JP2007070723A - 媒体中に金属ナノ粒子を形成する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、媒体の損傷なく媒体中に金属ナノ粒子を簡便に形成する方法を提供する。
【解決手段】媒体中で金属ナノ粒子を形成する方法であって、還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ媒体に、2種類の励起光を照射することを特徴とする形成方法、並びに、媒体中に金属ナノ粒子が形成された材料を製造する方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、媒体中に金属ナノ粒子を形成する方法に関する。
金属ナノ粒子はその特異な光化学的、電気的性質などを有することから、金属ナノ粒子への関心はますます高まってきている。金属ナノ粒子は、学術的な関心に留まらず、新しい用途や高機能性材料等としての可能性を秘めているため、実用的な応用への展開が期待されている。例えば、DNAなど生体分子を検出するセンサー、触媒、極微細線などの実用化に向けての研究が日進月歩の勢いで進展している。それを受けて、様々なサイズ及び形状の金属ナノ粒子を作成する方法が盛んに開発されている。
金属ナノ粒子作成方法には大きく分けて化学的方法及び物理的方法の二つがある。化学的方法とは、還元剤を用いて金属ナノ粒子の原料である金属イオンや金属錯体を化学的に還元することによって金属ナノ粒子を作成する方法である。例えば、クエン酸塩やナトリウムボロンハイドライドなどにより金属錯体を還元する方法が良く知られている(例えば、非特許文献1)。また、還元により生じた金属ナノ粒子をチオール類、ポリビニルピロリドン等の安定剤によって安定化することによって、粒形のそろった金属ナノ粒子を作成する方法が開発されている(例えば、非特許文献1)。
一方、物理的方法とは、光化学反応、放射線化学反応、音響化学反応、熱化学反応などによって、原料の金属イオンや金属錯体を還元し、金属ナノ粒子を作成する方法である(例えば、非特許文献1)。レーザーや電子線の本来持つ空間分解能を利用すれば、位置特異的・選択的に金属ナノ粒子アレイを作成することが可能となり、これが光化学反応及び放射線化学反応を用いる方法の利点の一つである。
しかしながら、欠点としては、この方法では非常にエネルギーの高い光や電子線を照射するため、マトリックス(媒体)に深刻な損傷が生じる可能性があることが挙げられる。特に、短パルスレーザーを用いた直接励起による方法においては、短波長側に吸収を持つ金属イオンを選択的に励起する必要があるため、マトリックス(媒体)自体が同じ波長領域に吸収を持たないことが必要になるなどの大きな制限があった。このため、実際にレーザーを用いて空間的に制御されたナノ粒子アレイを作成することは非常に難しい。
ところで、媒体中に構築されたナノ粒子(ナノコンポジット)は、様々な用途が考えられ、盛んに研究が行われている。しかしながら、マイクロコンタクトプリンティング、各種リソグラフィー、自己組織化等の従来の方法では媒体中に三次元空間的にフリーハンドにナノ粒子を配置することは困難であった。
例えば、微細に配線された金属ナノ粒子は、ある種の金属ナノ粒子が電気伝導性を持つことから、極微細配線として注目されている。従来、金属ナノ粒子を微細に配線する方法としては、金属ナノ粒子を含む液体をインクジェット方式で配置したり、エッチング、マイクロコンタクトプリンティング、各種リソグラフィーなどを応用する方法が研究されてきた。
しかしながら、これらの方法では三次元的な配線が困難であった。三次元的な電子回路を実現する手段として、多層基板が用いられているが、工程は層毎に順次行なうしかなく、高密度・多層化するにしたがって製造期間もかかり、低コストで製造することが困難となっていた。
また、ある種の金属ナノ粒子はセンサーとして非常に高い性能を持つことが指摘されている(非特許文献2)。金属ナノ粒子を三次元的に配置することによって単位体積中で複数のセンシングを行うことができ精度が上昇することが期待できる。
Daniel, M, -C.; Astruc, D. Chem. Rev. 2004, 104, 293. Rosi, N. L.; Mirkin, C. A. Chem. Rev. 2005, 105, 1547.
本発明は、媒体の損傷なく媒体中に金属ナノ粒子を簡便に形成する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、金属イオンを直接光(例えばレーザー光)により励起させて金属ナノ粒子を形成する従来の方法ではなく、特定の前駆体に2種類の励起光を照射することにより生成する還元性のラジカル活性種(基底状態のラジカル又は励起ラジカル)が金属イオンを容易に還元して、金属ナノ粒子を形成できることを見出した。
その1つとして、還元性のラジカル活性種の前駆体に2種類の励起光を照射して得られる励起状態のラジカル(以下、「励起ラジカル」とも呼ぶ)が高い還元能力を有することに着目し、この励起ラジカルを用いて金属イオンや金属錯体を還元すると、簡便かつ効率的に金属ナノ粒子を形成できることを見出した(図1、2を参照)。
具体的には、該前駆体(S)(ベンゾフェノン等)に所定の励起光を照射すると、最低励起一重項励起状態(S)を経て最低励起三重項励起状態(T)を生成し、媒体からの水素引き抜きによりラジカル(D)(ベンゾフェノンケチルラジカル等)を生成し、このラジカルをその寿命内にさらに波長の異なる所定の励起光で照射すると、より還元能力の高い励起ラジカル(D)(励起ベンゾフェノンケチルラジカル等)が生成する。この励起ラジカルから共存する金属イオンや金属錯体に速やかに電子移動(electron transfer)が生じて金属ナノ粒子が形成される。エネルギー準位図を用いた想定される反応メカニズムを図2に示す。
従来、励起ラジカルのような不安定化学種は、選択的かつ高濃度に生成することは困難であった。また、励起ラジカルはその極めて短い寿命(ピコ秒オーダー)ゆえ、高い反応性を有することは知られていても、それを有効利用する方法はほとんど知られていなかった。本発明では、励起ラジカルを金属イオンの還元に初めて応用したものである。
他の1つとして、還元性のラジカル活性種の前駆体に2種類の励起光を照射して得られる高次の励起状態(以下、「高励起状態」とも呼ぶ)又は励起状態のラジカルから、化学結合の開裂によって高い還元力を持つラジカル活性種が生成することに着目し、このラジカル活性種を用いて金属イオンや金属錯体を還元することにより媒体中に三次元的に金属ナノ粒子を形成できることを見出した(図3,4)。
具体的には、該前駆体(カルバゾール、ベンジル等)に所定の励起光を照射すると、最低励起状態(励起一重項状態(S)又は励起三重項状態(T))又はラジカル(D)が生成する。この最低励起状態又はラジカルを、その寿命内にさらに波長の異なる所定の励起光で照射すると、より高励起状態(高励起一重項状態(S)又は高励起三重項状態(T))又は励起状態のラジカル(D)を生成する。この高励起状態又は励起ラジカルから化学結合の開裂が起こり、ラジカル活性種を生じる。このラジカル活性種から共存する金属イオンや金属錯体に速やかに電子移動(electron transfer)が生じて金属ナノ粒子が形成される。エネルギー準位図を用いた想定される本発明の反応メカニズムを図4に示す。
従来、高励起状態又は励起ラジカルはその極めて短い寿命(ピコ秒オーダー)ゆえ、それを有効利用する方法はほとんどなかった。本発明では、高励起状態又は励起ラジカルから生じるラジカル活性種が、比較的長寿命であり、高い反応性をもつことを利用して、金属イオンの還元に初めて利用したものである。
この様に、本発明は、媒体中でこの還元性ラジカル活性種を効率的に発生させ、これを用いて共存する金属イオンや金属錯体を還元することにより、媒体中に金属ナノ粒子を形成するものであり、極めて斬新な方法である。
即ち、本発明は、以下の媒体中に金属ナノ粒子を簡便に形成する方法を提供する。
項1. 媒体中で金属ナノ粒子を形成する方法であって、還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ媒体に、2種類の励起光を照射することを特徴とする形成方法。
