JP5256017B2 - 水素化異性化触媒、その製造方法、炭化水素油の脱蝋方法及び潤滑油基油の製造方法 - Google Patents

水素化異性化触媒、その製造方法、炭化水素油の脱蝋方法及び潤滑油基油の製造方法 Download PDF

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本発明は、水素化異性化触媒、その製造方法、前記水素化異性化触媒を用いる炭化水素油の脱蝋方法及び潤滑油基油の製造方法に関する。
石油製品の中で、例えば潤滑油、軽油、ジェット燃料等は低温における流動性が重要視される製品である。そのため、これらの製品に用いられる基油は、低温流動性の低下の原因となるノルマルパラフィンや、わずかに分岐を有するイソパラフィンなどのワックス成分が、完全に若しくは部分的に除去されている、又はワックス成分以外のものに転換されていることが望ましい。また、近年、フィッシャー・トロプシュ合成(以下、「FT合成」ということがある。)により得られる炭化水素類が、イオウ化合物等の環境負荷物質を含まない点で、潤滑油や燃料を製造する際の原料油として注目を集めているが、この炭化水素類にも多くのワックス成分が含まれている。
炭化水素油からワックス成分を除去する脱蝋技術としては、例えば、液化プロパンやMEK等の溶媒によりワックス成分を抽出する方法が知られている。しかし、この方法は、運転コストが大きい上に、適用可能な原料油種が限定されること、さらには製品収率が原料油種により制限されてしまうことなどの問題がある。
一方、炭化水素油中のワックス成分を非ワックス成分へと転換する脱蝋技術としては、例えば、炭化水素油を、水素存在下で、水素化−脱水素能及び異性化能の二元機能を有する水素化異性化触媒に接触せしめ、炭化水素油中のノルマルパラフィンをイソパラフィンに異性化する接触脱蝋が知られている。また、接触脱蝋に使用される水素化異性化触媒としては、固体酸、中でもゼオライト及び周期表第8〜10族あるいは第6族に属する金属を含む触媒が知られている。
接触脱蝋は炭化水素油の低温流動性を改善する方法として有効であるが、潤滑油用基油に適した留分を得るためには、ノルマルパラフィンの転化率を十分高くする必要がある。しかし、接触脱蝋で使用される水素化異性化触媒は異性化能とともに炭化水素の分解能も有していることから、ノルマルパラフィンの転化率の上昇に伴い炭化水素油の分解、軽質化も進行して、所望の留分の収率が低下する。特に、高粘度指数及び低流動点が要求される高品質の潤滑油用基油を製造する場合、ノルマルパラフィンが実質的に含有されない程度までその転化率を高める必要があり、炭化水素油の接触脱蝋により目的留分を経済性よく得ることが非常に難しかった。そのため、かかる分野ではポリアルファオレフィン等の合成系基油が多く使用されていた。
上記事情から、潤滑油基油及び燃料基油、特に潤滑油基油の製造分野において、ワックス成分を含む炭化水素油から所望のイソパラフィン留分を収率よく得るために、炭化水素に対する抑制された分解活性及び高められた異性化反応活性、すなわち優れた異性化選択性を有する水素化異性化触媒が求められている。
これまでにも、接触脱蝋で用いる水素化異性化触媒の異性化選択性を向上させる試みがなされている。例えば、下記特許文献1〜5には、中程度の大きさの一次元状細孔を有するゼオライトに水素化活性を有する金属を担持した水素化異性化触媒を用いた炭化水素の脱蝋に関する技術が開示されている。
なお、水素化異性化触媒を構成するゼオライトは、所定の細孔構造を構築するために、通常、アミノ基、アンモニウム基等を有する有機テンプレートと呼ばれる有機化合物の存在下に水熱合成して製造される。そして、合成されたゼオライトは、例えば、下記非特許文献1の453ページ、「2.1. Materials」項、最終段落に記載されているように、分子状酸素を含む雰囲気下、例えば550℃程度以上の温度で焼成されることにより、含有する有機テンプレートが除去される。次に、焼成されたゼオライトは、例えば、下記非特許文献1の453ページ、「2.3. Catalytic experiments」項に記載されているように、典型的にはアンモニウムイオンを含有する水溶液中でアンモニウム型にイオン交換される。イオン交換後のゼオライトには、さらに周期表第8〜10族等の金属成分が担持される。そして、金属成分が担持されたゼオライトは、乾燥、必要により成型等の工程を経て反応器に充填され、典型的には400℃程度の温度において分子状酸素を含む雰囲気下に焼成され、さらに同程度の温度において水素等により還元処理を行うことによって、二元機能触媒としての触媒活性が付与される。
特表2000−515185号公報 特表2001−525723号公報 特表2006−514086号公報 特表2006−523136号公報 米国特許第5,282,958号公報 J.A.Martens et al.,J.Catal.239(2006)451
しかし、上記特許文献1〜5に記載の方法では、触媒の異性化選択性が十分とはいえず、分解活性が十分に抑制されていないために、ノルマルパラフィン成分を含む炭化水素油から所望の潤滑油基油又は燃料基油に適したイソパラフィン留分を高収率で得ることは困難であった。特に、高性能潤滑油の基油の製造においては、ノルマルパラフィンを実質的に含まない程度までその転化率を高める必要があり、その場合、ノルマルパラフィン及び/又は異性化生成物であるイソパラフィンの分解反応が盛んとなり、経済性をもった収率で目的とするイソパラフィン留分を得ることができなかった。
更に、所定の大きさの生産設備において所定の単位時間当たりの生産速度を確保するなどのプロセス効率を考慮すると、水素化異性化触媒の異性化選択性を高めるだけでなく異性化反応活性も十分高くする必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ノルマルパラフィンを含む炭化水素油から潤滑油基油及び/又は燃料基油、特には高品質の潤滑油基油に適した炭化水素油を安定して高収率で得ることを可能とする、異性化選択性及び異性化反応活性に優れた水素化異性化触媒、該水素化異性化触媒の製造方法、該水素化異性化触媒を用いる炭化水素油の脱蝋方法、及び該水素化異性化触媒を用いる潤滑油基油の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、水素化異性化触媒の異性化選択性の向上を検討するなかで、有機テンプレートを含有するゼオライトを、カチオン種を含有する溶液中でイオン交換することにより得られるイオン交換ゼオライト若しくはその焼成物と、当該イオン交換ゼオライト若しくはその焼成物上に担持された、元素の周期表第8〜10族に属する金属、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種の金属と、を含む触媒組成物を焼成して得られる水素化異性化触媒が、高ノルマルパラフィン転化率において優れた異性化選択性を有することを見出し、これを特許出願している。
そして、上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、焼成された特定のゼオライト及び焼成された無機多孔質酸化物と、これらに担持された特定の活性金属とを含有する水素化異性化触媒が、ノルマルパラフィンを含有する炭化水素油の水素化異性化反応において、高い異性化反応活性を示すとともに、高いノルマルパラフィン転化率にて優れた異性化選択性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、長軸方向の数平均長さが0.01〜1μmの結晶凝集体である、10員環一次元状細孔構造を有し有機テンプレートを含有するゼオライトを、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換することにより得られるイオン交換ゼオライトが焼成されてなる焼成ゼオライト(a)と、焼成された無機多孔質酸化物(b)と、上記焼成ゼオライト及び/又は上記無機多孔質酸化物に担持された、周期表第8〜10族に属する金属、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種の金属(c)と、を含有する水素化異性化触媒を提供する。
