以下、本発明における食品加熱保温器の各実施例について説明する。先ず、各実施例に共通する食品加熱保温器の全体構成と作用の概略について説明する。
図1は本発明による食品加熱保温器の全体構成を示すものあり、同図において1は略直方体に形成される筐体、2は筐体1の上部開口部を塞ぐ天板で、この天板2の内部には、図示しないが筐体1の内部を上方から照明する照明用蛍光灯が配置される。そして、この照明用蛍光灯を点灯または消灯する切替手段として、筐体1の下部開口部にある基台3の枠4に照明用スイッチ5が設けられる。
食品などの商品を陳列する筐体1は、その側面部を形成する周囲の少なくとも一方向を透明部材であるガラス7で覆われており、上方から見て略U字状をなすガラス7と、このガラス7の側部開口部に設けられた非透明部材の前板8および左右一対の側板9,9で、筐体1の側面部を略密閉した状態で形成している。さらに、筐体1の上部開口部と下部開口部に、それぞれ上仕切板10と下仕切板11を密閉した状態で取付けている。筐体1の前側面部をなす前板8は、周囲に枠体を残した形状で、商品を出し入れする開口部が形成されており、その開口部を密閉状態に覆うべく、周囲にパッキン(図示せず)を備えた扉14が、ヒンジ15によって開閉自在に設けられている。なお16は、ヒンジ15の反対側に位置して扉14の一側に設けられた取手で、扉14を通して筐体1の内部が視認できるように、扉14は枠部を除く部分に透明部材であるガラス17が設けられる。
本体の下部を形成する基台3は有底筒状で、側面部の四方向を囲む前記枠4の他に、いずれも図示しないが、底板と脚を設けた構造を有している。そして、前記扉14と同じ配置面である枠4の前側面には、前記照明スイッチ5と共に、表示機能を兼用した操作部21,ドレンコック22,ドレンパイプ23,水位計24,本体内に商用電源電圧を供給する電源コード25などがそれぞれ配置される。
また、蒸し器として使用する場合に、筐体1内に蒸気を送り出す蒸気発生装置として、枠4の内部には、いずれもここでは図示していないが、蒸発皿に相当する加熱容器と、該加熱容器に貯溜する水を加熱して蒸発させる底部ヒータと、加熱容器に水を供給する水タンクが設けられる。それ以外にも、枠4の内部には、各部の動作を制御するための制御装置29や、加熱容器の上部にあって筐体1の下側から乾燥・加熱を行なうリング状の底面ヒータ30などが配置される。
なお、図8に示すように、筐体1の内部には左右一対の支柱31が立設しており、この支柱31の上下方向に並んで複数個のレール32が各々設けられている。各レール32は、筐体1の左右内面にそれぞれ向かい合って、前後方向に沿って横たわるように設けられており、個々のレール32には、棚35を載せるための水平部33と、この水平部33の上部に所定の間隔を有して配置され、水平部33に載った棚35の上方向への動きを規制する折返し部34が形成される。折返し部34は扉14が配置される筐体1の前側に設けられており、水平部33と折返し部34の間から棚35を挿入して、レール32に沿って棚35をスライド移動できるようになっている。
また、棚35の詳細を図9にて説明すると、この棚35は商品を載せて陳列するための棚網36と、この棚網36の下部にあって、棚網36に着脱自在な受皿37とにより構成され、棚網36と受皿37を一体にした状態で、筐体1の内部において左右一対のレール32に着脱可能、かつスライド移動可能に配置される。棚網36はその外周を縁取りされた状態で、内部に実質的な商品の載置部となる網39が設けられている。また、棚網36の外周縁前方の一部には、棚網36を受皿37から容易に着脱させるための取手40が設けられる。なお、ここでいう網39とは、例えばスノコ状の桟なども含み、要するに商品のクズや揚げ物の衣の一部などが、そこを落下し得るあらゆる形状のものをいう。一方、受皿37は例えばアルミニウムなどの熱伝導性の良好な材料からなり、その左右外周部をコ字状に囲むようにして一対のレール部41が形成されると共に、このレール部41,41間には若干下方に落ち込んだ有底状の凹部42が形成される。そして、棚網36の両側部に受皿37のレール部41を係合することによって、受皿37が棚網36に摺動可能に設けられる。
再度図1に戻り、44は温度検出手段に相当する温度センサで、これは棚網36を設置した筐体1の内部温度を検出して、制御装置29にその信号を出力するものである。また、前記支柱31と側板9により囲まれた上下方向に細長い空間内には、加熱手段となる側面ヒータ45が左右共にそれぞれ設けられている(図8参照)。この側面ヒータ45は、特に図8に詳しく示してあるように、逆U字状のシーズヒータにより形成され、各棚35に直交するように、筐体1の両側部上下方向全体に沿って配設されている。そして、側面ヒータ45の口元部46は、前記下仕切板11を貫通して基台3の内部に達している。この下仕切板11の貫通部は、基台3の内部への異物の侵入を防止するために、気密を保持した状態で口元部46を取り付けている。
本実施例では、側面加熱手段となる側面ヒータ45としてワット密度のほぼ均一なシーズヒータを利用したが、筐体1の上下方向に沿ってワット密度を細かく可変設定できるコードヒータを用いてもよい。例えば、筐体1の上方に位置する側面ヒータ45のワット密度を高くし、筐体1の下方に位置する側面ヒータ45のワット密度を低くすれば、筐体1の上方の加熱温度を下方の加熱温度よりも意図的に高くすることができる。これに合わせて、筐体1の上方に高めの加熱温度が適する食品を陳列し、筐体1の下方に低め加熱温度が適する食品を陳列すれば、食品毎に最適な温度で加熱を行なうことができる。また、例えば棚受けであるレール32に対応して横長のヒータ単品を配設し、このヒータ単品を組み合わせた縦長のヒータユニットを、筐体1の側部上下方向にある加熱手段として構成してもよい。いずれにせよ、側面加熱手段の構成は実施例にあるような側面ヒータ45に限定されない。
