JP5264527B2 - 二軸延伸ポリアミド積層フィルム - Google Patents

二軸延伸ポリアミド積層フィルム Download PDF

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Description

本発明は、高い機械強度を有し更に非常に高い酸素バリア性を付与することで、食品や医療品など酸素透過による内容物の変質を嫌う包装用途に好適に使用される二軸延伸ポリアミド積層フィルムに関する。
ポリ−ε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミドからなるフィルムは、引張強度、引裂強度、衝撃強度、耐熱性などの機械的特性に優れているが、ガスバリア性が不十分である。このためポリアミドフィルムとシーラントフィルムを貼り合わせただけでは、高度の酸素ガスバリア性が要求される食品、医薬品などの包装用途には使用することができない。一方、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下「EVOH」ということがある)からなるフィルムは酸素ガスバリア性に優れるが、高価で機械的強度に劣るためシーラントフィルムとの貼り合わせのみで包装用途に用いることは困難である。そこでポリアミドフィルム、EVOHフィルムの欠点を補完し合い、これらの特徴を生かした包装用フィルムとして、ポリアミド系樹脂からなるフィルムに、EVOHからなるガスバリア層を積層した各種構成の積層フィルムが上市されている。しかしEVOHをバリア層とするだけでは長期間保存した包装体内部の残存酸素をゼロにすることは難しく、近年、化学反応により酸素を吸収できる酸素吸収性樹脂を構成層に使用することが検討されている。
上記のような、優れた機械的特性を有するポリアミド樹脂からなる強度層を有し、更には酸素吸収性を有する酸素吸収性樹脂を構成層とする積層フィルムを貼り合わせではなく一度に共押出製膜した構成の例としては、特許文献1、特許文献2が挙げられる。ここで特許文献1にはポリアミド6に酸素吸収性を付与したフィルムについて実施例として挙げられているが、EVOH等の酸素遮断層を層構成に有していないため、外部からの酸素の透過を防止し難く酸素吸収能力の持続時間が短くなるという問題がある。他に酸素吸収性を付与した酸素吸収性EVOHとポリエステルからなる積層ボトル用についてはブロー成形時、酸素吸収性EVOHの加工温度を低温に保つことが記載されているが、酸素吸収性EVOHのゲル化防止を層構成により解消するという技術内容ではない。特許文献2にはポリアミド6を主成分とする酸素吸収性樹脂層とEVOH等の酸素遮断層との二軸延伸積層フィルムについて記載されているが、酸素吸収層が主にはポリアミド樹脂であり、酸素吸収性樹脂層そのものの酸素バリア性はEVOHに対して低いため、当該層の両側をEVOH等の酸素遮断層で挟んで酸素吸収性能を長期間維持するという技術内容である。
しかしながら、通常、酸素吸収性樹脂の熱安定性が悪く、製膜時の安定化に劣ることがあり、この課題を改良する技術は開示されていなかった。
特開2001−72873号公報 特開2007−283566号公報
本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムの主要な原料は、ポリアミド、EVOHおよび酸素吸収性樹脂である。ここで酸素吸収性樹脂は、酸素と結びつきやすい樹脂を用いているため溶融押出中に滞留すると酸化劣化し、架橋ゲルによる異物(ブツ)が発生し易いという問題があった。
一般に二軸延伸フィルムとして汎用的に用いられているポリアミド6(融点225℃程度)を用いた共押出延伸フィルムの場合、ポリアミド6と積層される樹脂の共押出時の口金温度は250〜260℃程度と比較的に高温のため、特に酸素吸収性樹脂のような反応性の高い樹脂を使用した場合、少しでも口金内で滞留が発生するとその部分で酸化劣化や架橋反応が起こり、架橋ゲルが発生するため一般には長時間の生産はできなかった。特に印刷適性を要求される薄膜のフィルム用途では架橋ゲルにより印刷抜けの問題が発生することもあり、品質管理上、架橋ゲルの混入防止については年々厳しくなっている。それが酸素吸収性樹脂とポリアミド6との共押出延伸フィルムの製造を困難にしていた。
本発明者等は、上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、酸素バリア性を向上するため酸素吸収性樹脂を中間層に用い、外層に融点の高いポリアミドとの共押出を行っても、酸素吸収性樹脂が熱劣化し難く製膜安定性が良好な二軸延伸ポリアミド積層フィルムの製造を可能にする原料構成を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の二軸延伸ポリアミド積層フィルムを提供するものである。
(1)ポリアミド層、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層、融点が160℃〜205℃である酸素吸収性樹脂層、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層及び、ポリアミド層をこの順で有し、これらの層を共押出法にて積層してなるポリアミド積層フィルムであって、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の各厚みが0.01〜0.5μmであるとともに、流れ方向及びこれと直角な方向の各々に2〜5倍延伸されていることを特徴とする二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(2)酸素吸収性樹脂の押出加工前の原料の酸素吸収能力が5〜200ml/gであることを特徴とする上記(1)に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(3)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層/酸素吸収性樹脂層/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層からなる積層部全体の厚みに対する酸素吸収性樹脂層の厚みの比率が50〜99.9%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(4)二軸延伸ポリアミド積層フィルムの厚みに対するポリアミド層全体の厚みの比率が40〜95%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(5)ポリアミド層を構成するポリアミドが210℃〜250℃の融点を有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(6)ポリアミド層を構成するポリアミドがポリアミド6を主成分とすることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(7)流れ方向及びこれと直角な方向の各々に2〜5倍延伸された後、95℃の熱水中に5分間浸漬した際の熱水収縮率が両方向ともに0.5〜5.0%となるように熱固定されたことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(8)酸素吸収性樹脂が、ポリアミド66比率が10〜30モル%であるポリアミド6/66の共重合ポリアミド、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とすることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムによれば、高い機械強度を有するとともに、非常に優れた酸素バリア性を有することで、食品や医療品など酸素透過による内容物の変質を嫌う包装用途に好適に使用される。
