JP5263095B2 - 連続鋳造鋳片の製造方法及び連続鋳造設備 - Google Patents

連続鋳造鋳片の製造方法及び連続鋳造設備 Download PDF

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Description

本発明は、連続鋳造鋳片の製造方法及び連続鋳造設備に関するものである。
従来から、連続鋳造方法によってスラブやブルーム等の半製品(鋳片)を製造する場合に、溶鋼中に含まれていたケイ素(Si)、マンガン(Mn)等の成分が鋳片の中心部に偏析する、いわゆる中心偏析が問題となることがある。
このような中心偏析は、内部割れや鋼材の品質の低下をもたらす原因となるため、可能な限り抑制することが好ましい。この中心偏析の抑制技術として、従来から、溶鋼の凝固末期に、長辺サポートロールにより鋳片を圧下し(軽圧下)、凝固収縮を補間し偏析を少なくする技術がある。
一般的に、二次冷却を経て軽圧下ゾーンに移動する段階で、鋳片短辺部分の温度がそれ以外の部位よりも低くなるため、短辺部分の圧下抵抗が、他の部位よりも高くなる。
そこで、短辺部分の圧下抵抗を低減するために、短辺部分を、それ以外の部位よりも緩冷却とする方法が知られている。
しかしながら、短辺部分を緩冷却すると、凝固末期の固液界面形状は平坦ではなく、その断面は眼鏡型(W型と呼称されることもある)になっていることが報告されている(非特許文献1)。
これを改善するため、圧下抵抗の不均一さに抗って圧下する目的で、軽圧下の圧下力を強くして圧延することが考えられるが、必要な圧下力は強大なものとなり、それに伴って装置自体も高強度化しなければならず費用が膨大なものとなる。また圧下ロールやロール軸受の負荷が大きくなるので、装置の破損やメンテナンス費用の増大などの問題が起こる。
圧下抵抗を下げるためには、鋳片に対して適宜加熱すればよいが、鋳片の加熱自体に関しては、従来から鋳片割れを抑制する目的で、二次冷却曲げ部や矯正部帯の入り側において鋳片コーナー部を誘導加熱あるいはバーナー加熱すること(特許文献1)、鋳片全周を誘導加熱し、表面をやわらかくしロール圧下により鋳片表面の粗さを改善する技術(特許文献2)、さらには鋳片中心部が凝固を開始する近傍で鋳片全体を加熱すること(特許文献3)が提案されている。
特開2007−160341号公報 特開平11−170019号公報 特開昭63−154248号公報
鋼のスラブ連続鋳造技術の最近の動向、第153・154回西山記念技術講座、日本鉄鋼協会,(1994),p180−184.
ところで、軽圧下ゾーンに移動する前に鋳片に対しては、冷却水スプレーを施して二次冷却されるが、その冷却条件によって、軽圧下ゾーンに移動する前の鋳片の温度分布は異なっている。
まず全幅冷却と呼ばれる冷却方式では、長辺の全幅に亘って冷却水スプレーが施されるため、短辺部分の温度の低下が大きく、特にコーナー部分での温度の落ち込みは顕著である。かかる場合、短辺付近は早期に凝固してしまい、凝固完了部が短辺に存在し、しかも短辺部分の温度が低下しているため、短辺の圧下抵抗が極めて大きくなってしまう。他方、幅切り冷却と呼ばれる、長辺の両端近傍の位置に冷却水スプレーを施さないか、あるいは冷却水量を他より低減した二次冷却がなされた鋳片では、短辺部分の温度低下は全幅冷却ほどではないものの、やはり短辺部分の温度低下は避けられず、当該部分の圧下抵抗は増加していた。
このような事情の下で、軽圧下される鋳片に対して、仮に前記した特許文献1〜3の加熱技術を適用したとしても、次のような問題がある。
まず特許文献1では、コーナー部のみを加熱しているため、確かにコーナー部の温度は高くなるものの、短辺部中央部分の温度の改善(中心偏析の改善)はできない。したがって、全幅冷却された鋳片に対しては、短辺中央部分の加熱が十分ではない。
特許文献2、3については、いずれも鋳片全体もしくは長辺表面を加熱しているので、短辺部分の温度を昇温させることはできるものの、いずれも、軽圧下ゾーンよりも鋳造方向上流側で加熱しているため、軽圧下時までに冷却されて温度が低下してしまい、短辺部分の加熱を十分に行なうことはできない。また、中心偏析の改善には寄与しない長辺部分も加熱するため、エネルギーを無駄に浪費する点も否めない。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、軽圧下ロールを備えた軽圧下ゾーンを有する連続鋳造設備において、二次冷却が全幅冷却、幅切り冷却のいずれであっても、鋳片短辺部分を適切に加熱することで、圧下抵抗を低減でき、かつ、鋳片短辺部分の圧下抵抗が急激に低下しない様にすることができ、これにより圧下装置の圧下力を増強することなく、また、軽圧下ロールを高強度化することなく、軽圧下による中心偏析の低減を図ることを目的としている。
前記目的を達成するため、本発明は、軽圧下ロールを備えた軽圧下ゾーンを有する連続鋳造設備を用いて連続鋳造鋳片を製造する方法において、鋳片の両短辺の両外側に鋳片の短辺に対向して配置した誘導加熱コイルによって、少なくとも鋳片の両短辺の厚み方向の中央部を加熱するとともに、前記誘導加熱コイルの出力を制御して、前記鋳片の短辺部分の軽圧下ゾーンにおける断面平均温度が、前記鋳片の固相線温度−100℃(固相線温度よりも100℃低い値)以下となるように制御する、ことを特徴としている。