前記支柱31およびこの支柱31に各々固着されるレール32は、いずれも例えばアルミニウムなどの熱伝導性の良好な部材で構成され、側面ヒータ45は支柱31の外側部をなす固定板47によって、支柱31に密着した状態で固定される。
次に、上記構成についてその作用を説明する。基台3の前方に設けられた操作部21のスイッチ(図示せず)を投入して、加熱保温器としての運転を開始すると、製品下部に配置された底面ヒータ30が通電され、ガラス7と、扉14でその開口部が塞がれた前板8と、側板9と、上仕切板10と、下仕切板11とにより囲まれた空間が加熱保温される。より具体的には、底面ヒータ30を通電して発熱させると、この底面ヒータ30の周囲にある空気を加熱し、空気対流を主として筐体1の内部の各部材が加熱される。
一方、支柱31に沿って設けた側面ヒータ45も同時に通電され、側面ヒータ45に密着した熱伝導性の良好な固定板47を含む支柱31の全体に、効率よく熱が伝わる。この熱はさらに、同じく熱伝導性の良好な各レール32へと固着された部材間を速やかに伝わり、レール32上に位置する各受皿37に熱伝導される。また、温度センサ44は筐体1内部の庫内温度を検出して、制御装置29にその検出結果を信号伝達しており、制御装置29は庫内温度が略一定となるように、底面ヒータ30や側面ヒータ45を通断電制御している。
このような状態で商品を陳列するには、先ず取手16を利用してヒンジ軸15を回転中心に扉14を開け、棚網36と受皿37が一体となった棚35をレール32に沿って筐体1の前方に引出す。そして、この引出したままの状態、若しくは棚網36を受皿37から取り外して、棚網36に食品(例えば、コロッケやフランクフルトなど)を載せ、再度棚網36と受皿37とを一体にした状態で、レール32に沿って棚35を筐体1の内部に収納する。また、他の段にある棚35も、同様に食品(商品)を陳列設置する。レール32と棚35の左右両側部との接触部分、および受皿37のレール部41と棚網36の左右両側部との接触部分には凹凸がなく、これらの各部材をスムーズにスライド移動させることができる。さらに、側面ヒータ45から受皿37に伝わる熱によって、各棚35に載置された食品は、底面ヒータ30から離れた位置にあるものでも、略同じ温度に加熱および保温管理される。したがって、筐体1の内部の空気をファンなどで攪拌することなく、その庫内温度を均一に維持することができるようになっている。
筐体1の内部の陳列された各食品は、透明部材であるガラス7,17を通して、外部からその状態を常時確認することができる。受皿37によって下段の棚35への食品クズの落下が防止されるため、こうした食品クズの落下を気にすることなく、同一筐体1の内部に異なる食品を任意に保温保管できるものである。また、各棚35をレール32間に装着した状態では、棚網36と受皿37が略同形状であり、販売に際し商品が見難かったり、あるいは取り出し難いなどの障害もない。
その後、商品を販売する場合は、商品の位置と販売個数にもよるが、通常は取手16を利用して扉14を開け、棚35を筐体1内から引出さずに、そのまま商品のみをトングなどの掴み具で挟んで取り出す。コロッケなどの食品の場合は、その外表面に付着した食品クズ(揚げたパン粉)が、トングで挟む際に容易に脱落するが、この食品クズは、網39を通過して棚35の下部に一体構成された受皿37に落下する。また食品によっては、調理時の油が網39を通過して滴下することもあるが、同様に受皿37に滴下して、下段の棚35に達することはない。特に本実施例における受皿37は、棚網36と受皿37とを一体にした状態で、食品を載せる網39に対向する位置に凹部42を形成しているので、受皿37に達した油が凹部42の上面に滴下し、容易に下段の棚35に流れ出ない。
また、販売終了時や定期的な清掃時においては、取手16を利用してヒンジ軸15を回転中心に扉14を開け、棚網36と受皿37が一体となった棚35をレール32に沿って筐体1の前方に引出す。そして、棚網36より受皿37のレール部41をスライド移動して、棚網36と受皿37とを分解し、個々に洗浄することで、棚35全体を清潔な状態に保つことができる。洗浄後は再び棚網36と受皿37とをスライド嵌合させて一体とし、左右のレール32間に再装着する。そして、前述のように商品を設置して、陳列および販売を行なう。受皿37のレール部41と棚網36の左右両側部との接触部分には凹凸がないため、清掃性に優れる。また、受皿37を棚網36よりスライドさせるだけで、双方の部材を簡単に着脱できるので、清掃性も向上する。
さらに、この食品加熱保温器は、いわゆる加熱や保温としての機能だけでなく、蒸し器としての機能も選択的に使用可能となっている。すなわち、前記操作部21の操作ボタン(図示せず)を押して、蒸し器機能を選択すると、底面ヒータ30や側面ヒータ45がオフする代わりに、底部ヒータがオンして、加熱容器内に貯溜した水を加熱蒸発させる。これによって、例えば中華まんなどの蒸し器に適した食材を良好な状態に保管できる。このように、筐体1の下部に蒸気発生装置を設けているので、加熱保温器としてだけではなく、蒸し器として切り替え使用することも可能になり、蒸し器を別に設置する必要がないものである。
次に、本発明の第1実施例における食品加熱保温器を、図1及び図2を参照しながら説明する。図2は、扉14に対して斜め後方から見た外観の一部を示す斜視図で、筐体1の左右側部の構成が図1に示すものと一部異なる。それ以外の箇所は図1に示すものと共通している。
