JP5253071B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気記録媒体の製造方法に関するものであり、詳しくは、優れた耐久性を発揮し得る高密度記録用磁気記録媒体の製造方法に関するものである。更に本発明は、上記製造方法により得られた磁気記録媒体に関する。
一般的に、磁気記録媒体は、連続走行する支持体ウェブ(帯状の支持体)上に磁性層形成用塗布液を塗布した後、塗布液中の有機溶剤を乾燥させる乾燥工程を経て製造される(例えば特許文献1および2参照)。
磁気記録媒体には磁気テープや磁気ディスク、磁気カード等がある。その一つである磁気テープの用途には、オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用等の用途がある。コンピュータ用のデータバックアップ用テープについては、バックアップの対象となる衛星情報、軍事情報、映像情報、文書情報量の著しい増大に伴い大容量化に伴い、磁気テープ1巻当たりの記録容量が2TB(テラバイト)弱の磁気テープが商品化され、8TBを超えるテープが提案されている。
特開2008−77712号公報 特開2003−202188号公報
高記録容量化の手段として、磁気テープ製造面からのアプローチでは、磁性層の薄層化、磁性粉末の微粒子化とそれらの塗膜中への高密度充填、塗膜の平滑化などの高記録密度化技術が提案されている。しかし本発明者の検討の結果、上記高密度記録対応の磁気記録媒体を従来の製造方法によって製造すると、塗膜強度が低下し十分な耐久性を得ることが困難となることが明らかとなった。また磁性粉末が微粒子化するほど、良好な電磁変換特性を得ることが困難となることも明らかとなった。
そこで本発明の目的は、塗膜強度が高く優れた耐久性を有するとともに電磁変特性が良好な磁気記録媒体を製造するための手段を提供することにある。
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
従来の製造方法では、エネルギー効率向上のため乾燥風として排気ガスを循環させ外気と混合した混合ガスを使用していた(例えば特許文献2参照)。しかし本発明者の検討の結果、塗布膜から蒸発した溶剤ガスを含む排気ガスを乾燥風として利用することが塗膜強度低下の原因となることが新たに判明した。これは、乾燥進行中に溶剤を含んだ乾燥風を再度乾燥に利用すると、一度乾燥した膜が溶剤雰囲気で軟化し、結合剤の固化が遅れ、塗布膜表層で結合剤の厚みが増したり偏在すること、また潤滑剤や界面活性剤等の添加剤が塗膜内に偏在できないことによるものと考えられる。更に、上記のように一度乾燥した膜が溶剤雰囲気で軟化することが、電磁変換特性低下の原因となることも新たに判明した。これは第一には、溶剤雰囲気により塗布膜表面が軟質傾向になり、記録再生時にヘッドへの貼り付きを起こすことが特性の劣化を引き起こすこと、第二には塗布膜が軟質傾向となることにより配向処理によって一方向に整列させた磁化容易軸が再配列を起こし、磁化容易軸が一方向に定まらないため配向性が低下することが原因と推察される。
そこで本発明者らは、上記知見に基づき更に検討を重ねた結果、最も乾燥が進行する領域において、実質的に溶剤を含まない乾燥風を使用することにより、塗膜強度が高く優れた耐久性を有する磁気記録媒体を製造でき、更には磁性体を迅速に配向整列させるとともに磁化容易軸の再配列を抑制することができ、その結果優れた電磁変換特性を示す磁気記録媒体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]走行する非磁性支持体ウェブを塗布ゾーンおよび複数の乾燥ゾーンに順次搬送し、上記塗布ゾーンにおいて強磁性粉末、結合剤および溶剤を含む磁性層形成用塗布液をウェブ上に塗布し塗布膜を形成し、次いで上記乾燥ゾーンにおいて乾燥風を吹き付けることにより塗布膜を乾燥させ磁性層を形成することを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
前記塗布ゾーンでは乾燥風の吹き付けを行わず、
少なくとも最上流の乾燥ゾーンにおいて溶剤ガス濃度が0.01容量%未満である乾燥風を吹き付け、
少なくとも前記最上流の乾燥ゾーンにおいて塗布膜中の強磁性粉末に配向磁界を印加することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
[2]前記最上流の乾燥ゾーンにおいて吹き付ける乾燥風の風量は塗布膜表面1m2あたり0.1〜150Nm3/分の範囲である[1]に記載の磁気記録媒体の製造方法。
[3]形成される磁性層の厚さは10〜300nmの範囲である[1]または[2]に記載の磁気記録媒体の製造方法。
[4]前記配向磁界を、塗布膜表面に対して垂直方向または長手方向にのみ印加する[3]に記載の磁気記録媒体の製造方法。
[5]前記強磁性粉末は板状または球状である[1]〜[4]のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
[6]前記強磁性粉末は、六方晶フェライト粉末または窒化鉄粉末である[5]に記載の磁気記録媒体の製造方法。
[7]前記強磁性粉末の平均サイズは35nm未満である[1]〜[6]のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
[8]全乾燥ゾーンにおいて溶剤ガス濃度が0.01容量%未満である乾燥風を吹き付ける[1]〜[7]のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法
本発明によれば、急速乾燥により塗膜を強化することによって、優れた走行耐久性を有する磁気記録媒体を提供することができる。
更に本発明によれば、急速乾燥により配向性を向上することができるため、支持体長手方向や垂直方向等の一方向に配向しにくい形状の磁性体を含む磁気記録媒体であっても、所望の配向状態を実現することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、走行する非磁性支持体ウェブを塗布ゾーンおよび複数の乾燥ゾーンに順次搬送し、上記塗布ゾーンにおいて強磁性粉末、結合剤および溶剤を含む磁性層形成用塗布液をウェブ上に塗布し塗布膜を形成し、次いで上記乾燥ゾーンにおいて乾燥風を吹き付けることにより塗布膜を乾燥させ磁性層を形成することを含み、少なくとも最上流の乾燥ゾーンにおいて溶剤ガス濃度が0.01容量%未満である乾燥風を吹き付けるものである。更に本発明は、上記製造方法により得られた磁気記録媒体に関する。
本発明において、各乾燥ゾーンは少なくとも1つの乾燥風吹出ノズルを有する。乾燥風吹出ノズルは、通常乾燥ゾーン1m当たりに、1〜10個程度配置する。「複数の乾燥ゾーン」を有するとは、乾燥風の吹出条件が異なる乾燥ゾーンを2以上有することをいう。乾燥風の吹出条件は、具体的には、乾燥風の温度、湿度、速度(風速)、流量(風量)および乾燥風の流れの向き(風向)等である。1つのノズルから吹き出される乾燥風の吹出条件のいずれか1つが、別のノズルから吹き出されるガスの吹出条件と異なっていれば、それらの2つのノズルは異なる乾燥ゾーンに属するものとする。また、「上流」とは、非磁性支持体ウェブの走行方向において、塗布ゾーンにより近い方向をいい、「下流」とは乾燥ゾーンからより遠い方向をいうものとする。1つの乾燥ゾーンの長さは、通常1〜10m程度である。
通常、乾燥のプロセスは、余熱期−恒率期−減率期に分けられるが、磁気記録媒体の製造に使用される溶剤は比較的沸点が低いため溶剤の乾燥進行がきわめて速く、多くの場合、乾燥初期に乾燥の大部分が進行する。そこで本発明では、乾燥が急激に進行する最上流の乾燥ゾーンにおいて、溶剤ガス濃度が0.01容量%未満であり実質的に溶剤ガスを含まない乾燥風を使用する。前述のように、乾燥進行中に溶剤を含んだ乾燥風を再度乾燥に利用すると塗膜強度が低下する理由は、一度乾燥した膜が溶剤雰囲気で軟化し、塗布膜の固化が遅れ、塗布膜表層で結合剤の厚みが増したり、結合剤が偏在すること、また潤滑剤や界面活性剤等の添加剤が塗膜内に偏在できないことにあると考えられる。これに対し本発明によれば、上記のように最上流の乾燥ゾーンで実質的に溶剤ガスを含まない乾燥風を使用することにより、乾燥進行中の雰囲気から極力溶剤ガスを排除することができ、これにより塗膜強度が高く優れた耐久性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
