次に、本発明に係る人体洗浄装置を人体の局部洗浄装置に適用した実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、便器に装着した状態の実施例の局部洗浄装置KS1−1を表す概略斜視図、図2は、この局部洗浄装置が有する遠隔操作装置RC1−1を説明するための説明図、図3は、局部洗浄装置の補助操作部KS1−9を説明するための袖部周辺の概略斜視図である。図4は、局部洗浄装置の概略構成を水路系を中心に表したブロック図、図5は、制御系の概略構成を表すブロック図である。
A1/全体構成;
図示するように、局部洗浄装置KS1−1は、便器BTの後部上面に固定される本体部KS1−2と、洗浄動作や乾燥動作等を遠隔操作するための遠隔操作装置RC1−1とを有する。本体部KS1−2は、便器開口部側に、便座KS1−3並びに弁蓋KS1−4を開閉自在に備える。また、この本体部は、便器の側方に袖部KS1−5を有すると共に、洗浄水を洗浄局部に吐水する洗浄ノズルWN1−1を有するノズル装置NS1−1(図6参照)の他、後述の種々の機能部品を収納している。
遠隔操作装置RC1−1は、図2に示すように、排便時に常用される種々の操作ボタンを有する。即ち、この遠隔操作装置は、その前面最上段に、本局部洗浄装置の洗浄・乾燥等の動作を停止する際に操作される停止ボタンSWaと、通常の肛門洗浄が所望される際に操作されるお尻洗浄ボタンSWbと、通常の肛門洗浄時より柔らかな吐水による肛門洗浄が所望される際に操作されるやわらか洗浄ボタンSWcと、ビデ洗浄が所望される際に操作されるビデ洗浄ボタンSWdと、温風による局部乾燥が所望される際に操作される乾燥ボタンSWzとを有する。なお、やわらか洗浄ボタンSWcによる肛門洗浄は、痔疾病を有する人や肛門周辺表皮が過敏な人にできるだけ刺激を与えないように洗浄モードであり、通常の肛門洗浄より水量を多くしたり流速を落とすなどして洗浄水を柔らかく吐水して肛門を洗浄するものである。
遠隔操作装置は、この最上段ボタン群の下方に、上記の両お尻洗浄の際の吐水の様子を変更するためのボタン群と、ビデ洗浄の際の吐水の様子を変更するためのボタン群を有する。即ち、この遠隔操作装置は、両お尻洗浄ボタンに対応するようその下方に、洗浄ノズルWN1−1を前後に往復動させながら洗浄水を吐水して広範囲な洗浄感を与えるためのムーブ設定ボタンSWfaと、洗浄水が当たる面積(洗浄面積)を吐水期間に亘って規則的に変化させて排便感を促すためのマッサージ設定ボタンSWeaと、洗浄面積を吐水期間に亘って不規則的に変化させて安らぎ感や心地よさなどを与えるためのゆらぎ設定ボタンSWtaと、洗浄面積を狭くするためのスポット設定ボタンSWuaと、洗浄面積を広くするためのワイド設定ボタンSWvaを有する。また、ビデ洗浄ボタンに対応するようその下方に、お尻洗浄と同様のムーブ設定ボタンSWfvとゆらぎ設定ボタンSWtvとスポット設定ボタンSWuvとワイド設定ボタンSWvvを有する。更に、光信号発信部RC1−2の下方には、便器ボール内の脱臭の入り切りを設定する脱臭設定ボタンSWyと、低室温時に室内暖房を自動的に行うモードの入り切りを設定して冷え込み防止を図る室暖設定ボタンSWwを有する。また、これら設定ボタン下方に、洗浄水水勢とノズル位置を表示する表示部RC1−3を挟んで、水勢強設定ボタンSWhuと水勢弱設定ボタンSWhd、ノズル位置前進設定ボタンSWxfとノズル位置後退設定ボタンSWxbを有する。なお、これらボタンが操作されたときの吐水の様子については後述する。
袖部KS1−5は、その上面に、本局部洗浄装置の動作状況等を表示する表示部KS1−6と、後述の補助操作部を覆う開閉自在なカバーKS1−7とを有する。なお、この表示部には、上記の光信号発信部RC1−2から発せられた光信号を受光する受光部が組み込まれている。また、このカバーの一部は、着座人体を検出するための着座センサSS10(図3参照)からの光を選択的に透過させるよう着色された光透過窓KS1−8とされている。
この袖部は、図3に示すように、カバー下方に補助操作部KS1−9を有する。この補助操作部は、操作頻度が低いためにカバーにて覆われており、着座センサSS10の周りに、複数の操作ボタンや操作ツマミを備える。これらボタンのうち着座センサ前方のボタンは、本局部洗浄装置全体の電源を入り切りするメイン電源ボタンSWpと、洗浄ノズルWN1−1の清掃・保守等のために洗浄ノズルWN1−1を進退出させるノズル洗浄ボタンSWkと、お尻洗浄を入り切りするお尻洗浄ボタンSWbと、ビデ洗浄を入り切りするビデ洗浄ボタンSWdとされている。この両洗浄ボタンにより、遠隔操作装置が電池切れ等で操作不能なときでも局部洗浄を行うことができる。着座センサ側方のボタンは、遠隔操作装置と同様の脱臭設定ボタンSWyと室暖設定ボタンSWwとされている。また、着座センサ後方の各ツマミは、温水ヒータの入り切りと温水温度を設定する温水ツマミと、暖房便座の入り切りと便座温度を設定する便座ツマミと、乾燥温度を設定する乾燥ツマミと、室内暖房温度を設定する室暖ツマミとされている。
B1/水路系・制御系構成;
本実施例の局部洗浄装置は、上記のボタンに応じた洗浄動作・乾燥動作等を行うため、下の水路系構成並びに制御系構成を有する。図4に示すように、本局部洗浄装置の水路系は、図示しない外部の給水源側から、入水側弁ユニットWP1−1と熱交換ユニットTH1−1と出水側弁ユニットWP1−3とを備える。そして、この出水側弁ユニットからノズル装置NS1−1の洗浄ノズルWN1−1に洗浄水が導かれ、当該ノズルから後述のように洗浄水が吐水される。また、出水側弁ユニットからは、機能水ユニットWP1−4にも洗浄水の導水が行われ、当該ユニットから洗浄ノズルWN1−1に向けて機能水が吐水される。これら各ユニットは、熱交換ユニットを挟んだ上流側・下流側給水管路で接続されている。即ち、入水側弁ユニットと熱交換ユニットは、上流側給水管路WP1−5で接続され、熱交換ユニット下流の各ユニット並びにノズル装置は、下流側給水管路WP1−6で接続されている。この場合、出水側弁ユニットWP1−3からは4本の給水管路が分岐しており、その3本がノズル装置NS1−1に、残りが機能水ユニットWP1−4に接続されている。なお、これら分岐管路も下流側管路の一部をなす。
上流側給水管路WP1−5は、本局部洗浄装置に給水源(水道管)から洗浄水(水道水)を直接給水すべく入水側弁ユニットWP1−1に配管されている。この上流側給水管路に導かれた洗浄水は、入水側弁ユニットのストレーナWP1−7でのごみ等の捕捉を経て、逆止弁WP1−8、定流量弁WP1−9に流れ込む。そして、定流量弁下流の電磁弁WP1−10にて管路が開かれると、洗浄水は、定流量弁で所定流量とされた状態で、瞬間加熱方式の熱交換ユニットTH1−1に流入する。本実施例では、定流量弁により約500〜1000cc/min程度に洗浄水流量が定められている。なお、上流側給水管路WP1−5を、便器洗浄用の洗浄水を貯留する洗浄水タンク(図示省略)から分岐して入水側弁ユニットWP1−1に配管することもできる。
この入水側弁ユニットから熱交換ユニットに至る間の上流側給水管路には、リリーフ弁WP1−11を介在させた第1洗浄水導出管路WP1−12と、上流側給水管路から直接分岐した第2洗浄水導出管路WP1−13が配設されている。この第1洗浄水導出管路は、リリーフ弁上流側の管路圧力が何らかの原因で上昇してリリーフ弁により管路が開かれると、上流側給水管路内の洗浄水を外部に導出する。これにより、上流側給水管路、延いては熱交換ユニットにおけるタンク内圧の上昇を回避できるので、タンクの変形や収縮・膨張による疲労を回避でき好ましいばかりか、必要以上に高い耐圧性能を有するタンクとする必要がない。また、第2洗浄水導出管路は、定流量弁での設定流量と、下流側給水管路WP1−6における後述の流調ポンプWP1−14での調整流量との差分の流量の洗浄水を外部に導出する。これにより、熱交換ユニットでの無駄な洗浄水温水化を省くことができ、電力消費を低減できる。
上記の第1、第2洗浄水導出管路は、その末端が脱臭用吸気口や局部乾燥用排気口に向くよう配設されている。よって、両導出管路から導出された洗浄水は、これら吸気口や排気口に吐水される。この吸気口や排気口は、便器ボール部に臨んでいることから、ボール部に配設された汚物の飛散水を浴びて汚れることがある。しかし、吸気口や排気口は上記の両導出管路からの洗浄水により洗浄されるので、衛生面や清潔感の観点から好ましい。なお、導出管から吐水された洗浄水は、便器ボール部に流れ落ちるので、便器周辺を汚すようなことがない。
上記した入水側弁ユニット下流の熱交換ユニットTH1−1は、ヒータTH1−2を内蔵するタンクTH1−3を備える。このヒータは、熱応答性が良好なニクロム線を螺旋状に巻いて構成されている。よって、タンクはこのヒータによる洗浄水の瞬間加熱が可能な容量であればよいので、タンク、延いては熱交換ユニット全体の小型化が可能である。また、熱交換ユニットの構造が簡略となるので、組み付け工数の低減、低コスト化といった製造上の利点がある。なお、ヒータまたはその近傍に、その異常加熱を機械的に遮断する図示しないバイメタルや温度ヒューズが装着されている。
そして、この熱交換ユニットは、タンクへ流入する洗浄水の温度とタンクから流出する洗浄水の温度を入水温センサSS16aと出水温センサSS16bで検出しつつ、ヒータで洗浄水を設定温度の洗浄水に温水化する。この場合、熱交換ユニットを発泡材等の断熱材で被覆すれば、断熱材による洗浄水保温効果と相俟って、洗浄水温水化のヒータの消費電力を削減できる。つまり、省エネ効果が高まる。
また、この熱交換ユニットは、タンク内水位を検出するフロートスイッチSS18を有する。このフロートスイッチは、ヒータが水没する所定の水位以上になるとその旨の信号を出力するよう構成されている。そして、電子制御装置CT1−1はこの信号を入力している状況下でヒータを通電制御するので、水没していないヒータに通電してしまうとういような事態、いわゆるヒータの空焚きを回避する。なお、熱交換器ユニットのヒータは、後述する電子制御装置によってフィード・フォワード制御とフィードバック制御を組合わせながら最適に制御される。
更に、この熱交換ユニットは、タンクからの洗浄水出口、即ち、下流側給水管路WP1−6のタンク接続箇所に、バキュームブレーカTH1−4を備える。このバキュームブレーカは、管路内に大気を導入して下流側給水管路内の洗浄水を断ち切り、下流側給水管路下流側からの洗浄水逆流を防止する。
上記の熱交換ユニット下流の出水側弁ユニットWP1−3は、ギヤポンプ等で構成される流調ポンプWP1−14と、5方弁構造の切換弁WP1−15を有する。この切換弁は、洗浄水の給水先を、洗浄ノズルWN1−1に至るお尻洗浄用流路、やわらか洗浄用流路、ビデ洗浄用流路、機能水ユニットWP1−4への流路(機能水用流路)のいずれかに切り換える。よって、熱交換ユニットでの温水化と流調ポンプによる流量調整を受けた洗浄水は、切換弁で切り換えられた給水先から吐水される。この際の流量調整の様子や給水先切換の様子は、後述する。
本実施例の局部洗浄装置の制御系は、図5に示すように、マイクロコンピュータを主要機器とする電子制御装置CT1−1を中心に構成されている。この電子制御装置は、上記した着座センサ、入水出水温センサ等の各種センサやフロートスイッチ、後述の揺動検知回路NH1−39、40、転倒検知センサSS30、洗浄水量センサSS14からの信号の他、遠隔操作装置における上記種々の操作ボタンや本体側の補助操作部における上記種々の操作ボタン並びにツマミの操作状況を、入力回路を介して有線もしくは無線(光信号)で入力する。この場合、洗浄水量センサは、下流側給水管路における洗浄水量を検出し、その検出結果を電子制御装置に出力する。転倒検知センサは、本局部洗浄装置の傾き状態を検知してその結果を電子制御装置に出力する。この電子制御装置は、入力した上記信号に基づいて、入水側弁ユニットWP1−1の電磁弁開閉弁制御、熱交換ユニットTH1−1のヒータ通電制御、出水側弁ユニットWP1−3の流調ポンプ制御、切換弁切換制御、本体袖部表示部の表示制御、局部乾燥用の乾燥ヒータやファンモータ等を含む乾燥部KK1−1の通電制御、臭気除去用のオゾナイザーや吸引ファンモータ等を含む脱臭部DS1−1の通電制御、室内暖房用のヒータやファンモータ等を含む暖房部DB1−1の通電制御を実行する他、上記信号に基づいて、後述の機能水ユニットWP1−4の塩素発生用電極通電制御、ノズル装置NS1−1のノズル駆動モータ制御、ノズルヘッドNH1−1の揺動コイル群通電制御を実行する。なお、局部乾燥用の乾燥ヒータを室内暖房用のヒータと共用したり、局部乾燥用のファンモータを臭気除去用や室内暖房用のファンモータと共用したりすることもできる。
例えば、局部洗浄装置が掃除等のために便器から取り外されて便器に立て掛けられた場合、フロートスイッチの信号が正常であることがある。このような場合には、ヒータの露出が起き得るが、フロートスイッチの信号が正常であるため、ヒータの空焚きを起こす虞がある。しかし、便器への立て掛けにより、転倒検知センサではこの傾きが検知されるので、その信号を受けて電子制御装置は、ヒータへの通電を停止して空焚きを防止する。また、電磁弁等を閉弁制御して止水状態としたり、乾燥・脱臭等の各機能を停止する。つまり、転倒検知センサにより、便器への局部洗浄装置の正常装着状態を検知でき、この結果により局部洗浄装置の機能(洗浄・乾燥・脱臭・室暖)を一時的に停止できる。その他の機器制御については後述する。なお、サーミスタや感温リードスイッチ等からなるリミットセンサを洗浄ノズル先端に設けて電子制御装置に接続し、その検出結果(ノズル先端洗浄水温度)に応じて電磁弁等を閉弁制御して止水状態とすることもできる。こうすれば、不用意な温度の洗浄水を局部に吐水することをより有効に回避でき好ましい。
C1/ノズル装置NS1−1;
次に、本実施例の局部洗浄装置が有するノズル装置NS1−1について説明する。図6は、ノズル装置NS1−1を表す概略斜視図、図7は、洗浄ノズルWN1−1の進退の様子を説明するための説明図、図8は、局部洗浄装置本体部内の待機位置にある洗浄ノズル先端部の周辺を表す説明図である。
図示するように、ノズル装置NS1−1は、局部洗浄装置の本体部KS1−2(図1参照)に収納設置される。このノズル装置は、上記本体部に固定設置されるベースNS1−2と、このベース上面の架台NS1−3に組み込み配設されたノズル駆動モータNS1−4と、このモータの正逆回転を前後動に変換して洗浄ノズルWN1−1に伝達する伝達機構NS1−5と、ベース上面に立設され洗浄ノズルを便器ボール部側で摺動自在に保持するノズル保持部NS1−6と、洗浄ノズルを後述のノズル進退軌道に沿って案内する案内レール部NS1−7とを有する。
伝達機構NS1−5は、ノズル駆動モータNS1−4の回転軸に固定された駆動プーリNS1−8と、上記のノズル進退軌道に沿った前後の従動プーリNS1−9と、これらプーリに掛け渡されたタイミングベルトNS1−10と、当該ベルトにテンションを与えるテンションローラNS1−11とを有する。タイミングベルトは、洗浄ノズルWN1−1の筒状部WN1−4から延びたベルト把持体WN1−2を介して、当該ノズルと係合・固定されている。よって、この洗浄ノズルは、タイミングベルトの正逆回転に応じて前後に進退駆動する。
案内レール部NS1−7は、図7に示す円弧状のノズル進退軌道NS1−12と一致するよう湾曲形成されており、上記の筒状部から延びた軌道把持体WN1−3を介して当該ノズルと係合されている。この軌道把持体は上記のノズル進退軌道と同じ曲率半径の軌道把持面を備え、この軌道把持面は案内レール部に対して摺動自在とされている。また、上記のノズル保持部NS1−6は、洗浄ノズルを摺動自在に保持する。よって、洗浄ノズルWN1−1は、タイミングベルトにより前後に進退駆動する際、案内レール部NS1−7に沿って前後に進退駆動し、その移動軌跡は円弧状のノズル進退軌道NS1−12と一致する。この場合、洗浄ノズルにあっても、その筒状部WN1−4は、このノズル進退軌道と同じ曲率半径で軸方向に沿って湾曲形成されている。このため、洗浄ノズルは、円弧状のノズル進退軌道と一致して、本体部内の待機位置HPと便器ボール部内の洗浄位置(お尻洗浄位置AWP、ビデ洗浄位置VWP)との間を前後に進退駆動する。なお、ノズル保持部NS1−6は、洗浄ノズルの摺動抵抗を低減するため、ノズル外壁と一部しか接触しないようにされている。
この結果、図7に示すように、待機位置HPの洗浄ノズルWN1−1を、その軸方向に亘って便器上面に近づくよう、ノズル装置NS1−1に装着できる。よって、便器上面からの洗浄ノズル後端高さ(ノズル高さ)を、円柱状の洗浄ノズルを傾斜した直線軌道に沿って進退させる場合より低くできる。従って、このノズル高さの低減の分だけ本体部KS1−2(図1参照)を低くでき、局部洗浄装置自体を小型化することができる。また、ノズルの進出によってノズルヘッド上面の角度が変わって当該ヘッドからの洗浄水吐水角度が変わるので、少ないノズル移動で洗浄範囲を大きく移動することができる。具体的には、後述のムーブ洗浄の際のノズル往復動範囲を狭くしても、ムーブ洗浄に求められる洗浄範囲に亘って洗浄水を吐水できる。或いは、お尻洗浄位置AWPからビデ洗浄位置VWPまでのノズル移動距離が短くても、洗浄水による洗浄箇所をお尻からビデに変更できる。
D1/機能水ユニットWP1−4;
次に、洗浄ノズルWN1−1の説明に先立ち機能水ユニットWP1−4について説明する。図9は、機能水ユニットWP1−4を一部破断して表す概略斜視図、図10は、図8の10−10線概略断面図である。
図示するように機能水ユニットWP1−4は、ノズル装置NS1−1に固定設置(図6参照)される機能水生成タンクWP1−16と、当該タンク内に対向配置された一対の平板状の塩素発生用電極WP1−17とを有する。この機能水生成タンクは、耐薬品性(耐遊離塩素性)を有する樹脂製のタンクであり、イン側管路WP1−18からタンク内に流入した洗浄水をアウト側管路WP1−19に流す。このアウト側管路は、図6、図8並びに図10に示すように、ノズル保持部NS1−6の先端部のチャンバNS1−14に固定されている。なお、イン側管路とアウト側管路を対向配置して、タンク内で洗浄水が効率よく流れるようにしてもよい。
