以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明の第1実施形態による動力装置1を概略的に示している。これらの図1および図2に示す動力装置1は、車両(図示せず)の駆動輪DW,DWを駆動するためのものであり、動力源としての内燃機関3および回転機11と、両者の動力を駆動輪DW,DWに伝達するための遊星歯車装置PSR、変速装置21および差動装置7と、内燃機関3や回転機11の動作を制御するためのECU2を備えている。
この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、ガソリンエンジンであり、クランク軸3aを有している。周知のように、エンジン3は、供給された燃料を燃焼させることによって発生した熱エネルギを、回転力に変換し、クランク軸3aから出力する。また、図2に示すように、エンジン3の燃料噴射弁3bおよび点火プラグ3cは、ECU2に接続されており、燃料噴射弁3bの動作および点火プラグ3cの点火動作は、ECU2によって制御される。さらに、エンジン3の吸気管には、スロットル弁(いずれも図示せず)が設けられており、ECU2によりスロットル弁の開度が変更されることによって、エンジン3に吸入される吸入空気量が制御される。
回転機11は、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータであり、不動のステータ12と、回転自在のロータ13を有している。このステータ12は、回転磁界を発生させるためのものであり、鉄心やコイルで構成されている。また、ステータ12は、車両に固定されたケーシングCAに取り付けられるとともに、パワードライブユニット(以下「PDU」という)31を介して、充電および放電可能なバッテリ32に電気的に接続されている。このPDU31は、インバータなどの電気回路によって構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。上記のロータ13は、磁石などで構成されており、ステータ12に対向するように配置されている。また、ロータ13は、中空の回転軸4に一体に設けられており、回転軸4とともに回転自在である。この回転軸4は、クランク軸3aと同軸状に配置されている。
以上の構成の回転機11では、ECU2によるPDU31の制御によって、バッテリ32からPDU31を介してステータ12に電力が供給されると、回転磁界が発生し、それに伴い、この電力が動力に変換され、ロータ13から出力される。その結果、ロータ13が回転軸4とともに回転する。この場合、ECU2によるPDU31の制御により、ステータ12に供給される電流の大きさおよび周波数が制御されることによって、ロータ13のトルクおよび回転数がそれぞれ制御される。
さらに、ステータ12への電力供給を停止した状態で、動力の入力によりロータ13が回転しているときに、ECU2によるPDU31の制御によって、回転磁界が発生し、それに伴い、ロータ13に入力された動力が電力に変換され、発電が行われる。この場合、ECU2によるPDU31の制御により、ステータ12からバッテリ32に流れる電流の大きさおよび周波数が制御されることによって、ロータ13に伝達されるトルクおよびロータ13の回転数がそれぞれ制御される。
遊星歯車装置PSRは、いわゆるラビニヨ式の遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1および第2サンギヤS2と、両ギヤS1,S2の外周に設けられたリングギヤRと、第2サンギヤS2およびリングギヤRに噛み合う複数の第1プラネタリギヤP1と、第1サンギヤS1および第1プラネタリギヤP1に噛み合う複数の第2プラネタリギヤP2と、これらの第1および第2プラネタリギヤP1,P2を回転自在に支持するキャリアCを有している。周知のように、これらの第1サンギヤS1、リングギヤR、キャリアCおよび第2サンギヤS2は、互いの間で動力を伝達可能で、当該動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように、構成されている。
第1サンギヤS1は、回転軸5に一体に設けられており、この回転軸5とともに回転自在である。回転軸5は、クランク軸3aと同軸状に配置されており、前述した回転軸4に回転自在に嵌合している。第2サンギヤS2は、前述した回転軸4に一体に設けられ、回転機11のロータ13に直結されており、ロータ13とともに回転自在である。また、リングギヤRは、フライホイール(図示せず)を介して、エンジン3のクランク軸3aに連結されており、クランク軸3aとともに回転自在である。さらに、キャリアCには、ギヤCGが一体に設けられている。
また、回転軸5には、回転軸5を第1サンギヤS1とともに制動するための第1ブレーキBL1が設けられている。この第1ブレーキBL1は、ケーシングCAおよび回転軸5に取り付けられた湿式多板クラッチなどで構成されており、ECU2に接続されている(図2参照)。第1ブレーキBL1は、ECU2の制御によって、締結されたときに、ケーシングCAと回転軸5との間を接続することにより、回転軸5および第1サンギヤS1を制動する一方、解放されたときに、ケーシングCAと回転軸5との間を遮断することにより、回転軸5および第1サンギヤS1の回転を許容する。また、ECU2により、第1ブレーキBL1の締結度合が調整されることによって、その制動力が制御される。
さらに、クランク軸3aには、クランク軸3aをリングギヤRとともに制動するための第2ブレーキBL2が設けられている。この第2ブレーキBL2は、ケーシングCAおよびクランク軸3aに取り付けられた湿式多板クラッチなどで構成されており、ECU2に接続されている(図2参照)。第2ブレーキBL2は、ECU2の制御によって、締結されたときに、ケーシングCAとクランク軸3aとの間を接続することにより、クランク軸3aおよびリングギヤRを制動する一方、解放されたときに、ケーシングCAとクランク軸3aとの間を遮断することにより、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容する。また、ECU2により、第2ブレーキBL2の締結度合が調整されることによって、その制動力が制御される。
変速装置21は、ギヤ式の自動変速装置であり、入力軸22および出力軸23と、ギヤ比が互いに異なる複数のギヤ列と、これらの複数のギヤ列と入力軸22および出力軸23との間をギヤ列ごとに接続・遮断するクラッチ(いずれも図示せず)を有している。変速装置21は、この入力軸22に入力された動力を、これらの複数のギヤ列の1つによって変速し、出力軸23に出力する。また、変速装置21では、これらの複数のギヤ列によって、前進用の互いに異なる第1速、第2速および第3速と後進用の1つの変速段から成る計4つの変速段が設定され、その変更はECU2によって制御される(図2参照)。また、入力軸22には、ギヤ22aが一体に設けられており、このギヤ22aは、前述したキャリアCのギヤCGに噛み合っている。さらに、出力軸23には、ギヤ23aが一体に設けられている。
差動装置7は、一般的なディファレンシャルギヤであり、歯数が互いに等しい左右のサイドギヤと、両サイドギヤに噛み合う複数のピニオンギヤと、これらのピニオンギヤを回転自在に支持するデフケース(いずれも図示せず)を有している。左右のサイドギヤは、左右の駆動軸DS,DSをそれぞれ介して、左右の駆動輪DW,DWに連結されている。また、デフケースには、ギヤ7aが一体に設けられており、このギヤ7aは、上述した変速装置21のギヤ23aに噛み合っている。以上の構成の差動装置7では、デフケースに入力された動力は、左右のサイドギヤに分配され、ひいては、左右の駆動輪DW,DWに分配される。
以上のように、動力装置1では、遊星歯車装置PSRの第1サンギヤS1およびリングギヤRは、第1ブレーキBL1およびエンジン3のクランク軸3aにそれぞれ連結されている。また、キャリアCは、ギヤCG、ギヤ22a、変速装置21、ギヤ23a、差動装置7、駆動軸DS,DSを介して、駆動輪DW,DWに連結されている。さらに、第2サンギヤS2は、回転機11のロータ13に連結されている。
