JP5246463B2 - セルロース及びセルロース誘導体の改質方法とその装置 - Google Patents
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石川欣造監修、繊維、東京電機大学出版局、1986年発行、第3章 繊維学会編著、やさしい繊維の基礎知識、日刊工業新聞社、2004年発行、第1章 セルロース学会編集、セルロースの事典、朝倉書店、2000年発行、第4、7章
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉紫外または可視光照射によりラジカルを発生する過酸化物と電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物のみを含む溶液の存在下、アスペクト比が300以下で、その存在比が全体の60%以上のセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品に対し、光照射することを特徴とするセルロースまたはセルロース誘導体の改質方法。
〈2〉紫外または可視光照射によりラジカルを発生する過酸化物の存在下、アスペクト比が300以下で、その存在比が全体の60%以上のセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品に対し、紫外または可視光照射した後に、電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物と処理することを特徴とするセルロースまたはセルロース誘導体の改質方法。
〈3〉〈1〉又は〈2〉の方法での紫外または可視光照射後にセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及びそれらからなる製品を還元剤で処理することを特徴とするセルロースまたはセルロース誘導体の改質方法。
本発明において用いる照射光としては、目的とする付与する機能、性能、性質や、付与のための効率等を考慮して選択してよいが、一般的には、120〜800nmの、好ましくは190〜600nmの紫外可視光を用いることが望ましい。紫外可視光源としては特に制限はなく、連続光でもパルス光でもよく、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノン灯、ブラックライト、各種LED、各種エキシマランプ等の通常の光源を用いることができるが、これらに限定されるものではなく従来公知の光源を適宜に用いることができる。照射光強度にも特に制限は無いが、紫外可視光の連続光源としては0.1mW〜10kWの光源が適している。
また光源として各種レーザーを用いることが出来、レーザー光はパルス光でも連続照射光でもよいが、エキシマレーザー(ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、XeFエキシマレーザー等)、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、YAGレーザーの第2、及び第3高調波等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく従来公知のレーザーを適宜に用いることができる。紫外可視レーザー光としては、特別な制約はないが、波長が140〜800nm、好ましくは190〜600nm程度のものを用いることが望ましい。レーザー照射光強度にも特に制限は無いが、パルス光では0.1mJ/パルス〜1kJ/パルス、連続光は0.1mW〜10kWの光源が適している。
光ビームとしては各種レーザーの使用が適しているが、通常の光源を用いて各種レンズやミラー類等の光学系を用いて光を特定の方向に照射できるものであればビームが平行光線でなくても用いることが出来る。これらの光ビームを各種ミラー類等の光学系を用いることにより移動しながら対象となるセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品に照射することができる。
マスクを用いて光照射を行う場合には、マスクは光源と対象となるセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品の間の何れの位置に置いても良く、光源としては上記の光源の何れをも用いることが出来る。また、光源とマスクの間、及び/又はマスクと対象となるセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品の間に各種レンズやミラー類等の光学系を設置して、マスクのパターンを縮小、拡大、変形することもできる。
また、通常の光照射、光ビームによる光照射、及びマスクを用いる光照射において、光源の特性、及び/又は各種レンズやミラー類等の光学系を用いることにより光照射面内の光強度に強弱を付けることによりセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品の改質の度合いにグラデーションを付けることもできる。
ここで用いる電子吸引性基が直接結合した炭素−炭素二重結合の置換基数や置換基の種類にも制限は無く、他の置換基として水素、電子供与性基、電子吸引性基のいずれの特性を有する炭化水素基、各種官能基を有する炭化水素基、各種官能基等、適宜に用いることができる。
電子吸引性基としては、たとえば、NR3 +、SR2 +、NH3 +、NO2、SO2R、CN、SO2Ar、COOH、F、Cl、Br、I、OAr、COOR、OR、COR、SH、SR、OH、Ar、アルキン、アルケン(ここでArは芳香族基を表す)等が挙げられる(非特許文献4参照)が、これらに限定されるものではない。
J. March著、Advanced Organic Chemistry, 4th Ed, John Wiley & Sons, New York, 1992, pp. 17-19 電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、アクリル酸やメタクリル酸等の炭素−炭素二重結合と共役したカルボン酸類、およびこれらのカルボン酸の各種エステルやアミド、アクリロニトリル、フマロニトリル等の炭素−炭素二重結合と共役したニトリル類、ビニルヘキシルエーテル等の各種アルキルエノールエーテル類、メチルビニルケトン、ビタミンK、ビタミンC等の炭素−炭素二重結合と共役したカルボニル化合物類、ニトロエチレン等の炭素−炭素二重結合と共役したニトロオレフィン類、ビニルスルホン酸等の炭素−炭素二重結合と共役したスルホン酸、及びそれらの各種エステル、テストステロン等のステロイド類、スチレン、シクロヘキサジエン、ブタジエン、ヘキサトリエン、各種カロテン、ビタミンA等の共役した炭素−炭素二重結合を有する化合物、フラーレン、アントラセン、等の多核芳香族化合物類、ヒノキチオール等の複数の電子吸引性基が炭素−炭素二重結合と共役したもの、等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、炭素−炭素二重結合に直接電子吸引性基が結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物であればよい。
