JP5252144B2 - 微細凹凸のある基材フィルムを用いるめっきフィルムの製造方法及びめっきフィルム - Google Patents
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Description
このエッチング処理の後に、すず−パラジウム触媒を付着させ、めっき浴に入れることによりめっきが施されるが、前記エッチング処理には、クロム酸、過マンガン酸、硫酸、有機溶媒等の劇物である薬品が使用されていた。
上記の基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ナイロン樹脂、変性ノリル樹脂等が挙げられるが、クロム酸/硫酸混合液、有機溶媒/水混合液等の液による、各素材に適合するエッチング処理技術が開発されている。
1)脱脂
表面に付着している油脂や指紋等を除去する。また、エッチング時の濡れ性を改善する。
2)エッチング
クロム酸等で表面を化学的に粗化した後、残ったクロム化合物を塩酸等で除去する。
3)キャタリスト
無電解めっきの核となる触媒金属を吸着させる。一般的にPd−Sn触媒を用いる。
4)アクセレーター
スズ塩を溶解させ、酸化還元反応により金属パラジウムを生成させる。
5)無電解めっき
めっき液中の還元剤が触媒活性なパラジウム表面で酸化されるときに放出される電子によって金属イオンが還元され、めっき皮膜が生成する。
上記で示されるように、無電解めっき法によりめっき膜が得られるまでには、多くの種類の処理液を使用することになる。
例えば、上記1)、2)の標準的な処理において、数種類の処理液が使用され、また、上記3)、4)の標準的な処理においても、数種類の処理液が使用される。
この方法を使用すれば、クロム酸等によるエッチング処理を行うことなく、プラスチック基材と十分な密着強度を有する金属めっき膜を形成することが可能である。
これにより、エッチング処理に使用できなかった各種のプラスチック素材(PET,PBT,ポリイミド、ポリオレフィン類、ポリスチレン等)の基材においても簡便な操作で
十分な密着強度を有する金属めっき膜を形成することが可能となった。
(1)算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上に金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法であって、
1)前記算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層を形成し、形成された表面の算術平均粗さRaを240nm以下とする工程、
2)前記アンダーコート層の上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料を塗布し、20ないし500nmの膜厚の塗膜層を形成する工程、
3)前記塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程
からなる方法、
(2)前記凹凸のある基材フィルムが軟質塩化ビニール系樹脂を基材としたフィルムであ
り、前記アンダーコート層が紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂からなる前記(1)記載の方法、
(3)前記還元性高分子微粒子が還元性ポリピロールである前記(1)又は(2)記載の方法、
(4)凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層が形成され、該アンダーコート層上に導電性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層が形成され、該塗膜層上に金属めっき膜が無電解めっき法により形成されためっきフィルムであって、
前記凹凸のある基材フィルムの表面の算術平均粗さRaは240nmより大きく、前記アンダーコート層の表面の算術平均粗さRaは240nm以下であり、前記塗膜層の厚さは20ないし500nmである、
めっきフィルム、
に関するものである。
表面に微細な凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルム上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層の形成させると、形成された塗膜層は、表面の凹凸のためにその厚さが薄くなる部分と厚くなる部分が生じることとなるが、塗膜層の膜厚が20nm未満では、金属めっき膜が十分に形成されないこと、及び塗膜層の膜厚が500nmを超えると、基材との十分な密着強度が得られない事が解った。
従って、塗膜層における凹凸のために薄くなった部分が20nm未満となったり、塗膜層における凹凸のために厚くなった部分が500nmを超える場合は、部分的に基材との十分な密着強度が得られなくなったり、部分的に十分なめっき膜が形成されなくなったりすることとなる。
つまり、表面に微細な凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルムを使用してめっき膜を形成した場合は、塗膜層の厚さが20nm未満となる部分及び/又は500nmを超える部分が生じたため、再現よく平滑なめっき膜が形成されなくなったり、得られためっき膜と基材との十分な密着強度が得られなくなったものと考えられる。
そのため、形成される塗膜層の膜厚を20ないし500nmの範囲にできるよう、基材フィルムと塗膜層の間に表面の算術平均粗さRaが240nm以下のアンダーコート層を形成することにより、上記の問題が解消されたものと考えられる。
