JP5245274B2 - タール又はタールエマルジョンからの水除去方法、タールエマルジョンのタール化方法、及びタール中の含水率低減方法 - Google Patents
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Description
タールデカンターを出たタールは、若干のスラッジと水分を含んでおり、スラッジは遠心分離機でできるだけ除去される。タール中の水分は、通常約3重量%から多い場合は約10重量%の水分を含んでいる。この水分には少量のアンモニウム塩が含まれ、装置腐食の原因となり、また蒸留時に突沸現象を生じたり、泡立って精留を妨げたり、高い蒸気圧を示して圧力制御を困難にしたりする。また、燃料消費が増大するため、予めできるだけ水分を除去しておく必要がある。
芳香族及びタール工業ハンドブック(第3版):社団法人日本芳香工業会(編集・発行)P64〜74
(1) タール又はタールエマルジョン中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物を除去してタール又はタールエマルジョンから水を相分離し、除去することを特徴とする、タール又はタールエマルジョンからの水低減方法。
(3) タール又はタールエマルジョンが、コークス炉から出るタールから生じるエマルジョンである上記(1)又は(2)に記載の方法。
(5) タールエマルジョン中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物を除去してタールエマルジョンから水を相分離し、除去することを特徴とする、タールエマルジョンのタール化方法。
本発明のタール又はタールエマルジョン中からの水の低減方法は、タール又はタールエマルジョン中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物(以降、フリーアンモニア化合物と称する)を除去することによりタール又はタールエマルジョンから水を相分離し、該水を除去することを特徴とする。
厳密なタールエマルジョンの定義はなく、一般にタールとタールエマルジョンの境界に関する定義はないので、本発明においては、含水率10重量%未満をタール、含水率10重量%以上をタールエマルジョンとし、タールとタールエマルジョンの総称をタール類とする。本発明におけるタールであれ、タールエマルジョンであれ、本発明は水を含有するタール類に対して有用である。
本発明におけるタールエマルジョンは、通常、含水率は10重量%以上、好ましくは40重量%以上であり、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
タール類からフリーアンモニア化合物を除去する方法としては、不活性ガスによるストリッピング法、加熱法、水抽出法、酸添加法が挙げられ、ユーティリティーコストや建設仕様の簡便さ或いは建設費用の削減という観点から、ストリッピング法+加熱法の複合法が好ましい。
不活性ガスによるストリッピング法+加熱法の複合法におけるラボテスト操作条件の一例を実施例1に記載する。又、ベンチテスト操作条件の一例を実施例2に示す。
酸添加法においては、酸を添加することで、フリーアンモニア化合物を、より結合力のあるアンモニア化合物にすることで、沸点100℃以上のアンモニア化合物にせしめ、タールエマルジョン発現物質であるフリーアンモニア化合物を低減し、タールと水を相分離する方法である。この検証実験を実施例4に示す。
まず、上記方法において油水分離された2相の液体中に、タールエマルジョン発現物質であるフリーアンモニア化合物を添加することでタールエマルジョンが発現するか検証を行った。添加物は、アンモニアガスをバブリングし、溶液の総重量を測定して添加率を求めた。その検証実験の一例を実施例5に示す。
タールから相分離した水は、通常、タールタンクで静置される際に上部に滞留する為、タールタンク側板に設けられた水抜きコックより抜き出すことができる。具体的には、図−2に示す様に、タールデカンター槽にて一定時間静置される為、デカンター内の上部に滞留した水を粗分離することができ、且つ、タールタンクで側板に設けられた水抜きコックが30cmおきに設置されているので、水のみを抜き出すことができる。
<参考例1>
(タールエマルジョンの水分測定方法)