ここで塩素発生用電極とは、塩素生成反応を惹起しうる電極であり、その構造としては、導電性基材で電極形状を形成しの表面に塩素発生用触媒を担持した電極構造や、塩素発生用触媒からなる導電性材料を用いて電極を形成した構造等がある。この後者の構造の塩素発生用電極は、塩素発生用触媒の種類により種々別称され、例えば、フェライト等の鉄系電極、パラジウム系電極、ルテニウム系電極、イリジウム系電極、白金系電極、ルテニウム−スズ系電極、パラジウム−白金系電極、イリジウム−白金系電極、ルテニウム−白金系電極、イリジウム−白金−タンタル系電極等がある。導電性基材に塩素発生用触媒を担持したものは、構造を担う基材部を安価なチタン、ステンレス等の材料で構成できるので、製造コスト上有利である。また、特に、塩素イオン含有水中の塩素イオン含有量が3〜40ppm程度しかない水道水を利用する場合は、遊離塩素の発生効率を向上させるためにイリジウムを担持したイリジウム系電極、イリジウム−白金合金を担持したイリジウム−白金系電極、イリジウム−白金−タンタル合金を担持したイリジウム−白金−タンタル系電極等が好適である。また、このように導電性基材に塩素発生用触媒を担持したものを利用する場合、白金を含む合金触媒の担持を行うと、基材への固定強度が高まって脱離を起こし難く、電極寿命を向上させることができ好ましい。
塩素発生用電極には、一方が陽極、他方が陰極となるように直流電圧が印加される。この機能水ユニットに給水される洗浄水は、遊離塩素生成の元となる塩素イオンを含有した水道水である。よって、機能水ユニットのタンク内に洗浄水が貯留された状態で直流電圧を印可することにより、陽極側において遊離塩素が生成される。遊離塩素は、洗浄ノズルに付着する大腸菌等の細菌に対して殺菌効果があるため、機能水ユニットで遊離塩素リッチとされた洗浄水(以下機能水とする)をノズル保持部において、洗浄ノズルに向けて吐水することにより、細菌の繁殖を防ぐことができ衛生的である。なお、機能水吐水の様子については後述する。
上記した機能水ユニットでは、タンク内には約50ccの水道水が貯留され、DC24Vの電圧を塩素発生用電極に約1分間印加すると約1.5ppmの遊離塩素濃度の機能水が生成できるよう、電極面積、電極間距離が定められており、電子制御装置にて塩素発生用電極への通電制御(定電圧制御)がなされている。この場合、洗浄水の電気伝導率が高くて電極間において電流が流れ過ぎるような場合は、印加電圧は低い値とされ、電極の長寿命化や通電部の発熱防止が図られている。また、洗浄水の電気伝導度に応じて随時印加電圧を変更し、塩素発生用電極への通電制御を定電流制御や定電力制御とすることもできる。電子制御装置は、これら通電制御を行うに当たり、通電開始から一定時間(約1分間)を経過すると通電を停止するようにする。これにより、遊離塩素の過生成やこれに伴う不用意な遊離塩素濃度の上昇、電極寿命の低下、電極加熱過多による気泡発生等の不都合を回避できる。
この機能水ユニットにより生成した機能水は、後述するノズル前洗浄・ノズル後洗浄(図25、図26、図30参照)にてノズル洗浄のためにノズルヘッドNH1−1に吐水される他、殺菌機能を果たすべく、以下のタイミングで吐水される。即ち、使用者の使用状態検知(例えば着座センサや洗浄動作の検知)に基づくタイミングと、所定時間ごとの定期的なタイミングと、例えば朝6時と昼12時と夜11時といったようなタイマー的なタイミングにおいて、上記の機能水はアウト側管路WP1−19からノズルヘッドNH1−1に吐水される。これら各タイミングで実施される機能水吐水にあっても、機能水をあらかじめ生成した後で使用する貯留式の場合には、機能水を生成するタイミングは上記したようなタイミングと同じになり、また機能水を生成するための通電は通電開始から一定時間を経過すると通電を停止するようにする。この場合、上記の定期タイミングで行う機能水の定期的な吐水にあっては、その実施タイミングは2時間おき、4時間おきと言った具合に任意に設定できる。なお、これらタイミングで機能水吐水が実施される際には、機能水吐水に適した流調ポンプWP1−14による流量調整並びに切換弁WP1−15による機能水用流路への流路切り換えがなされる。また、上記したように機能水生成ユニットのタンクを、貯留タイプ(50cc貯留)のものではなく、通水路が塩素発生用電極に挟まれたタイプとすることもできる。このタイプのものでは、上記のような電極の通電制御が上記各タイミングで実行され、その都度、流路切換を経て機能水が吐水される。
E1/洗浄ノズルWN1−1とノズルヘッドNH1−1;
次に、洗浄ノズルWN1−1について説明する。図11は、図8の11−11線概略断面図、図12は、洗浄ノズル先端のノズルヘッドNH1−1の拡大概略斜視図、図13は、図12の13−13線概略断面図、図14は、ノズルヘッドベースNH1−2の平面図である。
図6ないし図8に示すように、洗浄ノズルWN1−1は、湾曲した筒状部WN1−4とその先端のノズルヘッドNH1−1を有する。この筒状部は、図11に示すように、上下に分割された収納室WN1−5をノズル長手方向に亘って有する。上下の収納室は、中央壁により互いに遮断(分離)されていると共に筒状部外周壁の適宜箇所のカバー部WN1−6で塞がれて密閉状とされている。上側の収納室には、後述のフラットケーブルNH1−42が収納されており、このフラットケーブルは、洗浄ノズルの末端から外部に取り出されて、既述した電子制御装置に接続される。なお、このフラットケーブル並びに後述のフレキシブルチューブは、上記カバー部を取り外した状態で収納室に支障なく収納・組み付けされる。
下側の収納室には、3本のフレキシブルチューブが収納されており、各フレキシブルチューブは、お尻洗浄用ノズル流路となる第1ノズル流路WN1−7、やわらか洗浄用ノズル流路となる第2ノズル流路WN1−8、ビデ洗浄用ノズル流路となる第3ノズル流路WN1−9とされている。これらフレキシブルチューブは、ノズル末端の図示しないチューブ接続部を経て、図4の切換弁WP1−15の下流のお尻洗浄用流路、やわらか洗浄用流路、ビデ洗浄用流路にそれぞれ接続される。また、各フレキシブルチューブは、図13、図14に示すように、筒状部先端から突出したノズルヘッドベースNH1−2のお尻洗浄用ベース流路となる第1ベース流路NH1−3、やわらか洗浄用ベース流路となる第2ベース流路NH1−4、ビデ洗浄用ベース流路となる第3ベース流路NH1−5にそれぞれ接続される。よって、切換弁WP1−15(図4参照)が洗浄水の給水先をその下流のお尻洗浄用流路、やわらか洗浄用流路、ビデ洗浄用流路のいずれかに切り換えると、洗浄水は、その切り換えられた流路を経てノズル流路・ベース流路に流れ込み、ノズルヘッドの後述の各吐水孔から吐水される。なお、第1〜第3ノズル流路WN1−7〜9を、筒状部WN1−4にその成型時に区画形成してもよい。
ノズルヘッドNH1−1は、ノズル流路・ベース流路に流れ込んだ洗浄水を局部に向けて吐水すべく、以下の構成を備える。このノズルヘッドは、ノズルヘッドベースNH1−2にヘッドカバーNH1−6を装着して構成される。このヘッドカバーは、通常のお尻洗浄に用いるお尻吐水孔NH1−7とお尻のやわらか洗浄に用いるやわらか吐水孔NH1−8を有するお尻用可動体NH1−9と、ビデ洗浄に用いるビデ吐水孔NH1−10を有するビデ用可動体NH1−11とを、カバー上面に前後に備える。また、このヘッドカバーは、図13に示すように、ノズルヘッドベース上端周縁の係合爪部NH1−12に係合するカバー側係合爪部NH1−13と、後方周壁から突出した係合突起NH1−14を有する。このカバー側係合爪部は、後方周壁を除く前方側方の周壁に亘って形成されている。また、この係合突起の先端部には十字にすり割りが形成されているので、係合突起は、その先端部の収縮・拡張により、筒状部WN1−4の前端壁貫通孔に挿入・取り外し可能である。よって、ヘッドカバーNH1−6は、図12の白抜き矢印に沿ったスライドを経て、ノズルヘッドベースNH1−2に着脱される。つまり、このヘッドカバーは交換可能である。
ここで、上記の可動体について説明する。図15は、ビデ洗浄に用いるビデ用可動体NH1−11の平面図、図16は、このビデ用可動体とその関連部材を説明するための平面模式図、図17は、ビデ用可動体と関連部材を説明するための概略斜視図である。
図12、図13および図15に示すように、ビデ用可動体NH1−11は、ヘッドカバーNH1−6の上面に固定されるフランジ部NH1−15とその中央の円筒部NH1−16と、この円筒部の中央貫通孔に位置し中央にビデ吐水孔NH1−10が空けられた吐水駒NH1−17と、この吐水駒下端の磁気駆動体NH1−18とを有する。フランジ部NH1−15並びに円筒部NH1−16は、ゴム、エラストマー等の変形復元性を発揮する弾性材料から形成されている。尚、弾性体材料への汚水付着を防止のため、あるいは機能水吐水による弾性体材料の劣化を防止するために、弾性体材料の表面にはっ水処理(例えばフッ素コーティング処理等)や親水処理(例えば酸化チタンのコーティング等)を施すことが好ましい。吐水駒NH1−17は、樹脂成型品であり、この吐水駒のビデ吐水孔下端側は、大径の吐水案内孔NH1−19とされている。磁気駆動体NH1−18は、耐水性・防錆性を有する磁性材料、例えば電磁ステンレス鋼鈑のプレス成型品であり、インサート成型法等により吐水駒NH1−17と一体成型される。この磁気駆動体の材料は、一般に、高透磁率材料である軟質磁性材料であれば良く、ケイ素鋼、フェライト、純鉄等を例示でき、無電解Niメッキ等の表面処理を施して防錆を図ると好ましい。この吐水駒は上記の円筒部の中央貫通孔に嵌合固定されることから、ビデ用可動体NH1−11は上記各部材からなるサブアッシー品である。そして、このビデ用可動体は、フランジ部の周縁部にて、接着剤、溶着、ネジ止め等の適宜手法によりヘッドカバーに固定される。このため、ビデ用可動体NH1−11は、フランジ部で支持されて釣り下げられた状態のまま、このフランジ部と円筒部との繋ぎ部分の変形・復元により、各方向に首振り可能である。
磁気駆動体NH1−18は、その周縁に磁気作用部NH1−18a〜18cを有する。よって、各磁気作用部に磁力による吸引力が作用すれば、該当する磁気作用部が下方に移動し、ビデ吐水孔はこの磁気作用部の下方移動に応じて傾斜する。そして、各磁気作用部に対応して円周状に所定の間隔で配設した後述の電磁コイルを左回りあるいは右回りに順次通電して励磁すれば、通電状態の電磁コイルに吸引された磁気作用部が順次移動するので、それに応じてビデ吐水孔も傾斜したまま順次左回り、右回りに3次元的に移動する。このビデ吐水孔の振れ角(吐水孔振れ角α:図16参照)は、上記の吸引力の強さを調整すること、即ち、電磁コイルの通電電圧の電圧値(即ち電流値)を調整すること、通電電圧のデューティー比を調整すること等により、変更可能である。また、上記のフランジ繋ぎ部分に変形を起こすだけの吸引力を作用させればよいので、ビデ用可動体NH1−11は容易に揺動する。
お尻用可動体NH1−9は、上記の二つの吐水孔を有するためにその形状において上記のビデ用可動体と相違するものの、このビデ用可動体と同一の機能を果たす部材を有する。よって、その説明は省略し、図には符号を付するに止めることとする。
なお、上記の磁気駆動体を硬質磁性材料とすれば、この磁気駆動体に及ぼす磁力の磁性により当該磁気駆動体に吸引力だけでなく反発力も作用させることができる。その一方、本実施例のように軟質磁性材料の場合は、磁力により磁気駆動体に吸引力を作用させることができる。
次に、上記したように可動体を揺動させる磁力生成体NH1−26について説明する。図18は、この磁力生成体NH1−26を説明するための概略分解斜視図、図19は、この磁力発生体の有する電磁コイル設置基板NH1−28の平面図、図20は、この基板上面に形成した回路構成を説明する説明図である。
磁力生成体NH1−26は、図12および図13に示すように、上記の両可動体とは非接触の状態で、即ち、可動体下端との間に間隙を確保した状態で、また、ノズルヘッドベースの前方および左右の側壁との間に間隙を残した状態で、ノズルヘッドベースNH1−2の上面に固定設置される。そして、このベース前方および左右の側壁には、当該側壁と磁力生成体との間の間隙をノズルヘッド外部と連通する外気吸引孔NH1−27が空けられている。この場合、各外気吸引孔の開口面積は、次のように定められている。お尻、やわらか、ビデの各吐水孔から洗浄水が吐水されると、図13に示すように、可動体下端の間隙上下の流路径に広狭があることから、この間隙を洗浄水が通過する際にエジェクタ作用が起きる。よって、洗浄水には空気が巻き込まれて泡沫状に混入する。この際の空気混入率が約50〜100%となるよう、外気吸引孔の開口面積は、空隙前後の流路径を考慮して定められている。ノズルヘッドベースの側壁における各外気吸引孔の開口位置は、磁力生成体下面より下方とされ、ベース前方壁にあっては先端傾斜面とされている。よって、洗浄動作中にこのノズルヘッドに洗浄水が跳ね返っても、この跳ね返り洗浄水が外気吸引孔を通ってノズルヘッド内部に進入することを回避できる。更に、ブラシ等にてヘッド洗浄を行っている最中の汚濁洗浄水をもノズルヘッド内部に進入しないようにできる。また、上記の両可動体の吐水孔から吐水を行っている最中に可動体下端の間隙から漏れ出た洗浄水は、磁力生成体の上面および側面に伝わり、各外気吸引孔から排出される。このため、この排出洗浄水により磁力生成体、延いてはその内部の後述の電磁コイルを冷却できるので、発熱によるコイル特性の変化を抑制できる。しかも、この外気吸引孔は各可動体に対応して設けられているので、排出洗浄水の滞留が無くなり冷却効果を高めることができる。なお、外気吸引孔は、ベース前方壁にのみ設けてもよい。
図18に示すように、磁力生成体NH1−26は、後述の種々の部材が設置された電磁コイル設置基板NH1−28と枠体NH1−29とを有する。そして、この基板は、枠体の枠内への熱硬化樹脂の流し込みにより樹脂モールドされ、枠体と一体となったサブアッシー品とされている。この場合、基板に設置された後述の各コイル鉄心の先端と給水口NH1−46〜48が、外部に露出している。よって、基板上に設置される後述のコイル、回路等の漏水による不都合はない。
電磁コイル設置基板NH1−28は、お尻用可動体NH1−9を揺動させるためのお尻用揺動コイル群NH1−30と、ビデ用可動体NH1−11を揺動させるためのビデ用揺動コイル群NH1−31とを有する。各揺動コイル群は、それぞれの可動体における磁気駆動体NH1−18、23の磁気作用部NH1−18a〜18c、23a〜23cに対応して3個の電磁コイルNH1−32a〜32c、33a〜33cを有する。この各電磁コイルは、磁気駆動体の各磁気作用部に対向するように基板に配設固定されている。
各電磁コイルは、同一の構成を有し、プレートNH1−34に2本のコイル鉄心NH1−35を立設して備え、一方のコイル鉄心にコイルを有する。よって、コイルに通電されると、電磁コイルは励磁して、プレートと2本のコイル鉄心をループする磁束(図17参照)を形成する。この場合、ノズルヘッド完成時には、2本のコイル鉄心と対応する磁気作用部とは対向することから、上記の磁束は、磁気駆動体の磁気作用部を磁路としてループする。そして、この電磁コイルは、コイル通電に応じた磁力に基づく吸引力を、対向する磁気作用部に及ぼす。つまり、電磁コイルが励磁されると、対向する磁気作用部内を通る磁束が形成されて磁気作用部には各コイル鉄心に対応して逆の極、つまりN極の鉄心には磁気作用部にS極が、またS極の鉄心には磁気作用部にN極が形成されるので、作用部はそれぞれのコイル鉄心に吸引される。流す電流の方向を変えても、極性がNとSに逆転するだけで吸引力は、同じように作用する。しかも、この磁力による吸引力の強さは、コイルへの通電制御を通して制御可能である。このプレート並びに2本のコイル鉄心は共に強磁性体材料とされているので、上記の磁極形成が顕著となり、強力な磁力に基づく吸引力を磁気作用部に及ぼすことができる。このような電磁コイルの磁力の作用により、上記の両可動体並びにその吐水孔は既述したように揺動し、その際の吐水孔振れ角α(図16参照)は、コイルへの通電制御を通して後述のように制御される。なお、以下の説明に当たっては、便宜上、図19に示すように、お尻用揺動コイル群NH1−30の各電磁コイルにおけるコイルをNH1−30a〜30cと表し、ビデ用揺動コイル群NH1−31の各コイルをNH1−31a〜31cと表す。
上記のお尻用・ビデ用の揺動コイル群における各電磁コイルを励磁するため、電磁コイル設置基板NH1−28には、プリント印刷手法により、図20に示す回路が形成されている。即ち、この基板は、所定の直流電圧の電源ラインとアースラインの他、お尻用揺動コイル群NH1−30のコイルNH1−30a〜30c並びにビデ用可動体NH1−11のコイルNH1−31a〜31cに接続され各コイルへの通電を入り切りするトランジスタTr1〜Tr6と、抵抗R1〜R6を介してベース電圧を調整し各トランジスタTr1〜Tr6をON・OFFするためのベースラインと、各コイルへの通電の様子を電圧調整用の抵抗R7、R8を介して出力するための出力ラインNH1−36、37とを有する。この抵抗R7、R8と出力ラインNH1−36、37で図5に示す揺動検知回路NH1−39、40が構成され、後述のようにコイル通電異常発生の様子、即ち可動体の揺動異常発生の様子が検知される。この回路における各ラインは、基板端部のターミナルにてフラットケーブルNH1−42に接続され、当該ケーブルを経て電子制御装置CT1−1に接続されている。この場合、トランジスタTr1〜6や抵抗R1〜R8を電子制御装置における図示しないコイル制御回路として設置することもでき、こうすれば、磁力生成体延いてはノズルヘッドを小型化できる。また、抵抗R7、R8と出力ラインNH1−36、37で構成される揺動検知回路NH1−39、40は、コイル通電異常発生を検知するものであることから、次のように構成することもできる。即ち、上記両抵抗に替わりホールICや光センサ等の位置検出デバイスを用い、電磁コイルによる駆動対象物(磁気作用部等)の動きをこの位置検出デバイスで検知するようにする。そして、この位置検出デバイスの検知結果により、コイル通電異常発生を検知するよう揺動検知回路を構成する。なお、ノズルヘッドベースNH1−2への基板設置に際しては、図13に示すように、ゴムブッシュNH1−43を介在させてフラットケーブルが組み付けられる。