ちなみに、前記の断面平均温度の下限値は、前記軽圧下ロールで圧下可能な圧下抵抗となる断面平均温度以上であり、使用する軽圧下装置の圧下能力に応じて、適宜、設定することができる。
鋳片の短辺に対向して配置した誘導加熱コイルの出力を制御することで、短辺における厚み方向中心部を優先的に加熱制御することができるため、軽圧下時の圧下抵抗となっている部分を効率的に加熱することができる。これにより、軽圧下時の圧下抵抗を低減できるため、従来と同等な圧下力によって中心偏析の低減を図ることができる。なお前記誘導加熱コイルの出力の制御は、前記鋳片の短辺部分の断面平均温度に対応する圧下抵抗が、前記軽圧下ロールで圧下可能な範囲となるように制御すれば良く、全幅冷却、幅切り冷却を問わず、圧下抵抗を好適に低減することができる。したがって軽圧下ゾーンでの軽圧下ロールの圧下力を増強することなく、軽圧下による中心偏析の低減を図ることできる。
但し、本発明者の検討により、前記の断面平均温度が高すぎる場合、圧下抵抗が急激に低下することが判明した。圧下抵抗が急激に低下した状態で軽圧下すると、鋳片の熱・凝固収縮に伴う体積変化分を超えて圧下してしまうため、液相部分が上流側(鋳型側)に逆流し、これにより中心偏析が却って悪化することがわかった。そこで、鋭意、検討したところ、対象とする鋳片の固相線温度−100℃の値を超えて昇温させると、急激に圧下抵抗が減少することを、実験的により知見した。
そこで、前記の断面平均温度の上限を、鋳片の固相線温度−100℃(固相線温度よりも100℃低い値)以下と規定した。
ちなみに、固相線温度は、鉄鋼便覧第3版第1巻、日本鉄鋼協会編、昭和56年6月20日発行丸善、pp205(参考文献1)に記載されている方法により算出することができる。
なお、ここでいう鋳片の短辺部分の断面平均温度の対象となる領域は、軽圧下ゾーンの始端から終端までの鋳片の短辺部分の完全凝固部位の断面平均温度である。
ここで、軽圧下ゾーンの始端とは、最も上流側の軽圧下ロールを支持しているロールセグメントの最上流側端部であり、軽圧下ゾーンの終端とは、最も下流側に位置する軽圧下ロールを支持しているロールセグメントの最下流側端部であり、したがって軽圧下ゾーンとは、これら始端と終端との間の領域である。
軽圧下ゾーンでの断面平均温度を算出する際には、短辺側の完全凝固部位について、軽圧下ゾーン始端の断面平均温度から軽圧下ゾーン終端までの断面平均温度を、細かいメッシュに分割して求め、体積分を積分して計算で求めることが理想であるが、発明者の知見では、以下に示す簡便法で算出しても、ほとんど同様な結果になることを確認しているため、以下の簡便法が適用できる。すなわち、
鋳片の軽圧下ゾーンの短辺部分の断面平均温度=(軽圧下ゾーンの最上流側端部の断面平均温度+軽圧下ゾーンの最下流側端部の断面平均温度)/2
ここで、鋳片の軽圧下ゾーンの短辺部分の鋳片幅方向の位置は、鋳片厚みの1/2の長さ分だけ、短辺から中心に向けて入った矩形の領域が、圧下抵抗となっている領域にほぼ相当することを知見しているため、前記の矩形領域の断面平均温度を用いても構わない。
さらに、鋳片厚み方向に関して、圧下抵抗に関与する領域は、鋳片厚み中心部を対称として、それぞれ25mmであることを知見しているため、前記の矩形領域の鋳片厚み方向について、鋳片厚み中心部を対称として、それぞれ25mmとしても構わない。
前記誘導加熱コイルによる加熱の際に、鋳片のコーナー部に対してプラズマアークを照射するようにすれば、全幅冷却の際に発生しやすいいわゆるコーナー割れの発生を防止することができる。
別な観点によれば、本発明の連続鋳造設備は、軽圧下ロールを備えた軽圧下ゾーンと、少なくとも軽圧下ゾーン内の最上流側端部において鋳片の両短辺外側に鋳片の短辺に対向して配置され、少なくとも鋳片の両短辺の厚み方向の中央部を加熱する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルの出力を制御する制御装置と、を有している。
前記誘導加熱コイルは、鋳片の鋳造方向に沿って複数備えられていても良い。
本発明によれば、軽圧下ロールを備えた軽圧下ゾーンを有する連続鋳造設備において、二次冷却が全幅冷却、幅切り冷却のいずれであっても、鋳片短辺部分を適切に加熱することで、圧下抵抗を低減でき、かつ、鋳片短辺部分の圧下抵抗が急激に低下しない様にすることができ、これにより圧下力を増強することなく、また、軽圧下装置を高強度化することなく、エネルギー効率よく軽圧下による中心偏析の低減を図ることが可能である。