なお、本明細書において、周期表とは、国際純正及び応用化学連合(IUPAC)が規定する長周期型の表を指す。
本発明の水素化異性化触媒は、上記構成を有することにより、ノルマルパラフィンに対する異性化反応活性及び異性化選択性の双方が十分高いものになり得る。これにより、炭化水素の分解反応を抑制しつつ、より効率的にノルマルパラフィンをイソパラフィンに異性化することが可能となり、より高い収率で目的とする炭化水素留分を得ることが可能となる。本発明の水素化異性化触媒によれば、ノルマルパラフィンを含む炭化水素油から潤滑油基油及び/又は燃料基油、特には高品質の潤滑油基油に適した炭化水素油を安定して高収率で得ることができる。
ノルマルパラフィンの水素化異性化反応における高い異性化選択性の点で、上記有機テンプレートを含有するゼオライトは、ZSM−22、ZSM−23及びZSM−48型ゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
水素化異性化反応活性の点で、上記有機テンプレートを含有するゼオライトは、下記式(I)を満たすものであることが好ましい。
0.8≦[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRF≦1.0 …(I)
[式(I)中、[Si/Al]XPSは、上記有機テンプレートを含有するゼオライトについて、X線光電子分光分析法により測定したケイ素原子/アルミニウム原子のモル比を表し、[Si/Al]XRFは、上記有機テンプレートを含有するゼオライトについて、蛍光X線分析法により測定したケイ素原子/アルミニウム原子のモル比を表わす。]
異性化選択性及び反応活性の観点から、上記金属(c)が、白金又はパラジウムであることが好ましい。
異性化選択性の点で、上記無機多孔質酸化物(b)はアルミナであることが好ましい。
異性化選択性の点で、上記焼成ゼオライトは、上記イオン交換ゼオライトが350℃以上の加熱を含む熱履歴を受けて焼成されてなるものであり、その熱履歴は、350℃以上で加熱されていない上記イオン交換ゼオライトが350℃〜450℃の範囲内での加熱により焼成されることを含むことが好ましい。
本発明はまた、長軸方向の数平均長さが0.01〜1μmの結晶凝集体である、10員環一次元状細孔構造を有し有機テンプレートを含有するゼオライトを、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換することによりイオン交換ゼオライトを得る第1工程、上記イオン交換ゼオライトと、無機多孔質酸化物と、が含まれる組成物を成型して成型体を得る第2工程、上記成型体を少なくとも350℃〜450℃の範囲内で加熱することにより焼成して、担体を得る第3工程、及び、上記担体に、周期表第8〜10族に属する金属、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種の金属を担持させる第4工程を備える水素化異性化触媒の製造方法を提供する。
本発明の水素化異性化触媒の製造方法によれば、上記工程を備えることにより、異性化選択性及び異性化反応活性の双方に優れ、ノルマルパラフィンを含む炭化水素油から潤滑油基油及び/又は燃料基油、特には高品質の潤滑油基油に適した炭化水素油を安定して高収率で得ることを可能とする水素化異性化触媒を得ることができる。
本発明はまた、水素の存在下、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有する炭化水素油と、上記本発明の水素化異性化触媒と、を接触せしめて、上記ノルマルパラフィンの一部又は全部をイソパラフィンに転化する炭化水素油の脱蝋方法を提供する。
上記炭化水素油は、スラックワックス、脱油蝋、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタム及びフィッシャー・トロプシュ合成ワックスからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明はまた、水素の存在下、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有する炭化水素油と、上記本発明の水素化異性化触媒とを、下記式(II)で定義される上記ノルマルパラフィンの転化率が実質的に100質量%となる条件で接触させる工程を備える潤滑油基油の製造方法を提供する。


[式(II)中、Cnは、接触前の炭化水素油中に含まれる炭素数10以上のノルマルパラフィンのうちで最小の炭素数を示す。]
本発明によれば、水素化異性化選択性及び水素化異性化反応活性に優れた水素化異性化触媒、及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、水素化異性化触媒を用いて、ノルマルパラフィンを含む炭化水素油から潤滑油基油及び/又は燃料基油に適した炭化水素油を安定して高収率で得ることを可能とする炭化水素油の脱蝋方法、並びに、ノルマルパラフィンを含む炭化水素油から高性能の潤滑油基油を高収率で得ることを可能とする潤滑油基油の製造方法を提供することができる。
<水素化異性化触媒>
本発明の水素化異性化触媒は、特定の方法によって製造されることでその特徴が付与される。以下、本発明の水素化異性化触媒について、その好ましい製造の態様に沿って説明する。
まず、本発明の水素化異性化触媒を構成する焼成ゼオライト(a)の出発原料となる、長軸方向の数平均長さが0.01〜1μmの結晶凝集体である、10員環一次元状細孔構造を有し有機テンプレートを含有するゼオライト(以下、「有機テンプレート含有ゼオライト」という。)について説明する。
有機テンプレート含有ゼオライトは、ノルマルパラフィンの水素化異性化反応における高い異性化活性と抑制された分解活性とを高水準で両立する観点から、10員環からなる一次元状細孔構造を有する。このようなゼオライトとしては、AEL、EUO、FER、HEU、MEL、MFI、NES、TON、MTT、WEI、及びZSM−48などが挙げられる。なお、上記の各アルファベット三文字は、分類分けされたモレキュラーシーブ型ゼオライトの各構造に対して、国際ゼオライト協会構造委員会(The Structure Commission of The International Zeolite Association)が与えている骨格構造コードを意味する。また、同一のトポロジーを有するゼオライトは包括的に同一のコードで呼称される。
上記のゼオライトの中でも、高異性化活性及び低分解活性の点で、TON、MTT構造を有するゼオライト、及び、ZSM−48型ゼオライトが好ましい。TON構造を有するゼオライトとしては、ZSM−22型ゼオライトがより好ましく、また、MTT構造を有するゼオライトとしては、ZSM−23型ゼオライトがより好ましい。
有機テンプレート含有ゼオライトは、シリカ源、アルミナ源及び上記所定の細孔構造を構築するために添加する有機テンプレートから、公知の方法によって水熱合成される。
有機テンプレートは、ゼオライトに所定の細孔構造を構築するために添加するアミノ基、アンモニウム基等を有する有機化合物であり、合成するゼオライトの構造に応じて選択されるものであるが、アミン誘導体であることが好ましい。具体的には、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミン及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