本実施例において、左右の側板9,9は、その一部がU字形状をしたガラス7にかかっており、ガラス7の外側側面と側板9,9との間にできる空間には、照明用ランプに相当する棒状の蛍光灯13が、棚35の上下方向に沿って縦長に配置され、切替手段である照明用スイッチ5によりオン・オフ可能に設けられている。また、蛍光灯13から発する光をガラス7の面に反射すべく、ガラス7の外面にはフード12が設けられており、そのフード12の一部には、ガラス7から筐体1内部以外の方向への照射を可能にする縦長形状のスリット12aが設けられている。そして、このスリット12aより漏れる蛍光灯13からの光が、扉14の反対面である顧客側に向けて照射される。スリット12aには、図示しないが商品の広告やシンボルなどを配置した透明性の表示部材(図示せず)が設けられる。
また、本実施例における天板2は、筐体1の上部から光を採り入れるための採光窓50が設けられている。この採光窓50は、実際は外部からの異物の侵入を防止するために、ガラスなどの透明部材で覆われている。代わりに、筐体1の上部から照明を行なう照明用蛍光灯などは設けられていない。つまり、機器を設置する室内の照明光を利用して、採光窓50から筐体1の上部を照らすようにしており、照明用蛍光灯のない分だけ、消費電力の低減を図ることができる。それ以外の構成は、第1実施例のものと共通している。
本実施例においては、筐体1の内部に商品を陳列した使用状態において、照明用スイッチ5をオンにすると、筐体1の左右外側面に配置された蛍光灯13が点灯し、ガラス7を通過して筐体1の内部である庫内を照明する。蛍光灯13は複数の棚35の上下方向にわたって配置されるため、受皿37が例えば金属のような光を通さない非光透過性部材であっても、複数段に設置された棚35の上部にある棚39上の各商品を均等に照明できる。
一方、蛍光灯13からの光の一部は、ガラス7とは反対側のフード12に向けて照射される。その際、スリット12aを通過した光が、このスリット12aに設けられた商品の広告やシンボル等の表示部材を照射して客の視線を引き寄せる。これにより、蛍光灯13からの光はスリット12a直前に設けられた模様や文字を強調することで顧客へのディスプレイ的な宣伝効果を高めることができ、販売促進の効果も期待できる。なお、ここでいう照明用ランプは、実施例における蛍光灯13に限定されるものではなく、他の光源であってもよい。
また、天板2の上面一部に配置したガラス製の採光窓50を通過して、店内の照明器具が筐体1の内部を上方から照明する。そのため、最も展示したい最上段の棚35にある商品を、他段の棚35に載せた商品よりも明るく照明することができ、販売促進の効果を得ることができる。
以上のように本実施例では、周囲の一部が透明部材であるガラス7で覆われた筐体1と、この筐体1内に上下方向多段に配置される棚35と、筐体1の側部内面に設けられ、棚35を移動自在にする棚受けとしてのレール32と、ガラス7の外側側面に照明装置である蛍光灯13を備えた食品加熱保温器において、蛍光灯13を棚35の上下方向に沿って配設すると共に、この蛍光灯13の光の一部をガラス7の面、すなわちガラス7から筐体1内部以外の方向に照射するように構成している。
このようにすると、ガラス7の外側側面にある蛍光灯13が、筐体1内の棚35と同じく上下方向に沿って配置されるため、蛍光灯13からの光は、ガラス7を通過して受皿37に邪魔されることなく、筐体1内の各棚35に陳列された商品全体に届くようになる。さらに、ガラス7を通過しない蛍光灯13の光の一部が、外部に照射されるようになっているため、この光の一部を利用して、消費者に需要を喚起させるような照明広告を行なうことができる。
次に、本発明の第2実施例について、図1及び図3〜図5に基づいて説明する。図3〜図5の各図において、気化容器51は筐体1の内部である庫内より着脱自在に設けられ、枠4と庫内を仕切る仕切板61の扉14側に形成した凹部62に設置されている。また凹部62の底部には、気化容器51を載置するための非磁性体材料からなるトッププレート57が設けられるとともに、トッププレート57の下方には、磁性材料からなる気化容器51を電磁誘導加熱する加熱コイル58が設けられる。なお59は、加熱コイル58から床面側への磁束の発生を防止するフェライトであり、また60は、加熱コイル58を所定形状に配置するコイルベース60である。そして、上記トッププレート57,加熱コイル58,フェライト59およびコイルベース60により構成される誘導加熱装置を制御する加熱制御手段として、加熱コイル58に供給する高周波電流を調節する制御装置29が配置される。さらに、凹部62ひいては気化容器51が、筐体1および基台3からなる本体の最も低い部分に位置するように、凹部62の周囲に向けて下方に落ち込んだ傾斜面63が仕切板61に形成されており、この傾斜面63の下側にあって、扉14の反対に位置するガラス7側には前述の底面ヒータ30が配置されている。
一方、筐体1の上部にある天板2の扉14側には凹部2aが設けられていて、貯水手段に相当する水タンク53が、給水口53aを下に向けた状態で着脱可能に設けられる。また、凹部2aの内底部には、水タンク53からの水を受けるための受皿64が設けられている。水タンク53は着脱自在なカートリッジ式となっており、給水口53aに設けた弁体53bにより密閉可能に開閉できるようになっている。
給水口53aに対応して設けた受皿64は、給水口53aに螺着する弁体53bを押し上げる突起64aを備え、給水口53aの下端で定水面を保持する構造となっている。また、受皿64には電磁弁54aを介して気化容器51に連通開口した給水パイプ54が備えられている。さらに、前記気化容器51の底部の一部分が凹状に形成され、この凹部51aに対応する部分に、気化容器51の温度を検出する検出手段としての温度センサ65を配置して、温度センサ65の出力信号を制御装置29に送るように構成している。