項2. 還元性ラジカル活性種の前駆体が、2種類の励起光(L1及びL2)の照射により、金属イオン又は金属錯体を還元し得るラジカル活性種を生成する化合物である項1に記載の形成方法。
項3. 還元性ラジカル活性種の前駆体が、ビスアリールケトン類、アリールアルキルケトン類、ビスアリールメチルハライド類、ベンゾイン類、カルバゾール類、ベンジル類、アルコキシ(又はアリールオキシ)メチルベンゾフェノン類、及びアルコキシ(又はアリールオキシ)メチルナフタレン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1に記載の形成方法。
項4. 2種類の励起光(L1及びL2)が、それぞれレーザー光又はランプ光である項1に記載の形成方法。
項5. 励起光(L1)が還元性ラジカル活性種の前駆体を励起して基底状態のラジカルを生成させる励起光であり、励起光(L2)が該基底状態のラジカルをその寿命内で励起して励起状態のラジカルを生成させる励起光である項1に記載の形成方法。
項6. 励起光(L1)が還元性ラジカル活性種の前駆体を励起して励起状態を生成させる励起光であり、励起光(L2)が該励起状態をその寿命内で励起して高励起状態を生成させる励起光である項1に記載の形成方法。
項7. 励起光(L1)の波長が180〜800nmであり、励起光(L2)の波長が230〜1064nmである項1に記載の形成方法。
項8. 励起光(L1)及び励起光(L2)を同時又は段階的に照射する項1に記載の形成方法。
項9. 金属イオン又は金属錯体を構成する金属が、パラジウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1に記載の形成方法。
項10. 媒体が、固体媒体又は液体媒体である項1に記載の形成方法。
項11. 還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが重なるように照射することを特徴とする項4に記載の形成方法。
項12. 還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが重なるように照射し、両励起光の重なる部位を移動させることにより、該固体媒体に金属ナノ粒子からなる回路を形成することを特徴とする項11に記載の形成方法。
項13. 還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ三次元形状の固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが交差するように照射し、両励起光の交差部位を移動させることにより、該固体媒体に金属ナノ粒子からなる三次元回路を形成することを特徴とする項4に記載の形成方法。
項14. 項1〜13のいずれかに記載の形成方法により媒体中に形成された金属ナノ粒子。
項15. 媒体中に金属ナノ粒子が形成された材料を製造する方法であって、還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ媒体に、2種類の励起光を照射することを特徴とする製造方法。
項16. 項15に記載の製造方法により製造される媒体中に金属ナノ粒子が形成された材料。
以下、本発明を詳述する。
本発明は、還元性ラジカル活性種の前駆体(以下「前駆体」とも呼ぶ。)及び金属イオン又は金属錯体を含んだ媒体に、2種類の励起光を照射して、媒体中に金属ナノ粒子を形成する方法である。
本発明の方法では、該前駆体に2種類の励起光を照射して生成する還元性ラジカル活性種が、金属イオン又は金属錯体の還元剤としてはたらき、金属イオン又は金属錯体を還元して金属ナノ粒子を生成する。本法は、物理的手法によって生じた活性種が、金属イオン又は金属錯体を化学的に還元して金属ナノ粒子を生成ずるという点で、物理的手法と化学的手法の両者を兼ね備えた手法であると言える。
還元性ラジカル活性種の前駆体
本発明で用いる還元性ラジカル活性種の前駆体としては、(a)2種類の励起光の照射により励起状態のラジカル活性種(励起ラジカル)を生成する化合物、又は、(b)2種類の励起光の照射により高励起状態(高励起一重項状態又は高励起三重項状態)又は励起ラジカルを経て、その結合開裂により基底状態のラジカル活性種(基底ラジカル)を生成する化合物であればよく、このような性質を有している化合物であれば特に限定はなく、広範な化合物を用いることができる。
なお、還元性ラジカル活性種とは、自ら酸化されやすく電子を与えやすいラジカル活性種であり、特に、媒体中に存在する金属イオン又は金属錯体に電子を与えて還元し、金属ナノ粒子を形成し得るラジカル活性種を意味する。
上記(a)の化合物から2種類の励起光の照射により得られる励起状態のラジカル活性種(励起ラジカル)(図2)、及び、上記(b)の化合物から2種類の励起光の照射により励起された活性種が結合開裂した後に得られる基底状態のラジカル活性種(基底ラジカル)が、還元性ラジカル活性種に相当する(図4(1)〜(3))。
上記(a)で示される前駆体(化合物)としては、一次励起光(L1)により基底ラジカルを生成し、2次励起光(L2)により励起ラジカルを生成し得る化合物であれば特に限定はない。例えば、ベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、ナフチルフェニルケトン、4−ベンゾイルビフェニル、ビス−ビフェニル−4−イル−メタノン等のビスアリールケトン類;アセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン等のアリールアルキルケトン類;ジフェニルメチルクロリド、ジナフチルメチルクロリド等のビスアリールメチルハライド類;ベンゾイン等のベンゾイン類などが挙げられる。このうち、光励起体が媒体から高い水素引き抜き能力を持ち、生成する基底状態のラジカル(以下「基底ラジカル」とも呼ぶ)が長波長側に光吸収を持つ点から、ビスアリールケトン類、特にベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン等が好適である。
上記(a)で示される前駆体(例えば、ビスアリールケトン類、アリールアルキルケトン類等)は、1つめの励起光(L1)により励起され一旦三重項励起状態を生成し、これが水素供与能を持つ媒体から水素を引き抜いて基底ラジカルを生じる。すなわち、上記(a)の化合物から基底ラジカルを生成するステップでは、媒体から水素を引き抜く過程を含むため、媒体は水素供与体として機能するものが好ましい。
この基底ラジカルは、さらなる励起光(L2)により励起ラジカルに変換され、該励起ラジカルからの電子移動により金属イオン又は金属錯体を還元する。この様に、該前駆体は、媒体中での反応によって基底ラジカルを経て励起ラジカル活性種を生成し、該励起ラジカル活性種によって金属イオン又は金属錯体を還元する。該前駆体は、媒体中にドーパントとして含まれ、励起ラジカル活性種の前駆体となる。
また、上記(b)で示される前駆体(化合物)としては、2つの励起光により生成した高次励起状態から結合開裂を起こす部位を持つ化合物であれば特に限定はない。例えば、カルバゾール、N−メチルカルバゾール、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール類;ベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル等のベンジル類;4−メトキシメチルベンゾフェノン、4−エトキシメチルベンゾフェノン、4−フェノキシメチルベンゾフェノン等のアルコキシ(又はアリールオキシ)メチルベンゾフェノン類;1−メトキシメチルナフタレン、1−フェノキシメチルナフタレン、2−メトキシメチルナフタレン、2−フェノキシメチルナフタレン、1,8−ジメトキシメチルナフタレン、1,8−ジフェノキシメチルナフタレン、1,4−ジメトキシメチルナフタレン、1,4−ジフェノキシメチルナフタレン等のアルコキシ(又はアリールオキシ)メチルナフタレン類などが挙げられる。このうち、高励起三重項状態からの結合開裂によってラジカルを生成するベンジル類、高励起一重項状態からの結合開裂によってラジカルを生成するカルバゾール類などが好適である。
