JP5252144B2 - 微細凹凸のある基材フィルムを用いるめっきフィルムの製造方法及びめっきフィルム - Google Patents

微細凹凸のある基材フィルムを用いるめっきフィルムの製造方法及びめっきフィルム Download PDF

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Description

本発明は、微細凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルムを使用した際にも、該基材フィルムとの十分な密着強度を有し且つムラのないめっき膜を有するめっきフィルムの製造方法及びめっきフィルムに関するものである。
従来より、無電解めっき法を用いてプラスチック基材上へ、銅、ニッケル等の金属膜を被覆する技術はよく知られている。しかし、無電解めっきによって得られた金属被膜は、プラスチック素材との十分な密着強度が得られ難いことから、化学薬品によるプラスチック表面のエッチング処理(表面粗化)を、無電解めっきを施す前の前処理として行う必要があった。
このエッチング処理の後に、すず−パラジウム触媒を付着させ、めっき浴に入れることによりめっきが施されるが、前記エッチング処理には、クロム酸、過マンガン酸、硫酸、有機溶媒等の劇物である薬品が使用されていた。
そのため、無電解めっき法で十分な密着強度を有する金属めっき膜が形成可能なプラスチック基材は、上記の薬品でエッチング処理を行うことができる基材に限定されていた。
上記の基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ナイロン樹脂、変性ノリル樹脂等が挙げられるが、クロム酸/硫酸混合液、有機溶媒/水混合液等の液による、各素材に適合するエッチング処理技術が開発されている。
上記のような従来の無電解めっき工程の概略を以下に示す。
1)脱脂
表面に付着している油脂や指紋等を除去する。また、エッチング時の濡れ性を改善する。
2)エッチング
クロム酸等で表面を化学的に粗化した後、残ったクロム化合物を塩酸等で除去する。
3)キャタリスト
無電解めっきの核となる触媒金属を吸着させる。一般的にPd−Sn触媒を用いる。
4)アクセレーター
スズ塩を溶解させ、酸化還元反応により金属パラジウムを生成させる。
5)無電解めっき
めっき液中の還元剤が触媒活性なパラジウム表面で酸化されるときに放出される電子によって金属イオンが還元され、めっき皮膜が生成する。
上記で示されるように、無電解めっき法によりめっき膜が得られるまでには、多くの種類の処理液を使用することになる。
例えば、上記1)、2)の標準的な処理において、数種類の処理液が使用され、また、上記3)、4)の標準的な処理においても、数種類の処理液が使用される。
上記のような無電解めっき法における煩雑な操作を改善し得る方法として、基材の表面上に還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層を形成し、該塗膜層上に無電解めっきを行うという簡便な方法を見出した(例えば、特許文献1、2参照。)。
この方法を使用すれば、クロム酸等によるエッチング処理を行うことなく、プラスチック基材と十分な密着強度を有する金属めっき膜を形成することが可能である。
これにより、エッチング処理に使用できなかった各種のプラスチック素材(PET,PBT,ポリイミド、ポリオレフィン類、ポリスチレン等)の基材においても簡便な操作で
十分な密着強度を有する金属めっき膜を形成することが可能となった。
特願2006−351807号 特願2007−004753号
特許文献1,2に記載の方法を使用する事により、各種の基材において簡便な操作で十分な密着強度を有する金属めっき膜を形成することが可能となったものの、表面に微細な凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルムを用いた場合は、必ずしも再現よく平滑なめっき膜が形成されなかったり、また、得られためっき膜と基材との十分な密着強度が得られないことがあった。
特に、カレンダー加工され、そのため表面に微細な凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)を有する軟質塩化ビニールシート等を基材として用いた場合は、上記の問題に加え、めっき直後では十分な密着強度を示したものでも、経時において密着強度が低下する現象が観られ、また、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層の形成後に長時間経過させると、該塗膜層上にめっき膜が十分に形成されないという現象も観られた。
本発明は、微細凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルムを用いた際にも、該基材フィルムとの十分な密着強度を有し且つムラのないめっき膜を形成し得るめっきフィルムの製造方法、特に、微細凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある軟質塩化ビニールを基材フィルムとして使用した際にも、該基材フィルムとの十分な密着強度を有し且つムラのないめっき膜を形成することができ、更に、経時においても基材フィルムとめっき膜との密着強度の低下が起らず、且つ塗膜層の形成後に長時間経過させても、該塗膜層上にめっき膜が十分に形成され得るめっきフィルムの製造方法、更には、めっきフィルムの提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、微細凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルム上に、最初にアンダーコート層を形成し、形成後の基材表面の算術平均粗さRaを240nm以下とすれば、該アンダーコート層上に、20ないし500nmの膜厚の塗膜層を形成し、該塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきした際に、形成された金属めっき膜は、基材フィルムとの十分な密着強度を有し且つムラのないめっき膜となることを見出し、更には、アンダーコート層として、紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂を用いれば、軟質塩化ビニールにおける上記の問題を解決し得る、即ち、十分な密着強度を有し且つムラのないめっき膜を形成することができ、更に、経時においても基材フィルムとめっき膜との密着強度の低下が起らず、且つ塗膜層の形成後に長時間経過させても、該塗膜層上にめっき膜が十分に形成され得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
(1)算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上に金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法であって、
1)前記算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層を形成し、形成された表面の算術平均粗さRaを240nm以下とする工程、
2)前記アンダーコート層の上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料を塗布し、20ないし500nmの膜厚の塗膜層を形成する工程、
3)前記塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程
からなる方法、
(2)前記凹凸のある基材フィルムが軟質塩化ビニール系樹脂を基材としたフィルムであ
り、前記アンダーコート層が紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂からなる前記(1)記載の方法、
(3)前記還元性高分子微粒子が還元性ポリピロールである前記(1)又は(2)記載の方法、
(4)凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層が形成され、該アンダーコート層上に導電性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層が形成され、該塗膜層上に金属めっき膜が無電解めっき法により形成されためっきフィルムであって、
