JP5260620B2 - Pcb端子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献9の発明では、端子成形加工時に嵌合部分のみ表面粗度を大きくし、Niめっき層、Cuめっき層及びSnめっき層をこの順に、又はCuめっき層及びSnめっき層をこの順に、あるいはSnめっき層のみを形成し、Snめっき層をリフロー処理して、Cuめっき層とSnめっき層から、あるいは銅合金母材とSnめっき層からCu−Sn合金層を形成するとともに、リフロー処理により平滑化したSnめっき層の間からCu−Sn合金層の一部を表面に露出させる(母材表面に形成された凹凸の凸の部分でCu−Sn合金層の一部が露出する)。この際、めっき厚は全面同じとする。嵌合部においては、最表面にCu−Sn合金層とSn層が形成され(Cu−Sn合金層が表面に露出)ているため、はんだ濡れ性に問題があるが、嵌合部以外は凹凸が無いためCu−Sn合金層が露出しておらず(最表面にSn層のみ)、はんだ濡れ性は良好である。
特許文献3〜5及び特許文献9,10に記載された接続部品用導電材料は、表面粗化処理した銅板材を母材として用い、その表面に例えばNiめっき層、Cuめっき層及びSnめっき層をこの順に形成し、Snめっき層をリフロー処理して、Cuめっき層とSnめっき層からCu−Sn合金被覆層を形成するとともに、リフロー処理により平滑化したSn被覆層の間からCu−Sn合金被覆層の一部を表面に露出させている。
一方、個々のSn被覆層又はCu−Sn合金被覆層の形状については、これまで特に注目されていない。しかし、端子のさらなる小型化に対応するには、前記のようにやや抽象的な指標に留まらず、個々のSn被覆層又はCu−Sn合金被覆層の具体的形状について、適正で制御可能であり、かつ形成しやすい平面視形状が必要になると考えられる。
従って、本発明は、嵌合部において、適正で制御可能な平面視形状を有するSn被覆層又はCu−Sn合金被覆層を有し、低摩擦係数及び優れた電気的信頼性(長時間加熱後の接触抵抗値が低い)を有し、小型化にも対応可能なPCB端子を提供することを目的とする。
(1)前記Sn被覆層は複数の平行線として観察される幅1〜500μmのSn被覆層群を含み、前記Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層の両側に前記Cu−Sn合金被覆層が隣接して存在し、前記Sn被覆層群に属するSn被覆層のうち隣接するSn被覆層同士の間隔が1〜2000μmであり、部品挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下であること、又は、
(2)前記Sn被覆層は複数の平行線として観察される幅が1〜500μmのSn被覆層群と、同じく複数の平行線として観察される幅が1〜500μmの別のSn被覆層群を1又は2以上含み、各Sn被覆層群は格子状に交差し、各Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層の両側にCu−Sn合金被覆層が隣接して存在し、同じSn被覆層群に属するSn被覆層のうち隣接するSn被覆層同士の間隔が1〜2000μmであり、部品挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下であること、又は、
(3)前記Sn被覆層は複数の閉じた輪郭を有する図形として観察される円相当直径が5〜1000μmのSn被覆層群を含み、前記Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層の周囲にこれを包囲するCu−Sn合金被覆層が存在し、前記Sn被覆層群に属するSn被覆層は最も近いSn被覆層同士の間隔が1〜2000μmであり、部品挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下であること。
上記(1),(2)において、各Sn被覆層群に属する個々のSn被覆層は、複数の平行線として観察されるものをいうが、前記個々のSn被覆層は必ずしも数学的な意味で平行線状である必要はない。各Sn被覆層群に属する個々のSn被覆層が、ほぼ同形状で湾曲、波打ち、あるいは屈曲している場合も本発明に含まれる。
上記(3)において、閉じた輪郭を有する図形には、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形、三角形や六角形等の他の多角形、円形、楕円形、レーストラック形など、種々の幾何学的図形が含まれる。また、複数の図形の中には、各図形の単独の繰り返しのほか、2種類以上の図形の組み合わせも含まれる。
前記Cu−Sn合金被覆層の平均厚さは0.1〜3μm、前記Sn被覆層の平均厚さは0.2〜5.0μmであり、各被覆層の平均厚さも、特許文献3〜5のものと同等の数値である。
なお、本発明において、Sn被覆層、Ni被覆層及びCu被覆層は、それぞれSn、Ni、Cu金属のほか、Sn合金、Ni合金及びCu合金を含む。
はんだ付け部では、表面被覆層として、平均厚さが0.2〜10μmのSn被覆層が形成されることが望ましい。表面被覆層の一部として、銅板材の表面と前記Sn被覆層の間にCu−Sn合金被覆層又はNi−Sn合金被覆層が形成されていてもよく、さらに銅板材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層又はNi−Sn合金被覆層の間に、Ni被覆層が形成されていてもよい。さらに、前記Ni層とCu−Sn合金被覆層の間にCu被覆層が形成され、又は/及び前記銅板材と前記Ni層の間にCu被覆層が形成されていてもよい。
はんだ付け部の前記Sn被覆層は、リフロー処理されていなくても構わないが、はんだ濡れ性向上の点でリフロー処理をされていることが好ましい。この時、前記Cu−Sn合金被覆層又はNi−Sn合金被覆層は、リフロー処理しない場合は経時により、リフロー処理する場合はリフロー処理の加熱により形成される。