上記(b)で示される前駆体、例えば、ベンジル誘導体は、1つめの励起光(L1)により励起され一旦三重項励起状態を生成する。この三重項励起状態型からの結合開裂効率は極低いが、さらなる励起光(L2)により高励起三重項が生成すると、これから効率的に結合の開裂が起こり、ベンゾイルラジカルが生じる。このベンゾイルラジカルからの電子移動により金属イオン又は金属錯体を還元する。この様に、前駆体は、媒体中での複数の励起光による多段階励起によって、高励起状態を経て活性なラジカル活性種を生成し、該ラジカル活性種が金属イオン又は金属錯体を還元する。前駆体は、媒体中にドーパントとして含まれ、ラジカル活性種の前駆体となる。
前駆体として、上記(a)の化合物を採用するか又は上記(b)の化合物を採用するかは、使用する励起光の種類、媒体の性質(水素供与体の有無等)、一次励起光照射後の二次励起光照射のタイミング等を考慮して適宜選択することができる。
特に、上記(b)の化合物を採用する場合は、図4に示されるように、還元種(活性種)が基底ラジカルであるため、寿命が長く効率的に金属ナノ粒子が形成できるという利点がある。
また、最低励起状態(例えば、図4の(1)のS、図4の(2)のT)は、基底状態のラジカル(例えば、図2のD)と比べ反応性の穏やかなものが多い。そのため、上記(b)の化合物を用いる場合には、一次励起光(L1)によって生じる副反応(例えばラジカル同士のカップリング等)を抑えることができる。
また、上記(b)の化合物は広範な化合物を採用することができるため、より弱いエネルギーの光を利用できる前駆体を選択することができる。例えば、また、活性水素源を有しない媒体中でも金属ナノ粒子を作製できるため適用範囲が広い。さらに、種々の媒体を用いることができ、それに応じて多様な金属ナノ粒子を還元できるなどの利点がある。
金属イオン又は金属錯体
本発明で用いる金属イオン又は金属錯体は、電子を受容して0価の金属に還元されるものであれば特に限定はない。
金属イオン又は金属錯体を構成する金属としては、例えば、パラジウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、白金などが挙げられる。すなわち、金属イオンとしては、パラジウムイオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、金イオン、銀イオン、白金イオンなどが例示され、また、金属錯体としては、HAuCl4、AgNO2、PtCl4、Cu(acac)2、FeCl3、AuCl3、NiCl2、Pd(C5H7O2)2などが例示される。これらの金属イオン又は金属錯体は、上記のうちから選択することができる。また、2種以上の混合物を用いることもでき、この場合には、本発明の方法によって、2種以上の異なる金属からなる複合金属ナノ粒子を形成することができる。
各金属イオン又は金属錯体は、用いる前駆体から生成する還元性ラジカル活性種(励起ラジカル、基底ラジカル)の還元力に応じて適宜選択することができる。
媒体
本発明において金属ナノ粒子が形成される媒体としては、各種固体媒体又は液体媒体を用いることができる。本発明で用いられる固体媒体又は液体媒体としては、還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を分散乃至溶解できるものであり、かつ、該前駆体から還元性ラジカル活性種の生成が可能なものであれば特に限定はない。
例えば、ミセル(例えば、ポリスチレン−ポリ−4−ビニルピリジン等)、樹脂(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等)、ゼオライト、ガラスなどの固体媒体;水、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノ−ル、ベンゼン、トルエン、メチルテトラヒドロフラン等)等の液体媒体の使用が可能である。いずれの固体媒体又は液体媒体を用いる場合でも、その中に均質な金属ナノ粒子を形成するためには、前駆体、及び金属イオン又は金属錯体を均一に分散乃至溶解できるものが好ましい。
なお、媒体中における前駆体、金属イオン又は金属錯体の濃度は、特に限定はなく広範な範囲から適宜選択することができる。例えば、媒体(PVA等)中における前駆体の濃度は、例えば、0.005〜50mol/L程度、好ましくは20〜30mol/L程度であり、また、媒体中における金属イオン又は金属錯体の濃度は、金属イオン換算で、例えば、0.1〜10mol/L程度、好ましくは1〜5mol/L程度であればよい。媒体中の各成分の濃度が上記の範囲であれば、生成した短寿命の還元性ラジカル活性種から金属イオン又は金属錯体への電子移動が容易となり、金属ナノ粒子を効率的に形成することができる。
なお、本発明の方法は、これらの濃度に限定されるわけではなく、本方法が適用できるすべての金属イオン又は金属錯体、媒体、前駆体等の組み合わせによって、広範囲の濃度条件下で実施が可能である。
媒体(固体媒体又は液体媒体)中に、前駆体及び金属イオン又は金属錯体を溶解乃至分散させる方法として、例えば次のような方法が例示できる。
液体媒体を用いた場合は、前駆体及び金属イオン又は金属錯体を該液体媒体中に入れて均一に混合し、溶解又は分散すればよい。
固体媒体を用いた場合、特に樹脂を用いた場合は、ドーパントである前駆体、金属イオン又は金属錯体、及び樹脂を、いずれも溶解し得る溶媒(例えば、水、蟻酸、酢酸、アルコール類、これらの混合物等)に溶解し、これを所望の形状に成形して溶媒を除去すればよい。成形の方法は特に限定はなく、その形状に応じて射出成形、押出成形、スピンコート等の公知の方法を採用すればよい。形状は用途に応じて選択でき、例えば、フィルム、シート等の平面状、或いは立方体、直方体、球、その他任意の三次元形状にすることも可能である。三次元形状にする場合は、その強度を向上させるため、必要に応じ樹脂に架橋剤を添加して架橋処理を施しても良い。
また、固体媒体としてゼオライトを用いた場合は、ドーパントである前駆体、金属イオン又は金属錯体、及び必要に応じ水素供与体を、いずれも溶解し得る溶媒に溶解し、ゼオライト中に取り込ませればよい。
金属ナノ粒子の形成
次に、上記のようにして作成した、媒体中に還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含む複合物に、2種類の励起光を照射して媒体中に金属ナノ粒子を形成する。
金属イオン又は金属錯体を還元して金属ナノ粒子を形成するには、まず媒体中で還元剤として機能する還元性ラジカル活性種を生成させる必要がある。還元性ラジカル活性種は、2以上の波長の光(励起光)を連続的に該前駆体及び金属イオン又は金属錯体に照射することにより生成することができる。
第1光源によってドーパントである前駆体を励起して一旦中間活性種とし、これをその寿命内で第2光源によって励起して還元性ラジカル活性種を生成する(2色2段階励起法)。2種類の励起光を照射は、同時又は段階的のいずれであっても良い。
例えば、上記(a)の前駆体を用いた場合、第1光源によってドーパントである該前駆体を励起して一旦基底ラジカル(D)を生成させ、生じた基底ラジカルをその寿命内で第2光源によって励起して励起ラジカル(D)を生成する(例えば、図2を参照)。生成した励起ラジカルは、共存する金属イオン又は金属錯体を還元して、金属ナノ粒子を生じる。通常、基底ラジカルの寿命は、1ns〜10s程度であり、励起ラジカルの寿命は1ps〜1μs程度である。
第1光源からは、媒体中の前駆体を励起して基底ラジカルを生成し得る励起光(L1)が照射され、第2光源からは、該基底ラジカルをその寿命内で励起して励起ラジカルを生成し得る励起光(L2)が照射される。励起光(L1)及び励起光(L2)の波長は、前駆体の構造・性質、還元しようとする金属イオン又は金属錯体の種類等に応じて当業者が適宜選択して設定できる。例えば、励起光(L1)の波長は、通常180 nm〜800 nm程度、特に180〜532 nm程度の範囲であり、励起光(L2)の波長は、通常230〜1064 nm程度、特に230 nm〜800 nmの範囲であればよい。
