JP5255419B2 - 乳飲料安定剤としての結晶セルロース複合化物 - Google Patents

乳飲料安定剤としての結晶セルロース複合化物 Download PDF

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Description

本発明は、結晶セルロース、アルギン酸エステル及び乳化剤を含む結晶セルロース複合化物に関するものである。この結晶セルロース複合化物は、従来になく、低添加量で乳成分飲料のオイルオフ、オイルリング、沈殿、凝集等を改善し得るものである。
乳成分を含有した飲料には、ミルクコーヒー、ミルク紅茶などが知られている。しかし、これらを特に加熱状態において長期間の保存をすると、乳成分中の脂肪球同士が合一し、乳化状態が破壊されて乳蛋白が凝集し、容器底部に沈殿が発生する。また、乳化が破壊されると脂肪球が油滴となって飲料表面に浮上するオイルオフと呼ばれる現象や、浮上した脂肪球が容器内壁にリング状に固着したオイルリングと呼ばれる現象を引き起こし外観の悪化、味質の低下を招くことがあり好ましくない。
このような問題点を解消するべく、従来よりセルロース系素材や乳化剤を安定剤として使用した乳成分入り飲料の開発がされてきた。特許文献1には、乳化剤とセルロース複合体を含有する乳成分入りコーヒー飲料が、特許文献2には乳製品を加えたコーヒー抽出液に乳化剤と微結晶セルロースを添加するコーヒー飲料の製造方法が開示されている。しかし、特許文献1、2記載の技術では、飲料に配合する微結晶セルロース複合体と乳化剤とを合わせた配合量が0.2質量%と多量となるため、コスト負荷が過大となったり、飲料の粘度を増加させ、舌触りに影響を与えるという問題があり実用的ではなかった。特許文献3は、繊維状セルロースを配合したミルクコーヒーの貯蔵安定性について開示されているが、この繊維状セルロースは飲料に添加する前に機械的せん断力を与えて繊維状セルロースを分散させなければオイルオフ等の効果を発揮しない。特許文献4には、発酵セルロース複合体を0.12質量%と低配合量でオイルオフ、沈殿を抑制する技術が開示されているが、発酵セルロースを得る製造プロセス自体が複雑、且つ高価であり工業的実施が困難であるのでこれも実用的とは言えない。
さらに近年は、ピークカット自動販売機の普及が増え、缶容器に付着するオイルオフ、オイルリング等の問題が急増しており、これを抑制できる有効な安定化技術の出現が待ち望まれている。
特開平6−245703号公報 特開平6−335348号公報 特開2004−305005号公報 特開2007−330256号公報
このように、オイルオフやオイルリングを解消するには0.2質量%の多量のセルロース系安定剤を添加する必要があり、この場合にはコスト負荷が過大となったり、飲料の粘度が増粘し食感に悪影響を及ぼすという問題があった。
本発明の課題は、乳飲料用の安定剤として従来にない高い機能を有する結晶セルロース複合化物を提供し、味に影響せず長期間保存した場合に、オイルオフ、オイルリング等の発生を抑制しつつ、コスト負荷や食感を損なうことのない食品用安定剤とそれを配合してなる飲料を提供することにある。
すなわち、本発明の第1の実施態様では、
[1]結晶セルロース、アルギン酸エステル及び乳化剤を含む、結晶セルロース複合化物。
[2]前記結晶セルロース50〜95質量%、前記アルギン酸エステル1〜25質量%及び前記乳化剤1〜25質量%を含む[1]に記載の結晶セルロース複合化物。
[3]結晶セルロース、アルギン酸エステル及び乳化剤と、溶媒とを含む混合物を用いて、混練物を得るように混練する工程を含む製造方法により得られる[1]又は[2]に記載の結晶セルロース複合化物。
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の結晶セルロース複合化物を配合する液体状、固体状、ゲル状又はペースト状組成物。
[5][1]〜[3]のいずれか一項に記載の結晶セルロース複合化物を配合する食品又は飲料。
[6]前記飲料がコーヒー飲料である[5]に記載の飲料。
[7]前記結晶セルロース複合化物の飲料全体に対する配合量が0.001〜3質量%である[6]に記載のコーヒー飲料。
[8]さらに乳成分を含む[6]又は[7]に記載のコーヒー飲料。
本発明の結晶セルロース複合化物は従来に比べ高いオイルオフ等の抑制効果を有するため、極少量の添加量で高いオイルオフ等の抑制効果を得ることができる。例えば、当該結晶セルロース複合化物を飲料に添加することにより、長期間保存した場合においてもオイルオフ等の発生を抑制できる効果を有する。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のセルロース複合化物は、結晶セルロース、アルギン酸エステル及び乳化剤を含んでなるものである。
本実施形態で用いる用語「結晶セルロース」とは、木材パルプ、精製リンター、再生セルロース、穀物又は果実由来の食物繊維、バクテリアセルロース等のセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解、亜臨界水又は超臨界水による加水分解等により、或いはそれらの組み合わせにより、解重合処理して平均重合度30〜375としたものを洗浄、濾過して得られたセルロースである。
本実施形態で用いる用語「アルギン酸エステル」は、アルギン酸とエタノール等のアルコール類、又はプロピレングリコール等の多価アルコール類、或いはプロピレンオキサイドやエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類から誘導されるアルギン酸エステルである。好ましくは、アルギン酸プロピレングリコールエステルであり、分子量又はエステル化度も特に制限はない。
