JP5264577B2 - テンパーカラーが生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、BA仕上げステンレス鋼板のBA皮膜を化成処理したのち耐熱非粘着クリア塗膜を形成したテンパーカラーが生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板に関する。
耐熱非粘着塗膜を形成した鋼板は、厨房機器や家電製品などの分野で使用されている。耐熱非粘着塗膜は、食品等の油、その他の物質が付着しにくく、かつ最高使用温度が260℃と高温に耐えうる高耐久性の塗膜であり、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂のうち1種の耐熱性樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルキルビニルエーテルテトラフルオロエチレン共重合体のうち1種または2種のフッ素樹脂との混合物を主成分とする塗膜である。
従来、耐熱非粘着塗膜は黒色等の有色のものが主流であるが、最近ではステンレス鋼板に特有の金属外観を活かした物品のニーズも多くなり、ステンレス鋼板の表面に耐熱非粘着クリア塗膜を施した塗装鋼板の出現が待たれている。
ステンレス鋼表面には不動態皮膜が存在するため、そのままでは良好な塗膜密着性を得ることは困難である。このため従来、塗装前処理としてクロメート処理等の化成処理が施されていた。最近では六価クロムによる環境汚染に配慮して、クロムフリー化成処理が適用されるようになってきた。特許文献1には、チタンフッ化物のアンモニウム塩などを成分に持つクロムフリーの化成処理液を使用して密着性の良い塗装ステンレス鋼板を得る技術が記載されている。
特開2005−7771号公報
耐熱非粘着クリア塗膜を形成させるためには、400℃程度の高温での焼付け処理が必要となる。ステンレス鋼板には、酸洗仕上げ(2D)、酸洗スキンパス仕上げ(2B)、研磨仕上げ(No.4、HL)、BA(光輝焼鈍)仕上げなど、種々の表面肌のものがあるが、これらのうち、BA仕上げ以外のものは、大気等の酸化性の雰囲気で400℃前後の温度域に加熱するとテンパーカラーと呼ばれる酸化膜による着色が生じてしまう。塗膜を形成した場合でも、塗膜の下でテンパーカラーが生じる。唯一、BA仕上げステンレス鋼板の場合には、その温度域でテンパーカラーが極めて生じにくい。これはBA皮膜中にSiが濃化していることに起因すると考えられる。したがって、耐熱非粘着クリア塗膜を形成するステンレス鋼基材としては、BA仕上げ材を適用することが望まれる。
しかしながら、BA仕上げステンレス鋼板の表面に引用文献1の技術をはじめとする従来のクロムフリー化成処理を施しても、密着性の良い塗膜を形成させることは非常に難しいことがわかった。すなわち、塗膜密着性の観点から、塗装BAステンレス鋼板を量産する技術は確立されていない。
本発明は、塗装前処理としてクロムフリーの化成処理を適用することによって製造可能な、テンパーカラーの生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
上記目的は、BA仕上げステンレス鋼板のBA皮膜を、少なくとも最表層にBA皮膜成分、例えば少なくともSiを取り込んだクロムフリー化成処理皮膜が存在するように皮膜中間の深さまで改質して、それより深い領域には元のBA皮膜の状態が残る「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造の改質BA皮膜とし、その改質BA皮膜の上に耐熱非粘着クリア塗膜を形成してなるテンパーカラーが生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板によって達成される。前記改質層は、最表層から深さ方向にクロムフリー化成処理液に由来するTiの濃度が傾斜的に減少しているものである。
改質BA皮膜は、例えばフッ化水素チタン酸(H2TiF6)を配合するpH1.7以下の化成処理液によりBA皮膜中間の深さまでを改質したものである。
ここで、BA皮膜はBA(光輝焼鈍)処理によって形成されるステンレス鋼板表面の不動態皮膜である。BA条件として、例えば、雰囲気:70〜100体積%H2+30〜0体積%N2、露点:−45〜−70℃、焼鈍温度:850〜1100℃が挙げられる。改質BA皮膜は、BA皮膜を改質することによって得られる皮膜である。「最表層」は、当該皮膜の表面をXPS(例えばESCA)によりエッチングすることなく測定される領域である。なお、本明細書では、XPSにより深さ方向における酸素の検出強度のプロファイルを作成し、このプロファイルにおいて酸素の検出強度が、最表層の1/2になる深さまでを皮膜とみなす。すなわちBA皮膜あるいは改質BA皮膜の厚さは、酸素の検出強度が最表層の1/2になるエッチング深さをいう。エッチング深さは、SiO2標準試料によるエッチング速度から換算されるエッチング深さを適用する。