具体例として、前駆体としてベンゾフェノンを用いた場合、ベンゾフェノンを三重項励起状態に励起して基底状態のベンゾフェノンケチルラジカルを生成する励起光(L1)の波長は、通常180〜360 nm程度であれば良く、基底状態のベンゾフェノンケチルラジカルから励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルを生成する励起光(L2)の波長は、通常340〜532 nm程度であれば良い。
また、上記(b)の前駆体を用いた場合、第1光源によってドーパントである該前駆体(S)を励起して、一旦最低励起状態(S又はT)又は基底ラジカル(D)を生成させ、生じた最低励起状態又は基底ラジカルをその寿命内で第2光源によって励起して高励起状態(S又はT)又は励起ラジカル(D)を生成する(図3,4を参照)。高励起状態又は励起ラジカルは化学反応(結合開裂)によってラジカル活性種を生じ、このラジカル活性種が共存する金属イオン又は金属錯体を還元して、金属ナノ粒子を生じる。
第1光源からは、媒体中の前駆体を励起して最低励起状態又は基底ラジカルを生成し得る励起光(L1)が照射され、第2光源からは、最低励起状態又は基底ラジカルをその寿命内で励起して高励起状態又は励起ラジカルを生成し得る励起光(L2)が照射される。励起光(L1)及び励起光(L2)の波長は、前駆体の構造・性質、還元しようとする金属イオン又は金属錯体の種類等に応じて当業者が適宜選択して設定できる。例えば、励起光(L1)の波長は、通常180 nm〜800 nm程度、特に180〜532 nm程度の範囲であり、励起光(L2)の波長は、通常230〜1064 nm程度、特に230 nm〜800 nmの範囲であればよい。
具体例として、前駆体としてベンジルを用いた場合、ベンジルを三重項最低励起状態に励起する励起光(L1)の波長は、通常200〜360nm程度であれば良く、最低励起三重項状態のベンジルから高励起三重項状態のベンジルを生成する励起光(L2)の波長は、通常400〜532 nm程度であれば良い。
上記した励起光(L1)及び励起光(L2)の光源としては、Nd:YAGレーザー、エキシマーレーザー等のレーザー光、水銀灯、Xe-ランプなどのランプ光などが用いられる。レーザー光にはパルス光と連続発振光(continuous-wave light;CW光)があるが、いずれも用いることができる。また、ランプ光は通常連続発振光のみであるが、機械的手段によってパルス化にして用いることも可能である。レーザー照射では、ランプによる光照射に比較してより高効率で金属ナノ粒子を作成できるだけでなく、レーザー光の持つ直進性のため高い空間分解能を得ることが期待できるため好ましい。
励起光(L1)及び励起光(L2)として2種の波長のレーザー光を用いた場合、照射のタイミングは、中間活性種と生成する還元性ラジカル活性種の寿命を考慮して公知の遅延回路を用いて容易に制御することができる。照射の間隔は、同時又は段階的であってよく、通常0〜100μs、100ns〜10μs程度が適当である。
この様にして、媒体中にその平均粒子径が、1〜100nm程度、特に4〜10nm程度の金属ナノ粒子が形成される。金属ナノ粒子の生成の確認及びサイズの測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行うことができる。
本発明では光励起されるのは還元性ラジカル活性種の前駆体であり、媒体の損傷を回避するためには、媒体の吸収光波長が前駆体の吸収光波長を外れていることが必要である。例えば、前駆体(例えば、ベンゾフェノン、ベンジル等)を355 nmレーザーで励起する場合、355 nmに吸収を持たない媒体が選択される。355 nmに吸収を持たない媒体は比較的多いことから、広範な媒体を選択することができる。
媒体として固体媒体、特に樹脂を用いた場合には、公知の方法により任意の形状に成形することができることは先に述べたが、本発明では、該形状を有する固体媒体の表面だけでなく内部の任意の部位に金属ナノ粒子を形成することができる。金属ナノ粒子が形成された部位は電気伝導性を有しているため、広範な用途に利用が可能である。
例えば、固体媒体の形状がフィルム、シート等の平面状の場合、前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが重なるように照射することにより、両励起光が重なった部分に金属ナノ粒子を形成することができる。具体的には、励起光(L1)を固体媒体の全面或いは一部に照射しながら、励起光(L1)が照射された部位と重なるように励起光(L2)を固体媒体上に照射すればよい。
さらに、前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが重なるように照射し、該固体媒体上の両励起光の重なる部位を移動させることにより、該固体媒体に金属ナノ粒子からなる回路を形成することができる。具体的には、励起光(L1)を固体媒体の全面或いは一部に照射しながら、励起光(L1)が照射された部位と重なるように励起光(L2)を固体媒体に照射し、さらに固体媒体上の励起光が重なる部位を移動させればよい(例えば、図5を参照)。
ここで、励起光(L1)と励起光(L2)の重なる照射幅を制御することにより、所望の線幅を持った金属ナノ粒子の回路パターンを形成することが可能である。つまり、この方法では、細幅は、励起光の照射幅に依存し任意に制御することができるのであり、光の回折限界(波長の約半分)程度の幅の極微細線でも自由に配線することができる。金属ナノ粒子の線幅は光の回折限界、例えば、266 nmの光源を用いた場合は133 nm程度の線幅まで任意に制御できる。なお、励起光(L2)の照射幅は、レンズ等を用いて絞ることにより任意に選択できる。線幅は、光学顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認できる。
なお、励起光(L2)の照射を走査する場合、光源を動かすことが容易でない場合は、通常固体媒体側を走査して照射位置を制御すればよい。
所定のパターンを有するマスク(フォトマスク)を固体媒体にかぶせて、これに励起光(L1)及び(L2)を照射すれば、固体媒体の光が照射された部分だけに回路パターンを作成できる。
これらの方法をレーザープリンターへと応用することで、レーザープリンターを用いて極微細線でできた金属ナノ粒子の回路を基板にプリントすることも可能である。これは、非常に薄いコンピュータや、電子ペーパーの作成に応用できる。
また、固体媒体の形状が三次元形状の場合、前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ三次元形状の固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが交差するように照射すれば、三次元形状の表面だけでなく、該形状内部の任意の箇所に金属ナノ粒子を形成することができる。固体媒体の局所に照射する場合は、金属ナノ粒子からなる微細な点を形成できる。
さらに、前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ三次元形状の固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが交差するように照射し、両励起光の交差部位を移動させることにより、該固体媒体に金属ナノ粒子からなる三次元回路を形成することができる(例えば、図6を参照)。
すなわち、この手法によって金属ナノ粒子を三次元空間に自由に配置、配線することが可能となる。
この場合も、励起光(L1)と励起光(L2)の交差する幅を制御することにより、所望の線幅を持った金属ナノ粒子の回路パターンを形成することが可能である。金属ナノ粒子の線幅は、光の回折限界、例えば、266 nmの光源を用いた場合は133 nm程度の線幅まで任意に制御できる。線幅は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認できる。