有機テンプレート含有ゼオライトを構成する珪素とアルミニウム元素とのモル比([Si]/[Al])(以下、「Si/Al比」という。)は、10〜400であることが好ましく、20〜350であることがより好ましい。Si/Al比が10未満の場合には、ノルマルパラフィンの転換に対する活性は高くなるが、イソパラフィンへの異性化選択性が低下し、また反応温度の上昇に伴う分解反応の増加が急激となる傾向にあることから好ましくない。一方、Si/Al比が400を超える場合には、ノルマルパラフィンの転換に必要な触媒活性が得られにくくなり好ましくない。
本実施形態においては、合成の際に、結晶凝集体の大きさを制御して、結晶凝集体の長軸方向の数平均長さを0.01〜1μmとすることが重要である。ここで「結晶凝集体」とは、ゼオライトの結晶子が複数凝集した集合体をいう。また、これら結晶は針状結晶であり、「長軸方向の数平均長さ」とは、針状結晶の長手方向の平均長さをいう。結晶凝集体の長軸方向の数平均長さは、走査電子顕微鏡(以下、「SEM」ということもある。)による観察における任意の視野にて倍率50000倍で撮影した写真から、任意に選択された100個の結晶凝集体の長軸の長さをそれぞれ計測し、それらの算術平均値とする。
結晶凝集体の長軸方向の数平均長さが0.01よりも小さい場合、結晶の機械的強度が低く、機械的あるいは熱的な履歴によりこれが崩壊することで異性化反応活性が低下する虞があり、1μmを超える場合、水素化異性化触媒の水素化異性化活性が十分に向上しない虞があるため好ましくない。
結晶凝集体の大きさを上記範囲内に制御する方法としては、一般に結晶の成長を抑制する方法が採用される。その中でも、ゼオライトの合成を行う反応器内において、反応混合物の混合を高い速度で行う方法が好ましい。反応器が攪拌装置を設けた設備である場合は、その攪拌装置の回転数を高めることが好ましく、反応器が反応器そのものを回転あるいは振動させて反応混合物を混合する設備である場合には、その回転数あるいは振動数を高めることが好ましい。ゼオライト合成のための設備によって、反応混合物の攪拌、混合の方法及びその効率は異なるため、攪拌装置あるいは反応器自体の回転数あるいは振動数を具体的に規定することは困難である。一例を挙げるならば、反応器自体をタンブリンして内容物の混合を行う設備で、通常30rpmの回転数でタンブリングを行う場合、これを60rpmとすることにより、結晶凝集体の大きさを所定の大きさとすることができる。
有機テンプレート含有ゼオライトは、下記式(I)を満たすものであることが好ましい。
0.8≦[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRF≦1.0 …(I)
[式(I)中、[Si/Al]XPSは、有機テンプレート含有ゼオライトについて、X線光電子分光分析法により測定したケイ素原子/アルミニウム原子のモル比を表し、[Si/Al]XRFは、有機テンプレート含有ゼオライトについて、蛍光X線分析法により測定したケイ素原子/アルミニウム原子のモル比を表わす。]
X線光電子分光分析法(以下、「XPS」ということもある。)は固体表面のごく深度の浅い部分のみの原子を分析する手法であり、一方、蛍光X線分析法(以下、「XRF」ということもある。)はXPSに比較して固体表面より深度の深い部分までの原子を分析する手法である。一般的にゼオライトを構成するケイ素原子とアルミニウム原子は、ゼオライト結晶の表面と内部とでその構成比が異なることが多い。すなわち、結晶表面近傍においては、ケイ素原子/アルミニウム原子の構成モル比(Si/Al)が結晶内部に比較して小さい、言い換えれば結晶表面近傍では内部に比較してアルミニウム原子の比率が相対的に高くなることが一般的である。この場合[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRFの値が小さくなる。これに対して、結晶表面のアルミニウム原子の比率が結晶内部のそれにより近い場合は、[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRFの値は1に近くなる。したがって、[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRFの値が1に近い程、結晶表面と結晶内部の組成がより均一であることを示している。
有機テンプレート含有ゼオライトの[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRFの値が0.8未満である場合には、ノルマルパラフィンの異性化活性の向上効果が小さいことから好ましくない。また、上記値が1.0を超えるゼオライトを合成することは困難である。
有機テンプレート含有ゼオライトの[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRFを上記範囲に制御する方法としては、ゼオライト合成時のシリカ源及びアルミナ源の量比を変化させること及び反応混合物の混合速度を変化させることが挙げられる。具体例として、アルミナ源の量をシリカ源の量に対して増加する、あるいは反応混合物の混合速度を大きくすると[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRFの値が大きくなる傾向にある。
合成され、好ましくは洗浄、乾燥された上記有機テンプレート含有ゼオライトは、対カチオンとして通常アルカリ金属カチオンを有し、また有機テンプレートが細孔構造内に包含される。本発明の水素化異性化触媒を製造する際に用いる有機テンプレートを含むゼオライトとは、このような、合成された状態のもの、すなわち、ゼオライト内に包含される有機テンプレートを除去するための焼成処理がなされていないものであることが好ましい。
上記有機テンプレート含有ゼオライトは、次に、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換される。イオン交換処理により、有機テンプレート含有ゼオライト中に含まれる対カチオンは、アンモニウムイオン及び/又はプロトンに交換される。またそれと同時に、有機テンプレート含有ゼオライト中に包含される有機テンプレートの一部が除去される。
上記イオン交換処理に使用する溶液は、水を少なくとも50容量%含有する溶媒を用いた溶液であることが好ましく、水溶液であることがより好ましい。また、アンモニウムイオンを溶液中に供給する化合物としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機及び有機の各種のアンモニウム塩が挙げられる。一方、プロトンを溶液中に供給する化合物としては、通常、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸が利用される。有機テンプレート含有ゼオライトをアンモニウムイオンの存在下でイオン交換することにより得られるイオン交換ゼオライト(ここでは、アンモニウム型ゼオライト)は、後の焼成の際にアンモニアを放出し、対カチオンがプロトンとなってブレンステッド酸点となる。イオン交換に用いるカチオン種としてはアンモニウムイオンが好ましい。溶液中に含まれるアンモニウムイオン及び/又はプロトンの含有量は、使用する有機テンプレート含有ゼオライトに含まれる対カチオン及び有機テンプレートの合計量に対して10〜1000当量となるように設定されることが好ましい。
上記イオン交換処理は、粉末状の有機テンプレート含有ゼオライト単体に対して行ってもよく、またイオン交換処理に先立って、有機テンプレート含有ゼオライトにバインダである無機多孔質酸化物を配合し、成型を行い、得られる成型体に対して行ってもよい。但し、上記の成型体を焼成することなくイオン交換処理に供すると、当該成型体が崩壊、粉化する問題が生じやすくなることから、粉末状の有機テンプレート含有ゼオライトをイオン交換処理に供することが好ましい。