また、ECU2には、クランク角センサ41および角度位置センサ42から、クランク軸3aのクランク角度位置およびロータ13の回転角度位置を表す検出信号が、それぞれ出力される。ECU2は、このクランク角度位置に基づいてエンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出するとともに、このロータ13の回転角度位置に基づいてロータ13の回転数(以下「ロータ回転数」という)NRを算出する。
また、ECU2には、回転数センサ43から、駆動輪DW,DWの回転数(以下「駆動輪回転数」という)NDWを表す検出信号が出力される。さらに、ECU2には、電流電圧センサ44から、バッテリ32に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が、出力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ32の充電状態を算出する。
また、ECU2には、アクセル開度センサ45から、車両のアクセルペダル(図示せず)の操作量であるアクセル開度APを表す検出信号が、ブレーキセンサ46から、車両のブレーキペダル(図示せず)の操作量であるブレーキ開度BPを表す検出信号が、それぞれ出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、このROMに記憶された制御プログラムに従い、上述した各種のセンサ41〜46からの検出信号に応じ、エンジン3、回転機11、変速装置21、第1および第2ブレーキBL1,BL2の動作を制御する。これにより、車両が、各種の運転モードによって運転される。
この運転モードには、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、モータアシストモード、クルーズ充電モード、後進モード、および減速回生モードが含まれる。以下、図3〜図9を参照しながら、これらの運転モードについて、順に説明する。
これらの図3〜図9は、いわゆる速度共線図であり、前述した各種の回転要素の連結関係から、遊星歯車装置PSRのリングギヤR、キャリアC、第1および第2サンギヤS1,S2の回転数と、エンジン回転数NE、ロータ回転数NRおよび駆動輪回転数NDWとの関係は、図3〜図9のような1つの速度共線図で表される。この速度共線図では、値0を示す横線に交わる縦線は、各パラメータの速度を表すものであり、この縦線上に表される白丸と横線との隔たりが、各パラメータの速度に相当する。
なお、図3〜図9では、便宜上、エンジン回転数NEや、ロータ回転数NRについては、その符号を、対応する白丸の付近に表記している。また、図3〜図9において、Xは、リングギヤRの歯数と第1サンギヤS1の歯数との比であり、Yは、リングギヤRの歯数と第2サンギヤS2の歯数との比である。さらに、RAは、キャリアCから変速装置21などを介した駆動輪DW,DWまでの総変速比(キャリアCの回転数と駆動輪回転数NDWとの比、以下「総変速比」という)である。
[EV発進モード]
このEV発進モードは、回転機11のみを動力源として用い、駆動輪DW,DWを駆動する運転モードである。ECU2は、算出されたバッテリ32の充電状態が第1所定値よりも大きいときに、EV発進モードを選択する。この第1所定値は、バッテリ32の過放電を防止するような値に設定されている。
図3は、EV発進モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。同図において、TRは、回転機11への電力供給に伴って発生したロータ13のトルク(以下「ロータ力行トルク」という)である。また、TB2は、第2ブレーキBL2の制動によってリングギヤRに作用する負荷トルク(以下「第2制動トルク」という)である。さらに、TDDWは、駆動輪DW,DWに伝達されるトルク(以下「駆動輪伝達トルク」という)である。
EV発進モード中、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1を解放することによって、第1サンギヤS1の回転を許容するとともに、第2ブレーキBL2を締結することによって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を阻止し、エンジン回転数NEを値0に制御する。その状態で、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させる。また、変速装置21の変速段を前進用の変速段(第1〜第3速のいずれか)に設定する。
以上により、図3から明らかなように、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRは、リングギヤRに作用する第2制動トルクTB2を反力として、キャリアCに伝達され、キャリアCを正転させる。また、キャリアCに伝達されたトルクは、ギヤCGや変速装置21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが正転し、車両が前方に発進する。この場合、実際には、ロータ力行トルクTRの一部は、駆動輪DW,DWに加え、第1サンギヤS1に伝達されるものの、第1サンギヤS1が空転することから、第1サンギヤS1に伝達されるトルクは、無視できるほど小さい。
また、EV発進モード中、ロータ力行トルクTRを、駆動輪伝達トルクTDDWが要求トルクTREQになるように制御する。この要求トルクTREQは、駆動輪DW,DWに要求されるトルクであり、駆動輪回転数NDWと、検出されたアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。具体的には、ロータ力行トルクTRは、次式(1)が成立するように制御される。この場合、前述した総変速比RA(キャリアCから変速装置21などを介した駆動輪DW,DWまでの総変速比)は、変速装置21の変速段に基づいて算出される。
TR=−TREQ/{RA(1+Y)} ……(1)
さらに、EV発進モード中、ロータ回転数NRを、駆動輪回転数NDWとの間に次式(2)が成立するように制御する。
NR=(1+Y)NDW・RA ……(2)
[EV走行中ENG始動モード]
このEV走行中ENG始動モードは、上述したEV発進モードによる車両の走行中に、停止状態のエンジン3を始動する運転モードである。ECU2は、次の条件(a)および(b)の一方が成立しているときに、EV走行中ENG始動モードを選択する。
(a)充電状態が前述した第1所定値以下になったとき
(b)アクセル開度APの変化量(今回値−前回値)が所定の正のしきい値よりも大きいとき
このように、EV走行中ENG始動モードは、アクセル開度APが大きく増大したときに選択されることによって、車両の急発進時などのように、より大きなトルクを駆動輪DW,DWに伝達する必要があり、それにより、回転機11に加え、エンジン3を動力源として用いるときに、選択される。
図4は、EV走行中ENG始動モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。同図において、TB1は、第1ブレーキBL1の制動によって第1サンギヤS1に作用する負荷トルク(以下「第1制動トルク」という)であり、TEFは、エンジン3のフリクションによってリングギヤRに作用する負荷トルク(以下「フリクショントルク」という)である。
EV走行中ENG始動モードでは、EV発進モードの場合と同様、変速装置21の変速段を、前進用の変速段に設定するとともに、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させる。また、EV発進モード中に締結されていた第2ブレーキBL2を解放することによって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容するとともに、EV発進モード中に解放されていた第1ブレーキBL1を締結することによって、第1ブレーキBL1の制動力を第1サンギヤS1に作用させる。
以上により、図4から明らかなように、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りが、リングギヤRを介してクランク軸3aに伝達され、クランク軸3aを正転させるように作用する。その結果、駆動輪DW,DWが引き続き正転するとともに、クランク軸3aが正転する。その状態で、燃料噴射弁3bや点火プラグ3cの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。
