JP5268366B2 - 遠心分離装置 - Google Patents

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Description

本発明は、遠心分離機能と振動による攪拌機能を兼ね備えた遠心分離装置に関する。
血液や尿等の試料液に含まれる成分を分析するため、その過程において試薬との混合や遠心分離といった操作が行われる。このような操作は一般的には攪拌装置や遠心分離装置を用いて行われるが、複数の過程を経る分析において、これらの操作をそれぞれ個別の装置で行っていては効率が悪い。このため、遠心分離と攪拌を1つの装置で行う装置が特許文献1などで提案されている。
この特許文献1の事例では、遠心分離を行うための第1のモータと、攪拌を行うための第2のモータを備えており、試料がセルなどに注入された状態で搭載されているターンテーブルを第1のモータで回転させ、攪拌は第2のモータが前記ターンテーブルに接続された状態で回転させ、第2のモータの先端の偏心カムが回転することで前記ターンテーブルを旋回運動させることで行っている。また、遠心分離と攪拌の操作切り替えは電磁プランジャにて行っている。
特許第2866404号
この従来の構成では、遠心分離と攪拌を別々のモータにて行っている。しかしながら、各操作を精度良く行うためには各モータの回転を一定に制御する必要があり、攪拌機能が追加されたことによって振動数を検出するための新たなセンサが必要になり、装置の構成が増大し、制御の複雑化を招くという課題を有している。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、遠心分離と攪拌を制御するためのセンサを兼用できる遠心分離装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1記載の遠心分離装置は、試料液を注入した分析用デバイスを保持するターンテーブルと、前記ターンテーブルを回転駆動すると共に少なくとも2つ以上の磁気センサを回転磁界の検出に使用した第1の駆動手段と、前記ターンテーブルに係合させて前記ターンテーブルを往復振動させる第2の駆動手段と、前記磁気センサの出力信号から最も大きい振幅の出力信号を選択しその選択状態を振動攪拌の一動作が終わるまで保持したまま選択された出力信号から振動数を演算する振動検出部とを備えたことを特徴とする。
本発明の請求項2記載の遠心分離装置は、請求項1において、前記第1の駆動手段の回転モータが、3相ブラシレスモータであることを特徴とする。
本発明の請求項3記載の遠心分離装置は、請求項1において、前記振動検出部が、前記磁気センサの出力信号のうちから2つの出力信号を取り出し直流信号を除去する濾波器と、前記濾波器の出力信号の振幅を比較して大小を判定しその判定結果を保持する第1の比較部と、前記第1の比較部の保持した判定結果に基づいて前記濾波器の出力信号から最も振幅の大きい信号を選択するマルチプレクサと、前記マルチプレクサで選択した出力信号をデジタル変換する第2の比較部と、前記第2の比較部の出力信号から振動数を演算するマイクロコンピュータとを備えたことを特徴とする。
本発明の請求項4記載の遠心分離装置は、請求項3において、前記第1の比較部が、第1の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第1のピークホールド回路と、第2の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第2のピークホールド回路と、前記第1,第2のピークホールド回路の出力の大きい方を判定するヒステリシス特性を有したコンパレータ回路とで構成されていることを特徴とする。
本発明の請求項5記載の遠心分離装置は、請求項3において、前記第1の比較部が、第1の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第1のピークホールド回路と、第2の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第2のピークホールド回路と、前記第1,第2のピークホールド回路の出力の大きい方を判定するヒステリシス特性を有しないコンパレータ回路と、前記コンパレータ回路の出力を振動攪拌の一動作が終わるまで保持するラッチ手段とを備え、前記ラッチ手段の出力に基づいて前記マルチプレクサを切り替えるよう構成したことを特徴とする。