イオン交換処理は、定法、すなわち、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液、好ましくは水溶液に有機テンプレートを含むゼオライトを浸漬し、これを攪拌又は流動する方法によって行うことが好ましい。また、上記の撹拌又は流動は、イオン交換の効率を高めるために加熱下に行うことが好ましい。本発明においては、上記水溶液を加熱し、沸騰、還流下でイオン交換する方法が特に好ましい。
更に、イオン交換の効率を高める点から、溶液によってゼオライトをイオン交換する間に、溶液を一回又は二回以上新しいものに交換することが好ましく、溶液を一回又は二回新しいものに交換することがより好ましい。溶液を一回交換する場合、例えば、有機テンプレート含有ゼオライトをアンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液に浸漬し、これを1〜6時間加熱還流し、次いで、溶液を新しいもの交換した後、更に6〜12時間加熱還流することにより、イオン交換効率を高めることが可能となる。
イオン交換処理により、ゼオライト中のアルカリ金属等の対カチオンのほぼ全てをアンモニウムイオン及び/又はプロトンに交換することが可能である。一方、ゼオライト内に包含される有機テンプレートについては、上記のイオン交換処理によりその一部が除去されるが、同処理を繰り返し行っても、その全てを除去することは一般に困難であり、その一部がゼオライト内部に残留する。
次に、上記の方法にて得られたイオン交換ゼオライトに、バインダである無機多孔質酸化物を配合し、得られる組成物を成型して成型体を形成することが好ましい。無機多孔質酸化物をイオン交換ゼオライトに配合する目的は、成型体の焼成によって得られる担体(特には、粒子状の担体)の機械的強度を、実用に耐えられる程度に向上することにあるが、本発明者は、無機多孔質酸化物種の選択が水素化異性化触媒の異性化選択性に影響を与えることを見出している。このような観点から、上記無機多孔質酸化物として、アルミナ、シリカ、チタニア、ボリア、ジルコニア、マグネシア、セリア、酸化亜鉛及び酸化リン並びにこれらの2種以上の組み合わせからなる複合酸化物から選択される少なくとも一種の無機酸化物が用いられる。中でも、水素化異性化触媒の異性化選択性が更に向上する観点から、アルミナが好ましい。また、上記「これらの2種以上の組み合わせからなる複合酸化物」とは、アルミナ、シリカ、チタニア、ボリア、ジルコニア、マグネシア、セリア、酸化亜鉛、及び酸化リンのうちの少なくとも2種の成分からなる複合酸化物であるが、複合酸化物を基準として50質量%以上のアルミナ成分を含有するアルミナを主成分とする複合酸化物が好ましい。
上記組成物におけるイオン交換ゼオライトと無機多孔質酸化物との配合比率は、イオン交換ゼオライトの質量:無機多孔質酸化物の質量の比として、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは30:70〜85:15である。この比が10:90よりも小さい場合には、水素化異性化触媒の活性が充分ではなくなる傾向にあるため好ましくない。一方、上記比が90:10を超える場合には、組成物を成型及び焼成して得られる担体の機械的強度が充分ではなくなる傾向にあるため好ましくない。
イオン交換ゼオライトに上記の無機多孔質酸化物を配合する方法は特に限定されないが、例えば両者の粉末に適量の水等の液体を添加して粘ちょうな流体とし、これをニーダー等により混練する等の通常行われる方法を採用することができる。
上記イオン交換ゼオライトと上記無機多孔質酸化物とを含む組成物或いはそれを含む粘ちょうな流体は、押出成型等の方法により成型され、好ましくは乾燥されて粒子状の成型体となる。成型体の形状としては特に限定されないが、例えば、円筒状、ペレット状、球状、三つ葉・四つ葉形の断面を有する異形筒状等が挙げられる。成型体の大きさは特に限定されないが、取り扱いの容易さ、反応器への充填密度等の観点から、例えば長軸が1〜30mm、短軸が1〜20mm程度であることが好ましい。
次に、上記のようにして得られた成型された成型体を、分子状酸素を含む雰囲気下、350〜450℃、好ましくは380〜430℃、より好ましくは390〜420℃の温度にて焼成して、350℃以上の加熱を含む熱履歴を受けて焼成された担体とすることが好ましい。「分子状酸素を含む雰囲気下」とは、酸素ガスを含む気体、中でも好ましくは空気と接触することを意味する。焼成の時間は特に限定されないが、1〜24時間であることが好ましく、1〜10時間であることがより好ましい。本実施形態において、焼成温度が350℃より低い場合は、有機テンプレートの除去が充分に進行しない、あるいはその除去に長時間を要する、更には、担体粒子の機械的強度が充分に向上しない傾向にあるため好ましくない。一方、焼成温度が450℃を超える場合には、得られる水素化異性化触媒の異性化選択性が充分に向上しない傾向にあることから好ましくない。特に、350℃以上で加熱されておらず有機テンプレートが残存するイオン交換ゼオライトを上記のような比較的低温において焼成することは、本発明の水素化異性化触媒の異性化選択性を向上せしめる上で好ましい。
上記焼成により、成型体を構成するイオン交換ゼオライトは焼成ゼオライト(a)となり、無機多孔質酸化物は焼成された無機多孔質酸化物(b)となる。
焼成は、上述のように、イオン交換ゼオライトに無機酸化物を配合した組成物を成型して得られる成型体の状態にて行う以外に、粉末状のイオン交換ゼオライト単体の状態にて行ってもよい。但し、その場合は、得られる焼成ゼオライトに無機酸化物を配合した組成物を成型してなる成型体を、機械的強度を付与する目的で350℃以上の温度、例えば、350〜450℃の範囲内及び/又は450℃を超えて650℃以下の範囲内の温度において焼成を行うことが好ましい。
上記担体は、好ましくは分子状酸素を含む雰囲気下、更に好ましくは空気雰囲気下に、350〜450℃の範囲内で加熱され、更に450℃を超えて650℃以下の範囲内で加熱され焼成されたものであってもよい。350〜450℃での加熱に加えて、450℃を超えて650℃以下で更に加熱して焼成することにより、得られる触媒の水素化異性化選択性に大きな影響を与えることなく、担体の機械的強度を更に向上せしめることが可能になる。したがって、より高い機械的強度を有する触媒粒子が所望される場合には、上記の2段階の加熱による焼成を行うことが好ましい。後段の加熱温度が450℃以下の場合は、担体の機械的強度の更なる向上が難しくなる傾向にある。一方、650℃を超える場合には、ゼオライト上の活性点形成に関与するアルミニウム原子の環境が変化して分解活性が増大する傾向にあることから好ましくない。
本実施形態では、上記により得られた担体に、周期表第8〜10族に属する金属、モリブデン及びタングステンの少なくとも一種の金属(以下、「活性金属」ということがある。)を担持することが好ましい。
周期表第8〜10族に属する金属としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金が挙げられる。これらの中でも、活性、異性化選択性及び活性の持続性の観点から、白金及び/又はパラジウムが好ましく、白金が特に好ましい。上記の活性金属は、一種を単独で又は二種以上の組合せによって用いることができる。また、本発明に係る水素化異性化触媒が含イオウ化合物及び/又は含窒素化合物を多く含む炭化水素油の水素化異性化に用いられる場合、触媒活性の持続性の観点から、活性金属としては、ニッケル−コバルト、ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデン−コバルト、ニッケル−タングステン−コバルト等の組み合わせが好ましい。