また、EV走行中ENG始動モードでは、ロータ力行トルクTRおよび第1ブレーキBL1の制動力を、駆動輪伝達トルクTDDWが要求トルクTREQになるように制御する。具体的には、ロータ力行トルクTRおよび第1ブレーキBL1の制動力は、次式(3)および(4)がそれぞれ成立するように制御される。この場合、フリクショントルクTEFは、実験により求めた所定値に設定される。
TR=−{X・TEF+(X+1)TREQ/RA}/(X+1+Y)
……(3)
TB1=−{Y・TREQ/RA+(Y+1)TEF}/(Y+1+X)
……(4)
さらに、EV走行中ENG始動モードでは、ロータ回転数NRを、駆動輪回転数NDWを維持しながら、エンジン回転数NEがエンジン3の始動に適した所定回転数NESTになるように、制御する。具体的には、ロータ回転数NRは、次式(5)が成立するように制御される。
NR=(1+Y)NDW・RA−Y・NEST ……(5)
以上により、EV走行中ENG始動モードでは、駆動輪回転数NDWを変動させることなく、エンジン回転数NEを始動に適した所定回転数NESTになるように制御した状態で、エンジン3を始動することができる。これにより、良好なドライバビリティを確保しながら、始動時のエンジン3のトルク変動を抑制でき、エンジン始動に伴って発生する振動やノイズを抑制できるので、商品性を向上させることができる。なお、EV走行中ENG始動モードによりエンジン3が始動された後には、モータアシストモードまたはクルーズ充電モードが選択される。
[モータアシストモード]
このモータアシストモードは、エンジン3を動力源として用いた駆動輪DW,DWの駆動中に、エンジン3を回転機11でアシストする運転モードである。ECU2は、次の条件(c)および(d)の双方が成立しているときに、モータアシストモードを選択する。これにより、モータアシストモードは、主として、車両の急発進時や急加速時に選択される。
(c)充電状態が前述した第1所定値よりも大きいとき
(d)要求トルクTREQおよび駆動輪回転数NDWによって定まる要求出力が、後述する式(8)で表されるエンジン3の動力(以下「エンジン動力」という)PEよりも大きいとき
図5は、モータアシストモードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。同図において、TEは、エンジン3のトルク(以下「エンジントルク」という)である。モータアシストモード中、第1および第2ブレーキBL1,BL2の双方を解放することによって、第1サンギヤS1およびクランク軸3aの回転をそれぞれ許容し、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させるとともに、変速装置21の変速段を、前進用の変速段に設定する。
以上により、図5から明らかなように、リングギヤRに伝達されたエンジントルクTEは、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRを反力として、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達される。すなわち、エンジントルクTEとロータ力行トルクTRが、遊星歯車装置PSRによって合成され、駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが引き続き正転し、車両が前進する。この場合、実際には、エンジントルクTEおよびロータ力行トルクTRの一部は、駆動輪DW,DWに加え、第1サンギヤS1に伝達されるものの、第1サンギヤS1が空転することから、第1サンギヤS1に伝達されるトルクは、無視できるほど小さい。
また、モータアシストモード中、駆動輪伝達トルクTDDWを、要求トルクTREQになるように制御し、エンジン回転数NEを、目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するとともに、ロータ回転数NRを、目標ロータ回転数NROBJになるように制御する。これらの目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJは、要求トルクTREQおよび駆動輪回転数NDWに応じ、モータアシストモード用の所定のNEOBJマップおよびNROBJマップ(いずれも図示せず)をそれぞれ検索することによって、算出される。
これらのNEOBJマップおよびNROBJマップでは、目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJはそれぞれ、目標エンジン回転数NEOBJに基づくエンジン動力PE、および、目標ロータ回転数NROBJに基づく回転機11の動力を、両者の和が前述した要求出力になるように発生させた場合において、エンジン3のより良好な燃費および回転機11のより良好な駆動効率が得られるような値に、実験によって設定されている。
また、前述したように、エンジン回転数NE、ロータ回転数NRおよびキャリアCの回転数が共線関係にあり、キャリアCが、変速装置21などを介して駆動輪DW,DWに連結されている。以上から、NEOBJマップおよびNROBJマップでは、目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJはそれぞれ、リングギヤRの歯数と第2サンギヤS2の歯数との比Y、および変速装置21の前進用の各変速段の変速比に応じて、設定されている。具体的には、目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJは、次式(6)が成立するように設定されている。
NDW=(NROBJ+Y・NEOBJ)/{RA(1+Y)} ……(6)
また、本実施形態では、リングギヤRの歯数と第2サンギヤS2の歯数との比Yは、上述した目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJの設定において、エンジン3のより良好な燃費および回転機11のより良好な効率が得られるような値に、実験によって設定されている。
さらに、モータアシストモード中、前述したように駆動輪伝達トルクTDDWを要求トルクTREQになるように制御するために、ロータ力行トルクTRは、前記式(1)が成立するように制御される。
また、モータアシストモード中、駆動輪伝達トルクTDDWを要求トルクTREQになるように制御するには、エンジントルクTEを次式(7)が成立するように制御する必要がある。このことと、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、エンジン動力PEは、次式(8)が成立するように制御される。この場合の制御は、エンジン3のスロットル弁の開度を変更することで、吸入空気量を制御することによって行われる。
TE=−Y・TREQ/{RA(Y+1)} ……(7)
PE=−Y・TREQ・NEOBJ/{RA(Y+1)} ……(8)
以上のように、モータアシストモードは、充電状態が第1所定値よりも大きく、バッテリ32が過放電にならないようなときで、かつ、駆動輪DW,DWの要求出力が、エンジン3のより良好な燃費が得られるエンジン動力PEよりも大きいときに、選択される。また、モータアシストモード中、エンジン動力PEが、より良好な燃費が得られるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWの要求出力に対するエンジン動力PEの不足分が、回転機11によるアシストによって補われる。また、ロータ回転数NRが、回転機11のより良好な効率が得られるように制御される。
[クルーズ充電モード]
このクルーズ充電モードは、エンジン3を動力源として用いた駆動輪DW,DWの駆動中に、エンジン動力の一部を用いて、回転機11で発電するとともに、発電した電力をバッテリ32に充電する運転モードである。ECU2は、次の条件(e)および(f)の一方が成立しているときに、クルーズ充電モードを選択する。
(e)充電状態が第1所定値以下になったとき
(f)充電状態が第1所定値よりも大きな第2所定値以下で、かつ、要求出力が、後述する目標エンジン動力PEOBJよりも小さいとき
また、クルーズ充電モードは、その開始後、充電状態が第2所定値に達したときに、終了される。この第2所定値は、バッテリ32の過充電を防止できるような値に設定されている。クルーズ充電モードは、EV走行中ENG始動モードまたはモータアシストモードから切り換えられる。
