以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
ここでは、有機半導体素子の一例として、トランジスタ及びその製造方法の好適な実施形態について説明する。トランジスタとしては、電流を増幅またはスイッチ動作させる半導体素子であり、有機半導体化合物を含有する活性層を備えるものであれば特に制限なく適用できる。そして、トランジスタは、活性層と、この活性層と隣接する他の層とを少なくとも備えた構成を有しており、活性層は上記他の層における当該活性層を形成させる面上に形成されたものである。このようなトランジスタとしては、バイポーラトランジスタ、静電誘導型トランジスタ、電界効果型トランジスタ等が挙げられる。
そして、以下の説明では、特に、ソース電極及びドレイン電極、これらの電極間の電流経路となり有機半導体化合物を含有する活性層、電流経路を通る電流を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置された絶縁層を備えるトランジスタ及びその製造方法について説明する。このような構成を有するトランジスタとしても、例えば、電界効果トランジスタの場合、プレーナ型、逆スタガ型、スタガ型等の種々の構造のものが挙げられる。
まず、図1〜図6を参照して、第1〜第6実施形態のトランジスタの構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るトランジスタの模式断面図である。図1に示すトランジスタ100は、基板10と、基板10上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うようにして基板10上に形成された絶縁層14と、絶縁層14上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、ソース電極16及びドレイン電極18を覆うように絶縁層14上に形成された活性層20と、を備えるものである。
図2は、第2実施形態に係るトランジスタの模式断面図である。図2に示すトランジスタ105は、ゲート電極12と、ゲート電極12上に形成された絶縁層14と、絶縁層14上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、ソース電極16及びドレイン電極18を覆うように絶縁層14上に形成された活性層20と、を備えるものである。なお、このトランジスタ105におけるゲート電極12は、上記第1実施形態のトランジスタ100における基板10の機能も兼ねるものである。
図3は、第3実施形態に係るトランジスタの模式断面図である。図3に示すトランジスタ110は、ゲート電極12と、ゲート電極12の両面に形成された絶縁層14と、一方の絶縁層14上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、ソース電極16及びドレイン電極18を覆うように絶縁層14上に形成された活性層20と、活性層20上に形成された支持フィルム52と、を備えるものである。このトランジスタ110におけるゲート電極12は、上記第1実施形態のトランジスタ100における基板10の機能も兼ねるものである。
図4は、第4実施形態に係るトランジスタの模式断面図である。図4に示すトランジスタ115は、ゲート電極12と、ゲート電極12上に形成された絶縁層14と、絶縁層14上に形成された活性層20と、活性層20上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、を備えるものである。
図5は、第5実施形態に係るトランジスタの模式断面図である。このトランジスタ120は、静電誘導型有機薄膜トランジスタである。図5に示すトランジスタ120は、基板10と、基板10上に形成されたソース電極16と、ソース電極16上に形成された活性層20と、活性層20上に複数(ここでは4つ)形成されたゲート電極12と、これらのゲート電極12を覆うように活性層20上に形成された活性層24と、この活性層24上に形成されたドレイン電極18と、を備えるものである。このトランジスタ120において、2つの活性層20及び24は、同一の材料により構成される層であってもよく、異なる材料によって構成された層であってもよい。
図6は、第6実施形態に係るトランジスタの模式断面図である。このトランジスタ125は、基板10と、基板10上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、これらのソース電極16及びドレイン電極18を覆うように基板10上に形成された活性層20と、活性層20上に形成された絶縁層14と、絶縁層14上に形成されたゲート電極12と、を備えるものである。
上述した第1〜第4及び第6実施形態に係るトランジスタにおいては、いずれも、活性層20は、有機半導体化合物を含有する層であり、ソース電極16とドレイン電極18の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極12は、電圧を印加することにより活性層20における電流通路(チャネル)を通る電流を制御する。
また、第5実施形態に係るトランジスタにおいては、活性層20及び24が、有機半導体化合物を含有し、ソース電極16とドレイン電極18との間の電流通路となる。ゲート電極12は、上記と同様に電流通路を通る電流を制御する。
以下、上記各実施形態のトランジスタの製造方法を、トランジスタの更に詳細な構成とともに説明する。
(第1実施形態のトランジスタの製造方法)
まず、第1実施形態のトランジスタの製造方法について説明する。図7は、第1実施形態に係るトランジスタの製造方法を示す工程図である。この製造方法では、まず、基板10と、基板10上に形成されたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うようにして基板10上に形成された絶縁層14と、絶縁層14上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18とを備える素子基板30を準備する(図7(a))。また、これとは別に、有機半導体化合物を含有する活性層20となるべき活性フィルム22を準備する(図7(b))。
基板10としては、電界効果トランジスタとしての特性を阻害しないものが用いられ、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板やステンレスホイル基板が挙げられる。絶縁層14は、電気の絶縁性が高い材料からなるものであり、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、絶縁性ポリマー等を用いることができる。ここで、絶縁性ポリマーとしては、ポリイミド、ポリ(ビニルフェノール)、ポリエステル、メタクリル樹脂、ポリカーボネイト、ポリスチレン、パリレン等が挙げられる。
絶縁層14は、その表面が種々の方法により物理的・化学的に修飾されていてもよい。物理的な修飾方法としては、例えば、オゾンUVやO2プラズマによる処理が挙げられる。また、化学的な修飾方法としては、例えば、シランカップリング剤等の表面処理剤による処理が挙げられる。表面処理剤としては、アルキルクロロシラン類、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物等が挙げられる。この表面処理は、例えば、上記表面処理剤の溶液や気体に絶縁層14を接触させ、表面処理剤を絶縁層14の表面に吸着させることで行うことができる。表面処理前には、絶縁層14の表面処理を行う面を、オゾンUVやO2プラズマで処理しておくこともできる。
基板10上への絶縁層14の形成方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱蒸着法、熱酸化法、陽極酸化法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の方法が挙げられる。
