JP5248195B2 - コンクリートの流動性評価試験方法及びその装置 - Google Patents

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Description

本発明は、フレッシュコンクリートの流動性評価試験方法及びその試験に用いる試験装置に関する。
一般に、フレッシュコンクリートの流動性評価試験方法は、スランプおよびスランプフロー試験により行われており、スランプ値、スランプフロー値等が流動性の良否の指標とされている。高流動コンクリートに関しては、スランプフロー試験とは別に、コンシステンシーを評価する試験方法が数多く提案されており、実用化されている方法も多く認められる。しかしながら、スランプ試験で評価されるコンクリート(以下、「スランプコンクリート」という)のコンシステンシーを評価する試験方法は規格化・規準化がされておらず、評価方法自体が確立されていないのが現状である。そのため、独自の手法による評価の試みも行われており、例えば、スランプコンクリートの材料分離抵抗性評価方法(特許文献1)やテーブルバイブレータを用いる方法(特許文献2)等が提案されている。
特許文献1に記載されているスランプコンクリートの材料分離抵抗性評価方法の概要は以下のとおりである。
(1)スランプ値が18〜23cmのコンクリート試料について、まずスランプ試験を行った後にスランプ台板上のコンクリート試料を囲繞するようにバリア装置を載置する。その後、台板を突き棒で叩いて振動を与え、台板上のコンクリート試料の一部がバリア装置の檻状壁部を通過してバリア装置の外部へ流動するようにして、コンクリート試料のフローをバリア装置の径より大きい所定の径まで拡げる。
(2)バリア装置の内部から採取した試料の粗骨材質量比とバリア装置の外部から採取した試料の粗骨材質量比との比率を、コンクリート試料の材料分離抵抗性の指標値とする。
(3)バリア装置の径が30cmの場合は、スランプフローを拡げる際の所定の径が50〜70cmの範囲内から選択することが望ましく、約60cmとすれば、なお好ましい。
(4)バリア装置の外部から採取した試料とバリア装置の内部から採取した試料それぞれの粗骨材質量比の比率は、分離抵抗性が高ければ極めて1.0に近い数値となる。一般には閾値を1.3とし比率が1.3以上となった場合には、不良なコンクリートと判断される。
特開2003−106973号公報 特開2001−133380号公報
特許文献1では、台板への振動を突き棒を落下させることにより与えているため、試験者によって試料に与える振動エネルギーが異なり、定量的な判定を下すことが困難である。また、スランプが小さいコンクリートの場合、振動を与えた際に試料が崩れる恐れがあり、中スランプコンクリートの評価には適していない。また、特許文献2のテーブルバイブレータを用いる方法では設備が必要となることから、施工現場あるいは生コン工場でコンクリートの施工性を確認することは困難であった。
良質な天然骨材の枯渇等によって、粒形や粒度分布が必ずしも良好ではない骨材を使用せざるを得ない施工が増えつつある。特に西日本地区においては、これまで一般的に使用されてきた海砂の採取が規制され、海砂の代替骨材として、加工砂、砕砂等の使用が増えつつある。これらの新しい骨材の使用にあたっては、その使用比率や切替えに伴う配合変更が必要となるため、コンクリートの施工性試験を行い、性状を確認するのが一般的である。
粒形や粒度分布が良好ではない骨材を使用すると、コンクリートの配合条件が適切でない場合には、現場で施工した際に型枠への充填性や材料分離抵抗性、あるいはポンプ圧送性等が問題となることが多い。最近では、耐震性能確保のため構造物の配筋量が増える傾向にあり、以前より配筋が密となっている。配筋が密である箇所では、充填性や材料分離抵抗性等の施工性が低下したコンクリートを用いると施工欠陥が生じる可能性が高くなるため、コンクリートの耐久性確保の観点から施工性に優れたコンクリートが望ましい。
高流動コンクリートについては、充填試験やフロー試験等の流動性評価試験がすでに確立されつつあり、規格・規準案等として実用化されているため、充填性あるいは間隙通過性等のコンクリート性能について評価が可能である。