「中間の皮膜深さまで改質する」とは、始点が最表面、終点が最表層より深く皮膜/メタル界面より浅い位置である深さ方向の領域を、改質することを意味する。「テンパーカラーが生じていない」とは、目視によりテンパーカラーの発生が認められないことをいう。
上記のような改質BA皮膜は、例えば、XPSによる表面分析において、当該皮膜の表面からSiO2換算スパッタ深さが少なくとも2.5nmまでの領域、より好ましくは5nmまでの領域に、クロムフリー化成処理液のみに由来する成分(例えばTi)が検出されるものである。
本発明によれば、塗膜密着性が良く、テンパーカラーが生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板を実現することができた。これにより、ステンレス鋼板に特有の表面外観を活かした耐熱非粘着塗装ステンレス鋼板が提供可能になり、意匠性を重視する用途での耐熱非粘着塗装ステンレス鋼板のバリエーション拡大に寄与しうる。
SUS430BA仕上げ鋼板のBA皮膜について、XPSにより深さ方向の元素分析を行った結果を示したグラフ。 実施例1で得られた改質BA皮膜について、XPSにより深さ方向の元素分析を行った結果を示したグラフ。 比較例1で得られた皮膜について、XPSにより深さ方向の元素分析を行った結果を示したグラフ。
〔BA仕上げステンレス鋼板〕
本発明ではBA仕上げステンレス鋼板を化成処理用原板に使用する。そのステンレス鋼種には特に制限はなく、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系の他、複相組織を有するステンレス鋼種なども適用可能である。ここで、ステンレス鋼とは、JIS G0203:2000の番号4201に記載されるように、Cr含有量が10.5質量%以上の鋼である。Cr含有量の上限は概ね30質量%程度とすることが望ましい。既存の規格鋼種としては、JIS G4305:2005に規定されるオーステナイト系、フェライト系等の鋼種が挙げられる。
成分組成の範囲を示すと、例えば、オーステナイト系の場合、質量%で、C:0.12%以下、Si:4%以下とくに1%以下、Mn:5%以下とくに2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:6〜28%とくに8〜14%、Cr:15〜26%とくに16〜26%、N:0.3%以下、Mo:0〜7%とくに0〜3%、Cu:0〜4%とくに0〜2%、Ti+Nb+Zrの合計:0〜0.8%、B:0〜0.1%、残部実質的にFeの組成を挙げることができる。
フェライト系の場合、C:0.12%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:10.5〜30%とくに11〜20%、Mo:0〜3%、Cu:0〜1%、Ti+Nb+Zrの合計:0〜0.8%、B:0〜0.1%、残部実質的にFeの組成を挙げることができる。
上記各組成範囲において、含有量の下限を0%と規定したものは、任意選択元素であり、無添加(不可避的不純物レベル)とすることができる。「残部実質的にFe」とは、本発明の効果を阻害しない限り上記以外の元素の混入が許容できることを意味する。例えば、V:1質量%以下、Ca:0.1質量%以下、Mg:0.1質量%以下、Y:0.1質量%以下、REM(希土類元素):0.1質量%以下の混入が許容される。フェライト系の場合はNi:0.6質量%まで許容される。「残部実質的にFe」には「残部Feおよび不可避的不純物からなる」場合が含まれる。
BA仕上げステンレス鋼板は、BA処理による不動態皮膜(BA皮膜)を有する鋼板である。必ずしも鏡面光沢を有するものである必要はない。BA皮膜は、Crの他にSiが濃化している点に特徴がある。すなわち、BA皮膜中にはSi酸化物が多量に含まれている。そのために、従来のクロムフリー化成処理液(例えばバルブメタルをアンモニウム塩の形で含有するもの)では、十分にエッチング効果が発揮されず、塗膜密着性の良い化成処理皮膜を形成させることが困難であった。
〔改質BA皮膜〕
本発明の塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼素地と耐熱非粘着塗膜の間に、「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造の改質BA皮膜が介在している点に特徴がある。この複層構造のうち、「改質層」はクロムフリー化成処理液に由来する成分(例えばTi)の濃化が認められる部分であり、この部分が塗膜密着性の向上に寄与する。その下の「残存BA皮膜層」はクロムフリー化成処理液に由来する成分(例えばTi)の濃化が認められない部分であり、この部分がBA皮膜に特有の耐テンパーカラー性(テンパーカラーの発生に対する抵抗性)を発揮する。
