手段50においては、前記制御偏差44aから、前記第三出力値49aが減算されて、補正された制御偏差50aが得られる。補正された制御偏差50aは、前記PID制御器42に入力される。
このように構成することにより、アクチュエータ41に含まれるむだ時間を外乱として扱い、むだ時間をフィードバックループの外に追い出すことができる。したがって、PID制御器42の制御ゲインを大きく設定することが可能となるので、安定して制御を行うとともに、制御量yの応答性を良くすることができる。また、アクチュエータ41のむだ時間が、むだ時間補償器45の制御パラメータに含まれないため、経年変化等でアクチュエータ41のむだ時間が変化した場合や、むだ時間のモデル化に誤差が生じた場合であっても、アクチュエータ41のむだ時間の補償が可能で、安定して制御を行うことができる。
補正手段46は、第五出力値計算手段51と、操作量補正手段52とで構成される。
第五出力値計算手段51は、PI制御器であり、入力値に比例した値を出力する比例要素と、入力値の累積値を出力する積分要素とで構成される。比例ゲインはKdistとされ、積分ゲインはIdistとされる。アクチュエータ41の特性に応じて、Kdist及びIdistが適宜調整される。アクチュエータ41の積分要素が小さい場合は、比例ゲインKdistを0として、第五出力値計算手段51をI制御器として動作させてもよく、アクチュエータ41の積分要素が大きい場合は、積分ゲインIdistを0として、第五出力値計算手段51をP制御器として動作させてもよい。その演算値となる第五出力値51aは、操作量補正手段52に入力される。
操作量補正手段52においては、PID制御器42から出力される操作量U(s)に、第五出力値51aが加算されて、補正された操作量52aが得られる。補正された操作量52aは、指令電圧としてアクチュエータ41に入力される。
このように構成することにより、経年変化等でアクチュエータ41の実モデルとなる伝達関数G(s)が変化した場合や、アクチュエータ41の実モデルとなる伝達関数G(s)のモデル化に誤差が生じた場合においても、目標値y*と制御量yの定常偏差が発生しない。
尚、前記PID制御器42、制御偏差計算手段44、外乱オブザーバによるむだ時間補償器45及び補正手段46は、CPU、ROM、RAM、HDD等で構成され、所定のプログラムを用いて補正された制御偏差50aや、補正された操作量52aが演算される構成としてもよい。
また、フィードバック制御装置40は、次のように構成してもよい。すなわち、図12に示すように、フィードバック制御装置40は、第三出力値49aを設定した周波数以上の周波数成分のみを通過させるハイパスフィルタに入力させてから、第四出力値53aを得る。そして、第四出力値53aを制御偏差補正手段50に入力する。制御偏差補正手段50においては、制御偏差44aから、第四出力値53aが減算されて、補正された制御偏差50aが得られる。補正された制御偏差50aは、PID制御器42に入力される。PID制御器42においては、補正された制御偏差50aから操作量U(s)が得られる。そして、操作量U(s)がアクチュエータ41に入力される。
これにより、むだ時間の影響で不安定になる高い周波数域のみでむだ時間補償を有効にし、それ以下の周波数では補償要素が無効となるので、モデルの誤差による制御量yの定常偏差を抑えることができる。
次に、図13から図14を用いて、図10のシステムの計測結果を示す。
図13に示すように、作業車両100においては、速度レバー37を操作して、タイヤ速度の制御を行う。このように、外乱オブザーバによるむだ時間補償器45がある場合は、PID制御器42の比例ゲインを40倍に大きくしても不安定とならず、斜板制御の応答性を改善することができる。
つづいて、μの任意の設定(μ1からμ5)に対する斜板制御(速度制御)の結果を図14に示す。図14(a)に示すようなPID制御器42のみ(すなわち外乱オブザーバを用いたむだ時間補償器45なし)の場合と比較して、図14(b)に示すようなむだ時間補償器45ありの場合の方が、速度レバー37の操作直後の応答がよく、速度制御の制限値と同様の傾きで斜板制御ができていることがわかる。タイヤ速度は速度制御の制限値に対して時間方向にオフセットした応答、すなわち、むだ時間の遅れを補償した応答となっている。これは、むだ時間をフィードバックループから追い出して制御する本制御の特徴といえる。
以上のように、本発明の一実施形態に係るフィードバック制御装置1は、むだ時間4を含む制御対象2のフィードバック制御装置1であって、前記制御対象2の制御量yを検出する検出手段6と、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数の逆モデルに、前記制御量yを入力して、第一出力値11aを得る第一出力値計算手段11と、前記制御対象2の操作量U(s)から、前記第一出力値11aを減算して、第二出力値12aを得る第二出力値計算手段12と、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数に、前記第二出力値12aを入力して、第三出力値13aを得る第三出力値計算手段13と、前記制御量yの目標値y*から、前記制御量yを減算して、制御偏差7aを得る制御偏差計算手段7と、前記制御偏差7aから、前記第三出力値13aを減算して、補正された制御偏差14aを得る制御偏差補正手段14と、前記補正された制御偏差14aを入力して、前記制御対象2の操作量U(s)を得る操作量計算手段となるPID制御器5と、を具備するものである。
これにより、むだ時間4を含む制御対象2のフィードバック制御において、制御対象2のむだ時間4を補償して、フィードバックループの外にむだ時間4を追い出すことが可能となる。したがって、制御ゲインを大きくした場合であっても制御が不安定とならなくなる。そのため、制御ゲインを大きく設定して、制御量yの応答性を良好にすることができる。また、制御対象2のむだ時間4がむだ時間補償器10の制御パラメータに含まれないため、経年変化等でむだ時間4が変化した場合や、むだ時間4のモデル化に誤差が生じた場合であっても、むだ時間4を補償することができ、安定して制御を行うことができる。