本発明の請求項6記載の遠心分離装置は、請求項1において、前記振動検出部が、2つ以上の前記磁気センサの出力信号からそれぞれ直流信号を除去する濾波器と、前記濾波器の出力信号から1つを選択するマルチプレクサと、前記マルチプレクサの出力信号をデジタル変換するアナログ・デジタル変換器と、前記アナログ・デジタル変換器の出力信号から振動数を演算するマイクロコンピュータとを備えたことを特徴とする。
本発明の請求項7記載の遠心分離装置は、請求項3または請求項6において、前記濾波器が、前記磁気センサの出力信号と直列したコンデンサと、出力信号に並列した抵抗器から構成されたハイパスフィルタであることを特徴とする。
この構成によれば、遠心分離のための回転駆動のモータに使用している磁気センサの検出出力から攪拌運転時の振動数を演算することができ、攪拌を制御するためのセンサを遠心分離のための回転駆動のモータとは別に設ける必要がない。
以下、本発明の実施の形態を図1〜図25に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1と図2は血液分析装置に組み込まれた本発明の遠心分離装置を示す。図3は血液分析装置のドア103を開放した状態の斜視図、図4は分析用デバイス1をターンテーブル101にセットした状態を示している。
分析用デバイス1は、血液や尿等の試料液を注入し、遠心分離、攪拌を行うための流路を備えている。ターンテーブル101の上面には溝102が形成されており、分析用デバイス1をターンテーブル101にセットした状態では分析用デバイス1のカバー基板4に形成された回転支持部115と保護キャップ2に形成された回転支持部116が溝102に係合してこれを収容している。
ターンテーブル101に分析用デバイス1をセットした後に、ターンテーブル101の回転させる前に分析装置のドア103を閉じると、セットされた分析用デバイス1は、ドア103の側に設けられた可動片104によって、ターンテーブル101の回転軸心上の位置がバネ105の付勢力でターンテーブル101の側に押さえられて、分析用デバイス1は、回転駆動手段106によって回転駆動されるターンテーブル101と一体に回転する。107はターンテーブル101の回転中の軸心を示している。
図1と図2に見られるように、回転駆動手段106は、ターンテーブル101を回転中心107の回りに回転駆動する第1の駆動手段71と、ターンテーブル101に接触して回転中心107と垂直に交差する振動中心R2を軸としてターンテーブル101の接線方向に往復振動する第2の駆動手段72と、攪拌する際にのみターンテーブル101と第2の駆動手段72を接触させ、遠心分離時は回避させておく第3の駆動手段73とで構成されている。第3の駆動手段73は直流モータや電磁プランジャ等の動力源によって構成される。ターンテーブル101と第2の駆動手段72の接触は、振動を効率良く伝達するため、第2の駆動手段72とターンテーブル101の接触面に摩擦係数の高い材質を使用したり、ギア構造にして互いに噛み合わせる構成にすると良い。
図5〜図8は、第2の駆動手段72とターンテーブル101の接触面をギア構造にして互いに噛み合わせるようにし、第3の駆動手段73を直流モータで構成した場合の具体例を示している。
セットされた分析用デバイス1に回転運動を与える第1の駆動手段71は、アウターロータ型のブラシレスモータ71aと、このブラシレスモータ71aの出力軸に取り付けられ前記分析用デバイス1がセットされる前記ターンテーブル101とで構成されている。ターンテーブル101の外周部には第1のギア部74が形成されている。
回転駆動手段106は、第1の駆動手段71の他に、所定の停止位置でターンテーブル101を、回転軸心107を中心に所定の振幅範囲、周期で左右に往復運動をさせるために、第1の駆動手段71に選択的に係合し分析用デバイス1に往復運動を与える第2の駆動手段72と、第1の駆動手段71と第2の駆動手段72が係合する位置(図5(b))と係合しない位置(図5(a))に相対移動させる第3の駆動手段73が設けられている。
第2の駆動手段72と第3の駆動手段73は、図6〜図8に示すように構成されている。
ブラシレスモータ71aが取り付けられているシャーシ75には第2のモータ72aと第3のモータ73aなどが取り付けられている。シャーシ75に対して矢印76方向(図5(a),図6参照)にスライド自在に取り付けられた支持テーブル77には、支持軸78が取り付けられている。
支持軸78にはレバー79が枢支されている。レバー79の前記ターンテーブル101の側の一端には、ターンテーブル101の第1のギア部74に噛合できる第2のギア部80が形成されている。レバー79の他端には、凹部81が形成されている。凹部81には、第2のモータ72aの出力軸82に取り付けられた偏心カム83が係合している。なお、図8はレバー79を支持軸78から取り外して図示した平面図である。