具体的には、この改質BA皮膜は、少なくとも最表層に化成処理液に由来する成分(例えばTi)と、BA皮膜を構成していた成分(例えばSi)の両方が存在していることに特徴がある。特に、SiO2換算スパッタ深さが少なくとも2.5nmまでの領域、より好ましくは5nmまでの領域に、クロムフリー化成処理液のみに由来する成分(例えばTi)が検出されるものが、より好適な対象となる。化成処理液に由来する成分が存在している深さまでが改質された改質層であると捉えることができる。この改質層は、最表層から内部に進むに従って、化成処理液に由来する成分(例えばTi)の濃度が傾斜的に減少していき、いわゆる傾斜機能材料と見ることができる。本発明の改質BA皮膜は、その「改質層」と元のBA皮膜が残存して「残存BA皮膜層」で構成されている。すなわち、「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造を持つものである。
種々検討の結果、少なくとも最表層に化成処理液に由来する成分(例えばTi)と、BA皮膜を構成していた成分(例えばSi)の両方が存在しており、最表層から内部に進むに従って、化成処理液に由来する成分(例えばTi)の濃度が傾斜的に減少していく形態の改質BA皮膜を形成した場合に、耐熱非粘着塗膜との密着性が実用レベルに改善される。そのメカニズムについては現時点で明確ではない。
発明者らの調査によれば、特許文献1に開示されるようなチタンフッ化物のアンモニウム塩を成分とするクロムフリー化成処理液では、Siの濃化したBA皮膜をエッチングする作用が弱く、BA仕上げステンレス鋼板の塗装前処理には適さないことが判明した。
そこで種々検討したところ、上記のような改質BA皮膜の「改質層」は、Tiを含有し、かつエッチング性を比較的高めた化成処理液によって形成させることが可能になることがわかった。具体的には、アンモニウム塩を含まず、Tiをフッ化水素チタン酸(H2TiF6)の形で配合したクロムフリー化成処理液を使用することが、BA皮膜の最表層にTiとNを濃化させる上で極めて有効であることが明らかになった。pHは1.7以下、特に1.5程度に低下させたものが好適である。例えば、フッ化水素チタン酸を5〜15g/L、有機酸を5〜14g/L含有し、pHが1.7以下好ましくは1.5±0.2に調整された水溶液が好適である。バルブメタルとしてはTiが含まれていればよく、Zrその他のバルブメタルは必要ない。有機酸としては例えばタンニン酸が挙げられる。フッ化水素チタン酸、有機酸以外の成分としては、SiO2成分をゾルとして含んでいても構わないが、BA皮膜中には本来Si酸化物が濃化しているので、化成処理液中にはSiO2成分は特に必要ない。すなわち本発明では、フッ化水素チタン酸を5〜15g/L、有機酸例えばタンニン酸を5〜14g/L含有し、pHが1.7以下好ましくは1.5±0.2に調整され、残部は水で構成されるシンプルな組成のクロムフリー化成処理液が使用できる。
改質BA皮膜は例えば以下のようにして形成することができる。
化成処理用原板となるBA仕上げステンレス鋼板の被処理面を通常の方法で脱脂した後、その表面に上述のクロムフリー化成処理液を一般的な手法にて塗布する。ただし、BA皮膜の全部をエッチングして改質してしまわないように留意することが重要である。これは、耐テンパーカラー性を発揮する「残存BA皮膜層」を残すためである。したがって、過剰な塗布量とならないように調整することが望ましい。例えば、pHを1.5に調整した化成処理液の場合、フッ化水素チタン酸中のTi換算塗布量で0.5〜40mg/m2とすれば、多くのBAステンレス鋼板に対して良好な結果を得ることができる。「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造を確実に得るためには、予め予備実験等により、適用するBAステンレス鋼板の鋼種、そのBA処理条件、化成処理液の組成に基づいて、適正な塗布量を把握しておけばよい。塗布後に鋼板を大気中で乾燥させることにより改質BA皮膜が形成される。乾燥温度は50〜200℃とすればよい。
〔塗膜〕
上記のように化成処理(塗装前処理)を施して「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造の改質BA皮膜を形成させた鋼板を塗装原板として、通常の耐熱非粘着塗装工程に供し、改質BA皮膜の上に塗膜を形成することによって本発明の塗装BAステンレス鋼板が得られる。焼付け処理では前述のように400℃前後に加熱されるが、テンパーカラーは生じていない。
塗料は、従来から耐熱非粘着塗装に使用されているフッ素樹脂系の塗料をベースとしてクリア塗膜が形成されるように透明性を確保したものを用意すればよい。下地の鋼板素地が透けて見える程度の透明性が確保されていればよく、ある程度有色の塗膜であっても構わない。