三次元形状の固体媒体中に金属ナノ粒子を形成する場合には、三次元回路の形成のし易さから、特に、レーザーを使用するのが好ましい。
なお、励起光(L2)の照射を走査する場合、光源を動かすことが容易でない場合は、通常固体媒体側を走査して照射位置を制御すればよい。
この方法によれば、三次元形状の固体媒体を用いることによって超高密度な金属ナノ粒子の三次元回路を作成することができる。また、金属ナノ粒子を三次元的に配置することができるので、金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴を利用したセンサーなどに応用できる。三次元化することによってセンサーの単位体積あたりの密度を上げることができ、感度が高まるという利点もある。
さらに、本発明の方法に寄れば、“ship in a bottle”的三次元構造の金属ナノ粒子ワイヤを作成できる。ここで、“ship in a bottle”作成とは、微細空間内で直接金属ナノ粒子を作成することによって、微細空間内に金属ナノ粒子を配置する作成方法を意味する。金属ナノ粒子(特に、金ナノ粒子)はポルフィリンに修飾したチオール類と特異的な相互作用を示すため、金属ナノ粒子をうまく配置することによって非常に良好な光電変換のナノコンポジットができる。
例えば、ゼオライトなどの固体媒体にあらかじめ存在する微細な空孔中などに、金属ナノ粒子をオーダーメイド的に配列させることができる。金属ナノ粒子が入りえない空孔中にも、本発明の手法によって光によってイオンを還元し、空孔中でダイレクトに金属ナノ粒子を作成することで空孔中に金属ナノ粒子を選択的に配置することが可能となる。
この方法は緻密に設計されたナノコンポジットを作成する上で非常に有力な方法となる。この方法を用いると特定の空間領域にのみ金属ナノ粒子を作成でき、また金属ナノ粒子を他の機能性分子が配置された後に配置できるため、もっとも有効な場所に“ship in a bottle”的三次元構造のナノ粒子が配置されたナノコンポジットが作成できる。
本発明の方法において、金属ナノ粒子への還元反応が起こっているか否かは、次のようにして確認することができる。励起ラジカルは特徴的な発光を示すことが知られているが、励起ラジカルによる金属イオンの還元が起こった場合、励起ラジカルの発光は消光される。そのため、この消光をモニターすることで還元が起こっているか否かを調べることができる。
また、基底ラジカル及びその励起ラジカルから金属イオン等への電子移動によって、特徴的な金属ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認される。これにより、金属ナノ粒子が生成したことを確認することもできる。表面プラズモン吸収を紫外−可視分光光度計を用いて測定し、金属ナノ粒子の生成量を評価することができる。
例えば、前駆体としてベンゾフェノンを用いた場合、355 nmレーザー(L1)のみを照射した場合、355 nmレーザー(L1)と532 nmレーザー(L2)を連続的に照射した場合の表面プラズモン吸収の強度を比較し、ベンゾフェノンケチルラジカルの励起状態からの電子移動によって金属(金)ナノ粒子が生成していることを確認できる。
また、前駆体としてベンジルを用いた場合、355 nmレーザー(L1)のみを照射した場合、355 nmレーザー(L1)と480 nmレーザー(L2)を連続的に照射した場合の表面プラズモン吸収の強度を比較し、ベンゾイルラジカルの励起状態からの電子移動によって金ナノ粒子が生成していることを確認できる。
近年、放射線、γ線照射等の放射線化学的手法によってラジカル前駆体から基底状態のラジカルを生成させ、この基底状態のラジカルによって金属ナノ粒子を生成する方法については、報告例がある(例えば、Hirose, T. et. al. Chem. Phys. Lett. 2004, 390, 166.)。しかしながら、放射線化学的手法は特別な設備、施設を要するため汎用性に欠け、簡便な方法とは言いがたい。
また、光化学的手法によって基底状態のラジカルを生成させ、この基底状態のラジカルによって金属ナノ粒子を生成する方法も報告されている(例えば、Korchev, A. S. et al. J. Phys. Chem. B 2005, 109, 7733.)が、この場合、媒体及び還元される金属イオンは基底状態のラジカルの還元力の低さによって制限されてしまう。また、三次元的な空間分解能は得られない。
これに対し、本発明の方法は、ラジカルの励起状態から金属イオンへの電子移動を利用して金属ナノ粒子を作成する方法である。このような、励起状態のラジカルを採用した先行技術はこれまで知られていない。ラジカルの励起状態は基底状態よりも高い還元力を持つので、基底状態よりも幅広い金属イオンを効率的に還元できる。従がって、本方法を用いることによって多種多様な金属イオンを様々な媒体中で効率的に還元することができる。そして、本発明の方法では、2つの光源を用いてラジカルの励起状態を生成させるので、位置特異的に金属ナノ粒子を作成することができる。特に光源として2つのレーザーを使用することによって、三次元的な空間分解能で金属ナノ粒子を作成することができる。しかも、汎用的に使用できる簡便なレーザーなどの光化学的手法を用いるものであり、コストパフォーマンスも高く、実用的価値が高い。
具体例
次に、還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含む固体媒体、特に樹脂を用いた場合の金属ナノ粒子の形成方法を、具体例を挙げて説明する
(1)金属ナノ粒子の作成
ベンゾフェノン(5−15mM)、HAuCl4(1−5mM)、PVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、石英プレート上にキャスティングして、ベンゾフェノン及びHAuCl4を含むPVAフィルムを製膜する。このPVAフィルムに355nmレーザーと532nmレーザーを適当な時間を置いて連続的に照射する。2つのレーザー照射のタイミングは遅延回路を用いて制御でき、照射の間隔は1μs程度が適当である。ベンゾフェノンケチルラジカルの励起状態が生成すると、励起状態からのオレンジ色の発光が560nm付近に確認される。また、ベンゾフェノンケチルラジカルの励起状態からの発光がAuCl4 -の存在によって消光されることが確認される。
ベンゾフェノンケチルラジカルおよびその励起状態からの電子移動によって金ナノ粒子が生成したことは、特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収を測定することにより確認される。表面プラズモン吸収を紫外−可視分光光度計を用いて測定し、金ナノ粒子の生成量を評価する。355nmレーザーのみを照射した場合、355nmレーザーと532nmレーザーを連続的に照射した場合の表面プラズモン吸収の強度を比較し、ベンゾフェノンケチルラジカルの励起状態からの電子移動によって金ナノ粒子が生成していることを確認する。
また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、直接的に確認でき、生成した金ナノ粒子の平均サイズを測定できる。
同様の実験は、Xe-ランプ、水銀灯などの連続発振光源(CW光源)を励起光として用いても行うことができる。この場合は、二つの波長の励起光のタイミングを合わせることはできないので、355nmの光のみを上記のPVAフィルムに照射した場合と、355nm、532nmの光を同時に照射した場合との金ナノ粒子の生成量の違いを表面プラズモン吸収から評価する。2つの波長の励起光の照射によって、金ナノ粒子の生成量が増加していることが確認される。
なお、ベンゾフェノンに代えて、ベンジル、カルバゾール等を用いた場合も、上記の条件に従い金ナノ粒子を作成することができる。
(2)金属ナノワイヤの作成
ベンゾフェノン(5−15mM)、HAuCl4(1−5mM)、PVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、石英プレート上にキャスティングして、ベンゾフェノン及びHAuCl4を含むPVAフィルムを製膜する。このPVAフィルム全体に532 nmの連続発振光(CW光)をあて、レンズによって絞った355 nmのCW光を局所的に照射して、これを移動させる。