また、前記制御偏差7aに所定の比例ゲインを乗算して、または、前記制御偏差7aを所定の時間積分して、第五出力値21aを得る第五出力値計算手段21と、前記操作量U(s)に、前記第五出力値21aを加算して、補正された操作量22aを得る操作量補正手段22と、を具備するものであるので、経年変化等で制御対象2の実モデルが変化した場合や、制御対象2のモデル化に誤差が生じた場合であっても、目標値と制御量の定常偏差が発生しない。
また、本発明の一実施形態に係るフィードバック制御装置1は、むだ時間4を含む制御対象2のフィードバック制御装置1であって、前記制御対象2の制御量yを検出する検出手段6と、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数の逆モデルに、前記制御量yを入力して、第一出力値11aを得る第一出力値計算手段11と、前記制御対象2の操作量U(s)から、前記第一出力値11aを減算して、第二出力値12aを得る第二出力値計算手段12と、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数に、前記第二出力値12aを入力して、第三出力値13aを得る第三出力値計算手段13と、特定の周波数成分のみを通過させるフィルタに、前記第三出力値13aを入力して、第四出力値15aを得る第四出力値計算手段15と、前記制御量yの目標値y*から、前記制御量yを減算して、制御偏差7aを得る制御偏差計算手段7と、前記制御偏差7aから、前記第四出力値15aを減算して、補正された制御偏差14aを得る制御偏差補正手段14と、前記補正された制御偏差14aを入力して、前記制御対象2の操作量U(s)を得る操作量計算手段となるPID制御器5と、を具備するものである。
これにより、むだ時間4を含む制御対象2のフィードバック制御において、制御対象2のむだ時間4を補償して、フィードバックループの外にむだ時間4を追い出すことが可能となる。したがって、制御ゲインを大きくした場合であっても制御が不安定とならなくなる。そのため、制御ゲインを大きく設定して、制御量yの応答性を良好にすることができる。また、制御対象2のむだ時間4がむだ時間補償器10の制御パラメータに含まれないため、経年変化等でむだ時間4が変化した場合や、むだ時間4のモデル化に誤差が生じた場合であっても、むだ時間4を補償することができ、安定して制御を行うことができる。また、経年変化等で制御対象2の実モデルが変化した場合や、制御対象2のモデル化に誤差が生じた場合であっても、目標値y*と制御量yの定常偏差が発生しない。
また、本発明の一実施形態に係るフィードバック制御装置1は、むだ時間4を含む制御対象2の制御量yを、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数の逆モデルに入力して第一出力値11aを演算し、前記第一出力値11aを、前記制御対象2の操作量U(s)から減算して第二出力値12aを演算し、前記第二出力値12aを、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数に入力して第三出力値13aを演算し、前記第三出力値13aを、制御偏差7aから減算して補正された制御偏差14aを演算し、前記補正された制御偏差14aに基づいてフィードバック制御を行うものである。
これにより、むだ時間4を含む制御対象2のフィードバック制御において、制御対象2のむだ時間4を補償して、フィードバックループの外にむだ時間4を追い出すことが可能となる。したがって、制御ゲインを大きくした場合であっても制御が不安定とならなくなる。そのため、制御ゲインを大きく設定して、制御量yの応答性を良好にすることができる。また、制御対象2のむだ時間4がむだ時間補償器10の制御パラメータに含まれないため、経年変化等でむだ時間4が変化した場合や、むだ時間4のモデル化に誤差が生じた場合であっても、むだ時間4を補償することができ、安定して制御を行うことができる。
また、本発明の一実施形態に係るフィードバック制御装置1は、むだ時間4を含む制御対象2の制御量yを、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数の逆モデルに入力して第一出力値11aを演算し、前記第一出力値11aを、前記制御対象2の操作量U(s)から減算して第二出力値12aを演算し、前記第二出力値12aを、むだ時間4を除いた前記制御対象2の伝達関数に入力して第三出力値13aを演算し、前記第三出力値13aを、特定の周波数成分のみを通過させるフィルタに入力して第四出力値15aを演算し、前記第四出力値15aを、制御偏差7aから減算して補正された制御偏差14aを演算し、前記補正された制御偏差14aに基づいてフィードバック制御を行うものである。
これにより、むだ時間4を含む制御対象2のフィードバック制御において、制御対象2のむだ時間4を補償して、フィードバックループの外にむだ時間4を追い出すことが可能となる。したがって、制御ゲインを大きくした場合であっても制御が不安定とならなくなる。そのため、制御ゲインを大きく設定して、制御量yの応答性を良好にすることができる。また、制御対象2のむだ時間4がむだ時間補償器10の制御パラメータに含まれないため、経年変化等でむだ時間4が変化した場合や、むだ時間4のモデル化に誤差が生じた場合であっても、むだ時間4を補償することができ、安定して制御を行うことができる。また、経年変化等で制御対象2の実モデルが変化した場合や、制御対象2のモデル化に誤差が生じた場合であっても、目標値y*と制御量yの定常偏差が発生しない。