実施の形態にかかる連続鋳造設備の概要を模式的に示した説明図である。 図1の連続鋳造設備において使用された誘導加熱装置の構成を模式的に示した説明図である。 (a)は、全幅冷却された際のメニスカスから16mの位置の凝固界面を示す図、(b)は、幅切り冷却された際の同位置での凝固界面を示す図、(c)は、全幅冷却された際のメニスカスから20mの位置の凝固界面を示す図、(d)は、幅切り冷却された際の同位置での凝固界面を示す図である。 (a)は全幅冷却された際のメニスカスMから16mの位置の断面温度分布を示す図、(b)は幅切り冷却された際の同位置での断面温度分布を示す図、(c)は、全幅冷却された際のメニスカスMから20mの位置の断面温度分布を示す図、(d)は、幅切り冷却された際の同位置での断面温度分布を示す図である。 (a)は、全幅冷却された鋳片に対して誘導加熱したときのメニスカスから16mの位置の断面温度分布を示す図、(b)は、同じくメニスカスから20mの位置の断面温度分布を示す図である。 (a)は、鋳片のコーナー部から650mmの領域を幅切り冷却した鋳片に対して誘導加熱したときのメニスカスから16mの位置の断面温度分布を示す図、(b)は、同じくメニスカスから20mの位置の断面温度分布を示す図である。 (a)は、鋳片のコーナー部から150mmの領域を冷却しない鋳片に対して誘導加熱したときのメニスカスから16mの位置の断面温度分布を示す図、(b)は、同じくメニスカスから20mの位置の断面温度分布を示す図である。 誘導加熱装置の他にプラズマトーチを鋳片の短辺に対して斜めに配置した様子を模式的に示した説明図である。
以下、本発明の実施の形態について説明すると、図1は、実施の形態にかかる連続鋳造設備1の概要を示しており、この連続鋳造設備1は、溶鋼を貯留するタンディッシュ2と、タンディッシュ2の底部から鋳型3に対して溶鋼を注入するノズル4と、鋳型3から引き出される鋳片Hを通過させる鋳片通路を構成するために対向配置されている複数のロール群6、7を備えている。
鋳片Hを鋳片通路に沿った鋳造方向Aに案内するように、鋳片通路の可動面側(いわゆるL面側)に各ロール群6が配置され、固定面側(いわゆるF面側)に各ロール群7がそれぞれ対向配置されている。各ロール群6、7は、複数のローラ11を支持している複数のロールセグメント(図示せず)によって構成されている。
連続鋳造設備1においては、上流側から下流側に行くにつれて複数の二次冷却ゾーン、たとえば二次冷却ゾーンC1〜C7が設定されている。そして二次冷却ゾーンC7内には、軽圧下ゾーン21が設定され、軽圧下ゾーン21の下流側には切断カッター12が設けられている。
各二次冷却ゾーンC1〜C7においては、鋳片Hに対してスプレーノズル(図示せず)によって冷却処理がなされる。このスプレーノズルは、各二次冷却ゾーンC1〜C7ごとにその動作、水量が制御され、鋳片Hに対して所望の全幅冷却、幅切り冷却が適宜施される。
軽圧下ゾーン21は、複数のロールセグメント(図示せず)を有しており、各ロールセグメントは、複数の、たとえば4本〜8本の軽圧下ロール22を備え、各軽圧下ロール22は油圧シリンダ(図示せず)によって、鋳片Hに対して所定の圧力で圧下することが可能である。軽圧下ゾーン21の始端は、最も上流側の軽圧下ロール22を支持しているロールセグメントの最上流側端部であり、軽圧下ゾーン21の終端は、最も下流側に位置する軽圧下ロール22を支持しているロールセグメントの最下流側端部であり、軽圧下ゾーン21は、これら始端と終端との間の領域をいう。なお軽圧下ゾーン21においても、スプレーノズル(図示せず)によって、鋳片Hに対して冷却処理がなされる。
本実施の形態においては、軽圧下ゾーン21内の入口において、図2に示したような誘導加熱装置31が、鋳片Hの短辺両側に配置されている。配置数は軽圧下ゾーン21内に任意に配置でき、軽圧下ゾーン21内の入口に少なくとも1基の誘導加熱装置31が設置されていればよく、軽圧下ゾーン21の上流側の領域に、さらに予熱のために誘導加熱装置31を配置しても良い。なお図示の都合上、図2は、鋳片Hの幅方向一端部の短辺S側のみを示しているが、幅方向他端部の短辺側においても同一の誘導加熱装置31が鋳片Hを挟んで対向配置されている。
誘導加熱装置31は、水冷銅シールド32内に、縦断面がチャネル溝型の鉄心33が収納されており、この鉄心33の開口部が鋳片Hの短辺Sに対して、対向して配置されている。鉄心33の開口部と鉄心33の外方との間には、誘導加熱コイル34が巻きつけられている。誘導加熱コイル34に対しては、交流電源35からの高周波交流電力が、制御装置36を介して供給され、図2に示したように、短辺Sに対して、加熱することができる。誘導加熱コイル34の出力は、制御装置36によって制御される。
ちなみに、図2に示すように、誘導加熱コイル34の中心位置を、短辺Sにおける厚み方向中心線Gの位置に整合させると、この中心線Gを線対称中心線として短辺Sに対して、加熱することができる。従って、軽圧下時の圧下抵抗となっている部分をより効率的に加熱することができるため、好適である。
実施の形態にかかる連続鋳造設備1の主要な構成は以上の通りであり、次にその実施方法、作用等について説明する。この連続鋳造設備1を用いて実施される連続鋳造方法は、鋳片Hの短辺Sに対して誘導加熱装置31の出力を制御して、軽圧下ゾーン21における鋳片Hの短辺S部分の断面平均温度を制御するようにして、実施される。
短辺S部分の断面平均温度を算出する際には、既述したように、(軽圧下ゾーンの最上流側端部の断面平均温度+軽圧下ゾーンの最下流側端部の断面平均温度)/2で表すことができ、また断面平均温度の鋳片Hの幅方向の位置は、鋳片Hの厚みの1/2の長さ分、短辺Sから中心に向けて入った矩形の領域の断面平均温度として、算出してもよい。さらに、前記の矩形領域の鋳片厚み方向について、鋳片厚み中心部を対称として、それぞれ25mmとしても構わない。かかる場合、鋳片Hの温度の算出は、以下のようにして行なうことができる。