前記凹凸のある基材フィルムの表面の算術平均粗さRaは240nmより大きく、前記アンダーコート層の表面の算術平均粗さRaは240nm以下であり、前記塗膜層の厚さは20ないし500nmである、
めっきフィルム、
に関するものである。
尚、本発明における算術平均粗さRaとは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さl(エル)だけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値であり、下式で示すことができる。
Figure 0005252144
この算術平均粗さRaを用いることにより、例えば図1に示されるように、一つの傷が測定値に及ぼす影響が非常に小さくなり、安定した結果を得る事ができる。
本発明のめっきフィルムの製造方法により、微細凹凸のある基材フィルムを用いた際にも、該基材フィルムとの十分な密着強度を有し且つムラのないめっき膜を有するめっきフィルムを製造することができ、また、微細凹凸のある軟質塩化ビニールを基材フィルムとして用いた際にも、十分な密着強度を有し且つムラのないめっき膜が形成され、更に、経時においても基材フィルムとめっき膜との密着強度の低下が起らず、且つ塗膜層の形成後に長時間経過させても、該塗膜層上にめっき膜が十分に形成され得るめっきフィルムを製造することができる。
微細凹凸のある基材フィルムを用いた際に、再現よく平滑なめっき膜が形成されなかったり、また、得られためっき膜と基材との十分な密着強度が得られない理由は、以下によるものであると考えられる。
表面に微細な凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルム上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層の形成させると、形成された塗膜層は、表面の凹凸のためにその厚さが薄くなる部分と厚くなる部分が生じることとなるが、塗膜層の膜厚が20nm未満では、金属めっき膜が十分に形成されないこと、及び塗膜層の膜厚が500nmを超えると、基材との十分な密着強度が得られない事が解った。
従って、塗膜層における凹凸のために薄くなった部分が20nm未満となったり、塗膜層における凹凸のために厚くなった部分が500nmを超える場合は、部分的に基材との十分な密着強度が得られなくなったり、部分的に十分なめっき膜が形成されなくなったりすることとなる。
つまり、表面に微細な凹凸(算術平均粗さRaが240nmより大きい)のある基材フィルムを使用してめっき膜を形成した場合は、塗膜層の厚さが20nm未満となる部分及び/又は500nmを超える部分が生じたため、再現よく平滑なめっき膜が形成されなくなったり、得られためっき膜と基材との十分な密着強度が得られなくなったものと考えられる。
そのため、形成される塗膜層の膜厚を20ないし500nmの範囲にできるよう、基材フィルムと塗膜層の間に表面の算術平均粗さRaが240nm以下のアンダーコート層を形成することにより、上記の問題が解消されたものと考えられる。
軟質塩化ビニールを基材フィルムとして用いた場合に、めっき直後では十分な密着強度を示したものでも、経時において密着強度が低下したり、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層の形成後に長時間経過させると、該塗膜層上にめっき膜が十分に形成されなかったりする理由は、以下によるものであると考えられる。
軟質塩化ビニールには、塩化ビニール系樹脂100質量部あたり30〜80質量部程度の可塑剤が含まれており、この可塑剤はフィルム等に加工された後、時間の経過と共にブリードアウトしてくることが知られているが、これにより、例えば、軟質塩化ビニール基材の表面に塗膜層を形成させ、その後長時間経過させると、軟質塩化ビニール基材からブリードアウトしてきた可塑剤が還元性微粒子を含む塗膜層へ徐々に移行し、還元性微粒子の周りやその上にしみ出し、それにより微粒子の還元性が損なわれ、結果としてめっき膜が十分に形成されなくなったものと考えられ、また、めっき膜の形成後に、軟質塩化ビニール基材からブリードアウトしてきた可塑剤が還元性微粒子を含む塗膜層を伝わり、めっき膜の下層までしみ出し、結果として、この可塑剤がめっき膜の密着を阻害したものと考えられる。
そのため、可塑剤のブリードアウトを防止し得る紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂を用いてアンダーコート層を形成するすることにより、上記の問題が解消されたものと考えられる。
本発明のめっきフィルムの製造方法は、エッチング処理を必要としないため、基材として種々のプラスチック素材を使用する事ができるため、非常に汎用性の高い製造方法とする事ができる。
また、本発明のめっきフィルムは、塗膜層を形成する際に印刷技術等を用いてパターニングし、該パターニングされた塗膜層上にパターニングされた金属めっき膜を形成することで、透明性及び電磁波シールド性を兼ね備える間仕切りカーテン、簡易ブース或いはこれらに類する用途への展開が可能となる。
更に詳細に本発明を説明する。
本発明のめっきフィルムの製造方法は、
1)前記算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層を形成し、形成された表面の算術平均粗さRaを240nm以下とする工程、
2)前記アンダーコート層の上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料を塗布し、20ないし500nmの膜厚の塗膜層を形成する工程、
3)前記塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程
からなる。
工程1)における基材フィルムとしては、算術平均粗さRaが240nmより大きな凹凸を有するフィルムであれば特に限定されるものではないが、例えば、PET,PBT,ポリイミド、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、軟質塩化ビニール系樹脂等からなるフィルムが挙げられる。
上記軟質塩化ビニール系樹脂からなる基材フィルムとしては、ポリ塩化ビニール、あるいは塩化ビニールと他のモノマー、例えばエチレン、プロピレン、酢酸ビニール、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸、フマル酸、アクリロニトリル、アルキルビニールエーテルなどとの共重合樹脂
、あるいはこれらの樹脂の混合物などの塩化ビニール系樹脂に可塑剤、安定剤、および必要に応じて添加される各種添加剤、例えば滑剤または粘着防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、光安定剤、無機充填剤、着色剤などを添加した塩化ビニール系樹脂組成物をカレンダー法、押出法などの公知の手段でシート状に成形したものが使用できる。
上記軟質塩化ビニール系樹脂組成物に含有され得る可塑剤としては、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジラウリルフタレート、ジデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレートなどのフタル酸系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジトリノニルアジペート、ジイソデシルアジペートなどのアジピン酸エステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系可塑剤;セバチン酸エステル系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;トリメリット酸エステル系可塑剤;エポキシ系可塑剤などの公知の可塑剤が使用できる。上記の可塑剤の含有量としては、用途などによっても異なるが、一般的には塩化ビニール系樹脂100重量部に対し、30〜70重量部程度である。
また、上記凹凸のある基材フィルムとしては、自己粘着性を有する基材フィルムを使用することもできる。