ゲート電極12、ソース電極16及びドレイン電極18は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、銅、クロム、ニッケル、チタン等の金属、ITO等の導電性酸化物、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合高分子等の導電性高分子が例示される。また、金属微粒子、カーボンブラック、グラファイト微粉がバインダー中に分散した導電性材料でもよい。
上記構成を有する素子基板30は、公知のトランジスタの製造方法により製造することができ、例えば、米国特許6107117号明細書に記載された方法が適用できる。
一方、活性層20となるべき活性フィルム22は、有機半導体化合物のみから構成されるものでもよく、有機半導体化合物以外の添加成分を更に含有するものでもよい。有機半導体化合物としては、低分子有機半導体化合物や高分子有機半導体化合物が挙げられる。添加成分としては、ドーパント、活性層20内のキャリアを調整する調整材料、活性フィルムの機械的特性を高めるための高分子材料等が挙げられる。なお、活性フィルム22は、複数種の有機半導体化合物や、複数種の添加成分を含むものであってもよい。有機半導体化合物としては、良好な成膜性を得る観点からは、低分子有機半導体化合物よりも高分子有機半導体化合物の方が好ましい。また、活性層20を形成するための活性フィルム22は、これらの化合物の単結晶から構成されてもよい。単結晶からなる活性フィルム22であっても、施工液を介した貼り付けにより容易に活性層20を形成することができる。
低分子有機半導体化合物や高分子有機半導体化合物としては、例えば、下記に例示される化合物がそれぞれ挙げられる。なお、本発明のトランジスタにおける活性層20に含まれる有機半導体化合物は、必ずしも以下に例示したものには限定されない。
低分子有機半導体化合物としては、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾペンタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ナフトペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ナノアセン等のポリアセン化合物;フェナントレン、ピセン、フルミネン、ピレン、アンタンスレン、ペロピレン、コロネン、ベンゾコロネン、ジベンゾコロネン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾジコロネン、ビニルコロネン等のコロネン化合物;ペリレン、テリレン、ジペリレン、クオテリレン等のペリレン化合物;トリナフチン、ヘプタフェン、オバレン、ルビセン、ビオラントロン、イソビオラントロン、クリセン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、ビフェニル、トリフェニレン、ターフェニル、クォターフェニル、サーコビフェニル、ケクレン、フタロシアニン、ポルフィリン、フラーレン(C60、C70)、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン化合物、ポリチオフェンのオリゴマー、ポリピロールのオリゴマー、ポリフェニレンのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンのオリゴマー、チオフェンとフェニレンとの共重合体オリゴマー、チオフェンとフルオレンとの共重合体オリゴマー等が挙げられる。また、これらの低分子有機半導体化合物の誘導体を用いることもできる。このようなものとしては、例えば、テトラセンのベンゼン環付加誘導体のルブレンなどがある。また、フラーレン類の共役系を拡張したカーボンナノチューブ等も例示できる。
また、高分子有機半導体化合物としては、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリトリフェニルアミン、トリフェニルアミンとフェニレンビニレンとの共重合体、チオフェンとフェニレンとの共重合体、チオフェンとフルオレンとの共重合体等が挙げられる。また、これらの高分子有機半導体化合物の誘導体を用いることもできる。このようなものとしては、例えば、ポリチオフェンのアルキル置換体のポリ(3−ヘキシルチオフェン)等が例示できる。
高分子有機半導体化合物としては、具体的には、下記のような構造を有するものが例示できる。
上記式(1a)〜(1i)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。nは1以上の整数である。
有機半導体化合物以外の添加成分であるドーパントとしては、アクセプター性のドーパントとドナー性のドーパントが挙げられる。
まず、アクセプター性のドーパントとしては、ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素、臭素化ヨウ素等のハロゲン;硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物;硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物;テトラフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸塩、リン酸、リン酸塩、トリフルオロ酢酸等の酸又はその塩;テトラシアノキノジメタン、テトラクロロテトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、ジクロロシアノエチレン、ジクロロジシアノキノン、テトラクロロキノン、炭酸ガス、酸素等が例示できる。
また、ドナー性のドーパントとしては、テトラチアフルバレン、テトラメチルテトラチアフルバレン、テトラセレナチアフルバレン;ジフェニルフェニレンジアミン、テトラフェニルフェニレンジアミン、テトラフェニルジアミノジフェニル、ポリビニルカルバゾール等のアミン化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属やこれらの金属と有機化合物との錯体等が例示できる。
その他、活性層20内のキャリアを調整する調整材料としては、導電性を有する材料、例えば、アルミ、鉄、銅、ニッケル、亜鉛、銀、白金、金等の遷移金属やこれらの微粒子が挙げられる。
さらに、活性フィルム22の機械的特性を高めるための高分子材料としては、ポリカーボネイト、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
このような活性フィルム22の製造においては、例えば、まず、有機半導体化合物、又は、有機半導体化合物及びこれ以外の添加成分を、有機溶媒に溶解・分散させて溶液とする。次いで、この溶液を、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に塗布した後、有機溶媒を揮発させる。これにより、活性フィルム22が得られる。なお、この活性フィルム22を使用する際には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板から活性フィルム22を剥離することが好ましい。
活性フィルム22を製造するための溶液に用いる有機溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;アニソール等のアルコキシ基を有する芳香族系溶媒等が挙げられる。
また、溶液の塗布方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等が例示できる。
有機半導体化合物を含有する活性層20を有するトランジスタでは、この活性層20が配向性を有していると、有機半導体化合物の分子が一方向に並ぶこととなるため、トランジスタの特性(キャリア移動度)が向上する傾向にある。したがって、活性層20は、配向処理されていることが好ましい。