上記担体に、上記活性金属を担持する方法は特に限定されず、上記活性金属元素を含む化合物(以下、「活性金属前駆体」ということがある。)を用いた含浸法(平衡吸着法、ポアフィリング法、初期湿潤法)、イオン交換法等の公知の方法が採用される。
活性金属前駆体の例としては、上記活性金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、錯化合物等が挙げられる。活性金属が白金である場合には、活性金属前駆体としては塩化白金酸、テトラアンミンジニトロ白金、ジニトロアミノ白金、テトラアンミンジクロロ白金などが好ましく使用される。
焼成ゼオライト(a)及び焼成された無機多孔質酸化物(b)が含まれる担体に担持される活性金属の合計の担持量は、担体の質量を基準として、0.001〜20質量%が好ましい。担持量が0.001質量%未満の場合には、所定の水素化/脱水素機能を付与することが困難となる。一方、担持量が20質量%を超える場合には、当該活性金属上での炭化水素の分解による軽質化が進行しやすくなり、目的とする留分の収率が低下する傾向にあり、さらには触媒コストの上昇を招く傾向にあるため好ましくない。
活性金属は、担体を構成する焼成ゼオライト(a)及び焼成された無機多孔質酸化物(b)のいずれか一方又は両方に担持されていてよい。本発明の水素化異性化触媒が、担体に活性金属を含浸法等により担持する方法を経て製造されたものである場合、活性金属が担持される部位の配分は、主として担持の際に使用する活性金属前駆体と焼成ゼオライト(a)及び焼成された無機多孔質酸化物(b)との親和性により決定される。
活性金属の担持は、成型及び焼成された担体に対して行われる態様に限定されるものではない。例えば、粉末状のイオン交換ゼオライト、或いはこれを好ましくは350〜450℃の温度において焼成した焼成ゼオライトに、活性金属を担持してもよく、粉末状の無機多孔質酸化物に担持してもよく、更にその両方であってもよい。
活性金属成分が担持された担体は、活性金属前駆体中に含まれるアニオン成分あるいは配位子成分を除去することを主たる目的として、好ましくは分子状酸素を含む雰囲気下に焼成されることが好ましい。焼成温度としては、250℃〜600℃が好ましく、300〜500℃がより好ましい。分子状酸素を含有する雰囲気としては、空気が好ましい。焼成時間は、通常、0.5〜20時間程度である。このような焼成処理を経て、活性金属前駆体は金属単体、その酸化物又はそれに類した種へと変換される。
以上のように、本発明の水素化異性化触媒の製造の好ましい態様においては、「上記特定の有機テンプレート含有ゼオライトのイオン交換」、「イオン交換ゼオライト及び無機多孔質酸化物を含む組成物の成型」、「350〜450℃での加熱による成型体の焼成」若しくは「350〜450℃での加熱次いで450℃を超えて650℃以下での加熱による成型体の焼成」、「担体への活性金属の担持」、並びに「活性金属が担持される担体の焼成」の各工程を有している。
本発明の水素化異性化触媒の製造において、前述の各工程を実施する態様及びそれらの順序は、触媒製造の各工程における問題の発生、及び工程が煩雑となることによる製造コストの増加を招くことがない範囲において、上述の好ましい製造の態様に記載されたものと異なっていてもよく、適宜変更が可能である。
本発明に係る水素化異性化触媒は、上記の焼成処理に続いて、好ましくは水素化異性化の反応を行う反応器に充填後に還元処理されたものであることが好ましい。具体的には、分子状水素を含む雰囲気下、好ましくは水素ガス流通下、好ましくは250〜500℃、より好ましくは300〜400℃にて、0.5〜5時間程度の還元処理が施されたものであることが好ましい。このような工程により、炭化水素油の脱蝋に対する高い活性をより確実に触媒に付与することができる。
本発明の水素化異性化触媒においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、焼成ゼオライト及び/又は焼成された無機多孔質酸化物上に、周期表第8〜10族に属する金属、モリブデン及びタングステン以外の金属が更に担持されていてもよい。
<水素化異性化触媒の製造方法>
本発明の水素化異性化触媒の製造方法としては、上述の本発明の水素化異性化触媒の好適な実施形態を得る手順として例示したものが挙げられる。
<炭化水素油の脱蝋方法>
次に、本発明の炭化水素油の脱蝋方法について説明する。本発明の炭化水素の脱蝋方法は、水素存在下、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有する炭化水素油と、前記本発明の水素化異性化触媒と、を接触せしめて前記ノルマルパラフィンの一部又は全部をイソパラフィンに転化する工程を備える。
本発明の炭化水素油の脱蝋方法に供される炭化水素油は、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有するものであれば特に限定されず、好ましくは、炭素数15以上のノルマルパラフィンを含有するものである。具体的には、灯油及びジェット燃料のような比較的軽質の蒸留留分から、全ての原油、常圧蒸留残油、真空塔残油、減圧残油、循環油、合成原油(例えば、シェール油、タール油等)、軽油、減圧軽油、蝋下油、FT合成油から誘導される燃料留分若しくはワックス分、及び他の重油のような高沸点原料油に及ぶ様々なものが挙げられる。また、これらの炭化水素油は、ノルマルパラフィンの他に側鎖に長鎖の直鎖状アルキル基を有するナフテン系炭化水素、あるいは芳香族炭化水素からなるワックス成分を含んでいてもよい。
本発明の炭化水素油の脱蝋方法によって脱蝋される炭化水素油として特に好ましいものは、沸点が約180℃以上の炭素数10以上の炭化水素から構成される炭化水素油である。これより軽質の炭化水素油は、通常、低温における流動性に影響を与えるワックス成分を実質的に含有していないため、脱蝋を行う必要性が低く、本発明による効果が得られにくくなる。
一方、ワックス成分を含む留出原料油、すなわち軽油、灯油及びジェット燃料を包含する中間油留分原料油、潤滑油原料油、暖房用油、並びに、他の蒸留留分であって、それらの流動点及び粘度が所定の範囲内に維持される必要のある当該留分に対して本発明に係る脱蝋方法を適用することは特に有効である。このような炭化水素油としては、例えば、水素化処理又は水素化分解された軽油、重質軽油、減圧軽油、潤滑油ラフィネート、潤滑油原料、ブライトストック、スラックワックス(粗蝋)、蝋下油、脱油蝋、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、合成油、FT合成油、高流動点ポリオレフィン、直鎖αオレフィンワックスなどが挙げられる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の炭化水素油の脱蝋方法において、ノルマルパラフィンの少なくとも一部をイソパラフィンに転換する際の反応条件は、上述した本発明に係る基油の製造方法におけるものに準じて設定することが好ましい。
本発明の炭化水素の脱蝋方法における水素化異性化反応の温度は、一般には200〜450℃、好ましくは220〜400℃である。反応温度が200度を下回る場合、原料である炭化水素油中に含まれるノルマルパラフィンの異性化が進行しにくくなり、ワックス成分の低減、除去が不十分になる傾向にある。一方、反応温度が450℃を超える場合、炭化水素油の分解が顕著となり、目的とする基油の収率が低下する傾向にある。
本発明の炭化水素の脱蝋における水素化異性化反応の圧力は、一般には0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜15MPaである。反応圧力が0.1MPaを下回る場合、コーク生成による触媒の劣化が早まる傾向にある。一方、反応圧力が20MPaを超える場合、装置建設コストが高くなるため経済的なプロセスを実現しにくくなる傾向にある。