しかしながら、スランプコンクリートの場合、コンシステンシーの評価はスランプ試験によることが多く、充填性や鉄筋間隙通過性について判断することは難しい。これはスランプコンクリートの場合、例えばポンプ圧送によって打設し、バイブレータで加振するといった施工状況が、スランプ試験の条件とは異なることによると考えられる。そのため、骨材の切替えや配合の変更を行った際に、スランプ試験において同等のフレッシュ性状が得られると判断される配合条件(骨材の使用比率等)を設定しても、実際の施工においては充填性や鉄筋間隙通過性等が問題となる事態が多々生じている。
このため、スランプコンクリートについても、高流動コンクリートと同様に、コンクリートの流動性を適切に評価できる試験方法の確立が望まれている。本発明は、このような要望を満たすために、生コン工場や建設工事現場においても、コンクリートの施工を行う前に施工性の確認が可能であり、スランプが8〜15cmまでのコンクリートの流動性や施工性を評価できる試験方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するためにコンクリートの流動性評価試験方法の検討を鋭意行った結果、コンクリートの流動性に関する施工性について、定量的な評価・判定を可能にする試験方法を開発するに至った。
すなわち本発明は、フレッシュコンクリート試料を円筒容器に詰めて成形した後、バイブレータを用いて台板に所定の振動エネルギーを与え、加振前後のコンクリートのフロー面積比(S/S)によって流動性の良否を判断する方法(以下、「加振式流動性試験方法」という)に関する。具体的には、コンクリートの流動性評価試験方法であって、台板上に設置した円筒容器にコンクリート試料を充填し、円筒容器を引き抜いた後の台板上のコンクリート試料のフロー面積Sを測定し、次いで、バイブレータを用いて所定の振動エネルギーを台板に与えた後の台板上のコンクリート試料のフロー面積Sを測定し、両者のフロー面積の比(S/S)をコンクリートの流動性評価指標値とする、コンクリートの流動性評価試験方法である。
本発明に係わる加振式流動性試験方法を用いるコンクリートの流動性評価試験方法によれば、コンクリートに所定の振動エネルギーを与えた際の流動性の定量的評価が可能となる。特に、一般的に行われるスランプ試験ではコンクリートの施工性の判断は困難であったが、振動を与えた際の流動性に注目したことで、コンクリートの施工性の評価が可能となった。また、本発明は、特殊な試験装置を用いることなく、これまでのスランプ試験装置を活用できるため、場所を問わず、簡易にコンクリートの施工性の評価を行うことが可能となった。
加えて、バイブレータを用いて振動を与えることで、振動エネルギーを常に一定とすることが可能となり、再現性に優れる試験方法が得られた。また、好ましい円筒容器の高さを好ましくは12〜20cm、例えばスランプコーンの半分である15cmとしたことで試料流動時の試料の崩れ等が解消された。なお、本試験では、振動後におけるコンクリート性状を目視で確認できるので、粗骨材の分離状況を確認することも可能である。
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、コンクリートの流動性評価試験方法に係る本発明の第一の態様である加振式流動性試験法の概要を示す図である。加振式流動性試験装置1においては、台板3上に円筒容器2を設置してコンクリート試料を充填した後円筒容器2を引き抜く。円筒容器2を引き抜いた直後、例えば5〜10秒以内に、台板3上のコンクリート試料のフロー面積(S)を測定し、その後、型枠バイブレータ等のバイブレータ4によって所定の振動エネルギーを台板3に与えた後に、再度台板3上のコンクリート試料のフロー面積(S)を測定し、振動前後のフロー面積比(S/S)によって流動性を評価する。
本発明においては、以下の理由により、スランプコーンを用いる代わりに、円筒容器2を使用することとした。スランプコーンを使用した場合、スランプ高さが8cm程度であると、台板に振動を与えた際に試料が崩れる場合があり、正確な測定ができない恐れがある。また、スランプコーンを使用した場合には、評価試料間で微妙なスランプの差が加振時の広がりに位置エネルギーとして反映されるため、正確な評価ができないと判断される。したがって、スランプコーンよりも試料高さを低くでき、かつ試料の高さを一定にできる円筒容器を使用する方が適切である。なお、本発明においては、円筒容器は、一般的に直径10〜30cm、高さ8〜25cmの形状のもの、好ましくは直径12〜20cm、高さ12〜20cmの形状とするのが好適である。このような寸法の円筒容器を採用することで、試料流動時の試料の崩れ等が解消できる。