最上流の乾燥ゾーンにおいて使用される乾燥風は、溶剤ガス濃度が0.01容量%未満である。上記溶剤ガス濃度とは、吹き出しノズル先端から吹き出された乾燥風中の溶剤ガス濃度をいうものとする。そして測定対象となる溶剤は、磁性層形成用塗布液に使用された溶剤をいい、非磁性層と磁性層とを有する磁気記録媒体を製造する際には、好ましくは、非磁性層形成用塗布液に使用された溶剤も含む溶剤をいうものとし、磁性層の乾燥工程に付される支持体ウェブに既にバックコート層塗布液が塗布されている場合には、好ましくはバックコート層形成用塗布液に使用された溶剤も含む溶剤をいうものとする。
上記溶剤ガス濃度の測定は、複合ガス検出装置等の通常使用されるガス検出装置を使用することができる。通常のガス検出器は混合ガスの下限界(LEL(爆発下限界濃度に対する百分率)を100%として表示する)を1%刻みで表示できるため、LELの1%は0.01容量%となる。溶剤ガス濃度が0.01容量%未満の乾燥風とは、ガス検出器のLEL表示で1%未満、即ち検出限界以下である乾燥風である。このような乾燥風としては、従来のように排気ガスを循環させ再利用することなく、乾燥装置外から取り入れた新鮮風をそのまま使用することができる。または新鮮風、回収風(排気ガスの再利用)に公知の溶剤除去処理を施した後に使用することや、窒素ガス等の市販のガスをボンベ等から導入して使用することも可能である。上記溶剤ガス濃度の下限値は、最も好ましくは0.00容量%である。なお、磁気記録媒体製造のために複数の溶剤を使用した場合、溶剤ガスは混合ガスとなる。この場合、個々のガス濃度についてガス検出器を補正し総量で検出する場合と、爆発下限界が最も低いものを基準にガス濃度を規定する場合の2通りの測定方法があるが、本発明ではいずれの方法を用いてもよい。
図1は、本発明の磁気記録媒体の製造方法の一態様を示す説明図である。以下、図1に基づき本発明の磁気記録媒体の製造方法について更に詳細に説明する。
図1中、磁気テープ1はポリエステルフィルム等による支持体2上に磁性層(または非磁性下層と磁性層との積層体)3を有するものである。この磁気テープ1の基本的製造工程は、強磁性粉末、結合剤、溶剤および任意に使用される添加剤等を含む磁性層形成用塗布液(以下、磁性層液または磁性層塗布液ともいう)10を、所定の走行速度(例えば20m/分以上)で走行する支持体2上にブレードコーター4等によって所定の厚みに塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、これに続いて第1〜第3乾燥ゾーン5〜7によって塗布膜を乾燥し磁性層3を形成する乾燥工程よりなる。
上記乾燥工程における第1〜第3乾燥ゾーン5〜7には、乾燥風を供給する給気ダクト51,61,71および乾燥風を排気する排気ダクト52,62,72がそれぞれ接続される。更に第1〜第3乾燥ゾーン5〜7には、外気および/または排気の取り込み量を調整するための取り込み風量調整ダンパー91,93,95および乾燥装置外へ排出する排気ガス量と乾燥風として再利用される排気ガス量を調整するための回収/排風量調整ダンパー92,94,96が設けられる。これらにより、それぞれの給気風量A1〜A3および排気風量B1〜B3が独立して調整可能となる。更に、給気ダクト51,61,71には熱源81,82,83が設置されて乾燥温度が調節される。
図1に示す態様では、第1乾燥ゾーン5が、最上流の乾燥ゾーンに相当する。したがって第1乾燥ゾーン5では、取り込み風量調整ダンパー91により、給気ダクト51から塗布膜上に吹き付けられる乾燥風が乾燥装置外から取り込まれる新鮮風のみとなるように調整される。第2乾燥ゾーン6および/または第3乾燥ゾーン7では、排気ガスを循環させて再利用してもよいが、第1乾燥ゾーン5と同様に新鮮風のみを乾燥風として導入することが好ましい。なお、後述するように、非磁性層と磁性層とを有する重層構成の磁気記録媒体を製造する方法としては、逐次重層塗布(wet-on-dry)と同時重層塗布(wet-on-wet)がある。塗膜強度向上の観点からは、塗布膜からの溶剤の蒸発が実質的に終了するまでの間、上記溶剤ガス濃度の乾燥風を使用することが好ましい。乾燥ゾーンのサイズにもよるが、逐次重層塗布は磁性層の乾燥速度が早く、通常、溶剤の蒸発は最上流の乾燥ゾーンにおいて実質的に終了する。これに対し、同時重層塗布は、逐次重層塗布と比べて乾燥時間が遅い。したがって同時重層塗布の場合は最上流の乾燥ゾーンに加えて、最上流の乾燥ゾーンの次に位置する乾燥ゾーンにおいても、上記溶剤ガス濃度の乾燥風を使用することが好ましい。更に、単層磁性層を形成する場合、同時重層塗布により重層構成の磁気記録媒体を形成する場合、該媒体を逐次重層塗布により形成する場合のいずれにおいても、塗膜強度向上の観点からは、全乾燥ゾーンにおいて上記溶剤ガス濃度の乾燥風を使用することが好ましい。ただし最上流の乾燥ゾーン以外においては、エネルギー効率等を考慮し、適宜排気ガスを乾燥風に再利用することも、もちろん可能である。
最上流の乾燥ゾーンにおける乾燥風の風量は、塗布膜表面1m2あたり0.1〜150Nm3/分の範囲であることが好ましい。なお、「Nm3(ノルマル立米)」とは、0℃、一気圧における気体の1立米体積であり、本発明において風量は、0℃換算したときの標準風量(単位:Nm3/分)で表示する。磁気記録媒体製造時に通常使用される溶剤の蒸発効率、塗布速度、塗布幅を考慮したうえで乾燥ゾーンから排出される排気ガス中の溶剤ガス濃度を適切に維持する観点から、最上流の乾燥ゾーンにおける乾燥風の風量は、塗布膜表面1m2あたり150Nm3/分以下とすることが好ましい。また、上記と同様の点を考慮したうえで乾燥風の吹き付けにより溶剤を効率的に除去する観点から、最上流の乾燥ゾーンにおける乾燥風の風量は、塗布膜表面1m2あたり0.1Nm3/分以上とすることが好ましい。
上記風量は、非磁性層と磁性層とを同時重層塗布する場合、好ましくは1〜150Nm3/分、より好ましくは5〜100Nm3/分、更に好ましくは10〜90Nm3/分である。一方、単層磁性層を非磁性支持体上に直接塗布する場合および非磁性層と磁性層とを逐次重層塗布する場合は同時重層塗布と比べて乾燥速度が速いため、上記風量の好ましい範囲は、3〜70Nm3/分である。最上流の乾燥ゾーン以外の乾燥ゾーンにおける乾燥風の風量は、最上流の乾燥ゾーンにおける風量と同様としてもよく、乾燥状態等を考慮し適宜変更してもよい。
乾燥ゾーンに供給する乾燥風の温度は、乾燥効率を考慮すると40℃以上であることが好ましく、非磁性支持体の変形を起こすことなく乾燥工程を行うためには、例えば110℃以下であることが好ましい。乾燥ゾーン内での非磁性支持体ウェブの搬送速度は、好ましくは100〜600m/分である。また、塗布幅、即ち非磁性支持体ウェブの幅は、例えば0.3〜1.5mであり、好ましくは0.5〜1.0mである。乾燥風の湿度、風速、風向等の諸条件は適宜設定することができる。
各乾燥ゾーンから排出される排気ガス中の溶剤ガス濃度は、製造上の安全性確保のため爆発下限界以下となるようにすることが好ましいが、乾燥風に窒素ガスを用いた場合はこの限りでない。例えば汎用される有機溶剤の爆発限界の下限/上限(単位:容量%)は、シクロヘキサノン:1.1/9.4、トルエン:1.2/7.1、メチルエチルケトン:1.7/11.4、である。一方、磁性層形成用塗布液の塗布量は、好ましくは0.3〜4g/m2、非磁性層形成用塗布液の塗布量は、好ましくは5〜40g/m2である。磁性層形成用塗布液の固形分は、通常20〜45質量%程度であるため、上記塗布量で塗布した場合、乾燥工程前の上層塗布膜に含まれる溶剤量は0.16〜3.5g/m2、非磁性層形成用塗布液の固形分濃度も同様であるため、乾燥工程前の下層塗布膜に含まれる溶剤量は2.5〜32g/m2となる。乾燥工程では上記量の溶剤が蒸発し排気ガス中に含まれることとなるため、給気風量、排気風量、乾燥温度、塗布速度等の条件を調整し、排気ガス中の溶剤ガス濃度を制御することが好ましい。
なお、図1では乾燥工程の乾燥ゾーンが3段である態様を示したが、乾燥ゾーンは3段以外にも2段、4段等の各種態様があり得る。
