以下、本発明の実施の形態による複合センサを、添付図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1ないし図7は第1の実施の形態を示している。図において、複合センサ1は、基板2、支持部3,28,31、質量部4,8,12,13,29,32、支持梁7,11,14,30,33、振動発生部16,19、変位検出部22,25,40,43、ダンピング部34,37、振動モニタ部46,49等によって構成されている。
基板2は、例えばシリコン材料、ガラス材料等により平板状に形成され、互いに直交するX軸,Y軸及びZ軸のうち、例えばX軸とY軸とに沿って水平に延びると共に、Z軸と垂直に配置されている。
また、基板2上には、例えば導電性を有する低抵抗なシリコン材料等にエッチング加工を施すことによって、支持部3,28,31、質量部4,8,12,13,29,32、支持梁7,11,14,30,33、振動発生部16,19、変位検出部22,25,40,43、ダンピング部34,37、振動モニタ部46,49等が形成されている。
中央支持部3は、第1の支持部を構成し、基板2上に位置してX軸方向の両側に設けられている。ここで、各中央支持部3は、基板2上に固定されY軸方向に延びた台座部3Aと、該台座部3Aに設けられ基板2から離れた位置で連結支持梁14の節部14Aに連結された3個の腕部3Bとによって構成されている。
ここで、各腕部3Bは、質量部4,8,12,13、支持梁7,11,14等を基板2から離間した状態に保持している。また、腕部3Bは、各質量部等を連結支持梁14の節部14A(振動の節)の位置で支持する。このため、これらの振動が節部14Aの位置で打消されるようになり、基板2に振動が伝わるのを抑制する。
第1の中央質量部4は、基板2と隙間をもって対向して配置されている。また、第1の中央質量部4は、Y軸方向に並んで配置された4個の質量部4,8,12,13のうち、第2の中央質量部8と共に中央寄りに配置されている。また、中央質量部4は、四角形の枠状に形成された第1の振動子としての外側枠体5と、該外側枠体5の内側に配置された四角形の枠状体からなる角速度検出用振動子としての内側枠体6と、該内側枠体6の四隅と外側枠体5との間に設けられた例えば4本の角速度検出用支持梁7とにより構成されている。
ここで、外側枠体5は、中央質量部4がX軸方向(振動方向)に振動するときに、後述する連結支持梁14の撓み変形がY軸方向(検出方向)の変位となって内側枠体6に伝わるのを遮断している。また、角速度検出用支持梁7は、X軸方向に延びてY軸方向に撓み変形可能に形成され、内側枠体6をY軸方向に変位可能に支持すると共に、内側枠体6がX軸方向に変位するのを規制している。
第2の中央質量部8は、中央質量部4とほぼ同様に、外側枠体9(第1の振動子)、内側枠体10(角速度検出用振動子)および角速度検出用支持梁11により構成されている。そして、内側枠体10は、角速度検出用支持梁11が撓み変形することによりY軸方向に変位可能となっている。
第1,第2の外側質量部12,13は、Y軸方向に対して中央質量部4,8の外側に配置され、第1の振動子をそれぞれ構成している。外側質量部12,13は、X軸方向に延びる直線状の質量体として形成され、その長さ方向の両端側は各連結支持梁14にそれぞれ連結されている。
連結支持梁14は、質量部4,8,12,13を挟んでX軸方向の両側に配置され、第1の支持梁を構成している。各連結支持梁14は、ばね性を有する細幅な梁として形成され、Y軸方向に直線状に延びると共に、X軸方向に撓み変形可能となっている。また、各連結支持梁14の長さ方向途中部位には、高い剛性を有する幅広な連結部15を介して質量部4,8の外側枠体5,9が連結され、連結支持梁14の長さ方向両端側には外側質量部12,13が連結されている。
これにより、4個の質量部4,8,12,13は、互いに梯子状に連結された連結質量部を構成すると共に、Y軸方向に直線状に並んだ状態で各連結支持梁14によりX軸方向に振動可能に支持されている。また、これらの質量部4,8,12,13は、質量部全体の重心Gを挟んでほぼ対称に配置されている。
そして、後述の振動発生部16,19に駆動信号をそれぞれ印加したときには、図1および図5に示すように、互いに隣合う質量部4,13と質量部8,12とが、これら全体の重心Gをほぼ一定の位置に保持しつつ、逆位相(位相が180°ずれた状態)でX軸方向に振動する。即ち、例えば質量部4,13がX軸方向に沿って矢示a1方向に振動するときには、質量部8,12がこれと逆向きの矢示a2方向に振動する。
このように、隣合う質量部同士が互いに逆位相で振動する振動モードは、複合センサ1が作動するときの正規の振動モードとして予め定められているものである。この振動モードにおいて、質量部4,13と質量部8,12とは、重心Gを中心として対称な位置で安定的に振動できると共に、重心Gの周囲でバランスよく振動することによって基板2への振動伝達を抑えることができる。また、正規の振動モードでは、各連結支持梁14がX軸方向に略S字状をなして撓み変形しつつ、くねるように振動し、その長さ方向途中部位には、振動の節となってほぼ一定の位置を保持する例えば3箇所の節部14Aがそれぞれ形成される。
第1の振動発生部16(振動発生手段)は、基板2と第1の外側質量部12との間に設けられ、静電力を用いて第1の外側質量部12をX軸方向に振動させる。ここで、振動発生部16は、X軸方向に離間して2箇所に配置されている。そして、各振動発生部16は、基板2に設けられた固定側駆動電極17と、外側質量部12に設けられた可動側駆動電極18とによって構成されている。
固定側駆動電極17は、例えば複数の電極板17Aを有する櫛歯状電極によって構成されている。また、可動側駆動電極18も、例えば複数の電極板18Aを有する櫛歯状電極からなり、各電極板17A,18Aは、Y軸方向の隙間をもって互いに噛合している。
第2の振動発生部19(振動発生手段)は、基板2と第2の外側質量部13との間に設けられ、静電力を用いて第2の外側質量部13をX軸方向に振動させる。ここで、振動発生部19は、X軸方向に離間して2箇所に配置されている。そして、各振動発生部19は、基板2に設けられた固定側駆動電極20と、外側質量部13に設けられた可動側駆動電極21とによって構成されている。
固定側駆動電極20は、例えば複数の電極板20Aを有する櫛歯状電極によって構成されている。また、可動側駆動電極21も、例えば複数の電極板21Aを有する櫛歯状電極からなり、各電極板20A,21Aは、Y軸方向の隙間をもって互いに噛合している。
そして、振動発生部16,19は、後述の振動制御回路52から駆動信号Vdが印加されることにより静電力を発生し、これを駆動力として外側質量部12,13をX軸方向に振動させる。この場合、例えば振動発生部16が矢示a2方向の駆動力F1を発生するときに、振動発生部19は、これと逆方向(逆位相)となる矢示a1方向の駆動力F2を発生する。
第1の角速度検出用の変位検出部22(角速度検出用の変位検出手段)は、基板2と中央質量部4との間に設けられ、内側枠体6がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部22は、基板2に設けられた固定側検出電極23と、内側枠体6に設けられた可動側検出電極24とによって構成されている。
また、固定側検出電極23は、Y軸方向に間隔をもってX軸方向に延びる複数の電極板23Aを有し、第1の中央質量部4の内側枠体6内に配置されている。一方、可動側検出電極24は、固定側検出電極23に対応して中央質量部4の内側枠体6に設けられ、固定側検出電極23の各電極板23AとY軸方向の隙間をもって噛合する複数の電極板24Aを有している。これにより、電極板23A,24Aは平行平板コンデンサを構成している。
そして、変位検出部22は、内側枠体6がZ軸周りの角速度ΩによってY軸方向に変位するときに、その変位量を検出電極23,24間の静電容量Cc1の変化により角速度Ωとして検出する。
第2の角速度検出用の変位検出部25(角速度検出用の変位検出手段)は、基板2と中央質量部8との間に設けられ、内側枠体10がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部25は、変位検出部22とほぼ同様に、基板2に設けられた固定側検出電極26と、内側枠体10に設けられた可動側検出電極27とによって構成されている。
また、固定側検出電極26は、Y軸方向に間隔をもってX軸方向に延びる複数の電極板26Aを有し、第2の中央質量部8の内側枠体10内に配置されている。一方、可動側検出電極27は、固定側検出電極26に対応して中央質量部8の内側枠体10に設けられ、固定側検出電極26の各電極板26AとY軸方向の隙間をもって噛合する複数の電極板27Aを有している。これにより、電極板26A,27Aは平行平板コンデンサを構成している。
そして、変位検出部25は、内側枠体10がZ軸周りの角速度ΩによってY軸方向に変位するときに、その変位量を検出電極26,27間の静電容量Cc2の変化により角速度Ωとして検出する。
ここで、第1の変位検出部22は、例えば中央質量部4の内側枠体6がY軸方向に沿って矢示b1方向に変位するときに検出電極23,24間の静電容量Cc1が増大し、内側枠体6が矢示b2方向に変位するときに静電容量Cc1が減少する。これと逆に、第2の変位検出部25は、例えば中央質量部8の内側枠体10が矢示b1方向に変位するときに検出電極26,27間の静電容量Cc2が減少し、内側枠体10が矢示b2方向に変位するときに静電容量Cc2が増大する。