このように配向された活性層20を得るためには、活性フィルム22の段階で配向させておくことも好ましい。配向させるための方法としては、まず、活性フィルム22を延伸する方法が挙げられる。延伸方法としては、1軸延伸、2軸延伸、液中膨潤延伸、ロールによる延伸などの方法が例示される。
1軸延伸は、四角形にした活性フィルム22の1対の対辺をそれぞれチャックにはさみ、反対方向に引張り伸ばす方法である。このとき、室温で引っ張ってもよく、適度に加熱しながら引っ張ってもよい。また、引張りは、窒素ガスなどの特定のガス雰囲気下で行うこともできる。
また、2軸延伸は、四角形にした活性フィルム22の2対の対辺をそれぞれチャックにはさみ、同時に、または、逐次に、2つの対辺方向にフィルムを引張り伸ばす方法である。このとき、室温で引っ張ってもよく、適度に加熱しながら引っ張ってもよい。また、引張りは、窒素ガスなどの特定のガス雰囲気下で行うこともできる。
さらに、液中膨潤延伸とは、活性フィルム22が溶解せずに膨潤する適当な溶液に、活性フィルム22を浸し、その中で上記1軸延伸や2軸延伸によってフィルムを引っ張り伸ばす方法である。この場合、引っ張りは、室温で行ってもよく、適度に加熱しながら行ってもよい。
第1実施形態に係る製造方法においては、上述のように、素子基板30及び活性フィルム22を準備した後、活性フィルム22と素子基板30における絶縁層14との間に施工液40を介在させて、これらを貼りあわせる貼付工程を実施する(図7(c))。この絶縁層14における活性フィルム22が貼り付けられる面が、活性層20を形成させる面に該当する。
貼付工程で用いる施工液40は、絶縁層14と活性フィルム22の両方を濡らすことができる性質を有する液状の物質(液体)である。このような施工液40としては、絶縁層14の活性層20を形成させる面との接触角が120度以下となるものが好ましく、90度以下となるものがより好ましく、60度以下となるものがさらに好ましい。ここで、「接触角」とは、空気中で絶縁層14上に施工液40の液滴を形成させた場合に、これら3相の接触点から施工液40に引いた接線と絶縁層14の表面とのなす角のうち、施工液40を含む方の角度をいう。
好適な施工液40は、絶縁層14の種類(絶縁層14との接触角)に応じて適宜選択することが望ましい。例えば、絶縁層14の表面が酸化シリコン(SiO2等)である場合、アルキルトリクロロシラン(オクタデシルトリクロロシラン等)で修飾された酸化シリコンである場合、窒化シリコンである場合、有機系絶縁膜である場合等は、施工液40としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜8のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、クロロホルム等のハロゲン系溶媒(より好ましくはアルコールなどを混合したもの)、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒(より好ましくはアルコールなどを混合したもの)、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、水(より好ましくは界面活性剤を含有するもの)、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アンモニア水等のアミン系化合物を含む溶媒等が好適である。
施工液40は、絶縁層14に対する濡れ性を調節するための界面活性剤等の添加物や、活性層20によるトランジスタ特性を調節し得るドーパント、活性層20中のキャリアの濃度を調節するための材料等を更に含んでいてもよい。なお、施工液40として例示した上記の溶媒は、単独で用いてもよく、2種又はそれ以上を混合して用いてもよい。
活性フィルム22と絶縁層14との間に施工液40を介在させて、これらを貼りあわせる方法としては、例えば、活性フィルム22及び絶縁層14のうちの一方の表面上に施工液40を塗布した後、他方をこの施工液40上に積層する方法が挙げられる。また、これ以外の方法としては、活性フィルム22と絶縁層14との間を所定のギャップ(隙間)を隔てて保持しておき、このギャップ中に施工液40を注入する方法等も例示できる。これらの方法において、施工液40が、上述したように絶縁層14との接触角が120度以下となるものであると、絶縁層14の表面を効率よく濡らすことが可能となり、貼りあわせを一層良好に行うことが可能となる。
なお、施工液40を介した貼りあわせの際には、活性フィルム22の全てが施工液40中に溶出しないようにする。活性フィルム22の全てが溶出してしまうと、均一な活性層20を形成することが困難となるからである。活性フィルム22の溶出を避けるためには、施工液40として、活性フィルム22の溶解度パラメータ(SP値)とは異なる溶解度パラメータを持つものを用いることが好ましい。なお、貼りあわせにおいて、活性フィルム22は全てが溶解していなければよく、一部溶解が生じていても問題はない。
貼付工程においては、加熱及び/又は加圧を行ってもよい。これにより、活性フィルム22と絶縁層14との密着性を向上し得るほか、後述する除去工程での揮発成分の除去を促進することが可能となる。加熱及び加圧は、その一方のみを行ってもよく、両方を行ってもよい。両方を行う場合は、加熱と加圧とを同時に行なってもよく、一方を先に行った後、他方を行うようにしてもよい。なお、貼付工程は、上記加熱及び/又は加圧に加え、密着性の更なる向上や、施工液の除去の更なる促進のため、減圧条件下で行ってもよい。また、有機半導体化合物の種類によっては、大気下で望ましくない特性変化を生じる場合もあるため、貼付工程は、必要に応じて減圧下のほか、窒素などの不活性雰囲気、遮光された光等の条件下や、水分、酸素等がコントロールされた環境下で行ってもよい。
ただし、貼付工程における加熱や加圧は、過剰な条件で行うと、活性フィルム22の特性(例えば配向性)等に変化が生じて、所望の特性を有する活性層20が得られ難くなるおそれがある。したがって、加熱や加圧は適度な条件で行うことが好ましい。好適な加熱条件としては、室温以上であって、貼りあわせる絶縁層14やこれらが形成されている素子基板30等に変形が生じない程度の温度条件が挙げられる。例えば、活性フィルム22が高分子有機半導体化合物からなる場合は、その液晶相又は等方相転移温度以下の温度が好ましい。なお、これを超える温度であっても、上記の不都合を生じない程度の短時間の加熱であれば実施することができる。
また、加圧は、活性フィルム22と絶縁層14との積層方向に行うが、例えば、活性フィルム22の上から荷重をかけるようにしてもよく、ロールを用いて活性フィルム22と素子基板30の全体を加圧するようにしてもよい。加圧の際の圧力は、活性フィルム22や、素子基板30を構成している絶縁層14、基板10、ソース電極16やドレイン電極18の変形や不良が発生しない程度とすることが好ましい。
そして、以上の方法で貼付工程を実施した後、必要に応じて施工液40中の不要な揮発成分を除去する除去工程を実施する。この除去工程により施工液40中の不要な揮発成分を除去することで、第1実施形態のトランジスタ100が得られる(図7(d))。なお、この除去工程において、施工液40は全て除去してもよく、一部が残るようにしてもよい。例えば、絶縁層14と活性層20との接着性が良好に保たれるのであれば、施工液40を全て除去してもよい。
トランジスタ100における活性層20の厚さは、10nm以上であると好ましく、40nm以上であるとより好ましく、200nm以上であると更に好ましい。活性層20の厚さが10nm以上であると、十分良好なトランジスタ特性が得られるようになり、更に厚い活性層20とすることで、一層移動度の高いトランジスタが得られ易くなる。また、活性層20の厚さを厚くすることで、製造時に受ける物理的損傷等による不都合を生じ難くなる傾向にある。所望の厚さの活性層20を得るには、活性フィルム22の段階で厚さを適宜調整しておくことが好ましい。なお、活性層の好適な厚さは、下記の第2〜第3実施形態のトランジスタにおいても適用される。