一般に連続鋳造鋳片内の温度場は、鉄鋼便覧第3版第1巻、日本鉄鋼協会編、昭和56年6月20日発行丸善、pp211−212(参考文献1)に記載されている方法により算出することができる。即ち、所定の過熱度を持った溶鋼を初期値として、所定の鋳造速度で移動する鋳造方向に垂直な2次元断面を解析領域として選択し、鋳型及び二次冷却ゾーンの冷却条件を2次元断面の外側の境界条件として与え、鋼の標準的物性値である熱伝導率、比熱、密度及び凝固潜熱値を用いて非定常伝熱解析を実施すれば、時間を変数とした鋳片内の温度分布や凝固固相率分布を算出することができる。
連鋳機内の抜熱分布は複雑であるが、理論と実験に基づいて、鋳造速度と冷却方式、冷却水量に応じて標準的な算出式が提唱されており、鉄鋼便覧第3版第2巻、日本鉄鋼協会編、昭和54年10月15日発行丸善、pp618−623(参考文献2)に記載されている。温度分布の算出は、解析的には困難であり、一般に前記の鋳造方向に垂直な2次元断面内を格子状のセルに区切り、差分法や有限体積法などを使用して、セル中心や辺あるいは格子点の離散的な変数値を計算する数値的な解析が実施される。一方、本発明のような短辺を加熱する場合には、前記の非定常伝熱解析において、エネルギー方程式の生成項に加熱によるエネルギー入熱を代入すれば、鋳片内の温度場及び固相率分布を算出することができる。
次に、温度分布の算出のための解析条件(初期条件、境界条件、物性値)について説明する。
本実施の形態では、代表例として下記の条件において、有限体積法を用いた数値解析により、鋳片内の凝固計算を実施し、温度分布を算出した。
鋳片Hについては、幅2000mm、厚み250mm、そして鋳造速度1m/min、液相線温度1797K(1524℃)、固相線温度1765K(1492℃)とし、溶鋼及び固体の鋼の物性として温度依存性の影響は小さいため、温度依存性を無視できるとして、密度7200kg/m、熱伝導率41W/mK、比熱750J/kgK、凝固潜熱251000J/kg、という固定物性値を使用し、また、溶鋼流動及び成分偏析の影響も小さいため、これを無視できるとして解析を行った。
解析領域は矩形鋳片の半幅半厚の4分の1領域とし、解析セルサイズは1辺1mmの正方形とした。解析法は有限体積法を使用し、時間については1次精度の陽解法、他は陰解法とした。
鋳型3内及び二次冷却ゾーンC1〜C7内の冷却条件とスプレー条件は例として、以下の条件を使用した。なお、各式は前記参考文献3に記載された実験式である。
鋳型3内の抜熱(W/m)は、鉄鋼便覧第3版第2巻、日本鉄鋼協会編、昭和54年10月15日発行丸善、pp618−623(参考文献3)の図を回帰して得られる式として、8×10×(V/z)0.35 で与えた。
ここでVは鋳造速度(m/min)、zはメニスカスM(図1中のM)からの距離(m)である。各二次冷却ゾーンC1〜C7でのスプレーノズル冷却帯の抜熱(W/m)は、
1.17*5030*WD0.451*(1−7.5*10−3Tw)*(T−T)で与えられる(参考文献3)。
空冷帯(二次冷却ゾーンC1〜C7内、およびそれより下流の領域において、鋳片Hのスプレーノズルからの冷却水がスプレーされていない部分)の抜熱(W/m)は、
4.88×10−8×(T −T ) + 3×(T−T1.25
で与えた(参考文献3)。
ここで、WDはスプレー冷却の冷却水量密度(リットル/min/m)、Tは鋳片の表面温度(K)、冷却水温度T=303.15K、空気温度T=303.15Kである。
スプレー冷却の冷却水量密度は、以下の設定とした。
メニスカスMからの距離0.8m〜1.1m(二次冷却ゾーンC1)は、長辺及び短辺共に150リットル/min/m
メニスカスMからの距離1.1m〜2.5m(二次冷却ゾーンC2)は、長辺のみ120リットル/min/m
メニスカスMからの距離2.5m〜3.5m(二次冷却ゾーンC3)は、長辺のみ60リットル/min/m
メニスカスMからの距離3.5m〜5m(二次冷却ゾーンC4)は、長辺のみ25リットル/min/m
メニスカスMからの距離5m〜7m(二次冷却ゾーンC5)は、長辺のみ20リットル/min/m
メニスカスMからの距離7m〜11m(二次冷却ゾーンC6)は、長辺のみ15リットル/min/m
メニスカスMからの距離11m〜20m(二次冷却ゾーンC7)は、鋳片Hの長辺のみ、全幅2000mmに対して幅中心部700mmのみ10リットル/min/mとして、外側の両短辺側を5リットル/min/m(幅切り冷却)とする条件、及び全幅2000mmを10リットル/min/m(全幅冷却)とする条件の2条件とした。
なお、メニスカスMからの距離0.8m〜20mの短辺は空冷条件とした。さらに、メニスカスMからの距離20m以降は長辺、短辺ともに空冷条件とした。
ちなみに、軽圧下ゾーン21は二次冷却ゾーンC7内に設置されており、軽圧下ゾーン21はメニスカスMから15m〜20mの間の5m長さとした。
(誘導加熱の解析条件)
誘導加熱装置31による解析条件を以下に示す。加熱帯、すなわち鋳造方向に沿った長さは、メニスカスMから15m〜20mの間の、5m長相当において短辺Sへの加熱入力を与えた。これは、軽圧下ゾーン21である、メニスカスMから15m〜20mの間の5m長さ相当において、誘導加熱装置31により加熱した場合を想定している。