第1の外側支持部28は、第2の支持部を構成し、重心Gを中心としたときに第1の外側質量部12よりもY軸方向の外側に配置され、基板2の表面に例えば2個設けられている。そして、これら2個の外側支持部28は、後述する非連結質量部29を挟んでX軸方向の両側に配置されている。
第1の非連結質量部29は、第2の振動子を構成し、外側質量部12の近傍に位置して基板2の表面側に設けられ、基板2と隙間をもって対向している。また、第1の非連結質量部29は、例えばC字状の枠体によって形成されている。
第1の外側支持梁30は、第2の支持梁を構成し、非連結質量部29と外側支持部28とを接続し、Y軸方向に向けて振動可能な状態で非連結質量部29を支持している。具体的には、外側支持梁30は、X軸方向に折り返して延び、Y軸方向に撓み変形可能なばね性を有している。そして、外側支持梁30は、例えば非連結質量部29のX軸方向の両側に2本ずつ合計4本配置されている。これにより、外側支持梁30は、非連結質量部29をY軸方向に振動可能に支持し、非連結質量部29がX軸方向に変位するのを規制している。
また、第1の外側支持部28、第1の非連結質量部29、第1の外側支持梁30に対して質量部4,8,12,13を挟んでY軸方向の反対側の位置には、第2の外側支持部31、第2の非連結質量部32、第2の外側支持梁33が設けられている。このとき、第2の外側支持部31、第2の非連結質量部32、第2の外側支持梁33は、第1の外側支持部28、第1の非連結質量部29、第1の外側支持梁30とほぼ同様に形成され、第2の支持部、第2の振動子、第2の支持梁をそれぞれ構成している。このため、非連結質量部32は、外側支持梁33を用いて外側支持部31に接続されると共に、Y軸方向に振動可能に支持されている。
また、非連結質量部29,32は、外側質量部12,13に対してY軸方向の反対側の位置に配置されている。このため、Y軸方向に加速度αが作用したときには、非連結質量部29,32は外側質量部12,13に対して互いに逆方向に変位する。即ち、非連結質量部29が外側質量部12に接近するときには、非連結質量部32は外側質量部13から離れる。また、非連結質量部29が外側質量部12から離れるときには、非連結質量部32は外側質量部13に接近する。
第1のダンピング部34(ダンピング手段)は、基板2と第1の非連結質量部29との間に設けられ、非連結質量部29が変位するときにエアダンピングを発生させるものである。このダンピング部34は、基板2に設けられた固定側櫛歯状板体群35と、非連結質量部29に設けられ固定側櫛歯状板体群35と噛合した可動側櫛歯状板体群36とによって構成されている。
固定側櫛歯状板体群35は、Y軸方向に対して非連結質量部29を挟んで外側質量部12の反対側に配置され、X軸方向に延びる複数の固定側板体35Aを有している。また、可動側櫛歯状板体群36も、例えば固定側板体35Aと平行なX軸方向に延びる複数の可動側板体36Aを有し、各板体35A,36Aは、Y軸方向の隙間をもって互いに対向している。
ここで、固定側櫛歯状板体群35は、第1の外側支持部28に電気的に接続されている。一方、可動側櫛歯状板体群36も、非連結質量部29および外側支持梁30を介して第1の外側支持部28に電気的に接続されている。このため、板体35A,36Aは、同電位となっている。
そして、第1の非連結質量部29がY軸方向に変位するときには、非連結質量部29と一緒に可動側櫛歯状板体群36がY軸方向に変位する。このとき、各板体35A,36A間で例えばスクウィズダンピング、スライドダンピング等が生じる。これにより、第1のダンピング部34は、第1の非連結質量部29の変位を抑制し、非連結質量部29の振動を減衰させる。
第2のダンピング部37(ダンピング手段)は、基板2と第2の非連結質量部32との間に設けられ、非連結質量部32が変位するときにエアダンピングを発生させるものである。このダンピング部37は、基板2に設けられた固定側櫛歯状板体群38と、非連結質量部32に設けられ固定側櫛歯状板体群38と噛合した可動側櫛歯状板体群39とによって構成されている。
固定側櫛歯状板体群38は、Y軸方向に対して非連結質量部32を挟んで外側質量部13の反対側に配置され、X軸方向に延びる複数の固定側板体38Aを有している。また、可動側櫛歯状板体群39も、例えば固定側板体38Aと平行なX軸方向に延びる複数の可動側板体39Aを有し、各板体38A,39Aは、Y軸方向の隙間をもって互いに対向している。
ここで、固定側櫛歯状板体群38は、第2の外側支持部31に電気的に接続されている。一方、可動側櫛歯状板体群39も、非連結質量部32および外側支持梁33を介して第2の外側支持部31に電気的に接続されている。このため、板体38A,39Aは、同電位となっている。
そして、第2の非連結質量部32がY軸方向に変位するときには、非連結質量部32と一緒に可動側櫛歯状板体群39がY軸方向に変位する。このとき、各板体38A,39A間で例えばスクウィズダンピング、スライドダンピング等が生じる。これにより、第2のダンピング部37は、第2の非連結質量部32の変位を抑制し、非連結質量部32の振動を減衰させる。
第1の加速度検出用の変位検出部40(加速度検出用の変位検出手段)は、第1の外側質量部12と第1の非連結質量部29との間に設けられ、非連結質量部29がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部40は、図2に示すように、外側質量部12に設けられた検出電極41と、非連結質量部29に設けられた検出電極42とによって構成されている。
また、検出電極41は、例えばT字状に形成された腕部41Aと、外側質量部12に設けられた複数個の第1電極部41Bと、腕部41Aに設けられた複数個の第2電極部41Cとによって構成されている。このとき、腕部41Aは、その基端側が外側質量部12に接続されると共に、その先端側が枠状をなす非連結質量部29の内部に挿入されている。
また、各第1電極部41Bは、非連結質量部29に接続された後述の腕部42Aに向けて突出した突起状に形成され、例えば図1中のb2方向に向けて突出している。さらに、各第2電極部41Cは、非連結質量部29に接続された腕部42Aに向けて突出した突起状に形成され、第1電極部41Bとは逆方向となる図1中のb1方向に向けて突出している。そして、第1電極部41Bの個数と第2電極部41Cの個数は、例えば同じ値に設定されている。
一方、検出電極42は、外側質量部12と腕部41Aとの間に挿入された腕部42Aと、腕部42Aのうち外側質量部12と対面する部位に設けられた複数個の第1電極部42Bと、腕部42Aのうち検出電極41の腕部41Aと対面する部位に設けられた複数個の第2電極部42Cとによって構成されている。このとき、各第1電極部42Bは、検出電極41の第1電極部41Bと対応した位置に配置されている。
また、各第1電極部42Bは、外側質量部12に向けて突出した突起状に形成され、例えばY軸方向のうち図1中のb1方向に向けて突出している。さらに、各第2電極部42Cは、検出電極41の腕部41Aに向けて突出した突起状に形成され、例えばY軸方向のうち図1中のb2方向に向けて突出している。そして、第1電極部41B,42Bは、Y軸方向の隙間をもって互いに対向し、平行平板コンデンサを形成している。同様に、第2電極部41C,42Cは、Y軸方向の隙間をもって互いに対向し、平行平板コンデンサを形成している。
また、第1電極部41B,42Bは、第1の外側質量部12が中立状態となったときに、例えば突出端面のうち半分程度が部分的に対向するように、X軸方向に位置ずれして配置されている。このとき、第1電極部41Bは、第1電極部42Bに対して例えばX軸方向のうちa1方向に位置ずれして配置されている。
一方、第2電極部41C,42Cも、第1電極部41B,42Bと同様に、第1の外側質量部12が中立状態となったときに、例えば突出端面のうち半分程度が部分的に対向するように、X軸方向に位置ずれして配置されている。但し、第2電極部41Cは、第2電極部42Cに対して第1電極部41Bとは逆方向となるa2方向に位置ずれして配置されている。また、加速度αが作用せずに非連結質量部29が停止したときには、第1電極部41B,42B間の距離寸法は、第2電極部41C,42C間の距離寸法とほぼ一致するように設定されている。
また、検出電極41は外側質量部12と一緒にX軸方向に変位する。これにより、外側質量部12がX軸方向に変位したときには、第1電極部41B,42Bの対向面積が変化すると共に、第2電極部41C,42Cの対向面積が変化する。そして、第1電極部41B,42Bと第2電極部41C,42Cとは、X軸方向で互いに逆方向に位置ずれして配置されている。このため、第1電極部41B,42Bの対向面積が増加するときには、第2電極部41C,42Cの対向面積が減少する。一方、第1電極部41B,42Bの対向面積が減少するときには、第2電極部41C,42Cの対向面積が増加する。
この結果、加速度αが作用せず非連結質量部29が停止したときには、第1電極部41B,42Bの静電容量と第2電極部41C,42Cの静電容量とは、互いに逆位相で変化する。即ち、第1電極部41B,42Bの静電容量の変化は、第2電極部41C,42Cの静電容量の変化によって相殺される。このため、非連結質量部29が停止したときには、第1電極部41B,42Bの静電容量と第2電極部41C,42Cの静電容量との総和である検出電極41,42間の静電容量Ca1の変化量は、図3中に実線で示すように、変化せずにほぼ一定の値となる。