ベンゾフェノンケチルラジカルおよびその励起状態からの電子移動によって金ナノ粒子が生成し、局所的に特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認される。また、透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に金ナノ粒子細線の生成を確認でき、生成した金ナノ粒子の平均サイズ及び線幅を測定できる。作成した金ナノ細線は電気伝導性を示し、金ナノ粒子の二次元回路(金ナノワイヤ)が形成される。
なお、ベンゾフェノンに代えて、ベンジル、カルバゾール等を用いた場合も、上記の条件に従い金ナノワイヤを作成することができる。
(3)三次元構造の金属ナノワイヤの作成
PVAヒドロゲルを、ベンゾフェノン(5−15mM)とHAuCl4(1−5mM)の混合水溶液に浸すことにより、ベンゾフェノン及びHAuCl4を含むPVAヒドロゲルを作成する。
ここでPVAヒドロゲルは、例えば、PVA水溶液をガンマ線照射によって架橋して、もしくはPVA水溶液を低温で凍結及び解凍を繰り返して作成できる。もしくは、PVA(6-10wt%)とベンゾフェノン(5−15mM)とHAuCl4(1−5mM)を含む水溶液を低温で凍結及び解凍させることにより、ベンゾフェノン及びHAuCl4を含むPVAヒドロゲルを作成することもできる。いずれの場合も、HAuCl4(1−5mM)の代わりに他の金属錯体(例えば、CuSO4(1−5mM))を用いることができる。
このPVAヒドロゲルに局所的にレンズによって絞った532nmのパルスレーザー光をあて、これと交差するようにレンズによって絞った355nmのパルスレーザー光を照射して、これを移動させる。
2つのレーザーの交差する部分においてのみ、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからの電子移動によって金ナノ粒子が生成する。励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからのみ電子が移動して、2つのレーザーの交差する部分においてのみ局所的に特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認される。
なお、上記のパルスレーザー光に代えて、CWレーザー光を用いてもよい。
光学顕微鏡又は透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に三次元金ナノ細線の生成を確認でき、生成した金ナノ粒子の平均サイズ及び線幅を測定できる。作成した金ナノ細線は電気伝導性を示し、金ナノ粒子の三次元回路(金ナノワイヤ)が形成される。
なお、ベンゾフェノンに代えて、ベンジル、カルバゾール等を用いた場合も、上記の条件に従い三次元の金ナノワイヤを作成することができる。
(4)「ship in a bottle」的三次元構造の金属ナノワイヤ回路の作成
2つの光源を用いることによって“ship in a bottle”的にナノ粒子を配置することができる。
三次元の固体媒体としてはゼオライト(例えば、メソポーラス材料)等を用いることができる。ベンゾフェノン及びHAuCl4をゼオライト中に取り込ませる。ゼオライトを水素供与体であるアルコールや水に浸し、さらに、C60と連結したポルフィリンを取り込ませる。ポルフィリンにチオールを修飾し、生成する金ナノ粒子と特異的な相互作用を持つようにする。
このゼオライトに局所的にレンズによって絞った532nmのレーザー光をあて、これと交差するようにレンズによって絞った355nmのレーザー光を照射して、これを移動させる。
2つのレーザーの交差する部分においてのみ、ベンゾフェノンケチルラジカルの励起状態からの電子移動によって金ナノ粒子が生成し、ship in a bottle”的三次元構造の金ナノ粒子ワイヤを作成できる。
なお、ベンゾフェノンに代えて、ベンジル、カルバゾール等を用いた場合も、上記の条件に従い金ナノワイヤを作成することができる。
(5)複合金属ナノ粒子の作成
本発明の方法を用いることで二つ以上の異なる金属からなる複合ナノ粒子の作成ができる。
基底ラジカルにより還元される金属イオン又は金属錯体(C1)と、励起ラジカルのみにより還元される金属イオン又は金属錯体(C2)とを、あらかじめ固体媒体(特に、樹脂)中に混合する。二種類の励起光を用いて、第1光源によりC1から金属ナノ粒子が生成し、第2光源ではC1及びC2の両方から金属ナノ粒子生成が生成するので、全く新しい種類の複合ナノ粒子が作成される。
以下に具体例を挙げる。ベンゾフェノン、PVA、AgNO2及びHAuCl4を含む水溶媒を作成する。この水溶媒に532nmのCW光及び355nmのCW光を照射する。355 nmの光の照射によってベンゾフェノンが励起され、ベンゾフェノンの励起状態はPVAフィルムから水素を引き抜き基底状態のベンゾフェノンケチルラジカルが生じる。AgNO2は基底状態のベンゾフェノンケチルラジカルによって還元され、銀ナノ粒子の種結晶ができる。基底状態のベンゾフェノンケチルラジカルは532nmの光によってさらに励起され、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルを生じる。励起ベンゾフェノンケチルラジカルからHAuCl4及びAgNO2への電子移動によって金ナノ粒子および銀ナノ粒子が生成する。この過程において特殊な金銀複合ナノ粒子が生成する。
金銀複合ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認され、透過型電子顕微鏡(TEM) によって、直接的に金銀複合ナノ粒子の生成を確認する。
なお、ベンゾフェノンに代えて、ベンジル、カルバゾール等を用いた場合も、上記の条件に従い複合ナノ粒子を作成することができる。
(6)三次元データ保存への応用
本方法の三次元空間分解能および二種類の波長のレーザーを利用するという点を生かし、三次元のデータ保存システム(ホログラフィックメモリ等)を構築する。書き込みは、2種(色)のレーザー(L1及びL2)の2段階もしくは同時照射によって金属ナノ粒子を三次元的に作成することで行う。
第2レーザー(L2)には、基底状態の化合物およびマトリクスの吸収がない波長のレーザーを選ぶことができる。2色2段階レーザー照射によって金属ナノ粒子が作成されると長波長側に吸収が現れるため、第2レーザーで読み出すことができる(透過率、散乱光等を利用する)。第2レーザーを読み出しに使う。
以下に具体例を挙げる。ベンゾフェノン、PVA及びCuSO4を含むポリマーマトリクスを作成する。このマトリクスに532nmのCWレーザー光及び355nmのCWレーザー光を照射する。355 nmの光の照射によってベンゾフェノンが励起され、ベンゾフェノンの励起状態はPVAフィルムから水素を引き抜き基底状態のベンゾフェノンケチルラジカルが生じる。基底状態のベンゾフェノンケチルラジカルは532nmの光によってさらに励起され、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルを生じる。励起ベンゾフェノンケチルラジカルからCuSO4への電子移動によって銅ナノ粒子が生成する。この過程において三次元のデータ書き込みが可能になる。
532nmにはベンゾフェノン、PVA共に吸収を持たないので532nmのCWレーザー光を読み出しに応用する。銅ナノ粒子のプラズモン吸収(吸収極大570 nm)は532 nm付近に吸収を持つため、前述の書き込みが行われると532nmのCWレーザー光の透過率は下がる。また、金属ナノ粒子の散乱光も観測される。三次元の読み出しを可能にするため、共焦点法を用いる。
(7)金属ナノワイヤの基板上へのコーティング
