JP2004131629A - 連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法および蒸留装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】連続コールタール蒸留装置の塩素による腐食を防止するとともに、多大なエネルギーを要せずに、塩素(塩化ナトリウム)の濃度の低いピッチを回収する方法とそのための蒸留装置の提供。
【解決手段】連続コールタール蒸留装置における少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に、塩基性ナトリウム化合物14を供給してコールタール7を連続蒸留し、塩素濃度の低い留出液を回収し、かつ塩素を塩化ナトリウムに変え、該装置底部に塩化ナトリウム濃度の低いピッチ12を回収する方法と、炭酸水素ナトリウムの供給段と塩化ナトリウムの抜出し段を具備した連続コールタール蒸留装置。
【選択図】図1
【解決手段】連続コールタール蒸留装置における少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に、塩基性ナトリウム化合物14を供給してコールタール7を連続蒸留し、塩素濃度の低い留出液を回収し、かつ塩素を塩化ナトリウムに変え、該装置底部に塩化ナトリウム濃度の低いピッチ12を回収する方法と、炭酸水素ナトリウムの供給段と塩化ナトリウムの抜出し段を具備した連続コールタール蒸留装置。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コールタール蒸留装置の腐食防止方法および蒸留装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭の乾留の際に発生する揮発分を凝縮して回収されるコールタールは、様々な芳香族炭化水素の混合物であり、蒸留によって各種タール油を留出油として回収し、残渣は熱改質してピッチとして回収される。そして、留出油は化学工業原料として、ピッチは各種炭素材料、例えば、アルミニウムの電解精錬用の電極(アルミ電極とも略記する)として使用される。
【0003】
さて、コールタールには数十ppm の塩素が含まれているため、蒸留装置において、そのまま蒸留すると、常圧における沸点が200〜230℃のナフタリン油の留出段付近で、塩素濃度が50ppm を超え、蒸留装置の腐食の進行が著しいことが知られている。これはコールタール中の塩素が塩化水素ガスとなって蒸留装置内を上昇し、ナフタリン油留出段で濃縮することが原因である。このため、通常はコールタールに防食剤として炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性ナトリウム化合物を添加して、塩素を塩化ナトリウムに中和・固定化し、蒸留残渣として系外に抜出し、蒸留装置での塩素の濃縮を防止している。
HCl+1/2Na2 CO3 →NaCl+1/2CO2 +1/2H2 O
HCl+NaOH →NaCl+H2 O
HCl+NaHCO3 →NaCl+CO2 +H2 O
【0004】
この結果、防食の目的は達成されるものの、ピッチ中のナトリウムイオン濃度が上昇する。このピッチを、アルミ電極用バインダーとして用いると、ピッチ中のナトリウムイオンがアルミニウムに溶け込み障害になるので、必要に応じて、ピッチを熱水や炭酸ガスで高温高圧洗浄し、ピッチと水を分離するピッチの脱塩化ナトリウム方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−122786号公報
【0006】
しかし、この脱塩化ナトリウム方法は、低粘度領域で洗浄する必要があるため、洗浄温度を100℃以上の高温または洗浄圧力を107Pa の高圧としなければならず、外部の熱源および外部からの加圧が必要となる。要するに、防食の目的は達成されるものの、後処理に多大なエネルギーを要する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、連続コールタール蒸留装置がコールタールに含有される塩素により腐食するのを多大なエネルギーを要せずに防止する方法とそのための蒸留装置を提供することにある。
【0008】
前述したように、従来技術は、ピッチに混入した塩化ナトリウムが製品ピッチの性能を悪化させるので、そのような混入を防止する方法を鋭意検討した結果、反応蒸留とサイドフィード・サイドカット方式の組合わせにより、遊離塩素を効率よく捕捉できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、少なくとも一つの留出液の留出段よりも上の段にナトリウムを供給すると、蒸留装置内の該留出液の留出段付近で、ナトリウムは塩化水素と反応して塩化ナトリウムに変わり、これを留出段からサイドカット(抜出し)すれば、塩化ナトリウムのピッチへの混入を防止できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、連続コールタール蒸留装置における少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に、塩基性ナトリウム化合物を供給することを特徴とする連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法である。
【0011】