図6は、クルーズ充電モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。同図において、TGは、回転機11での発電に伴ってロータ13から第2サンギヤS2に作用する負荷トルク(以下「ロータ発電トルク」という)である。
クルーズ充電モード中、変速装置21の変速段を、EV走行中ENG始動モードやモータアシストモードの場合と同様、前進用の変速段に設定するとともに、第2ブレーキBL2を解放することによって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容する。また、EV走行中ENG始動モードからの切換の場合には、第1ブレーキBL1を締結することによって、第1サンギヤS1の回転数を値0に制御する。これにより、リングギヤRに伝達されたエンジントルクTEは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りが、第2サンギヤS2を介してロータ13に伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが引き続き正転し、車両が前進するとともに、ロータ13が正転する。また、エンジン3からロータ13にそのように伝達された動力を用いて、回転機11において発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ32に充電する。
一方、モータアシストモードからの切換の場合には、変速装置21の変速段を前進用の第1〜第3速のいずれかに設定するとともに、ロータ回転数NRを制御することによって、第1サンギヤS1の回転数を値0に制御する。その状態で、第1ブレーキBL1を完全に締結する。これにより、リングギヤRに伝達されたエンジントルクTEは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りが、第2サンギヤS2を介してロータ13に伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが引き続き正転するとともに、ロータ13が正転する。また、エンジン3からロータ13にそのように伝達された動力を用いて、回転機11において発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ32に充電する。
さらに、クルーズ充電モード中、ロータ回転数NRを、目標ロータ回転数NROBJになるように制御するとともに、変速装置21の変速段を、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。これらの目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJは、要求トルクTREQおよび駆動輪回転数NDWに応じ、クルーズ充電モード用の所定のNEOBJマップおよびNROBJマップ(いずれも図示せず)をそれぞれ検索することによって、算出される。
これらのNEOBJマップおよびNROBJマップでは、目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJはそれぞれ、目標エンジン回転数NEOBJに基づくエンジン動力PE、および、目標ロータ回転数NROBJに基づく回転機11の発電電力を、前者と後者の差が前述した要求出力になるように発生させた場合において、エンジン3のより良好な燃費および回転機11のより良好な発電効率が得られるような値に、実験によって設定されている。
また、前述したように、第1サンギヤS1の回転数、エンジン回転数NE、ロータ回転数NRおよびキャリアCの回転数が共線関係にあり、キャリアCが、変速装置21などを介して駆動輪DW,DWに連結されている。以上から、NEOBJマップおよびNROBJマップでは、目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJはそれぞれ、リングギヤRの歯数と第1サンギヤS1の歯数との比X、リングギヤRの歯数と第2サンギヤS2の歯数との比Y、および変速装置21の各変速段の変速比に応じて、設定されている。
具体的には、目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJは、次式(9)および(10)がそれぞれ成立するように設定されている。
NEOBJ=X・NDW・RA/(X+1) ……(9)
NROBJ=(X+1+Y)NDW・RA/(X+1) ……(10)
また、本実施形態では、リングギヤRの歯数と第1サンギヤS1の歯数との比X、および、リングギヤRの歯数と第2サンギヤS2の歯数との比Yは、上述した目標エンジン回転数NEOBJおよび目標ロータ回転数NROBJの設定において、エンジン3のより良好な燃費および回転機11のより良好な発電効率が得られるような値に、実験によって設定されている。
さらに、クルーズ充電モード中、スロットル弁の開度を変更することで、吸入空気量を制御することによって、エンジン動力PEを目標エンジン動力PEOBJになるように制御する。この目標エンジン動力PEOBJは、目標エンジン回転数NEOBJに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出され、このマップでは、エンジン3のより良好な燃費が得られるような値に設定されている。また、ロータ力行トルクTRを、駆動輪伝達トルクTDDWが要求トルクTREQになるように制御する。具体的には、ロータ発電トルクTGは、次のように制御される。この場合、ロータ発電トルクTG、駆動輪伝達トルクTDDWおよびエンジントルクTEの関係は、次式(11)で表される。
X・TE+(X+1)TDDW/RA+(X+1+Y)TG=0 ……(11)
また、前述したように、エンジン動力PEを目標エンジン動力PEOBJになるように制御することと、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することと、駆動輪伝達トルクTDDWを要求トルクTREQになるように制御することと、上記の式(11)から、次式(12)が得られる。
TG=−{X・PEOBJ/NEOBJ+(X+1)TREQ/RA}
/(X+1+Y) ……(12)
したがって、ロータ発電トルクTGは、この式(12)が成立するように制御される。
以上のように、クルーズ充電モードは、充電状態が第2所定値以下で、バッテリ32が過充電にならないようなときで、かつ、駆動輪DW,DWの要求出力が、エンジン3のより良好な燃費が得られる目標エンジン動力PEOBJよりも大きいときに、選択される。また、クルーズ充電モード中、エンジン動力PEが、より良好な燃費が得られるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWの要求出力に対するエンジン動力PEの余剰分が、回転機11において電力に変換され、バッテリ32に充電される。また、ロータ回転数NRが、回転機11のより良好な発電効率が得られるように制御される。
[後進モード]
この後進モードは、回転機11のみを動力源として用いて、駆動輪DW,DWを逆転させ、車両を後進させる運転モードである。ECU2は、充電状態が第1所定値よりも大きいときに、後進モードを選択する。
図7は、後進モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。後進モード中、EV発進モードの場合と同様、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1を解放することによって、第1サンギヤS1の回転を許容するとともに、第2ブレーキBL2を締結することによって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を阻止し、エンジン回転数NEを値0に制御する。その状態で、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を逆転させる。また、変速装置21の変速段を、前進用の変速段に設定する。