自己粘着性を有する基材フィルムとしては、自己粘着性を有するフィルムとして一般に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコン樹脂、ブチルゴム、軟質ポリ塩化ビニール、フッ素系樹脂等からなるフィルムが挙げられる。
上記自己粘着性を有する基材フィルム上に金属膜が形成されためっきフィルムは、種々の基材、例えば、ガラス等の基材の表面に貼り付けることにより、電磁波シールド性を奏するシートとして使用することができるが、その際、めっきの腐食や窓ガラスを拭く等の外的要因から、金属めっき膜が形成された面を窓ガラスに貼り付けるのが好ましい。
また、上記の際、金属めっき膜が厚くなり過ぎると、ガラス等の基材へ貼り付けた際、窓ガラスと基材フィルムとの間に浮き(air溜まり)ができ易くなって密着強度が低下し、更に、金属めっき膜による凹凸がフィルム表面に反映されて乱反射が多くなり、結果として視認性が悪くなるため、金属めっき膜の厚さは3μm以下とするのが好ましい。
尚、使用する、算術平均粗さRaが240nmより大きな凹凸のある基材フィルムの厚さは50ないし500μm程度とするのが望ましい。
上記アンダーコート層の形成は、基材フィルム上にアンダーコート材を塗工して滑らかな塗工膜を形成させる方法や事前にアンダーコート材から形成された樹脂フィルムを基材フィルム上にラミネートする方法等が挙げられる。
アンダーコート材は、基材フィルムと密着性が良く及び/又はアンダーコート層上に形成される塗膜層と密着性が良いものであれば特に限定されるものではない。
上記アンダーコート材として、塗膜層の形成に使用されるバインダーと同じ化合物を使用する事ができる。
上記のように、塗膜層の形成に使用されるバインダーと同じ化合物をアンダーコート材として使用すると、アンダーコート層は塗膜層と一体化され、結果として高い密着性を奏するため好ましい。
上記の化合物としては、例えば、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニールカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノ
キシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニール、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂
、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
また、上記アンダーコート材としては、紫外線硬化樹脂、熱架橋性樹脂を用いることもできる。
アンダーコート層を形成するために使用することができる紫外線硬化型塗料としては、ポリエーテルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、チオール・ジエン反応型系などが挙げられる。
また、紫外線硬化樹脂として、アクリル系紫外線硬化型樹脂組成物を使用する事ができる。
上記アクリル系紫外線硬化型樹脂組成物の樹脂成分としては、官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマー、又はこれを予め熱重合、ラジカル重合、光重合などにより、多量体化したプレポリマー、或いは、これらのモノマーやプレポリマーの2種以上の混合物を使用することができる。ここで、官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマーとは、一分子中に2個又はそれ以上のアクリル系カルボン酸エステル単位を有し、従って一分子中に2個又はそれ以上のアクリル系不飽和炭素−炭素結合を有する化合物であり、場合によっては他の不飽和炭素−炭素結合を含有していても差し支えない。
上記官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマーとしては、好ましくはエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリン1,2−ジアクリレート、ジアリルジエチレングリコールジカーボネートなどが挙げられる。
アクリル系紫外線硬化型樹脂組成物の重合に用いる重合開始剤としては、例えば水銀、塩化第2鉄、二塩化鉛などの無機塩、ベンゾフェノール、ベンジル、シクロヘキサノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ビアセチルなどのカルボニル化合物、過酸化水素、tert−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスプロパン、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾビス化合物、チオフェノール、チオクレゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、ジチオカルバミン酸メチル、ジフェニルスルフイド、テトラアルキルチウラムスルフイドなどの硫黄化合物、2−ブロムプロパン、1−クロロシクロヘキサンなどのハロゲン化合物等の光増感剤が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アンダーコート層を形成するために使用することができる熱架橋性樹脂組成物としては、例えば、(i)アクリル系単量体と(ii)リン酸エステル基を含有するアクリル系単量体との混合物を共重合して得られるアクリル系樹脂と(iii)架橋性化合物とを主成分とする組成物が挙げられる。
成分(i)のアクリル系単量体とは、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル類をいう。アクリル酸或いはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のようなアクリル酸の炭素原子数
1ないし22のアルキルエステル類:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のようなメタクリル酸の炭素原子数1ないし22のアルキルエステル類等が挙げられる。これら単量体を数種組み合わせて用いてもよい。
成分(ii)のリン酸エステル基を含有するアクリル系単量体とは、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル類のエステル部分をリン酸エステルで置換したものをいう。リン酸エステルには、トリアルキルエステル、ジアルキルエステル、モノアルキルエステルがあり、その種類に応じて、1置換、2置換、3置換となる。
成分(ii)のリン酸エステル基を含有するアクリル系単量体の具体例としては、例えば、モノ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)アシドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)アシドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシプロピルアクリレート)アシドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシドホスフェート、モノ(3−ヒドロキシプロピルアクリレート)アシドホスフェート、モノ(3−ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシドホスフェート、モノ(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシドホスフェート、アシドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、ジ(2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート)アシドホスフェート、ジ(2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート)アシドホスフェート等が挙げられる。