(第2実施形態のトランジスタの製造方法)
次に、第2実施形態に係るトランジスタの好適な製造方法について説明する。
図8は、第2実施形態に係るトランジスタの製造方法を示す工程図である。この製造方法においては、まず、ゲート電極12と、ゲート電極12上に形成された絶縁層14と、絶縁層14上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18とを備える素子基板32を準備する(図8(a))。ここで、ゲート電極12は、基板としての機能も兼ねるものである。このようなゲート電極12としては、例えば、高濃度ドープシリコンやアルミ等の金属基板が好適である。絶縁層14、ソース及びドレイン電極16,18は、上記第1実施形態と同様にして形成することができる。
また、素子基板32の製造とともに、有機半導体化合物を含有する活性層20となるべき活性フィルム22を準備する(図8(b))。その後、活性フィルム22と絶縁層14との間に施工液40を介在させて、これらを貼り合わせる貼付工程を行う(図8(c))。これらの工程は、第1の実施形態と同様にして実施することができる。
そして、上記の貼付工程を実施した後、必要に応じて施工液40中の不要な揮発成分を除去する除去工程を行い、これにより第2実施形態に係るトランジスタ105が得られる(図8(d))。
(第3実施形態のトランジスタの製造方法)
次に、第3実施形態に係るトランジスタの製造方法を説明する。
図9は、第3実施形態に係るトランジスタの製造方法を示す工程図である。この製造方法においては、まず、ゲート電極12と、ゲート電極12の両面に形成された絶縁層14と、一方の絶縁層14上に形成されたソース電極16及びドレイン電極18とを備える素子基板34を準備する(図9(a))。また、これとは別に、第1実施形態における活性フィルム22に代えて、積層体50(支持フィルム52上に活性フィルム22を積層したもの)を準備する(図9(b))。なお、素子基板34における絶縁層14、ソース電極16及びドレイン電極18は、上記第1実施形態と同様にして形成可能である。
積層体50における支持フィルム52は、無機材料、有機材料いずれからなるものであってもよい。例えば、ポリシロキサン、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテン樹脂、ポリカーボネイト、ポリイミド、ポリアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が例示できる。
ここで、例えば、活性フィルム22を絶縁層14と貼りあわせる前に配向させる場合、活性フィルム22単独で配向させる方法と、積層体50を形成してから配向させる方法とが考えられる。後者の場合、支持フィルム52としては、延伸等の配向操作が可能なものが好ましい。このような支持フィルム52としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテン樹脂、ポリカーボネイト、ポリイミド、ポリアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が好適である。
また、支持フィルム52は、支持フィルム52に積層した活性フィルム22との剥離を促進するような機能性を有する層を備えていてもよい。例えば、このような層としては、光を熱に変換する機能を有する層や熱により膨張する層等が挙げられる。これらの層は、熱によって支持フィルム52と活性フィルム22との剥離を促進することができる。したがって、支持フィルム52がこれらの層を有する場合、積層体50と絶縁層14とを貼りあわせる貼付工程の後、光の照射や加熱を行うことによって、容易に支持フィルム52を活性層20から剥離することができるようになる。
さらに、支持フィルム52が、上記のような光を熱に変換する機能を有する層や熱により膨張する層を有する場合は、活性層20のパターニングが容易となる場合がある。すなわち、例えば、積層体50を絶縁層14に貼り付けた後、活性フィルム22の所定部分に支持フィルム52を介して光を照射したり、こてによる加熱を行ったりする。こうすると、活性フィルムの光照射部分や加熱部分が絶縁層14上に転写される一方、これ以外の部分は支持フィルム52とともに剥離され易くなる。その結果、活性フィルム22の上記所定部分のみが絶縁層14上に残り、これによりパターニングされた活性層20が形成されることになる。
積層体50は、例えば、支持フィルム52とあらかじめ形成した活性フィルム22との貼り合わせや、支持フィルム52への有機半導体化合物の直接的付与、支持フィルム52への有機半導体化合物の溶液の直接的塗布により形成できる。支持フィルム52への有機半導体化合物の直接的付与は、例えば、固体の有機半導体化合物の場合、支持フィルム52上への有機半導体化合物の蒸着、溶融物のスプレーコート、昇華付与等により行うことができる。また、単結晶の有機半導体化合物の場合は、支持フィルム52上への自然密着や、接着剤を用いた貼り合わせといった手法を適用できる。
支持フィルム52への有機半導体化合物の溶液の直接的塗布は、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等により行うことができる。
活性フィルム22を、絶縁層14への貼り付け前に配向させる場合は、積層体50の状態で行うことができる。配向は、上述した第1実施形態と同様、1軸延伸、2軸延伸、液中膨潤延伸などにより行うことができる。この場合、活性フィルム22とともに支持フィルム52も延伸されることとなる。
また、活性フィルム22を構成している有機半導体化合物が液晶性を有している場合は、延伸のほか、液晶の配向手法として知られているその他の方法で活性フィルム22の配向を行ってもよい。このような方法としては、例えば、「液晶の基礎と応用」(松本正一、角田市良共著、工業調査会1991年)第5章、「強誘電性液晶の構造と物性」(福田敦夫、竹添秀男共著、コロナ社、1990年)第7章、「液晶」第3巻第1号(1999年)3〜16頁等に記載の方法等が挙げられる。
このような配向方法としては、例えば、ラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が簡便かつ有用で特に利用しやすい。
ラビング法とは、支持フィルム52を布などで軽く擦る方法である。支持フィルム52を擦る布としては、ガーゼやポリエステル、コットン、ナイロン、レーヨンなどの布を用いることができる。ラビングに用いる布は、配向させる膜にあわせて適宜選択することができる。この場合、支持フィルム52上に別途配向膜を形成すると、より配向性能が高くなる。この配向膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられ、市販の液晶用配向膜も適用できる。配向膜はスピンコート法やフレキソ印刷などで形成することができる。
また、光配向法とは、支持フィルム52上に配向膜を形成し、偏光UV光照射あるいはUV光を斜入射照射することによって配向機能を持たせる方法である。配向膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルシンナメートなどが挙げられ、市販の液晶用配向膜も適用できる。
このようなラビング法や光配向法によって、上記の処理を施した支持フィルム52上に積層された有機半導体化合物(活性フィルム22)を配向させることができる。この配向は、支持フィルム52上において、有機半導体化合物が液晶相または等方相の温度となるようにすることで生じる。また、有機半導体化合物を、配向処理を施した後の支持フィルム52上に付与することによっても、支持フィルム52上に形成される活性フィルム22を配向させることができる。
