JP5242254B2 - アルミニウム溶解炉及びアルミニウム溶解炉付溶解炉システム - Google Patents

アルミニウム溶解炉及びアルミニウム溶解炉付溶解炉システム Download PDF

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Description

アルミニウム切粉を溶解する角型のアルミニウム溶解炉及びアルミニウム溶解炉付溶解炉システムに関する。
近年、産業界、特に、自動車業界、建材業界、電機業界等では、製品の軽量化とリサイクル化を計るため、素材としてアルミニウムの使用量が大幅に増大している。一般にアルミニウム材料の発生形態としては、特に、市中から回収されるアルミニウムスクラップと工場の生産工程から発生する機械加工屑(アルミニウム切粉)に大きく分けられる。
アルミニウムスクラップの場合は形状が雑多で嵩張る大きなものが多いため、多くは直接大型炉に投入して溶解される。
アルミニウム切粉は小さく嵩張らず大きさも一定しているが、見かけの比重が小さいため、直接大型炉に投入しても、炉中のアルミニウム溶湯の表面に浮かんでしまい効率よく溶解できない。このため人為的にフォークリフトでアルミニウム切粉を溶湯中に沈み込ませ、アルミニウム切粉をアルミニウム溶湯と十分に接触させながら溶解している。
アルミニウム切粉を直接アルミニウム溶湯に接触させるため、今までは次のようにしていた。即ち、機械式ポンプでアルミニウム溶湯を攪拌し、その中にアルミニウム切粉を投入する方式や、円形渦室を設けその周りに電磁式攪拌装置を設置し強制的に渦を発生させ、その渦中にアルミニウム切粉を投入する渦室方式も採用されていた。
しかしながら、いずれにしても、このような作業は、高温環境下での作業であり、労働条件的にきつい作業となるのは避けられない。また、炉に投入したアルミニウム切粉に水滴等付着していると爆発を起こす。このため、このような作業は大変危険で、同じく労働条件的に大きな問題も抱えているのは否めない。
上述のような、機械式ポンプを用いる方式では、機械的ポンプが直接アルミニウム溶湯に接触するため損傷が激しく、ランニングコストが大きいという問題があった。
また、電磁式攪拌装置を用いる渦室方式は、大きな電力を消費すること、メンテナンスが大変なこと、溶解に必要な十分なアルミニウム溶湯量が得られないこと等の問題があった。
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、上記の問題を改善すべく、アルミニウム切粉を可及的に急速に溶解可能とすることにある。
本発明は、
上方が開放し、横断面が正方形又は長方形の、容器状の渦室であって、2つの側壁が互いに向かい合った側壁の組が2組ある、渦室と、
この渦室内のアルミニウム溶湯を電磁力で排出させるアルミニウム溶湯搬送装置と、
を備え、
前記渦室は、複数の前記側壁のうちのある側壁の上部に形成された、アルミニウム溶湯の流入を許容する溶湯流入口であって、流入するアルミニウム溶湯が前記ある側壁と向かい合う側壁に対して衝突するように開口された、溶湯流入ロを備え、
前記アルミニウム溶湯搬送装置は、
筒状又はチャネル状の搬送路と、
前記搬送路における向かい合う2つの側壁の内面に、アルミニウム溶湯と接した状態で対向するように、露呈状態に設けられた少なくとも一対の電極と、
前記搬送路の外側に設けられ、前記搬送路内の前記一対の電極の間におけるアルミニウム溶湯に磁力線を透過させる、永久磁石と、
を備え、
前記搬送路の内端側を前記渦室の1つの側壁を貫通させて、この搬送路の内端を、前記渦室の底壁の中央部において開口させて、溶湯排出口とした、
ことを特徴とするアルミニウム溶解炉
として構成される。
さらに、本発明は、
上方が開放し、横断面が正方形又は長方形の、容器状の渦室であって、2つの側壁が互いに向かい合った側壁の組が2組ある、渦室と、
この渦室内のアルミニウム溶湯を電磁力で排出させるアルミニウム溶湯搬送装置と、
を備え、
前記渦室は、複数の前記側壁のうちのある側壁の上部に形成された、アルミニウム溶湯の流入を許容する溶湯流入口であって、流入するアルミニウム溶湯が前記ある側壁と向かい合う側壁に対して衝突するように開口された、溶湯流入ロを備え、
前記アルミニウム溶湯搬送装置は、
筒状又はチャネル状の搬送路と、
前記搬送路における向かい合う2つの側壁の内面に、アルミニウム溶湯と接した状態で対向するように、露呈状態に設けられた少なくとも一対の電極と、
前記搬送路の外側に設けられ、前記搬送路内の前記一対の電極の間におけるアルミニウム溶湯に磁力線を透過させる、永久磁石と、
を備え、