以下、本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルム(以下「積層フィルム」ということがある)を詳細に説明する。
本発明積層フィルムの酸素吸収性樹脂層は、融点が160℃〜205℃であることが必要である。これは酸素吸収性を付与する物質の熱劣化によるブツ発生を防止するため、なるべく低温で押出加工することが有効なためである。一般に押出温度および溶融時の流路(口金や、押出機から口金までを繋ぐ導管)の温度は220℃以下に設定することが酸素吸収性樹脂のゲル化抑制には効果的である。そのため酸素吸収性樹脂は220℃で溶融状態を保てることが必要であり、したがって融点は205℃以下であることが必要である。逆に融点が低すぎると二軸延伸ポリアミド積層フィルムの熱固定時、溶融状態となってしまい、配向が効かず強度が低下してしまうため好ましくない。酸素吸収性樹脂の融点は好ましくは165〜200℃より好ましくは170〜195℃である。なお、本発明における融点の測定方法は、示差走査熱量測定(DSC)装置(例えばPyris1 DSC(パーキンエルマー社製))を用いて、23℃から280℃までの温度範囲、昇温速度10℃/分で昇温して融解ピークを測定する方法による。
酸素吸収性樹脂に用いられる主なベースレジンとしてはポリアミド6/66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/12、EVOH等が挙げられるが、特に隣接するEVOH層との層間強度を考慮すると、ポリアミド66の共重合比率が10〜30モル%、好ましくは12〜26モル%さらに好ましくは14〜21モル%のポリアミド6/66またはエチレン共重合比率23〜48モル%のEVOHがより好ましい。
酸素吸収性樹脂は、ベースレジンの他に被酸化性樹脂(S)と遷移金属系触媒(M)を有している。被酸化性樹脂(S)は、遷移金属系触媒(M)の作用により、空気中の酸素で酸化される樹脂であり、具体的には(i)炭素側鎖を含む樹脂、(ii)キシリレン基含有ポリアミド樹脂、(iii) エチレン系不飽和基含有重合体、(iv)ポリエーテル含有重合体などが挙げられる。
被酸化性樹脂(S)と遷移金属系触媒(M)とを含有する組成物における酸素吸収は、被酸化性樹脂(S)の酸化を経由して行われる。この酸化は、遷移金属系触媒(M)による活性炭素原子からの水素原子の引き抜きによるラジカルの発生、このラジカルへの酸素分子の付加によるパーオキシラジカルの発生、パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜きの各反応を経て行われるとの説が有力である。上記(i)〜(iv)の樹脂又は重合体は、このような活性炭素原子を有するため、被酸化性樹脂(S)として使用できる。
炭素側鎖を有する樹脂(i)としては、(イ)変性又は未変性のオレフィン樹脂、(ロ)分岐鎖を有する脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族オキシカルボン酸、又はラクトンから誘導された分岐鎖含有熱可塑性ポリエステル、特に脂肪族ポリエステル、(ハ)分岐鎖を有する脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、脂肪族アミノカルボン酸、又はラクタムから誘導された分岐鎖含有熱可塑性ポリアミド、特に脂肪族ポリアミド等が挙げられる。
キシリレン基含有ポリアミド樹脂(ii)としては、キシリレン基含有ポリアミド樹脂、特にキシリレンジアミンを主体とするジアミン成分とジカルボン酸成分とから誘導されたポリアミドが挙げられる。キシリレン基含有ポリアミド樹脂(ii)は、遷移金属触媒(M)との組み合わせで酸化性を有することが知られている。すなわち、遷移金属系触媒(M)によるキシリレン基含有ポリアミド樹脂のメチレン鎖(特にアリーレン基に隣接するメチレン鎖)からの水素原子の引き抜きによりラジカルが発生し、前述と同様の反応機構で酸化が進行する。
キシリレン基含有ポリアミド樹脂を例示すれば、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体、及びメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体等の共重合体、あるいはこれらの単独重合体又は共重合体成分とヘキサメチレンジアミンの如き脂肪族ジアミン、ピペラジンの如き脂環式ジアミン、パラ−ビス(2アミノエチル)ベンゼンの如き芳香族ジアミン、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタムの如きラクタム、7−アミノヘプタン酸の如きω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸の如き芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられる。中でもm−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるポリアミドが好ましい。これらのキシリレン基含有ポリアミド樹脂では、ベンゼン環の隣接メチレン鎖の部分にラジカルの生成と酸素の吸収(パーオキサイドの生成)が効率よく起きるため、酸素吸収性の観点から好ましい。
エチレン系不飽和基含有重合体(iii)としては、例えば、酸化性重合体としてポリエンから誘導される重合体を用いることが好ましい。ポリエンとしては、炭素数4〜20の不飽和炭化水素、鎖状又は環状の共役又は非共役ジエンから誘導された単位を含む樹脂が好適に使用される。これらの単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン等のトリエン、クロロプレンなどが挙げられる。
上記ポリエンは、単独で又は2種以上を組み合わせて、あるいは他の単量体と組み合わせて単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体を形成し得る。ポリエンと組み合わせで用いられる単量体としては、炭素数2〜20のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニルなどの単量体も使用可能である。