このように構成したため、第2のモータ72aに通電すると、偏心カム83を介してレバー79が実線位置と仮想線位置に揺動する。
なお、レバー79は、つるまきバネ(図示せず)によって付勢して前記揺動時のレバー79のバックラッシュ(Backlash)が小さくなるように構成されている。
第3の駆動手段73は、シャーシ75に取り付けられた前記第3のモータ73aと、第3のモータ73aの出力軸84に取り付けられたウォーム85と、シャーシ75に回転自在に取り付けられ前記ウォーム85に噛合したウォームホイール86と、支持テーブル77に形成され前記ウォームホイール86に噛合するラック87とで構成されている。ウォームホイール86とラック87との間のバックラッシュが小さくなるように、支持テーブル77とシャーシ75の間には引っ張りコイルバネ88が介装されている。
このように構成したため、検出スイッチ91が図5(b)に示すように支持テーブル77を検出するまで第3のモータ73aに通電してウォームホイール86を矢印89方向(図5(a)参照)に回転させると、ラック87がウォームホイール86に噛合している支持テーブル77が、ターンテーブル101に接近するようスライドして、図5(b)に示すように、レバー79の第2のギア部80がターンテーブル101の第1のギア部74に噛合し、この状態で第2のモータ72aが通電状態に維持されると、ターンテーブル101の接線方向にレバー79によってターンテーブル101が揺動駆動されるので、第2のモータ72aの回転数を高くすることによって短い時間であっても分析用デバイス1内の微量の流体を攪拌するに十分な加速度を、短時間にして得ることができる。
なお、図4において112は分析用デバイス1の測定部に特定の波長光を照射するためのレーザー光源、113は分析用デバイス1を通過した透過光の光量を検出するフォトディテクタである。
図9はブラシレスモータ71aを、4極マグネットロータ6と、U相駆動コイル7,V相駆動コイル8,W相駆動コイル9およびU相駆動コイル10,V相駆動コイル11,W相駆動コイル12を使用した4極磁石式3相ブラシレスモータとした場合であって、マグネットロータ6はN極とS極の一対の磁石を2組有する。また、駆動コイル7,8,9および10,11,12はそれぞれY結線されており、固定子の6つの突極部にそれぞれ巻回されている。6つの突極部は、60°間隔で配置されている。
また、3相駆動コイルの励磁電流の切り替えタイミングは、磁気センサとしての3つのホール素子13,14,15の検出に基づいて行う。3つのホール素子13,14,15は、それぞれ3相駆動コイルU,V,Wから30°ずれた位置に配置される。そして、対向するマグネットロータ6の磁石着磁の極性(N極かS極か)を検出し、その検出している極性に相当したレベルの起電力を発生する。
図10は、4極磁石式3相ブラシレスモータのホール素子13,14,15から出力する電圧の角度特性図である。横軸はマグネットロータのある角度を0°とした回転角を示しており、縦軸はホール素子の出力電圧を示している。ホール素子13,14,15から出力される電圧は、Vrefを基準電圧としてN極が近づくと+側に出力され、S極が近づくと−側に出力される。マグネットロータ6はNS極が90°毎に配置されているため、ホール素子電圧は180°周期の正弦波となり、ホール素子13,14,15は機械角で60°ずつ位相がずれる。
30°毎にホール素子13,14,15のいずれかの出力電圧がVrefを基準として反転されるため、コンパレータ回路によってVrefを基準として+側をハイレベル、−側をロウレベルとするデジタル信号に変換する事で、ホール素子13,14,15の出力パターンから30°毎の回転位置を特定できる。ホール素子13,14,15の出力パターンを3相駆動コイルの励磁電流の切り替えタイミングとして使用する。
図11は、4極磁石式3相ブラシレスモータの3相駆動コイルの6つの極性パターンとマグネットロータの位置の関係を示す図である。(i)の状態を角度0°と定義し、(i)→(ii)→(iii)→(iv)→(v)→(vi)で30°毎のマグネットロータ6の状態を示しており、図10の回転角と対応している。Y結線された3相駆動コイルU相、V相、W相のうち、(i)ではV相を+電位、U相を−電位にすることでV相からU相に向けて励磁電流が流れ、V相にN極、U相にS極が現れる。このためマグネットロータ6に吸引力と反発力が発生し、30°右回転する。30°回転すると(ii)の状態になり、ホール素子15の極性が反転する。この時、W相を+電位、U相を−電位にする事で、W相にN極、U相にS極が現れ、マグネットロータ6は更に30°右回転する。以降、(iii)→(iv)→(v)→(vi)と励磁するコイルを変化させる事でマグネットロータ6が回転する。