以上により、図7から明らかなように、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRは、リングギヤRに作用する第2制動トルクTB2を反力として、キャリアCに伝達され、キャリアCを逆転させる。また、キャリアCに伝達されたトルクは、ギヤCGや変速装置21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが逆転し、車両が後進する。この場合、実際には、ロータ力行トルクTRの一部は、駆動輪DW,DWに加え、第1サンギヤS1に伝達されるものの、第1サンギヤS1が空転することから、第1サンギヤS1に伝達されるトルクは、無視できるほど小さい。
また、図7と前述したEV発進モードに関する図3との比較から明らかなように、後進モード中、EV発進モードと比較して、ロータ13の回転方向を逆転方向に制御する点のみが異なっており、ロータ力行トルクTRおよびロータ回転数NRの制御は、EV発進モードと同様に行われる。
なお、充電状態が第1所定値以下の場合において、車両を後進させるときには、上述した後進モードを選択せずに、変速装置21の変速段を後進用の変速段に設定するとともに、前述したクルーズ充電モードを選択する。これにより、バッテリ32の過放電を防止することができる。
[減速回生モード]
この減速回生モードは、駆動輪DW,DWを減速させる減速要求中に、駆動輪DW,DWの慣性力を用いて、回転機11で発電し、発電した電力をバッテリ23に充電する運転モードである。ECU2は、駆動輪回転数NDWが所定値よりも大きく、アクセル開度APがほぼ値0で、かつ、検出されたブレーキ開度BPが所定値よりも大きいときに、減速要求中であると判定するとともに、当該判定中、充電状態が前述した第2所定値よりも小さいときに、減速回生モードを選択する。減速回生モードには、第1および第2減速回生モードが含まれる。以下、第1減速回生モードから順に説明する。
図8は、この第1減速回生モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。同図において、TDWは、駆動輪DW,DWの慣性力による駆動軸DS,DSのトルク(以下「駆動輪トルク」という)である。第1減速回生モード中、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1を解放することによって、第1サンギヤS1の回転を許容するとともに、第2ブレーキBL2を締結することによって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を阻止し、エンジン回転数NEを値0に制御する。また、変速装置21の変速段を、前進用の変速段に設定する。
以上により、図8から明らかなように、キャリアCに伝達された駆動輪トルクTDWは、リングギヤRに作用する第2制動トルクTB2を反力として、第2サンギヤS2を介してロータ13に伝達される結果、ロータ13が正転する。また、駆動輪DW,DWからロータ13にそのように伝達された動力を用いて、回転機11において発電を行う。この発電に伴い、ロータ13から負荷トルクが駆動輪DW,DWに作用する。この場合、実際には、駆動輪トルクTDWの一部は、ロータ13に加え、第1サンギヤS1に伝達されるものの、第1サンギヤS1が空転することから、第1サンギヤS1に伝達されるトルクは、無視できるほど小さい。
また、第1減速回生モード中、回転機11で発電する電力は、駆動輪DW,DWに作用する負荷トルクが目標負荷トルクTLOBJになるように制御される。この目標負荷トルクTLOBJは、ブレーキ開度BPに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップでは、目標負荷トルクTLOBJは、ブレーキ開度BPが大きいほど、より大きな値に設定されている。具体的には、回転機11で発電する電力は、次式(13)が成立するように制御される。
TG=TLOBJ/{RA(1+Y)} ……(13)
さらに、第1減速回生モード中、アクセルペダルが踏み込まれることによって、車両を急加速させる場合には、エンジン3が次のように始動される。すなわち、締結状態の第2ブレーキBL2を解放することによって、クランク軸3aの回転を許容する。これにより、キャリアCに伝達された駆動輪トルクTDWは、第2サンギヤS2に伝達されたロータ発電トルクTGを反力として、リングギヤRを介してクランク軸3aに伝達される結果、クランク軸3aが正転する。その状態で、燃料噴射弁3bなどを制御することによって、エンジン3を始動する。この場合、ロータ発電トルクTGを制御することによって、エンジン3の始動に伴う駆動輪DW,DWの回転変動が抑制される。
次に、第2減速回生モードについて説明する。図9は、第2減速回生モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。第2減速回生モード中、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1を締結することによって、第1サンギヤS1の回転を阻止するとともに、第2ブレーキBL2を解放することによって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容する。また、変速装置21の変速段を、前進用の変速段に設定する。
以上により、図9から明らかなように、キャリアCに伝達された駆動輪トルクTDWは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が第2サンギヤS2を介してロータ13に伝達されるとともに、残りがリングギヤRを介してクランク軸3aに伝達される結果、ロータ13およびクランク軸3aが正転する。また、駆動輪DW,DWからロータ13にそのように伝達された動力を用いて、第1減速回生モードの場合と同様、回転機11において発電を行う。この発電に伴い、ロータ13から負荷トルクが駆動輪DW,DWに作用する。
さらに、第2減速回生モード中、第1減速回生モードの場合と同様、回転機11で発電する電力は、駆動輪DW,DWに作用する負荷トルクが目標負荷トルクTLOBJになるように制御される。具体的には、回転機11で発電する電力は、次式(14)が成立するように制御される。
TG={(X+1)TLOBJ/RA−X・TEF}/(X+1+Y)
……(14)
また、第1および第2減速回生モード中、目標負荷トルクTLOBJが大きいほど、変速装置21の変速段が、前進用の低速側の変速段に設定される。これにより、回転機11で発生させるべきロータ発電トルクTGを、目標負荷トルクTLOBJに対して低下させることができるので、回転機11の小型化を図ることができる。
また、本実施形態における各種の要素と、本発明(特許請求の範囲に記載された発明)の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、本実施形態における駆動輪DW,DW、エンジン3およびクランク軸3aが、本発明における被駆動部、原動機および出力部にそれぞれ相当するとともに、本実施形態におけるECU2およびPDU31が、本発明における制御装置に相当する。また、本実施形態における遊星歯車装置PSRが、本発明における動力伝達機構に相当するとともに、第1サンギヤS1、リングギヤR、キャリアCおよび第2サンギヤS2が、本発明における第1〜第4要素にそれぞれ相当する。さらに、本実施形態におけるバッテリ32が、本発明における蓄電装置に相当する。また、本実施形態における電流電圧センサ44およびECU2が、本発明における充電状態検出手段に相当する。
以上のように、本実施形態によれば、遊星歯車装置PSRの第1サンギヤS1、リングギヤR、キャリアCおよび第2サンギヤS2が、互いの間で動力を伝達可能で、当該動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように構成されている。また、第1サンギヤS1、リングギヤR、キャリアCおよび第2サンギヤS2が、第1ブレーキBL1、エンジン3のクランク軸3a、駆動輪DW,DW、および回転機11のロータ13にそれぞれ連結されている。さらに、クランク軸3aに、第2ブレーキBL2が設けられており、充電および放電可能なバッテリ32が、PDU31を介して回転機11に接続されている。また、エンジン3、第1および第2ブレーキBL1,BL2の動作が、ECU2によって制御され、ECU2によるPDU31の制御によって、回転機11の動作が制御される。
