JP5263126B2 - 板材の光学式形状測定方法及び測定装置 - Google Patents

板材の光学式形状測定方法及び測定装置 Download PDF

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Description

本発明は、圧延材等の板材の形状を光学的に測定するための板材の光学式形状測定方法及び測定装置に関する。
近年、ハードディスク用サスペンション、半導体用リードフレーム、インクジェットプリンター用ヘッド部品、精密板バネなどのエッチングにより加工される精密部品の母材として用いる金属鋼板の形状には、非常に良好なものが要求される。
金属鋼板の形状は、熱間圧延、焼鈍などの熱処理(冷却を含む)、冷間圧延、調質圧延、形状矯正(テンションレベリングなど)等々の各工程履歴や各工程における製造条件によって影響される。
板材の形状不良は、板幅方向の伸び率の差が原因となって、例えば、耳伸びと呼ばれるエッジ端の波打ち形状や、中伸びと呼ばれる板中央部の波うち形状として発生する。形状品質を確保するために、板材の製造工程において、このような板材の形状を検出する手段として種々の方法が提案されている。
代表的な測定方法として、板材の近傍に板幅方向に照射する棒状光源及び撮像手段を配置して、板の表面に映った棒状光源の虚像をこの撮像手段で検出し、その像のゆがみから板の形状を算出する方法がある。この方法では、板幅方向の各位置において、板材が平面であった場合の像の位置を基準位置として、基準位置からの像の偏移量が板の傾きに比例することを利用して、平面に対する板の長手方向の傾きを板幅方向の各点毎に求める。そして、この傾きから、板幅方向の伸び率分布や伸び率差等の板材の形状パラメータを計算により求める。
特許文献1、2には、感度向上や測定対象振動の影響抑制を目的として、複数の棒状光源を用いた測定方法に係る発明が開示されている。これらの発明では、複数の棒状光源の虚像を一括してカメラ視野内に収め1枚の画像として採取し、各虚像に対して、幅方向の偏移量を測定する。
特開平5−15505号公報 特開昭63−198808号公報
しかしながら、これらの発明では、得られた画像を2値化し、棒状光源虚像部を抽出し、基準面からの変移量を測定することによって画像処理するため、視野内抜けなく全範囲にわたり棒状光源の数を増やすことができず、板材状の形状不良部と棒状光源の虚像位置とが一致した場合は、形状が悪化したように見えるが、そこから少しずれると小さくなるなど、測定値がばらつくという問題がある。
また、これらの発明における変移量の分解能は、カメラの画素分解能に限定されるため、緩やかに形状が変化するごく僅かな耳のびや中伸びを検出することができず、エッチング加工される精密部品の母材に要求される形状品質を保証可能な測定精度を確保することができない。
本発明の目的は、圧延材等の板材の形状を光学的に測定する際に、測定値がばらつき、エッチング加工される精密部品の母材に要求される形状精度を保障可能な測定精度を確保できないという課題を解決できる板材の光学式形状測定方法及び測定装置を提供することである。
本発明者らは、この課題は(a)虚像1本毎に画像処理を行うこと、(b)使用する棒状光源の数をむやみに増やすことができず、その配置がまばらであること、及び(c)板材の形状を実際に測定するのは棒状光源が配置された部分に限定されることの3点に起因するとの前提のもと、鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは、板材の板材形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔で複数の棒状光源を配置し、画像上における複数の棒状光源の配列方向に垂直な方向の周期的な輝度分布を求めてその位相解析を行うことによって、棒状光源に限定されずに連続した位相変化、すなわち複数の棒状光源での観察位置の変位量の分布を測定することによって、上記課題を解決できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