本実施形態で用いる用語「乳化剤」は、脂肪酸塩(石鹸)、アルキル硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルファ−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩(SAS)、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルファ−スルホン化脂肪酸塩、N−長鎖アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ナフタリンスルフォン酸塩ホルマリン縮合物などのアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アルキルアミドベタイン類、アルキルスルホベタイン類、イミダゾリニウムベタイン類などの両性界面活性剤;脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルなどのノニオン性界面活性剤;第1〜第3級脂肪アミン塩、塩化アルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、ジアルキルモルフォリニウム塩などのカチオン性界面活性剤、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体、トラガントゴムなどの高分子界面活性剤、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニンなどの天然界面活性剤などである。好ましくは、一般に食品に使用される乳化剤であればよく、HLBが5以下のものがオイルオフ、オイルリング抑制の効果が高い点で良い。より好ましくは、HLBが3以下のものである。
本実施形態の好ましい態様においては、セルロース複合化物の組成比は、結晶セルロース:アルギン酸エステル:乳化剤=50〜95:1〜25:1〜25質量%という組成からなるものである。
結晶セルロースの質量比が50以上であれば結晶セルロースが十分となり、乳飲料中のオイルオフ等の抑制機能を発現する結晶セルロース粒子も十分となるためオイルオフ等の抑制機能が十分になる。また、結晶セルロースの質量比が95以下であれば、結晶セルロースに対してアルギン酸エステルと乳化剤が十分となるため、乾燥し粉体化しても結晶セルロース同士の角質化は起こらない。角質化した結晶セルロースは、それを水中で分散しても微細な結晶セルロース粒子が得られず、オイルオフ等を防止する結晶セルロース網目構造が形成されない。
また、本実施形態の好ましい態様においては、発明の効果を失わない程度に親水性物質を加えてよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)、より選ばれる1種又は2種以上の物質をいう。最も良い物質はデキストリンである。
本実施形態の結晶セルロース複合化物は、本発明の目的を損なわない範囲で、各種目的に応じて任意の添加剤を添加することができる。添加剤の具体例としては、甘味剤、乳化剤、単糖類、多糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、デンプン類、可溶性デンプン、デンプン加水分解物、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩類等の塩類、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸味料、保存料、殺菌料、参加防止剤、防かび剤、日持ち向上剤、香料、色素等を挙げることができる。また、親水性高分子と混ぜ合わせてもよいし、結晶セルロース複合化物同士を混ぜ合わせてもよい。
本実施形態において、結晶セルロース複合化物の再分散時におけるセルロース複合体の平均粒径の範囲は1〜20μmが好ましい。より好ましくは3〜15μmである。さらに好ましくは3〜10μmである。
ここで、本実施形態で用いる用語「セルロース複合体」とは、本実施形態の結晶セルロース複合化物を水に再分散させた際、水中に存在する結晶セルロースとアルギン酸エステルと乳化剤の複合体を指す。本実施形態のセルロース複合体の平均粒径は実用的に現在のところ、1μm以上が好ましい。また、セルロース複合体の平均粒径が20μm以下であれば、飲料に添加した場合、沈殿やオイルオフ抑制の好ましい効果が得られる。
本実施形態の好ましい態様で用いる用語「溶媒」は、水を含んでなる液体であってエタノールのような水と混和する液体を含む事ができ、好ましくは水である。
次に、本実施形態の結晶セルロース複合化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば結晶セルロースとアルギン酸エステル、乳化剤及び溶媒との混合物を混練機等を用いて混練する方法を適用することが好ましい。この場合、該混合物を半固形状態とし、混練時の固形分を35〜60質量%とすることがより好ましい。固形分量が35質量%以上であれば、混練物が柔らかい状態にならないため混練効果も不足せず、オイルオフ等を十分に抑制できる複合体を得ることができる。
また固形分が60質量%以下であれば、水分量が少なすぎることもなく混練物がパサパサな状態にならず充分な混練効果が得られ、オイルオフ等を抑制する効果が十分な複合体を得ることができる。さらに好ましくは、固形分は40〜50質量%で混練する。
混練時の混練エネルギーは、20Wh/kg以上とすることが好ましい。ここで混練エネルギーとは単位質量当たりの電力量(Wh/kg)と定義するものである。より好ましくは40Wh/kg以上である。さらに好ましくは60Wh/kg以上である。混練時の混練エネルギーが20Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が低くなく、結晶セルロースとアルギン酸エステルと乳化剤の複合化が進み、得られる混練物はオイルオフ等の抑制効果を発揮する。混練エネルギーが高い方が磨砕性が高まると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると工業的に過大な設備になるのでコスト的に好ましくない。この意味において、混練エネルギーの上限は500Wh/kgである。混練工程においては、水は混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施してもよい。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。