本発明の連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法においては、前記塩基性ナトリウム化合物が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
本発明の連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法においては、留出油がナフタリン油で、ナフタリン油中の遊離塩素濃度が50ppm 以下になるように、前記塩基性ナトリウム化合物の供給量を調整することが好ましい。
【0013】
また本発明は、塩基性ナトリウム化合物の供給段が、連続コールタール蒸留装置の少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に供給可能に設けてあることを特徴とする連続コールタール蒸留装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明では、コールタールの連続蒸留装置において、少なくとも一つの留出液の留出段、好ましくはナフタリン油の留出段と同じかそれより上の段に塩基性ナトリウム化合物を供給する。供給位置をこのような留出液の沸点ないし低沸点側に特定することにより、塩基性ナトリウム化合物は還流液とともに蒸留装置内を流れ落ちる過程で上昇してくる塩化水素と接触し、塩化ナトリウムとなって塩素を固定化し、留出段から抜出し可能になる。
【0015】
少なくとも一つの留出液の留出段と同じ段かそれより上の段に塩基性ナトリウム化合物を供給しない場合は、生成した塩化ナトリウムが蒸留装置内を落下し、蒸留装置の底部に残留するピッチに混入する。これは、原料コールタールに塩基性ナトリウム化合物を添加することと何ら変わるところがなく、本発明が期待する効果は得られない。
【0016】
塩基性ナトリウム化合物は水溶液で供給するのが好都合であるが、供給状態によって、その効果が変わるものではない。なお、水溶液で供給した場合には、溶媒の水はすぐに蒸発してしまうので、塩基性ナトリウム化合物の供給量とコールタール中の塩素濃度のモルバランスが合致するようにすることが重要であって、水溶液の濃度による効果の違いはない。しかし、低濃度の水溶液を用いる場合は、水の蒸発に要する熱量が大量に必要になり、蒸留装置の熱負荷が増大する。塩基性ナトリウム化合物源としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましいが、タール酸分解設備からの副生炭酸水素ナトリウム水溶液が入手容易で安価である。この水溶液の濃度は、タール酸分解設備の運転条件にもよるが、概ね10質量%程度である。
【0017】
炭酸水素ナトリウムの供給方法としては、供給用のポンプや配管を用いて、蒸留装置内に直接供給する方法のほか、複数の留出液の抜出しがある蒸留装置においては、最上部の還流液や側流にポンプアラウンド混合供給することも可能である。
【0018】
塩素はナフタリン油留出段付近の段で濃縮するため、これらの段の直上に炭酸水素ナトリウムを供給するのが最も効果的である。
留出したナフタリン油からは、通常、水酸化ナトリウム水溶液により、タール酸を抽出する工程が付加されるが、本発明の塩素の固定化で生成した塩化ナトリウムも、該工程において同時に系外に抜出しされる。
その他の留出液についても、各留出液の貯蔵タンクに、例えば、蒸留装置の還流水を供給すれば、留出液からの脱塩が容易に進行する。
【0019】
【実施例】
以下、図1により、実施例を説明する。本発明は、もちろん、実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
連続コールタール蒸留装置の常圧塔1の塔底から2段目に、原料コールタール7を300kg/minの速度で連続供給した。また塔頂の直下の段に、炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14を原料コールタール7に対し0.03質量%の割合で連続供給した。塔頂からの留出液を冷却器2で冷却した後、界面計4付き油水分離器3により、油水分離し、分離水13を系外に排出した。ナフタリン油8はポンプ5により、塔頂へ循環(還流比2)するとともに、その一部を45kg/minの速度で連続的に系外へ取出した。該ナフタリン油8の遊離塩素濃度は2ppm であった。塔底から回収されたピッチ12の塩化ナトリウム濃度は21ppm であった。なお、遊離塩素濃度は、塩素イオン濃度とナトリウムイオン濃度を測定し、両者の差から計算して求めた。また、塔の中段付近および中段の下の段からアントラセン油1号10およびアントラセン油2号11をそれぞれ抜出した。さらに、洗浄油9を塔の中段より上の段から抜出した。
【0021】
(実施例2)
実施例1において、原料コールタール7に対する炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14の割合を0.03質量%から0.02質量%に変える以外は実施例1の連続蒸留を繰返した。得られたナフタリン油8の遊離塩素濃度は37ppm であり、洗浄油9の塩化ナトリウム濃度は70ppm であった。また、ピッチ12の塩化ナトリウム濃度は20ppm であった。
【0022】
(実施例3)
実施例1において、原料コールタール7に対する炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14の割合を0.03質量%から0.01質量%に変える以外は実施例1の連続蒸留を繰返した。得られたナフタリン油8の遊離塩素濃度は60ppm であり、洗浄油9の塩化ナトリウム濃度は10ppm であった。また、ピッチ12の塩化ナトリウム濃度は20ppm であった。