本発明は、測定対象である板材の上方に複数の棒状光源を配置し、板材の表面に観察される複数の棒状光源の鏡像を撮像装置によって撮影した画像に基づいて板材の形状を測定する板材の光学式形状測定方法であって、複数の棒状光源をこの板材の形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔に配置し、撮像装置によって撮影した画像上における複数の棒状光源の配列方向に垂直な方向の周期的な輝度分布波形を求め、求めたこの輝度分布波形の、基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相変化量を求めることによって、板材の表面の角度分布を求めること、及び、隣接する二つの棒状光源の設置間隔dと、得られた位相変化量φ(x)とから、この棒状光源の列上での観察位置ずれ量Δx=φ(x)d/(2π)を求め、下記(1)式により鋼板の表面角度αを求めることを特徴とする板材の光学式形状測定方法である。
別の観点からは、本発明は、測定対象である板材の上方に、この板材の形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔で並んで配置される複数の棒状光源と、この板材の表面に観察される複数の棒状光源の鏡像を撮影する撮像装置と、この撮像装置により撮影された画像上における複数の棒状光源の配列方向に垂直な方向の周期的な輝度分布波形を求め、この輝度分布波形の、基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相変化量を求めることによってこの板材の表面の角度分布を求めて板材の形状を求めるとともに、隣接する二つの棒状光源の設置間隔dと、得られた位相変化量φ(x)とから、棒状光源の列上での観察位置ずれ量Δx=φ(x)d/(2π)を求め、下記(1)式により鋼板の表面角度αを求める演算装置とを備えることを特徴とする板材の光学式形状測定装置である。
これらの本発明では、周期的な輝度分布波形をf(x)とした場合に、隣接する二つの棒状光源の間隔に相当する空間周波数のみを抜き出して輝度分布信号f(x)を求め、この輝度分布信号f(x)に対してヒルベルト変換処理を行うことにより90°位相がずれた周期的な波形f(x)を求め、位相分布p(x)=tan−1(f(x)/f(x))を求め、同様の手法により予め求めた基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相分布をp(x)としたときに、形状変化に伴う位相変化量を、Δp(x)=p(x)−p(x)として求めることが、望ましい。
1)式において、Δxは前記棒状光源の列上での観察位置ずれ量を示し、θは撮影装置の角度を示し、αは鋼板の表面角度を示し、βは縞模様プレートの設置角度を示す。
これらの本発明では、得られた鋼板の表面角度αの分布を積分することによって、鋼板の表面形状を求めることが望ましい。
これらの本発明では、得られた鋼板の表面角度αの分布に対して、極小値αmax、極大値αmin及びこれら極値の間隔P/2を求め、下記式により、急峻度λまたは板波高さhを求めることが望ましい。
さらに、これらの本発明では、鋼板の幅方向に渡ってライン方向輝度分布の標準偏差を求め、この標準偏差の高低に基づいて板部と背景とを識別し、板部および背景の境界線を鋼板の板エッジとして、板エッジ部を基準として鋼板の形状測定位置を決定することが望ましい。
本発明により、圧延材等の板材の形状を光学的に測定する際に、測定値のばらつきを抑制し、エッチング加工される精密部品の母材に要求される形状精度を保障可能な測定精度を確保できるようになる。
図1は、本発明の基本的な装置の構成を示す説明図である。 図2は、本発明の測定原理を示す説明図である。 図3は、板表面角度の影響を示す説明図である。 図4は、パスラインの影響を示す説明図である。 図5は、パスラインと角度の影響を示す説明図である。 図6は、角度変動からの山高さ算出の手法を示す説明図である。 図7(a)は、本発明に係る板材の光学式形状測定装置の実施例を示す側面図であり、図7(b)は、本発明に係る板材の光学式形状測定装置の実施例を示す正面図である。 図8は、この光学式形状測定装置1のシステム構成を示す説明図である。 図9は、通常のYプロジェクション方式と標準偏差方式とによるエッジ検出の効果を比較して示すグラフである。 図10は、エッジ検出結果に基づくエッジ計算位置の決定における測定中の画像例を示す説明図である。 図11は、再サンプリングの手順(データ点数6点から8点へ)を示す説明図である。 図12は、図2の画像の輝度分布データを例にして、位相情報の計算過程、すなわち位相解析の手順を示すグラフである。 図13は、角度からの山高さ算出例を示すグラフである。 図14は、オフラインでの角度からの山高さ算出例を示すグラフである。 図15(a)は、製造ラインに本発明に係る光学式形状測定装置1を設置して、耳波形状のコイルを連続的に測定した結果の例を、全長の山高さを濃淡表示して示す説明図であり、図15(b)は、製造ラインに本発明に係る光学式形状測定装置1を設置して、耳波形状のコイルを連続的に測定した際の最エッジ部の山高さ測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の基本的な装置1の構成を示す説明図である。