本実施形態の好ましい態様においては、結晶セルロース複合化物を得るにあたって、前述の混練工程より得られた湿混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、該混練物に水を添加して希釈することなく混練工程の固形分濃度を維持して乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後の結晶セルロース複合化物の含水率の目安は1〜20質量%である。
ところで、本実施形態の結晶セルロース複合化物を市場に流通させる場合は粉体の方がとり扱いやすいので、乾燥により得られた結晶セルロース複合化物を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。乾燥した結晶セルロース複合化物を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度としては10〜250μmとなるように粉砕する。
本実施形態の結晶セルロース複合化物を種々の用途の配合組成物として使用する場合には、その形態は液体状、固体状、ゲル状又はペースト状組成物等の目的に応じて種々の形態で使用することができる。また、本実施形態の結晶セルロース複合化物を、飲料又は食品に添加して使用することもできる。
本実施形態の結晶セルロース複合化物及びその配合組成物の用途の代表例としては、例えば飲料、食品用、工業用洗浄剤及び処理剤原料、家庭用(衣料、台所、住居、食器等)洗剤原料、香粧品原料、医薬品用、乳化(重合)用、農薬用、繊維加工用(精錬剤、染色助剤、柔軟剤、撥水剤)、防汚加工剤、コンクリート用混和剤、印刷インキ用、潤滑油用、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、脱墨剤等を挙げることができる。
本実施形態の好ましい態様において、結晶セルロース複合化物の飲料、又は食品中における配合量は、好ましくは0.001〜3質量%である。より好ましくは0.02〜0.5質量%である。さらに好ましくは、0.02〜0.1質量%である。配合量が0.001質量%以上であれば、オイルオフ防止等の効果が充分発揮される。また、配合量が3質量%以下であれば飲料の粘度が上がることなく、飲料本来の食感が損なわれることもない。
本実施形態の好ましい態様において、発明で使用される乳成分とは、液状乳類(生乳、牛乳、等)、粉乳類(全粉乳、脱脂粉乳、等)、練乳類(無糖練乳、加糖練乳、等)、クリーム類(クリーム、ホイップクリーム、等)、発酵乳などを意味し、その配合量は無脂乳固形分として0.1〜12%程度、乳脂肪分として0.01〜6%程度である。配合量は目的とする飲料(例えば、乳飲料、乳入り清涼飲料、等)に応じて適宜選択される。
本実施形態の好ましい態様における飲料とは、結晶セルロース複合体と乳成分を含有する飲料であり、具体的には、加工乳、発酵乳飲料、酸性乳飲料、ミルク入り茶類(紅茶、抹茶、緑茶、麦茶、ウーロン茶、等)、ミルク入りジュース類(果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、等)ミルク入りコーヒー、ミルク入りココア、栄養バランス飲料、流動食などである。原料としては、結晶セルロース複合化物、乳成分と、その他に甘味料、香料、色素、酸味料、香辛料、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル・モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル・有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ステアロイル乳酸カルシウム等である。脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸であり、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸などである。有機酸モノグリセリドの有機酸は酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸などである。)、カゼインナトリウム、増粘安定剤(κカラギーナン、ιカラギーナン、λカラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、ペクチン等)、結晶セルロース、食物繊維(難消化性デキストリン、ポリデキストロース、酵素分解グアーガム、水溶性大豆多糖類等)、栄養強化剤(ビタミン、カルシウム等)、フレーバー素材(コーヒー粉末、ミルクフレーバー、ブランデー等)、食品素材(果肉、果汁、野菜、野菜汁、デンプン、穀類、豆類、ハチミツ、植物性油脂、動物性油脂等)、調味料(みそ、しょうゆ、塩、グルタミン酸ナトリウム等)、などを配合してもよい。
本実施形態の好ましい態様における乳飲料の製造は、公知の方法に従う。一例を挙げれば、コーヒーを抽出した液に乳やクリームなどの原料、温水を加えて攪拌・溶解(分散)し、これに本実施形態の結晶セルロース複合化物を加え、均質化後、容器に充填して製造される。殺菌は製品の原料、商品形態(缶、ビン、PETボトル、紙パック、カップ、等)、希望する保存条件(チルド、常温、加温、等)や賞味期限に応じて、HTST殺菌、ホットパック殺菌、レトルト殺菌などの方法を適宜選択して実施される。