また、電磁コイル設置基板NH1−28は、可動体揺動のための上記揺動コイル群の他、可動体への洗浄水給水を図るため以下の構成を有する。即ち、この基板は、図13や図18に示すように、お尻用揺動コイル群NH1−30に囲まれた第1突出部NH1−44と、ビデ用揺動コイル群NH1−31に囲まれた第2突出部NH1−45を有する。第1突出部は、ノズルヘッドベースNH1−2の第1ベース流路NH1−3に連通するヘッド内お尻吐水孔NH1−46と、第2ベース流路NH1−4に連通するヘッド内やわらか吐水孔NH1−47とを有する。第2突出部は、第3ベース流路NH1−5に連通するヘッド内ビデ吐水孔NH1−48を有する。これら各ヘッド内吐水孔は、お尻用可動体NH1−9やビデ用可動体NH1−11のお尻吐水孔NH1−7、やわらか吐水孔NH1−8、ビデ吐水孔NH1−10に既述した空隙を空けて対向する。よって、切換弁WP1−15(図4参照)が洗浄水の給水先をその下流のお尻洗浄用流路、やわらか洗浄用流路、ビデ洗浄用流路のいずれかに切り換えると、洗浄水は、その切り換えられた流路を経てノズル流路・ベース流路並びに上記の各ヘッド内吐水孔を通過して可動体に給水され、各可動体の上記各吐水孔から吐水される。しかも、このような各吐水孔からの洗浄水吐水の際には、ベース流路と吐水孔間の空隙通過時の既述した空気巻き込みが起き、洗浄水は空気を泡沫状に混入した状態で吐水される。
この場合、ヘッド内の上記各吐水孔NH1−46〜48は、対応する各可動体のお尻吐水孔、やわらか吐水孔もしくはビデ吐水孔の孔径以下(本実施例では対向する吐水孔と同径)とされている。よって、局部に吐水される洗浄水の吐水速度は、各可動体のお尻吐水孔、やわらか吐水孔もしくはビデ吐水孔の孔径で定まる。そして、各可動体のこれら各吐水孔は、お尻吐水孔が最もその孔径が小さく、ビデ吐水孔とやわらか吐水孔はこのお尻吐水孔より孔径が大きくされている。このため、遠隔操作装置RC1−1(図2参照)の水勢強弱設定ボタンSWhu、SWhdにより水勢が一定に設定されている状況下であれば、各可動体の各吐水孔からの洗浄水の吐水速度は、お尻吐水孔が最も速く、ビデ吐水孔とやわらか吐水孔ではお尻吐水孔より遅くなる。このように吐水速度が遅いやわらか吐水孔を用いるやわらか洗浄は、お尻吐水孔での通常のお尻洗浄の場合より、吐水から受ける洗浄感を吐水速度が遅い分だけ少なくとも柔らかなものとする。なお、ビデ吐水孔ややわらか吐水孔は、本実施例のように単一の孔に限られるものではなく、小径の細孔を複数配置してその全体でビデ吐水孔ややわらか吐水孔と形成することもできる。この場合には、複数の細孔面積の総和である吐水孔総面積をお尻吐水孔面積以上とすれば、細孔全体として吐水は、お尻洗浄の場合より柔らかくなる。
次に、ビデ用可動体NH1−11を例に採り、この可動体のビデ吐水孔NH1−10からの洗浄水吐水の様子について説明する。図21は、ビデ用可動体NH1−11を駆動させる際の電磁コイルNH1−33a〜33cの励磁の様子を説明する説明図、図22は、ビデ吐水孔NH1−10からの洗浄水吐水の様子を模式的に説明する説明図、図23は、この洗浄水吐水の瞬間的な様子を模式的に説明する説明図、図24は、電磁コイルNH1−33a〜33cの励磁の様子を説明するための他の説明図である。
電子制御装置CT1−1は、パルス状に信号(トランジスタON信号)を生成して、このパルス信号を、電磁コイルNH1−33a〜33cに対応する各トランジスタTr4〜6のベースに順次印加する。よって、電磁コイルNH1−33a〜33cは、パルス信号に従った各トランジスタのON・OFFにより、図21に示すように、繰り返し順次励磁する。このような各電磁コイルの繰り返し励磁により、ビデ用可動体NH1−11の磁気作用部NH1−18a〜18cは、コイル励磁による吸引力(以下、この力をコイル作用力という)を繰り返し順次受ける。よって、この可動体は、図22に示すように、コイル作用力を受けた磁気作用部に応じて傾斜し、その傾斜箇所を電磁コイルの励磁順方向に沿って推移させる。この結果、ビデ吐水孔NH1−10は、この可動体と共に吐水孔振れ角α(図16参照)で傾斜し、この傾斜姿勢のまま、可動体の傾斜位置推移に伴って揺動回転する。これにより、上記したように洗浄水が可動体まで給水されると、この洗浄水は、次のような吐水形態を採って吐水される。
洗浄水の吐水孔が吐水孔振れ角αで傾斜していることから、吐水孔からの吐水を水柱として模式的に表すと、図22に示すように、この模式吐水水柱RTは、上記の吐水孔振れ角αで傾斜する。しかも、吐水孔は揺動回転しているので、模式吐水水柱RTは、吐水孔振れ角αのまま吐水孔の揺動回転に併せて移動し、次々にこの模式吐水柱が連続する。よって、洗浄水は、模式吐水水柱RTが並んだ図示するような円錐形状のような吐水形態(以下、この吐水形態を擬似円錐状吐水形態という)を採って吐水される。また、この様子を瞬間的に捕らえると、図23に示すように、それぞれの吐水孔振れ角αで規定された円錐の側壁において螺旋状に洗浄水が吐水していると擬態できる。このような形態で洗浄水吐水が行われている際、可動体は、フランジ周縁で固定されているので、自転することはない。つまり、可動体の自転を起こすことなく、吐水孔のみが吐水孔振れ角αで揺動回転していることになる。なお、可動体は、揺動回転を起こさず傾斜位置推移を起こすに過ぎないが、吐水孔の揺動回転に付随した可動体の傾斜位置推移動作を、説明の便宜上、可動体の擬似揺動回転という。
このように吐水孔振れ角αで揺動回転するお尻吐水孔NH1−7は、その下方のヘッド内お尻吐水孔NH1−46に対して傾斜する。そして、このような位置関係でヘッド内お尻吐水孔から可動体のお尻吐水孔NH1−7に洗浄水が給水される。この場合、可動体のお尻吐水孔下端は大径の吐水案内孔NH1−24とされているので、ヘッド内お尻吐水孔からの洗浄水は、吐水案内孔に案内されて支障なく可動体のお尻吐水孔から吐水される。
本実施例では、各電磁コイルを励磁するに当たり、上記のパルス信号の発生周期(パルス周期)をT、パルス信号のON時間をtと表したときのデューティ比(t/T)を可変制御する。このデューティ比制御により、可動体の磁気作用部NH1−18a〜18cの受けるコイル作用力、即ち吐水孔振れ角αを以下のように増減制御できる。例えば、図21(a)に示すように、各電磁コイルの励磁周期Tc(=Tc1)とパルス周期T(=T1)を一定としパルスON時間tをt1(デューティ比:t1/T1)とした制御期間Aと、パルスON時間tをt2(t2<t1,デューティ比:t2/T1)とした制御期間Bとでは、デューティ比の大小に応じて、吐水孔振れ角αを制御期間Aで大きく制御期間Bでは小さくできる。このため、上記した擬似円錐状吐水形態で吐水された洗浄水が吐水する範囲、換言すれば洗浄面積を、図21に示すように、制御期間Aでは大きな吐水孔振れ角αに基づいて広範な洗浄面積ASとできる。制御期間Bでは、これより狭い洗浄面積BSとできる。つまり、本実施例では、デューティ比の可変制御を通して、吐水孔振れ角α即ち洗浄面積を広狭制御できる。この場合、電磁コイルの励磁順を、電磁コイルNH1−33a→33b→33c→33a・・・の順序から、電磁コイルNH1−33a→33c→33b→33a・・・の順序に反転させることもできる。
本実施例では、各電磁コイルの励磁周期Tcを可変制御する。例えば、図21(b)に示すように、制御期間C、Dにおいてデューティ比を一定とし((t3/T2)=(t4/T3),t3≠t4,T2≠T3)、各制御期間で各電磁コイルの励磁周期Tcを変更することもできる(Tc1>Tc2)。この励磁周期Tcは、図22に示す模式的な個々の模式吐水水柱RTが被洗浄部(人体局部)に当たって人体に刺激を与える間隔を定める。
一般に、人体表皮の同一箇所に感知可能な刺激(本実施例では模式吐水水柱RTによる刺激)を繰り返し加えた場合、この繰り返し間隔が長く繰り返し周波数が低いと、人は、この繰り返された刺激を振動刺激としてその都度感知する。その一方、繰り返し間隔が短く繰り返し周波数が高いと、人は、この意図的に繰り返された刺激を振動刺激とは感知できず、連続的な刺激として感知する。つまり、人体表皮への繰り返し刺激に対しては、振動刺激としては感知できない不感帯周波数がある。ここで、局部及びその周辺の洗浄において、刺激を受ける人体表皮から見て洗浄水の流量または流速の大小を繰り返し吐水(以下、繰り返し吐水という)したと仮定すると、吐水からの刺激の大小が繰り返されることになるので、この繰り返し吐水は洗浄箇所表皮に振動刺激として現れる。これが約5Hz以上の繰り返し周波数であると、この意図的な繰り返し吐水に基づく振動に知覚が追従できなくなる。このため、意図的な繰り返し吐水であるという吐水態様を意識できなくなり、無用な振動による不快感が減少される。繰り返し吐水の繰り返し周波数が高まるほど、意図的な繰り返し吐水に基づく振動に対しての知覚の追従が困難となるので、この繰り返し周波数が約10Hz以上の繰り返し周波数になると、通常の知覚を有する大多数の人では意図的な繰り返し吐水に基づく振動に対して知覚がほとんど追従できなくなる。よって、意図的な繰り返し吐水であるという吐水態様の認識が困難となり、無用な振動による不快感もより減少される。また、約15Hz以上の繰り返し周波数では、人体表皮の平均的な部位であっても振動認識周波数を超えるので、通常の知覚を有する大多数の人において不快感が感じられなくなる。さらに、約20Hz以上の繰り返し周波数では、人体表皮の敏感な部位であっても振動認識周波数を超えるので、通常の知覚を有する大多数の人において連続的で良好な洗浄感を確実に感じることができる。その上、約30Hz以上の繰り返し周波数では、人体表皮の神経が特に集中した敏感な部位であっても、振動認識周波数を超えるので、通常の知覚を有する大多数の人においてソフトな洗浄感を得ることができる。そして、繰り返し周波数を商用周波数と一致させる(商用周波数50Hz地域では50Hz、商用周波数60Hz地域では60Hz)と、駆動が容易となるという効果も加わる。このように周波数を高くするほど、連続的な洗浄感をより確実に感じながら洗浄を行うことができ、よりソフトな洗浄感を求める使用者に十分対応させることができる。
この不感帯周波数の観点から、本実施例では、各電磁コイルの励磁周期Tcをその励磁周波数f(=1/Tc)が約5Hz以上の範囲となるよう可変制御することとし、模式吐水水柱RTによる人体局部への刺激が連続的な刺激として感知されるようにした。つまり、人体局部のある点(例えば、図22に示す洗浄ポイントSP1)に、洗浄水を励磁周期Tcで間欠的にしか吐水させないが、使用者には、この洗浄ポイントSP1に連続的な洗浄水の吐水を受けていると感じさせる。このことがそれぞれの洗浄水吐水箇所で起きるので、使用者には、上記した洗浄面積に亘って一律で連続的な洗浄水の吐水を受けているような洗浄感を与えることができる。このことは、次のようなことを意味する。
ある範囲の洗浄面積に亘って上記の連続的な洗浄感を与えるためには、洗浄水吐水孔が固定状態の既存の洗浄ノズルでは、吐水された洗浄水自体の円錐状の広がりを必要とする。よって、相当量の洗浄水を常時給水する必要があり、既存洗浄ノズルでは、約1000cc/min程度の洗浄水流量で洗浄水が吐水されていた。このような吐水では、総ての洗浄水吐水箇所に洗浄水が常時吐水されていることになる。しかしながら、本実施例の局部洗浄装置では、その洗浄ノズルWN1−1からの上記した擬似円錐状吐水形態により、既存のものと同様に連続的な洗浄感を与えるに際し、実際には、上記励磁周波数fでの間欠的な吐水が行われているに過ぎない。つまり、洗浄水吐水箇所のそれぞれにおいて、本実施例では洗浄水の吐水を間欠的にして間引いているので、洗浄水水量を低減することができる。よって、本実施例では、洗浄水流量を既述したように定流量弁により約500cc/min程度に定め、最大この流量の洗浄水を吐水するだけでよい。
既述したように間欠的な吐水として感知されないようにするためには、励磁周波数を約5Hz以上とすればよいが、本実施例では、励磁周波数を約10〜60Hzとして、連続的な洗浄水の吐水感をより確実に得られるようにした。
励磁周波数fを上記の不感帯周波数に設定しても、洗浄水の連続的な吐水から受ける吐水連続感は、励磁周波数fが低いほど薄れがちであるといえる。よって、励磁周波数fを上記範囲内で低くして使用者の洗浄感に良好な刺激感を持たせたり、励磁周波数fを高くして洗浄感にソフト或いはマイルドな刺激感を与えることができる。
また、上記したように洗浄面積に亘る一律な洗浄水の吐水連続感を与えた状況下で、上記のように洗浄面積を広狭制御できる。よって、洗浄面積を狭くして使用者に洗浄水の吐水を狭い洗浄面積で受けさせて洗浄水の吐水箇所集中を図った場合と洗浄面積を広くして洗浄水の吐水箇所拡散を図った場合とでは、洗浄水の吐水を受けた使用者に異なる洗浄感を与えることができる。例えば、肛門中央よりその周囲の方が痛点分布が密であるため、お尻洗浄では、吐水箇所集中を図った場合にはソフトな洗浄感を与え、吐水箇所拡散を図った場合にはハードな洗浄感を与えることができる。なお、このように洗浄面積を広狭制御すれば洗浄感を変えることができるが、デューティ比の可変制御を通して洗浄面積を意図的に可変制御する場合については、後述する。
図21では、デューティ比と励磁周波数を、一方を固定して他方を制御する場合について説明した。しかし、本実施例では、図24に示すように、デューティ比に応じて励磁周波数fを増減制御することもできる。図24(a)では、デューティ比を大きくして洗浄面積を広くしつつ、励磁周波数fを高めることによりソフト或いはマイルドな刺激感を付与することができる。つまり、広い洗浄面積をより連続的な洗浄感で洗浄したいときに良い。また逆に、デューティ比を小さくして洗浄面積を狭くしつつ、励磁周波数fを低くして吐水連続感を薄れさせて良好な刺激感を付与することもできる。
その一方、図24(b)では、デューティ比を大きくして洗浄面積を広くしつつ、励磁周波数fを低くしている。よって、お尻洗浄の場合には、広い洗浄面積によるハードな洗浄感を与えつつ励磁周波数fを低くして吐水連続感を薄れさせるので、ハードな洗浄感に良好な刺激感を付与するようなことができる。また、狭い洗浄面積によるソフトな洗浄感を与えつつ高い励磁周波数fにより間欠的な刺激感を与えないようにするので、ソフトな洗浄感をより連続的なものとできる。つまり、図24のように制御することで、洗浄感のより一層の多様化を図ることができる。なお、図24に示すように励磁周波数fを直線的に増減するのではなく、段階的に増減することもできる。
また、図21(b)に示したようにデューティ比を一定のまま各電磁コイルの励磁周期Tcを変更しても、次のようにして吐水孔振れ角α(洗浄面積)を種々設定できる。励磁周期Tcを短くすれば、上記のコイル作用力が磁気作用部に作用する時間が短くなるので、吐水孔振れ角αは小さくなり洗浄面積は狭くなる。また、励磁周期Tcを長くすれば、コイル作用力の作用時間も長くなるので、吐水孔振れ角αは大きくなり洗浄面積は広くなる。そして、励磁周期Tcが小さいまま固定された状況下でも、デューティ比Dtを大きくすれば、既述したとおり吐水孔振れ角αを大きくして洗浄面積を広くできる。同様に、励磁周期Tcが大きいまま固定された状況下では、デューティ比Dtを小さくして吐水孔振れ角α並びに洗浄面積の狭小化を図ることができる。つまり、上記した不感帯周波数になるよう励磁周期Tcがとの値で固定されても、デューティ比の可変制御により洗浄面積を広狭設定できる。
また、本実施例では、洗浄水吐水の継続状況下で、総ての電磁コイルを非励磁としたまま或いは総ての電磁コイルを同時に励磁させたままとするようなコイル励磁制御を行うこともできる。この場合、総ての電磁コイルを非励磁とした場合は、洗浄水は、フリー状態の可動体の吐水孔から、空気混入を伴って一点に集中して吐水される。その一方、総ての電磁コイルを同時に励磁させた場合は、洗浄水は、磁力生成体に吸着された可動体の吐水孔から、空気混入を伴わず一点に集中して吐水される。このような一点集中吐水を起こすコイル励磁制御は、継続的に行われるのではなく、上記したデューティ比制御を通した洗浄面積の広狭制御に組み合わされて行われる。つまり、ある洗浄面積となるデューティ比で各電磁コイルを順次励磁制御している際に、全電磁コイルの同時励磁を間欠的に組み込み実行しつつ、この全電磁コイルの同時励磁の実行周期を上記の励磁周波数fを満たす周期とする。こうすれば、洗浄面積で定まる人体局部範囲とその範囲内の一点を、洗浄水の吐水連続感を使用者に抱かせたまま洗浄できる。
F1/洗浄・乾燥動作ルーチン;
次に、上記構成を有する本実施例の局部洗浄装置が実行する洗浄・乾燥動作について説明する。図25は、電子制御装置CT1−1により実行されるお尻やビデの洗浄と乾燥動作ルーチンを示すフローチャート、図26は、洗浄・乾燥動作ルーチンにおけるノズル前洗浄処理の詳細を表すノズル前洗浄ルーチンのフローチャートである。図27は、局部洗浄の際の洗浄水吐水に先立つノズル前洗浄における洗浄水吐水の様子を模式的に表した説明図、図28は、洗浄・乾燥動作ルーチンにおける本洗浄動作処理の詳細を表す本洗浄ルーチンのフローチャート、図29は、この本洗浄ルーチンの処理内容と動作停止ルーチンの処理内容を説明するための説明図である。
図25の洗浄・乾燥動作ルーチンは、洗浄ボタン(お尻、やわらか、ビデの各ボタン)或いは乾燥ボタンのいずれかが操作されると割込実行されるものである。そして、この洗浄・乾燥動作ルーチンでは、図25のフローチャートに示すように、まず、着座センサSS10をスキャンして便座への使用者の着座の有無を判断する(ステップS100)。着座状態にないと判断すれば、本局部洗浄装置は未使用であるから、それ以降の処理は不要であるとして何の処理を行うことなく本ルーチンを終了する。着座状態であれば、本局部洗浄装置の使用中であることから、洗浄動作或いは乾燥動作を実施すべく、洗浄ボタン(お尻、やわらか、ビデの各ボタン)か乾燥ボタンのいずれのボタンが本ルーチン実行時に操作されたかを判断する(ステップS105)。なお、以下の説明に当たっては、遠隔操作装置RC1−1の各ボタンが操作されたことを想定して説明する。