図1に示すように、本発明は、略述すると、板材3の形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔で配置される複数の棒状光源4aを用い、撮像装置(例えばカメラ)5により撮影した画像上における複数の棒状光源4aの配列方向に垂直な方向の周期的な輝度分布を求めてその位相解析を行うことを特徴とするものであって、基本的に、定盤2に載置された板材3の上方に複数の棒状光源4aからなる光源4を配置して、板材3の表面に観察される複数の棒状光源4aの鏡像を撮像装置(カメラ)5によって撮影し、演算装置により、撮影した画像に基づいて板材3の形状を測定する板材3の光学式形状測定方法に関するものである。
本発明では、複数の棒状光源4aを、板材3の形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔に配置する。そして、演算装置により、カメラ5によって撮影した画像上の複数の棒状光源4aの配列方向に垂直な方向の周期的な輝度分布波形を求め、求めたこの輝度分布波形の、フラットな基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相変化量を求めることによって、板材3の表面の角度分布を求めて板材3の形状を光学的に測定する。
すなわち、本発明は、従来の光学式形状測定方法に対して、複数の棒状光源4aを等間隔に並べて配置することを特徴とする。棒状光源4aを板材3の形状測定範囲に向けて等間隔で配置するには、例えば、図1に示すように、面光源(面照明)6の表面に、細長いスリットが等間隔に加工されるマルチスリット(本明細書では「縞模様スリット」ともいう)7を装着した光源4を用いたり、蛍光灯等の細長い棒状光源を等間隔に並べて配置すること(図示しない)が例示される。
複数の棒状光源4aを板材3の形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔で配置して、画像上の周期的な輝度分布を求め、この輝度分布の波形の位相解析を行うことによって、板材3の形状全測定範囲の全域にわたって連続して高分解能な総変化量を求めることができる。すなわち、複数本の鏡像に対して一度に計算を行うことでき、使用する棒状光源4aの数を板材3の全面いっぱいまで増やすことができ、測定範囲をまとめて連続して測定することが可能となる。
図2は、本発明の測定原理を示す説明図である。
図2には、耳波形状の板材3についてのカメラ5による画像例と、その画像での形状不良部である耳波部および平坦なフラット部それぞれのカメラ輝度分布を示す。図2中のグラフに示すように、形状不良部は、平坦なフラット部に対して、輝度分布波形の位相がずれていることがわかる。
本発明では、カメラ5により撮影した画像から求めた周期的な輝度分布波形をf(x)とした場合に、各棒状光源4aの間隔に相当する空間周波数のみを抜き出して輝度分布信号f(x)を求め、この輝度分布信号f(x)に対してヒルベルト変換処理を行うことにより位相が90度ずれた周期的な波形f(x)を求めて位相分布p(x)=tan−1(f(x)/f(x))を求め、同様の手法により予め求めたフラットな基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相分布をp(x)としたときに、形状変化に伴う位相変化量を、Δp(x)=p(x)−p(x)により、ヒルベルト変換により連続的に求めることが例示される。
本発明では、複数の棒状光源4aが等間隔に並んでいるため、画像上の棒状光源4aの鏡像の配列方向に沿って輝度分布を抜き出すと、周期的な信号f(x)を得ることができる。棒状光源4aの間隔に相当する空間周波数のみを抜き出して輝度分布信号f(x)を求める。この輝度分布信号f(x)には、棒状光源虚像野の間隔変化のみが、周期的な成分として含まれるので、f(x)=A(x)sin(p(x)+Δp(x))として表すことができる。ここで、p(x)はフラットな基準平面測定時の位相情報を示し、p(x)は形状変化に伴う位相変化量を示す。