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて磁場配向処理を施すことが多い。近年、高密度記録用磁気記録媒体に使用される強磁性粉末として、六方晶フェライト粉末および窒化鉄粉末が提案され、実用化されている。しかし上記粉末はおおむね板状または球状であり、一方向のみに配向しにくいため、支持体長手方向または垂直方向に配向させることは困難である。したがって、所望の垂直方向角型比または長手方向角型比を得るために、これら粉末を一方向に選択的に配向させるためには、磁性体が動き易い未乾燥状態において配向を急速に行うとともに、磁場中で配向状態を固定するため乾燥速度を上げることが望ましい。しかし従来のように溶剤を含んだ排気ガスを再度乾燥に利用すると、乾燥風に含まれた溶剤の影響により乾燥速度が遅れる。これに対し、前述の通り、本発明では最上流の乾燥ゾーンにおいて溶剤ガスを実質的に含まない乾燥風を使用するため乾燥速度を速くすることができる。したがって本発明において最上流の乾燥ゾーンに配向磁石(図1中では配向用磁石12)を配置し配向処理を行えば、配向状態を迅速に固定化し、所望の配向状態を実現することができる。これにより、配向磁界を塗布膜表面に対して垂直方向または長手方向に印加することにより、板状または球状で一方向(長手方向または垂直方向)に配向しにくい強磁性粉末を含む磁性層塗布液を使用する場合であっても所望の配向状態を実現することができる。配向用磁石としては、コバルト磁石、ソレノイド磁石等の公知の配向用磁石を使用することができる。また、配向用磁石は最上流以外の乾燥ゾーンに設置することもできる。なお、本発明において「球状」とは、粒子径の最大長/最小長の比率が1以上2未満であることをいい、「板状」とは、板状比(板径/板厚)が15未満であることをいい、好ましく7以下であることをいう。
また、上記強磁性粉末としては、平均サイズが35nm未満のものを使用することが好ましい。平均粒子サイズが35nm未満であれば粒子の大きさに基づくノイズが少なく高密度記録に好適である。ただし、磁性粉末の平均サイズが小さすぎると熱による残留磁化の確保が困難となり、また保磁力が低下し、粒子の分子間引力が増大するため磁性層塗布液中での分散が困難になる。従って強磁性粉末としては、上記の点を考慮し好適な平均粒子サイズを有するものを選択することが好ましい。平均サイズの好ましい範囲については後述する。
強磁性粉末の平均サイズは、以下の方法により測定することができる。
強磁性粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びデジタイザーで粉体の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。上記方法により測定される粒子サイズの平均値を強磁性粉末の平均サイズとする。
なお、本発明において、磁性体等の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
また、該粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体サイズの定義で(1)の場合は、粉体を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚さ乃至高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。
以下に、本発明の磁気記録媒体の製造方法について、更に詳細に説明する。
[磁性層形成用塗布液]
磁性層形成用塗布液は、強磁性粉末、結合剤および任意に使用される添加剤を溶剤中に混合することにより調製される。強磁性粉末としては、強磁性金属粉末、六方晶フェライト粉末、窒化鉄粉末等を挙げることができ、中でも磁性体の微粒子化と高抗磁力化を両立できるという点では六方晶フェライト粉末および窒化鉄粉末が好ましい。以下に、六方晶フェライト粉末および窒化鉄粉末について更に詳細に説明する。
(i)強磁性六方晶フェライト粉末
強磁性六方晶フェライト粉末には、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、それらのCo等の置換体等がある。より具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部にスピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般には、Co−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用できる。また原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。好ましいその他の原子およびその含有率は、前記の強磁性金属粉末の場合と同様である。
六方晶フェライト粉末の粒子サイズは、平均板径として、前述のように35nm未満であることが好ましい。より好ましくは10nm以上35nm未満、更に好ましくは10〜30nm、よりいっそう好ましくは10〜20nmである。
平均板状比{(板径/板厚)の平均}は1〜15であることが好ましく、1〜7であることが更に好ましい。平均板状比が1〜15であれば、磁性層で高充填性を保持しながら充分な配向性が得られ、かつ、粒子間のスタッキングによるノイズ増大を抑えることができる。また、上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積(SBET)は、40m2/g以上が好ましく、40〜200m2/gであることがさらに好ましく、60〜100m2/gであることが最も好ましい。
六方晶フェライト粉末の粒子板径・板厚の分布は、通常狭いほど好ましい。粒子板径・板厚は、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで求めることができる。粒子板径・板厚の分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、一般にσ/平均サイズ=0.1〜1.0である。粒子サイズ分布をシャープにするために、粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことできる。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
一般に、抗磁力(Hc)143.3〜318.5kA/m(1800〜4000Oe)の程度の六方晶フェライト粉末は作製可能である。六方晶フェライト粉末の抗磁力(Hc)は、好ましくは159.2〜238.9kA/m(2000〜3000Oe)、さらに好ましくは191.0〜214.9kA/m(2200〜2800Oe)である。
抗磁力(Hc)は、粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
六方晶フェライト粉末の飽和磁化(σs)は、30〜80A・m2/kg(emu/g)であることが好ましい。飽和磁化(σs)は高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。飽和磁化(σs)の改良のため、マグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合することや、含有元素の種類と添加量の選択等がよく知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理してもよい。表面処理剤としては、無機化合物および有機化合物を使用することができる。主な化合物としてはSi、Al、P等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。添加量は磁性体の質量に対して、通常0.1〜10質量%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、一般に、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
六方晶フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。六方晶フェライト粉末は、必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し、例えば0.1〜10質量%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