一方、非連結質量部29が加速度によってY軸方向に変位したときには、第1電極部41B,42B間の距離寸法と第2電極部41C,42C間の距離寸法とは、互いに逆方向に変化する。即ち、第1電極部41B,42B間の距離寸法が増加するときには、第2電極部41C,42C間の距離寸法が減少する。一方、第1電極部41B,42B間の距離寸法が減少するときには、第2電極部41C,42C間の距離寸法が増加する。そして、第1電極部41B,42Bの静電容量と第2電極部41C,42Cの静電容量とは互いに逆位相で変化するから、検出電極41,42間の静電容量Ca1は、第1電極部41B,42Bの静電容量と第2電極部41C,42Cの静電容量との差に応じて変化する。この結果、非連結質量部29が加速度αによってY軸方向(b1方向,b2方向)に変位したときには、図3中に一点鎖線および破線で示すように、検出電極41,42間の静電容量Ca1は、外側質量部12の振動周期(駆動周期)と一致して変化すると共に、その振幅が非連結質量部29の変位量に応じた値となる。このため、変位検出部40は、検出電極41,42間の静電容量Ca1を用いて、非連結質量部29がY軸方向に変位するときの変位量を検出する。
第2の加速度検出用の変位検出部43(加速度検出用の変位検出手段)は、第2の外側質量部13と第2の非連結質量部32との間に設けられ、非連結質量部32がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部43は、変位検出部40とほぼ同様に、外側質量部13に設けられた検出電極44と、非連結質量部32に設けられた検出電極45とによって構成されている(図1参照)。
また、検出電極44は、例えばT字状に形成された腕部44Aと、外側質量部13に設けられた複数個の第1電極部44Bと、腕部44Aに設けられた複数個の第2電極部44Cとによって構成されている。このとき、腕部44Aは、その基端側が外側質量部13に接続されると共に、その先端側が枠状をなす非連結質量部32の内部に挿入されている。
また、各第1電極部44Bは、非連結質量部32に接続された後述の腕部45Aに向けて突出した突起状に形成され、例えば図1中のb1方向に向けて突出している。さらに、各第2電極部44Cは、非連結質量部32に接続された腕部45Aに向けて突出した突起状に形成され、第1電極部44Bとは逆方向となる図1中のb2方向に向けて突出している。そして、第1電極部44Bの個数と第2電極部44Cの個数は、例えば同じ値に設定されている。
一方、検出電極45は、外側質量部13と腕部44Aとの間に挿入された腕部45Aと、腕部45Aのうち外側質量部13と対面する部位に設けられた複数個の第1電極部45Bと、腕部45Aのうち検出電極44の腕部44Aと対面する部位に設けられた複数個の第2電極部45Cとによって構成されている。このとき、各第1電極部45Bは、検出電極44の第1電極部44Bと対応した位置に配置されている。
また、各第1電極部45Bは、外側質量部13に向けて突出した突起状に形成され、例えばY軸方向のうち図1中のb2方向に向けて突出している。さらに、各第2電極部45Cは、検出電極44の腕部44Aに向けて突出した突起状に形成され、例えばY軸方向のうち図1中のb1方向に向けて突出している。そして、第1電極部44B,45Bは、Y軸方向の隙間をもって互いに対向し、平行平板コンデンサを形成している。同様に、第2電極部44C,45Cは、Y軸方向の隙間をもって互いに対向し、平行平板コンデンサを形成している。
また、第1電極部44B,45Bは、第2の外側質量部13が中立状態となったときに、例えば突出端面のうち半分程度が部分的に対向するように、X軸方向に位置ずれして配置されている。このとき、第1電極部44Bは、第1電極部45Bに対して例えばX軸方向のうちa2方向に位置ずれして配置されている。
一方、第2電極部44C,45Cも、第1電極部44B,45Bと同様に、第2の外側質量部13が中立状態となったときに、例えば突出端面のうち半分程度が部分的に対向するように、X軸方向に位置ずれして配置されている。但し、第2電極部44Cは、第2電極部45Cに対して第1電極部44Bとは逆方向となるa1方向に位置ずれして配置されている。また、加速度が作用せずに非連結質量部32が停止したときには、第1電極部44B,45B間の距離寸法は、第2電極部44C,45C間の距離寸法とほぼ一致するように設定されている。
そして、第2の変位検出部43も、第1の変位検出部40とほぼ同様に、加速度が作用せず非連結質量部32が停止したときには、検出電極44,45間の静電容量Ca2は、変化せずにほぼ一定の値となる。一方、非連結質量部32が加速度によってY軸方向に変位したときには、検出電極44,45間の静電容量Ca2は、外側質量部13の振動周期(駆動周期)と一致して変化すると共に、その振幅が非連結質量部32の変位量に応じた値となる。さらに、第1の変位検出部40と第2の変位検出部43とは、非連結質量部29,32が加速度によってY軸方向に沿って同じ方向に変位したときには、互いに逆位相の信号を出力する構成となっている。
第1の振動モニタ部46(振動モニタ手段)は、基板2と第1の外側質量部12との間に設けられ、外側質量部12がX軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、振動モニタ部46は、基板2に設けられた固定側モニタ電極47と、外側質量部12に設けられた可動側モニタ電極48とによって構成されている。また、モニタ電極47,48は、例えば櫛歯状電極によって構成され、隙間をもって互いに噛合している。
第2の振動モニタ部49(振動モニタ手段)は、基板2と第2の外側質量部13との間に設けられ、外側質量部13がX軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、振動モニタ部49は、基板2に設けられた固定側モニタ電極50と、外側質量部13に設けられた可動側モニタ電極51とによって構成されている。また、モニタ電極50,51は、例えば櫛歯状電極によって構成され、隙間をもって互いに噛合している。
そして、第1の振動モニタ部46は、例えば外側質量部12がX軸方向に沿って矢示a1方向に変位するときにモニタ電極47,48間の静電容量Cm1が減少し、外側質量部12が矢示a2方向に変位するときに静電容量Cm1が増大する。これと逆に、第2の振動モニタ部49は、例えば外側質量部13が矢示a1方向に変位するときにモニタ電極50,51間の静電容量Cm2が増大し、外側質量部13が矢示a2方向に変位するときに静電容量Cm2が減少する。
また、基板2の表面には、質量部4,8,12,13,29,32等を収容した状態で蓋体(図示せず)が設けられると共に、蓋体の内部は気密な状態で封止されている。これにより、質量部4,8,12,13,29,32は減圧雰囲気中に封入され、空気抵抗が軽減した状態となっている。
次に、図4を参照しつつ、質量部4,8,12,13の振動状態を制御する振動制御回路52について説明する。振動制御回路52は、振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vmを用いて振動発生部16,19に出力する駆動信号Vdを制御する。そして、振動制御回路52は、C−V変換回路53,54(静電容量−電圧変換回路)、差動増幅器55、AGC回路56(自動利得制御回路)、駆動信号発生回路57等によって構成されている。
C−V変換回路53,54は振動モニタ部46,49の出力側にそれぞれ接続されている。そして、C−V変換回路53,54は、振動モニタ部46,49の静電容量Cm1,Cm2の変化を電圧変化に変換し、これらの電圧変化を予備モニタ信号Vm1,Vm2としてそれぞれ出力する。また、C−V変換回路53,54の出力側には、差動増幅器55が接続されている。
ここで、質量部4,13と質量部8,12とが互いに逆位相で振動しているときには、これら2つの予備モニタ信号Vm1,Vm2は互いに逆位相となる。このため、2つの予備モニタ信号Vm1,Vm2は差動増幅器55によって差動増幅され、最終的なモニタ信号VmとしてAGC回路56に出力される。
AGC回路56の出力側は、駆動信号Vdを出力する駆動信号発生回路57に接続されている。そして、AGC回路56は、モニタ信号Vmが一定となるようにゲインを調整する。また、駆動信号発生回路57は、増幅器58を介して第1の振動発生部16に接続されると共に、反転増幅器59を介して第2の振動発生部19に接続される。これにより、駆動信号発生回路57は、振動発生部16,19に対して互いに逆位相となる駆動信号Vdを入力し、振動発生部16,19は、質量部4,13と質量部8,12とを互いに逆位相で振動させる。
次に、角速度Ωを検出する角速度検出回路60(角速度検出手段)について説明する。角速度検出回路60は、変位検出部22,25による変位検出信号Vcを振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vmを用いて同期検波し、内側枠体6,10に作用する角速度Ωを検出する。そして、角速度検出回路60は、例えばC−V変換回路61,62、差動増幅器63、同期検波回路64等によって構成されている。
C−V変換回路61,62は変位検出部22,25の出力側にそれぞれ接続されている。そして、C−V変換回路61,62は、変位検出部22,25の静電容量Cc1,Cc2の変化を電圧変化に変換し、これらの電圧変化を予備的な変位検出信号Vc1,Vc2としてそれぞれ出力する。また、C−V変換回路61,62の出力側には、差動増幅器63が接続されている。