前記搬送路の内端を、前記渦室の底壁の中央部の開口に連通させた、
ことを特徴とするアルミニウム溶解炉
として構成される。
本発明によれば、アルミニウム切粉を可及的に急速に溶解可能とすることができる。
実施形態
以下の説明では、溶解対象として、アルミニウムを挙げているが、アルミニウムに限らず、比重が比較的小さく、例えば切粉状のものを投入した時に、軽く、浮きがちの材料を溶解対象とする溶解炉に、本発明の技術的な思想を適用できるのは当然である。
本発明の実施形態は、効率よく、可及的急速に、アルミニウムを溶解することを念頭に置き、このために、角型の渦室を用い、その角型の渦室に、アルミニウム溶湯搬送装置を組み込んだものとして構成される。組み込むアルミニウム溶湯搬送装置としては、例えば、本発明者が先に発明し、出願した溶湯搬送装置(特開2007−021539号公報)を用いることができる。
この実施形態の原理、即ち、基本的な技術思想は以下のように説明される。
アルミニウムを効率よく溶解するためには、十分に熱量を供給しなければならない。このためには、十分な量のアルミニウム溶湯が循環するようにすればよい。本実施形態ではまずこのことが達成されるように構成した。
本実施形態では、この上で、さらに、十分な熱量を持ったアルミニウム溶湯とアルミニウム切粉が効率よく接触するようにしている。即ち、一般の技術者は、渦室として、アルミニウム溶湯が抵抗なく、効率よく回転するように、円形状のものを採用する。しかしながら、この円形の渦室の場合、アルミニウム溶湯の渦の形状は幾何学的にみてきれいな安定した渦となる。本発明者は、このような安定したアルミニウム溶湯の渦の上にアルミニウム切粉を投入する実験を行った。しかし、この実験から、渦の上にアルミニウム切粉が乗った状態で回転するのみとなり、うまく溶解できないことがわかった。これはアルミニウム溶湯とアルミニウム切粉の接触面積が小さく、アルミニウム切粉に効率よく熱が伝わらないためと考えられる。このため、本発明者は、上記の実験を通して、溶解速度を上げるには、アルミニウム溶湯とアルミニウム切粉の接触面積を積極的に増大することが重要であると認識するに至った。アルミニウム溶湯とアルミニウム切粉の接触面積を積極的に増大するには、渦として、上記のような安定した渦ではないのが望ましい。このため本発明者は、渦室として技術者は通常は用いない形状である角型の渦室を採用するに至った。つまり、本発明において、渦室を角形のものとしたのは、上記の実験を実際に行った本発明者のみが行い得たことであり、上記の実験をしていない他の技術者には到底なしえなかった技術的な思想である。
而して、本発明は、
上方が開放し、横断面が正方形又は長方形の、容器状の渦室であって、2つの側壁が互いに向かい合った側壁の組が2組ある、渦室と、
この渦室内のアルミニウム溶湯を電磁力で排出させるアルミニウム溶湯搬送装置と、
を備え、
前記渦室は、複数の前記側壁のうちのある側壁の上部に形成された、アルミニウム溶湯の流入を許容する溶湯流入口であって、流入するアルミニウム溶湯が前記ある側壁と向かい合う側壁に対して衝突するように開口された、溶湯流入ロを備え、
前記アルミニウム溶湯搬送装置は、
筒状又はチャネル状の搬送路と、
前記搬送路における向かい合う2つの側壁の内面に、アルミニウム溶湯と接した状態で対向するように、露呈状態に設けられた少なくとも一対の電極と、
前記搬送路の外側に設けられ、前記搬送路内の前記一対の電極の間におけるアルミニウム溶湯に磁力線を透過させる、永久磁石と、
を備え、
前記搬送路の内端側を前記渦室の1つの側壁を貫通させて、この搬送路の内端を、前記渦室の底壁の中央部において開口させて、溶湯排出口とした、
ことを特徴とするアルミニウム溶解炉
として構成される。
さらに、本発明は、
上方が開放し、横断面が正方形又は長方形の、容器状の渦室であって、2つの側壁が互いに向かい合った側壁の組が2組ある、渦室と、
この渦室内のアルミニウム溶湯を電磁力で排出させるアルミニウム溶湯搬送装置と、
を備え、
前記渦室は、複数の前記側壁のうちのある側壁の上部に形成された、アルミニウム溶湯の流入を許容する溶湯流入口であって、流入するアルミニウム溶湯が前記ある側壁と向かい合う側壁に対して衝突するように開口された、溶湯流入ロを備え、
前記アルミニウム溶湯搬送装置は、
筒状又はチャネル状の搬送路と、
前記搬送路における向かい合う2つの側壁の内面に、アルミニウム溶湯と接した状態で対向するように、露呈状態に設けられた少なくとも一対の電極と、
前記搬送路の外側に設けられ、前記搬送路内の前記一対の電極の間におけるアルミニウム溶湯に磁力線を透過させる、永久磁石と、