さらに、支持フィルム52上に有機半導体化合物を塗布する場合、塗布を、有機半導体化合物を支持フィルム52上にのせ、そのTg以上か或いは液晶相又は等方相を示すような温度に設定し、ロッドなどで一方向にコーティングすることにより行うことで、配向を生じさせることができる。また、有機半導体化合物を有機溶媒に溶解した溶液を調製し、これをスピンコートやフレキソ印刷などで塗布してもよい。なお、有機半導体化合物が液晶性を持たない場合であっても、蒸着が可能なものであれば、この有機半導体化合物を、配向処理をした支持フィルム52上にエピタキシアル的に蒸着させることで、配向された有機半導体化合物からなる層(活性フィルム22)を得ることができる。
また、シェアリング法とは、支持フィルム52上にのせた有機半導体化合物の上に別の基板をのせ、有機半導体化合物が液晶相又は等方相になる温度下で上方の基板を一方向にずらす方法である。このとき、支持フィルム52として、上記ラビング法や光配向法で記載したような配向処理を施した支持層を有するものを用いると、より配向度が高い活性フィルム22が得られる。上方の基板としては、ガラスや高分子フィルム等が挙げられ、金属製のロッド等でもよい。
さらに、引き上げ塗布法とは、支持フィルム52を有機半導体化合物の溶液に浸し、引き上げることで、配向した有機半導体化合物の層(活性フィルム22)を支持フィルム52上に形成する方法である。有機半導体化合物の溶液に用いる有機溶剤や、支持フィルム52の引き上げ速度等の条件は特に限定されないが、所望とする有機半導体化合物の配向度にあわせて選択、調整することが好ましい。
以上、活性フィルム22の配向方法について幾つか説明したが、第1〜第6実施形態のいずれにおいても、簡便性や有用性の観点から、配向は延伸によって行うことが好ましい。
次いで、素子基板34及び積層体50を準備した後には、積層体50と素子基板34における絶縁層14との間に施工液40を介在させて、活性フィルム22と絶縁層14とを貼りあわせる貼付工程を実施する(図9(c))。
この貼付工程は、積層体50を活性フィルム22が絶縁層14側に向くように配置し、この積層体50と絶縁層14との間に施工液40を介在させること以外は、第1実施形態の場合と同様にして行うことができる。この貼付工程においては、第1実施形態等と同様に加熱及び/又は加圧を行うことができ、また、減圧条件等としてもよい。
そして、第3実施形態のトランジスタの製造方法においても、貼付工程の後に必要に応じて施工液40中の不要な揮発成分を除去する除去工程を実施することができる。これにより、支持フィルム52が活性層20上に積層された状態の第3実施形態のトランジスタ110が得られる(図9(d))。なお、このトランジスタ110の完成後、支持フィルム52は除去してもよく、実用上問題なければそのまま積層させておいてもよい。支持フィルム52を積層させておく場合、この支持フィルム52としては、活性層20の特性を低下させる要因(物理的損傷、大気等によるガスの影響、帯電等)から保護できる機能を兼ね備えるものを適用することが好ましい。
(第4実施形態のトランジスタの製造方法)
次に、第4実施形態に係るトランジスタの製造方法を説明する。
図10は、第4実施形態に係るトランジスタの製造方法を示す工程図である。この製造方法においては、まず、ゲート電極12と、この上に形成された絶縁層14とを備える第1の素子基板36を準備する(図10(a))。このゲート電極12は、基板としての機能を兼ね備えるものである。ゲート電極12及び絶縁層14の構成及び製造方法は、第2実施形態等と同様にして行うことができる。
また、第1の素子基板36の製造とともに、有機半導体化合物を含有する活性層20となるべき活性フィルム22を準備する(図10(b))。それから、活性フィルム22と第1の素子基板36における絶縁層14との間に施工液40を介在させて、これらを貼り合わせる貼付工程を行う(図10(c))。この貼付工程も、第1実施形態等と同様にして実施することができる。また、貼付工程では、活性フィルム22の代わりに、第3実施形態のような積層体50を用いてもよい。この場合、貼り付け後、積層体50における支持フィルム52を除去してから後述の操作を行う。
次いで、必要に応じて施工液40中の不要な揮発成分を除去する除去工程を行うことで、素子基板36上に活性層20が形成された第2の素子基板60を形成する(図10(d))。そして、この第2の素子基板60における活性層20上に、第1実施形態等と同様にしてソース電極16及びドレイン電極18を形成し、これにより第4実施形態に係るトランジスタ115を得る(図10(e))。
(第5実施形態のトランジスタの製造方法)
次に、第5実施形態に係るトランジスタの好適な製造方法について説明する。
図11及び図12は、第5実施形態に係るトランジスタの製造方法を示す工程図である。この製造方法では、まず、基板10と、この上に形成されたソース電極16を備える第1の素子基板38を準備する(図11(a))。
また、これとは別に、有機半導体化合物を含有する活性層20となるべき活性フィルム22を準備する(図11(b))。それから、活性フィルム22と第1の素子基板38におけるソース電極16との間に施工液40を介在させて、これらを貼り合わせる第1の貼付工程を行う(図11(c))。かかる第1の貼付工程は、第1実施形態等と同様にして実施することができる。
その後、必要に応じて施工液40中の不要な揮発成分を除去する第1の除去工程を行い、これにより、第1の素子基板38上に活性層20を形成する(図11(d))。次に、この活性層20上に、複数(ここでは4つ)のゲート電極12を形成し、これにより第2の素子基板62を得る(図11(e))。このゲート電極12も、第1実施形態等と同様のものを適用できる。
次いで、この第2の素子基板62(図12(e))とともに、有機半導体化合物を含有する活性層24となるべき活性フィルム26を別に準備する(図12(f))。この活性フィルム26を構成する有機半導体化合物としては、活性層20と同様のものを適用してもよく、異なるものを適用してもよい。それから、この活性フィルム26と、第2の積層基板62における活性層20との間に施工液40を介在させて、これらを貼りあわせる第2の貼付工程を実施する(図12(g))。これにより、活性フィルム26は、活性層20上にゲート電極12を覆うようにして貼り付けられる。この第2の貼付工程も、第1実施形態等と同様に行うことができる。なお、第2の貼付工程で用いる施工液40は、第1の貼付工程と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
その後、必要に応じて施工液40中の不要な揮発成分を除去する第2の除去工程を行い、活性フィルム26を、ゲート電極12を挟むように活性層20に対して密着させ、活性層24を形成させる(図12(h))。そして、このようにして形成された活性層24上に、第1実施形態等と同様にしてドレイン電極18を形成し、これにより第5実施形態に係るトランジスタ120を得る。なお、この第5実施形態のトランジスタの製造工程において、活性層20及び24のうちのどちらか一方は、例えば、特開2004−006476号公報に記載の方法によって形成してもよい。また、第1や第2の貼付工程では、活性フィルム22の代わりに、第3実施形態のような積層体50を用いてもよい。この場合、貼り付け後、積層体50における支持フィルム52を除去してからその後の操作を行う。
(第6実施形態のトランジスタの製造方法)
次に、第6実施形態に係るトランジスタの好適な製造方法について説明する。
図13及び図14は、第6実施形態に係るトランジスタの製造方法を示す工程図である。この製造方法においては、まず、基板10と、この上にソース電極16及びドレイン電極18を備える素子基板64を準備する(図13(a))。このソース電極16及びドレイン電極18は、第1実施形態等と同様の方法で形成することができる。
また、素子基板64の製造とともに、有機半導体化合物を含有する活性層20となるべき活性フィルム22を準備する(図13(b))。それから、活性フィルム22と素子基板64における基板10との間に施工液40を介在させて、これらを貼り合わせる貼付工程を行う(図13(c))。この貼付工程も、第1実施形態等と同様にして実施することができる。