《実施例1》
市販のSUS430BA仕上げ鋼板(板厚0.5mm)を入手した。
一方、化成処理液として、フッ化水素チタン酸を10g/L、タンニン酸を10g/L含有し、pHが1.5に調整され、残部が水で構成されるシンプルな組成のクロムフリー化成処理液を用意した。
上記SUS430BA仕上げ鋼板の片面について、通常の脱脂を行った後、上記化成処理液をフッ化水素チタン酸中のTi換算塗布量10mg/m2となるようにロールコーター法にて塗布した。その後、その鋼板を大気中150℃の炉中に装入して30秒間保持することにより化成処理液を乾燥させ、改質BA皮膜を得た。
図1に、SUS430BA仕上げ鋼板のBA皮膜について、XPSにより深さ方向の元素分析を行った結果を示す。縦軸の原子%は表示されている元素の全カウント数を100とした場合の相対的な原子%である(後述図2において同じ)。酸素濃度の深さ方向プロファイルから、このBA皮膜の厚さ(酸素濃度が最表層の1/2となる深さ)はSiO2換算スパッタ深さで約8nmである。皮膜中には最表層までSiとCrが濃化していることがわかる。
図2に、上記化成処理後の改質BA皮膜について、XPSにより深さ方向の元素分析を行った結果を示す。酸素濃度の深さ方向プロファイルから、このBA皮膜の厚さ(酸素濃度が最表層の1/2となる深さ)はSiO2換算スパッタ深さで約8nmであり、化成処理前(図1のもの)と同等であった。皮膜中には最表層までSiとCrが濃化していることには変わりないが、最表層を含む皮膜表層部にはTiおよびSiが検出された。Tiが検出された領域は、化成処理液によってエッチングされ、BA皮膜中の成分(例えばSi)を取り込みながら新たな化成処理皮膜が形成された「改質層」に相当する。改質層においてTiの濃度は深さ方向に進むに従って傾斜的に減少している。また、その「改質層」より深く、メタル界面より浅い領域にはTiが存在せず、化成処理前の皮膜組成が概ねそのまま維持されている領域がある(7.5nm深さのデータ参照)。この領域が「残存BA皮膜層」に相当する。このことから、得られた改質BA皮膜は、「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造の改質BA皮膜であることが確認された。
次に、この改質BA皮膜の上に、耐熱非粘着クリア塗料を塗布した。この塗料はポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂のうち1種の耐熱性樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルキルビニルエーテルテトラフルオロエチレン共重合体のうち1種または2種のフッ素樹脂との混合物を主成分とする塗料であり、顔料を添加していないことを除き、従来から厨房機器等に使用されている黒色の耐熱非粘着塗料と同種のものである。塗布はロールコーター法にて行い、400℃で焼き付けることにより平均塗膜厚さ2μmの耐熱非粘着クリア塗膜を形成した。得られた塗膜面を目視により観察した結果、テンパーカラーの発生は認められなかった。なお、塗膜を形成していないBA皮膜ままの裏面においてもテンパーカラーの発生は認められなかった。
その後、この塗膜表面にカッターナイフにより1mm間隔の平行な直線状のカットを一定方向に11本入れ、さらにそれらに直角の方向に11本入れることにより、碁盤目状のカットを形成し、その碁盤目の部分についてJIS Z1522に規定されるセロハン粘着テープを使用して塗膜剥離試験を実施し、セロハン粘着テープを貼付した目のうち、塗膜が剥離した目の割合を測定した。この塗膜剥離率が2%以下であれば、従来一般的なクリア塗装ステンレス鋼板と遜色のない実用的な塗膜密着性を有していると判断される。
本例のものは、繰り返し数n=3で上記の塗膜剥離試験を行った結果、最も成績の悪い場合の塗膜剥離率が1%であり、良好な塗膜密着性を有していることが確認された。
《比較例1》
化成処理液として、(NH42TiF6を16g/L、H3PO4を40g/L、タンニン酸を4g/L含有し、pHが1.8に調整され、残部が水で構成される従来のクロムフリー化成処理液を使用するとともに、この化成処理液はエッチング力が比較的弱いことを考慮してTi換算塗布量が40mg/m2となるように多めに塗布したことを除き、実施例1と同様の方法で実験を行った。
図3に、上記化成処理後の皮膜について、XPSにより深さ方向の元素分析を行った結果を示す。化成処理液のエッチング力が弱いために、皮膜は単に膜厚が増大しているだけであり、化成処理液に由来するTiは最表層にしか検出されなかった。すなわち、皮膜深さ方向におけるTi濃度の傾斜傾向は認められず、表面からSiO2換算スパッタ深さが少なくとも2.5nmまでの領域にTiとSiの両方が存在するような改質BA皮膜は形成されていなかった。