上記のステップS105で乾燥ボタンSWzが操作されたと判断すれば、バックアップRAMの所定アドレスに記憶された乾燥動作禁止フラグFKstopの状態を読み込みFKstop=1であるか否かを判断する(ステップS110)。この乾燥動作禁止フラグFKstopは、局部乾燥用の乾燥ヒータやファンモータ等の乾燥部KK1−1(図5参照)に通電異常が起きたことを示す。また、FSstop=1であればコイル異常(乾燥は関係しない)につき洗浄等を実行すべきでないことを表す。そして、この乾燥動作禁止フラグFKstopは、図示しない乾燥不良検知ルーチンと復旧ルーチンにて値1或いは値0「ゼロ」がセットされる。よって、ステップS110で肯定判断すれば、何の処理を行うことなく本ルーチンを終了する。そして、ステップS110で否定判断すれば、後述するような洗浄動作の禁止状態に拘わらず上記の乾燥部KK1−1への通電制御(ステップS115)を実行し、本ルーチンを終了する。このステップS115により、局部に向けて温風が吹き付けられ、局部乾燥が行われる。この際の乾燥部への通電は、温風温度が補助操作部KS1−9(図3参照)の乾燥ツマミで設定された乾燥温度となるように制御される。なお、この乾燥部への通電の停止は、後述の動作停止ルーチンにて行われる。
一方、ステップS105でお尻、やわらか、ビデのいずれかの洗浄ボタンが操作されたと判断した場合は、バックアップRAMの所定アドレスに記憶された洗浄動作禁止フラグFSstopの状態を読み込みFSstop=1であるか否かを判断する(ステップS120)。この洗浄動作禁止フラグFSstopは、お尻用・ビデ用の各揺動コイル群における電磁コイルの各コイルNH1−30a〜30c、31a〜31c(図19、図20参照)に断線や接点不良等のコイル通電異常が起きたことを示す。つまり、FSstop=1であることは、コイル異常につき洗浄動作を実行すべきではなく、洗浄動作を禁止状態とすべきことを意味する。そして、この洗浄動作禁止フラグFSstopは、後述の揺動検知ルーチンにて値1がセットされ異常復旧ルーチンにて値0「ゼロ」がセットされる。よって、ステップS120で肯定判断すれば、何の処理を行うことなく本ルーチンを終了する。
ステップS120で否定判断した場合は、局部洗浄のための洗浄水吐水に先立って、ノズルヘッドNH1−1(図5、図6、図12参照)を洗浄するノズル前洗浄を実行する(ステップS130)。
図26のフローチャートに示すように、ノズル前洗浄ルーチンでは、図4に示す入水側弁ユニットWP1−1の電磁弁WP1−10を開弁制御する(ステップS131)。次いで、切換弁WP1−15を機能水用流路に切換制御すると共に、流調ポンプWP1−14の機能水吐水用流量への駆動制御を行う(ステップS132)。これにより、図8に示す待機位置HPにあるノズルヘッドに向けて機能水(遊離塩素溶液)が吐水され、当該ヘッドが殺菌洗浄される。なお、既述したように機能水ユニットでは上記の各タイミングでタンク内にて機能水が生成済みであるので、この生成済みの機能水がタンク貯留量(約50cc)だけ吐水される。
次に、機能水吐水を停止すべく、機能水用流路からお尻洗浄用流路への切換弁WP1−15の切換制御と、流調ポンプWP1−14のノズル洗浄用流量への駆動制御とを行う(ステップS133)。これにより、ノズルヘッドが図8に示す待機位置HPにある状態で、ノズルヘッドのお尻吐水孔NH1−7からチャンバNS1−14に向けて洗浄水が吐水される。この際、上記したコイル励磁を行わないことからお尻用可動体NH1−9は揺動回転を起こさずフリー状態である。よって、図27(a)に示すように、ノズル前洗浄時には、洗浄水は一点に集中して吐水される。しかも、お尻吐水孔NH1−7は小径であることから、吐水速度は大きい。このため、チャンバでは勢いよく洗浄水が跳ね返って、この跳ね返り洗浄水でノズルヘッドが洗浄される。これにより、ノズルヘッド、詳しくはノズルヘッドの各吐水孔およびその周辺を好適に洗浄できる。しかも、ステップS132でノズルヘッドにかけられた機能水(遊離塩素溶液)を洗い流すこともできる。なお、機能水生成ユニットが通水路を塩素発生用電極で挟みこんだタイプものである場合は、ステップS132で機能水生成のための塩素発生用電極WP1−17(図9参照)への通電制御を実行し、続くステップS133で塩素発生用電極への通電停止を実行すればよい。
このノズル前洗浄ルーチンにおけるステップS132、133の実行時に、お尻用可動体NH1−9、ビデ用可動体NH1−11についての総ての電磁コイルを同時に継続励磁させることもできる。こうすれば、磁力生成体NH1−26にお尻用可動体NH1−9およびビデ用可動体NH1−11が吸着し、両可動体下端と磁力生成体NH1―26との空隙が塞がれるため、機能水飛散による磁気駆動体NH1―18、並びにコイル鉄心NH1―35の腐食促進を抑制することができる。
また、上記のステップS133の実行時に、お尻用可動体NH1−9についての前方側の電磁コイルNH1−32aのみを継続励磁させることもできる。こうすれば、お尻用可動体(お尻吐水孔)がビデ用可動体NH1−11の側に傾いた状態で洗浄水を一点に集中して吐水できる。よって、お尻吐水孔からの吐水でありながらその前方のやわらか吐水孔やビデ吐水孔およびその周辺に確実に跳ね返り洗浄水をかけることができる。このため、各吐水孔とその周辺を確実に洗浄できる。しかも、ビデ洗浄という目的から使用者に清潔感を求められるビデ吐水孔とその周辺を、高い洗浄能力で洗浄でき、清潔感を高めることができる。
なお、上記のノズル前洗浄時の洗浄水吐水を、お尻用可動体NH1−9のやわらか吐水孔NH1−8やビデ用可動体NH1−11のビデ吐水孔NH1−10から行うようにしてもよい。この際、やわらか吐水孔NH1−8から洗浄水吐水を行う場合には、前方側の電磁コイルNH1−32aの励磁と、後方側の二つの電磁コイルNH1−32b、32cの同時励磁とを繰り返し、お尻用可動体(やわらか吐水孔)を前後方向に揺動させながら洗浄水を吐水するようにしてもよい。こうすれば、やわらか吐水孔前後の各吐水孔および周辺に跳ね返り洗浄水を確実にかけてこれらを確実に洗浄できる。ビデ吐水孔NH1−10でノズル前洗浄時の洗浄水吐水を行う場合は、お尻吐水孔と同様である。
更に、上記のステップS133の実行時に、お尻用可動体NH1−9を所定の吐水孔振れ角αで擬似揺動回転させることもできる。つまり、当該吐水孔振れ角αを定めるデューティ比Dtと各電磁コイルの励磁周期Tcとに基づいて、各電磁コイルを順次励磁するパルス信号を出力する(図21参照)。これにより、お尻用可動体NH1−9は、吐水孔振れ角α並びに励磁周波数f(=1/Tc)で擬似揺動回転し、お尻吐水孔NH1−7もこれに伴い揺動回転する。よって、図27(b)に示すように、お尻吐水孔NH1−7からは、図22および図23で示した擬似円錐状吐水形態で洗浄水が吐水される。こうすれば、チャンバNS1−14における洗浄水の吐水範囲が広がるので、お尻吐水孔のみならずやわらか吐水孔、ビデ吐水孔とこれらの周辺に跳ね返り洗浄水を確実にかけて確実に洗浄できる。なお、この際の洗浄水吐水対象は、チャンバであり人体表皮ではないので、励磁周波数f(=1/Tc)を上記の不感帯周波数とする必要はなく、適宜定めればよい。
このステップS133の処理を所定時間、例えば約1秒間継続した後は、流調ポンプの停止制御(流量ゼロ)と電磁弁の閉弁制御を順次行い(ステップS134−135)、図25のステップS140に移行する。
上記したノズル前洗浄に続いては、ノズル駆動モータNS1−4を正転駆動制御して、洗浄ノズルWN1−1を、洗浄ボタン(お尻、やわらか、ビデ)に応じた洗浄位置に本体部内の待機位置HPから進出させる(ステップS140;図7参照)。なお、洗浄ノズルWN1−1は、お尻とやわらかの洗浄ボタンであればお尻洗浄位置AWPに、ビデ洗浄ボタンではビデ洗浄位置VWPに進出する。
こうして洗浄位置への洗浄ノズルの進出が完了すると、洗浄ボタン(お尻、やわらか、ビデ)に応じた以下の本洗浄動作を実行し(ステップS150)、本ルーチンを終了する。なお、この本洗浄動作は、後述の動作停止ルーチンにて停止される。
この本洗浄動作では洗浄ボタンによって用いる可動体が異なるので、以下の説明に際しては、お尻洗浄を例にとって説明し、やわらか洗浄とビデ洗浄については、異なる点についての説明に止めることとする。
図28のフローチャートに示すように、本洗浄ルーチンでは、お尻洗浄位置AWPまでのノズル進出の間に一旦停止した洗浄水給水を開始すべく、電磁弁WP1−10を開弁制御する(ステップS151)。次いで、切換弁WP1−15をお尻洗浄用流路に切換制御すると共に、流調ポンプWP1−14を予め定められた弱吐水流量(例えば流量レベル1)となるように駆動する(ステップS152)。これにより、ノズルヘッドのお尻吐水孔NH1−7からお尻に向けて上記の弱吐水流量の洗浄水が吐水される。なお、やわらか洗浄とビデ洗浄の場合のステップS152における処理は、切換弁による流路切換がやわらか洗浄用流路かビデ洗浄用流路となる他は、上記の通りである。
このように当初吐水する際の弱吐水流量は、次のように定めた。今、流調ポンプによる調整可能範囲(例えば500cc/min)において、流量を他段階、例えばレベル1〜7に各レベルに調整可能であるとする。上記のステップS152では、お尻用可動体NH1−9が未可動(未揺動回転)の状態での洗浄水吐水となる。この洗浄水吐水は、揺動回転による上記した励磁周波数fでの吐水が起きないことから一点集中の吐水形態となると共に、お尻吐水孔NH1−7が小径であることからその吐水速度も大きい。このため、ステップS152での弱吐水流量を、例えば上記範囲の最低レベル1の流量とすれば、速度が大きく一点集中の吐水であっても、使用者に特段の違和感や不快感を与えないで済む。なお、このステップS152による洗浄水吐水は、本洗浄開始当初の僅かな期間(約0.5秒以下)にしか過ぎない。このことからも、使用者に特段の違和感や不快感を与えないで済む。以下では当初吐水する弱吐水流量を流量レベル1とした場合を述べる。
上記のステップS142による弱吐水流量(流量レベル1)での洗浄水吐水(図29参照)に続いては、お尻用可動体NH1−9を上記した擬似揺動回転するに際しての慣らし運転や揺動異常検知のために、このお尻用可動体NH1−9を初期駆動する(ステップS143)。なお、揺動異常検知については後に詳述する。
この初期駆動処理では、まず、吐水孔振れ角αを定めるデューティ比Dtを、吐水孔振れ角αが可動体の慣らし運転や揺動異常検知が可能な初期値α0となるような初期デューティ比Dt0とする。この初期デューティ比Dt0は、バックアップRAMに記憶されているので、その値を読み込むことで設定される。次いで、この初期デューティ比Dt0と各電磁コイルの励磁周期Tcとに基づいて、各電磁コイルを順次励磁するパルス信号を出力する(図21参照)。これにより、お尻用可動体NH1−9は、吐水孔振れ角α0並びに励磁周波数f(=1/Tc)で擬似揺動回転し、お尻吐水孔NH1−7もこれに伴い揺動回転する。よって、図29に示すように、ステップS142で設定した弱吐水流量(流量レベル1)の洗浄水が、図22および図23で示した擬似円錐状吐水形態を採って吐水される。なお、この初期駆動にあっても、次のステップの本洗浄駆動前の僅かな期間(約0.5秒以下)にしか過ぎないので、水量不足(弱吐水流量:流量レベル1)に伴う特段の違和感や不快感を使用者に与えないで済む。
この初期駆動処理における吐水孔振れ角α0は、揺動異常検知等が可能であればよく、この際の吐水流量も弱吐水流量(流量レベル1)であることから、不用意に大きくする必要がない。よって、本実施例で調整可能な吐水孔振れ角αの範囲のうちの低い値(例えば、αmaxの約10%の値や最低吐水孔振れ角αmin)とした。また、励磁周波数f(=1/Tc)にあっては、上記の不感帯周波数の所定の値とした。以下では当初吐水する吐水振れ角α0をαminとした場合を述べる。
次いで、上記の初期駆動処理に続いては、可動体の本洗浄駆動を行う(ステップS154)。この本洗浄駆動処理は、お尻用可動体NH1−9を介して実用範囲でお尻吐水孔NH1−7を揺動回転させて洗浄水吐水を行い、図22および図23に示した擬似円錐状吐水形態で実際に局部洗浄を行うためのものである。この本洗浄駆動処理では、まず、吐水孔振れ角αを定めるデューティ比Dtを、調整可能な吐水孔振れ角αの所定値に対応した適正デューティ比Dt1に設定変更する。この適正デューティ比Dt1は、バックアップRAMに記憶されているので、その値を読み込むことで設定される。この適正デューティ比Dt1は、本洗浄駆動処理による実際の局部洗浄に当たっての最初のデューティ比Dtであることから、本実施例で調整可能な吐水孔振れ角αの範囲のうちの所定値(例えば中間値αmid)に対応した値とした(図29参照)。以下では本洗浄開始時の所定吐水振れ角αをαmidとした場合を述べる。
こうして読み込まれた適正デューティ比Dt1は、後述するスポット・ワイド洗浄ルーチンでの更新・設定に対処するため、RAMに書き込み記憶される。そして、スポット・ワイド洗浄ルーチンでデューティ比Dtが更新・設定されなければ、適正デューティ比Dt1はRAMに記憶されたままであり、スポット・ワイド洗浄ルーチンでデューティ比Dtが新たに更新・設定されれば、RAMの適正デューティ比Dt1はこの新たな更新・設定値に書き換えられる。よって、洗浄継続中におけるデューティ比Dtの更新・設定後は、書き換え後のデューティ比Dtに基づいて可動体並びにお尻吐水孔が揺動回転される。
また、このように書き換え済みのデューティ比Dtや、書き換えがなされずに記憶保持された適正デューティ比Dt1は、使用者の便座からの立上がりに伴う着座センサのOFF信号により、リセットされる。これにより、使用者が着座中に洗浄動作を繰り返した場合には、2回目以降のステップS154の本洗浄駆動処理において、更新・設定済みのデューティ比Dtを上記の適正デューティ比Dt1に替えて用いることができる。よって、繰り返し使用の際は、デューティ比Dt(即ち、吐水孔振れ角α)が前回と同じであるため、繰り返し使用時の違和感をなくすことができる。また、使用者が便座から離れた後に再度実施された洗浄動作では、上記した通り適正デューティ比Dt1が用いられる。
このようにして適正デューティ比Dt1が設定されると、この適正デューティ比Dt1と各電磁コイルの励磁周期Tcとに基づいて、各電磁コイルを順次励磁する新たなパルス信号を生成して出力する(図21参照)。これにより、弱吐水流量(流量レベル1)の洗浄水給水下で、お尻用可動体NH1−9は、吐水孔振れ角αmid並びに励磁周波数f(=1/Tc)で擬似揺動回転し、お尻吐水孔NH1−7もこれに伴い揺動回転する。
そして、このパルス信号出力に引き続き、流調ポンプWP1−14を図29に示す調整可能範囲の適正吐水流量(例えば流量レベル4)となるように駆動する(ステップS155)。この適正吐水流量は、上記の適正デューティ比Dt1と同様に、設定・記憶される。以下では本洗浄開始時の適正吐水流量を流量レベル4とした場合を述べる。
こうしたパルス信号出力と適正吐水流量の給水により、洗浄開始時には、適正吐水流量(流量レベル4)の洗浄水が、適正な状態(吐水孔振れ角αmid、励磁周波数f(=1/Tc))で揺動回転するお尻吐水孔NH1−7から吐水される。その後に使用者が水勢変更やスポット・ワイドボタンによる吐水孔振れ角α(洗浄面積)の変更を行えば、変更後の水勢の洗浄水が変更後の吐水孔振れ角αで揺動回転するお尻吐水孔NH1−7から吐水される。この際の洗浄水は、図22および図23で示した擬似円錐状吐水形態を採って人体局部に向けて吐水され、この吐水をもたらす励磁周波数fは上記の不感帯周波数に含まれる。従って、使用者には、洗浄水の連続的な洗浄感を与えて違和感や不快感を与えることがないという従来にない優れた効果を奏することができる。また、既述したように、洗浄水を励磁周期Tcで揺動吐水させることで、節水の実効性を高めることができる。
更に、節水の実効性向上により洗浄水の使用流量を低減でき、場合によっては従来の半分程度の流量にできる。よって、熱交換ユニットTH1−1のタンク容量の低減を図ることができる。加えて、小流量並びに小容量のタンク内でのヒータによる洗浄水温水化を図ればよいことから、ヒータTH1−2の省力化や小型化をより一層推進することができる。
また、洗浄駆動処理においてお尻用可動体NH1−9を擬似揺動回転させるに当たり、その直前の初期駆動処理で予め弱吐水流量(流量レベル1)で洗浄水を給水するようにした。よって、可動体の擬似揺動回転は、弱吐水流量(流量レベル1)の給水洗浄水の圧力を受けた状態で開始される。このため、無負荷状態での可動体の擬似揺動回転を招かないので、不用意な力を、ゴムやエラストマー等の弾性材のフランジ部NH1−20にかけることがない。この結果、フランジ部の不用意な損傷を回避できると共に、可動体を当初から適正に擬似揺動回転させることができ、好ましい。
また、図29に示すように、吐水孔振れ角αが初期値α0から中間値αmidに漸増するようデューティ比Dtを初期設定値Dt0から適正値Dt1に変更設定すると共に、吐水流量が初期値(流量レベル1)から適正吐水流量(流量レベル4)に漸増するよう吐水流量を変更設定する。よって、以下の利点がある。まず第1に、洗浄水吐水を最初に受ける洗浄開始当初において、意図しない多流量の洗浄水を意図しない広範な洗浄面積で受けることがないので、違和感を回避できる。また、大きな吐水孔振れ角αで可動体を急激に擬似揺動回転させることがないので、可動体の支持部(フランジ繋ぎ部)やコイルに過不可をかけることがなく、ステップS153の可動体初期駆動と相俟って、慣らし運転による不用意な損傷回避を確実に図ることができる。
やわらか洗浄の場合のステップS153〜154における処理はお尻洗浄と変わるものではない。ビデ洗浄の場合は可動体がビデ用可動体NH1−11となる他は、上記の通りの機器制御を行うが、ステップS154における適正デューティ比Dt1をお尻洗浄と異なるものとできる。つまり、ビデ洗浄の際は、その適正デューティ比Dt1を、お尻洗浄の際の吐水孔振れ角α(=αmid)を定める適正デューティ比Dt1より大きくし、ビデ洗浄の際の吐水孔振れ角αをお尻洗浄の吐水孔振れ角α(=αmid)より大きくした。これにより、お尻洗浄時とビデ洗浄時で、ステップS154−155による洗浄水吐水の洗浄面積に広狭の差を持たせることができる。具体的には、お尻洗浄時の洗浄面積を図22に示す洗浄面積BSとし、ビデ洗浄時の洗浄面積をこれより広い洗浄面積ASとできる。これにより、お尻・ビデのそれぞれの洗浄時において、上記した節水の実効性を共に確保しつつ、ビデ洗浄時には、広い洗浄面積への洗浄水吐水により、たっぷりな洗浄水で局部洗浄を受ける充足感を与えることができる。
なお、適正デューティ比Dt1や適正吐水流量(流量レベル4)での上記したステップS154−155の実行後は、水勢強弱設定ボタンSWhu、SWhdやスポット・ワイドの各設定ボタン(図2参照)の操作に応じて、吐水流量(流量レベル)や洗浄面積(吐水孔振れ角α、デューティ比Dt)が種々変更される。そして、この変更された流量・洗浄面積(吐水孔振れ角α)で、上記の擬似円錐状吐水形態の洗浄水吐水が実施される(図29参照)。なお、こうして設定された吐水流量(流量レベル)やデューティ比Dtは、既述したように、RAMに記憶され着座センサのOFF信号を経てリセットされる。