ここで、質量部4,8が互いに逆位相で振動している状態で、角速度Ωが作用したときには、内側枠体6,10はY軸方向に対して互いに逆方向に変位する(図5参照)。このとき、2つの予備的な変位検出信号Vc1,Vc2は互いに逆位相となる。このため、2つの予備的な変位検出信号Vc1,Vc2は差動増幅器63によって差動増幅され、最終的な変位検出信号Vcとして同期検波回路64に出力される。
同期検波回路64の入力側は、差動増幅器63に接続されると共に、位相シフト回路65を介してAGC回路56に接続されている。また、同期検波回路64の出力側には、角速度信号を取り出すためのLPF66(低域通過フィルタ)が接続されると共に、LPF66の出力側にはゲインおよびオフセットを調整するための調整回路67が接続されている。ここで、位相シフト回路65は、AGC回路56を介して出力されるモニタ信号Vmの位相を90°シフトさせた位相シフト信号Vm′を出力する。これにより、同期検波回路64は、変位検出信号Vcから位相シフト信号Vm′を用いて同期検波し、LPF66、調整回路67を介して角速度Ωに応じた角速度信号を出力する。
次に、加速度αを検出する加速度検出回路68(加速度検出手段)について説明する。加速度検出回路68は、変位検出部40,43による変位検出信号Vaを振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vmを用いて同期検波し、質量部29,32に作用する加速度αを検出する。そして、加速度検出回路68は、例えばC−V変換回路69,70、差動増幅器71、同期検波回路72等によって構成されている。
C−V変換回路69,70は変位検出部40,43の出力側にそれぞれ接続されている。そして、C−V変換回路69,70は、変位検出部40,43の静電容量Ca1,Ca2の変化を電圧変化に変換し、これらの電圧変化を予備的な変位検出信号Va1,Va2としてそれぞれ出力する。また、C−V変換回路69,70の出力側には、差動増幅器71が接続されている。
ここで、Y軸方向に加速度αが作用したときには、非連結質量部29,32は外側質量部12,13に対して互いに逆方向に変位する(図6参照)。このとき、2つの予備的な変位検出信号Va1,Va2は互いに逆位相となる。このため、2つの予備的な変位検出信号Va1,Va2は差動増幅器71によって差動増幅され、最終的な変位検出信号Vaとして同期検波回路72に出力される。
同期検波回路72の入力側は、差動増幅器71に接続されると共に、AGC回路56に接続されている。また、同期検波回路72の出力側には、加速度信号を取り出すためのLPF73(低域通過フィルタ)が接続されると共に、LPF73の出力側にはゲインおよびオフセットを調整するための調整回路74が接続されている。このとき、加速度αによって非連結質量部29,32が変位すると、この非連結質量部29,32の変位量に応じて変位検出部40,43の静電容量Ca1,Ca2は、質量部4,8,12,13のX軸方向の振動と同期して変化する。このため、同期検波回路72は、変位検出信号Vaからモニタ信号Vmを用いて同期検波し、LPF73、調整回路74を介して加速度αに応じた加速度信号を出力する。
本実施の形態による複合センサ1は上述の如き構成を有するもので、次にその製造方法について説明する。
まず、例えばガラス材料からなる基板2にシリコン基板を陽極接合し、該シリコン基板を50μm程度まで薄肉化する。次に、シリコン基板にドライエッチングを施し、支持部3,28,31、質量部4,8,12,13,29,32、支持梁7,11,14,30,33、振動発生部16,19、変位検出部22,25,40,43、ダンピング部34,37、振動モニタ部46,49等を形成する。このとき、質量部4,8,12,13,29,32等の全体を取囲むように、基板2の外縁にはシリコン材料からなる枠状体(図示せず)を形成する。
次に、減圧雰囲気中でガラス材料からなる蓋体を枠状体に陽極接合し、質量部4,8,12,13,29,32等を気密封止する。その後、蓋体にビアホールを形成した後、蓋体の表面にはビアホールの周囲に位置して金属薄膜を成膜する。この金属薄膜をパターニングして接続電極を形成し、該接続電極を通じて、振動発生部16,19、変位検出部22,25,40,43、振動モニタ部46,49を外部の回路52,60,68に接続する。これにより、複合センサ1が完成する。
次に、本実施の形態による複合センサ1の角速度Ωおよび加速度αの検出動作について説明する。
まず、振動発生部16,19に駆動信号Vdが出力されると、振動発生部16,19にX軸方向の静電力が発生し、質量部4,8,12,13はX軸方向に振動する。このとき、振動発生部16,19は、隣合う質量部4,13と質量部8,12とを互いに逆位相となるように振動させる。また、振動制御回路52は、振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vmを用いて駆動信号Vdを制御し、質量部4,8,12,13が常に同じ振幅で振動させる。
このように、質量部4,13がX軸方向に振動しているときに、複合センサ1にZ軸周りの角速度Ωが加わると、内側枠体6,10には、下記数1の式に示すY軸方向のコリオリ力Fが加わる。
このとき、内側枠体6,10は、図5に示すように、角速度Ωに応じてY軸方向に変位する。これにより、角速度検出用の変位検出部22,25の静電容量Cc1,Cc2が変化するから、C−V変換回路61,62は、静電容量Cc1,Cc2の変化を予備的な変位検出信号Vc1,Vc2に変換する。このとき、質量部4,8はX軸方向に沿って互いに逆位相で振動しているから、予備的な変位検出信号Vc1,Vc2は互いに逆位相となる。このため、差動増幅器63は、予備的な変位検出信号Vc1,Vc2の差を演算し、最終的な変位検出信号Vcを出力する。そして、同期検波回路64は、変位検出信号Vcから位相シフト信号Vm′と同期した信号を検波する。これにより、角速度検出回路60は、角速度Ωに応じた角速度信号を外部に出力する。
一方、質量部12,13がX軸方向に振動しているときに、複合センサ1にY軸方向の加速度αが加わると、非連結質量部29,32は、図6に示すように、加速度αに応じてY軸方向に変位する。これにより、加速度検出用の変位検出部40,43の静電容量Ca1,Ca2が変化するから、C−V変換回路69,70は、静電容量Ca1,Ca2の変化を予備的な変位検出信号Va1,Va2に変換する。このとき、非連結質量部29,32は質量部12,13に対してY軸方向に沿って互いに逆位置に配置されているから、予備的な変位検出信号Va1,Va2は互いに逆位相となる。このため、差動増幅器71は、予備的な変位検出信号Va1,Va2の差を演算し、最終的な変位検出信号Vaを出力する。そして、同期検波回路72は、変位検出信号Vaからモニタ信号Vmと同期した信号を検波する。これにより、加速度検出回路68は、加速度αに応じた加速度信号を外部に出力する。
かくして、本実施の形態では、質量部4,8,12,13がX軸方向に振動した状態でZ軸周りの角速度Ωが作用すると、コリオリ力Fによって内側枠体6,10がY軸方向に変位する。このため、角速度検出用の変位検出部22,25は内側枠体6,10のY軸方向の変位量を検出し、角速度検出回路60は変位検出部22,25による変位検出信号Vc1,Vc2に対して振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vm(位相シフト信号Vm′)を用いて同期検波処理を行う。これにより、角速度検出回路60は、角速度Ωに応じた角速度信号を出力することができる。
また、Y軸方向の加速度αが作用すると、加速度αによって非連結質量部29,32がY軸方向に変位する。このとき、加速度検出用の変位検出部40,43は、非連結質量部29,32が外側質量部12,13に対してY軸方向に変位するときの変位量を検出する。そして、加速度検出回路68は、変位検出部40,43による変位検出信号Va1,Va2に対して振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vmを用いて同期検波処理を行う。これにより、加速度検出回路68は、加速度αに応じた加速度信号を出力することができる。
また、質量部4,8,12,13とは別個に非連結質量部29,32を設けると共に、非連結質量部29,32を外側支持梁30,33を用いて支持する構成とした。このため、質量部4,8,12,13および支持梁7,11,14とは独立して、非連結質量部29,32および外側支持梁30,33を設計することができる。これにより、角速度Ωおよび加速度αの両方を高感度に検出することができる。
これに加えて、本実施の形態では、基板2と非連結質量部29,32との間にはダンピング部34,37をそれぞれ設けた。このため、ダンピング部34,37は、非連結質量部29,32の振動を減衰させるから、非連結質量部29,32の機械的なQ値を低下させることができる。
ここで、ダンピング部34,37の作用について具体的に説明する。まず、ダンピング部34,37を省いた場合には、例えば図7中に破線で示すように、100Pa以下の減圧雰囲気中で非連結質量部29,32の機械的Q値が例えば500以上に大きくなる。この場合、非連結質量部29,32の共振周波数成分を含んだ衝撃が加わると、非連結質量部29,32が大きく振動するから、加速度検出回路68は想定外の大きな加速度検出信号を出力し、加速度検出信号の出力暴れが発生する。