必要に応じて、リフロー処理後の表面被覆層の上に、さらにリフロー処理しないSnめっき層を形成することができる。この場合、リフロー処理後のSn被覆層とこのSnめっき層を合わせて平均厚さが0.2〜10μmとされる。このリフロー処理しないSnめっき層により、表面に露出したCu−Sn合金層がSnで被覆されるため、はんだ濡れ性が更に向上する。
あるいは、中間部に嵌合部と全く同様の表面被覆層を形成することもできる。この場合、銅板材の表面粗化処理とめっきを嵌合部と一緒に行えばよい。
本発明で規定されたSn被覆層及びCu−Sn合金被覆層の平面視形状は、PCB端子の小型化にも対応可能であり、かつ銅板材の表面粗化処理を適正に行うことで、Sn被覆層及びCu−Sn合金被覆層の平面視形状の制御を容易に行うことができる。
本発明に係るPCB端子は、所定形状に打抜き加工した銅板材に後めっき及びリフロー処理して製造されるもので、相手側端子に挿入される嵌合部、前記嵌合部の他端に形成され基板にはんだ付けされるはんだ付け部、及び前記嵌合部とはんだ付け部との間に形成された中間部とよりなる。
PCB端子の嵌合部に、表面被覆層としてCu−Sn合金被覆層とSn被覆層がこの順に形成され、前記Sn被覆層がリフロー処理により平滑化され、前記Cu−Sn合金被覆層の一部が前記Sn被覆層の間から最表面に露出している。相手側端子との接触(摺動)側最表面に硬いCu−Sn合金被覆層が露出することにより、摩擦係数が低下し、端子挿入力が低減する。最表面に露出したCu−Sn合金被覆層は、JISB0601に基づく粗さ曲線の山として測定され、この山が最大高さ粗さRzの大きさに反映される。
(1)複数の平行線として観察されるSn被覆層群を含み、該Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層(このSn被覆層を、特に平行Sn被覆層という場合がある)の両側にCu−Sn合金被覆層が隣接して存在する。
(2)複数の平行線として観察されるSn被覆層群と、同じく複数の平行線として観察される別のSn被覆層群を1又は2以上含み、各Sn被覆層群は格子状に交差し、各Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層(平行Sn被覆層)の両側にCu−Sn合金被覆層が隣接して存在する。
(3)複数の閉じた輪郭を有する図形として観察されるSn被覆層群を含み、前記Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層(このSn被覆層を、特に図形Sn被覆層という場合がある)の周囲にこれを包囲するCu−Sn合金被覆層が存在する。
まず、図1(a),(b)は、上記(1)の形態の典型例を示す。図1(a)に示す例では、所定幅を有する複数の平行Sn被覆層1a〜1d(まとめて平行Sn被覆層1という場合がある)が略等間隔で平行線状に形成され、各平行Sn被覆層1a〜1dの両側にCu−Sn合金被覆層2が隣接して存在する。Cu−Sn合金被覆層2も所定幅を有し、同じく略等間隔で平行線状に形成されている。平行線状に形成された複数の平行Sn被覆層1a〜1dにより、本発明でいうSn被覆層群Xが構成される。
なお、図1(b)において島状に存在するSn被覆層3が連続して、Cu−Sn合金被覆層2が分断される場合、あるいはSn被覆層3の中にさらにCu−Sn合金被覆層が小さく島状に存在する場合等、種々の他の形態が生じ得る。
なお、図2(b)において島状に存在するSn被覆層3の中にさらにCu−Sn合金被覆層が小さく島状に存在する場合等、種々の他の形態が生じ得る。
図3において、銅板材(母材)5には、比較的深い凹部6が略等間隔で形成され、凹部6の両側に凸部7が形成され、凹部6を挟まない隣接する凸部7,7間は比較的平らである。このような表面構造はプラトー構造といわれている。凹部6は、銅板材5の表面に複数の平行線として観察される。
図3(b)は図1(b)(又は図2(b))に対応するもので、銅板材5の表面全体にCu−Sn合金被覆層2が形成され、前記凹部6においてCu−Sn合金被覆層2の上に平行Sn被覆層1が形成されている。プラトー部でもCu−Sn合金被覆層2の上にSn被覆層3が形成されている。この凹部6に形成された平行Sn被覆層1が、図1(b)又は図2(b)において平行線状に観察された平行Sn被覆層1a〜1d(又は平行Sn被覆層4a〜4d)に相当し、プラトー部に形成されたSn被覆層3が、図1(b)又は図2(b)において島状に観察されたSn被覆層3に相当する。
銅板材5をPCB端子の形状に打抜き後、又は打抜き前あるいは打抜きと同時に、少なくとも嵌合部相当部位の圧延面(一方又は両方の面)に対しプレス加工による表面粗化処理が施される。この表面粗化処理は、図4(a)に示すように、押圧面にごく細かい凹凸がほぼ一定ピッチで形成された金型8をプレス機にセットし、該金型8で銅板材5の表面をプレスすることで行われる。このプレス加工により、銅板材5の表面に金型8の押圧面の凸部(刃先)が押し込まれ、銅板材5の表面に凹部6が平行線状に転写され、同時に、凹部6から押し出された材料が凹部6の両側に盛り上がり、必然的に凸部7が形成される。凹部6を間に挟まない隣接する凸部7,7間の銅板材表面は、仕上げ圧延のままの比較的平ら(プラトー)な状態を保っている。
なお、本発明に関しては、リフロー処理後の表面被覆層を構成する各層について「被覆層」と表現し、リフロー処理前の表面めっき層を構成する各層について「めっき層」と表現している。
リフロー処理後に残留するSn量が比較的多ければ、銅板材の表面粗化処理した部位では、表面のプラトー部に前記Sn被覆層3が形成され(図1(b),図2(b),図3(b)参照)、あるいは前記Sn被覆層3の被覆エリアが増える。図3(b)に示すように、Sn被覆層3は平行Sn被覆層1に比べて薄肉である。