ヒルベルト変換とは、90°位相がずれた波形への変換のことである。計算には、f(x)を離散フーリエ変換し得られたFs(k)の負の周波数部の係数を0に置き換えて、離散逆フーリエ変換した結果がf(x)+if(x)になることが利用される。得られたf(x)はf(x)に対して、位相が90°ずれているため以下のようになる。
(x)=A(x)sin(p(x)+Δp(x)+π/2)=A(x)cos(p(x)+Δp(x))
このため、f(x)/f(x)のアークタンジェント(逆正接関数)を計算した結果は、位相部分であるp(x)+p(x)と等しくなる。
p(x)=tan−1(f(x)/f(x))
=tan−1{A(x)sin(p(x)+Δp(x))/A(x)cos(p(x)+Δp(x))}=p(x)+Δp(x)
得られたp(x)はラッピングされている(π毎に折り返し)ため、アンラッピング処理を行い、連続的な波形となる。同様な処理を、フラットな基準平面での輝度分布に対しても行い、予め、p(x)を求めておけば、両者の差から、形状変化に伴う位相変化量Δp(x)を連続的に求めることが可能になる。
なお、光源のピッチdは、対象とする板波の波長Pとすると、ナイキストのサンプリング定理により、2d<Pを満たすようにすれば、正しく板波を再現することが可能である。
これらの本発明では、棒状光源4aの設置間隔dと得られた位相変化量φ(x)とから、棒状光源4aの列上での観察位置ずれ量Δx=φ(x)d/(2π)を求め、下記(1)式により、鋼板表面角度αを求めることができる。
(1)式において、Δxは棒状光源4aの列上での観察位置ずれ量を示し、θはカメラ角度を示し、αは鋼板表面の角度を示し、βは縞模様プレート7の設置角度を示す。
棒状光源4aの間隔dは既知であるので、画像処理により求めた位相差から、縞模様プレート7上の観察位置ずれΔxを求めることができる。
図3は、板表面角度の影響を示す説明図であり、図4は、パスラインの影響を示す説明図であり、図5はパスラインと角度の影響を示す説明図である。図3〜5を参照しながら、マルチスリット7上の観察位置ずれΔxから、基準高さ位置での鋼板3の表面角度を求める方法について説明する。
図3は、板表面の角度が変動した場合を示す。表面の平らな鋼板3を測定した場合、鋼板面S点には縞模様プレート7上のP点が映りこんでいる。このとき、P点とS点の間の距離をLとする。S点において鋼板3の角度がαに傾いた場合、鋼板3の表面S点にはマルチスリット7上のP’点(P点からΔxずれた位置)が映りこむことになる。三角形PP’Sに対して、余弦定理を用いることによりL/{sin(β+θ+2α)}=Δx/sin2αとなり、位置ずれΔxと鋼板表面角度αの関係を、以下の(2)式に示すように導くことができる。
加法定理より、sin(β+θ+2α)=cos2αsin(β+θ)+sin2acos(β+θ)であるから、tan2α=Δxsin(β+θ)/{L−Δxcos(β+θ)}とな、α=(1/2)tan−1[Δxsin(β+θ)/{L−Δxcos(β+θ)}]となる。
一方、図4に示すように、高さ変動Δhが生じた場合、観察位置がΔxずれたとした場合も同様に計算することができ、以下の(3)式、(4)式に示す関係が得られる。
図5に示すように、実際の鋼板3の形状は、正弦波状にうねっており、高さ変動と角度変動との両方を伴っている。ここで、板高さΔh、傾きα時のずれ量をΔxとすると、(5)式の関係が得られる。
ここで、L>>Δhとなるように装置配列を決めれば、(5)式は(6)式により近似できる。そのため、(7)式により、縞模様プレート7上の観察位置ずれΔxを測定することにより、表面角度αを測定することができる。
このように、本発明では、フラットな基準を置いた際に、鋼板3の表面上の各測定点と、その測定点にて虚像として観察される複数の棒状光源4aのポイントを結んだ線が、一定値Lとなるように、棒状光源4aを傾けて設置すれば、表面角度分布の計算を簡便に行うことができる。
このようにして、本発明により鋼板3の表面角度の分布を求めることができるので、得られた鋼板3の表面角度の分布を積分して、鋼板3の表面形状(急峻度、板波高さ)を計算により求めることが可能になる。
また、本発明により得られた角度分布に対して、極小値αmax、極大値αmin及びこれら極値の間隔P/2を求め、下記式により、急峻度λまたは板波高さhを求めることができる。
図6は、角度変動からの山高さ算出の手法を示す説明図である。
図6に示すように、今回対象とする鋼板3の長手方向の形状は、図6に示すように、正弦波状にうねっていることを考慮する。板波のピッチをP(mm)、板波高さをhとすると、板波高さh(x)、角度分布α(x)は(10)式、(11)式の通りとなる。(11)式から、角度全振幅は、πh/Pであり、極値の間隔はP/2に等しいことがわかる。このため、(8)式により急峻度を計算により求めることができるとともに、(9)式により板波高さを計算により求めることができる。