図12はホール素子13,14,15とU相,V相,W相の駆動コイルへの通電状態を示している。
図13は、遠心分離装置の振動検出部100を示す。
この遠心分離装置では、攪拌時の振動数を前記ホール素子の出力信号に基づいて検出する。つまり、ブラシレスモータ71aの3相駆動コイルが励磁されていなくとも、第2の駆動手段72によってターンテーブル101に振動が伝達されると、ブラシレスモータ71aも一緒に振動され、3つのホール素子13,14,15にも振動による電圧の揺らぎが出現する。この揺らぎを検出して振動数を特定する。
図13においては、3つのホール素子のうちホール素子13,15の出力電圧を取り出した一例であって、ホール素子14の出力電圧を取り出しても構わない。
ホール素子13の検出出力は、ホール素子13の出力信号から直流信号を除去する濾波器16とピークホールド回路18を介してコンパレータ20の非反転入力(+)に接続されている。ホール素子15の検出出力は、ホール素子15の出力信号から直流信号を除去する濾波器17とピークホールド回路19を介してコンパレータ20の反転入力(−)に接続されている。
濾波器16,17は、入力信号から直流信号を除去して振動数の周波数成分(交流信号)を抽出して出力する。より具体的には、ホール素子13,15の出力信号と直列したコンデンサと、出力信号に並列した抵抗器から構成されたハイパスフィルタで構成される。
ピークホールド回路18,19は、入力された電圧のピーク値をホールドして出力する回路である。より詳細には以前の時間に入力された電圧よりも大きな電圧が入力された場合にのみ動作し、現在の入力電圧を一定時間ホールドする回路である。
コンパレータ回路20は、ピークホールド回路18,19の出力信号を比較して、ピークホールド回路18の出力信号がピークホールド回路19の出力信号よりも大きければハイレベル、ピークホールド回路18の出力信号がピークホールド回路19の出力信号よりも小さければロウレベルのコントロール信号20aを出力する。つまり、ピークホールド回路18,19とコンパレータ回路20によって、濾波器16,17の出力信号の振幅を比較して大小を判定する第1の比較部110が構成されている。
また、濾波器16,17の出力は、コンパレータ回路20の出力のコントロール信号20aに応じて出力状態が切り替えられるアナログマルチプレクサ21と、交流増幅回路22を介して第2の比較部としてのコンパレータ回路23の非反転入力(+)に接続されている。コンパレータ回路23の反転入力(−)には電圧源24から閾値電圧V24が印加されている。
アナログマルチプレクサ21は、濾波器16,17で交流結合された2つのホール素子13,15の出力信号から振動振幅の大きい方をコントロール信号20aに基づき選択して出力する。アナログマルチプレクサ21の出力信号は交流増幅回路22にて2値化可能な振幅まで信号増幅され、コンパレータ回路23において閾値電圧V24でデジタル変換される。
なお、濾波器16,17において直流信号の除去後の基準電圧をVrefとすると、交流信号はVrefを振幅中心として出力されるため、閾値電圧V24はVrefと同電圧にすれば振幅中心でデジタル変換できる。
コンパレータ回路23の出力はマイクロコンピュータ25に入力され、マイクロコンピュータ25においてパルス周期を計測する事によってターンテーブル101の振動数を計算している。
この振動検出部100を図14〜図17を用いて更に詳しく説明する。
図14は、第1の駆動手段71として4極磁石式3相ブラシレスモータを、角度αの範囲で振動させた場合の交流結合されたホール素子の出力電圧の時間変化を示す。図15はその時のピークホールド電圧の時間変化を示している。
なお、ここでは、コンパレータ20の入出力特性にはヒステリシスがないものとして説明を始める。
角度αの範囲、つまり機械角で210°から240°までを振動数20Hzで往復振動した場合、振動による揺らぎは図14のように示される。この角度ではホール素子15からの信号は振動数20Hzになっていて正確な振動数が得られるが、ホール素子13からの信号は正弦波のピーク付近で振動するため、振動振幅が小さくなるとともに振動数が2倍になってしまって正確な振動数を得ることができない。
この時、図15よりピークホールド電圧はホール素子13の方がホール素子15よりも大きくなるため、アナログマルチプレクサ21にて、振動振幅の大きいホール素子15の出力を選択することができ、振動数に基づく正確な信号を取り出すことができる。
図16は、第1の駆動手段71として4極磁石式3相ブラシレスモータを、角度βの範囲で振動させた場合の交流結合されたホール素子の出力電圧の時間変化を示す。図17は、その時のピークホールド電圧の時間変化を示す。