G1/動作停止ルーチン;
次に、本実施例の局部洗浄装置が実行する動作停止ルーチンについて説明する。図30は、この動作停止ルーチンを示すフローチャートである。
図30のフローチャートに示す動作停止ルーチンは、上記した洗浄・乾燥動作ルーチンにより行われた洗浄動作や乾燥動作を停止させるためのものであることから、次のタイミングで割込実行される。第1の割込タイミングは、本局部洗浄装置の種々の動作を停止させる停止ボタンSWaの操作時である。第2の割込タイミングは、使用者が便座から離れればその後の洗浄・乾燥の動作は不要であるので、使用者が便座から離れたことと等価な着座センサオンからオフへの切り替わり時である。第3の割込タイミングは、洗浄動作から乾燥動作への或いは乾燥動作から洗浄動作への動作切り替わり時であり、洗浄動作中の乾燥ボタン操作時と、乾燥動作中の洗浄ボタン操作時である。これらの割込タイミングで動作停止ルーチンが実行されると、図30に示すように、まず、今の装置動作状況が洗浄動作中であるか乾燥動作中であるかを判断する(ステップS160)。ここで、乾燥動作中であると判断した場合は、乾燥部への通電を停止して(ステップS162)、本ルーチンを終了する。なお、装置動作状況は、本ルーチン開始前の洗浄或いは乾燥ボタンの操作状況に基づいて判断される。
その一方、洗浄動作中であると判断した場合は、流調ポンプWP1−14を流量ゼロに駆動制御し(ステップS164)、その後、電磁弁WP1−10を閉弁制御する(ステップS165)。これにより、洗浄水の給水が絶たれるので、それまで行われていた洗浄水吐水が停止する。なお、この電磁弁閉弁と共に、切換弁WP1−15を原点位置(例えば、お尻用流路切換位置)に復帰制御することもできる。
上記の洗浄水吐水の停止に続いては、洗浄水吐水を擬似円錐状吐水形態(図22、図23参照)とするためのパルス信号(図21参照)の出力を停止し(ステップS166)、可動体を停止させる。このように、吐水の停止後に揺動回転を停止するので、洗浄動作停止時において、可動体が停止した状態で人体局部に向けて洗浄水を吐水することがない。よって、図27(a)に示したような一点集中の洗浄水を局部に当てないので、違和感や不快感を与えることがない。
洗浄水吐水が停止すると可動体は停止するが、それ以外にもタイマーに基づいて可動体を停止するなどの制御を加えてもよい。洗浄に同期した、あるいは洗浄とは独立したタイマーを設けることで、可動体や各コイルの安全動作など行うこともできる。
こうした吐水停止・揺動停止に続いては、ノズル駆動モータNS1−4を逆転駆動制御して、洗浄ノズルWN1−1を、各洗浄位置から本体部内の待機位置HPに後退復帰させる(ステップS168;図7参照)。待機位置HPへのノズル復帰後は、それまで局部洗浄に用いられていた各吐水孔とその周辺、延いてはノズルヘッドを洗浄すべく、ノズル後洗浄を実行する(ステップS169)。このノズル後洗浄は、既述したノズル前洗浄と同じ処理、即ち、機能水による洗浄、吐水孔から吐水した洗浄水の跳ね返り水での洗浄を行う。なお、ノズル前洗浄とノズル後洗浄を、その処理内容において異なるようにすることもできる。例えば、ノズル前洗浄では、これから局部洗浄を行うので、局部洗浄直前においてノズルヘッドを機能水吐水により殺菌洗浄して、使用者にノズルヘッドの衛生感・清浄感を与えるようにし、ノズル後洗浄では、機能水吐水を省略してもよい。ノズル前洗浄とノズル後洗浄をこの逆としてもよい。ノズルヘッドへの菌付着直後に殺菌洗浄すれば殺菌効果が高まるので、菌付着が起き得る洗浄動作後のノズル後洗浄では機能水吐水を行い、ノズル前洗浄ではこの機能水吐水を省略することもできる。また、この両洗浄時において、図27(a)に示す一点集中吐水と図27(b)に示す円錐状吐水とを併用することもできる。ノズル前洗浄では一点集中吐水を行い、ノズル後洗浄では円錐状吐水を行うようにすることもできる。また、ノズル前洗浄とノズル後洗浄をこの逆とすることもできる。
H1/ムーブ洗浄ルーチン;
次に、本実施例の局部洗浄装置が上記した局部洗浄に付随して実行するムーブ洗浄ルーチンについて説明する。図31は、このムーブ洗浄ルーチンを示すフローチャート、図32は、ムーブ洗浄の様子を説明するための説明図である。
図31のフローチャートに示すムーブ洗浄ルーチンは、洗浄ノズルWN1−1を前後に往復動させながら洗浄水を吐水して広範囲な洗浄感を与えるためのものである。そして、このムーブ洗浄ルーチンは、お尻・ビデの各局部洗浄の実行中において、ムーブ設定ボタンSWfa、SWfv(図2参照)の操作に伴い割込実行される。
図31に示すように、上記ボタンの操作を経てこのムーブ洗浄ルーチンが実行されると、ノズル駆動モータNS1−4を正逆回転駆動制御して、お尻・ビデの各洗浄位置をセンタ位置として洗浄ノズルWN1−1を前後に往復動させる(ステップS170)。そして、このノズル前後往復動を、ムーブ設定ボタンが再度操作されてムーブ洗浄切りとされるまで継続する(ステップS172)。このようにしてノズルが前後往復動している間にも、先に説明した本洗浄動作(ステップS140)が行われている。よって、ノズル往復動と擬似円錐状吐水形態(図22、図23参照)の洗浄水吐水との同時実行により、図32に示すように、擬似円錐状吐水形態での洗浄水吐水がノズル移動に伴って前後に移動する。このため、ノズル前後往復範囲に亘って擬似円錐状吐水形態の洗浄水吐水が連なったようにして、局部のムーブ洗浄が行われる。この結果、極めて広範囲に亘り局部が洗浄されているという新たな洗浄感を創出することができ、使用者にこの新たな洗浄感を与えることができる。
ステップS172でムーブ洗浄切りと判断した場合には、ノズル駆動モータNS1−4を回転駆動制御して、洗浄ノズルWN1−1をお尻又はビデの洗浄位置に復帰させ(ステップS174)、本ルーチンを終了する。なお、停止ボタンが操作された場合には、ステップS174の処理に優先して、図30の動作停止ルーチンが実行され、給水停止・ノズルの待機位置復帰が行われる。
I1/スポット・ワイド洗浄ルーチン;
次に、本実施例の局部洗浄装置が上記した局部洗浄に付随して実行するスポット・ワイド洗浄ルーチンについて説明する。図33は、このスポット・ワイド洗浄ルーチンを示すフローチャート、図34は、スポット・ワイド洗浄の様子を説明するための説明図である。
図33のフローチャートに示すスポット・ワイド洗浄ルーチンは、人体局部の洗浄面積に対する使用者の要求に洗浄水吐水の洗浄面積を適合させて、使用者に洗浄充足感や刺激感を与えるものである。そして、このスポット・ワイド洗浄ルーチンは、お尻・ビデの各局部洗浄の実行中において、スポット設定ボタンSWua、SWuvやワイド設定ボタンSWva、SWvv(図2参照)の操作に伴い割込実行される。
図33に示すように、上記各ボタンの操作を経てこのスポット・ワイド洗浄ルーチンが実行されると、ボタン操作時現在のデューティ比Dtを読み込む(ステップS176)。吐水孔振れ角αと擬似円錐状吐水形態の洗浄水吐水による洗浄面積(図22参照)は既述したようにデューティ比Dtで規定される。よって、現在のデューティ比Dtの読み込みにより、現在の吐水孔振れ角α、即ち洗浄面積が判る。なお、デューティ比Dtは、パルス信号出力の際にRAMに記憶されるので、その値を読み込めばよい。
本実施例は、既述したようにデューティ比制御(図21参照)を通して吐水孔振れ角α(洗浄面積)を種々設定可能である。しかし、以下の説明に当たっては便宜上、スポット・ワイドのボタン操作により、デューティ比Dtの実用可能設定範囲(Dtmin〜Dtmax;αmin〜αmax:図29参照)のうちの大中小の3段階のデューティ比Dt(Dtmin<DtS<DtM<DtL<Dtmax)に設定することとする。つまり、この3段階のデューティ比Dtの設定により、吐水孔振れ角α(洗浄面積)を3段階に増減する。なお、お尻洗浄時の洗浄面積をSMAと表記し、ビデ洗浄時の洗浄面積をSMVと表記することとする。
上記の現在のデューティ比Dtの読込に続いては、操作されたボタン種別(スポット又はワイド)に応じてデューティ比Dtを段階的に増減し(ステップS178)、本ルーチンを終了する。以下、このデューティ比Dtの増減による洗浄面積の変化の様子を具体的に説明する。
今、お尻洗浄時にワイド設定ボタンSWvaが操作されたとする。このボタン操作により、ステップS176にて現在のデューティ比Dtが読み込まれ、その結果がデューティ比DtSであったとする。すると、続くステップS178では、この現在のデューティ比DtSはデューティ比DtMとされる。よって、図34に示すように、デューティ比DtSに基づくボタン操作前の洗浄面積SMASは、デューティ比DtMに対応する洗浄面積SMAMとなり、洗浄面積が広がる。更にワイド設定ボタンSWvaが操作されれば、デューティ比DtMはデューティ比DtLとされ、洗浄面積は、洗浄面積SMAMから洗浄面積SMALに広がる。つまり、ワイド設定ボタンSWvaが操作されるごとに、洗浄面積は、洗浄面積SMAS→洗浄面積SMAM→洗浄面積SMALというように拡張推移する。スポット設定ボタンSWuaが操作された場合はこの逆であり、当該ボタンの操作の都度に、洗浄面積は、洗浄面積SMAL→洗浄面積SMAM→洗浄面積SMASというように縮小推移する。なお、デューティ比DtS(洗浄面積SMAS)の時にスポット設定ボタンが操作されたり、デューティ比DtL(洗浄面積SMAL)の時にワイド設定ボタンが操作されたりした場合は、デューティ比Dt並びに洗浄面積は維持されるようになっている。
ビデ洗浄の場合も同様であり、ワイド設定ボタンSWvvの操作の都度に、洗浄面積は、洗浄面積SMVS→洗浄面積SMVM→洗浄面積SMVLというように拡張推移する。また、スポット設定ボタンSWuvの操作の都度に、洗浄面積は、洗浄面積SMVL→洗浄面積SMVM→洗浄面積SMVSというように縮小推移する。
従って、使用者は、自身の意図に従ってスポット・ワイドの各設定ボタンを操作して、局部洗浄時の洗浄面積を随意に拡張・収縮して、吐水洗浄水による洗浄範囲(洗浄面積)を自身の意に叶ったものとできる。よって、使用者に洗浄充足感を与えることができる。また、洗浄面積を拡張させれば、使用者は、広範囲に亘る洗浄水の吐水を受けることから、柔らか感を得ることができる。その反対に、洗浄面積を縮小されれば、狭い範囲への洗浄水吐水により、使用者は刺激感を得ることができる。このため、本実施例によれば、多様な洗浄感を創出できる。
しかも、このような洗浄充足感や多様な洗浄感を、洗浄面積の広狭制御、即ちデューティ比制御で得ることができ、特段の流量調整制御を併用する必要がない。よって、簡単な制御で洗浄充足感や多様な洗浄感を創出でき、好ましい。また、流量調整機器(例えば、流調ポンプや流調弁)を駆動する必要がないので、これら機器の駆動に伴う振動や作動音を抑制でき好ましい。しかも、流量の急激な調整も必要ないことから、水撃を有効に回避できる。
上記した洗浄面積変化をもたらすデューティ比Dt制御と流量調整制御を同時に行うこともできる。例えば、デューティ比Dtの低減制御時には、使用者は刺激感を欲しているとして洗浄水流量を増大制御する。その反対に、デューティ比Dtの増大制御時には、柔らか感を欲しているとして洗浄水流量を減少制御する。こうすれば、洗浄感をより一層多様化することができる。
また、本実施例では、お尻洗浄とビデ洗浄時とで、図34に示すように洗浄面積(SMA、SMV)を異なるものとした。よって、お尻洗浄・ビデ洗浄のそれぞれに適合した洗浄充足感や洗浄感(柔らか感、刺激感)を与えることができる。
図33に示すスポット・ワイド洗浄では、スポット・ワイドの各設定ボタンで設定されたデューティ比Dtは、上記した書き換え済みのデューティ比Dtである。よって、このデューティ比Dtは、使用者の便座からの立上がりに伴う着座センサのOFF信号により、リセットされる。これにより、使用者が着座の間において洗浄動作を繰り返した場合、2回目以降の洗浄動作時にあっては、ステップS144の本洗浄駆動処理において、スポット・ワイドの各設定ボタンで設定済みのデューティ比Dtで洗浄水が吐水される。よって、繰り返し使用の際は、前回の洗浄時にスポット・ワイドの各設定ボタンで設定したデューティ比Dt(即ち、洗浄面積)で局部洗浄を行うことができるため、繰り返し使用時の違和感をなくすことができる。なお、本実施例においては、吐水孔振れ角α(洗浄面積)を3段階に増減する構成で説明したが、2段階に増減する構成でも良いし、4段階以上の多段階に増減する構成でも良い。
J1/マッサージ洗浄ルーチン;
次に、本実施例の局部洗浄装置が上記した局部洗浄に付随して実行するマッサージ洗浄ルーチンについて説明する。図35は、このマッサージ洗浄ルーチンを示すフローチャート、図36は、マッサージ洗浄の様子を説明するための説明図、図37は、マッサージ洗浄で得られる効果を模式的に説明するための説明図である。
図35のフローチャートに示すマッサージ洗浄ルーチンは、洗浄面積をお尻洗浄期間に亘って規則的に変化させて排便感を促すためのものである。そして、このマッサージ洗浄ルーチンは、お尻洗浄の実行中においてマッサージ設定ボタンSWea(図2参照)の操作に伴い割込実行される。
図35に示すように、マッサージ設定ボタンの操作を経てこのマッサージ洗浄ルーチンが実行されると、ボタン操作時現在のデューティ比Dtを読み込み(ステップS180)、次いで、デューティ比Dtを上記した3段階のデューティ比(DtS、DtM、DtL)に所定のマッサージ周期TMで増減させる(ステップS182)。そして、このデューティ比Dtの周期的な増減を、マッサージ設定ボタンが再度操作されてマッサージ洗浄切りとされるまで継続する(ステップS184)。一方、マッサージ洗浄切りとされれば、マッサージ洗浄実施前の状態に戻すべく、ステップS180で読み込んだデューティ比Dtを設定し(ステップS186)、本ルーチンを終了する。なお、停止ボタンが操作された場合には、これら処理に優先して、図30の動作停止ルーチンが実行され、給水停止・ノズルの待機位置復帰が行われる。
このようにしてデューティ比Dtが周期的に増減される間は、図36に示すように、デューティ比DtはDtS→DtM→DtL→DtS→DtM・・・のように一定のマッサージ周期TM(図には添え字1、2、3・・・を付けて表す)で推移する。よって、このデューティ比推移に伴って、洗浄面積もSMAS→SMAM→SMAL→SMAS→MASM・・・のように一定のマッサージ周期TMで推移する。この場合、デューティ比Dt並びに洗浄面積が変更される上記のマッサージ周期TMは、この周期で定まる周波数ftm(=1/TM)が人体表皮への繰り返し刺激に対して間欠刺激として感知できる範囲の周波数(約5Hz未満)となるようにされている。これにより、上記したように洗浄面積が推移するとき、使用者は、この規則的な洗浄面積推移を明確に感知する。そして、洗浄面積の広狭により吐水洗浄水から受ける刺激感は異なるので、使用者は、このマッサージ洗浄により、強弱の刺激を周期的に受けることになり、排便感が促される。
なお、各デューティ比Dtにおける電磁コイルの励磁周期Tcは、その励磁周波数f(=1/Tc)が既述した不感帯周波数(約5Hz以上;約10〜60Hz)となるようにされている。よって、それぞれの洗浄面積での洗浄期間(マッサージ周期TM)において、使用者は、既述したとおり連続的な洗浄水吐水感を受ける。
このように、本実施例のマッサージ洗浄では、刺激感の強弱に関与する洗浄面積を、デューティ比の周期的な増減制御を通して周期的に変更することで排便感を促進でき、特段の流量調整制御を併用する必要がない。よって、簡単な制御で排便感を与えることができ、好ましい。また、流量調整機器(例えば、流調ポンプや流調弁)を駆動する必要がないので、これら機器の駆動に伴う振動や作動音並びに水撃を抑制でき好ましい。更に、流量調整機器の耐久性問題、および流量調整機器設置に伴う局部洗浄装置全体の大型化といった不具合が生じない。
その一方、マッサージ洗浄のための上記のデューティ比Dt増減制御と流量調整制御を同時に行うこともできる。例えば、デューティ比Dtの低減制御時には、より刺激を高めるために洗浄水流量を増大制御し、デューティ比Dtの増大制御時には刺激を弱くするために洗浄水流量を減少制御する。こうすれば、刺激感の強弱を増幅でき、効果的に排便感を促すことができる。更に、洗浄水の流速、揺動回転数、温度などの調整制御を、デューティ比Dt増減制御と連動・同期させれば、より効果的に排便感を促すことができる。
上記したマッサージ洗浄において、デューティ比Dt、延いては洗浄面積の増減変更周期(マッサージ周期TM)を一定とした。しかし、この周期で定まる周波数f(=1/TM)が、人体表皮への繰り返し刺激に対して間欠刺激として感知できる範囲の周波数(約5Hz未満)の範囲内であれば、上記の増減変更周期(マッサージ周期TM)をデューティ比Dtの増減変更の都度に変更することもできる。例えば、図36において、デューティ比DtSのマッサージ期間(マッサージ周期TM1)と、デューティ比DtMのマッサージ期間(マッサージ周期TM2)と、デューティ比DtLのマッサージ期間(マッサージ周期TM3)をそれぞれ異なるものとする。こうすれば、それぞれの洗浄面積(SMAS、SMAM、SMAL)に伴った刺激の認知時間を変化させるので、刺激感の受け方が多様化し、より効果的に排便感を促すことができる。特に、洗浄面積SMASの時間配分を長くすると、浣腸効果により排便感を促すことができる。なぜならば、洗浄面積SMALで肛門が弛緩されたところに、洗浄面積SMASで長時間多量の水が肛門内に注入されるためである。また、音楽や光、臭い(アロマテラピー)などの五感と同期させることにより、リラックスできる空間を提供でき、ひいては排便感をさらに促すことができる。