これに対し、本実施の形態のように、ダンピング部34,37を設けた場合には、図7中に実線で示すように、100Pa以下の減圧雰囲気中でも非連結質量部29,32の機械的Q値は例えば100〜200程度まで小さくなる。この場合、非連結質量部29,32の機械的なQ値を質量部4,8,12,13の機械的なQ値に比べて十分に小さくすることができる。
これにより、質量部4,8,12,13,29,32を減圧雰囲気中に封止したときには、質量部4,8,12,13は大きな振幅でX軸方向に振動させることができ、角速度Ωを高感度で検出できる。一方、非連結質量部29,32の変位はダンピング部34,37によって抑制されるから、外部から非連結質量部29,32の共振周波数成分を含む衝撃が印加されたときでも、非連結質量部29,32の振幅が小さくなる。この結果、加速度検出信号が過度に変動することがなく、加速度検出信号の出力暴れを抑制することができる。
また、ダンピング部34,37は、複数の固定側板体35A,38Aからなる固定側櫛歯状板体群35,38と、複数の可動側板体36A,39Aからなる可動側櫛歯状板体群36,39とによって構成した。このとき、固定側櫛歯状板体群35,38と可動側櫛歯状板体群36,39とが噛合した状態で、非連結質量部29,32と一緒に可動側櫛歯状板体群36,39が変位するから、複数の固定側板体35A,38Aと複数の可動側板体36A,39Aとの間で大きなエアダンピングを発生させることができ、非連結質量部29,32の振動に対する減衰効果を高めることができる。
また、加速度検出回路68は、加速度検出用の変位検出部40,43による変位検出信号Vaを振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vmを用いて同期検波する構成としたから、質量部4,8,12,13の振動周波数とは異なる周波数成分の信号を除去することができる。このため、電気的な外部雑音等を容易に除去することができ、加速度αの検出精度を高めることができる。
さらに、本実施の形態では、互いにY軸方向の隣合う位置に配置された質量部4,8は互いに逆位相で振動する。このとき、質量部4,8の内側枠体6,10は、角速度Ωが作用したときにはコリオリ力Fによって互いに逆方向に変位し、加速度αが作用したときには慣性力によって互いに等しい方向に変位する。このとき、角速度検出用の変位検出部22,25は内側枠体6,10のY軸方向の変位を検出し、差動増幅器63は変位検出部22,25による予備的な変位検出信号Vc1,Vc2の差を演算する。このため、角速度検出回路60は、差動増幅器63による変位検出信号Vcを用いて角速度Ωを検出するから、予備的な変位検出信号Vc1,Vc2中の加速度成分を相殺して除去することができ、加速度αと分離して角速度Ωを高精度に検出することができる。
また、非連結質量部29,32は質量部12,13に対してY軸方向の反対側に配置したから、加速度αが作用したときには、非連結質量部29,32は、質量部12,13に対して互いに逆方向に変位する。このとき、加速度検出用の変位検出部40,43は非連結質量部29,32のY軸方向の変位を検出し、差動増幅器71は変位検出部40,43による予備的な変位検出信号Va1,Va2の差を演算する。これにより、差動増幅器71から出力される最終的な変位検出信号Vaを大きく変化させることができ、加速度αの検出感度を高めることができる。
さらに、加速度検出用の変位検出部40は、質量部12と非連結質量部29の間に互いに対向して設けられた一対の第1電極部41B,42Bおよび一対の第2電極部41C,42Cを備え、該一対の第1電極部41B,42Bおよび一対の第2電極部41C,42Cは、質量部12の振動が停止した中立状態となるときに、部分的に対向するようにX軸方向に対して互いに位置ずれして配置する構成としている。同様に、加速度検出用の変位検出部43の一対の第1電極部44B,45Bおよび一対の第1電極部44C,45Cも、質量部13の振動が停止した中立状態となるときに、部分的に対向するようにX軸方向に対して互いに位置ずれして配置する構成としている。
このように構成したことにより、第1電極部41B,42Bの対向面積および第2電極部41C,42Cの対向面積は質量部12の振動周期と同期して変化する。同様に、第1電極部44B,45Bの対向面積および第2電極部44C,45Cの対向面積は質量部13の振動周期と同期して変化する。この結果、変位検出部40,43の静電容量Ca1,Ca2の変化に基づいて、質量部12,13の振動周期と同期した変位検出信号Vaを得ることができるから、同期検波回路72は、この変位検出信号Vaからモニタ信号Vmを用いて同期検波し、加速度αに応じた加速度信号を出力することができる。
また、本実施の形態では、加速度検出用の第1の変位検出部40は、第1電極部41B,42Bおよび第2電極部41C,42Cを備える構成とし、第1電極部41B,42Bと第2電極部41C,42Cとは、外側質量部12が変位したときに静電容量の増加と減少が互いに逆に変化し、かつ非連結質量部29が変位したときに静電容量の増加と減少が互いに逆に変化する構成とした。また、第2の変位検出部43も、第1の変位検出部40と同様に構成した。
これにより、例えば第1の変位検出部40では、加速度αが作用せずに非連結質量部29が停止したときには、検出電極41,42間の静電容量Ca1は、変化せずにほぼ一定の値となる。一方、非連結質量部29が加速度αによってY軸方向に変位したときには、検出電極41,42間の静電容量Ca1は、外側質量部12の振動周期と一致して変化すると共に、その振幅が非連結質量部29の変位量に応じた値となる。また、第2の変位検出部43も、第1の変位検出部40と同様の出力を得ることができる。
ここで、変位検出部40,43の出力から外側質量部12,13と同一周期の信号を同期検波したときには、同期検波後の加速度信号に対して外側質量部12,13の振動に基づくオフセット成分が含まれる。しかし、本実施の形態では、この加速度信号に含まれるオフセット成分を低減することができるから、信号処理が容易になると共に、オフセット成分に対する加速度成分の割合を高めることができ、加速度αの検出精度を高めることができる。
また、腕部42A,45Aを挟んでY軸方向の両側には第1電極部41B,42B,44B,45Bおよび第2電極部41C,42C,44C,45Cをそれぞれ設ける構成とした。このため、例えば第1電極部41B,42B,44B,45Bおよび第2電極部41C,42C,44C,45Cのうちいずれか一方だけを設けたときに比べて、検出電極41,42,44,45間の静電容量Ca1,Ca2は、2倍の振幅で変化するから、加速度αの検出感度を高めることができる。また、単位面積当りの第1電極部41B,42B,44B,45Bおよび第2電極部41C,42C,44C,45Cの個数を2倍以上にすることができるから、同一感度の場合には、素子の小型化が可能となる。
さらに、検出電極41,42,44,45間の静電容量Ca1,Ca2を検出するときには、検出電極41,42,44,45間に検出用の電圧を印加する必要があり、この電圧によって検出電極41,42,44,45間に静電力が作用する。このため、この静電力によって非連結質量部29,32が変位して、加速度αの検出精度が低下する可能性がある。
これに対し、本実施の形態では、腕部42A,45Aを挟んでY軸方向の両側には第1電極部41B,42B,44B,45Bおよび第2電極部41C,42C,44C,45Cをそれぞれ設ける構成としたから、静電容量Ca1,Ca2の検出に伴って電圧を印加しても、この電圧による静電力を相殺することができる。この結果、静電力に伴って加速度αの検出特性が劣化するのを低減することができる。
次に、図8ないし図11は第2の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、第2,第3の振動子を互いに異なる方向で、かつX軸およびY軸に傾斜した方向に向けて変位可能な状態でそれぞれ2個ずつ設け、これら合計4個の第2,第3の振動子を用いてX軸方向およびY軸方向の加速度を検出する構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
複合センサ81は、基板2、支持部3,82,85,88,91、質量部4,8,12,13,83,86,89,92、支持梁7,11,14,84,87,90,93、振動発生部16,19、変位検出部22,25,106,109,112,115、ダンピング部94,97,100,103、振動モニタ部46,49等によって構成されている。
第1の外側支持部82は、第2の支持部を構成し、質量部全体の重心Gを中心としたときに第1の外側質量部12よりもY軸方向の外側に配置され、基板2の表面に例えば2個設けられている。そして、これら2個の外側支持部82は、後述する非連結質量部83を挟んでX軸およびY軸に対して斜め45°傾斜したc1方向と直交する方向の両側に配置されている。
第1の非連結質量部83は、第2の振動子を構成し、外側質量部12の近傍に位置して基板2の表面側に設けられ、基板2と隙間をもって対向している。また、第1の非連結質量部83は、例えばC字状の枠体によって形成されている。そして、第1の非連結質量部83は、外側質量部12の近傍に配置されている。
第1の外側支持梁84は、第2の支持梁を構成し、非連結質量部83と外側支持部82とを接続し、X軸およびY軸に対して斜め45°傾斜したc1方向に向けて振動可能な状態で非連結質量部83を支持している。具体的には、外側支持梁84は、c1方向と直交したc2方向に向けて延び、c1方向に撓み変形可能なばね性を有している。これにより、外側支持梁84は、非連結質量部83をc1方向に振動可能に支持し、非連結質量部83がc2方向に変位するのを規制している。