また、隣接する平行Sn被覆層同士の間隔を1μm以上とするのは、銅板材の表面粗化処理の実施に困難が伴うためである。一方、隣接する平行Sn被覆層同士の間隔が大きくなりすぎると、当初のSnめっき層の厚さによって次のような現象が発生する。Snめっき層の平均厚さが厚い場合、Sn被覆層同士の間の部分において、露出するCu−Sn合金層が少なく、Sn層が多くなり、相手側端子とCu−Sn合金被覆層との接触面積が小さくなりすぎ挿入力の上昇(低挿入力効果の低下)を招く。Snめっき層の平均厚さが薄い場合、Cu−Sn合金層の占める割合が大きくなり(すべてCu−Sn合金層になることもある)、摩擦係数は低減できるものの、接触抵抗が大きくなり、電気的信頼性が劣化する。従って、隣接する平行Sn被覆層同士の間隔は2000μm以下とする。近年のPCB端子の小型化を考慮すると、平行Sn被覆層の幅は1000μm以下が望ましく、250μm以下がより望ましい。平行Sn被覆層の幅、及び隣接する平行Sn被覆層同士の間隔はほぼ一定であることが望ましいが、それは必須ではない。ただし、平行Sn被覆層1,4は、それが形成された面(表面粗化処理された面)全体にほぼ均一に分布していることが望ましい。なお、流れる電流が大きい端子は、その断面積が大きくなる。その場合、相手側端子(雌端子)の接点部も大きくなり、嵌合部に接触する面積が大きくなることから、隣接する平行Sn被覆層同士の間隔は大きくても差支えなく、例えば、500μm以上、2000μm以下であってもよい。平行Sn被覆層の幅や平行Sn被覆層同士の間隔は相手側端子の接点部の形状、及び寸法に合わせて適正な範囲に決めればよい。
本発明では、PCB端子の挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下(0μmを含む)と規定されている。この最大高さ粗さRzが大きいと、最表面に露出するCu−Sn合金被覆層の表面積が広くなり、端子表面の耐食性が低下して酸化物量などが増え、接触抵抗が増加しやすく、電気的信頼性を維持することが困難となる。また、銅板材の表面粗化処理において銅板材5に凹部6を幅広く深く形成すると、最大高さ粗さRzが大きくなるが、これは銅板材5の変形を伴いやすい。従って、最大高さ粗さRzは10μm以下とし、望ましくは0超(多少とも突出している)〜5μm以下である。
3群以上のSn被覆層群を格子状に交差させることも本発明に含まれる。この場合も、各Sn被覆層群を構成する平行Sn被覆層は、幅が1〜500μm、同じSn被覆層群に含まれる隣接する平行Sn被覆層同士の間隔が1〜2000μmに設定される。同じく、各Sn被覆層群の交差角度は望ましくは10〜90°とする。
図5(a)に示す例では、それぞれ略正方形の輪郭を有する図形として観察される複数の図形Sn被覆層11が碁盤目状に規則的に形成され、各図形Sn被覆層11の周囲を包囲するようにCu−Sn合金被覆層12が存在する。
図5(b)に示す例では、同じく複数の図形Sn被覆層11が碁盤目状に規則的に形成され、各図形Sn被覆層11の周囲を包囲するCu−Sn合金被覆層12がリング状に存在し、さらにその周囲をSn被覆層13が埋めている。
なお、本発明では、図形Sn被覆層11の集まりをSn被覆層群と称している。
図6において、銅板材(母材)15には、比較的深い凹部16が略等間隔で形成され、凹部16の周囲に凸部17が形成され、凸部17の周囲は比較的平らである。このような表面構造はプラトー構造といわれている。凹部16は、銅板材15の表面に複数の略正方形の輪郭を有する図形として観察される。
図6(b)は図5(b)に対応するもので、銅板材15の表面全体にCu−Sn合金被覆層12が形成され、前記凹部16においてCu−Sn合金被覆層12の上にSn被覆層11が形成されている。プラトー部でもCu−Sn合金被覆層12の上にSn被覆層13が形成されていて、Cu−Sn合金被覆層12は凸部17においてのみ露出している。凹部16に形成されたSn被覆層11が、図5(b)において略正方形の輪郭を有する図形として観察された図形Sn被覆層11に相当し、プラトー部に形成されたSn被覆層13が、図5(b)においてリング状のCu−Sn合金被覆層12の周囲を埋めるSn被覆層13に相当する。
銅板材をPCB端子の形状に打抜き後、又は打抜き前あるいは打抜きと同時に、少なくとも嵌合部相当部位の圧延面(一方又は両方の面)に対しプレス加工による表面粗化処理が施される。この表面粗化処理は、図7(a)に示すように、押圧面にごく細かい凹凸がほぼ一定ピッチで形成された金型18をプレス機にセットし、該金型18で銅板材15の表面をプレスすることで行われる。このプレス加工により、銅板材15の表面に金型18の押圧面に形成された角錐台状(角柱状でもよい)の凸部が押し込まれ、銅板材15の表面に凹部16が転写され、同時に、凹部16から押し出された材料が凹部16の周囲に盛り上がり、必然的に略正方形のリング状の凸部17が形成される。凸部17の周囲の銅板材表面は、仕上げ圧延のままの比較的平ら(プラトー)な状態を保っている。
リフロー処理後に残留するSn量が比較的多ければ、表面粗化処理した部位では、表面のプラトー部に前記Sn被覆層13が形成される(図5(b),図6(b)参照)。プラトー部の表面粗さが大きい場合、Sn被覆層13の間からCu−Sn合金被覆層12が露出することもある。図6(b)に示すように、Sn被覆層13は図形Sn被覆層11に比べて薄肉である。
また、図形Sn被覆層同士の最短間隔を1μm以上とするのは、間隔がそれより小さいと銅板材の表面粗化処理の実施に困難が伴うためである。一方、図形Sn被覆層同士の最短間隔が大きくなりすぎると次のような現象が発生する。Snめっき層の平均厚さが厚い場合、Sn被覆層同士の間の部分において、露出するCu−Sn合金層が少なく、Sn層が多くなり、相手側端子とCu−Sn合金被覆層との接触面積が小さくなりすぎ挿入力の上昇(低挿入力効果の低下)を招く。Snめっき層の平均厚さが薄い場合、Cu−Sn合金層の占める割合が大きくなり(すべてCu−Sn合金層になることもある)、摩擦係数は低減できるものの、接触抵抗が大きくなり、電気的信頼性が劣化する。従って、図形Sn被覆層同士の間隔は2000μm以下とする。近年のPCB端子の小型化を考慮すると、図形Sn被覆層同士の最短間隔は1000μm以下が望ましく、250μm以下がより望ましい。
図形Sn被覆層の円相当直径、及び図形Sn被覆層同士の最短間隔はほぼ一定であることが望ましいが、それは必須ではない。
