JP5019439B2 - 合成繊維の光改質方法および装置 - Google Patents
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例えば、ナイロン類を強酸性にすることにより、主鎖アミドも酸性染料で染色できる手法が提案されている。また、金属錯塩染料を用いることも可能であるが、その廃液中には強酸や有害金属が含まれるために、その廃液処理が困難になるという問題が生じる。
また、ポリエステル繊維の場合は、高温高圧染色法、オルトフェニルフェノールなどのポリエステルに対して可塑性のある化合物を用いるキャリヤー染色法や高温処理を要するサーモゾル染色法等も提案されているが、高温高圧染色法やサーモゾル染色法ではエネルギーを大量に消費する等という問題があり、キャリヤー染色法でもオルトフェニルフェノール等の環境に負荷を与える化合物を用いる必要があるという難点がある。
〈1〉光照射によりラジカルを発生する化合物として過酸化物、又は光重合開始剤の存在下、合成繊維を含む繊維又は繊維製品に対し、光照射することによって、前記光照射によりラジカルを発生する化合物よりラジカルを発生させて繊維を改質することを特徴とする合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
〈2〉光照射によりラジカルを発生する化合物を、合成繊維を含む繊維又は繊維製品の一部だけに付与して光照射することを特徴とする〈1〉に記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
〈3〉光照射によりラジカルを発生する化合物が過酸化物であることを特徴とする〈1〉又は〈2〉に記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
〈4〉光ビームまたはマスクを通して光照射を行うことを特徴とする〈1〉〜3の何れかに記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
〈5〉光照射後に繊維又は繊維製品を還元剤で処理することを特徴とする〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
半合成繊維としては、トリアセテートやジアセテート等のセルロース系、及びプロミックス等のタンパク質系等の各種半合性繊維が例示される。
合成繊維を含む繊維製品としては、糸、織物、衣服、各種容器、装飾品等、主に合成繊維や半合性繊維からなる製品以外にも、他の素材との複合体等からなる製品にも合成繊維や半合性繊維に由来する繊維が含まれている場合にはすべて用いることができる。
繊維及び繊維製品の具体的な改質態様としては、染色性、濃色性、深色性、風合い、防縮性、親水性、撥水性、防水性、親油性、形状記憶性、導電性、しわ加工性、防しわ性、難燃性、樹脂加工性、防虫性、妨カビ性、消臭性、加工性、減量加工、グラフト性、架橋、SR性、電磁波シールド性、メッキ性、芳香性、芳香徐放性等が挙げられるが、これらの機能、性質等に限定されるものではなく、該繊維や繊維製品が本来有する機能、性能、性質等とは異なる新たな機能、性能、性質等を付与するものであればよい。
紫外可視レーザー光としては、特別な制約はないが、波長が140〜800nm、好ましくは190〜600nm程度のものを用いることが望ましい。
レーザー照射光強度にも特に制限は無いが、パルス光では0.1mJ/パルス〜1kJ/パルス、連続光は0.1mW〜10kWの光源が適している。
還元剤としては、特に制約はなく従来公知の還元剤が全て使用できる。このような還元剤としては、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト、水素化ホウ素ナトリウム、ロンガリット、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ヒドラジン等、或いは還元性を有するビタミンC、各種アルデヒド類、ギ酸等の有機化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく還元性を有するものであれば良い。また、これらの還元剤のいずれかを単独で用いても良いが、複数の還元剤からなる混合物を用いることもできる
しかし、本発明方法では、上記の推定反応機構に関わらず、光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下で、合成繊維を含む繊維や繊維製品が光照射を受けることにより改質が起これば良いことは勿論である。
特に該溶液を上記繊維または繊維製品に塗布、吹きつけ等を行う際にはエアーブラシやブラシ類等を用いて上記繊維または繊維製品全体に該溶液を付与するばかりではなく、対象物の一部に付与することにより部分的な改質を起こすことも可能で、この部分的な改質により文字、図表等の形態を有する改質を起こすことができる。また、これらの光照射は上記繊維または繊維製品が静置している状態、或いは移動している状態で行うことができる。
このような溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒の他に、デカン、ドデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素(分子内に脂肪族基を有する芳香族炭化水素も含む)等の無極性溶媒、プロピルアミン、エチレンジアミン、各種カルボン酸、各種ポリカルボン酸、などのプロトン性溶媒等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの溶媒のいずれかを単独で用いても良いが、複数の溶媒からなる混合溶媒を用いることもできる。
界面活性剤としては、光照射による繊維及び繊維製品の改質を著しく阻害するものでなければ従来公知の界面活性剤が全て使用できる。このような界面活性剤としては、たとえば、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどの非イオン界面活性剤、アミノ酸などの両性表面活性剤などが例示される。
また、それらの界面活性剤の溶液を用いることもできるが、このような溶媒としては、水、アルコール類、鎖状または環状の炭化水素類、エーテル類等の単独溶媒あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。界面活性剤の含有量は溶媒に対する界面活性剤の飽和濃度以下であれば特に制限はないが、好ましくは溶媒に対して、0.0001〜50重量%、より好ましくは0.01〜10重量%とするのが適当である。
この装置によれば、上記繊維または繊維製品を薬液に浸漬し、引き上げた所に光照射することができる。
この装置によれば、上記繊維または繊維製品を薬液に浸漬し、引き上げた所に光学系を用いて光ビームを動かす光照射を行うことにより、必要な箇所に任意のパターンを伴う改質が可能となる。還元剤で処理することによって、光照射時に発生したカルボニル基や過酸化物などの不安定物質をアルコールなどの安定した化合物に変換することができる。
この装置によれば、上記繊維または繊維製品を薬液に浸漬し、必要に応じ薬液を注入しながら撹拌中で光照射を行うことにより、取り扱いが煩雑な小さな上記繊維または繊維製品の改質を容易とする。
この装置によれば、薬液を対象とする上記繊維または繊維製品に吹き付けてから光照射を行うため、薬液の吹きつけにロボットアーム等の可動機能を付与することにより上記繊維または繊維製品の形態に関係なく必要な箇所に薬液を付与することができ、また、三次元的な光照射の制御を行うことにより、上記繊維または繊維製品の形態に関係なく必要な箇所の改質が可能となる。
ポリエステル布を5%の過酸化水素水溶液に含浸させ引き上げ、含浸させた過酸化水素に対して15Wの低圧水銀灯照射を60分行い、過酸化水素の光分解によりOHラジカルを発生させこれと綿布との反応を行い、水、メタノール、水、中性洗剤、水の順で洗浄した後、一晩減圧乾燥した。得られた布を鑑別染料(カヤスティン)により染色したところ、未処理のポリエステル布と比べて光照射面は顕著な赤みがかった濃色化が起こり、ポリエステルの表面構造が変化しポリエステル布の改質が起き、たことが判明したが、裏面は殆ど変化が無かった。
Claims (5)
- 光照射によりラジカルを発生する化合物として過酸化物、又は光重合開始剤の存在下、合成繊維を含む繊維又は繊維製品に対し、光照射することによって、前記光照射によりラジカルを発生する化合物よりラジカルを発生させて繊維を改質することを特徴とする合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
- 光照射によりラジカルを発生する化合物を、合成繊維を含む繊維又は繊維製品の一部だけに付与して光照射することを特徴とする請求項1に記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
- 光照射によりラジカルを発生する化合物が過酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
- 光ビームまたはマスクを通して光照射を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかにに記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
- 光照射後に繊維又は繊維製品を還元剤で処理することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の合成繊維を含む繊維又は繊維製品の染色性改善方法。
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