ベンジル(5−15mM)、HAuCl4(1−5mM)及びPVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、基板上にキャスティングして、ベンジル及びHAuCl4を含むPVAフィルムを製膜する。このPVAフィルムに532 nmの連続発振光(CW光)および355 nmのCW光を局所的に重複するように照射する。二つのCW光源の重なりを制御することによって、光源の重なる領域のみに金属ナノ粒子が作成されるので、レーザーの回折限界以下の領域に金ナノ粒子を作成することが可能である。
ベンゾイルラジカルからの電子移動によって金ナノ粒子が生成し、局所的に特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認される。また、透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に金ナノ粒子細線の生成を確認でき、生成した金ナノ粒子の平均サイズ及び線幅を測定できる。作成した金ナノ細線は電気伝導性を示し、金属ナノ粒子の二次元回路(金属ナノワイヤ)が形成される。
金ナノ粒子の作成されたPVAフィルムを有する基板を、温水、有機溶媒(アルコール等)等の溶媒にひたし、内包されている金属イオン、前駆体を除去する。これは次の操作によって、反応していない金属イオンの還元が進むのを避けるためである。必要であれば、イオンビーム等の照射によってコートしない部分のフィルムをあらかじめ剥ぎ取ってやることにより、より高い分解能が達成される。
本発明の方法によれば、アブレーション等の媒体の損傷なく媒体中に金属ナノ粒子を簡便に形成することができる。また、2種の励起光を媒体(特に、固体媒体)中で交差させて移動させることにより、媒体中に金属ナノ粒子からなる二次元又は三次元構造(回路)を簡便に作成することもできる。また、フィルム状の媒体に金属ナノ粒子の回路を形成し、該フィルム状媒体を基板にコートして、これを加熱処理等することにより、基板上に金属ナノ粒子の回路を形成することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
ポリビニルアルコール(PVA)媒体中に金ナノ粒子を作成した。
ベンゾフェノン(5−15 mM)、HAuCl4(1−5mM)及びPVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、キャスティング法によって石英プレート上に製膜してPVAフィルムを得た。生成したPVAフィルムはAuCl4 -の吸収に由来する薄い黄色を示した。
このPVAフィルムに355nmレーザーと532nmパルスレーザーを適当な時間を置いて連続的に照射した。励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルが生成するため、励起状態からのオレンジ色の発光が560 nm付近に確認された。また、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからの発光がAuCl4 -の存在によって消光されることを確認した。2つのレーザーの照射のタイミングは遅延回路を用いて制御し、照射の間隔は1μs程度が適当であった。
ベンゾフェノンケチルラジカルおよびその励起状態からの電子移動によって金ナノ粒子が生成したことは、特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収により確認した。また、透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に金ナノ粒子の生成を確認した。TEM観察により、生成した金ナノ粒子の平均サイズ(平均粒径)は5nm程度であった。表面プラズモン吸収を紫外−可視分光光度計を用いて測定し、金ナノ粒子の生成量を評価した。355 nmレーザーのみを照射した場合、355 nmレーザーと532 nmレーザーを連続的に照射した場合の表面プラズモン吸収の強度を比較し、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからの電子移動によって金ナノ粒子が生成していることを確認した。
実施例2
ポリビニルアルコール(PVA)媒体中に銅ナノ粒子を作成した。
ベンゾフェノン(5−15 mM)、CuSO4 (1−5mM)及びPVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、キャスティング法によって石英プレート上に製膜してPVAフィルムを得た。生成したPVAフィルムはCu2+の吸収に由来する薄い青色を示した。
このPVAフィルムに355nmと532nmの波長のパルスレーザーを適当な時間を置いて連続的に照射した。励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルが生成するため、励起状態からのオレンジ色の発光が560 nm付近に確認された。また、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからの発光がCu2+の存在によって消光されることを確認した。2つのレーザーの照射のタイミングは遅延回路を用いて制御し、照射の間隔は1μs程度が適当であった。
ベンゾフェノンケチルラジカルおよびその励起状態からの電子移動によって銅ナノ粒子が生成したことは、特徴的な銅ナノ粒子の表面プラズモン吸収により確認した。また、透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に銅ナノ粒子の生成を確認した。TEM観察により、生成した銅ナノ粒子の平均サイズ(平均粒径)は5nm程度であった。表面プラズモン吸収を紫外−可視分光光度計を用いて測定し、銅ナノ粒子の生成量を評価した。355 nmレーザーのみを照射した場合、355 nmレーザーと532 nmレーザーを連続的に照射した場合の表面プラズモン吸収の強度を比較し、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからの電子移動によって銅ナノ粒子が生成していることを確認した。
実施例3
パルスレーザーに代えて、CWレーザーを励起光として用いて、実施例1と同様にしてPVA媒体中に金ナノ粒子を作成した。
この場合は、二つの波長の励起光のタイミングを合わせることはできないので、355nmの光のみを上記のPVAフィルムに照射した場合と355nm及び532nmの光を同時に照射した場合との金ナノ粒子の生成量の違いを表面プラズモン吸収から評価した。その結果、2つの波長の光の照射によって、金ナノ粒子の生成量が増加していることがわかり、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからの電子移動によって金ナノ粒子が生成していることを確認した。
実施例4
パルスレーザーに代えて、Xe-ランプ、水銀灯などのCW-光源を励起光として用いて、実施例1と同様にしてPVA媒体中に金ナノ粒子を作成した。
この場合は、二つの波長の励起光のタイミングを合わせることはできないので、355nmの光のみを上記のPVAフィルムに照射した場合と355nm及び532nmの光を同時に照射した場合との金ナノ粒子の生成量の違いを表面プラズモン吸収から評価した。その結果、2つの波長の光の照射によって、金ナノ粒子の生成量が増加していることがわかり、励起状態のベンゾフェノンケチルラジカルからの電子移動によって金ナノ粒子が生成していることを確認した。
実施例5
2つの光源を用いてPVA媒体中に金ナノ粒子からなる二次元の回路を作成した(図5を参照)。
ベンゾフェノン(5-15 mM)、HAuCl4(1−5mM)及びPVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、キャスティング法によってプレート上に製膜してPVAフィルムを得た。生成されたPVAフィルムはAuCl4 -の吸収に由来する薄い黄色を示した。
このPVAフィルム全体に532 nmのCW光をあて、レンズによって絞った355 nmのCW光を局所的に照射した。その結果、局所的に特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認された。透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に金ナノ細線の生成を確認した。TEM観察によれば、金ナノ細線の幅は約200nmであった。作成した金ナノ細線の電気伝導性を示し、ナノワイヤが生成していることを確認した。