また、隣接する極大値および極小値の差から高さhを計算すれば、距離Δxに誤差として残る高さ成分の誤差Δhの影響を抑制することができる。角度の極大値と極小値での鋼板形状をみると、形状の変曲点であり、ほぼ同じ高さであることがわかる。つまり、どちらの位置においても高さが、マルチスリット7の観察位置ずれΔxに及ぼす影響はほぼ同じであり、角度の差をとることにより、両者を相殺できることとなる。
これらの本発明では、幅方向に渡ってライン方向輝度分布の標準偏差を計算し、標準偏差の高低により、板部と背景を判別し、その境界線を板エッジとして板エッジ部を基準に形状測定位置を決定することが望ましい。
すなわち、測定対象である鋼板3は、耳波の場合、板エッジ部がもっとも形状が悪化し、板波の高さが大きくなるため、この板エッジ部の形状を測定する必要がある。今回の測定方法では、鏡面性の高い鋼板3に映りこんでいるマルチスリット7の像の縞位相変化(ゆがみ)を検出することにより、鋼板3の形状を測定する。そこで、通板ラインの背景に、鏡面性の低いシート(紙、フェルト等鋼板に疵をつけないシート)を配置しておき、得られた画像に対して幅方向に沿って、画像縦方向指定範囲内の輝度分布の標準偏差を計算すると、縞模様が映りこんでいる部分は、縞模様の明暗により標準偏差が大きくなり、縞模様が写り込まない背景部分については標準偏差が小さくなる。このようにして求めた幅方向の輝度標準偏差分布の高低から、板部と背景部を判別することができ、鋼板3の板エッジ部を判別することができる。
この処理により、鋼板3の板エッジにおいて最も形状不良(板波高さ)が大きくなる場合における正確な測定が可能となるだけでなく、蛇行発生時においても鋼板3上の同じ幅方向位置を測定することができる。
実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
(装置構成)
図7(a)は、本発明に係る板材の光学式形状測定装置1の実施例を示す側面図であり、図7(b)は、本発明に係る板材の光学式形状測定装置1の実施例を示す正面図である。
図7(a)および図7(b)に示すように、鋼板3の上方約200mmの位置に来るように複数の棒状光源4aを有する光源4を設置し、鋼板3の表面に映りこむ縞模様プレート像を、2台のCCDカメラ5a(OS側)、5b(DS側)により撮像する。
この光学式形状測定装置1での測定範囲は、板幅方向約700mm、長手方向400mmである。得られた画像に対して図示しない演算装置により画像処理を行い、鋼板3の最エッジ端からの距離1mm、10mm、20mm、30mmを含む、板幅方向20箇所の最大山高さを測定し、出力する。鋼板3の最エッジ近傍を細かいピッチで測定するのは、耳波形状の場合、板端部で急激に形状が悪化することがあり、このような場合にも正確な山高さ分布を測定するためである。
棒状光源4a列には、高コントラストで棒状光源4aを規則正しく並べて設けるために、縞模様を描いたフィルム7を、面照明であるバックライト6により照らす方式とした。このバックライト6には、広さとして幅795mm、長さ548mm(A1サイズ)の白色LED照明方式のライトパネルを用い、縞模様の周期は、15mm(明線7.5mm/暗線7.5mm)とした。
撮像用のCCDカメラ5a、5bは、画素数としてはXGAサイズ(横1024画素×縦768画素)のものであり、毎秒30枚の画像をプログレッシブで出力する。また、外部からの同期信号により、複数台のカメラを同期して撮影することが可能なものである。カメラ光軸は、鋼板3の表面に対して約37度傾斜させて配置し、レンズの焦点距離は16mmを使用し、2台のカメラ5a、5bで鋼板3の全幅700mmをカバーする。なお、本実施例では、現場での既存設備との干渉を防止するため、ミラー8によりカメラ光軸を折り返し、装置全体のコンパクト化を図った。
図8は、この光学式形状測定装置1のシステム構成を示す説明図である。
本発明における演算装置である画像処理パソコン9は、カメラ制御器10a、10bを介してCCDカメラ5a、5bと信号の授受を行うことができるように構成されている。