次に本実施例の作用について説明する。水タンク53の給水口53aより給水を行なった後、給水口53aに弁体53bを螺着して、上下逆さまの状態で水タンク53を受皿64にセットすると、給水口53aに取付けられた弁体53bが突起64aにより作動して上方に押し上げられ、受皿64内に定水面が保持される。この時、給水パイプ54内に水が流入し、電磁弁54aで閉止された状態で保持される。次に操作部のスイッチ(図示せず)を操作して運転を開始すると、誘導加熱装置を構成する加熱コイル58に高周波電流が供給され、磁性部材からなる気化容器51が電磁誘導加熱される。ここで、気化容器51内に水がない状態では、気化容器51の底部全体が加熱され、温度センサ65を取付けた凹部51aも同様に温度上昇する。そして、温度センサ65により凹部51aの温度上昇が検出され、気化容器51内に水がないことを制御装置29により判定する。
そこで、電磁弁54aを一定時間開放すると、給水パイプ54内の水が気化容器51内に流入するとともに、受皿64内の定水面を維持すべく、水タンク53から受皿64に自動給水される。このようにして電磁弁54aの開閉動作により気化容器51内に一定の水が供給され、加熱コイル58による加熱で蒸気を発生させる。そして、連続的に蒸気を発生すると、気化容器51内の水は気化して次第に水面が低下し、凹部51aが露出する。その結果、露出した凹部51aのみが温度上昇することになる。なお、温度センサ65は凹部51aの温度上昇を検出すると、一定時間電磁弁54aを動作させて自動給水するために供せられる。このようにして、水タンク53内の水がなくなるまで連続運転することができる。
なお、運転開始操作により加熱コイル58に通電すると共に、底面ヒータ30や側面ヒータ45にも同時に通電する。そうすると、側面ヒータ45により発生した熱は支柱31を伝い、また、底面ヒータ30により発生した熱は仕切板61を伝って、共にガラス7を加熱すると共に、筐体1内部の庫内空気も暖める。とりわけ、気化容器51により発生した蒸気とガラス7の内面との温度差を少なくすることで、ガラス7の曇りや結露の発生を防止することができる。
また、万一水蒸気が結露して水滴となってガラス7の内面を伝って流下しても、傾斜面63を伝って凹部62と気化容器51の外周隙間に溜まる。ここで、気化容器51は内部で蒸気を発生するよう加熱されているため、気化容器51の外面も蒸気が発生するに十分な温度となっている。したがって、流入してきた水滴は再び加熱され、水蒸気となって庫内に満たされる。
なお、流入した水滴は一度気化容器51の内部で気化した水が結露したものであるため、水道水などに含まれるカルキ成分等の不純物を含んでいない。したがって、凹部62内には流入した水滴が再蒸発することによる残渣物は殆ど発生しない。よって、凹部62の清掃が容易である。そして、気化容器51から蒸気が発生し、庫内が熱的に安定するか又は一定時間経過後に、側面ヒータ45および底面ヒータ30の通電を停止又は制御する。
このような蒸気を発生した状態の庫内の棚網36に中華まんじゅうや肉まん等の商品を陳列展示すると、商品をふわふわした状態で販売することができる。また、気化容器51の掃除を行なう場合は、扉14を開けて庫内の棚網36を取外した後、気化容器51を給水パイプ54からかわすように上方に持ち上げて庫内より取り出す。その後、流し台で気化容器51を清掃し、再び温度センサ65が凹部51bに一致するように、扉14の開いた箇所から手を差し入れて、気化容器51をトッププレート57上にセットする。
以上述べたように本実施例においては、一部が透明部材であるガラス7で囲まれた筐体1と、この筐体1の一方向に設けられた開閉自在の扉14と、筐体1の下部に設けられる容器としての気化容器51とを備えた食品加熱保温器において、扉14側に気化容器51を配置し、扉14と離れたガラス7側に加熱手段としての底面ヒータ30や側面ヒータ45を配置している。
このように、気化容器51が扉14側の手が届き易い部位に配置されることから、気化容器51の清掃をやり易くして衛生面を向上させることができる。また、底面ヒータ30や側面ヒータ45からの熱によって扉14と離れたガラス7側が熱せられ、ガラス7の表面と水蒸気との温度差を少なくすることで、蒸気の発生に伴うガラス7の表面の曇りや結露の発生を防止できる。さらに、気化容器51を機器の扉14側に近い片側に配置したことで、気化容器51の扉14から離れた側において内部に大きな空間が確保でき、制御回路29等の部品配置の自由度が向上する。
また本実施例では、気化容器51を筐体1および基台3からなる本体の最も低い位置に設けている。こうすると、筐体1を構成するガラス7の内側面を伝って、結露した水滴が下方に流れても、気化容器51が最も低い位置にあるために、気化容器の熱によって再び水蒸気となって筐体1内部を満たす。これにより、気化容器51から発生する蒸気を無駄無く筐体1内に送り出すことが可能になる。
その他、本実施例では、筐体1と基台3との間を仕切る仕切板61に、気化容器51を配置するための凹部62と、凹部62の周囲に向けて下方に落ち込んだ傾斜面63を形成し、ガラス7から滴下する水滴が、傾斜面63を伝って凹部62と気化容器51の外周隙間に溜まるように構成している。このようにすると、凹部62に流入してきた水滴は気化容器51によって再び加熱され、水蒸気となって庫内に満たされるが、流入した水滴は、水道水などに含まれるカルキ成分等の不純物を含んでおらず、凹部62内の清掃も容易になる。
また、本実施例では、ガラス7の左右両側に側面ヒータ45を配置する一方で、ガラス7の下面にも別の底面ヒータ30を配置したことにより、ガラス7の表面全体の曇りを効果的に防止することができる。