後述の参考例に示すように、一般的なスランプ試験を行った後、同様にコンクリート試料に振動を与えた場合のフロー面積比を用いる評価方法は、適切に評価できるケースが少なく、施工性の良否は判断できない。したがって、試料の崩れ等が生じない本発明の加振式流動性試験法におけるフロー面積比は、適正な評価が実施可能である点で、従来の方法に比較して格段に優れていることが理解できる。
なお、本発明においては、円筒型に成形したコンクリート試料に振動を与える際には、スランプの台板3に振動を与えることとし、コンクリート試料には直接振動を与えないようにする。コンクリート試料には一定の振動を均等に与えることが望ましいので、例えば台板上に溶接等により剛接合されたような取手5を介して振動を与えるのが好ましい。なお、試験においては、接合された取手に振動を与えることで均等に振動が伝播することが確認された。
なお、試験の際に、台板上にバリア(図示せず)を配すると、材料分離抵抗性が小さいコンクリートでは、バリア内に径の大きな粗骨材が留まるため、バリア内外における試料中の粗骨材質量の比較によって分離の程度を確認することも可能である。この時、バリアは振動条件下で試料流動の妨げとなる必要があり、転倒や移動が無いように鋼棒やステンレス材を使用することが好ましい。更には、強化マグネットによって台板に固定することが望ましい。
コンクリート試料に与える振動エネルギーは、好ましくは5.0〜100(J・s/m)、より好ましくは30〜80(J・s/m)である。コンクリート試料に与える振動エネルギーが小さすぎ、スランプの台板の振動時間が極端に長くなると、試料間の差が不明確となる。また、振動エネルギーが極端に大きく、スランプの台板の振動時間が極端に短くなると、同様に試料間の差が不明確となる。適切な振動時間としては、例えば、振動数が140〜180Hzのバイブレータを用いた場合は、振動時間は、5.0〜60秒、より好ましくは20〜50秒である。これらは上記のコンクリート試料に与える振動エネルギーおよびその好ましいエネルギーに相当する。
振動を与えるのに使用するバイブレータは、型枠バイブレータ等の、加振面が平らで振動数が100〜250Hzであるバイブレータを使用することが好ましい。振動数が250Hzを超えるようなバイブレータを使用すると、過剰な振動の影響によりコンクリート性状の良否に関わらず材料分離が生じてしまい、過度に流動するためである。市販されているエクセン社製の壁打用バイブレータを好適に使用することができる。
コンクリート試料に振動を与えた後、再度フロー面積の測定を行い、振動前後のフロー面積比を測定する。種々のコンクリートについて本発明の方法で試験評価した結果、施工性に優れるコンクリートは、振動数が100〜250Hzのバイブレータを用いて30〜80(J・s/m)の振動エネルギーを与えた場合、スランプ8cmのコンクリートであれば、振動前後のフロー面積比(S/S)として5.0以上、スランプ12cmのコンクリートであれば、振動前後のフロー面積比(S/S)として8.0以上であることが判明した。
本試験によって施工性に優れると判断されるコンクリートは、実際に施工される際にも、加振時の流動性や鉄筋間隙通過性に優れると判断できる。施工性に優れるコンクリートは、耐久性の点で欠陥となり得るような脆弱な箇所、例えば、ジャンカや豆板等が形成されにくいため、高耐久で堅固な構造物を提供することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
[1.使用材料]
(1)セメント
普通ポルトランドセメント(宇部興産(株)製、密度:3.16g/cm
(2)骨材
(i)細骨材
砕砂(表乾密度:2.68g/cm、吸水率:1.65%、粗粒率:2.64)
(ii)粗骨材
硬質砂岩砕石(実積率:59%、吸水率:0.50%、表乾密度:2.73g/cm、粗粒率:6.58)
(3)混和剤
AE減水剤(リグニンスルホン酸化合物とポリカルボン酸エーテルの複合体)
(4)練混ぜ水
上水道水
[2.コンクリートの調製及び評価]