以下、本発明について実施例等を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例等で用いる測定評価手段などは以下の通りである。
<平均粒径>
(1)固形分1.0質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー((株)日本精機製作所、ED−7型)にて、15000rpmで5分間分散した。
(2)エースホモジナイザーで分散したサンプル液を堀場レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製)にて平均粒径(積算体積50%)を測定した。相対屈折率は、1.20−0.00iであった。
<外観の評価基準(オイルリング、オイルオフ、沈降、凝集の存在に関する評価)>
−:全くなし
±:ごくわずかにあり
+:あり
++:著しく発生、とした。
「±:ごくわずかにあり」という状態は、手で軽く振ると容易に系が均一になる程度であり、実用的に充分使用可能である。
<ミルクコーヒーの粘度>
製造1日後(5℃保存)に、B形粘度計(BLアダプター使用、ローター回転数60rpm)で測定した。
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽くさっぱりとしている。
○(良):のど越しがやや重く感じる。
×(不可):のど越しが重く糊状感がある。また、オイルリング等の影響によりざらつきがある。
[実施例1]
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い固形分が50質量%のウェットケーキ(結晶セルロース)を作製した。結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルとの質量比が90/9/1、固形分45質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R)に水、ウェットケーキ、アルギン酸プロピレングリコールエステル((株)大阪アルギン、NLS−K)、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)、S−170)を投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物Aを得た。混練後の品温を熱電対で計測したら48℃であった。これを用いて次のようにしてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物A(固形分で1.00部)と、コーヒー生豆250gから温水で2000g抽出した液を25部、牛乳(無脂乳固形分8.8%、乳脂肪3.8%)23部、砂糖6部、炭酸水素ナトリウム0.06部、ショ糖パルミチン酸エステル0.07部を加えた。温水の量は全体が100部となるように使用した。この液を80℃で10分間プロペラ攪拌し、次いで、ピストン型ホモジナイザー(一次圧:15MPa、2次圧:5MPa)で1回均質化処理を行い、200mL容のガラス製耐熱ビンに充填した。これを殺菌処理し(124℃、20min)、水道水で冷却して1ヶ月静置保存(60℃を2週間した後、2℃を2週間)し、外観の均一性(オイルリング、オイルオフ、沈降、凝集)を目視観察した。結果を表−1に示す。
[実施例2]
結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルの質量比が80/15/5、固形分40質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサーに実施例1のウェットケーキ、水、アルギン酸プロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルを投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物Bを得た。混練後の品温を熱電対で計測したら47℃であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロース複合化物Bに代え、配合量を固形分で0.06部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−1に示す。
[実施例3]
実施例2の結晶セルロース複合化物Bを熱風乾燥機で乾燥(105℃、1時間)した後、ハンマーミルで粉砕し、結晶セルロース複合化物Cを得た。結晶セルロースCの含水率は4.5質量%であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロースCの固形分0.10部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−1に示す。
[実施例4]
結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルの質量比が70/20/10、固形分45質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサーに実施例1のウェットケーキ、水、アルギン酸プロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルを投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物Dを得た。混練後の品温を熱電対で計測したら51℃であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロース複合化物Dの固形分0.08部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−1に示す。
[実施例5]