本発明の第3実施例について、図1及び図6に基づいて説明する。図6は基台3部分の縦断面を示す部分断面図である。同図において、気化容器51は庫内より着脱自在となるように仕切板61の凹部62に設置されており、その底部には非磁性体材料で構成されたトッププレート57と、トッププレート57の下方にある加熱装置としての加熱コイル58と、フェライト59と、コイルベース60とからなる誘導加熱装置や、制御装置29などが設けられている。
また、仕切板61で庫内を区分けし、その上部に上方を開口した水タンク53が設けられると共に、水タンク53の底部側面には、気化容器51に連通開口し、途中に流路を開閉する電磁弁54aを備えた給水パイプ54が設けられている。気化容器51の底部の一部分は凹状に形成され、この凹部51aに対応する部分に検出手段としての温度センサ65を配置し、温度センサ65の出力信号を制御装置29に送出するように構成されている。また、水タンク53には水位計24がパイプ(図示せず)によって連通している。なお、56は扉14を密閉保持するためのパッキンである。
次に、本実施例についての作用を説明する。操作部21のスイッチを入れ、運転を開始すると、誘導加熱装置を構成する加熱コイル58が通電され、気化容器51が加熱される。気化容器51内に水がない状態では、気化容器51の底部全体が加熱され、凹部51aも同様に温度上昇する。そして、温度センサ65が温度上昇を検出し、水のないことを制御装置29が判定すると、電磁弁54aを一定時間開放して自動給水し、気化容器51内に一定の水が供給され、誘導加熱装置の加熱で蒸気を発生する。
また、連続的に蒸気を発生すると気化容器51内の水が気化し、次第に水面が低下して凹部51aが露出する。その結果、露出した凹部51aのみが温度上昇する。また、温度センサ65は凹部51aの温度上昇を検出し、電磁弁54aを動作させて自動給水する。そして、水タンク53内の水がなくなるまで連続運転する。
このような蒸気を発生した状態の庫内の棚網36に中華まんじゅうや肉まん等の商品を陳列展示すると、商品をふわふわした状態で販売することができる。また、気化容器51の掃除を行なう場合は、扉14を開けて庫内の棚網36を取外した後、気化容器51を給水パイプ54からかわすように上方に持ち上げて庫内より取り出す。その後、流し台で気化容器51を清掃し、再び温度センサ65が凹部51bに一致するように、扉14の開いた箇所から手を差し入れて、気化容器51をトッププレート57上にセットする。
以上述べたように、本実施例では、筐体1と、筐体1の下部に設けられる気化容器51とを備えた食品加熱保温器において、気化容器51を電磁誘導加熱する加熱装置としての加熱コイル58を設けている。このようにすると、気化容器51を加熱コイル58により電磁誘導加熱することで、気化容器51から蒸気が発生する。その際、気化容器51を除く周辺各部を非磁性材料で構成すれば、気化容器51以外の不必要な部分を加熱することがなくなることから、運転開始から蒸気発生までの時間を短縮して消費電力の低減を図ることができる。
さらに本実施例では、気化容器51が着脱自在に設けられることから、気化容器51を容易に取外して清掃することができる。したがって、気化容器51の清掃性がよくなり衛生面を向上させることができる。
その他本実施例では、気化容器51の温度を検出手段である温度センサ65により検出し、気化容器51内に水がない状態に気化容器51の温度が上昇したら、例えば電磁弁54aなどの開閉手段により水タンク53から給水する構造となっているので、運転開始時には電磁弁54aが閉じて、気化容器51内に水がない状態で加熱が開始し、運転開始後の蒸気発生までの時間を大幅に短縮できる。
本発明の第4実施例について、図1および図7に基づいて説明する。図7は、特に支柱31に配設する棚受けであるレール32の配置を示す略図である。図1に示すように棚35を収納保持するレール32は、筐体1の両側部にある支柱31にそれぞれ配設される。しかし、共通する筐体1内に異なる商品を陳列販売する場合には、陳列する商品の高さが異なることから棚35の間隔を変更したい場合がある。そこで本実施例では、棚35を上下複数段に収納保持するレール32を支柱31に配設する際に、棚35の収納間隔を異なる間隔a,bとすることができるように、支柱31の(A),(B)の各部位にレール32を配置している。また、最下段に棚35が配置されるレール32の下方には、(C)の部位に位置して、商品を載せない状態で棚35だけが収納可能な予備棚収納部としてのレール32aが配設される。
そして、陳列する商品が異なれば商品の高さも異なるため、陳列する商品に合せて各棚35を適応するレール32に挿入する。これにより、背の低い商品の陳列された棚35,35間は低く、逆に背の高い商品の陳列された棚35,35間は高くすることができる。例えば図7において、(A)部のレール32に棚35を挿入した場合は、棚35,35間の上下方向の距離aが短く、棚35の段数が5段と多くなって、背の低い商品を陳列するのに適している。また、(B)部のレール32に棚35を挿入した場合は、棚35,35間の上下方向の距離bが長く、棚35の段数が4段と少なくなって、背の高い商品を陳列するのに適している。勿論、それ以外の任意の位置に棚35を挿入することも可能である。
このように、商品の高さに合せて棚35の段数を変えることができる構造は、とりわけ本実施例のように、加熱保温器と蒸し器とを切替えて使用できるものに好適である。すなわち、加熱保温器と蒸し器とでは、陳列する商品が異なり、必然的にその高さも違ってくるので、棚35の高さを任意に変えることができれば、どちらで使用しても筐体1内で無駄な空間が生じない。
こうして、加熱保温器と蒸し器の双方に切替使用が可能になれば、地域毎の販売動向の変化にも加熱保温器本体を交換せず対応が可能となる。例えば蒸し器として使用する場合には陳列する食品は、肉まんや中華まん等、扱う商品の高さは略同一であることから5段(A部を使用)の商品陳列を行う。一方、コロッケやポテト、フランクフルト等の商品を保温陳列する場合には、これらの商品の高さが異なるため棚を一段少なくし、各棚の間隔を広くして使用する(B部を使用)。