また、第1の外側支持部82、第1の非連結質量部83、第1の外側支持梁84に対して質量部4,8,12,13を挟んでY軸方向の反対側の位置には、第2の外側支持部85、第2の非連結質量部86、第2の外側支持梁87が設けられている。このとき、第2の外側支持部85、第2の非連結質量部86、第2の外側支持梁87は、第1の外側支持部82、第1の非連結質量部83、第1の外側支持梁84とほぼ同様に形成され、第3の支持部、第3の振動子、第3の支持梁をそれぞれ構成している。
そして、外側支持梁87は、c2方向と直交した方向(c1方向)に向けて延び、c2方向に撓み変形可能なばね性を有している。これにより、外側支持梁87は、非連結質量部83の振動方向(c1方向)と直交するc2方向に振動可能な状態で非連結質量部86を支持し、非連結質量部86がc1方向に変位するのを規制している。
第3の外側支持部88、第3の非連結質量部89、第3の外側支持梁90は、質量部全体の重心Gを挟んで第1の外側支持部82、第1の非連結質量部83、第1の外側支持梁84とほぼ対称となる位置に設けられている。そして、第3の外側支持部88、第3の非連結質量部89、第3の外側支持梁90は、第2の支持部、第2の振動子、第2の支持梁をそれぞれ構成している。このため、第3の非連結質量部89は、外側質量部13の近傍に位置して、c1方向に振動可能に設けられている。
第4の外側支持部91、第4の非連結質量部92、第4の外側支持梁93は、質量部全体の重心Gを挟んで第2の外側支持部85、第2の非連結質量部86、第2の外側支持梁87とほぼ対称となる位置に設けられている。そして、第4の外側支持部91、第4の非連結質量部92、第4の外側支持梁93は、第3の支持部、第3の振動子、第3の支持梁をそれぞれ構成している。このため、第4の非連結質量部92は、外側質量部12の近傍に位置して、c2方向に振動可能に設けられている。
第1のダンピング部94(ダンピング手段)は、基板2と第1の非連結質量部83との間に設けられ、非連結質量部83が変位するときにエアダンピングを発生させるものである。このダンピング部94は、基板2に設けられた固定側櫛歯状板体群95と、非連結質量部83に設けられ固定側櫛歯状板体群95と噛合した可動側櫛歯状板体群96とによって構成されている。
ここで、固定側櫛歯状板体群95は、非連結質量部83の周囲に配置され、c1方向と直交したc2方向に延びる複数の固定側板体95Aを有している。また、可動側櫛歯状板体群96も、例えば固定側板体95Aと平行なc2方向に延びる複数の可動側板体96Aを有し、各板体95A,96Aは、隙間をもって互いに対向している。さらに、これらの櫛歯状板体群95,96は、いずれも第1の外側支持部82に電気的に接続されている。
第2のダンピング部97(他のダンピング手段)は、基板2と第2の非連結質量部86との間に設けられ、非連結質量部86が変位するときにエアダンピングを発生させるものである。このダンピング部97は、基板2に設けられた固定側櫛歯状板体群98と、非連結質量部86に設けられ固定側櫛歯状板体群98と噛合した可動側櫛歯状板体群99とによって構成されている。
ここで、固定側櫛歯状板体群98は、非連結質量部86の周囲に配置され、c2方向と直交したc1方向に延びる複数の固定側板体98Aを有している。また、可動側櫛歯状板体群99も、例えば固定側板体98Aと平行なc2方向に延びる複数の可動側板体99Aを有し、各板体98A,99Aは、隙間をもって互いに対向している。さらに、これらの櫛歯状板体群98,99は、いずれも第2の外側支持部85に電気的に接続されている。
第3のダンピング部100(ダンピング手段)は、第1のダンピング部94とほぼ同様に、固定側櫛歯状板体群101と可動側櫛歯状板体群102とによって構成されている。ここで、固定側櫛歯状板体群101は、基板2に設けられた複数の固定側板体101Aを有している。一方、可動側櫛歯状板体群102は、固定側櫛歯状板体群101と噛合して非連結質量部89に設けられ、固定側板体101Aと対向する複数の可動側板体102Aを有している。そして、これらの櫛歯状板体群101,102は、いずれも第3の外側支持部88に電気的に接続されている。
第4のダンピング部103(他のダンピング手段)は、第2のダンピング部97とほぼ同様に、固定側櫛歯状板体群104と可動側櫛歯状板体群105とによって構成されている。ここで、固定側櫛歯状板体群104は、基板2に設けられた複数の固定側板体104Aを有している。一方、可動側櫛歯状板体群105は、固定側櫛歯状板体群104と噛合して非連結質量部92に設けられ、固定側板体104Aと対向する複数の可動側板体105Aを有している。そして、これらの櫛歯状板体群104,105は、いずれも第4の外側支持部91に電気的に接続されている。
第1の加速度検出用の変位検出部106(加速度検出用の変位検出手段)は、第1の外側質量部12と第1の非連結質量部83との間に設けられ、非連結質量部83がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部106は、例えば第1の実施の形態による変位検出部40とほぼ同様に構成され、外側質量部12に設けられた検出電極107と、非連結質量部83に設けられた検出電極108とによって構成されている。
第2の加速度検出用の変位検出部109(他の加速度検出用の変位検出手段)は、第2の外側質量部13と第2の非連結質量部86との間に設けられ、非連結質量部86がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部109は、例えば第1の実施の形態による変位検出部43とほぼ同様に構成され、外側質量部13に設けられた検出電極110と、非連結質量部86に設けられた検出電極111とによって構成されている。
第3の加速度検出用の変位検出部112(加速度検出用の変位検出手段)は、質量部13,89間に設けられ、第1の変位検出部106とほぼ同様に構成されている。このため、第3の変位検出部112は、検出電極113,114を備え、非連結質量部89がY軸方向に変位したときの変位量を検出する。
第4の加速度検出用の変位検出部115(他の加速度検出用の変位検出手段)は、質量部12,92間に設けられ、第2の変位検出部109とほぼ同様に構成されている。このため、第4の変位検出部115は、検出電極116,117を備え、非連結質量部92がY軸方向に変位したときの変位量を検出する。
また、基板2の表面には、質量部4,8,12,13,83,86,89,92等を収容した状態で蓋体(図示せず)が設けられている。そして、質量部4,8,12,13,83,86,89,92は、蓋体内の減圧雰囲気中に気密封止されている。
次に、加速度α1,α2を検出する加速度検出回路118(加速度検出手段)について説明する。加速度検出回路118は、変位検出部106,109,112,115による変位検出信号Vay,Vaxを振動モニタ部46,49によるモニタ信号Vmを用いて同期検波し、質量部83,86,89,92に作用する加速度α1,α2を検出する。そして、加速度検出回路118は、例えばC−V変換回路119,120,121,122、加算増幅器123,124,129,130、差動増幅器125,131、同期検波回路126,132等によって構成されている。
C−V変換回路119,120,121,122は、変位検出部106,109,112,115の静電容量Ca1,Ca2,Ca3,Ca4の変化を電圧変化に変換し、これらの電圧変化を予備的な変位検出信号Va1,Va2,Va3,Va4としてそれぞれ出力する。
加算増幅器123は、C−V変換回路119,120の出力側に接続され、これらの予備的な変位検出信号Va1,Va2を加算する。また、加算増幅器124は、C−V変換回路121,122の出力側に接続され、これらの予備的な変位検出信号Va3,Va4を加算する。さらに、差動増幅器125は、加算増幅器123,124の出力の差から最終的な変位検出信号Vayを演算し、同期検波回路126に出力する。これにより、同期検波回路126は、変位検出信号Vayからモニタ信号Vmを用いて同期検波し、LPF127、調整回路128を介してY軸方向の加速度α1に応じた加速度信号を出力する。
一方、加算増幅器129は、C−V変換回路119,122の出力側に接続され、これらの予備的な変位検出信号Va1,Va4を加算する。また、加算増幅器130は、C−V変換回路120,121の出力側に接続され、これらの予備的な変位検出信号Va2,Va3を加算する。さらに、差動増幅器131は、加算増幅器129,130の出力の差から最終的な変位検出信号Vaxを演算し、同期検波回路132に出力する。これにより、同期検波回路132は、変位検出信号Vaxからモニタ信号Vmを用いて同期検波し、LPF133、調整回路134を介してX軸方向の加速度α2に応じた加速度信号を出力する。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、非連結質量部83,89をc1方向に変位可能に設け、非連結質量部86,92をc2方向に変位可能に設け、これら非連結質量部83,86,89,92のY軸方向の変位量を変位検出部106,109,112,115を用いて検出する構成とした。このため、変位検出部106,109,112,115による変位検出信号Va1,Va2,Va3,Va4を加算および減算の演算処理をすることによって、Y軸方向およびX軸方向の加速度α1,α2を検出することができる。また、変位検出部106,109,112,115による変位検出信号Va1,Va2,Va3,Va4を加算および減算の演算処理を施すから、例えば外気温度等によって変位検出信号Va1,Va2,Va3,Va4が変化するときでも、このような温度変化等の影響を低減することができ、加速度α1,α2の検出精度を高めることができる。