コンクリートの調製は、普通ポルトランドセメント、細骨材、粗骨材を表1に示す条件で混合し、二軸強制練りミキサで30秒間撹拌した後、混和剤と水道水を混合した練混ぜ水をミキサ内に投入し、更に90秒間撹拌することによって行った。なお、細骨材率(=細骨材容積/骨材総容積)として、42〜55%の範囲で試験を行った。コンクリートは、スランプが8及び12cm、空気量が4.5±0.5%を目標として混和剤添加量を調整した。配合条件を表1に示す。
(1)スランプ
JIS A 1101−2005「コンクリートのスランプ試験方法」に記載される方法に準じて行った。
(2)空気量
JIS A 1128−2005「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法(空気室圧力方法)」に記載される方法に準じて行った。
(3)施工性評価
図1に示す加振式流動性試験装置を用いて試験を行った。円筒容器の寸法は、直径15cm、高さ15cmであった。振動は、周波数140〜180Hzのバイブレータ(エクセン社製)を使用して、30秒間加振した。これは、振動エネルギーで約50(J・s/m)に相当した。結果を表3に示す。さらに、参考のために行った通常のスランプ試験では、試験後にスランプの台板を型枠バイブレータで30秒間加振して、加振式流動性試験機と同等の振動エネルギーを付与して加振後のフロー値の測定を行った。結果を表2に示す。
[参考例1〜9、実施例1〜9]
配合条件を変化させたコンクリートのスランプ試験結果とコンクリート試料の加振前後のフロー面積比を表2に参考例1〜9として示す。いずれのコンクリートもスランプ値が8±2.5cmもしくは12±2.5cmの範囲となるように混和剤添加率を調整したため、図2の参考例2、4及び6に示すように、スランプ試験後の試料からは施工性の良否の判定はできなかった。スランプ試験後の試料に振動を与えた場合は、加振時に崩れてしまう試料が多く(参考例1、3、6〜9)、加振後試料がいびつな形状となるため、加振後のフロー面積を正確に測定することが難しかった。また、測定したフロー面積比には明確な傾向が得られず、施工性の良否判定には至らなかった。
これに対し、表3に示す本発明の加振式流動性試験方法においては、コンクリート試料の加振前後のフロー面積比を比較すると、加振時の流動性が最良となる細骨材率の範囲が存在することが明らかとなった(図3参照)。また、配合条件やスランプが異なる場合においても、同様の評価結果が得られた。このため、加振式流動性試験法では、配合条件が施工性に及ぼす影響を直接把握することが可能と考えられ、コンクリートの施工性を十分に判定できると判断された。
以上の評価結果をまとめた表3に示す「振動下での流動性」の評価によれば、加振時の流動性が優れる細骨材率の好適範囲が存在することがわかる。鉄筋間隔が施工上問題とならない場合には、振動下での流動性のみで施工性の評価が可能であるが、配筋が密な箇所の施工性も含めれば、バリア等を配して材料分離の程度をも評価することが望ましいと思われる。
加振式流動性試験方法の概要を示す図であり、(イ)は円筒容器にコンクリート試料を充填し、試料を成形する図、(ロ)は成形した試料にバイブレータで振動を与える図である。 スランプ値が一定値になるように混和剤添加率を調整した試料のスランプ試験後の試料外観を示す写真であり、(a)参考例2、(b)参考例4、(c)参考例6を示す。 スランプ12cm及びスランプ8cmの場合において、細骨材率とフロー面積比の関係を示す図である。
符号の説明
1 加振式流動性試験装置
2 円筒
3 スランプ台板
4 バイブレータ
5 取手

Claims (1)

  1. コンクリートの流動性評価試験方法であって、台板上に設置した円筒容器にコンクリート試料を充填し、円筒容器を引き抜いた後の台板上のコンクリート試料のフロー面積Sを測定し、次いで、バイブレータを用いて所定の振動エネルギーを台板に与えた後の台板上のコンクリート試料のフロー面積Sを測定し、両者のフロー面積の比(S/S)をコンクリートの流動性評価指標値とし、振動数100〜250Hzのバイブレータを使用し、所定の振動エネルギーを5.0〜100(J・s/m )と設定したとき、加振前後のフロー面積比S /S が、スランプ8cmの場合には5.0以上、スランプ12cmの場合の場合には8.0以上であることを、コンクリートの流動性が優れるとの判定基準とする、コンクリートの流動性評価試験方法。
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