ポリエン系重合体としては、具体的には、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIB)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができるが、これらの例に限定されない。
ポリエン系重合体における炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子は活性を有し、水素原子の引き抜きが容易である。重合体における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよい。
ポリエーテル含有重合体(iv)としては、例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド(2,3又は1,2)及びポリスチレンオキシドなどが好適に用いられる。
上記酸素吸収性樹脂は、被酸化性樹脂(S)と遷移金属触媒(M)のみで構成することも可能であるが、他の熱可塑性樹脂を主成分として混合・分散して用いることが好ましい。混合・分散量を調整することで、酸素吸収性樹脂としての酸素吸収容量を調整でき、また酸素吸収後の物性低下の影響を少なくすることができる。他の熱可塑性樹脂に混合・分散して使用する場合、被酸化性樹脂(S)は、酸素吸収性樹脂全量に対して1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%の割合で存在するように調整するのが好ましい。その場合、被酸化性樹脂(S)を熱可塑性樹脂中に分散しやすくするために、エポキシ基又は無水官能基等を被酸化性樹脂に導入することが好ましい。
被酸化性樹脂(S)へのエポキシ基又は無水官能基等の導入をポリエン系重合体の酸変性を例として説明する。酸変性ポリエン系重合体は、炭素−炭素二重結合を有するポリエン系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸又はその誘導体を公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述したポリエンと不飽和カルボン酸又はその誘導体とをランダム共重合させることにより製造することもできる。
本発明の目的に特に好適な酸変性ポリエン系重合体は、この重合体中に不飽和カルボン酸又はその誘導体を0.01〜10モル%含有していることが好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量が上記の範囲にあると、酸変性ポリエン系重合体の他の樹脂(マトリックス樹脂)への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。また、末端に水酸基を有する水酸基変性ポリエン系重合体も良好に使用することができる。
適切な酸素捕捉剤としての官能性被酸化性ポリジエンの具体例は、エポキシ官能化ポリブタジエン(1,4及び/又は1,2)、無水マレイン酸グラフト化又は共重合体化ポリブタジエン(1,4及び/又は1,2)、エポキシ官能化ポリイソプレン、及び無水マレイン酸グラフト化又は共重合体化ポリイソプレン、アミン、エポキシ又は無水官能性ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド(2,3又は1,2)及びポリスチレンオキシドなどである。
酸素吸収性樹脂はガスバリア性を向上させる目的でナノメータースケールの分散クレイをさらに含むことができる。好適なクレイは、天然又は合成層状ケイ酸塩、例えばモンモリロナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、バイデル石、サポナイト、ノントロナイト又は合成フルオロマイカなどで、適切な有機アンモニウム塩によって陽イオン交換されている。好適なクレイは、モンモリロナイト、ヘクトライトである。クレイは、1nm以上100nm以下の範囲の平均厚と、50nm以上500nm以下の範囲の平均長及び平均幅を有し、ポリアミド系樹脂中に10質量%以下、好ましくは2質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上6%質量以下の範囲の量で存在するのが好ましい。
次に本発明のフィルムで使用する遷移金属系触媒(M)について説明する。遷移金属系触媒(M)は、上記被酸化性樹脂(S)の酸化反応の触媒となるもので、遷移金属の有機酸塩又は有機錯塩等が好適に使用される。用いる遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの遷移金属系触媒の中でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、特に好適なものである。
遷移金属系触媒(M)は、上述した遷移金属の低価数の無機酸塩、有機酸塩、又は錯塩の形で一般に使用される。無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などが挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸等の遷移金属塩が挙げられる。一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3−シクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン等を用いることができる。
酸素吸収性樹脂において、遷移金属系触媒(M)は、主成分として含まれる熱可塑性樹脂に対して、10ppm以上、好ましくは50ppm以上、200ppm以下、好ましくは100ppm以下の割合で含まれることが望ましい。熱可塑性樹に遷移金属触媒(M)を配合する方法としては、種々の手段を用いることができる。例えば、遷移金属触媒(M)を熱可塑性樹脂に単に乾式でブレンドすることもできるが、遷移金属触媒(M)が熱可塑性樹脂に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うために、遷移金属触媒(M)を有機溶媒に溶解し、この溶液と粉末或いは粒状の樹脂とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下に乾燥するのがよい。
遷移金属系触媒(M)を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができる。遷移金属系触媒(M)の濃度は溶媒に対して5〜90質量%となるような濃度で用いるのがよい。