さらに、EV発進モード中、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1の解放によって、第1サンギヤS1の回転を許容するとともに、第2ブレーキBL2の締結によって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を阻止し、エンジン回転数NEを値0に制御する。その状態で、回転機11に電力を供給し、ロータ13を正転させる。これにより、ロータ力行トルクTRが、リングギヤRに作用する第2制動トルクTB2を反力として、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達される。この場合、図3に示すように、第2制動トルクTB2の方向が、ロータ力行トルクTRの方向と同じであるため、ロータ力行トルクTRは、遊星歯車装置PSRによって増大された状態で、駆動輪DW,DWに伝達される。また、回転機11の動力が、クランク軸3aおよびリングギヤRに伝達されることなく、駆動輪DW,DWに伝達される。以上により、回転機11に要求されるトルクを低減でき、回転機11の小型化を図ることができる。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させ、第2ブレーキBL2の解放によって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容するとともに、第1ブレーキBL1の締結によって、第1ブレーキBL1の制動力を第1サンギヤS1に作用させる。これにより、ロータ力行トルクTRは、その一部が駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りがクランク軸3aに伝達される結果、駆動輪DW,DWが引き続き正転するとともに、クランク軸3aが正転する。その状態で、燃料噴射弁3bや点火プラグ3cの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、駆動輪DW,DWを適切に駆動しながら、エンジン3の始動を適切に行うことができる。
また、クルーズ充電モード中、第1ブレーキBL1の締結によって、第1サンギヤS1の回転数を値0に制御するとともに、第2ブレーキBL2の解放によって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容する。以上により、リングギヤRに伝達されたエンジントルクTEは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りが、第2サンギヤS2を介してロータ13に伝達される。また、エンジン3からロータ13にそのように伝達された動力を用いて、回転機11において発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ32に充電する。以上のように、エンジントルクTEを、駆動輪DW,DWおよびロータ13に適切に伝達することができるので、駆動輪DW,DWを適切に駆動しながら、回転機11による発電を適切に行うことができる。さらに、クルーズ充電モードを、バッテリ32の充電状態が第1所定値以下になったときに、積極的に選択するので、バッテリ32の電力を十分に確保することができる。
また、モータアシストモード中、第1および第2ブレーキBL1,BL2の双方を解放することによって、第1サンギヤS1およびクランク軸3aの回転をそれぞれ許容し、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させる。以上により、リングギヤRに伝達されたエンジントルクTEが、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRを反力として、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達される。すなわち、エンジントルクTEとロータ力行トルクTRを、遊星歯車装置PSRによって合成し、駆動輪DW,DWに伝達することができ、エンジン3を回転機11でアシストすることができる。
さらに、駆動輪DW,DWの要求出力が、エンジン3のより良好な燃費が得られる目標エンジン動力PEOBJよりも大きいときに、クルーズ充電モードを選択する。また、クルーズ充電モード中、エンジン動力PEが、より良好な燃費が得られるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWの要求出力に対するエンジン動力PEの余剰分が、回転機11において電力に変換され、バッテリ32に充電される。
さらに、駆動輪DW,DWの要求出力が、エンジン3のより良好な燃費が得られるエンジン動力PEよりも大きいときに、モータアシストモードを選択する。また、モータアシストモード中、エンジン動力PEが、より良好な燃費が得られるように制御されるとともに、駆動輪DW,DWの要求出力に対するエンジン動力PEの不足分が、回転機11によるアシストによって補われる。以上のクルーズ充電モードおよびモータアシストモードの選択・実行によって、エンジン3のより良好な燃費を得ることができる。
また、クルーズ充電モード中およびモータアシストモード中、ロータ回転数NRを目標ロータ回転数NROBJになるように制御することによって、回転機11のより良好な発電効率および良好な効率を、それぞれ得ることができる。
さらに、クルーズ充電モード中、前記式(12)から明らかなように、リングギヤRの歯数と第2サンギヤS2の歯数との比Yをより大きな値に設定することによって、ロータ発電トルクTGを低減でき、このことによっても、回転機11の小型化を図ることができる。
また、駆動輪DW,DWを減速させる減速要求中であるか否かが判定されるとともに、その判定中、第1減速回生モードまたは第2減速回生モードが選択される。この第2減速回生モード中、第1ブレーキBL1の締結によって、第1ブレーキBL1の制動力を第1サンギヤS1に作用させるとともに、エンジン3が停止状態に制御される。これにより、キャリアCに伝達された駆動輪トルクTDWは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、クランク軸3aに伝達されるとともに、残りが、回転機11のロータ13に伝達される。また、駆動輪DW,DWからロータ13にそのように伝達された動力が、電力に変換(発電)されるとともに、この電力がバッテリ32に充電される。
以上のように、第2減速回生モード中、上述した第1ブレーキBL1の締結によって、駆動輪トルクTDWを、回転機11のロータ13に適切に伝達することができ、ひいては、電力として適切に回収することができる。さらに、上述した回転機11における発電に伴い、ロータ13から負荷トルクが駆動輪DW,DWに作用するので、駆動輪DW,DWを適切に減速させることができる。また、上述したように、駆動輪トルクTDWの一部が停止状態のエンジン3のクランク軸3aに伝達される。このため、減速要求後、駆動輪DW,DWを駆動するためにエンジン3を始動するときに、この始動を早期に行うことができる。
また、第1減速回生モード中、エンジン3が停止状態に制御され、第1ブレーキBL1の解放によって、第1サンギヤS1の回転が許容されるとともに、第2ブレーキBL2の締結によって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を阻止し、エンジン回転数NEを値0に制御する。これにより、第1減速回生モード中、駆動輪トルクTDWは、リングギヤRに作用する第2制動トルクTB2を反力として、その一部が、回転機11のロータ13に伝達され、残りが第1サンギヤS1に伝達される。また、駆動輪DW,DWから回転機11のロータ13にそのように伝達された動力が、電力に変換(発電)されるとともに、この電力がバッテリ32に充電される。
以上のように、第1減速回生モード中、上述した第2ブレーキBL2の締結によって、駆動輪トルクTDWを、回転機11のロータ13に適切に伝達することができ、ひいては、電力として適切に回収することができる。この場合、第1サンギヤS1が空転するため、駆動輪DW,DWから第1サンギヤS1に伝達されるトルクは、非常に小さく、第2減速回生モードにおいてリングギヤRおよびクランク軸3aに伝達されるトルクよりも小さい。また、第2減速回生モードの場合と異なり、駆動輪DW,DWの慣性力がクランク軸3aおよびリングギヤRに伝達されるのを防止できる。以上により、より大きな電力を回転機11で発電し、バッテリ32に充電することができる。さらに、上述した回転機11における発電に伴い、ロータ13から負荷トルクが駆動輪DW,DWに作用するので、駆動輪DW,DWを適切に減速させることができる。