【0023】
(比較例1)
連続コールタール蒸留装置の常圧塔1の塔底から2段目に、炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14を原料コールタール7に対し0.03質量%の割合で含有する原料コールタール7を300kg/minの速度で連続供給した。塔頂からナフタリン油8が45kg/minの速度で連続留出した。該ナフタリン油8の遊離塩素濃度は1ppm 以下であった。回収されたピッチ12の塩化ナトリウム濃度は47ppm であった。
【0024】
(参考例1)
実施例1において、原料コールタール7に対して炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14を添加することなく、実施例1の連続蒸留を繰返した。得られたナフタリン油8の遊離塩素濃度は98ppm であった。該ナフタリン油8に、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10質量%)を添加し、タール酸を抽出した。その後、油水分離して得た洗浄油9の塩化ナトリウム濃度は1ppm 以下であった。また、ピッチ12の塩化ナトリウム濃度は21ppm であった。
【0025】
【発明の効果】
以上から明らかなように、ナフタリン油の洗浄は欠かせないが、ナフタリン油は80℃前後での取り扱いが容易な液体であるから、温水洗浄が可能である。そして、炭酸水素ナトリウムの添加量を調整することによって、ナフタリン油中の遊離塩素濃度を腐食の進行が著しく遅い50ppm 以下に抑制することができる。またピッチ中の塩化ナトリウム濃度が増加しないので、ピッチの熱水洗浄を省略することができる。これは洗浄時に加圧する必要がないことと、排熱を熱源として利用可能なことを意味し、工業規模での実施に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の連続コールタール蒸留装置の概念図。
【符号の説明】
1: 常圧塔
2: 冷却器
3: 油水分離槽
4: 界面計
5: ポンプ
6: リボイラー
7: 原料コールタール
8: ナフタリン油
9: 洗浄油
10: アントラセン油1号
11: アントラセン油2号
12: ピッチ
13: 分離水
14: 炭酸水素ナトリウム水溶液
【発明の属する技術分野】
本発明は、コールタール蒸留装置の腐食防止方法および蒸留装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭の乾留の際に発生する揮発分を凝縮して回収されるコールタールは、様々な芳香族炭化水素の混合物であり、蒸留によって各種タール油を留出油として回収し、残渣は熱改質してピッチとして回収される。そして、留出油は化学工業原料として、ピッチは各種炭素材料、例えば、アルミニウムの電解精錬用の電極(アルミ電極とも略記する)として使用される。
【0003】
さて、コールタールには数十ppm の塩素が含まれているため、蒸留装置において、そのまま蒸留すると、常圧における沸点が200〜230℃のナフタリン油の留出段付近で、塩素濃度が50ppm を超え、蒸留装置の腐食の進行が著しいことが知られている。これはコールタール中の塩素が塩化水素ガスとなって蒸留装置内を上昇し、ナフタリン油留出段で濃縮することが原因である。このため、通常はコールタールに防食剤として炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性ナトリウム化合物を添加して、塩素を塩化ナトリウムに中和・固定化し、蒸留残渣として系外に抜出し、蒸留装置での塩素の濃縮を防止している。
HCl+1/2Na2 CO3 →NaCl+1/2CO2 +1/2H2 O
HCl+NaOH →NaCl+H2 O
HCl+NaHCO3 →NaCl+CO2 +H2 O
【0004】
この結果、防食の目的は達成されるものの、ピッチ中のナトリウムイオン濃度が上昇する。このピッチを、アルミ電極用バインダーとして用いると、ピッチ中のナトリウムイオンがアルミニウムに溶け込み障害になるので、必要に応じて、ピッチを熱水や炭酸ガスで高温高圧洗浄し、ピッチと水を分離するピッチの脱塩化ナトリウム方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−122786号公報
【0006】
しかし、この脱塩化ナトリウム方法は、低粘度領域で洗浄する必要があるため、洗浄温度を100℃以上の高温または洗浄圧力を107Pa の高圧としなければならず、外部の熱源および外部からの加圧が必要となる。要するに、防食の目的は達成されるものの、後処理に多大なエネルギーを要する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、連続コールタール蒸留装置がコールタールに含有される塩素により腐食するのを多大なエネルギーを要せずに防止する方法とそのための蒸留装置を提供することにある。
【0008】