本発明の光照射によりラジカルを発生する化合物と電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物の、繊維又は繊維製品に対する作用については、光照射により発生したラジカル(ラジカル、ラジカルカチオン、ラジカルアニオン)種により上記セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品の表面上にラジカルが発生し、この様に発生したラジカル種が該炭素−炭素二重結合と反応して結合を形成することにより改質が起こるものと考えられる。あるいは、光照射により発生したラジカル種により、該炭素−炭素二重結合を有する化合物の重合が上記セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品上で起こり、その結果生じた高分子化合物が上記セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品に物理的に付着することにより改質が起こることも考えられる。さらには、に光照射により発生したラジカル種により上記セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品にラジカルが発生し、このラジカルと上記セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品で起こった該炭素−炭素二重結合を有する化合物の重合物中の炭素−炭素二重結合との反応により、該炭素−炭素二重結合を有する化合物の重合体を上記セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品にラジカル反応により結合することによる改質も起こるものと考えられる。このようなラジカルの炭素−炭素二重結合への付加反応は、電子吸引性基を有する炭素−炭素二重結合について広く起こることが有機化学的に知られている(例えば、非特許文献5参照)。また、このような炭素−炭素二重結合を分子内に一つ有する化合物ばかりではなく、分子内に複数有する化合物においても同様のラジカル反応が起こると考えることは合理的である。
しかし、本発明方法では、上記の推定反応機構に関わらず、光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下で、セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品が光照射を受けることにより改質が起こればよいことは勿論である。
東郷秀雄著、有機フリーラジカルの化学、講談社サイエンティフィック、2001年発行 本発明の実施の態様に特別な制限はないが、好ましい実施の態様としては、セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品を、光照射によりラジカルを発生する化合物と電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物を含む薬液に浸漬或いは懸濁させて光照射する方法、或いは該薬液に浸して引き上げた所に光照射する方法、或いは該薬液を上記粉末またはそれらよりなる製品に塗布、吹きつけ等を行い光照射する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
光照射によりラジカルを発生する化合物と電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物を含む薬液で同時に処理する代わりに、光照射によりラジカルを発生する化合物で処理した繊維又は繊維製品に光照射を行う操作と、この様に処理した繊維又は繊維製品を該炭素−炭素二重結合を有する化合物と処理する操作を分けて行うこともでき、それぞれの操作において上記同時処理で用いる手法を使用することができる。
図2の装置は、シート状のセルロースまたはセルロース誘導体、及びセルロースまたはセルロース誘導体からなる製品の改質する手段を備えた他の代表的なものである。この装置によれば、上記素材または製品を光照射によりラジカルを発生する化合物を含む薬液に浸漬し、引き上げた所に光学系を用いて光ビームを動かす光照射を行い、次いで電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物を含む薬液に浸漬することにより必要な箇所に任意のパターンを伴う改質が可能になるといった機能が期待される。
実施例1
セルロース粉末(アスペクト比が300以下で、その存在比が全体の60%以上)500mgを0.9mol/Lのアクリル酸と5%の過酸化水素を含む水溶液6mLに懸濁させ、15Wの低圧水銀灯照射を60分行い、過酸化水素の光分解によりOHラジカルを発生させこれとセルロース粉末とアクリル酸との反応を行い、十分水で洗浄した後、一晩減圧乾燥した。得られた粉末を鑑別染料(カヤスティン)により染色したところ、未処理のセルロース粉末と比べて淡色化し、やや青みがかった灰色を示したことより、セルロース粉末の表面構造が変化しセルロース粉末の改質が起きたことが判明した。
実施例2
セルロース粉末(アスペクト比が300以下で、その存在比が全体の60%以上)500mgを0.9mol/Lのメタクリル酸と5%の過酸化水素を含む水溶液6mLに懸濁させ、15Wの低圧水銀灯照射を60分行い、過酸化水素の光分解によりOHラジカルを発生させこれとセルロース粉末とメタクリル酸との反応を行い、十分水で洗浄した後、一晩減圧乾燥した。得られた粉末を鑑別染料(カヤスティン)により染色したところ、未処理のセルロース粉末と比べてやや淡色化し、青みがかった灰色を示したことより、セルロース粉末の表面構造が変化しセルロース粉末の改質が起きたことが判明した。
比較例1
セルロース粉末(アスペクト比が300以下で、その存在比が全体の60%以上)500mgを鑑別染料(カヤスティン)により染色したところ、緑がかった青色を示した。
Claims (3)
- 紫外または可視光照射によりラジカルを発生する過酸化物と電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物のみを含む溶液の存在下、アスペクト比が300以下で、その存在比が全体の60%以上のセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品に対し、光照射することを特徴とするセルロースまたはセルロース誘導体の改質方法。
- 紫外または可視光照射によりラジカルを発生する過酸化物の存在下、アスペクト比が300以下で、その存在比が全体の60%以上のセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及び該セルロース粉末またはセルロース誘導体粉末からなる製品に対し、紫外または可視光照射した後に、電子吸引性基が直接炭素−炭素二重結合を形成する炭素原子に結合した炭素−炭素二重結合を有する化合物と処理することを特徴とするセルロースまたはセルロース誘導体の改質方法。
- 請求項1又は2のいずれかの方法での紫外または可視光照射後にセルロース粉末またはセルロース誘導体粉末、及びそれらからなる製品を還元剤で処理することを特徴とするセルロースまたはセルロース誘導体の改質方法。
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