本発明では、図5,6に示す形態の表面被覆層についても、PCB端子の挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下(0μmを含む)と規定されている。その理由は図1〜3に示す形態の表面被覆層と同じである。最大高さ粗さRzは望ましくは0超(多少とも突出している)〜5μm以下である。
これらの被覆層はいずれもめっきで形成されるものであり、Ni被覆層と前記Cu−Sn合金被覆層の間のCu被覆層は、先に述べたように、リフロー処理後にCu−Sn合金被覆層の下に残留したCuめっき層である。Ni被覆層はバリア層として、PCB端子の母材(銅板材)からCuや母材に含まれる合金元素が拡散してくるのを防止し、銅板材の表面とNi被覆層の間のCu被覆層は、Ni被覆層の密着性を向上させる作用を有する。
Ni被覆層は金属Ni又はNi合金からなる。Ni合金の場合、合金元素としてCu、P、Coなどが挙げられ、Cuは40質量%以下、P、Coは15質量%以下が望ましい。また、Cu被覆層は金属Cu又はCu合金からなる。Cu合金の場合、合金元素としてSn、Znなどが挙げられ、Snは50質量%未満、他の元素は5質量%以下が望ましい。
表面粗化処理方法として、特許文献3〜5には、イオンエッチング等の物理的方法、エッチングや電解研磨等の化学的方法、圧延(研磨やショットブラスト等により粗面化したワークロールを使用)、研磨、ショットブラスト等の機械的方法が開示されている。しかし、このような方法で、上記のような複数の平行線として観察されるSn被覆層群と、その両側に隣接するCu−Sn合金被覆層、又は、閉じた輪郭を有する図形として観察される図形Sn被覆層と、個々の図形Sn被覆層の周囲を包囲するCu−Sn合金被覆層を形成することはできない。
一方、特許文献9,10には、端子形状加工時に銅板材表面を表面粗化処理する技術が記載されている。すなわち、銅板材に打抜き加工を施し端子素材が帯状の連結部を介して長さ方向に連鎖状に連なった銅板材を形成するとともに、前記打抜き加工と同時にあるいは打抜き加工の前又は後に、前記銅板材にプレス加工を施し、端子素材板面(銅板材表面)の表面粗さを増大させる、というものである。しかし、特許文献9,10にはプレス加工の具体的手段についての記載はない。
本発明では、表面粗化処理として、先に図4,7を参照して説明したように、押圧面にごく細かい凹凸が形成された金型をプレス機にセットし、該金型で銅板材(PCB端子の嵌合部相当箇所)の表面をプレスし、凸部を銅板材表面に打ち込む、という方法が適用できる。この方法であれば、本発明で規定するSn被覆層又はCu−Sn合金被覆層の露出形態を実現可能であり、平行Sn被覆層の幅、平行Sn被覆層同士の間隔、図形Sn被覆層の円相当直径、図形Sn被覆層同士の最短間隔についても、適宜の金型を選択し又は組み合わせることで自在に制御可能である。金型1の押圧面に細かい凹凸を付ける方法は、放電加工、研削加工、レーザー加工、エッチング加工などがあり、必要とする寸法精度、加工形状により任意に選択できる。凸部の形状、形成ピッチは一定である必要はない。
なお、前述のように平行Sn被覆層1,4や図形Sn被覆層11をそれが形成された面(表面粗化処理された面)全体でほぼ均一に分布させるには、前記凹部6,7及び凹部16を表面粗化処理する面全体にほぼ均一に形成する必要がある。
上記後めっきは、PCB端子の全長にわたり行ってもよいし(はんだ付け部と中間部にも嵌合部と同じ後めっきを行う場合)、PCB端子の嵌合部に相当する部分にのみ行うこともできる(はんだ付け部と中間部に嵌合部とは別の後めっきを行う場合)。
なお、本発明において、Cuめっき層、Snめっき層及びNiめっき層は、それぞれCu、Sn、Ni金属のほか、Cu合金、Sn合金及びNi合金を含む。Cuめっき層、Snめっき層及びNiめっき層が、Cu合金、Sn合金及びNi合金の場合、各合金の組成は、先に説明したCu被覆層、Sn被覆層及びNi被覆層の各合金と同じでよい。
PCB端子のはんだ付け部は、PCB基板のスルーホールに挿入され、はんだ付けされ、これによりPCB端子がPCB基板に固定される。電気的な信頼性を確保するため、はんだ付け時、はんだ付け部のはんだと接触する部分に均一にはんだが広がることが求められる。そのためには、はんだ付け部に所定厚さ以上のSn被覆層が形成されていることが必要である。
はんだ付け部には嵌合部とは別にめっきを施し、あるいは嵌合部と一緒にめっきを施すことができるが、いずれにしても、Sn被覆層は平均厚さが0.2〜10μmとされる。Sn被覆層の平均厚さが0.2μm未満であると、はんだ濡れ性が低下する。一方、平均厚さが10μmを超えるとコスト面で不利であり、生産性も悪くなる。従って、Sn被覆層の平均厚さは0.2〜10μmとし、望ましくは0.5〜5μmとする。このSn被覆層ははんだ付け部の最表面の全面を被うことが望ましい。
このSn被覆層は、Sn金属又はSn合金からなる。Sn合金の組成は先に説明したものと同じでよい。
Ni被覆層及びCu被覆層は、それぞれNi金属又はNi合金、及びCu金属又はCu合金からなる。このSn合金、Ni合金及びCu合金の組成は先に説明したものと同じでよい。
Cu−Sn合金被覆層及びNi−Sn合金被覆層の平均厚さは3μm以下(0μmを含む)、Ni被覆層の平均厚さは10μm以下(0μmを含む)とされる。Cu−Sn合金被覆層及びNi−Sn合金被覆層の平均厚さが3μmを超え、Ni被覆層の平均厚さが10μmを超えるとコスト面で不利であり、生産性も悪くなる。
銅板材の表面とNi被覆層の間のCu被覆層は、Ni被覆層の密着性を向上させる作用を有する。このCu被覆層の平均厚さは5μm以下(0μmを含む)とされる。
Cuめっき層、Niめっき層及びSnめっき層は、それぞれCu金属又はCu合金、Ni金属又はNi合金、及びSn金属又はSn合金からなる。Cuめっき層がCu合金からなるかSnめっき層がSn合金からなる場合、Cu−Sn合金被覆層はCuとSn以外の合金元素を含み、Niめっき層がNi合金からなるかSnめっき層がSn合金からなる場合、Ni−Sn合金被覆層はNiとSn以外の合金元素を含む。CuめっきのCu合金、NiめっきのNi合金及びSnめっきのSn合金の組成は先に説明したものと同じでよい。