ちなみに、周波数には加熱効率を最大とする適正周波数が存在するため、周波数を変更させた場合の鋳片の温度上昇を計算により検討した結果、今回は200Hzが適正周波数と求まったのでこの値を採用した。また、誘導加熱コイル34は、図2に示したように、鋳片Hの短辺Sの厚み方向の中心線Gに対して、対称となるように設置した場合を想定している。
誘導加熱コイル34の巻き幅は、対となる軽圧下ロール22間の距離、即ち鋳造厚み未満のサイズとした。これにより、短辺Sの鋳片厚み方向に電磁力の分布ができ、短辺Sの面厚み方向の中央部の温度を優先的に高くするようにした。なお交流電磁場であることから表皮効果が生ずる(参考文献4:第129、130回西山記念技術講座 電磁気力を利用したマテリアルプロセシング 社団法人日本鉄鋼協会編 平成元年4月28日刊)。このような適正周波数および表皮効果の双方を考慮し、誘導電磁場により発生するジュール熱Qの分布を以下の式で与えることにした。
Q=Q・exp(−2n/δ)・exp(−2CS/Tc)
磁気表皮深さ(m):δ=√{2/(μ・σ・2πf)}
ここで、Q:鋳片短辺中心表面におけるジュール熱値(W/m)、n:短辺表面から鋳片幅方向の深さ(m)、μ:真空の透磁率(4π×10−7)(H/m)、σ:電気伝導度(S/m)、π:円周率、f:電磁場の周波数(Hz)、Tc:鋳片の厚み(m)、S:短辺中心から短辺表面に沿う鋳片厚み方向の距離(m)、C:鉄心を含むコイル寸法と電磁場の周波数に依存する定数(今回の200Hzの例ではC=1とした。Cついては、コイル寸法と電磁場の周波数を変更させ、相関性の高い値を求めることで得られる。)
また、誘導加熱による鋳片Hへの熱効率は40%であることを、別途、確認しているため、熱効率は40%で計算を行った。
計算結果の例を以下に示す。
図3(a)は、全幅冷却された際のメニスカスMから16mの位置の凝固界面、図3(b)は、幅切り冷却された際の同位置での凝固界面、図3(c)は、全幅冷却された際のメニスカスMから20mの位置の凝固界面、図3(d)は、幅切り冷却された際の同位置での凝固界面を各々示している。なお図3中、Lは長辺、Sは短辺、Eは液相部分、Kは固相部分、Fは凝固シェル前面、Rは鋳片の幅方向の中心線、Gは鋳片の厚み方向の中心線、Xは圧下の際に圧下抵抗となる部分を各々示している。
図4は、それぞれの場合の鋳片断面内の温度分布を示し、図4(a)は全幅冷却された際のメニスカスMから16mの位置(軽圧下ゾーンの最上流側端部から鋳造方向に1mの位置)の断面温度分布、図4(b)は幅切り冷却された際の同位置での断面温度分布、図4(c)は、全幅冷却された際のメニスカスMから20mの位置(軽圧下ゾーンの最下流側端部の位置)の断面温度分布、図4(d)は、幅切り冷却された際の同位置での断面温度分布を各々示している。
これら計算結果に基づく図からわかるように、幅切り冷却の場合には、全幅冷却と比較して、短辺コーナー部の温度は相対的に高くなり、コーナーの割れを抑制できる。しかし、図4(d)に示すように、短辺S付近を除く鋳片幅方向の温度分布が不均一となる。この様に、短辺S付近を除く鋳片幅方向の温度分布が不均一になると、図3(d)に示すように、最終凝固部が幅方向に不均一となる。このため、鋳片を圧下した場合に、長辺Lの中央部の液相部分が先に圧下されてしまうために、長辺Lの中央部と短辺部の間の液相部分を圧下するためには、圧下ロールに大きな圧下力をかける必要がある。
一方、全幅冷却の場合には、図4(c)に示すように、短辺Sのコーナー部の温度は下がるが、短辺S付近を除く鋳片の幅方向の温度分布は均一となる。従って、図3(c)に示すように、短辺S付近を除いて終凝固部が幅方向に均一となる。但し、短辺付近は早期に凝固して凝固完了部が短辺に存在し、また、短辺付近の温度も幅切り冷却の場合より低下するため、圧下抵抗が大きくなってしまう。このため、圧下ロールに相対的に大きな圧下力で最終凝固部鋳片を圧下する必要がある。
これに対して、実施の形態に従い誘導加熱によって短辺S側の加熱を行うと、短辺Sの厚み方向の中央部の温度を優先的に高くできるので、圧下抵抗となっている短辺S側の凝固完了部の温度を上昇させることが可能となる。すなわち、加熱しない場合の、図3の短辺部の凝固完了部、すなわち、大きい圧下力を要する圧下抵抗となっていた部分Xについて、加熱によってこの部分の圧下抵抗を小さくすることができる。
すなわち前述の解析の例に従えば、全幅冷却で加熱を行った場合の断面温度分布は、図5(a)、図5(b)に示した通りである。ここで、図5(a)はメニスカスMから16mの位置、図5(b)はメニスカスMから20mの位置での断面温度分布を、それぞれ示している。
これによれば、加熱を行っていない場合の図4(a)、図4(c)と比較すると、短辺付近の温度を全体的に、高くできていることがわかる。特に、圧下の際に圧下抵抗となる部分Xの温度を、的確に高くできていることがわかる。
そこで、軽圧下ゾーンの鋳片短辺部の断面平均温度を、上記の方法に基き、計算を行った。具体的には、
鋳片の軽圧下ゾーンの短辺部分の断面平均温度=(軽圧下ゾーンの最上流側端部の断面平均温度+軽圧下ゾーンの最下流側端部の断面平均温度)/2 として計算を行なった。