軟質塩化ビニールには、塩化ビニール系樹脂100質量部あたり30〜80質量部程度の可塑剤が含まれており、この可塑剤はフィルム等に加工された後、時間の経過と共にブリードアウトしてくることが知られているが、これにより、例えば、軟質塩化ビニール基材の表面に塗膜層を形成させ、その後長時間経過させると、軟質塩化ビニール基材からブリードアウトしてきた可塑剤が還元性微粒子を含む塗膜層へ徐々に移行し、還元性微粒子の周りやその上にしみ出し、それにより微粒子の還元性が損なわれ、結果としてめっき膜が十分に形成されなくなったものと考えられ、また、めっき膜の形成後に、軟質塩化ビニール基材からブリードアウトしてきた可塑剤が還元性微粒子を含む塗膜層を伝わり、めっき膜の下層までしみ出し、結果として、この可塑剤がめっき膜の密着を阻害したものと考えられる。
そのため、可塑剤のブリードアウトを防止し得る紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂を用いてアンダーコート層を形成するすることにより、上記の問題が解消されたものと考えられる。
本発明のめっきフィルムの製造方法は、
1)前記算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層を形成し、形成された表面の算術平均粗さRaを240nm以下とする工程、
2)前記アンダーコート層の上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料を塗布し、20ないし500nmの膜厚の塗膜層を形成する工程、
3)前記塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程
からなる。
、あるいはこれらの樹脂の混合物などの塩化ビニール系樹脂に可塑剤、安定剤、および必要に応じて添加される各種添加剤、例えば滑剤または粘着防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、光安定剤、無機充填剤、着色剤などを添加した塩化ビニール系樹脂組成物をカレンダー法、押出法などの公知の手段でシート状に成形したものが使用できる。
自己粘着性を有する基材フィルムとしては、自己粘着性を有するフィルムとして一般に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコン樹脂、ブチルゴム、軟質ポリ塩化ビニール、フッ素系樹脂等からなるフィルムが挙げられる。
上記アンダーコート材として、塗膜層の形成に使用されるバインダーと同じ化合物を使用する事ができる。
上記のように、塗膜層の形成に使用されるバインダーと同じ化合物をアンダーコート材として使用すると、アンダーコート層は塗膜層と一体化され、結果として高い密着性を奏するため好ましい。
キシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニール、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂
、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
アンダーコート層を形成するために使用することができる紫外線硬化型塗料としては、ポリエーテルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、チオール・ジエン反応型系などが挙げられる。
上記アクリル系紫外線硬化型樹脂組成物の樹脂成分としては、官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマー、又はこれを予め熱重合、ラジカル重合、光重合などにより、多量体化したプレポリマー、或いは、これらのモノマーやプレポリマーの2種以上の混合物を使用することができる。ここで、官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマーとは、一分子中に2個又はそれ以上のアクリル系カルボン酸エステル単位を有し、従って一分子中に2個又はそれ以上のアクリル系不飽和炭素−炭素結合を有する化合物であり、場合によっては他の不飽和炭素−炭素結合を含有していても差し支えない。
1ないし22のアルキルエステル類:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のようなメタクリル酸の炭素原子数1ないし22のアルキルエステル類等が挙げられる。これら単量体を数種組み合わせて用いてもよい。
また、事前にアンダーコート材から形成された樹脂フィルムを基材フィルム上にラミネートする場合は、別途アンダーコート材を、ナイフコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷などの公知の塗布手段を使用して樹脂フィルムを調製する。
上述のように紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂を使用することにより、軟質塩化ビニール系樹脂からの可塑剤の移行を防止する事ができ、また、アンダーコート層が半硬化の状態で還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層を形成し、引き続いて更なる架橋(硬化)を行うと、アンダーコート層と塗膜層が一体化することから、極めて密着が良く且つ可塑剤の移行を防止できるめっきフィルムが得られるといったメリットもある。