また、図8および図9から明らかなように、第1および第2減速回生モード中、ロータ回転数NRを、駆動輪DW,DWに連結されたキャリアCの回転数よりも高い状態に制御できるので、ロータ発電トルクTGを小さな値に制御しても、より大きな電力を回転機11で発電し、バッテリ32に充電することができる。したがって、このことによっても、回転機11の小型化を図ることができる。
さらに、後進モード中、第1ブレーキBL1の解放によって、第1サンギヤS1の回転が許容されるとともに、第2ブレーキBL2の締結によって、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を阻止し、エンジン回転数NEを値0に制御する。また、エンジン3が停止状態に制御されるとともに、回転機11への電力の供給によって、ロータ13を逆転させる。以上により、駆動輪DW,DWを適切に逆転させることができる。
次に、図10〜図12を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置51について説明する。図10および図11において、第1実施形態による動力装置1と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。図10に示すように、この動力装置51は、第1実施形態と比較して、第2ブレーキBL2に代えて、逆転阻止機構52を備える点が主に異なっている。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この逆転阻止機構52は、ケーシングCAおよびクランク軸3aに取り付けられたワンウェイクラッチなどで構成されている。このワンウェイクラッチは、クランク軸3aに逆転させるような動力が伝達された場合には、クランク軸3aとケーシングCAとの間を接続し、それにより、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を阻止する一方、クランク軸3aに正転させるような動力が伝達された場合には、クランク軸3aとケーシングCAとの間を遮断し、それにより、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容する。以上の逆転阻止機構52の動作は、ECU2による制御とは無関係に行われる。
以上の構成の動力装置51では、上述した第1実施形態との相違から、各種の運転モードにおける動作が、第1実施形態の場合と異なっているので、以下、各種の動作モードにおける動作について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
[EV発進モード]
図12は、EV発進モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。同図において、TBは、逆転阻止機構52によるクランク軸3aの逆転の阻止によってリングギヤRに作用する負荷トルク(以下「逆転阻止トルク」という)である。
EV発進モード中、第1実施形態と同様、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1を解放することによって、第1サンギヤS1の回転を許容する。その状態で、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させる。
以上により、図12から明らかなように、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRは、リングギヤRに作用する逆転阻止トルクTBを反力として、キャリアCに伝達され、キャリアCを正転させる。また、キャリアCに伝達されたトルクは、ギヤCGや変速装置21を介して、駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが正転し、車両が前方に発進する。この場合、第1実施形態と同様、実際には、ロータ力行トルクTRの一部は、駆動輪DW,DWに加え、第1サンギヤS1に伝達されるものの、第1サンギヤS1が空転することから、第1サンギヤS1に伝達されるトルクは、無視できるほど小さい。
[EV走行中ENG始動モード]
EV走行中ENG始動モードでは、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させ、第1ブレーキBL1を締結することによって、第1ブレーキBL1の制動力を第1サンギヤS1に作用させる。この場合にも、第1実施形態と同様、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りが、リングギヤRを介してクランク軸3aに伝達され、クランク軸3aを正転させるように作用する。
前述したように、逆転阻止機構52は、クランク軸3aに正転させるような動力が伝達された場合には、クランク軸3aおよびリングギヤRの回転を許容するので、上記のようにロータ力行トルクTRがクランク軸3aに伝達されることによって、クランク軸3aが正転する。その状態で、燃料噴射弁3bや点火プラグ3cの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。
また、動力装置51では、モータアシストモードおよびクルーズ充電モード中、第2ブレーキBL2以外の各種の構成要素の制御は、第1実施形態と同様に行われる。
[後進モード]
後進モード中、前述したEV発進モードの場合と同様、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1を解放することによって、第1サンギヤS1の回転を許容する。その状態で、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させる。また、変速装置21の変速段を、後進用の変速段に設定する。以上により、EV発進モードの場合と同様、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRは、リングギヤRに作用する逆転阻止トルクTBを反力として、キャリアCに伝達され、キャリアCを正転させる。また、キャリアCに伝達されたトルクは、その方向が変速装置21において逆方向に変更された状態で、駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが逆転し、車両が後方に発進する。
[減速回生モード]
動力装置51では、第1実施形態と異なり、減速回生モードに、第1減速回生モードは含まれず、第2減速回生モードのみが含まれる。第2減速回生モード中、第2ブレーキBL2以外の各種の構成要素の制御は、第1実施形態と同様に行われる。
以上のように、本実施形態によれば、EV発進モード中、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1の解放によって、第1サンギヤS1の回転を許容するとともに、その状態で、回転機11に電力を供給し、ロータ13を正転させる。以上により、ロータ力行トルクTRが、リングギヤRに作用する逆転阻止トルクTBを反力として、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達される。この場合、図12に示すように、逆転阻止トルクTBの方向が、ロータ力行トルクTRの方向と同じであるため、第1実施形態と同様、ロータ力行トルクTRは、遊星歯車装置PSRによって増大された状態で、駆動輪DW,DWに伝達される。また、回転機11の動力が、クランク軸3aおよびリングギヤRに伝達されることなく、駆動輪DW,DWに伝達される。以上により、回転機11に要求されるトルクを低減でき、回転機11の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態と同様、EV走行中ENG始動モード、クルーズ充電モード、モータアシストモード、および第2減速回生モードによる前述した効果を得ることができる。さらに、EV走行中ENG始動モードにおいて、第1実施形態と異なり、逆転阻止機構52を特別に制御することなく、第1ブレーキBL1の制御によって、ロータ力行トルクTRを駆動輪DW,DWおよびクランク軸3aに伝達することができる。したがって、エンジン3の始動を円滑に行うことができる。