前述したように、従来技術は、ピッチに混入した塩化ナトリウムが製品ピッチの性能を悪化させるので、そのような混入を防止する方法を鋭意検討した結果、反応蒸留とサイドフィード・サイドカット方式の組合わせにより、遊離塩素を効率よく捕捉できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、少なくとも一つの留出液の留出段よりも上の段にナトリウムを供給すると、蒸留装置内の該留出液の留出段付近で、ナトリウムは塩化水素と反応して塩化ナトリウムに変わり、これを留出段からサイドカット(抜出し)すれば、塩化ナトリウムのピッチへの混入を防止できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、連続コールタール蒸留装置における少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に、塩基性ナトリウム化合物を供給することを特徴とする連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法である。
【0011】
本発明の連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法においては、前記塩基性ナトリウム化合物が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
本発明の連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法においては、留出油がナフタリン油で、ナフタリン油中の遊離塩素濃度が50ppm 以下になるように、前記塩基性ナトリウム化合物の供給量を調整することが好ましい。
【0013】
また本発明は、塩基性ナトリウム化合物の供給段が、連続コールタール蒸留装置の少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に供給可能に設けてあることを特徴とする連続コールタール蒸留装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明では、コールタールの連続蒸留装置において、少なくとも一つの留出液の留出段、好ましくはナフタリン油の留出段と同じかそれより上の段に塩基性ナトリウム化合物を供給する。供給位置をこのような留出液の沸点ないし低沸点側に特定することにより、塩基性ナトリウム化合物は還流液とともに蒸留装置内を流れ落ちる過程で上昇してくる塩化水素と接触し、塩化ナトリウムとなって塩素を固定化し、留出段から抜出し可能になる。
【0015】
少なくとも一つの留出液の留出段と同じ段かそれより上の段に塩基性ナトリウム化合物を供給しない場合は、生成した塩化ナトリウムが蒸留装置内を落下し、蒸留装置の底部に残留するピッチに混入する。これは、原料コールタールに塩基性ナトリウム化合物を添加することと何ら変わるところがなく、本発明が期待する効果は得られない。
【0016】
塩基性ナトリウム化合物は水溶液で供給するのが好都合であるが、供給状態によって、その効果が変わるものではない。なお、水溶液で供給した場合には、溶媒の水はすぐに蒸発してしまうので、塩基性ナトリウム化合物の供給量とコールタール中の塩素濃度のモルバランスが合致するようにすることが重要であって、水溶液の濃度による効果の違いはない。しかし、低濃度の水溶液を用いる場合は、水の蒸発に要する熱量が大量に必要になり、蒸留装置の熱負荷が増大する。塩基性ナトリウム化合物源としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましいが、タール酸分解設備からの副生炭酸水素ナトリウム水溶液が入手容易で安価である。この水溶液の濃度は、タール酸分解設備の運転条件にもよるが、概ね10質量%程度である。
【0017】
炭酸水素ナトリウムの供給方法としては、供給用のポンプや配管を用いて、蒸留装置内に直接供給する方法のほか、複数の留出液の抜出しがある蒸留装置においては、最上部の還流液や側流にポンプアラウンド混合供給することも可能である。
【0018】
塩素はナフタリン油留出段付近の段で濃縮するため、これらの段の直上に炭酸水素ナトリウムを供給するのが最も効果的である。
留出したナフタリン油からは、通常、水酸化ナトリウム水溶液により、タール酸を抽出する工程が付加されるが、本発明の塩素の固定化で生成した塩化ナトリウムも、該工程において同時に系外に抜出しされる。
その他の留出液についても、各留出液の貯蔵タンクに、例えば、蒸留装置の還流水を供給すれば、留出液からの脱塩が容易に進行する。
【0019】
【実施例】
以下、図1により、実施例を説明する。本発明は、もちろん、実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
連続コールタール蒸留装置の常圧塔1の塔底から2段目に、原料コールタール7を300kg/minの速度で連続供給した。また塔頂の直下の段に、炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14を原料コールタール7に対し0.03質量%の割合で連続供給した。塔頂からの留出液を冷却器2で冷却した後、界面計4付き油水分離器3により、油水分離し、分離水13を系外に排出した。ナフタリン油8はポンプ5により、塔頂へ循環(還流比2)するとともに、その一部を45kg/minの速度で連続的に系外へ取出した。該ナフタリン油8の遊離塩素濃度は2ppm であった。塔底から回収されたピッチ12の塩化ナトリウム濃度は21ppm であった。なお、遊離塩素濃度は、塩素イオン濃度とナトリウムイオン濃度を測定し、両者の差から計算して求めた。また、塔の中段付近および中段の下の段からアントラセン油1号10およびアントラセン油2号11をそれぞれ抜出した。さらに、洗浄油9を塔の中段より上の段から抜出した。
【0021】
(実施例2)