成分(iii)の架橋性化合物は、成分(i)のアクリル単量体と成分(ii)のリン酸エステル基を含有するアクリル系単量体との混合物を共重合して得られるアクリル系樹脂を架橋反応させうるものであればよい。具体的には、例えば、イソシアネート系、カルボキシル系、エポキシ系、アルキルエーテル系、アミン系、アジリジン系、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ酸等の化合物を挙げることができる。
基材フィルム上にアンダーコート材を塗工して滑らかな塗工膜を形成させる場合の塗布手段としては、ナイフコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷などの公知の手段を採用することができる。
また、事前にアンダーコート材から形成された樹脂フィルムを基材フィルム上にラミネートする場合は、別途アンダーコート材を、ナイフコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷などの公知の塗布手段を使用して樹脂フィルムを調製する。
アンダーコート層の形成後における基材表面の算術平均粗さRaは、240nm以下とする。
凹凸のある基材フィルムとして、軟質塩化ビニール系樹脂を基材としたフィルムを用いる場合、アンダーコート層としては、紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂が使用される。
上述のように紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂を使用することにより、軟質塩化ビニール系樹脂からの可塑剤の移行を防止する事ができ、また、アンダーコート層が半硬化の状態で還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層を形成し、引き続いて更なる架橋(硬化)を行うと、アンダーコート層と塗膜層が一体化することから、極めて密着が良く且つ可塑剤の移行を防止できるめっきフィルムが得られるといったメリットもある。
工程2)における還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料における還元性高分子微粒子は、0.01S/cm未満の導電率を有する高分子微粒子であれば特に限定されるものではないが、例えば、還元性ポリアニリン、還元性ポリチオフェン及び還元性ポリピロール等が挙げられ、還元性ポリピロールが好ましい。
また、還元性高分子微粒子としては、0.005S/cm以下の導電率を有する高分子微粒子が好ましい。
還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料におけるバインダーとしては、例えば、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニールカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロ
ース、酢酸ビニール、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル
樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
使用するバインダー量は、還元性高分子微粒子1質量部に対して0.1質量部ないし10質量部である。バインダーが10質量部を超えると金属めっきが析出せず、バインダーが0.1質量部未満であると、基材への密着性が弱くなる。
また、上記塗料は溶媒として水溶媒又は有機溶媒を含有する。使用する有機溶媒は、微粒子に損傷を与えず、微粒子を分散させることができ、採用される印刷技術に使用し得る沸点、粘度等を有する有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、高揮発性有機溶媒、低揮発性有機溶媒の何れの有機溶媒も使用し得る。
前記高揮発性有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類等が挙げられ、前記低揮発性有機溶媒としては、例えば、ミネラルスピリット、イソパラフィン、テレピン油、オレンジ油のリモネン、P−メンタン、α−ピネン、β−ピネン、ターピノーレン、イソボルニルアセテート、ターピニルアセテート、ターピネオール、α−ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のターペンティン系溶媒が挙げられる。
例えば、塗布方法としてグラビア印刷又はフレキソ印刷を採用する場合、塗料の粘度は、例えば、30cps未満であると液流れが生じて版目に忠実なパターニングが形成され難い場合があり、また、粘度が1000cpsを超えると、液が版目にうまく乗らず、パターニングされた線がかすれ易くなる場合があるため、30ないし1000cpsであるのが好ましい。
特に、低揮発性有機溶媒で粘度が30ないし1000cpsであるジヒドロターピネオール、ターピネオール等は、形成された塗膜層と基材フィルムとの密着強度を向上させやすいため好ましい。
例えば、トルエン等のように、高揮発性で粘度が低い(例えば、1〜2cps)有機溶媒を使用する場合は、粘度の高い溶媒を添加するか及び/又は増粘剤等を添加して塗料の粘度を30ないし1000cpsの範囲とするのが好ましい。
上記増粘剤としては、有機溶媒との相溶性がよく、しかも、還元性高分子微粒子が有する触媒金属の吸着作用(還元作用)を阻害しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ゴム等の高分子ポリマー等が好適に使用され得る。
更に、上記塗料には、増粘剤以外にも、使用する用途や塗布対象物等の必要に応じて、
分散安定剤、インキバインダ等の樹脂を加えることも可能である。
上記塗料をアンダーコート層が形成された凹凸のある基材フィルムの表面上に塗布し、乾燥させることによって塗膜層を得ることができる。
上記基材フィルムへの塗布方法は特に限定されず、例えばスクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター等を用いて、印刷またはコーティングすることができる。
所望のパターンを有する塗膜層を形成する場合は、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷及びオフセット印刷等の印刷技術を使用すること等により達成し得るが、塗膜層を薄くでき、また、生産性に優れるグラビア印刷及びフレキソ印刷が好ましい。
塗膜層を形成する際、塗膜表面上の還元性高分子微粒子の存在比を高くすると触媒金属の吸着量を増加でき、これにより、形成する金属層は、薄い塗膜層においても露出部(ムラ)がない均一なものとすることができ、また、塗膜層の下側半分にはバインダーの存在比が高くなってアンダーコート層が形成された基材フィルムと塗膜層の密着性が向上するため、結果として、金属層とアンダーコート層が形成された基材フィルムとの密着性が向上することになる。従って、塗膜層の上側半分の中に還元性高分子微粒子のうち60%以上の粒子が存在する塗膜層を形成するのが好ましい。
低揮発性有機溶媒を主成分とする塗料を使用して塗膜層を形成した場合は、前記低揮発性有機溶媒は低揮発性であるため、揮発されにくく、そのため、成膜されるまで、ある程度の時間を必要とするため、比重の小さな還元性高分子微粒子は、アンダーコート層が形成された基材フィルム上に形成された塗膜層の上側半分に多く存在することになる(例えば、塗膜層の上側半分の中に還元性高分子微粒子のうち60%以上の粒子が存在する)。
高揮発性有機溶媒を主成分とする塗料を使用して塗膜層の上側半分の中に還元性高分子微粒子のうち60%以上の粒子が存在する構成とする場合は、塗料の塗布後、緩和な条件で時間をかけて乾燥することにより達成される。
具体的な方法としては、例えば、30ないし60℃の低い温度で長時間かけて乾燥したり、30ないし60℃の低い温度から徐々に温度を上げて乾燥したり、30ないし60℃の低い温度とこれより高い温度(例えば、100ないし130℃)の2段階、又はそれ以上の異なった温度(例えば、30ないし60℃→65ないし90℃→100ないし130℃)で乾燥することにより達成することができる。
2段階以上の異なった温度で乾燥する場合は、例えば、高揮発性有機溶媒としてトルエンを使用した場合、40℃で10分間乾燥後、80℃で10分間乾燥し、その後120℃で10分間乾燥することにより塗膜層の上側半分の中に微粒子のうち60%以上の粒子が存在する構成とすることができる。