酸化性重合体成分及び遷移金属系触媒(M)の混合物、及びその後の保存は、酸素吸収性樹脂の前段階での酸化が生じないように、非酸化性雰囲気中で行うのがよい。この目的に減圧下或いは窒素気流中での混合或いは乾燥が好ましい。この混合及び乾燥は、ベント式又は乾燥機付の押出機や射出機を用いて、成形工程の前段階で行うことができる。また、遷移金属系触媒を比較的高い濃度で含有する酸化性重合体成分のマスターバッチを調製し、このマスターバッチを未配合の重合体と乾式ブレンドして、本発明の酸素吸収性樹脂を調製することもできる。
また酸素吸収性樹脂中の被酸化性樹脂(S)に共役ジエン重合体環化物を用いることで遷移金属系触媒(M)を必要としないものも使用できる。ここで共役ジエン重合体環化物は、共役ジエン重合体を、酸触媒の存在下に環化反応させて得られるものである。共役ジエン重合体としては、共役ジエン単量体の単独重合体及び共重合体並びに共役ジエン単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体を使用することができる。
共役ジエン単量体は、特に限定されず、その具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。
これらの単量体は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン等の鎖状オレフィン単量体;シクロペンテン、2−ノルボルネン等の環状オレフィン単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のその他の(メタ)アクリル酸誘導体;等が挙げられる。
これらの単量体は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン単量体の単独重合体及び共重合体の具体例としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(BIR)等を挙げることができる。中でも、ポリイソプレンゴム及びポリブタジエンゴムが好ましく、ポリイソプレンゴムがより好ましい。
これらの共役ジエン重合体は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体の具体例としては、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレン−イソブチレン共重合体ゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)等を挙げることができる。
中でも、質量平均分子量が1,000〜500,000の芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも一つの共役ジエン重合体ブロックと、を有してなるブロック共重合体が好ましい。 これらの共役ジエン重合体は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 共役ジエン重合体における共役ジエン単量体単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択されるが、通常、40モル%以上、好ましくは60モル%以上、更に好ましくは75モル%以上である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、適切な範囲の不飽和結合減少率を得ることが困難になる恐れがある。
共役ジエン重合体の重合方法は常法に従えばよく、例えば、チタン等を触媒成分として含むチーグラー系重合触媒、アルキルリチウム重合触媒又はラジカル重合触媒等の適切な触媒を用いて、溶液重合又は乳化重合により行われる。
本発明で用いられる酸素吸収性樹脂は、場合により、一つ以上の従来の添加剤を含んでいてもよく、その使用は当業者に周知である。そのような添加剤の使用は、組成物の処理向上、並びに該組成物から形成される生成物や製品の改良のために望ましい。そのような添加剤の例は、酸化及び熱安定剤、滑剤、離型剤、難燃剤、酸化抑制剤、染料、顔料及び他の着色剤、紫外線安定剤、粒子及び繊維充填剤を含む有機又は無機充填剤、補強剤、成核剤、可塑剤、並びに当該技術分野で公知のその他の従来の添加剤などである。そのような添加剤は酸素吸収性樹脂全量の10質量%まで使用できる。
本発明積層フィルムでは、上記内容の酸素吸収性樹脂層の両側に隣接してEVOH層を設ける必要がある。EVOHのエチレン単位の含有比率は、熱安定性の観点から30〜50モル%であることが好ましい。30モル%未満では押出加工時の熱安定性が悪く、架橋ゲルが発生し易くなるため好ましくない。逆に50モル%を超えるとポリアミド層との層間接着強度が不十分となる可能性があり、好ましくない。特に本発明のフィルムは二軸延伸ポリアミド積層フィルムであるため、二軸延伸後の層間接着強度は延伸により弱くなり易く、共押出時の層間接着強度は非常に強固であることが望まれる。EVOHは高温の口金等で直接壁面に接触するため、熱安定性を重視することが好ましい。したがってより高エチレン含有比率のものの方が好ましい。エチレン含有比率がより好ましくは32〜49モル%、さらに好ましくは40〜48モル%である。
EVOHのケン化度は96%以上、好ましくは99モル%以上のものが望ましい。EVOH中のエチレン比率及びケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のガスバリア性フィルムの良好な酸素バリア性を維持できるとともに、共押出性とフィルムの強度並びに層間接着強度を良好なものにすることができる。
さらに上記EVOH層の各厚みは0.01μm〜0.5μmの範囲とする必要がある。EVOH層は酸素吸収樹脂層の熱安定性を改善するため、酸素吸収層を包み込んでいれば良く、強度及び酸素吸収性能を維持するために、できるだけ薄い方が好ましい。0.01μm未満では、口金での樹脂の展開時にEVOH層が無くなる部分ができる可能性が有り、酸素吸収性樹脂が直接口金と接触する可能性があり好ましくない。0.5μmを超える場合は酸素吸収樹脂層の酸素吸収性能を低下させ易いという問題がある。ここで、EVOH層の各厚みを相違させることも考えられるが、酸素吸収樹脂層を中心に同一の厚み構成とした方が、フィルムのカールが抑えられ、印刷、ラミネート等の後工程での取り扱いがしやすくなり好ましい。
本発明のフィルムでは、熱安定性の悪い酸素吸収性樹脂を比較的熱安定性の良好なEVOHで覆うことで、融点の高い脂肪族ポリアミドと一緒に流れる高温の口金と酸素吸収性樹脂の直接接触を無くし、酸素吸収性樹脂の架橋ゲルの発生を抑え、ゲルの少ない良好な外観の二軸延伸ポリアミド積層フィルムを得ることができるというものである。酸素吸収性樹脂の成形加工時の架橋ゲルの発生は、温度と時間に大きく影響を受ける。温度は高くなる程架橋し易くなり、時間も長い方が架橋し易くなる。特に押出機から口金までの溶融状態時、滞留部分が生じると熱を長時間受けることとなり架橋ゲルが発生し易い。したがって高融点の脂肪族ポリアミドとの共押出のため、酸素吸収性樹脂を押出すには高温となっている口金に入る前に熱安定性の悪い酸素吸収性樹脂を熱安定性の良いEVOHで包み込むことが有効となる。こうすることで酸素吸収性樹脂が最も架橋しやすい高温の口金の内部では滞留することがなく、ゲル化の抑制が図れる。