次いで、必要に応じて施工液40中の不要な揮発成分を除去する除去工程を行うことで、素子基板64上にソース電極16及びドレイン電極18を覆うように活性層20を形成させる(図13(d))。それから、この活性層20上に、第1実施形態等と同様にして絶縁層14を形成する(図14(e))。そして、このようにして形成された絶縁層14上に、第1実施形態と同様にしてゲート電極12を形成し、これにより第6実施形態に係るトランジスタ125を得る(図14(f))。
なお、この第6実施形態のトランジスタの製造においても、貼付工程において、活性フィルム22の代わりに、第3実施形態のような積層体50を用いることができる。この場合、貼り付け後に積層体50における支持フィルム52を除去してから続く操作を行う。また、支持フィルム52が、絶縁層14としての機能を兼ね備えるものである場合は、支持フィルム52を除去することなくそのまま絶縁層14としてもよい。
以上、好適な有機半導体素子及びその製造方法の例として、第1〜第6実施形態のトランジスタ及びその製造方法を説明したが、本発明におけるトランジスタは、必ずしも上述した実施形態のものに限定されず、適宜変更したものであってもよい。
例えば、まず、各実施形態のトランジスタにおける活性層20(第5実施形態にあっては活性層20及び24)は、それぞれ単一層のものである必要はなく、複数層からなるものであってもよい。活性層20,24が複数層のものである場合、これらは同じ材料から構成されるものであっても、異なる材料から構成されるものであってもよい。このような複数層からなる活性層20,24は、活性層20,24を形成するための活性フィルム22,26の上に、必要に応じてその上に残っている支持フィルム等を除去した後に、同じ又は異なる種類の活性フィルムを更に積層することで形成することができる。
また、上述した実施形態では、いずれもソース電極16やドレイン電極18と、活性層20又は24とが直接接した構造となっていたが、これに限定されず、ソース電極16及び/又はドレイン電極18と活性層20,24との間に、有機半導体化合物とは異なる化合物からなる層が介在していてもよい。これにより、ソース電極16及びドレイン電極18と、活性層20,24との間の接触抵抗が低減され、トランジスタのキャリア移動度を更に向上させることができるようになる。有機半導体化合物とは異なる化合物としては、ドナー性の化合物、アクセプター性の化合物、チオール基を有する化合物等が挙げられる。
ここで、ドナー性の化合物としては、テトラチアフルバレン、テトラメチルテトラチアフルバレン、テトラセレナチアフルバレン;ジフェニルフェニレンジアミン、テトラフェニルフェニレンジアミン、テトラフェニルジアミノジフェニル、ポリビニルカルバゾール等のアミン化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属や、これらの金属と有機化合物との錯体等が挙げられる。
また、アクセプター性の化合物としては、ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素、臭素化ヨウ素等のハロゲン;硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物;硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素無水物;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物;テトラフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸塩、リン酸、リン酸塩、トリフルオロ酢酸等の酸又はその塩;テトラシアノキノジメタン、テトラクロロテトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、ジクロロシアノエチレン、ジクロロジシアノキノン、テトラクロロキノン等が挙げられる。
さらに、チオール基を有する化合物としては、アルキルチオール類、フッ素化アルキルチオール類等のアルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類、フッ素化芳香族チオール類、ニトロ芳香族チオール類、アミノ芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等が挙げられる。
これらの化合物からなる層は、例えば、上記化合物の溶液や気体を、ソース電極16やドレイン電極18の表面に接触させて、上記化合物をこの接触表面に吸着させることで形成することができる。
また、上述した各実施形態のトランジスタにおいては、ソース電極16やドレイン電極18の厚さは特に制限されない。ただし、第1〜第3及び第5実施形態のように、ソース電極16やドレイン電極18上に活性層20や24等が形成される場合は、活性層20,24との密着性を更に良好とするため、ソース電極16やドレイン電極18は、これらの電極としての機能が損なわれない範囲でできるだけ薄いことが好ましい。
さらに、第1〜第6実施形態のトランジスタは、上述した素子構成を完成させた後に封止を行い、封止トランジスタとすることができる。これにより、トランジスタが大気から遮断されるほか、物理損傷等からも保護されることとなり、トランジスタの特性の低下を抑えることが可能となる。
封止の方法としては、素子構成を、絶縁性ポリマー、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機の酸化シリコン膜や窒化シリコン膜等でカバーする方法、素子構成に対し、ガラス板やフィルムをUV硬化樹脂や熱硬化樹脂等で貼りあわせる方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うためには、トランジスタを作成した後、封止するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中で保管する。)行うことが好ましい。
本発明の有機半導体素子は、有機半導体化合物を含有する活性層を有しており、しかもこの活性層が施工液を介して隣接層と貼りあわされたものであれば、上述したトランジスタには限定されない。トランジスタ以外の有機半導体素子としては、例えば、ダイオード、フォトダイオード、太陽電池、発光ダイオード、メモリ、発光トランジスタ、センサ等が挙げられる。
さらに、上述したトランジスタ等の有機半導体素子は、好適に半導体装置に適用される。半導体装置としては、無線タグ、ディスプレイ、大面センサ等が挙げられる。半導体装置において、例えばトランジスタは、単独で又は他のトランジスタと複数組み合わされることによって論理回路を構成することができる。具体的には、半導体装置であるディスプレイの画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等として好適である。ディスプレイとしては、電子ペーパー、液晶又は有機LED等、幅広く応用可能である。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<有機半導体化合物>
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)及びポリ(3−オクチルチオフェン)は、アルドリッチ社より購入したものを用いた。また、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)及びポリ(3−オクチルチオフェン)は、レジオレギュラーなものを用いた。
(実施例1:第3実施形態の製造方法によるトランジスタの形成と物性の評価)