結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルの質量比が65/15/20、固形分40質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサーに実施例1のウェットケーキ、水、アルギン酸プロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルを投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物Eを得た。混練後の品温を熱電対で計測したら49℃であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロース複合化物Eの固形分0.06部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−1に示す。
[実施例6]
結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルの質量比が50/25/25、固形分50質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサーに実施例1のウェットケーキ、水、アルギン酸プロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルを投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物Fを得た。混練後の品温を熱電対で計測したら46℃であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロース複合化物Fの固形分0.50部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−1に示す。
[実施例7]
実施例1で作製した結晶セルロース複合化物Aを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aの固形分を3.00部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−1に示す。
[比較例1]
結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルの質量比が96/2/2、固形分45質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサーに実施例1のウェットケーキ、水、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ショ糖脂肪酸エステルを投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物を得た。混練後の品温を熱電対で計測したら50℃であった。上記結晶セルロース複合化物を熱風乾燥機で乾燥(105℃、1時間)した後、ハンマーミルで粉砕し、結晶セルロース複合化物Gを得た。結晶セルロースの含水率は4.5質量%であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロース複合化物Gの固形分0.05部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−2に示す。
[比較例2]
結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルの質量比が80/10/10、固形分30質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサーに実施例1のウェットケーキ、水、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ショ糖脂肪酸エステルを投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物Hを得た。混練後の品温を熱電対で計測したら46℃であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロース複合化物Hの固形分0.05部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−2に示す。
[比較例3]
結晶セルロース/アルギン酸プロピレングリコールエステル/ショ糖脂肪酸エステルの質量比が45/27.5/27.5、固形分50質量%の条件で仕込み固形分が500gになるように、プラネタリーミキサーに実施例1のウェットケーキ、水、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ショ糖脂肪酸エステルを投入し2時間混練し結晶セルロース複合化物Iを得た。混練後の品温を熱電対で計測したら53℃であった。これを用いてミルクコーヒーを作製した。結晶セルロース複合化物Aを結晶セルロース複合化物Iの固形分0.05部に代えた以外は実施例1と同様にしてミルクコーヒーを作製し評価した。結果を表−2に示す。
Figure 0005255419

Figure 0005255419
本発明は、結晶セルロース複合化物を含有する乳成分入り飲料において、オイルリング、オイルオフ、凝集、沈殿などの発生を抑制することで商品価値を高めるのに有用である。

Claims (2)

  1. 結晶セルロース50〜95質量%、アルギン酸エステル1〜25質量%及び乳化剤1〜25質量%を含み、固形分量が35〜60質量%である、結晶セルロース複合化物。
  2. 結晶セルロース、アルギン酸エステル及び乳化剤と、溶媒とを含む、混練時の固形分が35〜60質量%の半固形状態の混合物を用いて、混練物を得るように混練する工程を含む製造方法により得られる請求項1に記載の結晶セルロース複合化物。
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