酸素吸収性樹脂をEVOHで包み込む方法については特に限定されないが、口金上でフィードブロックを用いて包み込む方法や、押出機から口金へ導く導管中で中心に円柱状の酸素吸収性樹脂を押出し、その周りに同心円状に展開させたEVOHを積層させる方法等が考えられる。その後、マルチマニホールドダイを用いて脂肪族ポリアミドと積層し、ポリアミド/EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH/ポリアミドの共押出積層フィルムを得ることができる。ポリアミド樹脂との積層の場合、フィードブロック方式でも良いが、各層厚み分布が良好なマルチマニホールド方式の方が酸素バリア性も安定し好ましい。
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルム中の酸素吸収性樹脂、EVOHの厚みは、EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOHの酸素吸収性樹脂層の厚み比率が酸素吸収性樹脂とEVOHの総厚み比率の50〜99.9%であることが好ましい。酸素吸収性樹脂の厚み比率が50%未満では酸素バリア性改善効果が低くなり好ましくない。逆に99.9%を超えると口金での展開時にEVOH層が無くなる部分ができる可能性が有り、酸素吸収性樹脂が直接口金と接触する可能性が生じるため好ましくない。酸素吸収性樹脂の厚み比率はより好ましくは65〜99.7%、更に好ましくは75〜99.5%、最も好ましくは85〜99%である。EVOHは酸素吸収性樹脂を口金に触れさせない最低限の厚みがあれば良く、酸素バリア性をより高くするため酸素吸収性樹脂の厚み比率は極力高くすることが好ましい。
ポリアミド層を構成するポリアミドとしては、3員環以上のラクタム類の重合体、アミノ酸類の重合体、及び、ジカルボン酸類とジアミン類との重縮合体等を用いることができる。具体的には、例えば、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウリルラクタム等のラクタム類の重合体、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノ酸類の重合体、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン類と、グルタル酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸類との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
本発明においては、これらの中でもフィルム強度およびEVOHとの層間接着強度の点で、ε−カプロラクタム単位が好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上のポリアミド樹脂が好ましく、具体的には、例えば、ε−カプロラクタムの重合体としてのポリアミド6、ε−カプロラクタムとω−ラウリルラクタムとの共重合体としてのポリアミド6/12、ε−カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体としてのポリアミド6/66、ε−カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との共重合体としてのポリアミド6/6T等が好ましく、特には融点220〜225℃程度のポリアミド6が好ましい。ここで融点が180〜200℃程度と低いポリアミド6/66を用いれば、口金温度を酸素吸収性樹脂に適した温度に下げることができるが、結晶性が低いため熱固定がかからず、収縮率が高いフィルムとなってしまい好ましくない。
ポリアミドの融点は210〜250℃が好ましい。融点が210℃未満ではフィルムの耐熱性が劣るため製袋加工を行うためのヒートシール時にフィルムが伸びてしまう可能性があり、好ましくない。また、低融点のポリアミドを用いた場合は口金温度も低く抑えることができるため、本発明の構成にすることによる酸素吸収性樹脂のゲル化抑制効果が薄れるため好ましくない。逆に250℃を超えると口金温度が280℃前後となり、熱安定性の良いEVOHのゲル化も発生しやすくなるため好ましくない。ポリアミド樹脂の融点はより好ましくは215℃〜245℃、さらに好ましくは218℃〜240℃である。
ポリアミドは2種類以上のポリアミドを混合しても良いが、最も高い融点を持つものでも融点は250℃以下であることが好ましい。また2種類以上のポリアミドを混合した場合、最も顕著に出る融点が210〜250℃であることが好ましい。
本発明のポリアミド層、EVOH層、酸素吸収性樹脂層には耐屈曲ピンホール改質のために柔軟改質剤を添加することができる。ここで柔軟改質剤としては、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などが挙げられる。
上記のポリオレフィン類は、主鎖中にポリエチレン単位、ポリプロピレン単位を50質量%以上含むものであり、無水マレイン酸等でグラフト変性していてもよい。ポリエチレン単位、ポリプロピレン単位以外の構成単位としては、酢酸ビニル、あるいはこの部分けん化物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、あるいはこれらの部分金属中和物(アイオノマー類)、ブテン等の1−アルケン類、アルカジエン類、スチレンなどが挙げられる。これらの構成単位を複数含んでも構わない。
また、ポリアミドエラストマー類は、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド等のポリアミド系ブロック共重合体に属するものであり、アミド成分としてはナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12等例示され、エーテル成分としては、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ−1,2−プロピレングリコール等が例示されるが、PA6との相溶性、押出時の熱安定性、柔軟性改質効果の点からポリテトラメチレングリコールとポリラウリルラクタム(ナイロン−12)を主成分とする共重合体が最も好ましい。また、任意成分としてドデカンジカルボン酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸を少量用いたものであってもよい。
ポリエステルエラストマー類としては、例えばポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールを組み合わせたポリエーテル・エステルエラストマーや、ポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンを組み合わせたポリエステル・エステルエラストマーなどが挙げられる。