この場合には図14,図15の場合と逆の状態になり、角度βの範囲で振動させた場合、ホール素子13からは正確な振動数が得られるが、ホール素子15からは振動数が2倍になってしまう。しかし、それぞれピークホールド電圧を比較することで、ホール素子15からの信号を選択することができ、この場合にも振動数に基づく正確な信号を取り出すことができる。
このように、第1の駆動手段71としてホール素子形式のブラシレスモータを用い、複数のホール素子13,14,15から2つのホール素子信号13,15を取り出して振動振幅を比較し、振動振幅の大きい方を取り出す構成にしたことによって、遠心分離装置の遠心分離と、攪拌を制御するためのセンサとを兼用することができ、攪拌を制御するためのセンサを第1の駆動手段71とは別に設ける必要がない。
以上の説明では、ターンテーブル101を機械角で210°から240°までを往復振動した場合、ターンテーブル101を機械角で240°から270°までを往復振動した場合を例に挙げて説明したが、図10を見て分かるようにホール素子13の出力信号とホール素子15の出力信号には、互いの出力信号が交差するポイントP1,P2,P3,P4が存在している。そのため、ターンテーブル101を機械角で0°から30°までを往復振動した場合、ターンテーブル101を機械角で90°から120°までを往復振動した場合、ターンテーブル101を機械角で180°から210°までを往復振動した場合、ターンテーブル101を機械角で270°から300°までを往復振動した場合には、動作が不安定になって、正確な振動数を計算することができない。
そこで、図13におけるコンパレータ20としては、入出力特性にヒステリシスを有するものを使用する。
図18は、ターンテーブル101を図10に示したP1〜P4のいずれかの角度を振動中心として往復振動させた場合の交流結合されたホール素子13,15の出力電圧を示す特性図である。また、図19はピークホールド電圧を示す特性図である。
図18に示すように、図10に示したP1〜P4を中心に振動するとホール素子13とホール素子15の出力信号は互いに逆位相となり、振動振幅は同じレベルになる。
図19に示すように、振動開始直後はホール素子13のピークホールド電圧が大きいが、時間が経過するとホール素子15のピークホールド電圧が大きくなる。最終的にはホール素子13とホール素子15のピークホールド電圧は同じレベルで保持される。
図20はコンパレータ回路20の入出力特性図であって、横軸はピークホールド回路18の出力からピークホールド15の出力を引いた値を示し、縦軸は出力信号を示している。
図19のようにピークホールド電圧が同じレベルであると、コンパレータ回路20の入力信号は0となり、出力信号はチャタリング現象を起こしてしまう。ホール素子13とホール素子15の出力信号は逆位相であることから、チャタリング現象によってアナログマルチプレクサ21の選択信号が切り替わると位相が反転してしまうため、振動数を誤検出してしまう。
この誤検出の問題は、コンパレータ回路20にヒステリシス特性を持たせることで解決できる。図21は、コンパレータ回路20にヒステリシス特性を持たせた場合の入出力特性図である。横軸はピークホールド回路18からピークホールド回路19を引いた入力信号を示し、縦軸は出力信号を示している。
この図20と図21を比較して分かるように、コンパレータ回路20がヒステリシス特性を有していない場合には、図20に示すように“0”レベルを閾値としてハイレベルとロウレベルが切り替わるが、コンパレータ回路20に、出力信号がハイになる第1の閾値:Th1と、出力信号がロウになる第2の閾値:Th2を別に設けて、ヒステリシス特性を持たせた場合には、図21に示すように入力信号が変化しても出力が変化しない不感帯(Th1−Th2)が形成され、出力がハイレベルとロウレベルの一方に固定されると反転しにくくなる。
具体的には、図19では振動開始の直後にホール素子13のピークホールド電圧がホール素子15より大きく、コンパレータ回路20の入力が第1の閾値:Th1以上になってコンパレータ回路20の入力がハイレベルに固定される。その後、ホール素子13とホール素子15のピークホールド電圧は同じレベルになるためにコンパレータ回路20の入力が“0”となるが、コンパレータ回路20の入力が第2の閾値:Th2以下にならないのでロウレベルに切り替わることは無い。
このため、コンパレータ回路20のコントロール信号20aによるアナログマルチプレクサ21の選択は、ホール素子13またはホール素子15の一方に保持され、振動中にコンパレータ回路20が切り替わることがなくなり、振動数を正確に検出できる。