また、支柱31の最下部(C)には予備の棚35を収納できるレール32aを設けている。その結果、例えば(B)部のレール32に棚35を収納した場合は、一枚不使用の棚35が生じるが、この場合においても余剰の棚35を最下部(C)のレール32aに予備収納することができる。したがって、不使用の棚35を紛失することもなく、加熱殺菌された状態で予備収納され、良好な衛生状態を保持できる。
さらにその後、再度(A)部のレール32に棚35を収納して、狭い間隔aで棚aを使用する場合は、レール32aに格納された予備の棚35が既に加熱状態で収納されていることから、直ちにこの棚35を使用しても棚網36上に陳列展示する商品の温度低下を来たすことがない。また、商品の販売を継続していくと、中華まんや肉まんなどの商品とは違って、例えばコロッケの衣クズやから揚げの油などが受皿37に落下し、棚35は清掃を必要とする状態になるが、その場合は、最下段(C)のレール32aに格納された予備の棚35を取出し、清掃の必要な棚35と交換して、汚れた棚35を清掃するとともに、予備の棚35に商品を陳列し継続販売を行なう。この場合も、予備の棚35が既に加熱状態で収納されていることから、直ちにこの棚35を使用しても商品の温度低下を来たすことがない。したがって、いずれの場合においても、予熱時間が不要となり販売効率を向上させることができる。
さらに、棚35の段数を可変することなく、予め棚35の段数より1段多く棚35を収納できる収納部を設け、必要に応じてこの収納部に収納した予備の棚35を使用できるようにしてもよい。
以上のように本実施例では、筐体1と、この筐体1内に設けられる棚35と、棚35を移動自在に収納する複数の受け部としてのレール32とを備えた食品加熱保温器において、棚35間の距離を可変可能にするようにレール32を配置すると共に、筐体1内に不用となった棚35や予備の棚35を収納する収納部としてのレール32aを設けている。
このようにすると、棚35間の距離a,bを可変可能にするようにレール32が配置されるので、陳列する商品の高さに応じて棚35の間隔を調整することができる。その際、棚35の間隔a,bを大きくして棚35の数を減らすと余分な棚35が生じるが、この不用になった余分な棚35は筐体1内の予備棚収納部であるレール32aに収納できるので、紛失することがない。しかも、棚35に商品を載せて販売を行なっているときに、予備の棚35をレール32aに収納できるので、清掃時などにおいて商品陳列した棚35を予備の棚35と交換したい場合も、商品の温度を低下させることなく、良好な状態を維持して販売できる。さらに、筐体1内で予備の棚35を予熱している間に、清掃時に付着した水滴などが予め除去され、予備の棚35が加熱殺菌されるため、衛生面でも好ましい状態に商品を陳列販売できる。
本発明の第5実施例について図1,図8及び図9に基づいて説明する。図8は棚35を保持するレール32周辺の分解斜視図であり、図9は商品を陳列する棚35を構成する部品を示す斜視図である。棚35を収納保持する棚受けのレール32は、筐体側部の支柱31に配設される。本実施例では、筐体1内に設けられた各部材、具体的には、棚網36,レール32,支柱31,上仕切板10,下仕切板11,固定板47,受皿37の各表面上に、フッ素コーティング(図示せず)が形成される。
上記構成についてその作用を説明すると、棚受けのレール32には棚35が繰り返し挿入又は引き出しされることから、レール32と棚35を構成する受皿37との間には摩擦力が作用し、齧り等の不具合が生じることがある。とくにレール32と受皿37の材質が同一である場合に齧りが生じ易い。そこで、本実施例においては、相互に摺動する棚35と棚受けのレール32のいずれか一方の摺動面にフッ素コーティングを施す。即ち、棚35が挿入される受け部のレール32,あるいは棚35を構成する受皿37の摺動部であるレール部41にフッ素コーティングを施すことにより、棚35と棚受けのレール32間の摩擦力を軽減して、摺動による齧りつきを防止することができる。
また、摩擦力が軽減されることからレール32への棚35の出し入れをスムーズに行うことができる。さらに、食材によってレール32や棚35が汚れた場合であっても、フッ素コーティングを施した部位に付着した汚れは容易に落とすことができることから清掃性がよくなり、食品加熱保温器にとって重要な清潔さを確保することが容易になる。
なお、本実施例においては、少なくともレール32と棚35の摺動する部分にフッ素コーティングを施したが、フッ素コーティングに代えてテープを貼付けたり、フッ素と同等な特性を有する樹脂をコーティングして、同様に摺動する部分の摩擦を軽減することも可能である。
以上のように本実施例では、筐体1と、この筐体1内に設けられる棚35と、棚35を移動自在に収納する複数の受け部すなわちレール32とを備えた食品加熱保温器において、棚35の摺動部であるレール部41に接するレール32の内面すなわちレール面に、フッ素コーティングを施している。
このようにすると、レール32のレール面にフッ素コーティングが施されているため、このレール面の摩擦係数が低下して摩擦力が低減し、棚35の動作をスムーズに行うことができるようになる。また、レール32のレール面が食材により汚れても、フッ素コーティングに付着した汚れは簡単に除去することができることから清掃性が向上する。
また本実施例では、棚35の摺動部であるレール部41にフッ素コーティングを施している。この場合、レール32の内面のみならず、棚35の摺動部であるレール部41にもフッ素コーティングが施されているので、棚35の動作をさらにスムーズに行うことができる。また、レール部41が食材により汚れても簡単に清掃することができる。