以上の柔軟改質剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもよい。特にゲル安定性を考慮すると酸素吸収層やEVOH層に添加するよりはポリアミド層に添加することの方が好ましい。
本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムの製造に用いられる原料のポリアミドおよびEVOHはいずれも吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると原料を熱溶融し押出す際に、水蒸気やオリゴマーが発生しフィルム化を阻害するので、事前に乾燥して水分含有率を0.1質量%以下とするのが好ましい。なお、これらの原料ポリアミド、EVOHは、ポリアミド系積層フィルムを製造する際に、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、染料、顔料、無機質微粒子等の各種添加剤を、フィルムの性質に影響を与えない範囲で添加することができる。
ポリアミド層の厚みは二軸延伸ポリアミド積層フィルム全体の厚みの40〜95%であることが好ましい。40%未満ではフィルムとして強度が不十分になるばかりか、二軸延伸工程で安定的な延伸ができなくなり好ましくない。また95%を超えると酸素吸収性樹脂層の厚み比率が低くなり、酸素バリア性が不十分となり好ましくない。ポリアミド層の厚み比率はより好ましくは50〜93%、さらに好ましくは60〜92%である。
本発明のポリアミド系積層フィルムは、従来公知の一般的な方法により製造することができる。まず、ポリアミド、EVOH、酸素吸収性樹脂等を原料として用いて、実質的に無定型で配向していない積層フィルム(以下「積層未延伸フィルム」という)を、共押出法で製造する。この積層未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を3〜5台の押出機により溶融し、フラットダイまたは丸ダイで押出した後、急冷することによりフラット状またはチューブ状の積層未延伸フィルムとする共押出法により行われる。この時、酸素吸収性樹脂はEVOHと合流するまでは酸素吸収性樹脂の押出に最適な温度に保つことが大切である。必要以上に温度を上げると酸素吸収性樹脂の架橋反応が起こり、ゲル化が促進され好ましくない。EVOHと合流後は、酸素吸収性樹脂はEVOHに完全に包み込まれ、流路の壁面には露出していないことが好ましい。EVOHとの合流後に、ポリアミドと合流する口金等、高温温度帯に導入されることが好ましい。酸素吸収性樹脂の合流前の流路の温度は200〜230℃程度であることが一般的であり、ポリアミドが流れる部分の温度は240〜270℃程度であることが一般的である。この温度差が酸素吸収性樹脂のゲル化を促進させてしまう。
次に、上記の積層未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向)、およびこれと直角な方向(横方向)で、少なくとも一方向に通常2.0〜5.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.5〜4.0倍の範囲で延伸する。 縦方向および横方向の二軸延伸方向の延伸倍率が、各々2.0倍より小さい時は、延伸の効果が少なく、フィルムの強度が劣り、またEVOHの配向結晶による酸素バリア性能の向上効果が低く好ましくない。また二軸延伸方向の延伸倍率が各々5.0倍より大きい時は、延伸時に積層フィルムが裂けたり破断したりしやすいので延伸倍率の上限は上記の範囲内とするのがよい。
二軸延伸の方法は、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、本発明の趣旨を越えない限り従来公知の延伸方法が採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、積層未延伸フィルムを50〜110℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に2.0〜5.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって60〜140℃の温度範囲内で横方向に2.0〜5.0倍に延伸することにより製造することができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、60〜130℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に2.0〜5.0倍に延伸することにより製造することができる。
上記方法により延伸された積層二軸延伸フィルムは、引き続き熱処理をする。熱処理をすることにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の熱処理温度は、110℃を下限としてポリアミドの融点より2℃低い温度を上限とする範囲を選択するのがよく、これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率を持った延伸フィルムを得ることができる。熱処理操作により、充分に熱固定された積層二軸延伸フィルムは、常法により冷却し巻きとることができる。
本発明のフィルムの総厚みは8〜30μmであることが好ましい。8μm未満ではナイロンフィルムとしての強度が不十分となり好ましくない。また30μmを超えると通常のEVOHを用いても厚みを厚くすることにより酸素バリア性を付与できるため、本発明の効果が薄くなるばかりか、コストが高くなりすぎるため好ましくない。総厚みはより好ましくは10〜28μm、更に好ましくは12〜25μmである。その中で酸素吸収性樹脂の厚みは0.5μm〜15μmであることが好ましい。0.5μm未満では透過する酸素の速度に酸素吸収の速度が追いつかず、酸素透過量が多くなってしまうためばかりか、酸素吸収量そのものが少なくなってしまうため好ましくない。また15μmを超えると、酸素吸収層の厚みが厚くなってしまい、ポリアミドフィルムの特長である強度を保つため総厚みが厚くなってしまい経済的に好ましくない。酸素吸収性樹脂の厚みはより好ましくは1〜12μm、更に好ましくは1.2〜10μmである。特に1.5〜8μmが最も好ましい。
ここで95℃×5分の熱水収縮率はたて、よこ方向ともに0.5〜5.0%とすることが好ましい。熱水収縮率が0.5%未満では、熱処理温度が高すぎる可能性があり、二軸延伸ポリアミド積層フィルムの機械強度が低下してしまうため好ましくない。また5.0%を超えると熱処理温度が不十分で、印刷、ラミネート、製袋加工等の後加工でかけられる熱で収縮を起こしてしまい、印刷見当ズレ、ラミネートシワ、製袋品の歪みの原因となり好ましくない。熱水収縮率は好ましくは0.8〜4.5%、さらに好ましくは1.0〜4.0%である。