また、還元性高分子微粒子としては、0.005S/cm以下の導電率を有する高分子微粒子が好ましい。
ース、酢酸ビニール、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル
樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
特に、低揮発性有機溶媒で粘度が30ないし1000cpsであるジヒドロターピネオール、ターピネオール等は、形成された塗膜層と基材フィルムとの密着強度を向上させやすいため好ましい。
上記増粘剤としては、有機溶媒との相溶性がよく、しかも、還元性高分子微粒子が有する触媒金属の吸着作用(還元作用)を阻害しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ゴム等の高分子ポリマー等が好適に使用され得る。
分散安定剤、インキバインダ等の樹脂を加えることも可能である。
上記基材フィルムへの塗布方法は特に限定されず、例えばスクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター等を用いて、印刷またはコーティングすることができる。
所望のパターンを有する塗膜層を形成する場合は、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷及びオフセット印刷等の印刷技術を使用すること等により達成し得るが、塗膜層を薄くでき、また、生産性に優れるグラビア印刷及びフレキソ印刷が好ましい。
具体的な方法としては、例えば、30ないし60℃の低い温度で長時間かけて乾燥したり、30ないし60℃の低い温度から徐々に温度を上げて乾燥したり、30ないし60℃の低い温度とこれより高い温度(例えば、100ないし130℃)の2段階、又はそれ以上の異なった温度(例えば、30ないし60℃→65ないし90℃→100ないし130℃)で乾燥することにより達成することができる。
塗膜層の厚さが20nm未満であると金属めっきが析出せず、また、塗膜層の厚みが500nmを超えると、アンダーコート層が形成された基材フィルムに対する密着性が悪くなり、フィルムの曲げ、屈曲に対して金属めっき膜(金属層)が追従せず、アンダーコート層が形成された基材フィルムから剥がれ易くなる。
尚、塗膜層の厚さは、塗料における固形成分の含有量を調節することにより調節することができるが、例えば、グラビア印刷を採用する場合は、その版目の深さによって調節することができる。
即ち、アンダーコート層上に塗膜層が形成された基材フィルムを塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することによりめっき物を得ることができる。
好ましい、具体的な触媒液としては、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、塗膜層中の還元性高分子微粒子は、結果的に、導電性高分子微粒子となる。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。
即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル、クロム等、全て適用することができるが、銅が好ましい。
無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
ポリピロール)はイオン化される、即ち、パラジウムによりドーピングされた状態となり、結果として導電性を発現する。
上記還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料に使用する還元性高分子微粒子は、
1)有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造する方法、又は
2)水性媒体中に可溶化できる量のπ−共役二重結合を有するモノマー、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤、および酸化剤を含む水性媒体において重合を開始し、そして、重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を該重合系に添加し更に重合を進行させることにより製造する方法等により達成することができる。
製法1)におけるπ−共役二重結合を有するモノマーとしては、還元性高分子微粒子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール及び3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン及びp−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
きを行うためには脱ドープの工程が必要となる。
(a)アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合させる工程、
(d)有機相を分液しポリマー微粒子を回収する工程。
ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