本発明の炭化水素の脱蝋方法における水素化異性化反応の炭化水素油の触媒に対する液空間速度は、一般には0.01〜100hr−1、好ましくは0.1〜50hr−1である。液空間速度が0.01hr−1未満の場合、炭化水素油の分解が過度に進行しやすくなり、目的とする基油の生産効率が低下する傾向にある。一方、液空間速度が100hr−1を超える場合、炭化水素油中に含まれるノルマルパラフィンの異性化が進行しにくくなり、ワックス成分の低減、除去が不十分になる傾向にある。
本発明の炭化水素の脱蝋方法における水素化異性化反応の水素と炭化水素油との供給比率は、一般には100〜1000Nm/m、好ましくは200〜800Nm/mである。供給比率が100Nm/m未満の場合、例えば原料油が硫黄、窒素化合物を含む場合、異性化反応と併発する脱硫、脱窒素反応により発生する硫化水素、アンモニアガスが触媒上の活性金属を吸着被毒するため、所定の触媒性能が得られにくくなる傾向にある。一方、供給比率が1000Nm/mを超える場合、大きな能力の水素供給設備を必要とするため経済的なプロセスを実現しにくくなる傾向にある。
本発明の炭化水素の脱蝋方法における水素化異性化反応のノルマルパラフィンの転化率は、目的とする基油の用途に応じて適宜調節される。
<潤滑油基油の製造方法>
次に、本発明の潤滑油基油の製造方法について説明する。本発明の潤滑油基油の製造方法は、水素の存在下、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有する炭化水素油と、前記本発明の水素化異性化触媒とを、下記式(II)で定義される前記ノルマルパラフィンの転化率が実質的に100質量%となる条件で接触させることを特徴とする。


[式(II)中、Cnは、接触前の炭化水素油中に含まれる炭素数10以上のノルマルパラフィンのうちで最小の炭素数を示す。]
ここで、「転化率が実質的に100質量%」とは、接触後の炭化水素油中に含まれるノルマルパラフィンの含有量が0.1質量%以下であることを意味する。
本発明の潤滑油基油の製造方法に供される炭化水素油は、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有するものであれば特に限定されないが、好ましくは、所望する潤滑油基油の初留点よりも高い初留点を有する炭化水素油を含むことが好ましい。このような原料油としては、常圧換算の沸点が360℃を超える留分である石油留分、合成油・ワックスなどが好適であり、具体的には、重質軽油、減圧軽油、潤滑油ラフィネート、ブライトストック、スラックワックス(粗蝋)、蝋下油、脱油蝋、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、合成油、フィッシャー・トロプシュ合成油、高流動点ポリオレフィン、直鎖αオレフィンワックスなどが挙げられる。これらは、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの油は、水素化処理又は軽度の水素化分解を施されたものであることが好ましい。これらの処理により、含イオウ化合物、含窒素化合物等の水素化異性化触媒の活性低下をもたらす物質、及び芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素等の潤滑油基油の粘度指数を低下する物質を低減あるいは除去することができる。
上記の比較的重質の炭化水素油を原料油とし、これを水素存在下、本発明に係る水素化異性化触媒と接触させることにより、炭化水素油中に含まれるノルマルパラフィンの異性化、すなわち炭化水素油の脱蝋反応を、軽質化を十分抑制しつつ進行させることができる。これにより、常圧換算の沸点が360℃を超える留分の割合が90容量%以上である基油を高い収率で得ることができる。また、本発明に係る基油の製造方法によれば、分岐鎖構造を有する異性体を多く含む基油を得ることができる。特に、高品質の潤滑油基油に対しては、ノルマルパラフィン含有量が0.1質量%以下であること要求されるが、本発明に係る基油の製造方法によれば、この要求レベルを満たす潤滑油基油を高収率で得ることができる。
ノルマルパラフィンを含む炭化水素油の水素化異性化においては、通常、例えば反応温度を高めることにより、ノルマルパラフィンの転化率を上昇させることができ、得られる反応生成物中のノルマルパラフィン含有量を低くすることができるので、炭化水素油の低温流動性を向上させることができる。しかし、反応温度を高めると、原料の炭化水素油及び異性化生成物の分解反応が促進されるので、ノルマルパラフィンの転化率の上昇とともに軽質留分が増加する。この軽質留分の増加は、炭化水素油の粘度指数を低下させる原因となることから、潤滑油基油としての性能を所定の範囲に収めるためには、蒸留等によりこの軽質留分を分離、除去する必要がある。特に、米国石油協会の潤滑油グレードの分類によるグループIII+等の高性能の潤滑油基油を炭化水素油の接触脱蝋によって製造する場合には、原料である炭化水素油中のノルマルパラフィン転化率を実質的に100%とする必要がある。従来の接触脱蝋用触媒を用いた潤滑油基油の製造方法では、ノルマルパラフィン転化率を実質的に100%とする条件では、上記高性能の潤滑油基油の収率は極端に低いものとなる。これに対して、本発明に係る潤滑油基油の製造方法によれば、ノルマルパラフィン転化率を実質的に100%となる条件で水素化処理工程を行った場合であっても、上記高性能の潤滑油基油の収率を高水準に維持することができる。
本発明の炭化水素油の脱蝋方法及び潤滑油基油の製造方法を実施するための設備については特に限定されず、公知のものを使用することができる。反応設備としては、連続流通式、回分式、半回分式のいずれであってもよいが、生産性、効率の観点から連続流通式が好ましい。触媒層は、固定床、流動床、攪拌床のいずれであってもよいが、設備費用等の面から固定床が好ましい。反応相は気液混相であることが好ましい。
本発明の炭化水素油の脱蝋方法及び潤滑油基油の製造方法においては、上記水素化異性化反応による脱蝋工程の前段階として、供給原料の炭化水素油を水素化処理又は水素分解処理してもよい。その設備、触媒、反応条件は公知のものが使用される。これらの前処理を実施することにより、本発明に係る水素化異性化触媒の活性をより長期間に亘って維持することができ、また、生成物中の含イオウ及び含窒素化合物などの環境負荷物質を低減することができる。
また、本発明の潤滑油基油の製造方法においては、上記脱蝋工程で得られる反応生成物を、例えば水素化仕上(hydrofinishing)によって、更に処理することができる。水素化仕上は、一般的に、水素存在下、担持金属水素化触媒(例えば、アルミナに担持された白金)に被仕上物を接触させることにより実施できる。このような水素化仕上を行うことにより、脱蝋工程で得られた反応生成物の色相、酸化安定性等が改良され、製品の品質を向上させることができる。水素化仕上は、上記脱蝋工程とは別の反応設備において実施してもよいが、脱蝋工程を行う反応器内に設けられた本発明に係る水素化異性化触媒の触媒層の下流側に水素化仕上用の触媒層を設けて、上記脱労工程に続けて行ってもよい。
なお、通常、異性化とは炭素数(分子量)が変化することなく、分子構造のみ変化する反応をいい、分解とは炭素数(分子量)の低下を伴う反応をいう。異性化反応を利用した接触脱蝋反応においては、原料の炭化水素及び異性化生成物の分解がある程度起きても、その生成物の炭素数(分子量)が、目的とする基油を構成することが許容される所定の範囲内に収まればよく、分解生成物が基油の構成成分となっていてもよい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(水素化異性化触媒の製造)
<ZSM−22型ゼオライトの合成>