ここで、鋳片の軽圧下ゾーンの短辺部分は、鋳片幅方向の位置を鋳片厚みの1/2の長さ分だけ、短辺から中心に向けて入った位置とし、鋳片厚み方向の位置を鋳片厚み中心部から厚み方向へ向けて25mmの位置とし、この矩形の領域の断面平均温度を用いた。
その結果、加熱なしの場合の短辺部分の断面平均温度が1200〜1250℃程度であったのに対し、加熱を行った場合の短辺部分の断面平均温度が1350〜1400℃程度へと昇温されて、150℃程度高くなっていることがわかった。
鉄鋼便覧第3版第1巻、日本鉄鋼協会編、昭和56年6月20日発行丸善、pp217−224(参考文献3)によると、この加熱による温度上昇分により、圧下抵抗は、加熱なしの場合と比較すると40〜50%程度に減少することから、圧下力は40〜50%程度に減少できることがわかった。
一方、鋳片コーナーから中心に向けて650mm入った部分を幅切りして冷却した場合に、誘導加熱した解析例を図6(a)、図6(b)に示す。ここで、図6(a)はメニスカスMから16mの位置、図6(b)はメニスカスMから20mの位置での断面温度分布を、それぞれ示している。
この場合も、加熱を行っていない場合の図4(a)、図4(c)と比較すると、やはり、短辺付近の温度を全体的に高くできており、圧下の際に圧下抵抗となる部分Xの温度も高くできていることがわかる。
なお前述のように、最終凝固部の均一性を保つには、冷却水の幅切りは行わないほうが良い。
また、図7(a)、図7(b)は、コーナー部から150mm分、長辺側の領域に冷却水をかけない場合に、誘導加熱した結果を示す。すなわち、幅切り冷却する範囲が、図6(a)、図6(b)よりも狭い幅の領域であるとともに、この領域に冷却水をかけない場合を示している。ここで、図7(a)はメニスカスMから16mの位置、図7(b)はメニスカスMから20mの位置での断面温度分布を、それぞれ示している。
この様に、この程度の狭い幅の範囲の幅切り冷却であれば、最終凝固部の均一性は保たれ、さらに短辺部の温度も全体的に上昇しており、コーナー部の温度、および圧下の際に圧下抵抗となる部分Xの温度、のいずれも好適に上昇できていることがわかる。従って、凝固均一性と割れ抑制の双方の効果を享受することが可能である。
前記したように、誘導加熱によって鋳片Hの短辺Sに対して加熱を行なうことにより、圧下抵抗となる部分Xの圧下抵抗を下げることが確認できたが、過剰に短辺部の温度を高くすると、下記のような問題が生ずる。すなわち、短辺部の断面平均温度が高すぎる場合、圧下抵抗が急激に低下してしまい、軽圧下ゾーン21の軽圧下ロール22による圧下が過剰になってしまう。この様に、鋳片の熱・凝固収縮に伴う体積変化分を超えて圧下してしまうと、濃化溶鋼が上流側(鋳型側)に逆流し、偏析が悪化するという問題を生じてしまう。
かかる事態を防止するためには、圧下抵抗が急激に低下しない温度範囲内で、短辺加熱を行う必要がある。
そこで、鋭意、検討したところ、対象とする鋳片の温度が「固相線温度−100℃(固相線温度よりも100℃低い温度)」を超えると、急激に圧下抵抗が減少することを、実験的により知見した。従って、前記の断面平均温度の上限を、「前記鋳片の固相線温度−100℃以下」とすることで、適切に鋳片の圧下抵抗を低減でき、他方で軽圧下装置の圧下能力を増強することなく、中心偏析を低減できる。
なお前記した実施の形態は、誘導加熱装置31によって、鋳片Hの短辺Sに対してのみ加熱するものであったが、特に全幅冷却された鋳片のコーナー部の割れが懸念される場合には、図8に示したように、プラズマ加熱装置41を併用するようにしてもよい。
すなわち、図8に示した例では、プラズマトーチT1、T2が短辺Sに対して斜めに配置されている。各プラズマトーチT1、T2は、トーチ側を陰極、鋳片を陽極とする直流プラズマのプラズマトーチであり、いずれも対応する直流電源42からの電圧の印加によって、各々鋳片Hとの間に直流プラズマによるプラズマアークPを形成させる。プラズマトーチT1、T2の出力の制御は制御装置43によって、各々独立して制御される。
鋳片Hのコーナー部と各プラズマトーチT1、T2との間には、鋳片Hの鋳造方向前後、すなわちプラズマトーチT1、T2によって形成されるプラズマアークPの鋳造方向の前後には、各々矩形ループ状の電磁コイル44が相互に平行となるように設けられている。これら電磁コイル44は、交流電源(図示せず)からの交流電流の供給によって、各プラズマアークPに対して周期的にローレンツ力を作用させ、各プラズマアークPを、当該交流電流の周波数に応じて、図中の往復矢印で示したように、鋳片Hの厚み方向に振動させる。なおプラズマアークPが軽圧下ロール22にかからなように、プラズマ加熱装置41は、軽圧下ロール22相互間のギャップ位置に設置される。
このような構成にかかるプラズマ加熱装置41を併用することで、鋳片Hのコーナー部分に向けて、直接プラズマアークPを照射して、コーナー部温度を独立して昇温させることが可能になる。したがってコーナー割れの発生を防止することが可能である。
(1)誘導加熱+全幅冷却
機長40mで、垂直部2.5m、湾曲部の湾曲半径7.5mRを有する垂直曲げ連続鋳造機において、鋳造厚み250mm、鋳造幅2000mmの鋳片を鋳造速度1.2m/分で鋳造した。鋳型内及び二次冷却ゾーンC1〜C6での冷却条件とスプレー条件は、前述の式を使用し、二次冷却ゾーンC7は長辺のみ、全幅2000mmに対して10リットル/min/mの条件とした。また、軽圧下ゾーン21も、メニスカスMからの距離が15m〜20mの間の5m長さとした。