本発明の第6実施例について、図1および図10に基づいて説明する。図10は上方から見てU字形状に形成されたガラス7のなかで、特に扉14に対向する部位を含む側面の断面図である。図10において、前述したようにガラス7と上仕切板10と下仕切板11とにより、筐体1の外郭を構成している。ここで、ガラス7の内面下部に加熱手段としてのガラスヒータ38が固着されている。ここでのガラヒータ38は、ガラス7全体を均一に加熱できるように、ガラス7の水平方向に沿って、左右両端に至るまで延設されている。そして、このガラスヒータ38へは側面ヒータ45と同一回路に接続され、共にオン・オフするようになっている。また、棚35を構成する受皿37の前端面部には、受皿37ひいては棚35を安定して保持するための弾性部材たる受皿パッキン43が配置されており、この受皿パッキン43に先端がガラス7の内面に密接している。
次に、本実施例の作用について説明する。筐体1内に陳列展示した食品を加熱するため底面ヒータ30や側面ヒータ45に通電すると、加熱された食品内部から水蒸気が発生し、庫内に水蒸気が充満する。そうすると、通常は庫内の温度より外気温度の方が低いことから、ガラス7の内外面に温度差が生じ、ガラス7の内面近傍の水蒸気が冷却されて、そこに結露が生じる。結露が生じると庫内に展示された商品が見え難くなるし、たとえ見えても購買意欲喚起力が減退することになり好ましくない。
一方、本実施例の加熱保温器によれば、ガラス7の内面下部に設けられたガラスヒータ38が側面ヒータ45と同時に通電され発熱することから、ガラスヒータ38の熱がガラス7の下部に熱伝導で伝えられる。これにより、ガラス7の温度が適度に上昇し、ガラス
7の内面に結露が生じるのを防止することができる。
ここで、ガラスヒータ38をガラス7の内面下部に固着するのは以下の事情に基づく。すなわち、食品から生じた水蒸気は暖かいため、いったんは庫内を上昇する。しかし、暖かい水蒸気が庫内を上昇すると庫内上部の温度も上昇し、ガラスヒータ38を設けない場合にはガラス7の下部に結露が発生し易い。したがって、ガラス7の内面の特に下部にガラスヒータ38を設置することにより、この部分に結露が生じるのを防止することができる。
また、ガラス7の内面には、各受皿37に対応する位置に受皿パッキン43が固着されていることから、側面ヒータ45によって発生した熱が、レール32から棚35の受皿37および受皿パッキン43を経由してガラス7の内面に熱伝達される。これにより、ガラス7の下部以外の内面も略均等に加熱することができ、ガラス7の内面全域にわたって結露が発生することを防止できる。
以上のように本実施例では、一部が透明部材であるガラス7からなる筐体1と、この筐体1内に配置される棚35とを備えた食品加熱保温器において、ガラス7の下面に加熱手段であるガラスヒータ38を沿わせている。
このようにすると、ガラス7の下面に沿わせたガラスヒータ38からの熱により、このガラス7の内面を暖めることができることから、ガラス7の内面の曇りを防止でき、仮に曇りが生じたとしても速やかに曇りを解消することができる。
また棚35の端面が、ガラス7に直接または弾性部材である受皿パッキン43を介して当接しているので、棚35の端面からもガラス7の内面に熱が伝達され、ガラス7の内面の曇りをより一層防止できる。また、仮に曇りが生じたとしても、より速やかに曇りを解消することができる。
さらに本実施例では、ガラス7と棚35の受皿37との間に受皿パッキン43が介在しているので、棚35を出し入れする際に余計な力がガラス7に加わらず、しかも安定した状態で棚35を筐体1内に保持することができる。
本発明の第7実施例を図11〜図13に基づいて説明する。図11は図13のX−X矢視を示す部分断面図である。また、図12はその拡大図であり、図13は加熱保温器の側面を示す略図である。本実施例においては、図11に示すように保温器は二枚のガラス6,7を組み合わせて、筐体1の内部と外気とを仕切る一体の二重ガラスを構成している。いずれのガラス6,7も略U字形状をしているが、内側のガラス6は比較的大きなU字曲げ部、例えば半径R=70mm程度の隅部6aを有している。一方、外側のガラス7は比較的小さなU字曲げ部、例えば半径R=20mm程度の隅部7aを有している。
内側ガラス6と外側ガラス7に挟まれた空間は、前記隅部6a,7aを除いて略均一な隙間を保つように構成されている。また隅部6a,7a間は、夫々のガラス6,7の隅部6a,7aの曲率半径が異なることから、広い隙間が確保できる。因みに、隅部6a,7aの曲率半径の差が大きくなるほど、隅部6a,7a間には広い空間が形成される。
たとえば上記の例では、最大で直径Φ=約30mm程度の空間が隅部6a,7a間に確保できる。この空間内に照明装置としての縦長円筒形状の蛍光灯26が上下に配設される。具体的には図13に示すように、蛍光灯26は上仕切板10と下仕切板11との間に立設される。一方、天板2の上側は蛍光灯26の着脱を可能ならしめるべく開閉式にされている。また、扉14と反対側にある外側ガラス7の隅部7aの内面には、蛍光灯26の周囲の略半分程度にわたって、庫内に向けて光を反射するための断面半円弧状の反射板27が取り付けられる。
次に、本実施例の作用について説明する。照明用スイッチ(図示せず)をオンにすることにより蛍光灯26が点灯する。蛍光灯26からの大部分の光は、直接若しくは反射板27によって反射されながら、内側のガラス6を通過して筐体1の内部である庫内に照射される。また、蛍光灯26や反射板27は棚網36に対して略直角に設置されていることから、棚網36の奥まで光が行き届き、棚網36上の食品を概ね均等に照らすことができる。