Si/Al比が45である結晶性アルミノシリケートからなるZSM−22型ゼオライト(以下、「ZSM−22」ということもある。)を、前述の非特許文献2の1007ページ、「Experimental Section」に記載の方法に準拠して、以下の手順で水熱合成により製造した。
まず、下記の4種類の水溶液を調製した。
溶液A:3.88gの水酸化カリウムを13.5mlのイオン交換水に溶解したもの。
溶液B:1.78gの硫酸アルミニウム18水塩を10mlのイオン交換水に溶解したもの。
溶液C:8.36gの1,6−ヘキサンジアミン(有機テンプレート)を65mlのイオン交換水にて希釈したもの。
溶液D:36gのコロイダルシリカ(Grace Davison社製Ludox AS−40)を61mlのイオン交換水にて希釈したもの。
次に、溶液Aを溶液Bに加え、アルミニウム成分が完全に溶解するまで攪拌した。この混合溶液に溶液Cを加えた後、室温にて激しく攪拌しながら、溶液A、B、Cの混合物を溶液Dに注入した。更に、ここへ結晶化を促進する「種結晶」として、別途合成され、合成後に何ら特別な処理が行われていないZSM−22の粉末を0.5g添加し、ゲル状物を得た。
上記の操作にて得たゲル状物を、内容積120mlのステンレス鋼製オートクレーブ反応器に移し、150℃のオーブン中で60時間、約60rpmの回転速度でオートクレーブ反応器をタンブリング装置上で回転させ、水熱合成反応を行った。水熱合成反応の終了後、反応器を冷却後開放し、生成した固形分をろ過により採取した。これをイオン交換水により洗浄し、60℃の乾燥器中で一夜乾燥して、Si/Al比が45であるZSM−22型ゼオライト(「ZSM−22−1」という)を得た。
得られたZSM−22−1について、結晶凝集体の長軸方向の数平均長さの測定、XPS及びXRFによるSi/Al比の定量をそれぞれ以下の方法により行った。結果を表1に示す。また、ZSM−22−1の走査電子顕微鏡を図1に示す。
(結晶凝集体の長軸方向の数平均長さ)
走査電子顕微鏡による観察における任意の視野にて倍率50000倍で撮影した写真から、任意に選択された100個の結晶凝集体の長軸の長さをそれぞれ計測し、それらの算術平均値を結晶凝集体の長軸方向の数平均長さとした。
(XPS及びXRFによるSi/Al比の定量)
定法に従い、XPS及びXRFによるSi/Al比の定量をそれぞれ行い、さらにその比を算出した。

<イオン交換ZSM−22の製造>
上記で得られたZSM−22について、以下の操作によりアンモニウムイオンを含む水溶液でイオン交換処理を行った。
上記にて得られたZSM−22をそれぞれフラスコ中に取り、各ZSM−22ゼオライト1g当り100mlの0.5N−塩化アンモニウム水溶液を加え、6時間加熱環流した。これを室温まで冷却した後、上澄み液を除去し、固形分をイオン交換水で洗浄した。ここに、上記と同量の0.5N−塩化アンモニウム水溶液を再び加え、12時間加熱環流した。
その後、固形分をろ過により採取し、イオン交換水で洗浄し、60℃の乾燥器中で一晩乾燥して、イオン交換されたNH型ZSM−22を得た。このZSM−22は、有機テンプレートを含んだ状態でイオン交換されたものである。
<バインダー配合、成型、焼成>
上記で得たNH型ZSM−22と、バインダーであるアルミナとを質量比7:3にて混合し、ここに少量のイオン交換水を添加して混練した。得られた粘ちょうな流体を押出成型機に充填、成型し、直径約1.6mm、長さ約10mmの円筒状の成型体を得た。この成型体を、空気流通下、400℃にて3時間焼成して、成型・焼成された担体粒子を得た。
<白金担持、焼成>
テトラアンミンジクロロ白金(II)(Pt(NHCl)を、担体粒子の予め測定した吸水量に相当するイオン交換水に溶解して含浸溶液を得た。この溶液を、上記の担体粒子に初期湿潤法により含浸し、ZSM−22型ゼオライトの質量に対して0.3質量%の白金量となるように担持を行った。次に、得られた含浸物を60℃の乾燥器中で一晩乾燥した後、空気流通下、400℃で3時間焼成して水素化異性化触媒1を得た。
(ワックスの脱蝋)
内径15mm、長さ380mmのステンレス鋼製反応管に上記で得られた水素化異性化触媒1を100ml充填し、触媒層平均温度350℃、水素流通下(水素分圧3MPa)で12時間還元処理を行った。その後、原料としての石油由来のワックス(炭素数分布C21〜C38、組成を図3に示す。)を、反応温度300℃、水素分圧3MPa、LHSV 4.0h−1、水素/油比592NL/Lの条件にて通油して、水素存在下での異性化反応を開始した。72時間反応後、反応生成物を採取、分析した。なお、図3中、aはイソパラフィン量を示し、bはノルマルパラフィン量を示す。
その後、水素分圧、水素/油比、反応温度はそのままに、LHSVを段階的に0.3まで変化させて原料油転化率を変化させた。各段階のLHSVにて72時間反応を行って反応を安定化せしめ、それぞれの反応生成物の採取、分析を行った。そして、水素化異性化触媒の活性の尺度として、接触時間(1/LHSV)が0.30h及び2.30hにおける上記式(II)にて定義されるノルマルパラフィン転化率を表2に示す。
また、水素化異性化触媒の異性化選択性の尺度として、ノルマルパラフィン転化率が100%に到達した最も小さな接触時間(本実施例においは2.8h)におけるC21以上のイソパラフィン収率及びその時の接触時間を表2に示す。
(潤滑油基油留分の分離、採取)
上記ワックスの脱蝋の各段階にて得られた生成油の分析結果から、原料油中のノルマルパラフィンの転化率(式(II)により定義される転化率)が100%となる接触時間(1/LHSV=2.8h)よりも大きい各段階で得られた生成油について、下記の操作により分留を行い、下記の潤滑油基油留分を採取した。
上記接触時間が2.8hより大きい各段階における生成油をそれぞれ、まずナフサ、灯軽油留分と重質留分とに分留した。更にこの重質留分を分留することで、沸点範囲が330〜410℃、100℃における動粘度が2.7±0.1cStである潤滑油基油留分(以下、「潤滑油基油留分1」という。)及び沸点範囲が410〜450℃、100℃における動粘度が4.0±0.1cStの範囲にある潤滑油基油留分(以下、「潤滑油基油留分2」という。)を得た。そして、前記潤滑油基油留分2の流動点が−22.5℃以下、且つ粘度指数が140以上となる最も低い接触時間をtcとした。本実施例におけるtcは3.7hであった。接触時間3.7hにおいて得られた前記潤滑油基油留分1の収率は原料油対比で30%、前記潤滑油基油留分2の収率は46%であった。また、前記潤滑油基油留分2の流動点は−25.0℃、粘度指数は144であった。

(実施例2)
イオン交換ZSM−22−1とアルミナとからなる成型体を、400℃に代えて550℃で焼成した以外は実施例2と同様の操作により、水素化異性化触媒2を得た。
水素化異性化触媒1に替えて水素化異性化触媒2を用いた以外は実施例1と同様の操作にて、ワックスの脱蝋を行った。結果を表2に示す。
(比較例1)
オートクレーブ反応器のタンブリング回転数を60rpmに替えて30rpmとした以外は実施例1と同様の操作にてZSM−22型ゼオライトの合成を行った。得られたZSM−22型ゼオライト(「ZSM−22−C1」という)の性状を実施例1と同様に分析した。結果を表1に示す。また、ZSM−22−C1の走査電子顕微鏡を図2に示す。
上記にて得られたZSM−22−C1を用い、以下実施例1と同様の操作、手順にて水素化異性化触媒の製造を行い、水素化異性化触媒C−1を得た。
水素化異性化触媒1に替えて水素化異性化触媒C−1を用いた以外は実施例1と同様の操作にて、ワックスの脱蝋を行った。結果を表2に示す。
上記ワックスの脱蝋の各段階にて得られた生成油の分析結果から、原料油中のノルマルパラフィンの転化率(式(II)により定義される転化率)が100%となる接触時間(1/LHSV=3.6h)よりも大きい各段階で得られた生成油について、下記の操作により分留を行い、下記の潤滑油基油留分を採取した。