上記のようにして、アンダーコート層が形成された基材フィルム上に形成される塗膜層の厚さは、20ないし500nmである。
塗膜層の厚さが20nm未満であると金属めっきが析出せず、また、塗膜層の厚みが500nmを超えると、アンダーコート層が形成された基材フィルムに対する密着性が悪くなり、フィルムの曲げ、屈曲に対して金属めっき膜(金属層)が追従せず、アンダーコート層が形成された基材フィルムから剥がれ易くなる。
尚、塗膜層の厚さは、塗料における固形成分の含有量を調節することにより調節することができるが、例えば、グラビア印刷を採用する場合は、その版目の深さによって調節することができる。
工程3)における無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程は、通常知られた方法に従って行うことができる。
即ち、アンダーコート層上に塗膜層が形成された基材フィルムを塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することによりめっき物を得ることができる。
触媒液は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、その中でも塩化パラジウムが特に好ましい。
好ましい、具体的な触媒液としては、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、塗膜層中の還元性高分子微粒子は、結果的に、導電性高分子微粒子となる。
上記で処理されたアンダーコート層上に塗膜層が形成された基材フィルムは、金属を析出させるためのめっき液に浸され、これにより無電解めっき膜が形成される。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。
即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル、クロム等、全て適用することができるが、銅が好ましい。
無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
上記の製造方法により製造されるめっきフィルムは、例えば、アンダーコート層が形成された基材フィルム上に形成された還元性高分子微粒子を含む塗膜層上に、パラジウム等の触媒金属を還元・吸着させ、該パラジウム等の触媒金属が吸着された塗膜層上に金属めっき膜が形成されるが、この際の、パラジウム等の触媒金属の還元及び高分子微粒子への吸着は、例えば、ポリピロールの場合、下図で示される状態になると考えられる。
Figure 0005252144
即ち、還元性の高分子微粒子(ポリピロール)がパラジウムイオンを還元することにより、高分子微粒子上にパラジウム(金属)が吸着されるが、これにより、高分子微粒子(
ポリピロール)はイオン化される、即ち、パラジウムによりドーピングされた状態となり、結果として導電性を発現する。
次に、還元性高分子微粒子の製造方法の具体例について説明する。
上記還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料に使用する還元性高分子微粒子は、
1)有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造する方法、又は
2)水性媒体中に可溶化できる量のπ−共役二重結合を有するモノマー、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤、および酸化剤を含む水性媒体において重合を開始し、そして、重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を該重合系に添加し更に重合を進行させることにより製造する方法等により達成することができる。
上記製法1)について説明する。
製法1)におけるπ−共役二重結合を有するモノマーとしては、還元性高分子微粒子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール及び3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン及びp−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
製法1)に用いるアニオン系界面活性剤としては、種々のものが使用できるが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができ、重合後において水相と有機溶媒相との分離がスムーズであり、有機溶媒相に分散した還元性高分子微粒子が入手し易い。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し0.05mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.005mol〜0.03molである。0.05mol以上では添加したアニオン性界面活性剤がドーパントとして作用し、得られる微粒子は導電性を発現するため、これを用いて無電解めっ
きを行うためには脱ドープの工程が必要となる。
製法1)におけるノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルグルコシド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビダン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が挙げられる。これらを一種類または複数混ぜて使用してもよい。特に安定的にO/W型エマルションを形成するものが好ましい。
反応系中でのノニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し、アニオン系界面活性剤と足して0.2mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では合後において、水相と有機溶媒相との分離が困難になり、有機溶媒相にある還元性高分子微粒子を得る事ができなくなる事から好ましくない。
製法1)において乳化液の有機相を形成する有機溶媒は疎水性であることが好ましい。なかでも、芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンは、O/W型エマルションの安定性およびπ−共役二重結合を有するモノマーとの親和性の観点から好ましい。両性溶媒でもπ−共役二重結合を有するモノマーの重合を行うことはできるが、生成した還元性高分子微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。
乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではπ−共役二重結合を有するモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
製法1)で使用する酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもπ−共役二重結合を有するモノマーを重合できるが、生成した粒子が凝集し、微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
反応系中での酸化剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、ポリマー微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上では凝集してポリマー微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
製法1)は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合させる工程、
(d)有機相を分液しポリマー微粒子を回収する工程。
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好
ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