製法2)は、水性媒体中に可溶化できる量のπ−共役二重結合を有するモノマー、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤、および酸化剤を含む水性媒体において重合を開始し、そして、重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を該重合系に添加し更に重合を進行させ、その後、層分離された2層のうちの有機溶媒層を回収することにより達成される。
水性媒体中に可溶化できない量のπ−共役二重結合を有するモノマー(飽和濃度以上のπ−共役二重結合を有するモノマー)が添加されると、重合開始直後から塊状のポリマーが生成され、目的とする微粒子は得られない。また、π−共役二重結合を有するモノマーが1g/L以下では、重合反応が極めて遅くなり、所望する微粒子を得るまでの時間が長時間となることからあまり好ましくない。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
また、上記のアニオン界面活性剤は単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
分子微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
使用する水性媒体の量は、使用するπ−共役二重結合を有するモノマーが可溶化できる量、即ち、前記で定義されたように、π−共役二重結合を有するモノマーの濃度が80g/L以下となる量であって、特に好ましくは、20g/Lないし1g/Lとなる量である。
尚、重合率は、ガスクロマトグラフィーを用いて残存モノマーを測定し、当初の添加モノマー量と残存モノマー量の比から容易に算出することができる。
即ち、ポリマーの粒径をあまり大きくせず、また、ポリマー粒子の凝集を起こさないためには、反応系中の残存モノマー(未反応のモノマー)量が、当初に添加したモノマー量の40〜90%が残存する時点で有機溶媒を添加することが重要であるといえる。
従って、有機溶媒の添加は、ポリマーの粒子径が100nm以下の時点で行うのが好ましい。
尚、ポリマーの平均粒子径は、レーザードップラー法により容易に測定することができる。
有機溶媒の使用量は、重合反応に使用する水の量に対して体積比で5ないし40%(v/v)が好ましく、特に好ましくは、10ないし25%(v/v)である。
5%(v/v)未満では、粒子密度が高くなるため分散性が悪くなり、結果として凝集が起こる。40%(v/v)を超える場合は相対的に粒子密度が低くなるため、粒子間の反発力が小さくなり、分散を保てなくなる。
(a)アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤並びにπ−共役二重結合を有するモノマーを水に加えて混合攪拌する工程、
(b)酸化剤を加えて酸化重合を開始する工程、
(c)重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を添加する工程、
(d)混合攪拌して更に重合反応を進行させる工程、
(e)有機相を分液し有機溶媒層にナノ分散した還元性高分子微粒子を回収する工程。
上記めっきフィルムは、前述の方法により製造することができる。
本発明のめっきフィルムは、例えば、塗膜層を形成する際に印刷技術等を用いてパターニングし、該パターニングされた塗膜層上にパターニングされた金属めっき膜を形成することで、優れた透明性及び電磁波シールド性を兼ね備える間仕切りカーテン、簡易ブース或いはこれらに類する用途に使用する事ができる。
また、基材フィルムとして自己粘着性を有する基材フィルムを使用して上記製造方法で製造されためっきフィルムは、種々の基材、例えば、ガラス等の基材の表面に貼り付けることにより、電磁波シールド性を奏するシートとして使用することができる。
尚、フィルム基材表面の凹凸の算術平均粗さRaは、レーザー顕微鏡(商品名「VK−8500」、KEYENCE社製)を用い、電極表面を走査して得られた画像について「VK形状解析アプリケーションソフト Version 1.06」を用いて算出した。
ポリ塩化ビニール系樹脂(塩化ビニールの単独重合体:重合度1000)100質量部、可塑剤(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)50質量部、安定剤としてエポキシ化大豆油2質量部及びバリウム−亜鉛系安定剤2質量部をスーパーミキサーで混合し、Tダイ押出機で180℃の温度で厚さ0.5mmにシート成形して軟質ポリ塩化ビニール系樹脂
シートを製造した。得られた軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シートの算術平均粗さRaは、1.3μmであった。
Tダイ法を用い、ラバーシボを施した厚さ0.2mmのポリプロピレンフィルムを製造した。得られたポリプロピレンフィルムの算術平均粗さRaは、2.3μmであった。
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王(株)社製)0.42mmol、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤エマルゲン409P(花王(株)社製)2.1mmol、トルエン50mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有する還元性ポリピロール微粒子を得た。
上記で得られたトルエン分散液中の還元性ポリピロール微粒子の固形分は、約1.3%であったが、ここに、バインダーA或いはBを加えて還元性ポリピロール微粒子を含む塗料を調製した。