次に、図12は第3の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、単一の第1の振動子をX軸方向に振動可能に設ける構成としたことにある。
複合センサ141は、基板142、支持部143,154、振動子144,146,155、支持梁145,147,156、振動発生部148、ダンピング部157、変位検出部151,160、振動モニタ部163等によって構成されている。
基板142は、例えばガラス材料等により四角形の平板状に形成され、互いに直交するX軸,Y軸及びZ軸方向のうち、例えばX軸及びY軸方向に沿って水平に延びている。また、基板142上には、例えば導電性を有する低抵抗なシリコン材料等にエッチング加工を施すことによって、支持部143,154、振動子144,146,155、支持梁145,147,156、振動発生部148、変位検出部151,160、ダンピング部157、振動モニタ部163が形成されている。
支持部143は、基板142の表面に例えば2個設けられている。これら2個の支持部143は、振動子144を挟んでX軸方向の両側に配置されている。そして、後述する可動側の電極150,153,161,165は、支持部143と振動子144,146等とを介してグランドに接続されている。
第1の振動子144は、基板142の表面側に位置して、基板142と隙間をもって対向して配置されている。第1の振動子144は、例えば四角形の枠状に形成され、X軸方向に延びる前,後の横枠部144Aと、Y軸方向に延びる左,右の縦枠部144Bとにより構成されている。
また、振動子144の外側部位は後述する第1の支持梁145を介して第1の支持部143に連結され、振動子144の内側部位には後述する振動子146が支持梁147を介して連結されている。そして、これらの振動子144,146は基板142に対してZ軸方向に離間し、一定の振動方向(X軸方向)に振動する構成となっている。
第1の支持梁145は、第1の振動子144と第1の支持部143とを接続し、X軸方向に向けて振動可能な状態で第1の振動子144を支持している。具体的には、第1の支持梁145は、X軸方向に撓み変形可能に形成され、例えば第1の振動子144のX軸方向の両側にそれぞれ配置されている。そして、支持梁145は、振動子144,146をX軸方向に振動可能に支持し、振動子144がY軸方向に変位するのを規制している。
角速度検出用振動子146は、第1の振動子144内に位置して、第1の振動子144に連結した状態で設けられている。具体的には、振動子146は、例えば四角形の板状に形成されている。そして、振動子146は、第2の支持梁147が撓み変形することにより、振動方向と直交する検出方向(Y軸方向)に変位するものである。
角速度検出用支持梁147は、振動子144,146を接続し、Y軸方向に向けて変位可能な状態で振動子146を支持している。具体的には、支持梁147は、Y軸方向に撓み変形可能に形成され、例えば振動子146のY軸方向の両側にそれぞれ配置されている。そして、支持梁147は、振動子146をY軸方向に変位可能に支持し、この振動子146がX軸方向に変位するのを規制している。
振動発生部148(振動発生手段)は、基板142と第1の振動子144との間に設けられ、静電力を用いて振動子144,146をX軸方向に振動させる。ここで、振動発生部148は、基板142に設けられた固定側駆動電極149と、振動子144に設けられた可動側駆動電極150とによって構成されている。また、駆動電極149,150は互いに隙間をもって対向している。そして、振動発生部148は、後述の振動制御回路166から駆動信号Vdが入力されることにより、駆動電極149,150間に静電力を発生し、この静電力により振動子144,146をX軸方向に振動させる。
角速度検出用の変位検出部151(角速度検出用の変位検出手段)は、基板142と振動子146との間に設けられ、振動子146がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部151は、基板142に設けられた固定側検出電極152と、振動子146に設けられた可動側検出電極153とによって構成されている。また、検出電極152,153は互いに隙間をもって対向している。そして、可動側検出電極153は、振動子146と一緒にY軸方向に変位する。これにより、振動子146がY軸方向に変位したときには、検出電極152,153間の静電容量Ccが変化する。
第2の支持部154は、基板142の表面に位置して例えば2個設けられている。そして、これら2個の第2の支持部154は、後述する振動子155を挟んでY軸方向の両側に配置されている。
第2の振動子155は、第1の振動子144の近傍に位置して基板142の表面側に設けられ、基板142と隙間をもって対向している。また、第2の振動子155は、例えば四角形の板状に形成されている。
第2の支持梁156は、第2の振動子155と第2の支持部154とを接続し、Y軸方向に向けて振動可能な状態で第2の振動子155を支持している。具体的には、第2の支持梁156は、Y軸方向に撓み変形可能に形成され、例えば第2の振動子155のY軸方向の両側にそれぞれ配置されている。そして、支持梁156は、振動子155をY軸方向に振動可能に支持し、振動子155がX軸方向に変位するのを規制している。
ダンピング部157(ダンピング手段)は、基板142と第2の振動子155との間に設けられ、振動子155が変位するときにエアダンピングを発生させるものである。このダンピング部157は、第1の実施の形態によるダンピング部34とほぼ同様に、基板142に設けられた固定側櫛歯状板体群158と、振動子155に設けられ固定側櫛歯状板体群158と噛合した可動側櫛歯状板体群159とによって構成されている。
このとき、固定側櫛歯状板体群158は、第1の実施の形態による固定側櫛歯状板体群35とほぼ同様に、複数の固定側板体(図示せず)を櫛歯状に配置することによって構成されている。一方、可動側櫛歯状板体群159も、第1の実施の形態による可動側櫛歯状板体群36とほぼ同様に、複数の可動側板体(図示せず)を櫛歯状に配置することによって構成され、固定側板体と可動側板体とは互いに平行に延びた状態で対向している。また、これらの櫛歯状板体群158,159は、いずれも第2の支持部154に電気的に接続されている。
加速度検出用の変位検出部160(加速度検出用の変位検出手段)は、第1の振動子144と第2の振動子155との間に設けられ、第2の振動子155がY軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、変位検出部160は、第1の振動子144に設けられた検出電極161と、第2の振動子155に設けられた検出電極162とによって構成されている。また、検出電極161,162は、互いに隙間をもって対向し、平行平板コンデンサを形成している。
そして、検出電極161は第1の振動子144と一緒にX軸方向に変位し、検出電極162は第2の振動子155と一緒にY軸方向に変位する。これにより、第1の振動子144がX軸方向に変位したときには、検出電極161,162間の静電容量Caが変化する。また、第2の振動子155がY軸方向に変位したときにも、検出電極161,162間の静電容量Caが変化する。このため、変位検出部160は、検出電極161,162間の静電容量Caを用いて、第2の振動子155がY軸方向に変位するときの変位量を検出する。
振動モニタ部163(振動モニタ手段)は、基板142と第1の振動子144との間に設けられ、第1の振動子144がX軸方向に向けて変位するときの変位量を検出する。ここで、振動モニタ部163は、基板142に設けられた固定側モニタ電極164と、振動子144に設けられた可動側モニタ電極165とによって構成されている。また、モニタ電極164,165は、互いに隙間をもって対向し、平行平板コンデンサを形成している。
そして、可動側モニタ電極165は、振動子144と一緒にX軸方向に変位する。これにより、振動子144がX軸方向に変位したときには、モニタ電極164,165間の静電容量Cmが変化する。このため、振動モニタ部163は、第1の振動子144がX軸方向に振動したときの変位量を、モニタ電極164,165間の静電容量Cmを用いてモニタする。
また、基板142の表面には、振動子144,146,155等を収容した状態で蓋体(図示せず)を設けられている。そして、振動子144,146,155等は、蓋体内の減圧雰囲気中に気密封止されている。
次に、振動子144の振動状態を制御する振動制御回路166について説明する。振動制御回路166は、振動モニタ部163によるモニタ信号Vmを用いて振動発生部148に出力する駆動信号Vdを制御する。そして、振動制御回路166は、例えばC−V変換回路167、AGC回路168、駆動信号発生回路169等によって構成されている。
C−V変換回路167は、振動モニタ部163に接続され、振動モニタ部163の静電容量Cmの変化を電圧変化に変換し、この電圧変化をモニタ信号Vmとして出力する。