コスト面及び生産性の観点から、このSnめっき層の平均厚さは0.3μm以下とされる。リフロー処理後のSn被覆層と合わせた合計の平均厚さは0.2〜10μmとされる。このSnめっき層はSn金属又はSn合金からなる。Sn合金の組成は先に説明したものと同じでよい。また、このSnめっきは、光沢Snめっき、半光沢Snめっき、無光沢Snめっきのいずれであってもよい。
PCB端子の中間部には、はんだ濡れ性やはんだ拡がり性、電気的信頼性(長時間加熱後でも低い接触抵抗値)は求められないので、表面被覆層を形成しなくてもよいが、耐食性の観点から、必要に応じて、Sn被覆層、Ni被覆層、Cu被覆層、又はCu−Sn合金被覆層のいずれか1種又は2種以上で被覆することもできる。嵌合部又ははんだ付け部と同じ表面被覆層構成でもよい。また嵌合部と同じ表面粗化処理を行ってもよい。
PCB端子は銅合金板条を順送りプレスで打抜き加工を施して製造する。図8は打抜き加工後の銅合金板条の平面図であり、21はPCB端子部、22,23は繋ぎ部である。めっき及びリフロー処理後(リフロー処理後にさらにSnめっきを行う場合は当該Snめっき後)、PCB端子部21は繋ぎ部22において個々に切り離される。PCB端子部の打抜きは、片側抜き又は両側抜きといわれる方法で行われる。片側抜きとは、1つのPCB端子21の両端面を片側ずつ順にプレス打抜きする方法であり、両側抜きとは、両端面を一度にプレス打抜きする方法である。
図9(b)に両側抜きされたPCB端子部21の断面図を示す。このPCB端子21は、A−AとB−Bのラインに沿って上下方向に同時に打抜き(せん断)されている。断面は、打抜きに際して材料の回転がないため下面21bが比較的平らであるが、それ以外の点は図9(a)に示すものとほぼ同じである。
図9(a)、(b)に示す上面21aの湾曲、上面側コーナー部のダレ、下面21bのコーナー部のバリの程度は、端子を打抜く上金型と下金型のクリアランス量によって変わる。
本実施例においては、Cu中に1.8質量%のNi、0.40質量%のSi、1.1質量%のZn、0.10質量%のSnを含有し、ビッカース硬さ180、厚さ0.25mmtの銅板材を用いた。
上記銅板材から100mm×40mm(圧延長手方向×直角方向)の試験片を切り出し、PCB端子を成形する順送金型内の所定位置(PCB端子形状に打抜き加工した後の位置又は面打ち加工した後の位置)に、押圧面に所定凹凸を付けたパーツを取り付け、図8に示すように、1mmw×22mmL又は3mmw×22mmLのPCB端子形状を5mmピッチで打抜き加工(片側抜き又は両側抜き)し、続いてPCB端子部21に図10を用いて説明した面打ち加工を行い(一部は行わず)、さらにPCB端子部21の嵌合部相当箇所とはんだ付け部相当箇所に表面粗化処理を行った(一部は行わず)。表面粗化処理は一方の圧延面(上面)にのみ行い、それぞれ多数の微少凹部を互いに平行に(線状の凹部の場合)、又は碁盤目状にあるいは千鳥状に(図形状の凹部の場合)、いずれも前記嵌合部相当箇所とはんだ付け部相当箇所の表面粗化処理する面全体にほぼ均一に分布するように規則的に形成した。表面粗化処理において、凹凸形状の異なるパーツを用いたり、複数回打ちすること等により、銅合金板の表面に種々の形態の微少凹部を形成することができる。なお、図8において、PCB端子部21の両矢印の範囲A(10mmL)がPCB端子の嵌合部相当箇所、範囲B(10mmL)がPCB端子のはんだ付け部相当箇所である。
続いて、銅板材のPCB端子部の嵌合部相当箇所の全周に、Niめっき、Cuめっき及びSnめっきをこの順に施した後(一部にNiめっきを省略したもの、及びNiめっきの前にCuめっきを施したものが含まれる)、280℃×10secのリフロー処理を行い、個々のPCB端子に切り離すことによりNo.1〜37のPCB端子試験片を得た。
No.7の表面SEM写真(組成像)を図11(a)に示す。図中の白色部がSn被覆層、黒色部がCu−Sn合金被覆層である。図11(a)のSn被覆層には、それぞれ複数の平行線として観察される2つのSn被覆層群が含まれ、一方のSn被覆層群と他方のSn被覆層群は90°の角度で交差し、全体として格子状をなしている。なお、図11(a)の例では、表面粗化処理後、めっき前のPCB端子部表面には、複数の平行線として観察される細かい溝(谷)が90°の角度で交差して形成され、これらの溝が全体として格子状をなしている。
なお、No.1〜16,18,20〜37は打抜き加工が片側抜きのもの、No.17は両側抜きのもの、No.19は両側抜き後、面打ち加工でバリ潰しのみを行ったものである。
各試験片の表面形態を示す各パラメータ及び各被覆層の平均厚さの測定方法(いずれも表面粗化処理した圧延面において測定)は、次のとおりである。
接触式粗さ計(株式会社東京精密製;サーフコム1400)を用いて、JIS B0601:2001に基づいて測定した。表面粗さ測定条件は、カットオフ値を0.8mm、基準長さを0.8mm、評価長さを4.0mm、測定速度を0.3mm/s、接触針先端半径を5μmRとして、測定は表面粗化処理を施した面においてPCB端子挿入方向に、異なる3箇所で行い、得られた各粗さ曲線から最大高さ粗さRzを求め、その最大値を試験片の最大高さ粗さRzとした。なお、最大高さ粗さRzはどの測定箇所でもほぼ同じ値が得られた。図11(b)にNo.1で測定した粗さ曲線の一例を示す。
試験片の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、その組成像から表1の平行Sn被覆層X,Yの幅、直線X,Yの間隔、表3の図形Sn被覆層の円相当直径,最短間隔(隣接する図形Sn被覆層同士の最短間隔)を測定した。表3の挿入方向交差角度は、図形Sn被覆層の図形(四角形)の一辺と挿入方向の交差角度である。直線X,Yの交差角度、直線Xと挿入方向交差角度、図形の一辺と挿入方向交差角度は表面粗化処理の段階で設定した。なお、平行Sn被覆層X,Yの幅、直線X,Yの間隔、表3の図形Sn被覆層の円相当直径,最短間隔の寸法に合わせ、走査電子顕微鏡での観察倍率を変化させた。各試料毎に3視野のSEM画像を写真撮影し、撮影した写真毎に平行Sn被覆層X,Yの幅、直線X,Yの間隔、図形Sn被覆層の最短間隔を3箇所測定し、3枚の写真の測定値(データ数9)の平均値を算出した。また、表3の図形Sn被覆層の円相当直径については、画像解析装置を用いて各写真毎に円相当直径をもとめ、3枚の写真の平均値を算出した。