上述した第3実施形態のトランジスタの製造方法に準拠する方法に従ってトランジスタを製造した。図15は、実施例1のトランジスタの製造工程を示す図である。すなわち、まず、図15(a)に示すように、基板を兼ねるゲート電極となる高濃度にドープされたn−型シリコン基板1の表面を熱酸化により、絶縁層3となるシリコン酸化膜を200nm形成したものを支持基板として用いた。次いで、図15(b)に示すように、この基板の一方の絶縁層3の表面に真空蒸着法により、金を厚さ50nm蒸着し、引き出し線とパッドを有するソース電極4a及びドレイン電極4bを形成した。このときの電極のチャネル幅は500μm、チャネル長は20μmであった。
続いて、文献(S.R.Wasserman,et al.,Langmuir,Vol.5,p1074,1989)に記載の方法を参照して、絶縁層3の表面を、オクタデシルトリクロロシランのオクタン溶液(6mmol/l)に24時間浸漬して修飾し、これにより素子基板6を形成した。
一方、窒素雰囲気のグローブボックス内で、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液(0.5wt%)を調整した。ただし、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の秤量は大気中で行った。それから、窒素雰囲気のグローブボックス内で、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液を、支持フィルム7であるポリエチレンフィルム上に、スピンコート法(1000rpm)で塗布した。これにより、図15(c)に示すように、ポリエチレンの支持フィルム7上にポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8が積層された積層体5を形成した。
次いで、窒素雰囲気のグローブボックス内で、図15(d)に示すように、ソース電極4a及びドレイン電極4bが形成されている絶縁層3の上に、施工液9としてメタノールの液滴をスポイドで置いた。それから、積層体5を、そのポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8が施工液9を介して絶縁層3に面するようにピンセットでのせ、そのままメタノールが乾燥除去されるまで静置した。この際、施工液9と絶縁層3との接触角は40度であった。
メタノールの乾燥除去後、積層体5は、ソース電極4aとドレイン電極4bを覆うようにして絶縁層3上に自然と密着した。それから、メタノールを更に除去するため、窒素雰囲気下で60℃、15分の加熱処理を行った。これにより、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなる活性層2を備えるトランジスタが得られた(図15(e))。
このようにして作成したトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを40〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−40V印加して、トランジスタ特性を測定した。その結果、良好なI−V特性(図17中(a)の曲線)が得られ、VG=−60V、VSD=−40Vにおいて、ドレイン電流−約9μAが得られた。またこのI−V特性から得られた移動度は2.3×10−2cm2/Vs、電流のオン・オフ比は105台であった。
(比較例1:施工液を用いない場合のトランジスタの形成と物性の評価)
図15(a)〜(c)に示す工程に続いて図16(a)及び(b)に示す工程を行い、これにより比較例1のトランジスタを製造した。すなわち、まず、図15(a)、(b)に示す製造工程に従って、実施例1記載の方法と同様にして素子基板6を作成した。
また、窒素雰囲気のグローブボックス内で、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液(0.5wt%)を調製した。ただし、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の秤量は大気中で行った。
次いで、窒素雰囲気のグローブボックス内で、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液を、支持フィルム7であるポリエチレンフィルム上に、スピンコート法(1000rpm)で塗布し、ポリエチレンの支持フィルム7上にポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8が積層された積層体5を形成した(図15(c))。
それから、窒素雰囲気のグローブボックス内で、ソース電極4a及びドレイン電極4bが形成されている絶縁層3の上に、積層体5を、そのポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8が絶縁層3に面するようにピンセットでのせた(図16(a))。これにより、活性層2としてポリ(3−ヘキシルチオフェン)を備えるトランジスタを得た(図16(b))。このようにして得られたトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを40〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−40V印加して、トランジスタ特性を測定したが動作せず、I−V特性が得られなかった。
(比較例2:キャスト法により活性層を形成したトランジスタの形成と物性の評価)
素子基板6は、実施例1記載の方法に準拠して作成した。また、大気下で、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を秤量し、窒素雰囲気のグローブボックス内で、そのクロロホルム溶液(0.1wt%)を調製した。
それから、窒素雰囲気のグローブボックス内で、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液を、ソース電極とドレイン電極が形成されている絶縁層3の上に、キャスト法により塗布し、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなる活性層2を形成した。その後、溶媒の除去のため、窒素雰囲気下、60℃で15分の加熱処理を行った。これにより、図16(c)に示す構造を有するトランジスタを作製した。
このようにして得られたトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを40〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−40V印加してトランジスタ特性を測定した。その結果、図17(b)の曲線に示すI−V特性が得られ、VG=−60V、VSD=−40Vにおいて、ドレイン電流−1μAが得られた。また、このI−V特性から得られた移動度は1.5×10−3cm2/Vs、電流のオン・オフ比は103台であった。
実施例1及び比較例1〜2で作成したトランジスタの特性を表1にまとめて示す。まず、施工液を用いずに貼りあわせた方法(比較例1)により得られたトランジスタは、動作しなかった。また、実施例1のトランジスタの方が、比較例2と比較して著しく移動度が高かった。これより、本発明のトランジスタの製造方法によれば、優れたキャリア移動度を有する活性層を良好に形成可能であることが判明した。
(実施例2〜9:各種の施工液を用いたトランジスタの形成と物性の評価)
以下の点を除いては、実施例1と同様にしてポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなる活性層を備えるトランジスタを製造した。すなわち、まず、素子基板6の作製において、厚さ65nmのソース電極及びドレイン電極を形成した。また、オクタデシルトリクロロシランのオクタン溶液(6mmol/l)への浸漬時間を19.5時間とした。さらに、積層体5の作製においては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液(2wt%)を調製して用いた。そして、積層体5の貼り付けを、メタノールに代えて表2に示す各種の液体を施工液9として用いて行った。また、施工液の乾燥除去は、25℃で静置する条件でのみ行った。