C−V変換回路167の出力側には、AGC回路168が接続されている。また、AGC回路168の出力側は、駆動信号発生回路169を介して振動発生部148に接続されている。そして、駆動信号発生回路169は、駆動信号Vdを発生し、この駆動信号Vdを駆動電極149に入力することによって、振動子144,146をX軸方向に振動させる。
また、AGC回路168は、C−V変換回路167によるモニタ信号Vmを用いて駆動信号Vdを補正する。これにより、AGC回路168は、例えば周囲温度が変化したときでも、振動子144,146を常に同じ振幅で振動させる。
次に、角速度Ωを検出する角速度検出回路170(角速度検出手段)について説明する。角速度検出回路170は、変位検出部151による変位検出信号Vcを振動モニタ部163によるモニタ信号Vmを用いて同期検波し、角速度検出用振動子146に作用する角速度Ωを検出する。そして、角速度検出回路170は、例えばC−V変換回路171、同期検波回路172等によって構成されている。
ここで、C−V変換回路171は、C−V変換回路167とほぼ同様に構成され、変位検出部151の静電容量Ccの変化を電圧変化に変換し、この電圧変化を変位検出信号Vcとして出力する。
また、同期検波回路172の入力側は、C−V変換回路171に接続されると共に、位相シフト回路173を介してAGC回路168に接続されている。ここで、位相シフト回路173は、AGC回路168を介して出力されるモニタ信号Vmの位相を90°シフトさせた位相シフト信号Vm′を出力する。このとき、振動子144のX軸方向の振動と、角速度Ωによる振動子146のY軸方向の振動とは、互いに位相が90°ずれる。このため、同期検波回路172は、例えばモニタ信号Vmから位相が90°シフトした位相シフト信号Vm′を用いて同期検波する。これにより、同期検波回路172は、角速度Ωに応じた角速度信号を出力する。
次に、加速度αを検出する加速度検出回路174(加速度検出手段)について説明する。加速度検出回路174は、変位検出部160による変位検出信号Vaを振動モニタ部163によるモニタ信号Vmを用いて同期検波し、振動子155に作用する加速度αを検出する。そして、加速度検出回路174は、例えばC−V変換回路175、同期検波回路176等によって構成されている。
ここで、C−V変換回路175は、C−V変換回路167とほぼ同様に構成され、変位検出部160の静電容量Caの変化を電圧変化に変換し、この電圧変化を変位検出信号Vaとして出力する。
また、同期検波回路176の入力側は、C−V変換回路175に接続されると共に、AGC回路168に接続されている。このとき、加速度αによって振動子155が変位すると、この振動子155の変位量に応じて変位検出部160の静電容量Caは、振動子144のX軸方向の振動と同期して変化する。このため、同期検波回路176は、例えばモニタ信号Vmを用いて同期検波する。これにより、同期検波回路176は、加速度αに応じた加速度信号を出力する。
本実施の形態による複合センサ141は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、振動発生部148に駆動信号Vdが出力されると、振動発生部148にX軸方向の静電力が発生し、振動子144,146はX軸方向に振動する。
これにより、振動子144,146の振動周波数に応じて振動モニタ部163の静電容量Cmが変化し、C−V変換回路167からAGC回路168にモニタ信号Vmが出力される。そして、AGC回路168は、このモニタ信号Vmに応じて補正した駆動信号Vdを振動発生部148に出力し、振動子144,146の振動状態をフィードバック制御する。これにより、周囲の温度等が変化する場合でも、振動子144,146は常に同じ振幅で振動する。
このように、振動子144,146がX軸方向に振動しているときに、複合センサ141にZ軸周りの角速度Ωが加わると、これらの振動子144,146には、Y軸方向のコリオリ力Fが加わる。
このため、振動子146は、角速度Ωに応じてY軸方向に変位し、角速度検出用の変位検出部151の静電容量Ccが変化する。このとき、C−V変換回路171は、静電容量Ccの変化を変位検出信号Vcに変換する。そして、同期検波回路172は、変位検出信号Vcから位相シフト信号Vm′と同期した信号を検波する。これにより、角速度検出回路170は、角速度Ωに応じた角速度信号を外部に出力する。なお、振動子144は、Y軸方向に自由度がないため、コリオリ力Fで変位しない。
一方、振動子144がX軸方向に振動しているときに、複合センサ141にY軸方向の加速度αが加わると、振動子155は加速度αに応じてY軸方向に変位する。このとき、加速度検出用の変位検出部160の静電容量Caが変化するから、C−V変換回路175は、静電容量Caの変化を変位検出信号Vaに変換する。そして、同期検波回路176は、変位検出信号Vaからモニタ信号Vmと同期した信号を検波する。これにより、加速度検出回路174は、加速度αに応じた加速度信号を外部に出力する。
かくして、本実施の形態では、第1の振動子144がX軸方向に振動した状態でZ軸周りの角速度Ωが作用すると、コリオリ力によって振動子146がY軸方向に変位する。このため、角速度検出用の変位検出部151は振動子146のY軸方向の変位量を検出し、角速度検出回路170は変位検出部151による変位検出信号Vcに対して振動モニタ部163によるモニタ信号Vm(位相シフト信号Vm′)を用いて同期検波処理を行う。これにより、角速度検出回路170は、角速度Ωに応じた角速度信号を出力することができる。
また、Y軸方向の加速度αが作用すると、加速度αによって第2の振動子155がY軸方向に変位する。このとき、加速度検出用の変位検出部160は、第2の振動子155が第1の振動子144に対してY軸方向に変位するときの変位量を検出する。そして、加速度検出回路174は、変位検出部160による変位検出信号Vaに対して振動モニタ部163によるモニタ信号Vmを用いて同期検波処理を行う。これにより、加速度検出回路174は、加速度αに応じた加速度信号を出力することができる。
また、本実施の形態でも、振動子144,146とは別個に振動子155を設けると共に、振動子155を支持梁156を用いて支持する構成とした。このため、振動子144,146および支持梁145,147とは独立して、振動子155および支持梁156を設計することができる。この結果、振動子144,146および支持梁145,147は角速度Ωの検出に適した質量や剛性にすることができると共に、振動子155および支持梁156は加速度αの検出に適した質量や剛性にすることができる。これにより、角速度Ωおよび加速度αの両方を高感度に検出することができる。
また、加速度検出回路174は、加速度検出用の変位検出部160による変位検出信号Vaを振動モニタ部163によるモニタ信号Vmを用いて同期検波する構成としたから、第1の振動子144の振動周波数とは異なる周波数成分の信号を除去することができる。このため、電気的な外部雑音等を容易に除去することができ、第1の振動子144を停止させた状態で加速度を検出した場合に比べて、加速度αの検出精度を高めることができる。
さらに、基板142と第2の振動子155との間にはダンピング部157を設けたから、ダンピング部157は、第2の振動子155の振動を減衰させ、第2の振動子155の機械的なQ値を第1の振動子144の機械的なQ値に比べて十分に小さくすることができる。これにより、第1,第2の振動子144,155を減圧雰囲気中に封止したときには、第1の振動子144は大きな振幅でX軸方向に振動させることができ、角速度Ωを高感度で検出できる。一方、第2の振動子155の変位はダンピング部157によって抑制されるから、外部から第2の振動子155の共振周波数成分を含む衝撃が印加されたときでも、第2の振動子155の振幅が小さくなる。この結果、加速度検出用の変位検出部160による変位検出信号Vaが過度に変動することがなく、加速度信号の出力暴れを抑制することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、非連結質量部29,32はY軸方向に変位可能に設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、非連結質量部をX軸方向に変位可能に設ける構成としてもよく、2つの非連結質量部のうち一方をY軸方向に変位可能に設け、他方をX軸方向に変位可能に設ける構成としてもよい。
また、前記第3の実施の形態では、第2の振動子155はY軸方向に変位可能に設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、第2の振動子をX軸方向に変位可能に設ける構成としてもよい。また、第2の振動子を2個設け、一方をY軸方向に変位可能に設け、他方をX軸方向に変位可能に設ける構成としてもよい。
また、前記第1および第2の実施の形態では、例えば4個の質量部4,8,12,13を連結支持梁14によって連結する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば3個以下、または5個以上の質量部を連結する構成としてもよい。
さらに、前記第1ないし第3の実施の形態では、Z軸周りの角速度Ωを検出する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、角速度検出用振動子は角速度検出用支持梁によってZ軸方向に変位可能に設け、Y軸周りの角速度Ωを検出する構成としてもよい。