実機タールデカンターの抜出ノズルから、タールエマルジョンを抜き出し、ジャケット付き5L溶解槽に仕込み、ジャケット内の水温が70℃になるまで300rpmの攪拌をしながら昇温する。その後、ジャケット内の水温が70℃に達した時点で700rpm×30分間攪拌し、攪拌しながら底抜きノズルより試料を抜き出し水分を測定する。水分測定は、共沸蒸留法(JIS−K−2425)で測定をおこなった。試薬は、トルエン、キシレン、ソルベントナフサを脱水したものを使用するが、本測定では、ソルベントナフサを脱水したものを使用した。
(タールエマルジョンの油水分離方法 ストリッピング法+加熱法ラボテスト)
参考例1と同様に調整した試料を抜き出し、丸底フラスコに仕込む。仕込んだ丸底フラスコをオイルバスに浸し、オイルの温度が120℃なるまで加熱する。試料は攪拌装置の中に入れて、200〜300rpmで常時攪拌し、窒素150l/minの流量で常時試料にバブリングする。発生した軽沸ガスは冷却コンデンサーで冷却した液体は元の丸底フラスコに戻して全還流とする。加熱する時間は、15分間から2時間の範囲で行い、加熱温度は液体温度で90℃から104℃の範囲で行った。いずれの実験も、圧力は常圧(大気圧)で行った。
加熱作業が終了したら、試料全量をジャケット付き油水分離容器に移し替え、攪拌回転数を500rpm設定で攪拌しながら70℃まで徐々に冷却する。70℃まで冷却したら、攪拌回転数を700rpmに設定して30分攪拌し静置する。静置は、1時間行い室温で放置する。1時間後、再び100rpmで攪拌しながら70℃に加温し、試料内の温度が70℃に達したら700rpm×30分間攪拌し、3時間静置する。3時間静置中は70℃保温し、その後容器底部の抜き出しサンプルノズルから試料を少量抜き出し、水分の測定を行う。
これらの実験結果を表−1に示す。この結果から、タールエマルジョン(含水率:22 wt%、23 wt%)が油水分離をし、タールエマルジョン中の含水率が低減されていることがわかる。又、ベンチテストの結果では、加熱する温度が高い方ほど油水分離が促進されており、処理時間(=窒素バブリング時間)を長くした方が、更に油水分離が促進される結果となった。
(タールの油水分離方法 ストリッピング法+加熱法 ベンチテスト)
ベンチテスト装置の概要を図−3に示す。実機タールデカンターから抜き出した払出し配管よりタールを分岐し、ベンチテスト装置にフィードさせた。ストリッピング塔の設計は、1T/Hで設計し、ストリッピングする気体とタールを気液接触する方法として、充填物であるラシヒリングを使用した。ストリッピングする気体は、窒素と蒸気の2種類フィードする様に設計した。塔で処理されたタールは、ポンプアップして実機タールデカンターのサクション配管に戻す様に設計した。塔での条件が安定した時点でサンプリングする為に払出し配管の途中から分岐してサンプリング容器を設置した。サンプリング容器は、実機タールタンクをイメージして作製し、二重構造で常時加温ができる仕様にし、容器側板に抜き出しコックを取り付けて、容器の高さによってタールの含水率が変化しているかどうか採取できる構造にした。
ベンチテストでの運転条件の一例を表−2に示す。その結果、採取した試料の含水率とフリーアンモニア化合物濃度の結果を図−4 に示す。実機で連続移送しているタールの含水率低減にも効果が現れていることがわかる。
(タールエマルジョンの油水分離方法 水抽出法)
参考例1と同様に調整した試料を抜き出し、ジャケット付き300ml油水分離容器に移し替え、攪拌回転数を500rpm設定で攪拌しながら70℃まで徐々に冷却する。70℃まで冷却したら、攪拌回転数を700rpmに設定して30分攪拌し3時間静置する。3hr静置中は70℃保温し、その後容器底部の抜き出しサンプルノズルから試料を少量抜き出し、ブランクとしての水分測定を行う。
(タールエマルジョンの油水分離方法 酸添加法)
実機タールデカンターの抜出ノズルから、タールエマルジョンを抜き出し、予め70℃に設定していたウォーターバスでサンプル容器ごと20分間均一に粗攪拌し、ブランクとなる水分を測定する為の試料を採取する。次に、110mlスクリュー管瓶に試料を70gずつ小分けし、それぞれ濃度が違う塩酸水溶液25mlを加える。その後、振盪器にかけて300r/min×1時間攪拌する。攪拌終了後、予め70℃に設定していたウォーターバスで20分間加温し、遠心分離器で2500rpm×30分間かけ、油水分離を促進する。得られた試料の水相のみをスポイドで抜き出し、水相の重量を測定することで油水分離がなされているか検証した。この結果を表−4に示す。この結果より、酸を添加するとタールエマルジョン中の含水率が低減していることがわかる。
(タールエマルジョンの発現実験方法 アンモニア添加)