まず、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、Sn被覆層の膜厚とCu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の和を測定した。その後、p-ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。再度、蛍光X線膜厚計を用いて、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を測定した。測定条件は、いずれも検量線にSn/母材の単層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。
Sn被覆層の膜厚とCu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の和の測定において、測定位置として、試験片の幅方向(長手方向に直交する方向)中央位置及びその両側の位置(計3箇所)を選定した。それぞれの位置における測定点は、長手方向端部から1mm入った位置及び該位置から長手方向に0.5mmピッチで計10点とし、各試験片毎に3箇所×10点の計30点の測定値の平均値を求めた。図12は、幅1mmの試験片21について前記測定位置及び測定点を説明する模式図である。前記中央位置での測定は、試験片21の幅方向中心線L1に沿って行った。中央位置の両側の位置での測定は、直線L1に平行な直線L2,L3に沿って行なったが、その測定位置として、図12に示すように、コリメータで照射されるX線束の端が試験片の幅方向端部(コーナー部)の丸み又は斜面(R面取り又はC面取りした試験片)若しくはダレ(面取りしなかった試験片)にギリギリ掛からない位置を選定した。なお、図12において、○印は各測定位置におけるX線束を示し、Cは試験片の幅方向端部(コーナー部)に形成された丸み又は斜面若しくはダレを示す。一方、幅3mmの試験片については、測定位置として、試験片の幅方向中央位置及び幅方向端部から0.5mm入った位置(計3箇所)を選定した。
Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の測定も同様に行った。Sn被覆層の膜厚とCu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の和から、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を差し引き、得られた値をSn被覆層の平均の厚さとした。
まず、供試材をp-ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。その後、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を測定した。測定条件は、検量線にSn/母材の単層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。測定位置、測定点及び測定点数は上記[Sn被覆層の平均の厚さ]の項に記載したとおりである。得られた値をCu−Sn合金被覆層の平均の厚さとした。
ミクロトーム法にて加工した母材の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて10,000倍の倍率で観察し、画像解析処理により平均の厚さを算出した。
[Ni被覆層の平均の厚さ]
蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて平均の厚さを算出した(1試料について3箇所測定し、平均値を算出)。測定条件は、検量線にSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。
供試材の表面を、EDX(エネルギー分散型X線分光分析器)を搭載したSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて200倍の倍率で観察し、得られた組成像の濃淡(汚れや傷等のコントラストは除く)から画像解析によりCu−Sn合金被覆層の露出面積率を測定した。なお、平行Sn被覆層の幅や間隔又は図形Sn被覆層の円相当直径が大きく、平行Sn被覆層又は図形Sn被覆層の繰り返し単位が1視野に入らない場合、視野をずらしながら1視野分以上の面積(繰り返し単位以上の面積)を観察及び測定した。
[摩擦係数評価試験]
PCB端子と嵌合するメス端子における電気接点のインデント部の形状を模擬し、図13に示すような装置を用いて評価した。まず、PCB端子試験片21(No.1〜37)を水平な台26に固定し、その上に、表面粗化処理を行っていない銅板材(PCB端子試験片と同材質で板厚0.25mm)にめっき(Cu:0.15μm、Sn:1.0μm)及びリフロー処理した材料から切り出した半球加工材(内径をφ1.5mmとした)のメス試験片27を置いて被覆層同士を接触させた。続いて、メス試験片27に3.0Nの荷重(錘28)をかけて試験片21を押さえ、横型荷重測定器(アイコーエンジニアリング株式会社;Model−2152)を用いて、試験片21を端子挿入方向に水平方向に引っ張り(摺動速度を80mm/minとした)、摺動距離5mmまでの最大摩擦力F(単位:N)を測定した。摩擦係数を下記式(1)により求めた。摩擦係数が0.4以下のものを低摩擦係数と評価した。なお、29はロードセル、矢印は摺動方向である。
摩擦係数=F/3.0 …(1)
各試験材に対し、大気中にて160℃×500hrの熱処理を行った後、接触抵抗を四端子法により、開放電圧20mV、電流10mA、無摺動の条件にて測定した。測定箇所を変えて測定を5回行い、その平均値を測定値とした。160℃×500hr加熱後の接触抵抗が10mΩ未満のものを耐熱性がよい(○)、10mΩ以上のものを耐熱性が劣る(×)と評価した。