(ii)窒化鉄粉末
本発明における窒化鉄粉末とは、少なくともFe162相を含む磁性粉末を意味するが、Fe162相以外の窒化鉄の相を含まないことが好ましい。これは、窒化鉄(Fe4NやFe3N相)の結晶磁気異方性は1×105erg/cc(1×10-2J/cc)程度であるのに対し、Fe162相は2×106〜7×106erg/cc(2×10-1〜7×10-1J/cc)の高い結晶磁気異方性を有するからである。これにより、微粒子化した際にも高い保磁力を維持することができる。この高い結晶磁気異方性は、Fe162相の結晶構造に起因する。結晶構造は、N原子がFeの八面体格子間位置に規則的に入った体心正方晶であり、N原子が格子に入る際の歪が、高い結晶磁気異方性の発生原因と考えられる。Fe162相の磁化容易軸は窒化により伸びたC軸である。
Fe162相を含む粒子の形状は粒状ないし楕円状であることが好ましい。さらに好ましくは球状である。これは、立方晶であるα−Feの等価な3方向のうち一方向が窒化により選ばれc軸(磁化容易軸)となるため、粒子形状が針状であれば、磁化容易軸が短軸方向、長軸方向にある粒子が混在することになり好ましくないからである。従って、長軸長/短軸長の軸比の平均値は好ましくは、2以下(例えば、1〜2)であり、より好ましくは1.5以下(例えば、1〜1.5)である。
一般に粒径は窒化する前の鉄粒子の粒径で決まり、単分散であることが好ましい。これは一般的には、単分散の方が、媒体ノイズが下がるためである。そして、Fe162を主相とする窒化鉄系磁性粉末の粒径は、通常、鉄粒子の粒径で決まり、鉄粒子の粒径分布は単分散であることが好ましい。これは粒子サイズの大きい粒子と小さい粒子で窒化の度合いが異なり、磁気特性が異なるためである。この意味からも窒化鉄系磁性粉末の粒径分布は単分散であることが好ましい。
窒化鉄の平均粒径は、前述のように35nm未満であることが好ましく、5〜20nmであることがより好ましく、10〜18nmであることがより一層好ましい。なお、本発明における窒化鉄の平均粒径は、Fe162相の平均粒径をいい、Fe162粒子の表面に層が形成されている場合は、当該層を含まないFe162粒子そのものについての平均サイズをいうものとする。なお、Fe162粒子は、その表面に酸化防止層等の層を任意に有することができる。
また、窒化鉄の粒径分布は、単分散であることが好ましくい。これは一般的には、単分散の方が、媒体ノイズが下がるためである。粒径の変動係数は15%以下(好ましくは2〜15%)であり、さらに好ましくは、10%以下(好ましくは2〜10%)である。なお、本発明において「粒径の変動係数」とは、円相当径での粒径分布の標準偏差を求め、これを平均粒径で除したものを意味する。
Fe162相を含む粒子において、鉄に対する窒素の含有量は、1.0〜20.0原子%が好ましく、さらに好ましくは5.0〜18.0原子%、より好ましくは8.0〜15.0原子%である。これは、窒素が少なすぎると、Fe162相の形成量が少なくなるからであり、保磁力増加は窒化による歪に起因しており、窒素が少なくなると保磁力が低くなるからである。窒素が多すぎると、Fe162相は準安定相であるため、分解して安定相である他の窒化物となり、この結果、飽和磁化が過度に低下するからである。
Fe162を主相とする窒化鉄粉末は、その表面が酸化皮膜で覆われていることが好ましい。これは、微粒子Fe162は酸化しやすく、窒素雰囲気でのハンドリングを要するからである。
酸化皮膜は、希土類元素および/またはシリコン、アルミニウムから選ばれる元素を含んでいることが好ましい。これにより、従来の鉄、Coを主成分とするいわゆるメタル粒子と同様の粒子表面を有することとなり、メタル粒子を取り扱っていた工程との親和性が高くなるからである。希土類元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Gdが好ましく用いられ、特にYが分散性の観点から好ましく用いられる。
また、シリコンおよびアルミニウム以外に、必要に応じて、ホウ素やリンを含有させてもよい。さらに、炭素、カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウムなども有効な元素として含有させてもよい。これらの他の元素と希土類元素および/またはシリコン、アルミニウムとを併用することにより、より高い形状維持性と分散性能を得ることができる。
表面化合物層の組成については、鉄に対する希土類元素あるいはホウ素、シリコン、アルミニウム、リンの総含有量が0.1〜40.0原子%が好ましく、さらに好ましくは1.0〜30.0原子%、より好ましくは3.0〜25.0原子%である。これらの元素が少なすぎると、表面化合物層の形成が困難となり、磁性粉末の磁気異方性が減少するだけでなく、酸化安定性に劣る傾向がある。またこれらの元素が多すぎると、飽和磁化の過度な低下が起こりやすい。
酸化皮膜の厚みは1〜5nmが好ましく、2〜3nmがより好ましい。この範囲より薄いと酸化安定性が低くなりやすく、厚いと実質的に粒子サイズが小さくなりにくくなることがあるからである。
Fe162を主相とする窒化鉄粉末の磁気特性としては、その保磁力(Hc)が、79.6〜318.4kA/m(1,000〜4,000Oe)であることが好ましく、159.2〜278.6kA/m(2000〜3500Oe)であることがより好ましい。さらに好ましくは、197.5〜237kA/m(2500〜3000Oe)である。これは、Hcが低いと、例えば面内記録の場合、隣の記録ビットの影響を受けやすくなり、高記録密度に適さなくなることがあるからであり、高すぎると記録されづらくなることがあるからである。
窒化鉄粉末の「Ms・V」は、5.2×10-16〜6.5×10-16であることが好ましい。なお、「Ms・V」における飽和磁化Msは、例えば、振動式磁気測定器(VSM)を用い測定することができる。また、体積Vは透過型電子顕微鏡(TEM)を用い粒子観察を行い、Fe162相の粒径を求め、体積換算することにより求めることができる。
窒化鉄粉末の飽和磁化は80〜160Am2/kg(80〜160emu/g)が好ましく、80〜120Am2/kg(80〜120emu/g)がより好ましい。これは低すぎると、信号が弱くなることがあり、高すぎると例えば面内記録の場合、隣の記録ビットに影響を及ぼしやすくなり、高記録密度に適さなくなるためである。角型比としては、0.6〜0.9が好ましい。
また、窒化鉄粉末は、BET比表面積が40〜100m2/gであることが好ましい。これは、BET比表面積が小さすぎると、粒子サイズが大きくなり、磁気記録媒体に適用すると粒子性ノイズが高くなり、また磁性層の表面平滑性が低下して、再生出力が低下しやすいからである。また、BET比表面積が大きすぎると、Fe162相を含む粒子が凝集しやすくなり均一な分散物を得ることが難しく、平滑な表面を得ることが難しくなるからである。
本発明において使用可能な窒化鉄は、公知の方法で合成することができ、また市販品として入手可能なものもある。本発明において使用可能な窒化鉄の詳細については、例えば特開2007−36183号公報、特開2007−305221号公報等を参照することができる。
(iii)結合剤
結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものを使用することができる。
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネ−トプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネ−トの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知の構造のものを使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM,−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2 、−N+3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は、例えば10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