軽圧下ロール22は60t及び100t/ロール(ロールピッチ350mmロール径300mm)で8本を1セグメントとし、4セグメントの区間で圧下した。鋳造後、鋳片断面のサルファープリントをとり、中心偏析を調査した。条件として、短辺加熱なし、ありで比較した。加熱域は、軽圧下ゾーン21(メニスカスMからの距離が15m〜20m部位)の5m長さ相当域とした。鋳片Hへの加熱入熱量は5m長さで周波数200Hz、1500kWとした。ここで、誘導加熱による鋳片Hへの熱効率は40%であることを、別途、確認しているため、熱効率は40%とした。また、誘導加熱コイル34の出力は、周波数200Hz、3750kWとした。
また、軽圧下ゾーンの鋳片短辺部の断面平均温度は、前述と同様に、以下の式を用いて計算した。
鋳片の軽圧下ゾーンの短辺部分の断面平均温度=(軽圧下ゾーンの最上流側端部の断面平均温度+軽圧下ゾーンの最下流側端部の断面平均温度)/2
ここで、鋳片の軽圧下ゾーンの短辺部分は、鋳片幅方向の位置を鋳片厚みの1/2の長さ分だけ、短辺から中心に向けて入った位置とし、鋳片厚み方向の位置を鋳片厚み中心部から厚み方向へ向けて25mmの位置とし、この矩形の領域の断面平均温度を用いた。
その結果、加熱なし(比較例)の場合、軽圧下ゾーンの短辺部分の断面平均温度は1230℃であったが、加熱あり(本発明例)の場合には、1325℃に上昇した。従って、前述の参考文献3によると、圧下抵抗は、加熱なしの場合と比較すると62〜68%程度に減少することから、圧下力は62〜68%程度に減少できることが確認できた。
ちなみに、ここで用いた鋳片の固相線温度は1492℃であったため、加熱ありの場合の断面平均温度である1325℃との差分は167℃であったため、急激に圧下抵抗の減少は起こらなかった。
一方、加熱条件を3割増加(比較例)させた場合には、軽圧下ゾーンの短辺部分の断面平均温度は1400℃にまで上昇したため、鋳片の固相線温度との差分は92℃であった。
また、加熱なし(比較例)の場合、ロール圧下が60tの場合には最大偏析粒径は1.8mmであり、100tの場合には1mmであった。一方、加熱条件を3割増加(比較例)させた場合、ロール圧下が60tの場合には最大偏析粒径は1.6mmであり、100tの場合には0.9mmであった。
これに対して加熱あり(本発明例)の場合にはロール圧下が60t及び100t共に、最大偏析粒径は0.5mmとすることができた。鋳片コーナー部には若干の割れが観察されたが、軽微なものであった。
(2)誘導加熱+幅切り冷却
機長40mの垂直部2.5m、湾曲部の湾曲半径7.5mRを有する垂直曲げ連続鋳造機において、鋳造厚み250mm、鋳造幅2000mmの鋳片を鋳造速度1.2m/分で鋳造した。鋳型3内及び二次冷却ゾーンC1〜C6での冷却条件とスプレー条件は前述の式を使用し、二次冷却ゾーンC7は、全幅2000mmに対して幅中心部700mmのみ10リットル/min/mとして、外側の両短辺側を5リットル/min/mの条件とした。また、軽圧下ゾーン21も、メニスカスMからの距離が15m〜20mの間の5m長さとした。
軽圧下ロール22は、60t及び100t/ロール(ロールピッチ350mmロール径300mm)で8本を1セグメントとし、4セグメントの区間で圧下した。鋳造後、鋳片断面のサルファープリントをとり、中心偏析を調査した。条件として、短辺加熱なし、ありで比較した。加熱域は、軽圧下ゾーン21(メニスカスMからの距離が15m〜20m部位)の5m長さ相当域とした。ここで、上記と同様に、誘導加熱による鋳片Hへの熱効率は40%とした。また、誘導加熱コイル34の出力は周波数200Hz、出力は全幅冷却より10%少ない3375kWとした。また、軽圧下ゾーン21における鋳片短辺部の断面平均温度も、上記と同様の方法により計算した。
その結果、加熱なし(比較例)の場合、軽圧下ゾーン21における短辺部分の断面平均温度は1265℃であったが、加熱あり(本発明例)の場合には、1350℃に上昇した。従って、前述の参考文献3によると、圧下抵抗は、加熱なしの場合と比較すると66〜72%程度に減少することから、圧下力は66〜72%程度に減少できることが確認できた。
ちなみに、ここで用いた鋳片の固相線温度は1492℃であったため、加熱ありの場合の断面平均温度である1350℃との差分は142℃であったため、急激に圧下抵抗の減少は起こらなかった。
一方、加熱条件を3割増加(比較例)させた場合には、軽圧下ゾーン21における短辺部分の断面平均温度は1425℃にまで上昇したため、鋳片の固相線温度との差分は67℃であった。
また、加熱なし(比較例)の場合、ロール圧下が60tの場合には最大偏析粒径は2.4mmであり、100tの場合には1.6mmであった。一方、加熱条件を3割増加(比較例)させた場合、ロール圧下が60tの場合には最大偏析粒径は2.2mmであり、100tの場合には1.5mmであった。
これに対して加熱あり(本発明例)の場合には60tの場合には最大偏析粒径は1.8mmであり、100tの場合には1.2mmとすることができた。また、鋳片コーナー部に割れは観察されなかった。