また、このマッサージ洗浄を、排便感促進のためではなく、排便後の局部洗浄のために行うと、以下の利点がある。まず第1に、洗浄面積の変更に伴った強弱の刺激感を受けるので、局部洗浄時の単調感が解消されたり覚醒されたりする。第2に、図37に示すように、デューティ比Dtが大きなDtLからDtSに推移する際に、模式吐水水柱RTは、図中白抜き矢印のように中央に向けて移動する。よって、局部周辺の汚物OBは、この模式吐水水柱RTにより効果的に剥離される。しかも、汚物OBは中央側に寄せ集められ、模式吐水水柱RTを呈する吐水洗浄水の跳ね返り水RTHが集まることで、この寄せ集められた汚物OBは確実に除去される。このため、本実施例のマッサージ洗浄によれば、高い洗浄能力で局部洗浄を行うことができる。なお、本実施例においては、洗浄面積を3段階に増減する構成で説明したが、2段階に増減する構成でも良いし、4段階以上の多段階に増減する構成でも良い。またこれら多段階の面積違いを音楽や光、臭いなどの五感に同期させても良い。
K1/ゆらぎ洗浄ルーチン;
次に、本実施例の局部洗浄装置が上記した局部洗浄に付随して実行するゆらぎ洗浄ルーチンについて説明する。図38は、このゆらぎ洗浄ルーチンを示すフローチャート、図39は、ゆらぎ洗浄ルーチンの処理内容を説明するための説明図、図40は、ゆらぎ洗浄の様子を説明するための説明図である。
図38のフローチャートに示すゆらぎ洗浄ルーチンは、洗浄面積を不規則的に変化させて安らぎ感や心地よさなどを与えるためのものである。そして、このゆらぎ洗浄ルーチンは、お尻・ビデ洗浄の実行中においてゆらぎ設定ボタンSWta、SWtv(図2参照)の操作に伴い割込実行される。
図38に示すように、ゆらぎ設定ボタンの操作を経てこのゆらぎ洗浄ルーチンが実行されると、ゆらぎ洗浄前の洗浄状態復帰のためボタン操作時現在のデューティ比Dtを読み込む(ステップS190)。次いで、デューティ比Dtを上記した3段階のデューティ比(DtS、DtM、DtL)に所定のゆらぎ周期TYで不規則的に増減させる(ステップS192)。そして、このデューティ比Dtの不規則的な増減を、ゆらぎ設定ボタンが再度操作されてゆらぎ洗浄切りとされるまで継続する(ステップS194)。一方、ゆらぎ洗浄切りとされれば、ステップS190で読み込んだデューティ比Dtを設定し(ステップS196)、本ルーチンを終了する。これにより、ゆらぎ洗浄実施前の状態に復帰する。なお、停止ボタンが操作された場合には、上記したマッサージ洗浄の場合と同様、給水停止・ノズルの待機位置復帰が行われる。
ここで、ステップS192にてデューティ比Dtを不規則的に増減させる手法の一例について説明する。電子制御装置CT1−1は、ROMに乱数発生プログラムを有する。そして、ステップS192の実行時に、この乱数発生プログラムをゆらぎ周期TYごとにロードして乱数を発生させる。その一方、電子制御装置CT1−1は、図39に示すように、乱数とデューティ比Dtとを対応付けたデューティ比テーブルを記憶している。よって、発生させた乱数をこのデューティ比テーブルに照合してゆらぎ周期TYごとにデューティ比Dtを定め、デューティ比Dtを不規則的に増減させている。
このようにしてデューティ比Dtが不規則的に増減される間は、図40に示すように、デューティ比Dtは、例えば、DtM→DtS→DtM→DtL→DtS→DtS→DtL・・・のように一定のゆらぎ周期TY(図には添え字1、2、3・・・を付けて表す)で推移する。よって、このデューティ比推移に伴って、お尻洗浄面積は、SMAM→SMAS→SMAM→SMAL→SMAS→SMAS→SMAL・・・のように、ビデ洗浄面積は、SMVM→SMVS→SMVM→SMVL→SMVS→SMVS→SMVL・・・のように一定のゆらぎ周期TYで推移する。この場合、デューティ比Dt並びに洗浄面積が変更される上記のゆらぎ周期TYについても、このゆらぎ周期TYで定まる周波数f(=1/TY)がマッサージ周期TMの場合と同様の周波数(約5Hz未満)となるようにされている。これにより、上記したように洗浄面積が推移するとき、使用者は、この洗浄面積推移を明確に感知する。そして、洗浄面積の広狭により吐水洗浄水から受ける刺激感は異なり、洗浄面積広狭変化も不規則的であることから、使用者は、このゆらぎ洗浄により、強弱の刺激を不規則的に受けることになる。これにより、以下のような利点がある。
排便のために肛門を開いたり閉じたりする内肛門括約筋は、自立神経系による不随意筋であり、無意識下で収縮・弛緩する。上記したマッサージ洗浄では、刺激感を左右する洗浄面積が規則的に変化するため、長期に亘ってこのマッサージ洗浄が継続されると、洗浄面積が狭小変化するタイミングが脳に予想されてしまうことがある。このため、洗浄面積の狭小変化に伴う刺激変化推移も予想されることになり、交感神経優位の状態となって内肛門括約筋の収縮を招くことがある。その反面、洗浄面積が不規則的に変化するゆらぎ洗浄では、洗浄面積の狭小変化のタイミングが予想され難いので、洗浄面積の狭小変化に伴う刺激変化推移も予想されないことになる。このため、洗浄時の単調感が解消され、副交感神経優位の状態となって無意識下で内肛門括約筋の弛緩を引き起こしやすい。この結果、上記のゆらぎマッサージ洗浄によれば、より効果的に排便を促進できる。
肛門を開いたり閉じたりする筋として外肛門括約筋が存在し、この外肛門括約筋は、体性神経系による随意筋である。ところで、肛門内部には、刺激を敏感に感じる受容器があり、この受容器に吐水が届いてその刺激が感じ取られると、受容器の働きで外肛門括約筋は収縮する。洗浄水の吐水箇所(洗浄面積)が規則的に繰り返し変化する状況では、即ち上記したマッサージ洗浄では、洗浄面積が狭小変化して肛門内に洗浄水吐水が入り込み受容器に吐水が届くタイミング(吐水入り込みタイミング)を脳が予測してしまう。よって、この予測に応じて予め外肛門括約筋を収縮させて肛門を閉じてしまい、洗浄水吐水が肛門内に入り込み難くなることがある。その反面、洗浄面積が不規則的に変化するゆらぎ洗浄では、洗浄面積の狭小変化のタイミングが予想され難いので、上記の吐水入り込みタイミングを脳が予想できないことになる。このため、外肛門括約筋を収縮させていない間において狭い洗浄面積での洗浄水吐水が行われる機会が増えるので、洗浄水吐水が肛門内に入り込み易くなり、直腸内部にまで洗浄水吐水が入り込むことになる。一般に、直腸内への洗浄水等の入り込みは浣腸作用を引き起こすので、上記のゆらぎ洗浄によれば、より効果的に排便促進を図ることができる。
また、このゆらぎ洗浄を排便後の局部洗浄のために行うと、洗浄面積の変更に伴う強弱刺激の予想が困難であることから、局部洗浄時の単調感をより一層解消できる。
なお、各デューティ比Dtにおける電磁コイルの励磁周期Tcについては、上記したマッサージ洗浄と同様であり、それぞれの洗浄面積での洗浄期間(ゆらぎ周期TY)において、使用者は、既述したとおり連続的な洗浄水吐水感を受ける。
このように、本実施例では、上記のゆらぎ洗浄を行うに当たり、刺激感の強弱に関与する洗浄面積を、デューティ比の不規則的な増減制御を通して不規則的に変更するに過ぎず、その際に、特段の流量調整制御を併用する必要がない。よって、簡単な制御で上記の排便促進等を図ることができ、好ましい。また、流量調整機器(例えば、流調ポンプや流調弁)を駆動する必要がないので、これら機器の駆動に伴う振動や作動音並びに水撃を抑制でき好ましい。更に、流量調整機器の耐久性問題、および流量調整機器設置に伴う局部洗浄装置全体の大型化といった不具合が生じない。
その一方、ゆらぎ洗浄のための上記のデューティ比Dt増減制御と流量調整制御を同時に行うこともできる。例えば、発生乱数により以前より小さなデューティ比Dtを定めた時には(図40に示すゆらぎ周期TY1からTY2への推移時、TY4からTY5への推移時等)、より刺激を高めるために洗浄水流量を増大制御し、発生乱数により以前より大きなデューティ比Dtを定めた時には(図40のゆらぎ周期TY2からTY3への推移時、TY3からTY4への推移時等)には刺激を弱くするために洗浄水流量を減少制御する。こうすれば、刺激感の強弱増幅と刺激感の予測困難性により、より一層効果的に排便を促すことができる。
上記したゆらぎ洗浄において、デューティ比Dt、延いては洗浄面積の増減変更周期(ゆらぎ周期TY)を一定とした。しかし、この周期で定まる周波数f(=1/TY)が、人体表皮への繰り返し刺激に対して間欠刺激として感知できる範囲の周波数(約5Hz未満)の範囲内であれば、上記の増減変更周期(ゆらぎ周期TY)を、マッサージ洗浄の場合と同様に、デューティ比Dtの増減変更の都度に変更することもできる。こうすれば、それぞれの洗浄面積(SMAS、SMAM、SMAL)に伴った刺激の認知時間を変化させるので、刺激感の予測がより困難となる。よって、更に効果的に排便を促すことができる。
また、上記した洗浄面積の推移幅や、洗浄面積の推移タイミングを定める上記の周期TY或いは瞬間流量等の物理量のパワースペクトルが、心拍数等の人体の生体リズムや自然界のリズムと同様に、周波数の逆数に比例したものとすることもできる。こうすれば、使用者にリラックス感を与えることが可能となるため副交感神経優位となり、内肛門括約筋の弛緩を引き起こし、排便の促進効果が高まる。
以上説明したマッサージ洗浄とゆらぎ洗浄は、ムーブ洗浄と同時実行可能である。つまり、ムーブ設定ボタンSWfaとマッサージ設定ボタンSWeaが相次いで操作された場合は、ノズル前後往復動とデューティ比Dtの周期的増減が同時実行される。よって、洗浄水の吐水位置(洗浄位置)がノズル前後動範囲において変化しつつ、洗浄面積が周期的に増減変化するような洗浄形態となる。そして、使用者は、洗浄位置変化と洗浄面積の周期的変化を認知しながら局部洗浄を受ける。このため、極めて広範囲に亘り局部が洗浄されているという新たな洗浄感と周期的な強弱刺激の繰り返しとにより、排便感のより効果的な促進や局部洗浄時の単調感の解消、並びに快適感や充足感の付与を図ることができる。
また、ムーブ設定ボタンとゆらぎ設定ボタンSWta、SWtvが相次いで操作された場合には、ノズル前後往復動とデューティ比Dtの不規則的増減が同時実行される。よって、洗浄水の吐水位置(洗浄位置)がノズル前後動範囲において変化しつつ、洗浄面積が予測不能な状態で不規則的に増減変化するような洗浄形態となる。そして、使用者は、洗浄位置変化と予測不能な洗浄面積の不規則変化が起きている状況で局部洗浄を受ける。このため、極めて広範囲に亘り局部が洗浄されているという新たな洗浄感と予測不能で不規則的な強弱刺激の繰り返しとにより、排便感のより一層効果的な促進や局部洗浄時の単調感の解消、並びに快適感や充足感の付与を図ることができる。
既述したマッサージ洗浄やゆらぎ洗浄について、快適感や便意促進のために洗浄面積や洗浄強さを制御することをここでは主に触れることとするが、これに加えて洗浄水の温度を変化させてももちろん良い。
L1/揺動検知ルーチンと異常復旧ルーチン;
次に、本実施例の局部洗浄装置が行う可動体の揺動検知ルーチンと異常復旧ルーチンについて説明する。図41は、この揺動検知ルーチンを示すフローチャート、図42は、揺動検知ルーチンの処理内容を説明するための説明図である。図43は、異常復旧ルーチンを示すフローチャートである。
図41のフローチャートに示す揺動検知ルーチンは、上記したお尻・ビデ用の両可動体NH1−9、11を電磁コイルの通電励磁により揺動させる際の揺動異常、即ち通電異常を検出するためのものである。そして、この揺動検知ルーチンは、所定時間ごとに優先的に割込実行される。なお、以下の説明に当たっては、ビデ用可動体NH1−11の電磁コイルNH1−33a〜33cを例に採り説明する。
図41に示すように、この揺動検知ルーチンでは、お尻・ビデの洗浄ボタンの操作状況に基づいて洗浄動作中であるか否かを判断し(ステップS200)、否定判断すれば、揺動検知の必要がないとして一旦本ルーチンを終了する。一方、洗浄動作中であると判断すれば、揺動異常の検知の必要があるとしてステップS205以降の処理を実行する。
まず、ステップS200での肯定判断に続いて、図20に示す出力ラインNH1−37からの入力波形をスキャンし(ステップS205)、この入力波形の異常の有無を次のようにして判断する(ステップS210)。仮に、各電磁コイルNH1−33a〜33cに断線、接点不良等の異常がなければ、図21に示すように出力したコイル励磁のパルス出力の各パルスに、出力ラインNH1−37(図20参照)からの入力パルスは一対一に対応する。よって、この入力パルスは、歯欠けの無いパルス波形となる(図42(a)参照)。これに対し、断線や接点不良等の異常があれば、この異常が起きたコイルへのパルス出力に対する出力ラインからの入力パルスは欠損するため、入力パルスは、歯欠けが起きたパルス波形となる(図42(b)参照)。従って、ステップS210では、この入力パルスの波形により異常の有無が判断される。
このステップS210で異常が無いと否定判断すれば、それ以降の処理は無用であるとして一旦本ルーチンを終了する。一方、異常があると判断すれば、異常があるままでの可動体の揺動や洗浄水吐水を停止すべく、以下のステップS215以降の処理を実行する。
即ち、上記したステップS154〜155と同様の手順(流調ポンプ停止・電磁弁閉弁)に従って洗浄水を止水すると共に、コイル励磁のためのパルス信号の出力停止並びに洗浄ノズルの待機位置への強制復帰を行う(ステップS215)。次いで、入力パルス波形に基づいて異常の起きた電磁コイルを判定し、その結果をバックアップRAMに書き込み記憶する(ステップS220)。この書き込みの際には、コイル判定結果(図42(b)であれば、電磁コイルNH1−33c)と既述した洗浄動作禁止フラグFSstopへの値1のセットが行われる。こうして洗浄動作禁止フラグFSstopに値1がセットされると、この揺動検知ルーチンの実行後の洗浄・乾燥動作ルーチンにて、洗浄動作は実行されない(図25;ステップS120参照)。この場合、洗浄動作禁止フラグの状態は電源オフ後でも維持されるので、装置の電源がオフされてその後にオンされた場合であっても、洗浄動作は実行されない。つまり、装置電源のオン・オフに拘わらず、後述の異常復旧ルーチンにて洗浄動作禁止フラグFSstopに値ゼロがセットされまでは、洗浄動作を実行できないようになる。
そして、ステップS220に続いては、断線や接点不良等の異常の復旧を促すべく、その旨報知し(ステップS225)、本ルーチンを終了する。この異常報知に際しては、図1に示す袖部KS1−5の表示部KS1−6に点滅表示を行う。この異常報知に伴う点滅表示を通常の動作状況の表示と峻別するために、全点灯機器(ランプ、LED等)を一斉に点滅させるようにしてもよい。
なお、上記の揺動検知ルーチンで揺動異常が検知されると洗浄動作禁止フラグFSstopへの値1のセットを経て、その後の洗浄・乾燥動作ルーチンで洗浄動作は実行されないようにしたが、次のように構成することもできる。図25に示すステップS120で肯定判断(FSstop=1)に続いては、各電磁コイルへの通電のみを禁止した状態で、ステップS130〜150の処理を実行する。つまり、揺動異常検知時には少なくとも可動体の擬似揺動回転動作を行わないようにする。こうすれば、可動体の擬似揺動回転が禁止されたままの状態、即ち可動体がフリーの状態で洗浄水吐水による局部洗浄を実施できる。この場合、本洗浄動作(ステップS150)における洗浄水流量は、可動体の擬似揺動回転がある場合のステップS150の実行時の洗浄水流量より少なくい流量で固定して設定しておくと、集中的な吐水を受ける使用者に不用意な違和感を与えないようにできる。
次に、こうして揺動異常が起きた後の異常復旧ルーチンについて説明する。図43に示すように、この異常復旧ルーチンでは、まず、保守点検者等からの復旧完了指令の有無を判断する(ステップS300)。この判断は、以下のようにして下される。保守点検者は、上記の異常報知により異常復旧を完了させる。具体的には、図12に示す異常が起きたヘッドカバーNH1−6をノズルヘッドベースNH1−2から取り外し、外部の図示しない検査装置で正常とされたヘッドカバーを交換する。こうして部品交換が終了すると、保守点検者は、通常の装置使用時にあっては操作されることがないボタン操作、例えば、複数ボタンの同時操作や特定ボタンの長時間操作を行う。このような特別なボタン操作がない場合は、異常復旧が未了なためにそれ以降の処理は不要であるとして本ルーチンを終了する。一方、上記の特別なボタン操作がなされると、ステップS300では、異常復旧の完了指令が出されたと判断して、以降の処理を実行する。
まず、異常復旧結果をバックアップRAMに書き込み記憶する(ステップS305)。即ち、上記の揺動異常検知ルーチンで記憶したコイル判定結果をリセットすると共に、洗浄動作禁止フラグFSstopに値ゼロをセットする。これにより、本異常復旧ルーチンの実行以後では、洗浄並びに乾燥動作がボタン操作に応じて実行できるようになる。つまり、本局部洗浄装置の再使用が可能となる。
このステップS305に続いては、異常復旧完了につき、異常報知を解除して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。具体的には、表示部KS1−6を通常の動作状況の表示状態に戻す。
M1/ノズル掃除ルーチン;
次に、本実施例の局部洗浄装置が行うノズル掃除ルーチンについて説明する。図44は、このノズル掃除ルーチンを示すフローチャートである。このノズル掃除ルーチンは、本体の袖部KS1−5(図3参照)におけるノズル洗浄ボタンSWkの操作に伴い実行される。
図44のフローチャートに示すノズル掃除ルーチンが実行されると、まず、ノズル前洗浄を実行する(ステップS400)。つまり、既述したステップS120(図25、図26参照)と同様に、機能水によるノズルヘッド洗浄と、チャンバでの跳ね返り洗浄水によるノズルヘッド洗浄とを実施する。次いで、ブラシ等を用いた使用者によるノズルヘッド洗浄に備えるべく、洗浄ノズルWN1−1をお尻洗浄位置AWPに進出させ(ステップS405)、使用者によるノズル掃除終了の信号入力があるまで待機する(ステップS410)。使用者は、この間にブラシ等で実際にノズルヘッドを掃除する。そして、掃除完了後に、その使用者は、ノズル洗浄ボタンSWkを再度操作したり停止ボタンSWaを操作することで、上記のノズル掃除終了信号を入力する。或いは、ノズル洗浄ボタンSWkの操作後からの経過時間をタイマで計時し、経過時間が5分程度となるとズル掃除終了の信号が入力されるようにしてもよい。なお、ステップS405で洗浄ノズルをお尻洗浄位置に進出させてからノズル掃除終了までの間において、お尻吐水孔から僅かに洗浄水を流すようにしてもよい。そして、この際の洗浄水吐水程度は、ノズルヘッドから便器ボール部に洗浄水が垂れ落ちる程度であれば十分である。
こうしてノズル洗浄が終了すると、洗浄ノズルを本体部の待機位置に後退復帰させた後(ステップS415)、既述したステップS160(図30参照)と同様にノズル後洗浄を行い(ステップS420)、本ルーチンを終了する。