得られた塗膜面を目視により観察した結果、テンパーカラーの発生は認められなかった。しかし、塗膜剥離試験の結果、n=3のうち最も成績の良かった場合の塗膜剥離率が10%であり、塗膜密着性の良好な塗装BAステンレス鋼板は得られなかった。
《比較例2》
化成処理に供する原板として、市販のSUS430No.4研磨仕上げ鋼板(板厚0.5mm)を使用したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を試みた。
No.4研磨仕上げ鋼板の表面に形成されている皮膜をXPSで調べた結果、皮膜厚さはSiO2換算スパッタ深さで約3nmと非常に薄く、皮膜中にSiの濃化は認められなかった。
化成処理後の皮膜をXPSで調べた結果、皮膜厚さはSiO2換算スパッタ深さで約3nmと化成処理前と同等であった。ただし、元の皮膜全部がエッチングされて改質層となっており、メタル界面まで皮膜の全深さ領域でTiが検出された。
得られた塗膜面を目視により観察した結果、テンパーカラーが発生していた。なお、塗膜を形成していないNo.4研磨仕上げのままの裏面においてもテンパーカラーが発生していた。
この塗装鋼板は製品価値がないことが明らかであるから、塗膜密着性試験は行わなかった。
なお、上記の各XPS分析は以下の条件で行ったものである。
〔XPS分析条件〕
・使用装置: PHI社製;1600S型 X線光電子分光装置
・測定条件: X線源;AlKα(400W)
脱出深さ;2.7nm(SiO2換算)
分析領域;最表面のワイドスペクトル0.8×2.0mm
エッチング面0.8mmφ
・エッチング: Arイオン銃使用
・エッチング領域: 3×3mm(設定値4×2mm)
・エッチング速度: 1.87nm/min(SiO2換算)
・デプス測定は最表面のナロースペクトルを2回測定した後、「1.34minエッチング→スペクトル測定」のサイクルを10回繰り返して行った(SiO2換算で25nmまで10水準測定)。

Claims (6)

  1. BA仕上げステンレス鋼板のBA皮膜を、Tiをフッ化水素チタン酸(H 2 TiF 6 )の形で配合した処理液を塗布・乾燥することにより形成した、少なくとも最表層にBA皮膜成分の一部を取り込んだクロムフリー化成処理皮膜がTi換算塗布量で0.5〜40mg/m 2 存在するように皮膜中間の深さまで改質して、それより深い領域には元のBA皮膜の状態が残る「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造の改質BA皮膜とし、その改質BA皮膜の上に耐熱非粘着クリア塗膜を形成してなるテンパーカラーが生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板。
  2. BA仕上げステンレス鋼板のBA皮膜を、Tiをフッ化水素チタン酸(H 2 TiF 6 )の形で配合した処理液を塗布・乾燥することにより形成した、少なくとも最表層にBA皮膜成分のうち少なくともSiを取り込んだクロムフリー化成処理皮膜がTi換算塗布量で0.5〜40mg/m 2 存在するように皮膜中間の深さまで改質して、それより深い領域には元のBA皮膜の状態が残る「改質層+残存BA皮膜層」からなる複層構造の改質BA皮膜とし、その改質BA皮膜の上に耐熱非粘着クリア塗膜を形成してなるテンパーカラーが生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板。
  3. 前記改質層は、最表層から深さ方向にTiをフッ化水素チタン酸(H 2 TiF 6 )の形で配合したクロムフリー化成処理液に由来するTiの濃度が傾斜的に減少しているものである請求項1または2に記載の耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板。
  4. 改質BA皮膜は、フッ化水素チタン酸(H2TiF6)を配合するpH1.7以下の化成処理液によりBA皮膜中間の深さまでを改質したものである請求項1〜3のいずれかに記載のテンパーカラーの生じていない耐熱非粘着クリア塗装ステンレス鋼板。
  5. 改質BA皮膜は、XPS(光電子分光分析法)による表面分析において、当該皮膜の表面からSiO2換算スパッタ深さが少なくとも2.5nmまでの領域に、Tiをフッ化水素チタン酸(H 2 TiF 6 )の形で配合したクロムフリー化成処理液のみに由来する成分が検出されるものである請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜密着性に優れた塗装BAステンレス鋼板。
  6. 前記Tiをフッ化水素チタン酸(H 2 TiF 6 )の形で配合したクロムフリー化成処理液のみに由来する成分はTiである請求項5に記載の塗膜密着性に優れた塗装BAステンレス鋼板。
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