また、ここでのバインダーA、Bは以下のものを意味し、また、バインダーの使用量は、還元性ポリピロール微粒子1質量部に対して、0.5質量部加えたものである。
A)スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B)バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
幅30cm、厚み100μmの製造例1で製造した基材フィルム(軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート)上及び幅30cm、厚み100μmの製造例2で製造した基材フィルム(半透明ポリプロピレンフィルム)上にアンダーコート材をマイクログラビアコーターにて塗工して、基材フィルムの表面がアンダーコート材で覆われるようにアンダーコート層を形成した。
尚、形成されたアンダーコート層表面のRa値は、形成するアンダーコート層の厚み(乾燥時)を調整することにより表1、表2に記載の値とした。
また、アンダーコート材としては以下に示す3種を用いた。
A)スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B)バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
C)セイカビーム DM−02:アクリル系紫外線硬化樹脂
製造例4で製造された、アンダーコート層が形成された幅30cm、厚み100μmの基材フィルム上に、製造例3で調製した塗料をマイクログラビアコーターにて塗工して、塗膜層を形成した。
尚、形成する塗膜層の膜厚は、表1、表2に記載の厚み(乾燥時)となるよう塗工時に調整した。
製造例5で製造したアンダーコート層上に塗膜層が形成された基材フィルムを、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表1に記載の実施例1ないし5及び比較例1、2のめっき物を製造した。
幅30cm、厚み100μmの製造例1で製造した基材フィルム(軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート)上及び幅30cm、厚み100μmの製造例2で製造した基材フィルム(半透明ポリプロピレンフィルム)上に製造例3で調製した塗料をマイクログラビアコーターにて塗工して、塗膜層を形成した。
尚、形成する塗膜層の膜厚は、表1に記載の厚み(乾燥時)となるよう塗工時に調整した。
上記で製造した塗膜層が形成された基材フィルムを、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表1に記載の比較例3、4のめっき物を製造した。
上記で製造した実施例1ないし5及び比較例1ないし4のめっき物において、めっき外観、初期密着、経時密着(経時フィルムでの密着/めっき後の経時密着)の各種の評価試験を行いその結果を表1に纏めた。
尚、評価試験項目及びその評価方法・評価基準は以下の通りである。
<めっき外観>
めっき部の状態を目視で観察した結果を下記の評価基準で示した。
◎:サンプル全面に均一にめっきが施されている。
○:サンプル表面の80%以上均一にめっきされているが、20%以下にムラが発生。
△:サンプル表面の50%以上均一にめっきされているが、20%〜50%の範囲にムラが発生。
×:サンプルの一部にめっきが施されていない部分がある。
<初期密着(めっきの密着強度)>
碁盤目によるセロテープ(登録商標)剥離試験を、JIS H 8504に準じて行った。
○:脱落もなく良好に密着している。
△:10%未満の剥離が見られる。
×:10%以上の剥離が見られる。
<経時密着(めっきの密着強度)>
めっきを施した後に、80℃のオーブンに200時間入れた後、密着試験を行った。尚、密着試験は、上記初期密着と同じ方法、同じ評価で行った。
尚、表中の基材フィルム、アンダーコート材及びバインダーの欄に記載の記号は以下を意味する。
<基材フィルム>
A:軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート
B:半透明ポリプロピレンフィルム
<アンダーコート材>
A:スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B:バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
<バインダー>
A:スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B:バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
C:セイカビーム DM−02:アクリル系紫外線硬化樹脂
表面の算術平均粗さRaが240nm以下となるアンダーコート層が形成され、その上に20ないし500nmの塗膜層が形成された実施例1ないし4のめっきフィルムは、何れにおいても、めっき外観、初期密着及び経時密着の全てにおいて優れていた。
基材フィルムとして軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シートを用い、アンダーコート材としてB(ポリエステル系樹脂)を用いる実施例5のめっきフィルムは、めっき膜形成後の可塑剤の移行(ブリードアウト)の影響を多少受けたため、実施例1ないし4のめっきフィルムに比して経時密着は多少低下したものの、ある程度の経時密着は維持された。