また、蛍光灯26や反射板27は、扉14の反対側にある略U字形状をしたガラス6,7の隅部6a,7aに配設されているため、ほぼ消費者が見る方向から食品に光を当てることができる。したがって、陳列展示された食品に影を落とすことなく光を当てることができる。また、外側のガラス7の隅部7a内面に反射板27が配置されることから、蛍光灯26により発せられた光が消費者側に直接照射されることがなく、消費者の目に優しい照明を行うことができる。
なお、ガラス面の清掃は内側ガラス6、外側ガラス7とも表面に凹凸がないことから布巾などを用いて容易に行うことができる。また、蛍光灯26の交換は天板2が開閉可能に設けられていることから、天板2を開けて筐体1の上部から容易に蛍光灯26を出し入れすることができる。
以上のように本実施例では、一部が透明部材としてのガラス6,7からなる筐体1と、この筐体1内に配置される棚35とを備えた食品加熱保温器において、筐体1の内部と外気とを仕切る2枚のガラス6,7間に照明装置である蛍光灯26を配置している。
この場合、筐体1の内部と外気とを仕切る2枚のガラス6,7間に照明装置である蛍光灯26が配置されるので、内外のガラス6,7の凹凸がなく清掃性が良好になると共に、蛍光灯26により邪魔されることなく清掃を行なうことができる。また、外側のガラス7に蛍光灯26を収容するための突起などを設ける必要がなく、筐体1内部に陳列した商品が見易い利点もある。
次に、本発明の第8実施例について図1及び図14に基づいて説明する。図14は、本実施例による棚受け49の外観を示す略図である。棚受け49は熱伝導率が良好なアルミニウム材料で製作される。また、棚受け49の内部には発熱体であるシーズヒータたる側面ヒータ45が、棚受け49と一体に埋設成形される。棚受け49の製造方法は、素材としてアルミニウムを用いることから量産効果が期待でき、安価に製作可能なダイキャスト法または押出し成型法が採用される。かかる製造方法により、棚49に数多くのレール48を配設することが可能となり、かつ略任意の位置にレール48を設けることができるようになる。
また、棚受49の内部に配置される側面ヒータ45は略U字形状をしているが、U字曲げ部45aが棚受49の下部になるように配置して一体成形されるのが好ましい。棚受け49には、複数の棚35がそれぞれ扉14方向にスライド移動して着脱可能なように、筐体1の前後方向に沿って複数のレール48が配設される。なお、上記U字曲げ部45aに代わり、例えば側面ヒータ45をW字状に配置してもよく、要するに棚受49の下部において側面ヒータ45が密に形成されればよい。
次に、本実施例による発明の作用について説明する。操作部21のスイッチ(図示せず)をオンにし、側面ヒータ45に通電すると、側面ヒータ45の熱は熱伝導性の良好な棚受け49に速やかに伝わり、この棚受け49に形成したレール48から、受皿37および棚網36へと熱伝導される。ここで、略U字形状をした側面ヒータ45は、全体が等しく発熱するわけではなく、U字曲げ部45aがもっとも強く発熱して高温になる。すなわち本実施例では、U字曲げ部45aを配置した棚受49の下部がもっとも高温になる。このことにより最も温度が上昇し難い庫内の下部を集中的に暖めることができるようになる。
一方、側面ヒータ45の口元に発熱線は配置されていないが、庫内下方で発熱した熱が庫内の空気伝導と棚受け49の材料内部を伝導して庫内上段にある棚網36も加熱される。したがって、庫内全体を均一に加熱することができるようになる。なお、庫内の温度管理は前述の温度センサ65と制御装置29により行われる。
以上のように本実施例では、筐体1と、この筐体1の棚35と、筐体1に設けられ、棚35を移動自在にする受け部としての棚受け49を備えた食品加熱保温器において、筐体1には、支柱31と、筐体1の側面部を形成する側板9,9と、筐体1の内部温度を検出する温度検出手段である温度センサ44とが設けられ、棚受け49を熱伝導性の良好な材料で構成すると共に、支柱31と側板9,9に囲まれた上下方向に細長い空間内で、棚受け49に加熱手段である側面ヒータ45を一体に形成している。
この場合、棚受け49の略任意の位置に棚35を収容するためのレール48を配置することができ、陳列する商品の高さに応じて棚35の数を増減できる。また、筐体1には、支柱31と、筐体1の側面部を形成する側板9,9と、筐体1の内部温度を検出する温度センサ44とが設けられ、棚受け49を熱伝導性の材料で構成すると共に、支柱31と側板9,9に囲まれた上下方向に細長い空間内で、棚受け49に側面ヒータ45を形成しており、棚受け49の熱伝導率が良好なことから、棚35に効率よく、かつ温度ムラなく熱伝達を行うことができる。さらに側面ヒータ45を棚受け49に一体で形成することで、側面ヒータ45自体の温度の均一化も図られ、局部発熱を防止することができる。そのため、側面ヒータ45の長寿命化を図ることができる。
また特に本実施例では、棚受け49をアルミニウムの押出し成形にて形成している。すなわち、棚受け49がアルミニウムの押出し成形で形成されるため、棚受け49を低コストで製作することができる。また、熱伝導性の良好なアルミニウムにより、筐体1内の棚35に効率よく、かつ温度ムラなく熱伝達を行うことができる。
さらに本実施例では、棚受け49の下方に側面ヒータ45を密に設けている。この場合、棚受け49の下方に側面ヒータ45が密に設けられるため、この棚受け49の特に下方が最も強く発熱して高温になる。したがって、温度の上がり難い棚受け49の下方を高い温度に加熱して、より温度ムラの少ない状態で商品全体を加熱できるようになる。
なお本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜変更が可能である。例えば、上記各実施例の特徴部分をそれぞれ組み合わせて構成してもよい。