本発明に用いられる結合剤は、公知の方法で合成可能であり、また市販品としても入手可能である。
磁性層塗布液および後述する非磁性層塗布液には、非磁性粉末または磁性粉末に対し、例えば5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で結合剤を用いることができる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネ−トは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましい。但し、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10kg/mm2(0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜10kg/mm2(0.49〜98MPa)のものを用いることが好ましい。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネ−ト等を使用することができる。これらのイソシアネート類は、市販品として入手可能であり、それらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
磁性層形成用塗布液には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラック等の磁性層に通常使用される各種添加剤を挙げることができる。これらは市販品として容易に入手可能である。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
上記添加剤は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。磁性層で使用可能なカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用したりしてもかまわない。また、カーボンブラックを磁性層塗布液に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独または組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、強磁性粉末の質量に対して0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層および非磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明において使用できるカーボンブラックは市販品として入手可能であり、詳細については、例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、工業用ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス硬度6以上の公知の材料が単独または組合せて使用することができる。また、これらの研磨剤同士の複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。上記研磨剤は、市販品として容易に入手可能である。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましく、特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gが好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、板状のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。研磨剤は必要に応じ非磁性層に添加することもできる。非磁性層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
(iv)溶剤
磁性層形成用塗布液には、公知の有機溶剤が使用できる。有機溶媒としては、具体的には、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50質量%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
本発明で使用される各種添加剤は、磁性層、さらに後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じて使い分けることができる。例えば潤滑剤は遊離の状態で存在するため、非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い、表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層または非磁性層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
[非磁性層形成用塗布液]
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、非磁性層と磁性層とを有する磁気記録媒体を製造することもできる。非磁性層形成用塗布液は、非磁性粉末、結合剤および任意に使用される各種添加剤を溶剤中で混合することにより調製される。非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
具体的には、二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記非磁性粉末は、公知の方法で合成可能であり、また市販品としても入手可能である。好ましいものは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜500nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜500nmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜500nmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜500nmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
非磁性粉末の比表面積は、例えば1〜150m2/gであり、好ましくは20〜120m2/gであり、さらに好ましくは50〜100m2/gである。比表面積が1〜150m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、例えば5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。比重は、例えば1〜12、好ましくは3〜6である。タップ密度は、例えば0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましく、6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下または脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることを防ぐことができる。非磁性粉末の含水率は、例えば0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。含水量が0.1〜5質量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。強熱減量は、20質量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