このノズル掃除ルーチンを実行することで、使用者によるブラシ等でのノズル掃除に加え、その前後に、機能水による2度のノズル掃除、チャンバでの跳ね返り洗浄水による2度のノズルヘッド掃除が行われる。よって、ノズルヘッド、延いては洗浄水の各吐水孔並びにその周囲を清潔にすることができる。
次に、上記した局部洗浄装置KS1−1の変形例について説明する。なお、同一の機能を果たす部材にあっては、上記の本実施例で用いた部材名と符号をそのまま用い、その説明については省略することとする。
A1−1/全体構成の変形;
遠隔操作装置RC1−1において、スポット設定ボタンとワイド設定ボタンをお尻洗浄とビデ洗浄のそれぞれについて設けたが、この両設定ボタンを一対としお尻洗浄とビデ洗浄で兼用するようにすることもできる。こうすれば、ボタン配設数が少なくなり、組み付け工数の低減や低コスト化といった製造上の利点がある。
B1−1/水路系構成の変形;
図45は、変形例の水路系構成を表すブロック図である。
(1)水路系において、第2洗浄水導出管路WP1−13を熱交換ユニットTH1−1の上流側に配設したが、当該管路を熱交換ユニットの下流に配設することもできる。こうすれば、熱交換ユニットに流入する洗浄水の流量が安定するので、洗浄水の定温化のためのヒータ制御が容易となり好ましい。しかも、熱交換ユニットでの温水化を経た洗浄水を、第2洗浄水導出管路から脱臭用吸気口や局部乾燥用排気口に吐水して当該吸気口や排気口を洗浄することもできる。こうすれば、吸気口や排気口の汚れを温水にてより効果的に洗い流すことができ好ましい。
(2)また、水路系において、熱交換ユニットTH1−1下流の出水側弁ユニットWP1−3は流調ポンプWP1−14と切換弁WP1−15から構成したが、当該弁ユニットを5方弁構造でなおかつ流調が可能な図示しない流調切換弁とすることもできる。こうすれば、より小型で安価な構造とすることができ、またポンプを使わないので振動、騒音の問題を解消することができる。
(3)また、水路系において、出水側弁ユニットWP1−3に流調ポンプを用いたり、或いは流調切換弁を用いることにより流調する構造としたが、図45に示す水路系構成を採ることもできる。即ち、図示するように、第2洗浄水導出管路WP1−13の途中に通水路面積を可変とすることのできるバイパス路流調弁WP1−20を配設する。よって、このバイパス路流調弁WP1−20で調整された流量と定流量弁WP1−9での設定流量との差分の流量が、出水側弁ユニットWP1−3を経てノズルから吐水される。こうすれば、ポンプを使わないので振動、騒音の問題がなく、また流調切換弁のような複雑な構造としなくても良い。
(4)熱交換ユニットTH1−1を、螺旋状のニクロム線からなるヒータを小容量のタンクに内蔵したものとしたが、次のようにすることもできる。即ち、ヒータを積層円筒セラミックヒータとすれば、漏電検知回路や過熱防止回路を焼成前生シートにペースト印刷して、各回路を焼成によりヒータ表面に形成できる。よって、外部に漏電検知・漏電保護回路が不要となると共に、バイメタル等の過熱防止機器も不要となる。そして、積層化と機器省略により、熱交換ユニットの小型化を図ることができる。また、ヒータを、高周波電流に連動した磁束変化により抵抗体に電磁誘導を起こしてこの抵抗体をジュール熱で発生させる電磁誘導加熱ヒータとすることもできる。こうすれば、タンク内でヒータを水没配置する必要がないので、漏電保護回路が不要となり、その分、小型化ができる。更に、ヒータ形状の自由度が高いので、ヒータを蛇行水路に沿った形状等とすることができ、効率よく洗浄水を温水化できる。
(5)熱交換ユニットTH1−1を、瞬間式ではなく貯湯式とすることもできる。こうすれば、所定温度の洗浄水の連続吐水時間を長くすることができる。また、タンク内洗浄水の温水化を深夜等の便器未使用時に実施でき、その際には低消費電力のヒータを用いることができる。こうすれば、局部洗浄装置全体としての最大消費電力を低減できるので、既設のトイレに局部洗浄装置を設置するような場合に、屋内配線容量不足を招いたり容量契約の変更を来すようなことが少なくなる。
(6)機能水ユニットWP1−4を、タンク内に洗浄水を貯留した状態で直流電圧を印可し、遊離塩素を生成する構造としたが、通水路を塩素発生用電極で挟みこんだ構成とし、また塩素発生用電極の表面積を広くする等して十分な遊離塩素発生能力が得られるようにした場合には、通水状態で直流電圧を印可することもできる。こうすれば、機能水を長時間連続的に吐水させることができ、洗浄ノズルをより衛生的に保つことができる。
C1−1/ノズル装置の変形;
図46は、変形例のノズル装置NS1−20を表す概略斜視図、図47は、図46における47−47線概略断面図である。
図示するように、変形例のノズル装置NS1−20は、洗浄ノズルを円弧状のノズル進退軌道NS1−12(図7参照)に沿って伝達機構NS1−5により進退させる点で上記したノズル装置NS1−1と共通するが、ノズルの案内レールに関連する構成が異なる。即ち、この変形例のノズル装置NS1−20は、ベースNS1−2の後端上面の架台NS1−3とベース前端側のノズル保持部NS1−6との間にかけて、円弧状のノズル進退軌道NS1−12と一致するよう湾曲形成された案内レール部NS1−21を有する。この案内レール部に案内される洗浄ノズルWN1−20は、図47に示すように、その後端側に、タイミングベルトNS1−10に係合・固定されるベルト把持体WN1−2と、案内レール部NS1−21のレール部左右を上下に把持する軌道把持体WN1−21とを有する。この軌道把持体は上記のノズル進退軌道と同じ曲率半径の上下の軌道把持面を備え、この軌道把持面は案内レール部に対して摺動自在とされている。つまり、洗浄ノズルWN1−20と案内レール部NS1−21は上下の位置関係を採って配設されており、この洗浄ノズルは、その後端側でのみ軌道把持体にて案内レール部と係合されている。なお、洗浄ノズルWN1−20にあっても、その筒状部はノズル進退軌道と同じ曲率半径で軸方向に沿って湾曲形成されている。
従って、この変形例のノズル装置NS1−20によっても、洗浄ノズルを円弧状のノズル進退軌道と一致して待機位置HPと洗浄位置(お尻洗浄位置AWP、ビデ洗浄位置VWP;図7参照)との間を前後に進退駆動できる。このため、この変形例のノズル装置NS1−20によっても、ズル高さの低減等の利点を上記したノズル装置NS1−1と同様に発揮することができる。また、この変形例のノズル装置では、上記した洗浄ノズルと案内レール部との位置関係から、幅方向についてコンパクト化でき、ノズル装置とその他の機器の近接配置を可能とする。
F1−1/洗浄動作の変形;
この洗浄動作の変形例では、お尻・ビデの局部洗浄を行っている間において、各電磁コイルの励磁順序を所定期間ごとに逆転する。つまり、デューティ比Dtを同じにしておきながら、電磁コイルNH1−33a→33b→33c→33a・・・の順でのコイル励磁と、電磁コイルNH1−33c→33b→33a→33c・・・の順でのコイル励磁とを繰り返す。こうすれば、吐水洗浄水の吐水方向が切り替わることから、局部周囲の表皮の皺内をもより効果的に洗浄でき好ましい。
H1−1/ムーブ洗浄の変形;
図48は、変形例のムーブ洗浄の様子を説明するための説明図である。
この変形例のムーブ洗浄では、図31に示すムーブ洗浄ルーチンのフローチャートにおけるステップS170を、ノズル駆動モータの正逆回転による洗浄ノズルの前後往復動と、ノズル位置に合わせたデューティ比Dtの可変制御とを実行する処理とする。例えば、ノズルヘッドがノズル前後動範囲のセンタ位置(洗浄位置WPc)付近にある場合は、デューティ比Dtを実用可能設定範囲の最大デューティ比Dtmaxとする。そして、ノズルヘッドがこのセンタ位置から前進端位置WPf・後退端位置WPbに離れるほど、デューティ比Dtをデューティ比Dtmaxから減少させ、前進端位置WPf・後退端位置WPbでは、実用可能設定範囲の最小デューティ比Dtminとなるようにする。こうすれば、センタ位置付近で洗浄面積が大きく前進端或いは後退端に行くほど洗浄面積が狭くなるようにして、局部周辺をムーブ洗浄できる(図48(a)参照)。よって、洗浄位置の変化に合わせて洗浄面積が増減変化する、即ち洗浄位置変化に合わせて刺激感が強弱変化するという多様な洗浄感を与えることができる。また、ノズル前後往復動範囲に亘る全体の洗浄面積形状をセンタ位置で広く前後端側で狭くできるので、この洗浄面積を洗浄を所望する洗浄対象局部の形状により適合させて、この洗浄対象局部、例えばビデ洗浄対象局部を確実に洗浄できるという利点がある。
また、ノズル位置に合わせたデューティ比Dtの可変制御に当たり、センタ位置(洗浄位置WPc)付近にある場合は、デューティ比Dtを実用可能設定範囲の中央デューティ比Dtmidとし、前進端位置WPf・後退端位置WPbではデューティ比Dtmaxとする。そして、センタ位置から各端部位置までの間では、Dtmid→Dtmin→Dtmaxのように増減変更する。こうすれば、センタ位置付近で洗浄面積が中程度、前進端・後退端位置で洗浄面積が大きく、その間は洗浄面積が増減変化するようにして、局部周辺をムーブ洗浄できる(図48(b)参照)。よって、洗浄位置変化に合わせて刺激感が強弱変化するという多様な洗浄感に加え、洗浄対象局部の前後を広い洗浄面積で念入りに洗えるという効果も得ることができる。
また、このように洗浄対象局部の前後を広い洗浄面積で洗浄できることから、洗浄ノズルのムーブ範囲を狭くしても、洗浄対象局部周囲を支障なく洗浄することができる。このため、ノズル往復回数を増やすことができ、その分、洗浄効果を高めることができる。
なお、ノズル位置に合わせたデューティ比Dtの可変制御を、上記した3段階のデューティ比(DtS、DtM、DtL)を用いて行うようにすることもできる。こうすれば、ノズル位置に合わせてデューティ比Dtを切り換えるだけでよいので、その制御が容易となり電子制御装置の演算負荷の軽減を図ることができる。
J1−1/マッサージ洗浄の変形;
このマッサージ洗浄の変形例は、既述したマッサージ洗浄ルーチン(図35参照)のステップS182におけるデューティ比Dtの周期的増減制御を次のようにする。即ち、洗浄面積増減のための図36に示すデューティ比Dtのマッサージ周期TMを、この周期で定まる周波数ftm(=1/TM)が既述した不感帯周波数(約5Hz以上;約10〜60Hz)となるようにする。こうすれば、使用者に洗浄面積推移を感知させないまま、速やかに洗浄面積を広狭変更できる。よって、図37に示す模式吐水水柱RTの中央に向けた移動と中央からの広がりとが高速で繰り返されるので、局部周辺の汚物OBの剥離効果が高まると共に、吐水洗浄水の跳ね返り水RTHによる汚物OBの寄せ集め効果も高まる。従って、この変形例のマッサージ洗浄によれば、より高い洗浄能力での局部洗浄と念入りな局部洗浄を行うことができる。この場合、このマッサージ洗浄の変形例におけるマッサージ周期TMは、各デューティ比Dtにおける電磁コイルの励磁周期Tcより大きくなるように、即ち、各周期で定まる上記の周波数ftm(=1/TM)が励磁周波数f(=1/Tc)より小さくなるように、設定されている。
なお、このマッサージ洗浄の変形例では、遠隔操作装置や補助操作部に設けた念入り洗浄等の特別な操作ボタンの操作を経て、或いは、マッサージ設定ボタンと他の操作ボタンの同時操作を経て、このマッサージ洗浄の変形例の処理を実行すればよい。
E1−1/洗浄ノズルの変形;
洗浄ノズルを、お尻用可動体NH1−9を有する第1洗浄ノズルと、ビデ用可動体NH1−11を有する第2洗浄ノズルとを別個に備え、この第1、第2洗浄ノズルを並列設置したものとすることもできる。また、お尻吐水孔NH1−7のみのお尻用可動体を有する第1洗浄ノズルと、やわらか吐水孔NH1−8のみのやわらか用可動体を有する第2洗浄ノズルと、ビデ吐水孔NH1−10のみのビデ用可動体を有する第3洗浄ノズルとを別個に備え、この第1〜第3洗浄ノズルを並列設置したものとすることもできる。更に、お尻吐水孔NH1−7のみのお尻用可動体を有する第1洗浄ノズルと、やわらか吐水孔NH1−8とビデ吐水孔NH1−10の可動体を有する第2洗浄ノズルとを別個に備え、この第1、第2洗浄ノズルを並列設置したものとすることもできる。なお、これら変形例と上記の本実施例において、やわらか洗浄用のやわらか吐水孔NH1−8を有しないものとすることもできる。
E1−2/ノズルヘッドの変形;
図49は、変形例のノズルヘッドが有する電磁コイル設置基板NH1−50の平面図、図50は、他の変形例のノズルヘッドが有する電磁コイル設置基板NH1−60の平面図である。
(1)図49に示すように、変形例の電磁コイル設置基板NH1−50は、お尻用揺動コイル群NH1−51とビデ用揺動コイル群NH1−52とを有する。お尻用揺動コイル群NH1−51は、電磁コイルNH1−32b、32cを、ビデ用揺動コイル群NH1−52は、電磁コイルNH1−33a、33cを有し、この両コイル群は、一つの電磁コイルNH1−53を共有している。この電磁コイルNH1−53は、既述した電磁コイルと同様、2本のコイル鉄心NH1−54、55を備え、一方のコイル鉄心55にコイルNH1−56を有する。そして、この電磁コイルNH1−53は、お尻用揺動コイル群ではコイル鉄心NH1−54が磁気駆動体NH1−23の磁気作用部NH1−23aに対応するよう、ビデ用揺動コイル群ではコイル鉄心NH1−55が磁気駆動体NH1−18の磁気作用部NH1−18bに対応するよう、配設固定されている。こうすれば、電磁コイルの配設数が少なくなり、組み付け工数の低減や低コスト化といった製造上の利点がある。また、上記両コイル群の近接配置が可能となり、その分、ノズルヘッドの小型化を図ることができる。
(2)図50に示すように、他の変形例の電磁コイル設置基板NH1−60は、お尻用揺動コイル群NH1−61とビデ用揺動コイル群NH1−62の両コイル群ごとに、基板に立設されたコイル鉄心NH1−63とこれに巻かれたコイルNH1−64とからなる電磁コイルNH1−65a〜65c、66a〜66cを有する。そして、この両揺動コイル群の電磁コイルNH1−65a〜65c、66a〜66cは、お尻・ビデの各可動体における磁気駆動体NH1−18、23の磁気作用部NH1−18a〜18c、23a〜23cに対向するように基板に配設固定されている。こうすれば、電磁コイルの構成部品数が少なくなり、組み付け工数の低減や低コスト化といった製造上の利点がある。また、電磁コイル自体が小さくなるので、上記両コイル群をより一層近接配置でき、ノズルヘッドをより小型化することができる。
E1−3/ノズルヘッドの別の変形;
図51は、更に別の変形例のノズルヘッドを説明するための説明図である。
図示するように、この変形例のノズルヘッドNH1−70は、等ピッチで形成された4つの磁気作用部NH1−18a〜18dを有するビデ用可動体NH1−11と、各磁気作用部に対向するように配設固定された4つの電磁コイルNH1−33a〜33dを有するビデ用揺動コイル群NH1−71とを備える。そして、この変形例では、これら各電磁コイルを電磁コイルNH1−33a〜33dの順に、或いはその逆順で順次励磁して、既述したようにビデ用可動体NH1−11の擬似揺動回転、延いてはビデ吐水孔NH1−10の揺動回転(図22、図23参照)を引き起こす。この変形例のノズルヘッドNH1−70によれば、磁気作用部NH1−18a〜18dへのコイル作用力によるビデ用可動体の傾斜箇所が増えることから、この傾斜箇所増加の分、可動体の擬似揺動回転並びにビデ吐水孔の揺動回転の軌跡を円軌跡に近似させて、洗浄水を吐水できる。なお、可動体を5分割、6分割等のより多分割の磁気作用部を有するものとしたり、お尻用可動体をこのような多分割の磁気作用部を有するものとすることもできる。
F1−2/洗浄動作の変形;
図52は、上記の変形例のノズルヘッドNH1−70を用いた変形例の洗浄動作を説明するための説明図、図53は、この変形例の洗浄動作による洗浄水吐水の様子を模式的に説明するための説明図である。なお、以下の説明に際しては、ビデ洗浄を例に採り説明するが、お尻洗浄であっても同様である。
この洗浄動作の変形例では、各電磁コイルの順次励磁に当たって、ノズルの前後方向に位置する電磁コイルNH1−33a、33cでは、そのデューティ比Dt(Dta、Dtc)を同じとし、ノズルの左右方向に位置する電磁コイルNH1−33b、33dでは、デューティ比Dt(Dtb、Dtd)を同じとした。しかも、前者のデューティ比Dt(Dta、Dtc)と後者のデューティ比Dt(Dtb、Dtd)を異なるものとした。即ち、図52に示すように、洗浄期間TAでは、電磁コイルNH1−33a、33cのデューティ比Dta、Dtcを、電磁コイルNH1−33b、33dのデューティ比Dtb、Dtdより大きくした。これにより、電磁コイルNH1−33a、33cが磁気作用部NH1−18a、18cにコイル作用力を及ぼしてビデ用可動体が傾斜する際には、吐水孔振れ角αacが大きく、電磁コイルNH1−33b、33dの場合の吐水孔振れ角αbdは小さくなる。よって、図53(a)に示すように、この洗浄期間TAにおける洗浄面積SMTAは、ノズル前後方向を長軸とする楕円形状となる。
洗浄期間TBでは、デューティ比Dta、Dtcを洗浄期間TAより大きくする。よって、図53(a)に示すように、この洗浄期間TBにおける洗浄面積SMTBは、洗浄面積SMTAと同様にノズル前後方向を長軸とする楕円形状でありながら、長軸が延びて洗浄面積が拡大する。
洗浄期間TCでは、洗浄期間TAとは逆に、デューティ比Dta、Dtcをデューティ比Dtb、Dtdより小さくした。これにより、電磁コイルNH1−33a、33cによりビデ用可動体が傾斜する際の吐水孔振れ角αacは小さく、電磁コイルNH1−33b、33dの場合の吐水孔振れ角αbdは大きくなる。よって、図50(b)に示すように、この洗浄期間TCにおける洗浄面積SMTCは、ノズル左右方向を長軸とする楕円形状となる。そして、デューティ比Dtb、Dtdを大きくすれば、図50(a)の場合と同様に、ノズル左右方向を長軸とする楕円形状であって長軸が延びた洗浄面積に拡大できる。
この洗浄動作の変形例によれば、次のような利点がある。