誘導加熱+狭幅切り
機長40mの垂直部2.5m、湾曲部の湾曲半径7.5mRを有する垂直曲げ連続鋳造機において、鋳造厚み250mm、鋳造幅2000mmの鋳片を鋳造速度1.2m/分で鋳造した。鋳型3内及び二次冷却ゾーンC1〜C6での冷却条件とスプレー条件は、前述の式を使用し、二次冷却ゾーンC7では全幅2000mmに対して幅中心部1700mmのみ10リットル/min/mとして外側の両短辺側の狭幅領域には冷却水をかけない条件とした。また、軽圧下ゾーン21も、メニスカスMからの距離が15m〜20mの間の5m長さとした。
軽圧下ロール22は60t及び100t/ロール(ロールピッチ350mmロール径300mm)で8本を1セグメントとし、4セグメントの区間で圧下した。鋳造後、鋳片断面のサルファープリントをとり、中心偏析を調査した。条件として、短辺加熱なし、ありで比較した。加熱域は、軽圧下ゾーン21(メニスカスMからの距離が15m〜20m部位)の5m長さ相当域とした。ここで、上記と同様に、誘導加熱による鋳片Hへの熱効率は40%とした。また、誘導加熱コイル34の出力は周波数200Hz、出力は幅切りなしより5%少ない3563.5kWとした。また、軽圧下ゾーン21における鋳片短辺部の断面平均温度も、上記と同様の方法により計算した。
その結果、加熱なし(比較例)の場合、軽圧下ゾーン21における短辺部分の断面平均温度は1250℃であったが、加熱あり(本発明例)の場合には、1365℃に上昇した。従って、前述の参考文献3によると、圧下抵抗は、加熱なしの場合と比較すると54〜62%程度に減少することから、圧下力は54〜62%程度に減少できることが確認できた。
ちなみに、ここで用いた鋳片の固相線温度は1492℃であったため、加熱ありの場合の断面平均温度である1365℃との差分は127℃であったため、急激に圧下抵抗の減少は起こらなかった。
一方、加熱条件を3割増加(比較例)させた場合には、軽圧下ゾーン21における短辺部分の断面平均温度は1440℃にまで上昇したため、鋳片の固相線温度との差分は52℃であった。
また、加熱なし(比較例)の場合、ロール圧下が60tの場合には最大偏析粒径は1.8mmであり、100tの場合には1mmであった。一方、加熱条件を3割増加(比較例)させた場合、ロール圧下が60tの場合には最大偏析粒径は1.6mmであり、100tの場合には0.9mmであった。
これに対して加熱あり(本発明例)の場合には60及び100t共に、最大偏析粒径は0.5mmとすることができた。さらに、コーナー部の小さな割れ発生も皆無であった。
本発明は、軽圧下ロールを備えた軽圧下ゾーンを有する連続鋳造設備に有用である。
1 連続鋳造設備
2 タンディッシュ
3 鋳型
4 ノズル
6、7 ロール群
11 ローラ
12 切断カッター
21 軽圧下ゾーン
22 軽圧下ロール
31 誘導加熱装置
32 水冷銅シールド
33 鉄心
34 誘導加熱コイル
35 交流電源
36 制御装置
41 プラズマ加熱装置
42 直流電源
43 制御装置
44 電磁コイル
A 鋳造方向
C1〜C7 二次冷却ゾーン
E 液相部分
F 凝固シェル前面
G 鋳片の厚み方向の中心線
H 鋳片
K 固相部分
L 長辺
P プラズマアーク
T1、T2 プラズマトーチ
R 鋳片の幅方向の中心線、
X 圧下の際に圧下抵抗となる部分

Claims (5)

  1. 軽圧下ロールを備えた軽圧下ゾーンを有する連続鋳造設備を用いて連続鋳造鋳片を製造する方法において、
    少なくとも軽圧下ゾーン内の最上流側端部において鋳片の両短辺の外側に鋳片の短辺に対向して配置された誘導加熱コイルによって、少なくとも鋳片の両短辺の厚み方向の中央部を加熱するとともに、
    前記誘導加熱コイルの出力を制御して、前記鋳片の軽圧下ゾーンにおける短辺部分の断面平均温度が、前記鋳片の固相線温度−100℃以下となるように制御する、ことを特徴とする、連続鋳造鋳片の製造方法。
  2. 前記鋳片の軽圧下ゾーンの短辺部分の断面平均温度が、
    (軽圧下ゾーンの最上流側端部の断面平均温度+軽圧下ゾーンの最下流側端部の断面平均温度)/2
    の値とすることを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造鋳片の製造方法。
  3. 前記誘導加熱コイルによる加熱の際に、鋳片のコーナー部に対してプラズマアークを照射することを特徴とする、請求項1又は2に記載の連続鋳造鋳片の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の連続鋳造鋳片の製造方法を実施するための連続鋳造設備であって、
    軽圧下ロールを備えた軽圧下ゾーンと、
    少なくとも軽圧下ゾーン内の最上流側端部において鋳片の両短辺外側に鋳片の短辺に対向して配置され、少なくとも鋳片の両短辺の厚み方向の中央部を加熱する誘導加熱コイルと、
    前記誘導加熱コイルの出力を制御する制御装置と、を有することを特徴とする、連続鋳造設備。
  5. 前記誘導加熱コイルは、鋳片の鋳造方向に沿って複数備えられていることを特徴とする、請求項4に記載の連続鋳造設備。
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