また、非磁性粉末が無機粉体である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、好ましくは1〜20μmol/m2であり、さらに好ましくは2〜15μmol/m2である。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、200〜600erg/cm2(200〜600mJ/m2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。これらの非磁性粉末の表面には表面処理が施されることによりAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいものはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であり、さらに好ましいものはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のマイクロビッカース硬度は、通常25〜60kg/mm2(245〜588MPa)、好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm2(294〜490MPa)であり、薄膜硬度計(日本電気製HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。詳細は「薄膜の力学的特性評価技術」リアライズ社を参考にできる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は、例えば100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は、例えば20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は、例えば5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは、例えば上記無機粉末に対して50質量%を越えない範囲、非磁性層総質量の40質量%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。非磁性層形成用塗布液に使用するカーボンブラックは市販品とて容易に入手可能であり、その詳細については、例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
非磁性層形成用塗布液の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層形成用塗布液のそれが適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法では、下塗り層を形成してもよい。下塗り層を設けることによって支持体と磁性層または非磁性層との接着力を向上させることができる。下塗り層としては、溶剤への可溶性のポリエステル樹脂を使用することができる。
[非磁性支持体]
非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ガラス転移温度が100℃以上の支持体を用いることが好ましく、ポリエチレンナフタレート、アラミドなどの高強度支持体を用いることが特に好ましい。また必要に応じ、磁性面とベース面の表面粗さを変えるため、特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などを行ってもよい。
非磁性支持体としては、WYKO社製光干渉式表面粗さ計HD−2000で測定した中心面平均表面粗さ(Ra)が8.0nm以下、好ましくは4.0nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下のものを使用することが好ましい。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さ(Ra)が小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。支持体の最大高さRmaxは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.5μm以下、中心面谷深さRvは0.5μm以下、中心面面積率Srは10%以上、90%以下、平均波長λaは5μm以上、300μm以下であることがそれぞれ好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールすることができ、0.01μmから1μmの大きさのものを各々を0.1mm2あたり0個から2000個の範囲でコントロールすることができる。
本発明に用いられる支持体のF−5値は好ましくは5〜50kg/mm2(49〜490MPa)である。また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100kg/mm2(49〜980MPa)、弾性率は100〜2000kg/mm2(0.98〜19.6GPa)であることがそれぞれ好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8/℃であることが好ましく、より好ましくは10-5〜10-6/℃である。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であることが好ましく、より好ましくは10-5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
[層構成]
磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の厚みが、好ましくは3〜80μm、より好ましくは3〜50μm、特に好ましくは3〜10μmである。また、非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に下塗り層を設ける場合、下塗り層の厚みは、例えば0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。
磁性層の厚みは、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜150nm、更に好ましくは15〜80nmであり、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化することが好ましい。本発明によれば、従来の製造方法では耐久性の確保が困難であった薄層磁性層、例えば上記好適な範囲の厚さを有する磁気記録媒体を製造する際、前述の乾燥工程を経ることにより、優れた耐久性を有する磁気記録媒体を得ることができる。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±30%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
非磁性層の厚みは、例えば0.1〜3.0μmであり、0.3〜2.0μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることが更に好ましい。なお、本発明における磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体、軟磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT以下または抗磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
[バックコート層]
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバックコート層を設けることができる。バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。表面磁気抵抗は、25℃50%RHで、10-4〜10-7Ω/
in2であることが好ましい。
[塗布液の調製および塗布]
各層を形成するための塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなることができる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、各層形成用塗布液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズ以外には、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層形成用塗布液を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層用形成用塗布液を逐次または同時に重層塗布してもよく、非磁性層形成用塗布液と磁性層形成用塗布液とを逐次または同時に重層塗布してもよい。なお、逐次重層塗布(wet-on-dry)とは、下層に乾燥処理を施した後に上層形成用塗布液を塗布する塗布方式であり、同時重層塗布(wet-on-wet)とは、下層が湿潤状態にあるうちに上層形成用塗布液を塗布する塗布方式である。磁性層塗布液または非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