一方、No.23,24はSn被覆層の平均厚さが小さすぎ(Cu−Sn合金被覆層の表面露出面積率も大きすぎる)、No.25はCu−Sn合金被覆層の平均厚さが小さすぎ,No.26は最大高さ粗さRzが大きすぎるため、加熱後接触抵抗が高い。また、No.27,28は平行Sn被覆層の幅が大きすぎるため(Cu−Sn合金被覆層の表面露出面積率も小さすぎる)、No.29,30はめっきSn層が厚い試料であるが、平行Sn被覆層同士の間隔が大きすぎるため、Cu−Sn合金層の露出面積が小さくなり、摩擦係数が高くなった。No.31は表面粗面化処理を行っていないため、摩擦係数が高い。
一方、銅板材のPCB端子部のはんだ付け部相当箇所の全周に、Niめっき、Cuめっき及びSnめっきをこの順に施した後(一部にNiめっきを省略したもの、及びNiめっきの前にCuめっきを施したものが含まれる)、280℃×10secのリフロー処理を行い、一部についてさらにSnめっきを行い、次いで個々のPCB端子に切り離すことによりNo.38〜65のPCB端子試験片を得た。なお、No.56〜60,64,65のはんだ付け部には、プレス打抜き加工後、No.1と同じ表面粗化処理を施した。
各試験片における各被覆層の平均厚さの測定方法は、前記のとおりである。また、リフロー後のSnめっき層の平均の厚さの測定方法は下記のとおりである。
[リフロー後のSnめっき層の平均の厚さ]
リフロー後に形成したSnめっき層については、ミクロトームにて端子長手方向に直交する母材の断面を切断し(1試料あたり3箇所)、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて10,000倍の倍率で切断した各試料断面の上面(打抜き時に上面であった面)の中央部付近のSnめっきの厚さを測定し、3切断面の平均の厚さを算出した。
[はんだ濡れ試験]
No.38〜65の試験片に対して、非活性フラックスを1秒間浸漬塗布した後、メニスコグラフ法にてはんだ濡れ時間を測定した。はんだは255℃のSn−3.0Ag−0.5Cuはんだ又は245℃のSn−40Pbはんだとし、浸漬速度を25mm/sec、浸漬深さを5mm、浸漬時間を5secの試験条件で実施した。はんだ濡れ時間が2秒以下のものをはんだ濡れ性が優れると評価した。
一方、No.62〜65はSn被覆層の平均厚さが0.2μmに満たず、リフロー後Snめっき層も形成されていないため、はんだ濡れ時間が長く、はんだ濡れ性に劣る。
2,12 Cu−Sn合金被覆層
3,13 Sn被覆層
4,4a〜4d 平行Sn被覆層
5,15 銅板材
6,16 凹部
7,17 凸部
8、18 金型
11 図形Sn被覆層
21 PCB端子部
22,23 繋ぎ部
Claims (28)
- 所定形状に打抜き加工した銅板材に後めっき及びリフロー処理して製造され、相手側端子に挿入される嵌合部、前記嵌合部の他端に形成され基板にはんだ付けされるはんだ付け部、及び前記嵌合部とはんだ付け部との間に形成された中間部とよりなるPCB端子であって、前記嵌合部に、表面被覆層として前記Cu−Sn合金被覆層とSn被覆層がこの順に形成され、前記Sn被覆層がリフロー処理により平滑化され、前記Cu−Sn合金被覆層の一部が最表面に露出し、前記Cu−Sn合金被覆層の平均厚さが0.1〜3μm、前記Sn被覆層の平均厚さが0.2〜5.0μmであり、前記Sn被覆層は複数の平行線として観察される幅1〜500μmのSn被覆層群を含み、前記Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層の両側に前記Cu−Sn合金被覆層が隣接して存在し、前記Sn被覆層群に属するSn被覆層のうち隣接するSn被覆層同士の間隔が1〜2000μmであり、部品挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下であることを特徴とするPCB端子。
- 所定形状に打抜き加工した銅板材に後めっき及びリフロー処理して製造され、相手側端子に挿入される嵌合部、前記嵌合部の他端に形成され基板にはんだ付けされるはんだ付け部、及び前記嵌合部とはんだ付け部との間に形成された中間部とよりなるPCB端子であって、前記嵌合部に、表面被覆層としてCu−Sn合金被覆層とSn被覆層がこの順に形成され、前記Sn被覆層がリフロー処理により平滑化され、前記Cu−Sn合金被覆層の一部が最表面に露出し、前記Cu−Sn合金被覆層の平均厚さが0.1〜3μm、前記Sn被覆層の平均厚さが0.2〜5.0μmであり、前記Sn被覆層は複数の平行線として観察される幅が1〜500μmのSn被覆層群と、同じく複数の平行線として観察される幅が1〜500μmの別のSn被覆層群を1又は2以上含み、各Sn被覆層群は格子状に交差し、各Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層の両側にCu−Sn合金被覆層が隣接して存在し、同じSn被覆層群に属するSn被覆層のうち隣接するSn被覆層同士の間隔が1〜2000μmであり、部品挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下であることを特徴とするPCB端子。
- 前記銅板材は、前記嵌合部に相当する部分に、後めっきの前に表面粗化処理が行われており、表面に複数の平行線として観察される凹部がプレス加工で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載されたPCB端子。
- 前記銅板材は、前記嵌合部の長手方向に垂直な断面において、上面側又は/及び下面側のコーナー部がプレスによるR面取り又はC面取り加工がなされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記Cu−Sn合金層の表面露出面積率が3〜75%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記銅板材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間に平均厚さが10μm以下のNi被覆層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記Ni被覆層と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらに平均厚さが5μm以下のCu被覆層を有することを特徴とする請求項6に記載されたPCB端子。