実施例6
2つの光源を用いてPVA媒体中に銅ナノ粒子からなる二次元の回路を作成した(図5を参照)。
ベンゾフェノン(5-15 mM)、CuSO4(1−5mM)及びPVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、キャスティング法によってプレート上に製膜してPVAフィルムを得た。生成されたPVAフィルムはCu2+の吸収に由来する薄い青色を示した。
このPVAフィルム全体に532 nmのCW光をあて、レンズによって絞った355 nmのCW光を局所的に照射した。その結果、局所的に特徴的な銅ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認された。光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に銅ナノ細線の生成を確認した。TEM観察によれば、銅ナノ細線の幅は約1μmであった。
実施例7
2つの光源を用いてPVAヒドロゲル中に銅ナノ粒子からなる三次元構造を作成した(図6を参照)。
作成したPVAヒドロゲルをベンゾフェノン及びCuSO4を含む弱酸性(pH約6)の温水にひたし、内部にベンゾフェノン及びCuSO4を取り込ませて、ベンゾフェノン及びCuSO4を含むPVAヒドロゲルを製造した。生成されたPVAゲルはCu2+の吸収に由来する薄い青色を示した。
このPVAゲルにレンズによって絞った532 nmおよび355 nmのCWレーザー光を両者が交点を結ぶように照射した。その結果、二本のCWレーザー光の交点に特徴的な銅ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認された。光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に銅ナノ細線の生成を確認した。TEM観察によれば、銅ナノ細線の幅は約1μmであった。
実施例8
ベンゾフェノンに代えてベンジルを用いること以外は、実施例1と同様にして金ナノ粒子を作成した。
なお、ベンジルの高励起三重項状態からの結合開裂は、ベンジルの最低励起三重項のブリーチングから確認した。
ベンジルの高励起三重項状態からの結合開裂によりベンゾイルラジカルを生じ、このベンゾイルラジカルからの電子移動によって金ナノ粒子が生成したことは、特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収により確認した。
光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡(TEM)によって、金ナノ細線の生成を確認した。金ナノ細線の幅は約約1μmであった。
実施例9
ベンゾフェノンに代えてベンジルを用いること以外は、実施例2と同様にして銅ナノ粒子を作成した。
実施例10
ベンゾフェノンに代えてベンジルを用いること以外は、実施例3と同様にして金ナノ粒子を作成した。
実施例11
2つの光源を用いてPVA媒体中に金ナノ粒子からなる二次元及び三次元の回路を作成した(図5,6を参照)。
ベンジル(5-15 mM)、HAuCl4(1−5mM)、PVA(5wt%)を含む蟻酸溶液を、キャスティング法によってプレート上に製膜してPVAフィルムを得た。生成されたPVAフィルムはAuCl4 -の吸収に由来する薄い黄色を示した。
このPVAフィルム全体に532 nmのCW光をあて、レンズによって絞った355 nmのCW光を局所的に照射した。その結果、局所的に特徴的な金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が確認された。透過型電子顕微鏡(TEM)によって、直接的に金ナノ細線の生成を確認した。TEM観察によれば、作成した金ナノ細線の幅は約200nmであった。作成した金ナノ細線の電気伝導性を示し、ナノワイヤが生成していることを確認した。
本発明の反応メカニズムを示す模式図である。 エネルギー準位図を用いた反応メカニズムを示す図である。 本発明の反応メカニズムを示す模式図である。 エネルギー準位図を用いた反応メカニズムを示す図である。 金属ナノ粒子の配列による二次元極微細線の作成方法を模式的に示した図である。 金属ナノ粒子の配列による三次元高密度回路の作成方法を模式的に示す図である。

Claims (16)

  1. 媒体中で金属ナノ粒子を形成する方法であって、還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ媒体に、2種類の励起光を照射することを特徴とする形成方法。
  2. 還元性ラジカル活性種の前駆体が、2種類の励起光(L1及びL2)の照射により、金属イオン又は金属錯体を還元し得るラジカル活性種を生成する化合物である請求項1に記載の形成方法。
  3. 還元性ラジカル活性種の前駆体が、ビスアリールケトン類、アリールアルキルケトン類、ビスアリールメチルハライド類、ベンゾイン類、カルバゾール類、ベンジル類、アルコキシ(又はアリールオキシ)メチルベンゾフェノン類、及びアルコキシ(又はアリールオキシ)メチルナフタレン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の形成方法。
  4. 2種類の励起光(L1及びL2)が、それぞれレーザー光又はランプ光である請求項1に記載の形成方法。
  5. 励起光(L1)が還元性ラジカル活性種の前駆体を励起して基底状態のラジカルを生成させる励起光であり、励起光(L2)が該基底状態のラジカルをその寿命内で励起して励起状態のラジカルを生成させる励起光である請求項1に記載の形成方法。
  6. 励起光(L1)が還元性ラジカル活性種の前駆体を励起して励起状態を生成させる励起光であり、励起光(L2)が該励起状態をその寿命内で励起して高励起状態を生成させる励起光である請求項1に記載の形成方法。
  7. 励起光(L1)の波長が180〜800nmであり、励起光(L2)の波長が230〜1064nmである請求項1に記載の形成方法。
  8. 励起光(L1)及び励起光(L2)を同時又は段階的に照射する請求項1に記載の形成方法。
  9. 金属イオン又は金属錯体を構成する金属が、パラジウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の形成方法。
  10. 媒体が、固体媒体又は液体媒体である請求項1に記載の形成方法。
  11. 還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが重なるように照射することを特徴とする請求項4に記載の形成方法。
  12. 還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが重なるように照射し、両励起光の重なる部位を移動させることにより、該固体媒体に金属ナノ粒子からなる回路を形成することを特徴とする請求項11に記載の形成方法。
  13. 還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ三次元形状の固体媒体に、励起光(L1)と励起光(L2)とが交差するように照射し、両励起光の交差部位を移動させることにより、該固体媒体に金属ナノ粒子からなる三次元回路を形成することを特徴とする請求項4に記載の形成方法。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の形成方法により媒体中に形成された金属ナノ粒子。
  15. 媒体中に金属ナノ粒子が形成された材料を製造する方法であって、還元性ラジカル活性種の前駆体及び金属イオン又は金属錯体を含んだ媒体に、2種類の励起光を照射することを特徴とする製造方法。
  16. 請求項15に記載の製造方法により製造される媒体中に金属ナノ粒子が形成された材料。
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