なお、コントロール信号20aが切り替わらない不感帯(Th1−Th2)は2つのピークホールド回路18,19の出力信号のノイズ振幅で決定される。図22は図19の縦軸(電圧レンジ)を拡大した図。不感帯(Th1−Th2)を2つのピークホールド回路18,19の出力信号18a,19aのノイズ振幅より小さくするとノイズに反応してコンパレータが切り替わってしまうので、不感帯(Th1−Th2)は少なくともノイズの振幅の2倍以上の不感帯を設けることが望ましい。
(実施の形態2)
図23は本発明の実施の形態2の遠心分離装置の振動検出部100を示す。
実施の形態1を示す図13ではコンパレータ回路20にヒステリシス特性を持たせることによって、ターンテーブル101を往復振動させる位置にかかわらず正確な振動数を計算することができたが、図23に示した振動検出部100では、コンパレータ回路20にヒステリシス特性を持たせる代わりに、ラッチ手段として遅延型フリップフロップ30を設けて構成している。その他は実施の形態1と同じである。
遅延型フリップフロップ30の入力端子Dにはコントロール信号20aが入力され、アナログマルチプレクサ21の切替状態は遅延型フリップフロップ30の出力端子Qの信号で制御されている。
遅延型フリップフロップ30は、マイクロコンピュータ25からクロック端子CLKに入力されるデジタル信号の立ち上がりエッジのタイミングで入力端子Dの信号レベルを出力端子Qに出力する。出力端子Qはクロック端子CLKにもう1度立ち上がりエッジが入力されるまで出力は保持される。
振動開始後にマイクロコンピュータ25から遅延型フリップフロップ30のクロック端子CLKに1パルスを送信し、その時のコントロール信号20aをアナログマルチプレクサ21に入力したまま保持しておく。このため、コントロール信号20aが切り替わったとしても、アナログマルチプレクサ21の選択状態が切り替わることがなく、前記ヒステリシス特性と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3)
図24と図25は本発明の実施の形態3の遠心分離装置の振動検出部を示す。
実施の形態1を示す図13では、2つのホール素子13,15の出力を入力信号として振動数を計算したが、図24では3つのホール素子13,14,15の出力を入力信号として振動数を計算している点が実施の形態1とは異なっている。更に詳しくは、3対1アナログマルチプレクサ27を設けて3つのホール素子の出力を取り出す構成にした点と、アナログ・デジタル変換器28を設けてピーク検出回路やコンパレータによる信号処理をマイクロコンピュータ25での数値計算に置き換えた点が実施の形態1とは異なっている。
図24において、27は入力が3回路a,b,cで、出力が1回路の3対1のアナログマルチプレクサで、入力にはホール素子13,14,15の出力が濾波器16,26,17を介して入力されている。アナログマルチプレクサ27はマイクロコンピュータ25からの信号で制御される。例えば、マイクロコンピュータ25から2ビットで『00』の信号を受信した場合は『入力a』を選択し、『01』を受信した場合は『入力b』を選択し、『10』を受信した場合は『入力c』を選択する。アナログマルチプレクサ27の出力はアナログ・デジタル変換器28で多値のデジタル信号に変換され、マイクロコンピュータ25に転送する。外部メモリ29はSRAM等の揮発メモリや、EEPROM等の不揮発メモリで構成され、マイクロコンピュータ25と双方向に記憶データを通信している。
図25はマイクロコンピュータ25の振動数検出の工程図を示している。
ここでは、第2の駆動手段72がターンテーブル101に係合している状態を“セット”と呼び、セットされて振動攪拌が開始されたタイミングを“スタート”と定義する。
まず、ステップS11では、アナログマルチプレクサ27の出力を『入力a』の選択状態に切り替える。
ステップS12では、ホール素子13からの出力信号をアナログ・デジタル変換器28の出力から一定数サンプリングする。
ステップS13では、ステップS12でサンプリングしたホール素子13からの出力信号からピーク値を検出する。
ステップS14では、ステップS13で検出したピーク値を外部メモリ29に記憶する。
次にステップS15では、アナログマルチプレクサ27の出力を『入力b』の選択状態に切り替える。そしてステップS16〜ステップS18では、ステップS12〜ステップS14と同様に、ホール素子14からの出力信号を処理する。
続いて、ステップS19では、アナログマルチプレクサ27の出力を『入力c』の選択状態に切り替える。そしてステップS20〜ステップS22では、ステップS12〜ステップS14と同様に、ホール素子15からの出力信号を処理する。