実施例1において、原料コールタール7に対する炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14の割合を0.03質量%から0.02質量%に変える以外は実施例1の連続蒸留を繰返した。得られたナフタリン油8の遊離塩素濃度は37ppm であり、洗浄油9の塩化ナトリウム濃度は70ppm であった。また、ピッチ12の塩化ナトリウム濃度は20ppm であった。
【0022】
(実施例3)
実施例1において、原料コールタール7に対する炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14の割合を0.03質量%から0.01質量%に変える以外は実施例1の連続蒸留を繰返した。得られたナフタリン油8の遊離塩素濃度は60ppm であり、洗浄油9の塩化ナトリウム濃度は10ppm であった。また、ピッチ12の塩化ナトリウム濃度は20ppm であった。
【0023】
(比較例1)
連続コールタール蒸留装置の常圧塔1の塔底から2段目に、炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14を原料コールタール7に対し0.03質量%の割合で含有する原料コールタール7を300kg/minの速度で連続供給した。塔頂からナフタリン油8が45kg/minの速度で連続留出した。該ナフタリン油8の遊離塩素濃度は1ppm 以下であった。回収されたピッチ12の塩化ナトリウム濃度は47ppm であった。
【0024】
(参考例1)
実施例1において、原料コールタール7に対して炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度10質量%)14を添加することなく、実施例1の連続蒸留を繰返した。得られたナフタリン油8の遊離塩素濃度は98ppm であった。該ナフタリン油8に、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10質量%)を添加し、タール酸を抽出した。その後、油水分離して得た洗浄油9の塩化ナトリウム濃度は1ppm 以下であった。また、ピッチ12の塩化ナトリウム濃度は21ppm であった。
【0025】
【発明の効果】
以上から明らかなように、ナフタリン油の洗浄は欠かせないが、ナフタリン油は80℃前後での取り扱いが容易な液体であるから、温水洗浄が可能である。そして、炭酸水素ナトリウムの添加量を調整することによって、ナフタリン油中の遊離塩素濃度を腐食の進行が著しく遅い50ppm 以下に抑制することができる。またピッチ中の塩化ナトリウム濃度が増加しないので、ピッチの熱水洗浄を省略することができる。これは洗浄時に加圧する必要がないことと、排熱を熱源として利用可能なことを意味し、工業規模での実施に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の連続コールタール蒸留装置の概念図。
【符号の説明】
1: 常圧塔
2: 冷却器
3: 油水分離槽
4: 界面計
5: ポンプ
6: リボイラー
7: 原料コールタール
8: ナフタリン油
9: 洗浄油
10: アントラセン油1号
11: アントラセン油2号
12: ピッチ
13: 分離水
14: 炭酸水素ナトリウム水溶液
Claims (4)
- 連続コールタール蒸留装置における少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に、塩基性ナトリウム化合物を供給することを特徴とする連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法。
- 前記塩基性ナトリウム化合物が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法。
- 前記留出液がナフタリン油で、ナフタリン油中の遊離塩素濃度が50ppm 以下になるように、塩基性ナトリウム化合物の供給量を調整することを特徴とする請求項1に記載の連続コールタール蒸留装置の腐食防止方法。
- 前記塩基性ナトリウム化合物の供給段が、連続コールタール蒸留装置の少なくとも一つの留出液の留出段ないしそれより上の段に供給可能に設けてあることを特徴とする連続コールタール蒸留装置。
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
CN108148611A (zh) * | 2017-12-28 | 2018-06-12 | 胜帮科技股份有限公司 | 一种热解焦油预处理系统及其处理方法 |
CN112933633A (zh) * | 2021-04-12 | 2021-06-11 | 孝义市金精化工有限公司 | 一种煤焦油洗油负压连续蒸馏分离装置及煤焦油洗油分离精制方法 |
-
2002
- 2002-10-11 JP JP2002298562A patent/JP2004131629A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN108148611A (zh) * | 2017-12-28 | 2018-06-12 | 胜帮科技股份有限公司 | 一种热解焦油预处理系统及其处理方法 |
CN112933633A (zh) * | 2021-04-12 | 2021-06-11 | 孝义市金精化工有限公司 | 一种煤焦油洗油负压连续蒸馏分离装置及煤焦油洗油分离精制方法 |
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