酸化重合反応が停止されると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、この際に未反応のモノマー、酸化剤および塩は水相中に溶解して残存する。ここで有機相を分液回収し、イオン交換水で数回洗浄すると、有機溶媒に分散した還元性高分子微粒子を入手することができる。
上記の製造法により得られるポリマー微粒子は、主としてπ−共役二重結合を有するモノマー誘導体のポリマーよりなり、そしてアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を含む微粒子である。そしてその特徴は、微細な粒径を有し、有機溶媒中で分散可能であることである。
製法1)の製造方法において使用可能な有機溶媒は、比較的、高揮発性有機溶媒に限定される。従って、例えば、グラビア印刷又はフレキソ印刷を採用する場合、上述のように、粘度の高い溶媒を添加するか及び/又は増粘剤等を添加して塗料の粘度を30ないし1000cpsの範囲とするのが好ましい。
次に、製法2)について説明する。
製法2)は、水性媒体中に可溶化できる量のπ−共役二重結合を有するモノマー、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤、および酸化剤を含む水性媒体において重合を開始し、そして、重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を該重合系に添加し更に重合を進行させ、その後、層分離された2層のうちの有機溶媒層を回収することにより達成される。
製法2)におけるπ−共役二重結合を有するモノマーとしては、還元性高分子微粒子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール及び3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン及びp−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
製法2)における水性媒体中に可溶化できるπ−共役二重結合を有するモノマーの量としては、水に対して80g/L以下であり、特に好ましくは、20g/Lないし1g/Lである。
水性媒体中に可溶化できない量のπ−共役二重結合を有するモノマー(飽和濃度以上のπ−共役二重結合を有するモノマー)が添加されると、重合開始直後から塊状のポリマーが生成され、目的とする微粒子は得られない。また、π−共役二重結合を有するモノマーが1g/L以下では、重合反応が極めて遅くなり、所望する微粒子を得るまでの時間が長時間となることからあまり好ましくない。
また製法2)に用いるアニオン系界面活性剤としては、種々のものが使用できるが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができ、重合後において水相と有機溶媒相との分離がスムーズであり、有機溶媒相に分散した還元性高分子微粒子が入手し易い。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
また、上記のアニオン界面活性剤は単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し0.05mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.005mol〜0.03molである。0.05mol以上では添加したアニオン性界面活性剤がドーパントとして作用し、得られる微粒子は導電性を発現するため、これを用いて無電解めっきを行うためには脱ドープの工程が必要となる。
製法2)におけるノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルグルコシド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビダン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が挙げられる。これらを一種類または複数混ぜて使用してもよい。
反応系中でのノニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し、アニオン系界面活性剤と足して0.2mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では合後において、水相と有機溶媒相との分離が困難になり、有機溶媒相にある還元性高分子微粒子を得る事ができなくなる事から好ましくない。
製法2)で使用する酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもポリピロールを重合できるが、生成した粒子が凝集し、ポリピロールを微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
使用する酸化剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、還元性高分子微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上ではポリマーが凝集して還元性高
分子微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
製法2)で使用する水性媒体は、基本的に水である。
使用する水性媒体の量は、使用するπ−共役二重結合を有するモノマーが可溶化できる量、即ち、前記で定義されたように、π−共役二重結合を有するモノマーの濃度が80g/L以下となる量であって、特に好ましくは、20g/Lないし1g/Lとなる量である。
製法2)の製造方法において、水性媒体中に可溶化できる量のπ−共役二重結合を有するモノマー、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤、および酸化剤を含む水性媒体において重合を開始した後、重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒が添加される。重合率が20〜50%となる時点で有機溶媒が添加されるのがより好ましい。重合率が10%未満の時点で有機溶媒が添加された場合、ポリマーの共役二重結合が充分に成長していないため、その後の重合が極めて遅くなる他、水と有機溶媒の分離も極めて悪くなる。逆に重合率が60%を越えた時点で有機溶媒が添加された場合、有機溶媒へ移行するポリマー粒子の大きさは数百nm以上の大きな粒子となり、分散安定性も悪いものとなる。
尚、重合率は、ガスクロマトグラフィーを用いて残存モノマーを測定し、当初の添加モノマー量と残存モノマー量の比から容易に算出することができる。
ポリマーの粒径をあまり大きくせず、また、ポリマーの凝集を起こさないためには、反応系中に、ある程度の量の残存モノマー(未反応のモノマー)の存在が重要であると考えられ、そのため、重合率が向上して残存モノマーの量が減少すると急激にポリマーの粒径の増大及びポリマー粒子の凝集が起こるものと考えられる。
即ち、ポリマーの粒径をあまり大きくせず、また、ポリマー粒子の凝集を起こさないためには、反応系中の残存モノマー(未反応のモノマー)量が、当初に添加したモノマー量の40〜90%が残存する時点で有機溶媒を添加することが重要であるといえる。
また、同様に、有機溶媒を添加する時点において水性媒体中に分散している微粒子の大きさも極めて重要である。水性媒体中におけるポリマーの重合率(%)とその際得られるポリマーの平均粒子径(nm)は相関し、ポリマーの重合率がある一定値を超えるとポリマーの平均粒子径が急激に大きくなり、例えば、ポリマーの平均粒子径が100nmを超えた時点で有機溶媒を添加しても、有機溶媒へ移行するポリマー粒子の大きさは結果的に数百nm以上の大きな粒子となりやすく、また、分散安定性も悪いものとなりやすい。
従って、有機溶媒の添加は、ポリマーの粒子径が100nm以下の時点で行うのが好ましい。
尚、ポリマーの平均粒子径は、レーザードップラー法により容易に測定することができる。
添加する有機溶媒としては、水への溶解度が1%以下の有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類が挙げられる。