塗布液の塗布後の乾燥工程の詳細は、先に説明した通りである。乾燥工程後の塗布原反は、通常、一旦巻き取りロールにより巻き取られ、しかる後、この巻き取りロールから巻き出され、カレンダー処理に施すことができる。
カレンダー処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。カレンダー処理によって、表面平滑性が向上するとともに、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理する工程は、塗布原反の表面の平滑性に応じて、カレンダー処理条件を変化させながら行うことが好ましい。
カレンダーロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用することができる。また金属ロールで処理することもできる。カレンダー処理条件としては、例えば、カレンダーロールの温度は60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲である。カレンダー処理は、磁性層の表面平滑性を高める作用がある。本発明により製造される磁気記録媒体は、磁性層表面が、WYKO社製光干渉式表面粗さ計HD−2000で測定した中心面平均表面粗さ(Ra)として0.1〜4nm、更には1〜3nmの範囲という極めて優れた表面平滑性を有することが好ましい。
これとは別に、カレンダー処理工程前後に得られた磁気記録媒体を、サーモ処理して熱硬化を進行させることもできる。このようなサーモ処理は、磁性層塗布液の配合処方により適宜決定すればよいが、例えば35〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。またサーモ処理時間は、例えば12〜72時間、好ましくは24〜48時間である。
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。裁断機としては、特に制限はないが、回転する上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の組が複数設けられたものが好ましく、適宜、スリット速度、噛み合い深さ、上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の周速比(上刃周速/下刃周速)、スリット刃の連続使用時間等が選定される。
[物理特性]
磁性層の抗磁力(Hc)は、143.2〜318.3kA/m(1800〜4000Oe)が好ましく、159.2〜278.5kA/m(2000〜3500Oe)が更に好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。
磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において、例えば0.50以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面104〜108Ω/sq、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm2)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
磁性層のガラス転移温度(動的粘弾性測定装置(例えばエー・アンド・デイ株式会社製レオバイブロン等)により、110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは40容量%以下、さらに好ましくは30容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
本発明では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当たりをよくすることができる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。また、実施例中の「部」、「%」は、特に示さない限り質量部、質量%を示す。
[実施例1]
磁性層塗布液の調製
下記窒化鉄粉末100部を窒素雰囲気下オープンニーダーで10分間粉砕し、フェニルホスホン酸3部をシクロヘキサノン10部と添加し5分混合し、次いでSO3Na含有ポリウレタン溶液(固形分30%、SO3Na含量70μeq/g、重量平均分子量6万)を10部(固形分)加え、更にシクロヘキサノン20部を加えて60分間混練した。
次いで
研磨剤(Al23 粒子サイズ0.3μm)ペースト 2部
カーボンブラック(粒子サイズ40nm)ペースト 2部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。
これに
2エチルヘキシルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
パルミチン酸 0.3部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに30分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、その後磁性塗料の固形分を溶剤希釈することにより、磁性層塗布液を調製した。
(窒化鉄粉末)
Fe162:(Hc:210kA/m、σs:85A・m2/kg、平均粒子径:18nm、粒径の変動係数:15%、平均針状比:1.05、比表面積(SBET):55.1m2/g、組成:Al/Y/V/Fe=7.7/1.9/9.9/100(原子%))
非磁性層塗布液の調製
α−Fe23(平均粒径0.07μm、SBET 58m2/g、表面処理Al23、SiO2、pH5.5〜7.5)100部をオープンニーダーで10分間粉砕しフェニルホスホン酸1部加え更に10分混合粉砕、次いでSO3Na含有ポリウレタン溶液(固形分30%、SO3Na含量70μeq/g、重量平均分子量7万)15部(固形分)を加え、更にシクロヘキサノン28部を加えて60分間混練した。
次いで
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。
これに
2エチルヘキシルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層塗布液(非磁性塗料)を調製した。
(バックコート層塗布液)
カーボンブラック(平均粒子径:16m) 95.0部
カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 3.0部
硫酸バリウム 2.0部
ニトロセルロース 50部
ポリウレタン樹脂(SO3Na基含有) 52部
シクロヘキサノン 250部
トルエン 200部
メチルエチルケトン 250部
上記成分をサンドミルで滞留時間60分分散した後、ポリイソシアネート12.0部を加え、撹拌ろ過して、バックコート層塗布液を調製した。
図1に示す構成の塗布乾燥装置を用いて以下の条件により塗布工程および乾燥工程を行い、厚さ6μmのポリエステル支持体ウェブの一方の面上に非磁性層および磁性層を形成した。次いで、支持体ウェブの磁性層および非磁性層を形成した面とは反対の面上にバックコート層を形成した後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで速度100m/min、線圧350kg/cm(343kN/m)、温度80℃でカレンダー処理を行い、得られたロールを50℃で48時間加熱処理を行った。次いで、1/2インチ幅にスリットして磁気テ−プを作製した。

塗布乾燥条件
塗布条件:逐次重層塗布、上層塗布量1.0g/m2、下層塗布量4g/m2、塗布幅0.5m
