JP5261203B2 - アルミニウム合金スペーサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載のスペーサでは、積み付け圧力および温度が低い条件では、積み付け焼鈍時におけるブランクとの密着については問題ないが、積み付け圧力や温度が高い場合等、これらの条件によっては、ブランクと密着して、剥離し難くなるという問題がある。なお、これらを無理に剥離すると、スペーサおよびブランクの損傷や変形を招くこととなる。
このような構成によれば、表面にベーマイト皮膜を備えることにより、スペーサとブランクとの密着が、より抑制される。さらに、積み付け焼鈍時において、スペーサ自体に傷がつくことが防止される。
本発明に係るアルミニウム合金スペーサは、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの平坦度を矯正するために使用するスペーサであって、平坦度が2μm以下であり、かつ、粗面化により形成された突起の最大高さから2μmの深さでのベアリング比が30%以下であることを特徴とする。また、スペーサの表面に、ベーマイト皮膜を設けてもよい。
以下、各構成について説明する。
使用されるアルミニウム合金は、ディスク用のアルミニウム合金と熱膨張係数が近い合金を使用すればよい。ディスク用の合金は、主にAl−4質量%Mg合金であるため、スペーサ用のアルミニウム合金として、5000系(Al−Mg系)合金を使用すれば問題ない。この5000系合金は、加工性および強度も良好である。
現在、磁気ディスクの量産において使用されているスペーサは、年々高性能化するHDDの品質要求に対応するため、平坦度が2μm以下のものが使用されている。そのため、本発明においても、スペーサの平坦度は、2μm以下とする。
平坦度を調整した基板は、表面の粗面化を行うことで、最大突起高さから2μmの深さでのベアリング比が30%以下となるように調整する。基板の表面の適正な粗面化(粗面化の条件等については、後記する)により、スペーサの表面は、最大突起高さから2μmの深さでのベアリング比が30%以下となる。なお、スペーサ(基板)の表面とは、スペーサ(基板)の両面のことをいう(以下、同様である)。
ベーマイト皮膜は、スペーサとブランクとの密着の抑制、および、表面硬化によるスペーサの傷つき防止という両面からの効果がある。なお、傷つき防止等の観点からは、表面が硬く傷つきにくいほうがよい。ベーマイト皮膜は、1μm以下の薄い皮膜として形成されるものであるため、ベーマイト皮膜が剥離して大きな欠陥となることは少ない。ベーマイト皮膜の形成は、後記するように、沸騰した純水に浸漬する方法や、加圧蒸気により皮膜を形成する方法により行うことができる。
次に、本発明に係るアルミニウム合金スペーサの製造方法について説明する。
本発明に係るスペーサの製造方法は、前記説明したスペーサを製造する方法であり、基板作製工程と、平坦度調整工程と、粗面化工程と、を含む。また、ベーマイト皮膜を設ける場合は、粗面化工程の後に、ベーマイト処理工程を含む。
以下、各工程について説明する。
基板作製工程は、アルミニウム合金の厚板から、基板を作製する工程である。
使用するアルミニウム合金としては、前記したように、主に、5000系(Al−Mg系)合金を使用する。
平坦度調整工程は、前記基板作製工程で作製した基板の平坦度を調整する工程である。
この平坦度調整工程により、基板の平坦度を2μm以下に制御することで、最終的に、製造されるスペーサの平坦度が2μm以下となる。スペーサの平坦度は、従来公知の方法で調整すればよく、前記基板作製工程で作製した基板に、バイトによる切削や、砥石を使用した研削加工等を施すことにより行えばよい。
粗面化工程は、前記平坦度調整工程で平坦度が調整された基板の表面を粗面化する工程である。
この粗面化工程により、基板の表面のベアリング比を30%以下に制御することで、最終的に、スペーサの表面のベアリング比が30%以下となる。粗面化工程は、基板の表面をブラスト処理することにより行う。表面の粗面化方法としては、化学的および機械的な方法があるが、機械的な方法であるブラスト処理は、砥粒を表面に吹き付ける方法であり、平坦度を悪化させることなく、表面を深く粗面化することができる。そのため、湿式または乾式のブラスト処理を行うことにより、良好なスペーサ表面を得ることができる。以下、湿式ブラストおよび乾式ブラストについて説明する。