有機溶媒の使用量は、重合反応に使用する水の量に対して体積比で5ないし40%(v/v)が好ましく、特に好ましくは、10ないし25%(v/v)である。
5%(v/v)未満では、粒子密度が高くなるため分散性が悪くなり、結果として凝集が起こる。40%(v/v)を超える場合は相対的に粒子密度が低くなるため、粒子間の反発力が小さくなり、分散を保てなくなる。
前記還元性高分子微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤並びにπ−共役二重結合を有するモノマーを水に加えて混合攪拌する工程、
(b)酸化剤を加えて酸化重合を開始する工程、
(c)重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を添加する工程、
(d)混合攪拌して更に重合反応を進行させる工程、
(e)有機相を分液し有機溶媒層にナノ分散した還元性高分子微粒子を回収する工程。
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
上記の製造法により得られるポリマー微粒子は、主としてπ−共役二重結合を有するモノマー誘導体のポリマーよりなり、そしてアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を含む微粒子である。そしてその特徴は、微細な粒径を有し、有機溶媒中で分散可能であることである。
製法2)の製造方法において使用可能な有機溶媒は、高揮発性有機溶媒、低揮発性有機溶媒の何れもが使用可能である。従って、上述のように、低揮発性で、30ないし1000cpsの粘度である有機溶媒を使用することが好ましいグラビア印刷又はフレキソ印刷を採用する場合、重合反応から回収した分散液がそのまま使用できるため好ましい。
本発明はまた、凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層が形成され、該アンダーコート層上に導電性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層が形成され、該塗膜層上に金属めっき膜が無電解めっき法により形成されためっきフィルムであって、前記凹凸のある基材フィルムの表面の算術平均粗さRaは240nmより大きく、前記アンダーコート層の表面の算術平均粗さRaは240nm以下であり、前記塗膜層の厚さは20ないし500nmであるめっきフィルムにも関する。
上記めっきフィルムは、前述の方法により製造することができる。
本発明のめっきフィルムは、例えば、塗膜層を形成する際に印刷技術等を用いてパターニングし、該パターニングされた塗膜層上にパターニングされた金属めっき膜を形成することで、優れた透明性及び電磁波シールド性を兼ね備える間仕切りカーテン、簡易ブース或いはこれらに類する用途に使用する事ができる。
また、基材フィルムとして自己粘着性を有する基材フィルムを使用して上記製造方法で製造されためっきフィルムは、種々の基材、例えば、ガラス等の基材の表面に貼り付けることにより、電磁波シールド性を奏するシートとして使用することができる。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
尚、フィルム基材表面の凹凸の算術平均粗さRaは、レーザー顕微鏡(商品名「VK−8500」、KEYENCE社製)を用い、電極表面を走査して得られた画像について「VK形状解析アプリケーションソフト Version 1.06」を用いて算出した。
製造例1:基材フィルム(軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート)の製造
ポリ塩化ビニール系樹脂(塩化ビニールの単独重合体:重合度1000)100質量部、可塑剤(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)50質量部、安定剤としてエポキシ化大豆油2質量部及びバリウム−亜鉛系安定剤2質量部をスーパーミキサーで混合し、Tダイ押出機で180℃の温度で厚さ0.5mmにシート成形して軟質ポリ塩化ビニール系樹脂
シートを製造した。得られた軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シートの算術平均粗さRaは、1.3μmであった。
製造例2:基材フィルム(半透明ポリプロピレンフィルム)の製造
Tダイ法を用い、ラバーシボを施した厚さ0.2mmのポリプロピレンフィルムを製造した。得られたポリプロピレンフィルムの算術平均粗さRaは、2.3μmであった。
製造例3:還元性ポリピロール微粒子を含む塗料の調製
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王(株)社製)0.42mmol、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤エマルゲン409P(花王(株)社製)2.1mmol、トルエン50mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有する還元性ポリピロール微粒子を得た。
上記で得られたトルエン分散液中の還元性ポリピロール微粒子の固形分は、約1.3%であったが、ここに、バインダーA或いはBを加えて還元性ポリピロール微粒子を含む塗料を調製した。
また、ここでのバインダーA、Bは以下のものを意味し、また、バインダーの使用量は、還元性ポリピロール微粒子1質量部に対して、0.5質量部加えたものである。
A)スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B)バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
製造例4:アンダーコート層の形成
幅30cm、厚み100μmの製造例1で製造した基材フィルム(軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート)上及び幅30cm、厚み100μmの製造例2で製造した基材フィルム(半透明ポリプロピレンフィルム)上にアンダーコート材をマイクログラビアコーターにて塗工して、基材フィルムの表面がアンダーコート材で覆われるようにアンダーコート層を形成した。
尚、形成されたアンダーコート層表面のRa値は、形成するアンダーコート層の厚み(乾燥時)を調整することにより表1、表2に記載の値とした。
また、アンダーコート材としては以下に示す3種を用いた。
A)スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B)バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
C)セイカビーム DM−02:アクリル系紫外線硬化樹脂
製造例5:塗膜層の形成
製造例4で製造された、アンダーコート層が形成された幅30cm、厚み100μmの基材フィルム上に、製造例3で調製した塗料をマイクログラビアコーターにて塗工して、塗膜層を形成した。
尚、形成する塗膜層の膜厚は、表1、表2に記載の厚み(乾燥時)となるよう塗工時に調整した。
実施例1ないし5及び比較例1、2:無電解めっき法によるめっき物の製造
製造例5で製造したアンダーコート層上に塗膜層が形成された基材フィルムを、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表1に記載の実施例1ないし5及び比較例1、2のめっき物を製造した。
比較例3、4
幅30cm、厚み100μmの製造例1で製造した基材フィルム(軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート)上及び幅30cm、厚み100μmの製造例2で製造した基材フィルム(半透明ポリプロピレンフィルム)上に製造例3で調製した塗料をマイクログラビアコーターにて塗工して、塗膜層を形成した。
尚、形成する塗膜層の膜厚は、表1に記載の厚み(乾燥時)となるよう塗工時に調整した。
上記で製造した塗膜層が形成された基材フィルムを、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表1に記載の比較例3、4のめっき物を製造した。
試験例1