その後、ステップS23では外部メモリ29に記憶されたホール素子13,14,15のピーク値を読み出し、ステップS24でピーク値の大きさを比較する。
ステップS25では、ステップ24でピーク値の大きさの比較結果に基づいてアナログマルチプレクサ27の切替状態を、振動攪拌の一動作が終わるまで固定する。
ステップ24でピーク値の大きさの比較結果には、下記のケース1〜ケース3の3パターンがあって、
ケース1の場合 : ホール素子13 = ホール素子14 > ホール素子15
ケース2の場合 : ホール素子14 = ホール素子15 > ホール素子13
ケース3の場合 : ホール素子15 = ホール素子13 > ホール素子14
具体的には、ケース1の場合はマルチプレクサ27の切替状態をホール素子13を選択して出力する切替状態に固定する。ケース2の場合はマルチプレクサ27の切替状態をホール素子14を選択して出力する切替状態に固定する。ケース3の場合はマルチプレクサ27の切替状態をホール素子15を選択して出力する切替状態に固定する。
ステップS26では、外部メモリ29から閾値を読み出す。
ステップS27では、アナログマルチプレクサ27の出力をステップS26で読み出した閾値でホール素子の出力信号を2値化する。
ステップS28では、ステップS27で2値化された信号のパルス周期を計測して振動数を計算する。
このように、実施の形態3においては3つのホール素子から振動振幅を比較し、振動振幅の最も大きいホール素子を取り出す構成にしたことによって、2つのホール素子を比較する実施の形態1の構成に比べて振動数の検出精度が向上する。また、マイクロコンピュータ25での数値計算に置き換えたことによって構成を簡略化できる。
なお、ターンテーブル101を再度同じ機械角で振動させる場合には、その際のステップS25でのアナログマルチプレクサ27の切替状態を記憶しておき、次回にはそれを読み出してアナログマルチプレクサ27の切替状態を同じにセットすることによって、ステップS26〜S28のルーチンを繰り返すだけで、ターンテーブル101の振動数を計算できる。
上記の各実施の形態において、4極磁石式の3相ブラシレスモータを使用した例について説明したが、回転位置の検出に複数のホール素子を使用するブラシレスモータであれば、どの種類のブラシレスモータでも使用することができる。
上記の各実施の形態において、マイクロコンピュータ25で計算した振動数が規定値になっているかどうかを確認するルーチンをマイクロコンピュータ25に設け、振動数が規定値に達しない状態を検出して、この状態の発生を報知することによって、血液成分の分析精度の低下を防止できる。
本発明にかかる遠心分離装置は、遠心分離装置の遠心分離と、攪拌を制御するためのセンサとを兼用することができ、遠心分離と攪拌を伴う分析工程の各種分析装置の分野において有用である。
本発明の実施の形態1における遠心分離装置の斜視図 同実施の形態における遠心分離装置を上面から見た上面図 同実施の形態のドアを開放した状態の斜視図 分析用デバイスをセットした状態の要部断面図 同実施の形態における第1の駆動手段と第2の駆動手段との係合が解除された状態の平面図と、第1の駆動手段と第2の駆動手段が係合した状態の平面図 同実施の形態の回転駆動手段の斜視図 同実施の形態の回転駆動手段の側面図 同実施の形態の第2の駆動手段のレバーを取り外した状態の平面図 同実施の形態における4極磁石式3相ブラシレスモータの原理図 同実施の形態における4極磁石式3相ブラシレスモータのホール素子から出力される電圧の角度特性図 同実施の形態における4極磁石式3相ブラシレスモータの3相駆動コイルの6つの極性パターンとマグネットロータの位置の関係を示す図 ホール素子13,14,15とU相,V相,W相の駆動コイルへの通電状態の関係図 同実施の形態における遠心分離装置の振動検出部の構成図 同実施の形態における3相ブラシレスモータを角度αの範囲で振動させた場合の交流結合されたホール素子の出力電圧を示す特性図 同実施の形態における3相ブラシレスモータを角度αの範囲で振動させた場合のピークホールド電圧を示す特性図 同実施の形態における3相ブラシレスモータを角度βの範囲で振動させた場合の交流結合されたホール素子の出力電圧を示す特性図 同実施の形態における3相ブラシレスモータを角度βの範囲で振動させた場合のピークホールド電圧を示す特性図 図10に示したP1〜P4のいずれかの角度を振動中心として往復振動させた場合の交流結合されたホール素子13,15の出力電圧を示す特性図 同実施の形態におけるピークホールド電圧を示す特性図 同実施の形態におけるコンパレータ回路20の入出力特性図 同実施の形態におけるコンパレータ回路20にヒステリシス特性を持たせた場合の入出力特性図 同実施の形態における図19の縦軸(電圧レンジ)を拡大した図 本発明の実施の形態2における振動検出部100の構成図 本発明の実施の形態3における遠心分離装置の振動検出部の構成図 同実施の形態におけるマイクロコンピュータの振動数検出の工程図