一方、表面の算術平均粗さRaが240nmを越える400nmであるアンダーコート層が形成された比較例1のめっきフィルムは、めっき膜が均一に形成されなかった。これは、部分的に20nm以下の塗膜層が形成され、これにより部分的にめっき膜が十分に形成されなかったことによるものと考えられる。
また、表面の算術平均粗さRaが240nmを越える400nmで、且つ塗膜層が500nmを超える1000nmである比較例2のめっきフィルムは、塗膜層が厚く、そのため、塗膜層が全体的に20nm以上となるため、均一なめっき膜が形成されたものの、塗膜層が厚すぎる(500nmを超える)ため、初期密着が不十分となった。
アンダーコート層を形成しなかった比較例3,4においては、所望の物性が得られなかった。主な理由としては、部分的に20nm以下の塗膜層が形成され、これにより部分的にめっき膜が十分に形成されなかったことによるものと考えられる。
製造例5で製造したアンダーコート層上に塗膜層が形成された基材フィルムを、可塑剤の移行(ブリードアウト)を促進させるために、80℃のオーブンで200時間処理した。
上記処理を行った基材フィルムを0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 A
TSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表2に記載の実施例6ないし8のめっき物を製造した。
幅30cm、厚み100μmの製造例1で製造した基材フィルム(軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート)上に製造例3で調製した塗料をマイクログラビアコーターにて塗工して、塗膜層を形成した。
尚、形成する塗膜層の膜厚は、表2に記載の厚み(乾燥時)となるよう塗工時に調整した。
上記で製造した塗膜層が形成された基材フィルムを、可塑剤の移行(ブリードアウト)を促進させるために、80℃のオーブンで200時間処理した。
上記処理を行った基材フィルムを、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表2に記載の比較例5のめっき物を製造した。
上記で製造した、可塑剤の移行(ブリードアウト)を促進させる処理後にめっき膜を形成した実施例6ないし8及び比較例5のめっき物において、めっき外観、初期密着、経時密着(経時フィルムでの密着/めっき後の経時密着)の各種の評価試験を行いその結果を表2に纏めた。
尚、評価試験項目及びその評価方法・評価基準は試験例1と同様である。
また、表中の基材フィルム、アンダーコート材及びバインダーの欄に記載の記号の意味も試験例1と同様である。
基材フィルムとして軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シートを用い、アンダーコート材としてA(熱架橋性樹脂)を用いる実施例6及びアンダーコート材としてC(紫外線硬化樹脂)を用いる実施例7のめっきフィルムは、可塑剤の移行(ブリードアウト)の影響を受けず、めっき外観、初期密着及び経時密着の全てにおいて優れていた。
アンダーコート材としてB(ポリエステル系樹脂)を用いる実施例8のめっきフィルムは、可塑剤の移行(ブリードアウト)の影響を多少受けたため、実施例6、7のめっきフィルムに比して多少物性は低下したものの、ある程度の物性は維持された。
一方、アンダーコート層が形成されていない、比較例5のめっきフィルムは、可塑剤の移行(ブリードアウト)により所望の物性が得られなかった。
Claims (4)
- 算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上に金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法であって、
1)前記算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層を形成し、形成された表面の算術平均粗さRaを240nm以下とする工程、
2)前記アンダーコート層の上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料を塗布し、20ないし500nmの膜厚の塗膜層を形成する工程、
3)前記塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程
からなる方法。 - 前記凹凸のある基材フィルムが軟質塩化ビニール系樹脂を基材としたフィルムであり、前記アンダーコート層が紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂からなる請求項1記載の方法。
- 前記還元性高分子微粒子が還元性ポリピロールである請求項1又は2記載の方法。
- 凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層が形成され、該アンダーコート層上に導電性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層が形成され、該塗膜層上に金属めっき膜が無電解めっき法により形成されためっきフィルムであって、
前記凹凸のある基材フィルムの表面の算術平均粗さRaは240nmより大きく、前記アンダーコート層の表面の算術平均粗さRaは240nm以下であり、前記塗膜層の厚さは20ないし500nmである、
めっきフィルム。
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