本発明の酸素吸収性樹脂の押出加工前の原料の酸素吸収能力は5〜200ml/gであることが好ましい。酸素吸収能力が5ml/g未満では酸素吸収能力が乏しく、すぐに飽和してしまうため酸素遮断性が低下し好ましくない。また酸素吸収能力が200ml/gを超えるような場合、酸化反応が強いため押出時に架橋ゲルになりやすくなるばかりか、酸素吸収性樹脂層の変化が激しくなり強度低下、色目の変化等を招くため好ましくない。酸素吸収能力は5〜200ml/gであることが、酸素遮断性、強度の維持の面で好ましい。更に好ましくは8〜150ml/g、最も好ましくは10〜100ml/gである。
本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムは単独で使用されることはなく、一般にポリエチレン等のポリオレフィン系のシーラントフィルム等、他の基材フィルムと積層して使用される。積層方法としてはドライラミネート法、押し出しラミネート法、ポリサンドラミネート法等、特に限定されないが、他の基材との接着強度を改善するため、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの片面または両面にコロナ処理等の表面処理を施しても良い。
以下、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
なお、以下の例において、酸素吸収性樹脂の熱安定性および得られたフィルムの評価は次の方法によって行った。
1)酸素吸収性樹脂の熱安定性
口金温度260℃の条件で8時間一定の押出量で共押出キャストフィルム(延伸前の原シート)を製膜し、1m2当たりの酸素吸収性樹脂層に存在する、1mm2以上の大きさの異物(ブツ)の個数をカウントした。なお、酸素吸収性樹脂層のブツであるか否かは、光学顕微鏡による断面観察で確認した。
ブツ個数 0〜50個 ○
51〜100個 △
101個以上 ×
2)酸素吸収能力
酸素吸収性樹脂ペレットを細かく粉砕した後、1g計量し試料とする。次いで、200mm×300mmの三方シール袋(層構成:PET(12μ)//アルミニウム箔(9μ)//ONY(15μ)//CPP(80μ)からなるドライラミネート品)に、酸素吸収性樹脂1g、水1g、適量の大気を入れ開口部をヒートシールして密封する。その袋を40℃の雰囲気下に30日間保管し、袋内部の気体を一定量サンプリングし酸素濃度を測定した。その後袋内部の気体の量を測定することで酸素吸収性樹脂1gの酸素吸収能力を算出した。
3) 耐衝撃強度(J/フィルム1枚)
下記の各例に記載の方法によって得られた積層フィルムから幅方向、流れ方向共に150mmの試験片を切りだし、23℃×50%RH条件下で10時間以上調湿し、測定試料とした。測定は、東洋精機製作所製パンクチャータイプフィルムインパクトテスターを用い、調湿試料をセットし、パンクチャーポイント1/2インチ、ウェイトなし、Eスケールで測定した。23℃×50%RH条件下で、n数20で測定し、平均値(J/フィルム1枚)を耐衝撃強度とした。
衝撃強度:1J以上 良好
1J未満 強度不十分
4)酸素透過度
モダンコントロール社製のOXY−TRAN100型酸素透過率測定装置を使用し、23℃×50%RHで測定し、酸素透過度とした。
酸素透過度:10[ml/m・day・MPa]以下 良好
10[ml/m・day・MPa]を超えるもの バリア性不十分
(実施例1)
最外層のポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド1022C6、Tm=224℃)をφ65mmの押出機に、EVOH(日本合成化学工業(株)製、ソアノールAT4403B エチレン比率44モル%、Tm=164℃)をφ40mmの押出機に、酸素吸収性樹脂をφ50mmの押出機に投入し溶融させ、口金に入る前に220℃に温調された導管中でEVOHを円形状に展開させ、円柱状に流れる酸素吸収性樹脂の周囲に積層することにより酸素吸収性樹脂を包み込み、260℃に温調された口金に導入した。最外層のポリアミド6については分配ブロックでほぼ半々に分割し、マニホールドを3個有するマルチマニホールド共押出Tダイ内で積層させて5層構造の積層フィルムとして押出し、ポリアミド6/EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH/ポリアミド6からなる層構成の溶融状フィルムを、30℃の冷却ロール上で急冷して、厚み150μmの未延伸積層フィルムを得た。このときのポリアミド6/バリア層/ポリアミド6の厚み比率は5.5/4/5.5とし、バリア層中のEVOH/酸素吸収性樹脂の押出比率は5/95となるように押出量を調整した。これでポリアミド6/EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH/ポリアミド6の15μmフィルムの平均各層厚みは5.5/0.1/3.8/0.1/5.5μmとなる。
次いで、この未延伸積層フィルムを50℃に加熱昇温した後、この温度条件でロール式縦延伸機を用いて縦方向に3倍延伸し、さらに120℃に加熱昇温して、テンター式横延伸機を用いて横方向に3.5倍延伸し、この二軸延伸フィルムを215℃の条件で6秒間熱処理することにより、総厚み15μmの積層延伸フィルムを得た。
上記条件で8時間連続して製膜した後、キャストシートを採取し酸素吸収性樹脂層のブツをカウントすることにより酸素吸収性樹脂の熱安定性を評価した。また延伸フィルムで酸素透過度を測定した。その結果を表1に記す。
酸素吸収性樹脂:無水マレイン酸変性ポリブタジエンとポリアミドの反応性生物およびコバルト有機酸塩を含有するポリアミド6/66(Tm=192℃、酸素吸収能力:21ml/g)を主体とする樹脂組成物。
(実施例2)
ポリアミド6/EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH/ポリアミド6の厚みを5.5/0.3/3.4/0.3/5.5μmにした以外は実施例1と同様に評価を行った。
(実施例3)
EVOH(日本合成化学工業(株)製、ソアノールDC3203B エチレン比率32モル%、Tm=183℃)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。
(実施例4)
EVOH((株)クラレ製、エバールG176B エチレン比率48モル%、Tm=160℃)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。
(実施例5)
ポリアミド6/EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH/ポリアミド6の厚みを4.5/0.03/5.94/0.03/4.5μmにした以外は実施例1と同様に評価を行った。
(実施例6)
ポリアミド6/EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH/ポリアミド6の厚みを6.5/0.1/1.8/0.1/6.5μmにした以外は実施例1と同様に評価を行った。