配向条件:第1乾燥ゾーンに2極NN対向磁石478kA/m(6000Oe)(3mm)3基+以降のゾーンにて500Aソレノイド磁石5基(図1中に図示せず)により垂直配向処理
乾燥後バックコート層厚さ:0.1〜1.0μm
乾燥後磁性層厚、非磁性層厚:表1参照
塗布乾燥中の支持体走行速度:100m/分
第1、第2、第3乾燥ゾーン長:各5m
乾燥条件:表1参照(表1中、風量は塗布膜1m2あたりの値を示す。)
[実施例2〜9、比較例1〜5]
表1に示す塗布乾燥条件を使用した点以外は実施例1と同様の方法により磁気テープを作製した。
[実施例10,11、比較例6,7]
強磁性粉末として窒化鉄粉末に代えて以下の強磁性六方晶フェライト粉末を用いた点、オープンニーダー処理を空気中で行った点および表1に示す乾燥条件を採用した点以外は実施例1と同様の手順で磁気テープを作製した。
強磁性六方晶フェライト粉末
Hc:175kA/m
σs:52.5A・m2/kg
平均板径:25.0 nm
板径の変動係数:20%
平均板状比:3.8
比表面積(SBET):55.5 m2/g
組成:Ba/Fe/Co/Zn/Nb=8.5/100/1.0/4.5/2.0(原子%)
評価方法
(1)乾燥点の特定
乾燥工程中の支持体の温度をモニターし、ウエッブの温度が、16〜20℃から22℃以上になる急激な温度上昇が観察されたゾーンを乾燥点として特定した。溶剤の蒸発が進行している間は蒸発潜熱により支持体の温度は大きく変化しないため、急激な温度上昇が観察されたことは、乾燥が実質的に終了したことを意味する。
(2)電磁変換特性
記録ヘッド(MIGギャップ0.15μm、1.8T)と再生用MRヘッドを富士通(株)製F613Aドライブ(3480型1/2インチカートリッジ磁気テープ記録再生装置)に装着し、テープスピード100インチ/秒の磁気記録再生システムを用い、23℃50%RHでサーボ制御を行い、室温下全長100パス走行後に、1トラック(幅20μm)を90m長で再生を行った。測定値の表示は、窒化鉄粉末を使用した実施例および比較例については比較例1を基準0dBにしたときの相対値、強磁性六方晶フェライト粉末を使用した実施例および比較例については実施例10を基準0dBとしたときの相対値で示した。
(3)耐久性(エラー回数)
上記の磁気記録再生システムを用いてデーター記録後、60℃90%RHに1週間保存し、25度50%RHで24時間放置の後、190m長を1000パス走行させ、再生出力落ちが35%以上かつ4ビット以上の長さの信号欠陥をエラーとして発生パス回数を測定した。
(4)垂直方向角型比〈磁気特性〉
磁気テープに、外部磁場0.8mA/m(10kOe)を、磁性層面内垂直方向にかけた後、角型(Br/Bs)を測定した。これらの測定には、東英工業製の試料振動型磁束計VSMを用いた。外部磁界を磁性層面内垂直方向に印加した時、磁性層垂直方向に反磁界が生じるため、特開平7−210852号公報記載の方法によりこの値を補正して、角型比を求めた。
(5)乾燥風の温度および溶剤濃度測定
乾燥風の温度は給気ダクト吹き出し口先端から吹き出すガス温度を測定して求めた。溶剤濃度は、高感度ガス検知器コスモテクター可燃性ガス検知器により磁性層塗布液および非磁性層塗布駅に使用した個々の溶剤のガス濃度を測定し総量に換算して求めた。表1中、溶剤濃度0容量%とは、上記装置(溶剤ガスのLELを100%読み取り値に改造した)の1%検出値(0.01容量%)に満たないことを意味する。
Figure 0005253071
Figure 0005253071
Figure 0005253071
Figure 0005253071
実施例、比較例の説明および評価結果
実施例1〜11は、いずれも全乾燥ゾーンにおいて、排気ガスを循環利用せず乾燥装置外から取り込んだ新鮮風を乾燥風として使用したため乾燥風の溶剤濃度は検出限界以下であった。これら実施例は、耐久性、電磁変換特性の評価とも良好な結果を示した。また、実施例において比較例と比べて高角型比を実現できたことから、第1ゾーンの乾燥風として新鮮風を使用することにより、垂直方向に配向磁界を印加する配向処理によって磁性層中の磁性粉末を高度に垂直配向させることができたことがわかる。
これに対し比較例1および2は、第1乾燥ゾーンにおいて排気ガスと新鮮風を混合した混合ガスを乾燥風として使用した例であり、比較例3〜5は全乾燥ゾーンにおいて上記混合ガスを乾燥風として使用した例であり、比較例6および7は第1乾燥ゾーンおよび第2乾燥ゾーンにおいて排気ガスと新鮮ガスを混合したガスを乾燥風として使用した例である。
表1に示すように、第1ゾーンの乾燥風として溶剤ガスを含む乾燥風を使用した比較例では電磁変換特性が著しく劣化した。これは、乾燥が急速に進行する第1ゾーンにおいて溶剤ガス風で乾燥した場合、塗布膜表面は軟質傾向となり、この膜が電磁変換特性評価時に磁気ヘッド表面に付着し特性の劣化を起こしたこと、および、垂直配向処理を施したにもかかわらず、一度垂直配向した磁性体が軟質化した塗布膜内で再配列した結果、磁性体の配向について磁化容易軸が垂直に定まらなくなったことに起因すると考えられる。また比較例における走行耐久性劣化も、同様に塗布膜が軟質傾向となることに起因して発生したと考えられる。
本発明によれば優れた耐久性および電磁変換特性を有する高密度記録用媒体として好適な磁気記録媒体を提供することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法の一態様を示す説明図である。
符号の説明
1:磁気テープ
2:非磁性支持体
3:磁性層
4:コーターヘッド
5:第1乾燥ゾーン
6:第2乾燥ゾーン
7:第3乾燥ゾーン
10:磁性層液
11:下層非磁性層液
12:配向用磁石
51,61,71:給気ダクト
52,62,72:排気ダクト
81,82,83:熱源
A1,A2、A3:給気風量
B1,B2,B3:排気風量
97,98,99:回収(再利用)ダクト
91,93,95:取り込み風量調整ダンパー
92,94,96:回収/排風量調整ダンパー

Claims (8)

  1. 走行する非磁性支持体ウェブを塗布ゾーンおよび複数の乾燥ゾーンに順次搬送し、上記塗布ゾーンにおいて強磁性粉末、結合剤および溶剤を含む磁性層形成用塗布液をウェブ上に塗布し塗布膜を形成し、次いで上記乾燥ゾーンにおいて乾燥風を吹き付けることにより塗布膜を乾燥させ磁性層を形成することを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記塗布ゾーンでは乾燥風の吹き付けを行わず、
    少なくとも最上流の乾燥ゾーンにおいて溶剤ガス濃度が0.01容量%未満である乾燥風を吹き付け、
    少なくとも前記最上流の乾燥ゾーンにおいて塗布膜中の強磁性粉末に配向磁界を印加することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記最上流の乾燥ゾーンにおいて吹き付ける乾燥風の風量は塗布膜表面1m2あたり0.1〜150Nm3/分の範囲である請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  3. 形成される磁性層の厚さは10〜300nmの範囲である請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 前記配向磁界を、塗布膜表面に対して垂直方向または長手方向にのみ印加する請求項3に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 前記強磁性粉末は板状または球状である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 前記強磁性粉末は、六方晶フェライト粉末または窒化鉄粉末である請求項5に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  7. 前記強磁性粉末の平均サイズは35nm未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  8. 全乾燥ゾーンにおいて溶剤ガス濃度が0.01容量%未満である乾燥風を吹き付ける請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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