なお、第1実施形態では、第2ブレーキBL2を、第2実施形態では、逆転阻止機構52を、クランク軸3aにそれぞれ設けているが、第2ブレーキBL2および逆転阻止機構52の双方を設けてもよい。その場合には、第1実施形態で述べたすべての運転モードによる効果を同様に得ることができる。それに加え、EV走行中ENG始動モードにおいて、第2ブレーキBL2を解放状態に保持しても、逆転阻止機構52によって、ロータ力行トルクTRを駆動輪DW,DWに伝達することできる。したがって、EV走行中ENG始動モードにおいて、第2ブレーキBL2の制御を締結から解放に切り換える必要がなく、それにより、エンジン3の始動を円滑に行うことができる。
次に、図13〜図15を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置61について説明する。図13および図14において、第1実施形態による動力装置1と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。図13に示すように、この動力装置61は、第1実施形態と比較して、第2ブレーキBL2が省略されている点が主に異なっている。また、動力装置61では、そのような第1実施形態との相違から、各種の運転モードにおける動作が、第1実施形態の場合と異なっているので、以下、各種の動作モードにおける動作について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
[EV発進モード]
図15は、EV発進モードにおける各種の回転要素の回転数の関係およびトルクの関係を示している。EV発進モード中、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1を締結することによって、第1サンギヤS1の回転を阻止し、第1サンギヤS1の回転数を値0に制御する。その状態で、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させる。
以上により、図15から明らかなように、第2サンギヤS2に伝達されたロータ力行トルクTRは、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りが、リングギヤRを介してクランク軸3aに伝達される。その結果、駆動輪DW,DWが正転し、車両が前方に発進するとともに、クランク軸3aが正転する。このように、ロータ力行トルクTRの一部は、クランク軸3aおよびリングギヤRに伝達されるものの、両者3a,Rが空転することから、その伝達トルクは非常に小さい。
また、EV発進モード中、ロータ力行トルクTRを、駆動輪伝達トルクTDDWが要求トルクTREQになるように制御する。具体的には、ロータ力行トルクTRは、前記式(3)が成立するように制御される。さらに、ロータ回転数NRを、駆動輪回転数NDWとの間に次式(15)が成立するように制御する。
NR=(X+1+Y)NDW・RA/(X+1) ……(15)
また、動力装置61では、EV走行中ENG始動モード、モータアシストモード、クルーズ充電モード、後進モード、および減速回生モードにおける各種の構成要素の制御が、第2実施形態と同様に行われる。
以上のように、本実施形態によれば、EV発進モード中、エンジン3を停止状態に制御し、第1ブレーキBL1の締結によって、第1サンギヤS1の回転を阻止するとともに、バッテリ32から回転機11に電力を供給することによって、ロータ13を正転させる。以上により、ロータ力行トルクTRが、第1サンギヤS1に作用する第1制動トルクTB1を反力として、その一部が、キャリアCなどを介して駆動輪DW,DWに伝達されるとともに、残りが、リングギヤRを介してクランク軸3aに伝達される。この場合、図15に示すように、第1制動トルクTB1の方向が、ロータ力行トルクTRの方向と同じであるため、第1実施形態と同様、ロータ力行トルクTRは、遊星歯車装置PSRによって増大された状態で、駆動輪DW,DWに伝達される。また、クランク軸3aおよびリングギヤRが空転するため、回転機11からクランク軸3aおよびリングギヤRに伝達されるトルクは、非常に小さい。以上により、回転機11に要求されるトルクを低減でき、回転機11の小型化を図ることができる。
また、本実施形態によれば、第1および第2実施形態と同様、EV走行中ENG始動モード、クルーズ充電モード、モータアシストモード、および第2減速回生モードによる前述した効果を得ることができる。
なお、本発明は、説明した第1〜第3実施形態(以下「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、第1ブレーキBL1、クランク軸3a、駆動輪DW,DWおよびロータ13に、第1サンギヤS1、リングギヤR、キャリアCおよび第2サンギヤS2をそれぞれ連結しているが、第2サンギヤS2、キャリアC、リングギヤRおよび第1サンギヤS1をそれぞれ連結してもよい。
また、実施形態では、本発明における動力伝達機構として、いわゆるラビニヨ式の遊星歯車装置PSRを用いているが、互いの間で動力を伝達可能で、当該動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において、それぞれの回転数を表す直線が順に並ぶように構成された第1〜第4要素を有する機構であれば、他の適当な機構を用いてもよい。
例えば、動力伝達機構として、2つのシングルピニオン式の遊星歯車装置を、第1〜第4要素を有するように互いに連結することによって構成された機構を用いてもよい。この場合、例えば、一方の遊星歯車装置のサンギヤおよびキャリアが、他方の遊星歯車装置のキャリアおよびリングギヤにそれぞれ連結される。あるいは、動力伝達機構として、単一のシングルピニオン式の遊星歯車装置と単一のダブルピニオン式の遊星歯車装置を、第1〜第4要素を有するように互いに連結することによって構成された機構を用いてもよい。この場合、例えば、シングルピニオン式の遊星歯車装置のキャリアおよびリングギヤが、ダブルピニオン式の遊星歯車装置のサンギヤおよびリングギヤにそれぞれ連結される。あるいは、動力伝達機構として、2つのダブルピニオン式の遊星歯車装置を、第1〜第4要素を有するように互いに連結することによって構成された機構を用いてもよい。この場合、例えば、一方の遊星歯車装置のリングギヤおよびサンギヤが、他方の遊星歯車装置のキャリアおよびリングギヤにそれぞれ連結される。
また、動力伝達機構を、例えば、遊星歯車装置のギヤに代えて、表面間の摩擦によって動力を伝達する複数のローラを有し、遊星歯車装置と同等の機能を有するような装置を用いて構成してもよい。さらに、詳細な説明は省略するが、特願2006−213905に開示されるような複数の磁石や軟磁性体の組み合わせで構成された装置を用いて構成してもよい。
さらに、実施形態では、本発明における回転機は、ブラシレスDCモータであるが、供給された電力を動力に変換し、ロータから出力するとともに、ロータに入力された動力を電力に変換可能な回転機であれば、例えばACモータでもよい。また、実施形態では、本発明における蓄電装置は、バッテリであるが、充電および放電可能に構成されているのであれば、例えばキャパシタでもよい。さらに、実施形態では、第1および第2ブレーキBL1,BL2として、湿式多板クラッチなどで構成されたタイプのブレーキを用いているが、締結・解放可能に構成され、締結時に制動力を発生させるブレーキであれば、例えば、バンドブレーキや、電磁ブレーキを用いてもよい。また、実施形態では、エンジン3や回転機11を制御する制御装置として、ECU2およびPDU31を用いているが、マイクロコンピュータを搭載した電気回路を用いてもよい。
さらに、実施形態では、本発明における原動機は、ガソリンエンジンで構成されたエンジン3であるが、動力を出力可能な出力部を有するものであれば、例えば、ディーゼルエンジンや、外燃機関、回転機、水車、風車、人力により駆動されるペダルなどでもよい。また、実施形態は、本発明による動力装置を車両に適用した例であるが、本発明による動力装置は、これに限らず、例えば船舶や航空機などに適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。