符号の説明
1 分析用デバイス
6 マグネットロータ
7,10 U相の駆動コイル
8,11 V相の駆動コイル
9,12 W相の駆動コイル
13,14,15 ホール素子(磁気センサ)
16,17,26 濾波器
18,19 ピークホールド回路
20 コンパレータ回路
20a コントロール信号
21 アナログマルチプレクサ
22 交流増幅回路
23 コンパレータ回路(第2の比較部)
24 電圧源
25 マイクロコンピュータ
27 アナログマルチプレクサ
28 アナログ・デジタル変換器
29 外部メモリ
30 遅延型フリップフロップ(ラッチ手段)
71 第1の駆動手段
71a ブラシレスモータ
72 第2の駆動手段
73 第3の駆動手段
100 振動検出部
101 ターンテーブル
107 回転中心
110 第1の比較部
R2 振動中心

Claims (7)

  1. 試料液を注入した分析用デバイスを保持するターンテーブルと、
    前記ターンテーブルを回転駆動すると共に少なくとも2つ以上の磁気センサを回転磁界の検出に使用した第1の駆動手段と、
    前記ターンテーブルに係合させて前記ターンテーブルを往復振動させる第2の駆動手段と、
    前記磁気センサの出力信号から最も大きい振幅の出力信号を選択しその選択状態を振動攪拌の一動作が終わるまで保持したまま選択された出力信号から振動数を演算する振動検出部と
    を備えた遠心分離装置。
  2. 前記第1の駆動手段の回転モータが、3相ブラシレスモータである
    請求項1に記載の遠心分離装置。
  3. 前記振動検出部が、
    前記磁気センサの出力信号のうちから2つの出力信号を取り出し直流信号を除去する濾波器と、
    前記濾波器の出力信号の振幅を比較して大小を判定しその判定結果を保持する第1の比較部と、
    前記第1の比較部の保持した判定結果に基づいて前記濾波器の出力信号から最も振幅の大きい信号を選択するマルチプレクサと、
    前記マルチプレクサで選択した出力信号をデジタル変換する第2の比較部と、
    前記第2の比較部の出力信号から振動数を演算するマイクロコンピュータと
    を備えた請求項1に記載の遠心分離装置。
  4. 前記第1の比較部が、
    第1の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第1のピークホールド回路と、
    第2の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第2のピークホールド回路と、
    前記第1,第2のピークホールド回路の出力の大きい方を判定するヒステリシス特性を有したコンパレータ回路と
    で構成されている請求項3に記載の遠心分離装置。
  5. 前記第1の比較部が、
    第1の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第1のピークホールド回路と、
    第2の磁気センサからの出力信号のピーク値を検出する第2のピークホールド回路と、
    前記第1,第2のピークホールド回路の出力の大きい方を判定するヒステリシス特性を有しないコンパレータ回路と、
    前記コンパレータ回路の出力を振動攪拌の一動作が終わるまで保持するラッチ手段と
    を備え、前記ラッチ手段の出力に基づいて前記マルチプレクサを切り替わるよう構成した
    請求項3に記載の遠心分離装置。
  6. 前記振動検出部が、
    2つ以上の前記磁気センサの出力信号からそれぞれ直流信号を除去する濾波器と、
    前記濾波器の出力信号から1つを選択するマルチプレクサと、
    前記マルチプレクサの出力信号をデジタル変換するアナログ・デジタル変換器と、
    前記アナログ・デジタル変換器の出力信号から振動数を演算するマイクロコンピュータと
    を備えた請求項1に記載の遠心分離装置。
  7. 前記濾波器が、
    前記磁気センサの出力信号と直列したコンデンサと、出力信号に並列した抵抗器から構成されたハイパスフィルタである
    請求項3または請求項6に記載の遠心分離装置。
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