画像処理パソコン9には、CPUにクロック周波数2GHzのIntel社製Core2Duoプロセッサーを用いた標準的なWindows(登録商標)パソコンを用い、内蔵したマルチチャンネル画像取り込みボード11により、2台のカメラ5a、5bからの画像を同時にメモリー内に採取することが可能である。このメモリー内に取り込まれた画像データは、平坦度解析プログラムによって、棒状光源4aの変位量を解析され、幅方向20箇所の板波高さとして出力される。このシステム構成では、毎秒5回の測定が可能であったので、板の通板速度2m/s(120mpm)までであれば、抜けなく鋼板3の全面の山高さを測定することができる。
(画像処理内容)
画像取り込みパソコン9内の平坦度解析プログラムでは、(i)鋼板エッジ検出、(ii)形状ラインの決定と測定形状ライン上の輝度分布抽出、(iii)位相変化解析、(iv)位相解析結果から角度分布計算と最大山高さの算出が行われる。
(i)鋼板両エッジの検出
鋼板3の走行方向2箇所において、鋼板3の左右のエッジを検出し、鋼板端のラインを計算する。エッジ検出としては、所定の区間内のY方向の輝度分布の標準偏差を計算する。
図9は、通常のYプロジェクション方式と標準偏差方式とによるエッジ検出の効果を比較して示すグラフである。
図9に示すグラフから明らかなように、標準偏差方式によりエッジ検出するほうが、エッジ部境界を明確に判別することができることがわかる。
(ii)形状測定ラインの決定と測定形状ライン上の輝度分布抽出
図10は、エッジ検出結果に基づくエッジ計算位置の決定における測定中の画像例を示す説明図である。
図10に示すように、検出された左右のエッジラインから、1mm、10mm、20mm、30mmを含む、幅方向20箇所の形状測定ラインを決定して、形状測定ライン上の輝度分布を画像データより、取り出し計算用の配列に格納する。この処理により、最エッジにおいてもっとも形状不良(板波高さ)が大きくなる場合での正確な測定が可能となるだけでなく、蛇行発生時においても鋼板上の同じ幅方向位置を測定することができる。
(iii)位相解析
画像上から得られた20箇所の形状測定ライン上の輝度分布に対して、位相変化の計算を行う。ヒルベルト変換を実施するにあたり、高速フーリエ変換(FFT)を実施できる様ni輝度分布のデータ列を2(n:自然数)あわせる処理を行う。
図11は、再サンプリングの手順(データ点数6点から8点へ)を示す説明図である。参考のため、図15にデータ点数6個のデータを8個に増やす場合を示す。今回の実施例では、400点のデータ列を補間することにより、512点に増やして処理した。
図12は、図2の画像の輝度分布データを例にして、位相情報の計算過程、すなわち位相解析の手順を示すグラフである。
図11を参照しながら説明したようにしてデータ個数を整えられた輝度データ列は、FFT処理行われ空間周波数域に変換された後に、棒状光源ピッチに相当する空間周波数域以下と虚数部を0で置換して、逆FFT処理を行う。得られた計算結果の実数部と虚数部の比に対して、アークタンジェント(逆正接関数)を計算することにより、輝度分布波形の位相情報p(x)のみを抜き出す。同様にあらかじめ測定し計算しておいた、フラットな平面での位相情報p(x)との差をとり、位相変化量Δp(x)を求める。
(iv)表面角度分布と形状の計算
得られた線状パターン間隔から実際の鋼板角度α(x)を計算する。この際に、基準平面での線状パターン間隔は、予めライン上に基準平面をおいて測定したデータを用いる。基準平面板を複数の高さで測定しておき、実際の鋼板高さに応じて基準平面板での線状パターン測定値を使い分ければ、正確な急峻度を測定することができる。
図13は、角度からの山高さ算出例を示すグラフである。得られた角度分布に対して、極小値αmaxと極大値αmin及びそれら極値の間隔P/2を求め、板波高さhを求める。極値の検出には、角度分布を一回微分して、原点をクロスする部分を求める方法等を用いることができる。複数の極小または極値がある場合は、複数の山高さが計算されることになるが、今回のソフトウエアでは最大の高さを算出するようにした。
(測定例)
図14は、オフラインでの角度からの山高さ算出例を示すグラフである。図14には、本発明に係る光学式形状測定装置1を用いて端伸び形状切り板サンプルを測定して、手測定による山高さとの比較を示す。両測定値の差は、2σ=0.35mmと品質保証に十分な測定精度で測定できることを確認できた。
図15は、製造ラインに本発明に係る光学式形状測定装置1を設置して、耳波形状のコイルを連続的に測定した結果の例を示す。図15(a)は、全長の山高さを濃淡表示したものであるが、全長にわたり安定して測定できており、耳波形状をはっきりと識別できる。