このようにして得られたトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを40〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−60V印加して、トランジスタ特性を測定し、これにより各トランジスタにおける移動度を求めた。得られた結果を表2に示す。なお、表2中、各実施例で用いた施工液の絶縁層3との接触角(°)を併せて示した。また、施工液の接触角に対する、その施工液を用いて得られたトランジスタで得られた移動度をプロットしたグラフを図18に示す。
各トランジスタの製造においては、絶縁層3との接触角が小さい施工液9ほど、絶縁層3の表面を濡らし易く、積層体5を絶縁層3に対して貼りあわせ易かった。そして、表2及び図18に示すように、接触角が小さい施工液9を用いると、移動度が高く、高品位なトランジスタが得られることが判明した。
(実施例10:貼り付け工程において加熱を行うトランジスタの形成及び物性の評価)
積層体5と素子基板6とを貼りあわせる工程において、施工液(アセトニトリル)の乾燥除去後、積層体5が貼り付けられた素子基板6をホットプレート上に載せ、窒素雰囲気下、80℃で60分間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例8と同様にしてポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなる活性層を備えるトランジスタを製造した。
このようにして得られたトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを40〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−60V印加して、トランジスタ特性を測定し、これにより各トランジスタにおける移動度を求めた。得られた結果を表3に示す。表3に示すように、貼付工程で加熱を行うことにより、良好な移動度が得られるようになることが判明した。
(実施例11:配向した活性フィルムを用いたトランジスタの形成及び物性の評価)
積層体5の形成後、この積層体5に延伸操作を施し、かかる延伸操作後の積層体5を素子基板6と貼りあわせたこと以外は、実施例8と同様にしてポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなる活性層トランジスタの製造を行った。延伸操作は、積層体5の形成後、これを窒素雰囲気下、100℃で2.5倍一軸延伸することにより行った。なお、貼りあわせは、延伸後の積層体5の延伸方向が、素子基板6におけるソース電極4aとドレイン電極4bとを結ぶ方向と平行になるようにして行った。
ここで、延伸後の積層体5におけるポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8の配向状態を以下に示すようにして確認した。すなわち、まず、延伸後の積層体5の一部を切り取り、これを、そのポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8面が接するように、ホットプレート上で60℃に加熱したスライドガラスに圧着させた。それから、支持フィルム7のみをピンセットで剥離することで、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8をスライドガラスに転写した。この転写されたポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8を、偏光顕微鏡により観察した。その結果、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム8は、上述した積層体5の延伸方向に配向していることが確認された。
このようにして得られたトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを40〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−60V印加して、トランジスタ特性を測定し、これにより各トランジスタにおける移動度を求めた。得られた結果を表3に示す。表3より、活性層に配向を付与することで、良好な移動度が得られるようになることが確認された。
(実施例12:電極と活性層との間に層を設けるトランジスタの形成及び物性の評価)
素子基板として、素子基板6におけるソース電極4a及びドレイン電極4b上に、4−(トリフルオロメチル)チオフェノールの層500を更に形成した素子基板216を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなる活性層トランジスタの製造を行った。これにより、図19に示すように、ソース電極4a及びドレイン電極4bと、活性層2との間に4−(トリフルオロメチル)チオフェノールの層500を有するトランジスタを得た。4−(トリフルオロメチル)チオフェノールの層500は、素子基板6の形成後、これを4−(トリフルオロメチル)チオフェノールのエタノール溶液(1mmol/L)に0.5時間浸漬することにより形成した。
このようにして得られたトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを40〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−60V印加して、トランジスタ特性を測定し、これによりトランジスタにおける移動度を求めた。得られた結果を表3に示す。表3より、4−(トリフルオロメチル)チオフェノールの層500を設けることで、良好な移動度が得られるようになることが確認された。
(実施例13〜18:各種の厚さの活性層を有するトランジスタの形成と物性の評価)
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)に代えて、ポリ(3−オクチルチオフェン)を用い、且つ、貼付工程における加熱処理を60℃、30分の条件で行ったこと以外は、実施例10と同様にしてポリ(3−オクチルチオフェン)からなる活性層を備えるトランジスタを製造した。実施例13〜18においては、積層体5の形成時のポリ(3−オクチルチオフェン)のクロロホルム溶液の濃度を変化させて、種々の膜厚を有する活性層2を形成した。
このようにして得られたトランジスタに、シリコン基板1をゲート電極として、窒素雰囲気下でゲート電圧VGを20〜−60V、ソース−ドレイン間電圧VSDを−60V印加して、トランジスタ特性を測定し、これにより各トランジスタにおける移動度を求めた。得られた結果を表4に示す。表4中、各実施例のトランジスタがそれぞれ有する活性層2の厚さを併せて示した。
表4より、活性層の膜厚が大きいほど、高い移動度が得られることが判明した。
1…n−型シリコン基板、2…活性層、3…絶縁層、4a…ソース電極、4b…ドレイン電極、5…積層体、6…素子基板、7…支持フィルム、8…ポリ(3−ヘキシルチオフェン)フィルム、9…施工液、10…基板、12…ゲート電極、14…絶縁層、16…ソース電極、18…ドレイン電極、20,24…活性層、22,26…活性フィルム、30,32,34,64…素子基板、36,38…第1の素子基板、40…施工液、50…積層体、52…支持フィルム、60,62…第2の素子基板、100…第1実施形態に係るトランジスタ、105…第2実施形態に係るトランジスタ、110…第3実施形態に係るトランジスタ、115…第4実施形態に係るトランジスタ、120…第5実施形態に係るトランジスタ、125…第6実施形態に係るトランジスタ、500…4−(トリフルオロメチル)チオフェノールの層。