参考例1と同様に調整した試料を抜き出し、ジャケット付き300ml油水分離容器に移し替え、攪拌回転数を500rpm設定で攪拌しながら70℃まで徐々に冷却する。70℃まで冷却したら、攪拌回転数を700rpmに設定して30分攪拌し3時間静置する。3hr静置中は70℃保温し、その後容器底部の抜き出しサンプルノズルから試料を少量抜き出し、ブランクとしての水分測定を行う。
(タールエマルジョンの発現実験方法 苛性ソーダ添加)
タールエマルジョンの発現原因である、沸点100℃以下のアンモニア化合物を除去したタール(含水率1.1重量%)に苛性ソーダを添加して、タールエマルジョンが発現するか検証をおこなった。この発現メカニズムは、タールエマルジョンの発現には寄与していない沸点100℃以上のアンモニア化合物(例えば塩化アンモニウムなど)が、苛性ソーダを添加することで、強固な塩化物を構成し、その結果、アンモニアイオンが遊離することでタールエマルジョンが発現するのではないかと考えた。下記にその反応式を示す。
実施例1と同様に操作した試料を使い実験を行った。元となるタールエマルジョンの含水率は55.9重量%であり、加熱時間は1hr、加熱温度はフラスコ内の液温で108℃であった。3hr静置させた後、沈降した底部のタール相における含水率は、1.1重量%になった。この試料に、苛性ソーダを5N−8ml(5333ppm)滴下し、70℃攪拌×0.5hrして3hr静置すると、容器底部試料の含水率は33重量%に増加し、タールエマルジョンが発現した。
<運転条件>
イ)入口流量:0.58T/H
ロ)循環流量:0.16T/H
ハ)塔装入量:0.74T/H
ニ)ストリッピング種:蒸気(圧力:絶対圧1MPa)
ホ)ストリッピング流量:44kg/H
ヘ)塔底液体温度:99℃
ト)塔入口液体温度:89℃
チ)払出し流量:0.58T/H
リ)運転時間:30min
イ)処理前のタール含水率(ブランク品): 3.0 wt%
ロ)水注入後のタール含水率(1回目) : 2.3 wt%
ハ)水注入後のタール含水率(2回目) : 2.3 wt%
ニ)水注入後のタール含水率(3回目) : 1.1 wt%
イ)処理前の含水率(ブランク品) : 42 wt%
ロ)処理前のフリーアンモニア濃度 : 1000 w/w ppm
ハ)フリーアンモニア濃度1000ppm相当の塩酸濃度を添加した油相中の含水率 :35 wt%
ニ)フリーアンモニア濃度3000ppm相当の塩酸濃度を添加した油相中の含水率 :36 wt%
ホ)フリーアンモニア濃度3000ppm相当の塩酸濃度を添加した油相中の含水率 :22 wt%
イ)処理前の含水率(ブランク品) : 5.1 wt%
ロ)アンモニア添加した油相中の含水率 :55.5 wt%
Claims (6)
- タール又はタールエマルジョン中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物濃度が110ppm以下になるまで該タール又はタールエマルジョン中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物を除去してタール又はタールエマルジョンから水を相分離し、除去することを特徴とする、タール又はタールエマルジョンからの水低減方法。
- タール又はタールエマルジョンが、コークス炉から出るタールから生じるエマルジョンである請求項1に記載の方法。
- 沸点100℃以下のアンモニア化合物の除去方法が、ストリッピング法、抽出法又は加熱処理法いずれかである請求項1又は2に記載の方法。
- 沸点100℃以下のアンモニア化合物の除去方法が、不活性ガスによるストリッピング法と加熱処理法との複合法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- タールエマルジョン中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物濃度が110ppm以下になるまで該タールエマルジョン中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物を除去してタールエマルジョンから水を相分離し、除去することを特徴とする、タールエマルジョンのタール化方法。
- タール中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物濃度が110ppm以下になるまで該タール中に含有する沸点100℃以下のアンモニア化合物を除去してタールから水を相分離し、除去することを特徴とする、タールの含水率低減方法。
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