湿式ブラストは、研磨剤を混合させた水を空気圧で基板表面に噴射する方法であり、例えば、噴射するノズルを基板の両面に設置することにより、搬送されてきた基板の両面を同時、または、片方ずつ処理する。湿式ブラストでは、高圧で噴射された研磨剤を含んだ水が表面の汚れ、ダライ、基板外縁部のバリ等の異物を除去する作用を持ち、また、酸化皮膜を除去する効果もある。さらには、素材表面を研削する効果もあり、研削性の向上を図ることができる。
乾式ブラスト(ショットブラスト、エアブラスト)は、圧縮空気により、研磨剤を基板に噴射する方法であり、例えば、噴射するノズルを基板の両面に設置することにより、搬送されてきた基板の両面を同時、または、片方ずつ処理する。乾式ブラストでは、高圧で噴射された研磨剤を含んだ空気が表面の汚れ、ダライ、基板外縁部のバリ等の異物を除去する作用を持ち、また、酸化皮膜を除去する効果もある。さらには、素材表面を研削する効果もあり、研削性の向上を図ることができる。ただし、乾式ブラストでは、基板表面に砥粒が埋まることがあり、それを除去するためにも、その後、基板表面を高圧水等により洗浄するのが好ましい。
ベーマイト処理工程は、粗面化工程で表面が粗面化された基板(スペーサ)に、ベーマイト処理を施す工程である。ベーマイト処理工程により、表面にベーマイト皮膜を備えたスペーサを製造することができる。
剥離性は、積み付け焼鈍後、スペーサとブランクの剥離状態を確認することにより評価した。まず、ブランクを20枚積み重ね、その上下を、スペーサで挟み、加圧力60kg/cm2、350℃×2時間の条件で積み付け焼鈍を実施した。積み付け焼鈍時の模式図を図2に示す。剥離性の評価は、スペーサ2からブランク1を剥離する際、負荷なく剥離できた場合を、剥離性が良好(◎)、ある程度密着しているが、剥離できた場合を、剥離性がやや良好(○)、密着力が強く、剥離し難かった場合を、剥離性がやや不良(△)、剥離できなかった場合を、剥離性が不良(×)とした。
ブランクの平坦度は、積み付け焼鈍後のスペーサに接していたブランク(ディスク基板)の平坦度を測定することにより評価した。平坦度の測定は、平坦度測定機(Zygo社製 Zygo mes)を使用して行った。平坦度の評価は、平坦度が4.0μm以下のものを平坦度が良好、平坦度が4.0μmを超えるものを平坦度が不良とした。
耐傷つき性は、同一条件のスペーサを10枚使用し、生産ラインにて積み付け焼鈍を5回繰り返した後、スペーサの表面を目視で観察し、ハンドリング等の傷つき程度を確認することにより評価した。耐傷つき性の評価は、傷つき程度が軽く、さらに焼鈍用の治具として使用できるスペーサの枚数(良品数)を数え、皮膜を備えるものと備えないものとで比較した。
ベーマイト皮膜、または、アルマイト皮膜を設けたスペーサについては、前記した積み付け焼鈍を5回繰り返した後のスペーサの表面を光学顕微鏡100倍の条件で観察し、皮膜の剥離程度を観察することにより行った。
2 スペーサ
P 突起
Claims (4)
- 磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの平坦度を矯正するために使用するアルミニウム合金スペーサであって、
前記アルミニウム合金スペーサの平坦度が2μm以下であり、
前記アルミニウム合金スペーサの表面は、粗面化により形成された突起の最大高さから2μmの深さでのベアリング比が30%以下であることを特徴とするアルミニウム合金スペーサ。 - さらに、表面にベーマイト皮膜を備えることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金スペーサ。
- 請求項1に記載のアルミニウム合金スペーサの製造方法であって、
アルミニウム合金の厚板から、基板を作製する基板作製工程と、
前記基板の平坦度を調整する平坦度調整工程と、
前記平坦度が調整された基板の表面を粗面化する粗面化工程と、を含み、
前記粗面化工程は、前記基板の表面を、ブラスト処理することにより行うことを特徴とするアルミニウム合金スペーサの製造方法。 - 請求項2に記載のアルミニウム合金スペーサの製造方法であって、
アルミニウム合金の厚板から、基板を作製する基板作製工程と、
前記基板の平坦度を調整する平坦度調整工程と、
前記平坦度が調整された基板の表面を粗面化する粗面化工程と、
前記表面が粗面化された基板に、ベーマイト処理を施すベーマイト処理工程と、を含み、
前記粗面化工程は、前記基板の表面を、ブラスト処理することにより行うことを特徴とするアルミニウム合金スペーサの製造方法。
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