上記で製造した実施例1ないし5及び比較例1ないし4のめっき物において、めっき外観、初期密着、経時密着(経時フィルムでの密着/めっき後の経時密着)の各種の評価試験を行いその結果を表1に纏めた。
尚、評価試験項目及びその評価方法・評価基準は以下の通りである。
<めっき外観>
めっき部の状態を目視で観察した結果を下記の評価基準で示した。
◎:サンプル全面に均一にめっきが施されている。
○:サンプル表面の80%以上均一にめっきされているが、20%以下にムラが発生。
△:サンプル表面の50%以上均一にめっきされているが、20%〜50%の範囲にムラが発生。
×:サンプルの一部にめっきが施されていない部分がある。
<初期密着(めっきの密着強度)>
碁盤目によるセロテープ(登録商標)剥離試験を、JIS H 8504に準じて行った。
○:脱落もなく良好に密着している。
△:10%未満の剥離が見られる。
×:10%以上の剥離が見られる。
<経時密着(めっきの密着強度)>
めっきを施した後に、80℃のオーブンに200時間入れた後、密着試験を行った。尚、密着試験は、上記初期密着と同じ方法、同じ評価で行った。
尚、表中の基材フィルム、アンダーコート材及びバインダーの欄に記載の記号は以下を意味する。
<基材フィルム>
A:軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート
B:半透明ポリプロピレンフィルム
<アンダーコート材>
A:スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B:バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
<バインダー>
A:スーパーベッカミンJ-820:メラミン系(大日本インキ化学工業(株)社製)
B:バイロン240:ポリエステル系(東洋紡績(株)社製)
C:セイカビーム DM−02:アクリル系紫外線硬化樹脂
Figure 0005252144
結果
表面の算術平均粗さRaが240nm以下となるアンダーコート層が形成され、その上に20ないし500nmの塗膜層が形成された実施例1ないし4のめっきフィルムは、何れにおいても、めっき外観、初期密着及び経時密着の全てにおいて優れていた。
基材フィルムとして軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シートを用い、アンダーコート材としてB(ポリエステル系樹脂)を用いる実施例5のめっきフィルムは、めっき膜形成後の可塑剤の移行(ブリードアウト)の影響を多少受けたため、実施例1ないし4のめっきフィルムに比して経時密着は多少低下したものの、ある程度の経時密着は維持された。
一方、表面の算術平均粗さRaが240nmを越える400nmであるアンダーコート層が形成された比較例1のめっきフィルムは、めっき膜が均一に形成されなかった。これは、部分的に20nm以下の塗膜層が形成され、これにより部分的にめっき膜が十分に形成されなかったことによるものと考えられる。
また、表面の算術平均粗さRaが240nmを越える400nmで、且つ塗膜層が500nmを超える1000nmである比較例2のめっきフィルムは、塗膜層が厚く、そのため、塗膜層が全体的に20nm以上となるため、均一なめっき膜が形成されたものの、塗膜層が厚すぎる(500nmを超える)ため、初期密着が不十分となった。
アンダーコート層を形成しなかった比較例3,4においては、所望の物性が得られなかった。主な理由としては、部分的に20nm以下の塗膜層が形成され、これにより部分的にめっき膜が十分に形成されなかったことによるものと考えられる。
実施例6ないし8:可塑剤の移行(ブリードアウト)を促進させる処理後の無電解めっき法によるめっき物の製造
製造例5で製造したアンダーコート層上に塗膜層が形成された基材フィルムを、可塑剤の移行(ブリードアウト)を促進させるために、80℃のオーブンで200時間処理した。
上記処理を行った基材フィルムを0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 A
TSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表2に記載の実施例6ないし8のめっき物を製造した。
比較例5
幅30cm、厚み100μmの製造例1で製造した基材フィルム(軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シート)上に製造例3で調製した塗料をマイクログラビアコーターにて塗工して、塗膜層を形成した。
尚、形成する塗膜層の膜厚は、表2に記載の厚み(乾燥時)となるよう塗工時に調整した。
上記で製造した塗膜層が形成された基材フィルムを、可塑剤の移行(ブリードアウト)を促進させるために、80℃のオーブンで200時間処理した。
上記処理を行った基材フィルムを、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、表2に記載の比較例5のめっき物を製造した。
試験例2
上記で製造した、可塑剤の移行(ブリードアウト)を促進させる処理後にめっき膜を形成した実施例6ないし8及び比較例5のめっき物において、めっき外観、初期密着、経時密着(経時フィルムでの密着/めっき後の経時密着)の各種の評価試験を行いその結果を表2に纏めた。
尚、評価試験項目及びその評価方法・評価基準は試験例1と同様である。
また、表中の基材フィルム、アンダーコート材及びバインダーの欄に記載の記号の意味も試験例1と同様である。
Figure 0005252144
結果
基材フィルムとして軟質ポリ塩化ビニール系樹脂シートを用い、アンダーコート材としてA(熱架橋性樹脂)を用いる実施例6及びアンダーコート材としてC(紫外線硬化樹脂)を用いる実施例7のめっきフィルムは、可塑剤の移行(ブリードアウト)の影響を受けず、めっき外観、初期密着及び経時密着の全てにおいて優れていた。
アンダーコート材としてB(ポリエステル系樹脂)を用いる実施例8のめっきフィルムは、可塑剤の移行(ブリードアウト)の影響を多少受けたため、実施例6、7のめっきフィルムに比して多少物性は低下したものの、ある程度の物性は維持された。
一方、アンダーコート層が形成されていない、比較例5のめっきフィルムは、可塑剤の移行(ブリードアウト)により所望の物性が得られなかった。
算術平均粗さRaを模式的に示す図である。

Claims (4)

  1. 算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上に金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法であって、
    1)前記算術平均粗さRaが240nmより大きい凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層を形成し、形成された表面の算術平均粗さRaを240nm以下とする工程、
    2)前記アンダーコート層の上に、還元性高分子微粒子とバインダーを含む塗料を塗布し、20ないし500nmの膜厚の塗膜層を形成する工程、
    3)前記塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程
    からなる方法。
  2. 前記凹凸のある基材フィルムが軟質塩化ビニール系樹脂を基材としたフィルムであり、前記アンダーコート層が紫外線硬化樹脂又は熱架橋性樹脂からなる請求項1記載の方法。
  3. 前記還元性高分子微粒子が還元性ポリピロールである請求項1又は2記載の方法。
  4. 凹凸のある基材フィルム上にアンダーコート層が形成され、該アンダーコート層上に導電性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層が形成され、該塗膜層上に金属めっき膜が無電解めっき法により形成されためっきフィルムであって、
    前記凹凸のある基材フィルムの表面の算術平均粗さRaは240nmより大きく、前記アンダーコート層の表面の算術平均粗さRaは240nm以下であり、前記塗膜層の厚さは20ないし500nmである、
    めっきフィルム。
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