(1)洗浄期間TA、TBのように、ノズル前後方向を長軸とする楕円形状の洗浄面積で局部洗浄を行うので、モータの正逆回転によるノズル前後往復動を行わなくても、ノズル前後方向に沿った広範囲な局部洗浄が可能である。よって、モータの正逆回転に伴う作動音がなく静かな状態でムーブ洗浄を実行でき、使用者にリラックス感を与えることができる。また、モータの正逆回転制御を要しないことから、電子制御装置の制御負荷を軽減できる。更に、ノズル駆動モータには、正逆回転の繰り返しに対する高い応答性を必要としないので、高能力のモータを要せずコスト低減やモータの小型化を図ることができる。加えて、ノズル往復動の繰り返しに伴う案内レール部NS1−7(図6参照)の摩耗を抑制でき、レール部の耐久性を向上できる。
(2)洗浄期間TA、TBのような楕円形状の洗浄面積としつつノズル前後往復動を行ってムーブ洗浄を実行する場合には、ノズルの前後移動間隔を短くできる。
(3)洗浄期間TCのような楕円形状の洗浄面積としつつノズル前後往復動を行ってムーブ洗浄を実行することもできる。こうすれば、ノズル左右方向に広い範囲でムーブ洗浄できる。この場合、図48で説明したように、ノズル前後動範囲におけるノズルヘッド位置に応じてデューティ比Dtb、Dtdを増減すれば、洗浄面積の楕円形状をノズルヘッド位置に応じてノズル左右方向で長短変形できる。よって、洗浄位置変化に合わせて刺激感が強弱変化するという多様な洗浄感を与えることができる。
(4)デューティ比Dta、Dtcとデューティ比Dtb、Dtdを等しくすれば、吐水孔振れ角αac、αbdが同一となり、洗浄面積を円形状とできる。よって、上記のデューティ比Dtの可変制御を通して、局部洗浄の実行期間において、円形状の洗浄面積を採る洗浄期間と、ノズル前後方向が長軸の楕円形状の洗浄面積を採る洗浄期間と、ノズル左右方向が長軸の楕円形状の洗浄面積を採る洗浄期間とを、任意の順序で発現させることができる。しかも、この際の各洗浄面積を変更するに当たり、各洗浄期間(例えば、図52の洗浄期間TA、TB、TC)の周期で定まる周波数fが、人体表皮への繰り返し刺激に対して間欠刺激として感知できる範囲の周波数(約5Hz未満)の範囲内となるようにする。こうすれば、それぞれの洗浄面積の形状変化を使用者に明確に認知させつつ、洗浄面積の変化に伴った強弱刺激を与えるので、刺激感の受け方が多様化し、効果的に排便感を促したり、単調感を解消したりすることができる。
F1−3/洗浄動作の別の変形;
図54は、上記の変形例のノズルヘッドNH1−70を用いた別の変形例の洗浄動作を説明するための説明図、図55は、この別の変形例の洗浄動作による洗浄水吐水の様子を模式的に説明するための説明図、図56は、この別の変形例の洗浄動作をムーブ洗浄に適用した場合の洗浄水吐水の様子を模式的に説明するための説明図である。
この別の変形例では、各電磁コイルの順次励磁に当たって、ノズルの前後方向に位置する電磁コイルNH1−33a、33cの一方を除く残りの3つの電磁コイル、或いは、ノズルの左右方向に位置する電磁コイルNH1−33b、33dの一方を除く残りの3つの電磁コイルを順次励磁するまず、第1の手法では、図54(a)に示すように、電磁コイルNH1−33c以外の電磁コイルを、33b→33a→33d→33a→33b→33a・・・の順に順次励磁する。第2の手法では、図54(b)に示すように、33a→33b→33d→33a→33b→33d・・・の順に順次励磁する。第3の手法では、図54(c)に示すように、33b→33c→33d→33c→33b→33c・・・の順に順次励磁する。第4の手法では、図54(d)に示すように、33b→33c→33d→33b→33c→33d・・・の順に順次励磁する。
上記の第1の手法で励磁した場合は、図55(a)に図中矢印Haで示すように、吐水孔はノズルヘッド前方側において円弧状の軌跡で揺動回転するので、洗浄水はこの吐水孔の軌跡に倣ってノズルヘッド前方側で円弧状に吐水する。第2の手法で励磁した場合は、図55(b)に図中矢印Hbで示すように、吐水孔はノズルヘッド前方側において半円軌跡で揺動回転するので、洗浄水はこの吐水孔の軌跡に倣ってノズルヘッド前方側で吐水し、その際の洗浄面積は、半円形状となる。この両手法での洗浄水吐水は、図55(c)に示すように、ノズルヘッド前方に向けた吐水形態を採る。
一方、第3の手法で励磁した場合は、図55(d)に図中矢印Hdで示すように、吐水孔はノズルヘッド後方側において円弧状の軌跡で揺動回転し、洗浄水はノズルヘッド後方側で円弧状に吐水する。第4の手法で励磁した場合は、図55(e)に図中矢印Heで示すように、吐水孔はノズルヘッド後方側において半円軌跡で揺動回転し、洗浄面積が半円形状となるよう、洗浄水はノズルヘッド後方側で吐水する。この両手法での洗浄水吐水は、図55(f)に示すように、ノズルヘッド後方に向けた吐水形態を採る。なお、上記各手法の励磁順序で各電磁コイルを励磁するに際して、デューティ比Dtを増減制御して吐水孔振れ角αを変更し、前方・後方向き吐水の吐水角度変更や、半円形状の洗浄面積の半楕円形状化を図るようにすることもできる。
この洗浄動作の変形例によれば、次のような利点がある。
(1)図54に示すデューティ比制御を通して、図55に示すように、ノズルヘッドの前方或いは後方への洗浄水向きや、円弧状或いは半円状の洗浄面積の変更とを任意の順序で採ることができる。しかも、この際の吐水向きや洗浄面積を変更するに当たり、その変更周期で定まる周波数fが、人体表皮への繰り返し刺激に対して間欠刺激として感知できる範囲の周波数(約5Hz未満)の範囲内となるようにする。こうすれば、それぞれの吐水向き変化や洗浄面積の形状変化を使用者に明確に認知させつつ、吐水向き並びに洗浄面積の変化に伴った強弱刺激を与えるので、刺激感の受け方が多様化し、効果的に排便感を促したり、単調感を解消することができる。
(2)図55(a)〜(c)に示すノズルヘッド前方に向けた吐水形態を採りつつノズル前後往復動を行ってムーブ洗浄を実行することができる。こうすれば、局部の汚物に対してノズルヘッド前方側に向いた方向から洗浄水を吐水できる。そして、ノズル前後往復動の軌跡が図7に示すように斜め下方に向いていることと相俟って、汚物をその下方に向けて効果的に剥離できる。
(3)その逆に、図55(d)〜(f)に示すノズルヘッド後方に向けた吐水形態を採りつつノズル前後往復動を行ってムーブ洗浄を実行することができる。こうすれば、局部の汚物に対してノズルヘッド後方側に向いた方向から洗浄水を吐水できる。そして、ノズル前後往復動の軌跡が下方に向いていることと相俟って、吐水洗浄水並びにこの洗浄水により剥離された汚物を前方に流れにくくできる。よって、ビデ洗浄をこのムーブ洗浄で実施した際には、局部周辺の清潔感が高まり好ましい。
(4)ノズル移動方向と吐水向きをあわせることもできる。即ち、ノズル前後往復動範囲の後退端から前進端に向けたノズル前進移動の際には、ノズルヘッド前方に向けた吐水形態とし、前進端から後退端に向けたノズル後退移動の際には、ノズルヘッド後方に向けた吐水形態とする。こうすれば、ノズル前進時に汚物をその下方に向けて効果的に剥離でき、ノズル後退時に汚物を前方に流れ難くして局部周辺の清潔感を高めることができる。
(5)図55(a)〜(c)に示すノズルヘッド前方に向けた吐水形態と図55(d)〜(f)に示すノズルヘッド後方に向けた吐水形態を、ノズル前後往復動のノズルヘッド位置に応じて切り換えるムーブ洗浄を実行することもできる。即ち、図56(a)に示すように、ノズル前後往復動範囲の後退端からセンタ位置に向けたノズル移動の際には、ノズルヘッド前方に向けた吐水形態とし、センタ位置前後では、4つの電磁コイルを一律のデューティ比Dtで順次励磁して吐水孔に対して上方を向く吐水形態とする。また、センタ位置から前進端に向けたノズル移動の際には、ノズルヘッド後方に向けた吐水形態を採るようにする。こうすれば、洗浄対象局部の前方の汚物と後方の汚物をセンタ位置に対応する局部表皮位置に集めつつ局部洗浄を図ることができる。しかも、センタ位置までのノズル前進時に汚物をその下方に向けて効果的に剥離でき、センタ位置へのノズル後退時に汚物を前方に流れ難くして局部周辺の清潔感を高めることができる。
(6)図56(b)に示すように、後退端からセンタ位置に向けたノズル移動時にはノズルヘッド後方に向けた吐水形態を、センタ位置前後では上方を向く吐水形態を、センタ位置から前進端に向けたノズル移動時にはノズルヘッド前方に向けた吐水形態を採るようにする。こうすれば、ムーブ洗浄時の洗浄面積をノズル前後方向で拡大できるので、広範囲に亘る充分な洗浄感を与えることができる。更に、このように洗浄面積が拡大できることから、ノズル前後往復動範囲を狭くすることもできる。なお、図55(a)、(d)の吐水形態を採る場合には、円弧状軌跡に倣った洗浄水吐水の際に、円弧端部での吐水洗浄水の吐水方向の切り替わりが起きることから、局部周囲の表皮の皺内をもより効果的に洗浄でき好ましい。
(7)図55(b)、(e)に示す吐水形態を採りつつ上記のムーブ洗浄を行うに際しては、ノズル前進移動の際と後退移動の際とで、電磁コイルの励磁順序を逆転させてもよい。即ち、図54(b)の33a→33b→33d→33a→33b→33d・・・の順の励磁と、これと逆の33d→33b→33a→33d→33b→33a・・・の順の励磁とをノズル前進・後退で切り換える。また、図54(d)の33b→33c→33d→33b→33c→33d・・・の順の励磁と、これと逆の33d→33c→33b→33d→33c→33b・・・の順の励磁とをノズル前進・後退で切り換える。こうすれば、吐水洗浄水の吐水方向が切り替わることから、局部周囲の表皮の皺内をもより効果的に洗浄でき好ましい。
F1−4/洗浄動作のまた別の変形;
この変形例の洗浄動作は、上記の変形例(F1−3)が図54で示したようにノズル前後方向の一方の電磁コイルNH1−33a、33cを励磁しないのに対し、ノズル左右方向の一方の電磁コイルNH1−33b、33dを励磁しないようにし、残りの電磁コイルを順次励磁するようにした点に特徴がある。この変形例によれば、次のような吐水形態を採ることができる。
即ち、上記した第1から第4の手法に倣った励磁を行うので、ノズルヘッドの左方或いは右方の側において円弧状に洗浄水が吐水される吐水形態や、ノズルヘッドの左方或いは右方の側において半円形状の洗浄面積となるよう洗浄水が吐水される吐水形態を採ることができる。また、ノズルヘッドの左方或いは右方の側に向いた吐水形態を採ることができる。更には、各電磁コイルの順次励磁の際のデューティ比増減制御を通して、左方・右方向き吐水の吐水角度変更や、半円形状の洗浄面積の半楕円形状化を図るようにすることもできる。このように左右の一方に偏った吐水が可能であることから、局部の左方或いは右方に痔核や裂傷等がある場合には、この痔核等に洗浄水吐水が当たらないようにして局部洗浄を行うことができる。また、ムーブ洗浄と組み合わせることで、上記の変形例と同様に、洗浄感の多様化を図ることができる。
F1−5/洗浄動作の更に別の変形;
この変形例の洗浄動作は、上記の変形例(F1−3、−4)がノズル前後方向或いはノズル左右方向の一方の電磁コイルを励磁しないのに対し、この一方の電磁コイルのデューティ比Dtを残りの電磁コイルと異なるデューティ比Dtとして、総ての電磁コイルを順次励磁する点に特徴がある。
即ち、図54で非励磁とされている電磁コイルについては、例えば図54(a)における電磁コイルNH1−33cを、電磁コイルNH1−33a、33bに続いて励磁し、その後は電磁コイルNH1−33dを励磁する。そして、この順での励磁を繰り返すと共に、電磁コイルNH1−33cのデューティ比Dtcを他の電磁コイルのデューティ比Dta、Dtb、Dtcより小さく或いは大きくする。こうすれば、順次励磁であることから閉形状の洗浄面積を採りつつ、電磁コイルNH1−33cに対応する箇所だけ面積輪郭がいびつな形状の洗浄面積で洗浄水を吐水できる。この際、電磁コイルNH1−33cに対応する箇所の面積輪郭のいびつ程度は、このコイルについてのデューティ比Dtにより種々変更できる。よって、多彩な洗浄面積形状の洗浄水吐水を行うことができ、洗浄感の多様化を図ることができる。なお、各電磁コイルの順次励磁に当たり、各コイルのデューティ比Dtをランダムに設定しつつ順次励磁するように変形することもできる。こうすれば、洗浄面積形状がより多彩化するので、洗浄感の多様化も高まる。
既述してきたとおり、各コイルの励磁を制御することにより、洗浄位置・形状は自由自在となる。例えば(図示していないが)遠隔操作装置にタッチパネルを設けて使用者がこのパネル上に示された位置を触ることで洗浄部位や形状を指定したり、あるいはスティック状の操作レバーで洗浄部位を移動するなどの操作を行った時でもすばやく追従できるのみならず、ノズルの移動も少ない(あるいは全くない)ので雑音の発生も少ない(あるいは全くない)ことになり、快適に使用することが可能となる。
ここで、上記した洗浄水の揺動回転吐水をもたらす可動体の変形例について、ビデ用可動体を例に採り説明する。図57は、ビデ用可動体NH1−11の製造過程を説明する説明図、図58は、変形例のビデ用可動体の製造過程を説明する説明図、図59は、他の変形例のビデ用可動体の製造過程を説明する説明図である。
本実施例のビデ用可動体NH1−11では、既述したように磁気作用部NH1−18a〜18cを周縁に有する磁気駆動体NH1−18を、樹脂製の吐水駒NH1−17とインサート成型法等により一体化させた。この際、磁気駆動体は、図57並びに図13に示すように、各磁気作用部を繋ぐ周縁部NH1−18xの上下面に樹脂製の吐水駒の下端部が回り込むようにされて一体化されている。この際、周縁部のアンカー孔NH1−18yにも樹脂が入り込むようにされているので、アンカー効果によってより強固な一体化が図られている。この方法では、製造時に取り扱う部材、具体的には金型へのセット部材が磁気駆動体一つであるので、作業工程が簡略であり、コスト低下等の製造上の利点がある。
変形例のビデ用可動体NH1−75では、3つの磁気作用部NH1−18a〜18cを別々に樹脂製の吐水駒NH1−76とインサート成型法等により一体化させた。即ち、図58に示すように、各磁気作用部は、この吐水駒のフランジ部NH1−77に個別に埋設配置されている。よって、この可動体では、磁気作用部の防錆処置が不要となり、その分、製造上の利点がある。しかも、各磁気作用部は、互いに独立配置され、樹脂製の吐水駒によって互いに磁気的に分断されている。つまり、隣接する磁気作用部に亘っては、磁束は形成されにくい。このため、各電磁コイルが励磁して各磁気作用部にコイル作用力が及ぼされた際には、磁気作用部を磁路とする磁束は隣接する磁気作用部に漏れない。よって、効率よく磁気作用部を吸引できると共に、コイル作用力に基づいた吸引力の低下を招かない。この結果、小さなコイル吸引力を及ぼすことができるよう各電磁コイルを励磁すればよく、電磁コイルの小型化や省電力化を図ることができる。
他の変形例のビデ用可動体NH1−80では、3つの磁気作用部NH1−18a〜18cを別々に配置して樹脂製の吐水駒で磁気的に独立させる点で、上記変形例のビデ用可動体NH1−75と共通する。そして、このビデ用可動体NH1−80は、図59に示すように、各磁気作用部は、その内側端縁部NH1−18wの上下面に吐水駒NH1−81のフランジ部NH1−82が回り込むようにされて、個別にこの吐水駒に固定配置されている。磁気駆動体NH1−18と同様に、アンカー孔NH1−18yによるアンカー効果によって、各磁気作用部は強固に固定されている。よって、この変形例の可動体によっても、各磁気作用部の独立配置と、各磁気作用部の樹脂製の吐水駒を介した磁気的な分断とにより、磁気作用部を磁路とする磁束を隣接する磁気作用部に漏れないようにできる。このため、磁気作用部の吸引効率の向上や吸引力の低下回避を通して、上記変形例の可動体と同様の効果を発揮するだけでなく、吸引に必要な軟質磁性材料のみで構成されているためビデ用可動体NH1−80の軽量化が可能となり、さらに電磁コイルの小型化や省電力化を図ることができる。
このほか、次のような変形も可能である。例えば、上記の本実施例では、電磁コイル励磁時のデューティ比Dtの可変制御を通して洗浄面積の変更等を図ったが、次の手法を採ることもできる。電磁コイルを励磁するに当たり、位相角制御等の手法で電磁コイルへの印加電圧値を調整して磁気作用部へのコイル作用力を増減調整し、既述したように吐水孔振れ角α延いては洗浄面積を種々調整することもできる。
また、上記の本実施例では、可動体の洗浄水吐水孔にその下方から洗浄水が流入した時に可動体がこの流入洗浄水から受ける力を一定として、この流入洗浄水からの力を考慮しなかったが、次のようにすることもできる。この流入洗浄水は、可動体と共に傾斜している吐水孔下端側の大径の吐水案内孔におけるテーパ面にその下方から当たるので、流入洗浄水からの力は可動体の傾斜を戻す方向に作用する。よって、この流入洗浄水の水量、即ち水勢設定ボタンで設定される水勢が大きくなるほど、可動体の傾斜を戻す力が大きくなる。このため、スポット・ワイド設定ボタンで所定の洗浄面積、即ち吐水孔振れ角α(デューティ比Dt)が設定された場合に、水勢の強弱設定が併用されれば、スポット・ワイド設定ボタンで設定済みのデューティ比Dtを、この設定水勢に応じて変更するよう構成する。例えば、水勢が強設定されれば、スポット・ワイド設定ボタンで設定済みのデューティ比Dtを水勢強設定程度に応じて増大制御し、水勢弱設定であれば、その設定程度に応じてデューティ比Dtを減少制御する。こうすれば、水勢設定がなされても、可動体並びに吐水孔の吐水孔振れ角αを水勢設定前と同じように維持でき、洗浄面積の不用意な変化による違和感を与えないようにすることができる。
また、次のような出荷時微調整機能を持たせることもできる。電磁コイルによる磁気作用力のバラツキやゴム・エラストマーといった可動体フランジ部の弾性力のバラツキなどにより、吐水孔振れ角αにバラツキが生じる虞がある。そこでこれを微調整する機能(バラツキ吸収機能)をもたせ、製品出荷前の製品検査時に微調整するとさらに好ましい。具体的な手法を簡易に述べると、例えば可変抵抗などのつまみを袖部の補助操作部等に設け、これを調整するようにする。この可変抵抗の値によって、電磁コイルへの通電デューティあるいは電圧の基準値が設定されることになる。製品出荷検査時はある条件下で吐水孔振れ角αが一定の基準値になるように、つまみを調整することになる。また調整のタイミングは製品出荷検査時に限定されず、製品取付け後でもよく、製造者だけでなく、メンテナンスを行う者や使用者が調整できるようにしてもよい。
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。