(実施例7)
ポリアミド層にポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド1022C6)70質量%とMXD6(三菱ガス化学(株)製、MXナイロン6007、Tm=237℃)30質量%のブレンド物を使用した以外は実施例1と同様に評価を行った。
(実施例8)
EVOH(B)とEVOH(A)の合流を口金に入る前にフィードブロックを用いてEVOH(A)をEVOH(B)で包み込むように合流させた以外は実施例1と同様に評価を行った。
(実施例9)
酸素吸収性樹脂を、共役ジエン系重合体とコバルト有機酸塩を含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(Tm=183℃、酸素吸収能力:53ml/g)とした以外は、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例10)
酸素吸収性樹脂を、共役ジエン重合体環化物を含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(Tm=183℃、酸素吸収能力:42ml/g)とした以外は、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例1)
最外層のポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド1022C6)をφ65mmの押出機に、酸素吸収性樹脂をφ50mmの押出機に投入し溶融させ、最外層のポリアミド6については分配ブロックでほぼ半々に分割し、マニホールドを3個有するマルチマニホールド共押出Tダイ内で積層させて3層構造の積層フィルムとして押出し、ポリアミド6/酸素吸収性樹脂/ポリアミド6構成の溶融状フィルムを、30℃の冷却ロール上で急冷して、厚み150μmの未延伸積層フィルムを得た。このときのポリアミド6/EVOH/ポリアミド6の厚み比率は5.5/4/5.5となるように押出量を調整した。
次いで、この未延伸積層フィルムを50℃に加熱昇温した後、この温度条件でロール式縦延伸機を用いて縦方向に3倍延伸し、さらに120℃に加熱昇温して、テンター式横延伸機を用いて横方向に3.5倍延伸し、この二軸延伸フィルムを215℃の条件で6秒間熱処理することにより、総厚み15μmの積層延伸フィルムを得た。
この状態で8時間製膜した後、キャストシートを採取し酸素吸収性樹脂のブツをカウントすることによりEVOHの熱安定性を評価した。また延伸フィルムで熱水収縮率、酸素透過度を測定した。
(比較例2)
酸素吸収性樹脂に無水マレイン酸変性ポリブタジエンとポリアミドの反応性生物およびコバルト有機酸塩を含有するポリアミド6(Tm=224℃)を主体とする樹脂組成物を使用し、酸素吸収性樹脂が溶融流動する製造ライン、いわゆるメルトラインを全て260℃に温調した以外は実施例1と同様に評価を行った。
(比較例3)
酸素吸収性樹脂が、共役ジエン重合体環化物を含有する無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン(Tm=110℃、酸素吸収能力:38ml/g)とした以外は、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例4)
ポリアミド6/EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH/ポリアミド6の厚みを6.0/1.0/1.0/1.0/6.0μmにした以外は実施例1と同様に評価を行った。
Figure 0005264527

Claims (8)

  1. ポリアミド層、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層、融点が160℃〜205℃である酸素吸収性樹脂層、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層及び、ポリアミド層をこの順で有し、これらの層を共押出法にて積層してなるポリアミド積層フィルムであって、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の各厚みが0.01〜0.5μmであるとともに、流れ方向及びこれと直角な方向の各々に2〜5倍延伸されていることを特徴とする二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
  2. 酸素吸収性樹脂の押出加工前の原料の酸素吸収能力が5〜200ml/gであることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
  3. エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層/酸素吸収性樹脂層/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層からなる積層部全体の厚みに対する酸素吸収性樹脂層の厚みの比率が50〜99.9%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
  4. 二軸延伸ポリアミド積層フィルムの厚みに対するポリアミド層全体の厚みの比率が40〜95%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
  5. ポリアミド層を構成するポリアミドが210℃〜250℃の融点を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
  6. ポリアミド層を構成するポリアミドがポリアミド6を主成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
  7. 流れ方向及びこれと直角な方向の各々に2〜5倍延伸された後、95℃の熱水中に5分間浸漬した際の熱水収縮率が両方向ともに0.5〜5.0%となるように熱固定されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
  8. 酸素吸収性樹脂が、ポリアミド66比率が10〜30モル%であるポリアミド6/66の共重合ポリアミド、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主成分とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
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JP5008889B2 (ja) * 2006-04-14 2012-08-22 三菱樹脂株式会社 ガスバリア性延伸フィルム、並びに該フィルムを用いたガスバリア性包装体

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