図15(b)は、最エッジ部の山高さ測定結果を示すグラフである。コイル最先端と最尾端部にて鋼板3を切り出し、手測定による山高さをあわせて示す。本発明の装置による測定結果は手測定の結果に対して最大でも0.3mmの差となっており、オンラインにおいても正常に測定できることが確認された。
1 本発明に係る光学式形状測定装置
2 定盤
3 板材(鋼板)
4 光源
4a 棒状光源
5,5a、5b 撮像装置(カメラ)
6 面光源(面照明)
7 マルチスリット(縞模様スリット)
8 ミラー
9 演算装置(画像処理パソコン)
10a、10b カメラ制御器
11 マルチチャンネル画像取り込みボード

Claims (6)

  1. 測定対象である板材の上方に複数の棒状光源を配置し、前記板材の表面に観察される前記複数の棒状光源の鏡像を撮像装置によって撮影した画像に基づいて前記板材の形状を測定する板材の光学式形状測定方法であって、
    複数の棒状光源を該板材の形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔に配置し、前記撮像装置によって撮影した画像上における前記複数の棒状光源の配列方向に垂直な方向の周期的な輝度分布波形を求め、求めた該輝度分布波形の、基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相変化量を求めることによって、当該板材の表面の角度分布を求めること、及び
    隣接する二つの前記棒状光源の設置間隔dと、得られた位相変化量φ(x)とから、該棒状光源の列上での観察位置ずれ量Δx=φ(x)d/(2π)を求め、下記(1)式により鋼板の表面角度αを求めること
    を特徴とする板材の光学式形状測定方法。
    (1)式において、Δxは前記棒状光源の列上での観察位置ずれ量を示し、θは撮影装置の角度を示し、αは鋼板の表面角度を示し、βは縞模様プレートの設置角度を示す。
  2. 前記周期的な輝度分布波形をf(x)とした場合に、隣接する二つの前記棒状光源の間隔に相当する空間周波数のみを抜き出して輝度分布信号f(x)を求め、該輝度分布信号f(x)に対してヒルベルト変換処理を行うことにより90°位相がずれた周期的な波形f(x)を求め、位相分布p(x)=tan−1(f(x)/f(x))を求め、
    同様の手法により予め求めた基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相分布をp(x)としたときに、形状変化に伴う位相変化量を、Δp(x)=p(x)−p(x)として求めることを特徴とする請求項1に記載された板材の光学式形状測定方法。
  3. 得られた前記鋼板の表面角度αの分布を積分することによって、前記鋼板の表面形状を求めることを特徴とする請求項に記載された板材の光学式形状測定方法。
  4. 得られた前記鋼板の表面角度αの分布に対して、極小値αmax、極大値αmin及びこれら極値の間隔P/2を求め、下記式により、急峻度λまたは板波高さhを求めることを特徴とする請求項に記載された板材の光学式形状測定方法。
  5. 前記鋼板の幅方向に渡ってライン方向輝度分布の標準偏差を求め、該標準偏差の高低に基づいて板部と背景とを識別し、前記板部および前記背景の境界線を前記鋼板の板エッジとして、該板エッジ部を基準として前記鋼板の形状測定位置を決定することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載された板材の光学式形状測定方法。
  6. 測定対象である板材の上方に、該板材の形状測定範囲に向けて斜めにかつ等間隔で並んで配置される複数の棒状光源と、該板材の表面に観察される前記複数の棒状光源の鏡像を撮影する撮像装置と、該撮像装置により撮影された画像上における前記複数の棒状光源の配列方向に垂直な方向の周期的な輝度分布波形を求め、該輝度分布波形の、基準平面測定時の周期的な輝度分布波形に対する位相変化量を求めることによって該板材の表面の角度分布を求めて前記板材の形状を求めるとともに、隣接する二つの前記棒状光源の設置間隔dと、得られた位相変化量φ(x)とから、該棒状光源の列上での観察位置ずれ量Δx=φ(x)d/(2π)を求め、下記(1)式により鋼板の表面角度αを求める演算装置とを備えることを特徴とする板材の光学式形状測定装置。
    (1)式において、Δxは前記棒状光源の列上での観察位置ずれ量を示し、θは撮影装置の角度を示し、αは鋼板の表面角度を示し、βは縞模様プレートの設置角度を示す。
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