実施例1と同様にノルマルパラフィンの転化率が100%である各段階における生成油を分留することにより、実施例1と同一の区分である潤滑油基油留分1及び2を分離、採取した。本比較例におけるtcは4.5hであった。接触時間4.5hにおいて得られた前記潤滑油基油留分1の収率は原料油対比で29%、前記潤滑油基油留分2の収率は45%であった。また、前記潤滑油基油留分2の流動点は−27.5℃、粘度指数は142であった。
(比較例2)
イオン交換ZSM−22−C1とアルミナとからなる成型体を、400℃に代えて550℃で焼成した以外は、比較例1と同様にして水素化異性化触媒の製造を行い、水素化異性化触媒C−2を得た。
水素化異性化触媒1に替えて水素化異性化触媒C−2を用いた以外は実施例1と同様の操作にて、ワックスの脱蝋を行った。結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1で得られたZSM−22−1を、空気流下、550℃にて3時間焼成して、焼成ZSM−22−1を得た。これに対して、実施例1と同様の方法によりアンモニウムイオンによるイオン交換を行うことにより、焼成され且つイオン交換されたNH型ZSM−22−1を得た。これを実施例2と同様にして、バインダであるアルミナと混合し、成型、焼成、白金の担持、焼成して、水素化異性化触媒C−3を得た。
水素化異性化触媒1に替えて水素化異性化触媒C−3を用いた以外は実施例1と同様の操作にて、ワックスの脱蝋を行った。結果を表2に示す。
(比較例4)
実施例2で得られたZSM−22−C1を、空気流下、550℃にて3時間焼成して、焼成ZSM−22−C1を得た。これに対して、実施例1と同様の方法によりアンモニウムイオンによるイオン交換を行うことにより、焼成され且つイオン交換されたNH型ZSM−22−C1を得た。これを実施例2と同様にして、バインダであるアルミナと混合し、成型、焼成、白金の担持、焼成して、水素化異性化触媒C−4を得た。
水素化異性化触媒1に替えて水素化異性化触媒C−4を用いた以外は実施例1と同様の操作にて、ワックスの脱蝋を行った。結果を表2に示す。
上記実施例及び比較例の結果より、本発明に係る水素化異性化触媒を用いることにより、比較例の触媒に比較して、高い異性化選択率においてワックスの脱蝋を行うことが可能であることが確認された。また、実施例の水素化異性化触媒は、高い水素化異性化活性によって、比較例と同等の異性化選択率の場合には、比較例に比べてより小さな接触時間にて同等の異性体収率を得ることが可能である。したがって、本発明に係る水素化異性化触媒によれば、反応器を大きくすることなく、高い生産性にて脱蝋を行うことが可能である。
また、実施例の水素化異性化触媒は、潤滑油基油の分離、採取において、比較例に比べてより小さな接触時間にて同等の性能、収率にて当該基油を得ることが可能であることが確認された。
ZSM−22−1のSEM写真である。 ZSM−22−C1のSEM写真である。 水素化異性化反応による脱蝋処理に供される石油由来のワックスの組成を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 長軸方向の数平均長さが0.01〜1μmの結晶凝集体である、10員環一次元状細孔構造を有し有機テンプレートを含有するゼオライトを、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換することにより得られるイオン交換ゼオライトが焼成されてなる焼成ゼオライト(a)と、焼成された無機多孔質酸化物(b)と、前記焼成ゼオライト及び/又は前記無機多孔質酸化物に担持された、周期表第8〜10族に属する金属、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種の金属(c)と、を含有する、水素化異性化触媒。
  2. 前記有機テンプレートを含有するゼオライトが、ZSM−22、ZSM−23及びZSM−48型ゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水素化異性化触媒。
  3. 前記有機テンプレートを含有するゼオライトが、下記式(I)を満たすものである、請求項1又は2に記載の水素化異性化触媒。
    0.8≦[Si/Al]XPS/[Si/Al]XRF≦1.0 …(I)
    [式(I)中、[Si/Al]XPSは、前記有機テンプレートを含有するゼオライトについて、X線光電子分光分析法により測定したケイ素原子/アルミニウム原子のモル比を表し、[Si/Al]XRFは、前記有機テンプレートを含有するゼオライトについて、蛍光X線分析法により測定したケイ素原子/アルミニウム原子のモル比を表わす。]
  4. 前記金属(c)が、白金又はパラジウムである、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の水素化異性化触媒。
  5. 前記無機多孔質酸化物(b)が、アルミナである、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の水素化異性化触媒。
  6. 前記焼成ゼオライトは、前記イオン交換ゼオライトが350℃以上の加熱を含む熱履歴を受けて焼成されてなるものであり、前記熱履歴は、350℃以上で加熱されていない上記イオン交換ゼオライトが350℃〜450℃の範囲内での加熱により焼成されることを含む、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の水素化異性化触媒。
  7. 長軸方向の数平均長さが0.01〜1μmの結晶凝集体である、10員環一次元状細孔構造を有し有機テンプレートを含有するゼオライトを、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換することによりイオン交換ゼオライトを得る第1工程、
    前記イオン交換ゼオライトと、無機多孔質酸化物と、が含まれる組成物を成型して成型体を得る第2工程、
    前記成型体を少なくとも350℃〜450℃の範囲内で加熱することにより焼成して、担体を得る第3工程、及び、
    前記担体に、周期表第8〜10族に属する金属、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種の金属を担持させる第4工程、
    を備える、水素化異性化触媒の製造方法。
  8. 水素の存在下、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有する炭化水素油と、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素化異性化触媒と、を接触せしめて、前記ノルマルパラフィンの一部又は全部をイソパラフィンに転化する、炭化水素油の脱蝋方法。
  9. 前記炭化水素油が、スラックワックス、脱油蝋、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタム及びフィッシャー・トロプシュ合成ワックスからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項8に記載の炭化水素油の脱蝋方法。
  10. 水素の存在下、炭素数10以上のノルマルパラフィンを含有する炭化水素油と、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素化異性化触媒とを、下記式(II)で定義される前記ノルマルパラフィンの転化率が実質的に100質量%となる条件で接触させる工程、
    を備える、潤滑油基油の製造方法。


    [式(II)中、Cnは、接触前の炭化水素油中に含まれる炭素数10以上のノルマルパラフィンのうちで最小の炭素数を示す。]
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