- 前記銅板材の表面と前記Ni被覆層の間にさらに平均厚さが5μm以下のCu被覆層を有することを特徴とする請求項6又は7に記載されたPCB端子。
- 所定形状に打抜き加工した銅板材に後めっき及びリフロー処理して製造され、相手側端子に挿入される嵌合部、前記嵌合部の他端に形成され基板にはんだ付けされるはんだ付け部、及び前記嵌合部とはんだ付け部との間に形成された中間部とよりなるPCB端子であって、前記嵌合部に、表面被覆層としてCu−Sn合金被覆層とSn被覆層がこの順に形成され、前記Sn被覆層がリフロー処理により平滑化され、前記Cu−Sn合金被覆層の一部が最表面に露出し、前記Cu−Sn合金被覆層の平均厚さが0.1〜3μm、前記Sn被覆層の平均厚さが0.2〜5.0μmであり、前記Sn被覆層は複数の閉じた輪郭を有する図形として観察される円相当直径が5〜1000μmのSn被覆層群を含み、前記Sn被覆層群を構成する個々のSn被覆層の周囲にこれを包囲するCu−Sn合金被覆層が存在し、前記Sn被覆層群に属するSn被覆層は最も近いSn被覆層同士の間隔が1〜2000μmであり、部品挿入方向の最大高さ粗さRzが10μm以下であることを特徴とするPCB端子。
- 前記銅板材は、前記嵌合部に相当する部分に、後めっきの前に表面粗化処理が行われており、表面に複数の閉じた輪郭を有する図形として観察される凹部がプレス加工で形成されていることを特徴とする請求項9に記載されたPCB端子。
- 前記銅板材は、前記嵌合部の長手方向に垂直な断面において、上面側又は/及び下面側のコーナー部がプレスによるR面取り又はC面取り加工がなされていることを特徴とする請求項9又は10に記載されたPCB端子。
- 前記Cu−Sn合金層の表面露出面積率が3〜75%であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記銅板材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間に平均厚さが10μm以下のNi被覆層を有することを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記Ni被覆層と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらに平均厚さが5μm以下のCu被覆層を有することを特徴とする請求項13に記載されたPCB端子。
- 前記銅板材の表面と前記Ni被覆層の間にさらに平均厚さが5μm以下のCu被覆層を有することを特徴とする請求項13又は14に記載されたPCB端子。
- 前記はんだ付け部に平均厚さが0.2〜10μmのリフロー処理で平滑化されたSn被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記はんだ付け部のSn被覆層と銅板材の間に平均厚さが3μm以下のCu−Sn合金被覆層又はNi−Sn合金被覆層が形成されていることを特徴とする請求項16に記載されたPCB端子。
- 前記Cu−Sn合金被覆層又はNi−Sn合金被覆層と前記銅板材の間に平均厚さが10μm以下のNi被覆層が形成されていることを特徴とする請求項17に記載されたPCB端子。
- 前記Ni被覆層と前記Cu−Sn合金被覆層との間に平均厚さが5μm以下のCu被覆層を有することを特徴とする請求項18に記載されたPCB端子。
- 前記銅板材と前記Ni被覆層との間に平均厚さが5μm以下のCu被覆層を有することを特徴とする請求項18又は19に記載されたPCB端子。
- 前記はんだ付け部が、前記嵌合部と同じ表面被覆層構成を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記銅板材は、前記はんだ付け部の長手方向に垂直な断面において、上面側又は/及び下面側のコーナー部がプレスによるR面取り又はC面取り加工がなされていることを特徴とする請求項16〜21のいずれかに記載されたPCB端子。
- さらに最表面に平均厚さが0.3μm以下のリフロー処理されないSnめっき層を有し、リフロー処理で平滑化されたSn被覆層と合わせた平均厚さが0.2〜10μmであることを特徴とする請求項16〜22のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記中間部が表面被覆層を有しないことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記中間部がSn被覆層、Ni被覆層、Cu被覆層、又はCu−Sn合金被覆層のいずれか1種又は2種以上で被覆されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載されたPCB端子。
- 前記銅板材は、前記中間部の長手方向に垂直な断面において、上面側又は/及び下面側のコーナー部がプレスによるR面取り又はC面取り加工がなされていることを特徴とする請求項24又は25に記載されたPCB端子。
- 銅板材を打抜き加工すると同時に又はその前後に、前記銅板材の表面にプレス加工により表面粗化処理を行って複数の凹部を形成し、続いて表面粗化処理を行った銅板材の表面に後めっきを行い、さらにリフロー処理を行うことを特徴とする請求項1〜22,24〜26のいずれかに記載されたPCB端子の製造方法。
- 銅板材を打抜き加工すると同時に又はその前後に、前記銅板材の表面の必要な部分にプレス加工により表面粗化処理を行って複数の凹部を形成し、続いて表面粗化処理を行った銅板材の表面に後めっきを行い、さらにリフロー処理を行い、その後更にSnめっきを行うことを特徴とする請求項23に記載されたPCB端子の製造方法。
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