を備え、
前記搬送路の内端を、前記渦室の底壁の中央部の開口に連通させた、
ことを特徴とするアルミニウム溶解炉
として構成される。
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態としてのアルミニウム急速溶解炉20の平面図及び側面図である。
このアルミニウム急速溶解炉20は、予め溶かした原アルミニウム溶湯を流入させ、流出させるものであり、流入する原アルミニウム溶湯内にアルミニウム切粉を投入し、アルミニウム切粉を原アルミニウム溶湯の熱で溶かし、その原アルミニウム溶湯内に溶け込ませ、前記原アルミニウム溶湯と共に側壁の下側部分から排出するようにしたものである。
この実施形態は、図1および図2からわかるように、互いに固定された、外形がほぼ角型容器状の渦室1と、アルミニウム溶湯搬送装置10と、を備える。
渦室1は、耐火物で構成され、上方が開放したいわゆる容器状のものとされている。この角型の渦室1の内部の四隅2、2、・・・は、滑らかな曲面を有するように、半径Rをもった曲面で加工が施工されている。
この角型の渦室1の4つの側壁3A、3B、3C、4Dのうちの1つの側壁3Aの上部に、予め溶かした状態のアルミニウムの溶湯を流入させる溶湯流入口4が設けられている。
この角型の渦室1の別の側壁3Bの下部に、アルミニウム溶湯搬送装置10を挿入状態に固定するための開口5が形成されている。
なお、この実施形態では、溶湯流入口4と開口5とを別の側壁に設けたが、これらを同じ側壁に設けることもできる。例えば、溶湯流入口4を側壁3Bに設けることもできる。このように、溶湯流入口4を側壁3Bに設けた、第1実施形態の変形例は、後述のように、図6−図8の第3の実施形態で用いている。
前記角型の渦室1における前記開口5に、別体のアルミニウム溶湯搬送装置10が取り付けられている。このアルミニウム溶湯搬送装置10は、角型の渦室1内のアルミニウム溶湯を電磁力により積極的に外部へ搬送するためのものである。
このアルミニウム溶湯搬送装置10について以下に説明する。
11は筒状の搬送路である。この搬送路11は前記渦室1からのアルミニウム溶湯を導くものである。この搬送路11が、前記渦室1の開口5に挿入された状態で固定されている。これにより、この搬送路11の内側端が、このアルミニウム急速溶解炉20における溶湯排出口15となる。なお、この搬送路11としてチャネル状(樋状)のものを用いることができる。この場合には、側壁3Bの下部の開口5が、溶湯排出口となる。
この搬送路11における対向する一対の対向側壁11A、11Aに、図示せぬ外部電源からの電源が加えられる電極12、12がそれぞれ設けられている。搬送路11にアルミニウム溶湯が満ちた状態においては、このアルミニウム溶湯を介して電極12、12間に電流が流れることになる。この搬送路11の下方に磁場装置(永久磁石)13が設けられている。この磁場装置(永久磁石)13からの磁力線が搬送路11中のアルミニウム溶湯を上下方向に貫く。
このような構成により、渦室1内のアルミニウム溶湯は搬送路11によって渦室1から外部に引き出されるように搬送される。即ち、前述のように、磁場装置(永久磁石)13からの磁力線が搬送路11中のアルミニウム溶湯を上下方向に貫く。この状態で、一対の対向側壁11A、11Aの電極12、12間をアルミニウム溶湯を介して電流が流れる。これにより、搬送路11中のアルミニウム溶湯は、電磁力により渦室1から外部に引き出され、渦室1から外部に搬送される。つまり、このアルミニウム溶湯搬送装置10により渦室1内のアルミニウム溶湯を積極的に外部に搬送することができる。
このアルミニウム溶湯搬送装置10としては、前述のように、例えば、本発明者が先に発明した、特開2007−021539号公報に記載のものを用いることができる。
次に、渦室1自体における、投入されたアルミニウム切粉が渦室1内のアルミニウム溶湯に溶け込んでいく様子について説明する。
図3は、溶湯流入口4から流入するアルミニウム溶湯が渦室1内で形成する渦の状態を示している。
流入口4から流入する原アルミニウム溶湯は、図3に示す如く、渦室1の内壁に平行に流入するため、多くは内壁に沿って流れることになるが、排出口15は渦室1の中央に位置しているため、角型の渦室1内ではいわゆる巻き込み渦が形成される。この段階でアルミニウム切粉等見かけ比重の小さなアルミニウム屑(アルミニウム切粉)を投入すれば、効率よく溶解できるのである。
すなわち、溶湯流入口4から原アルミニウム溶湯が流入すると、この原アルミニウム溶湯は正面にある側壁3Cに衝突し、盛り上がり、崩れる波のように流れ落ちる流れf2となる。これと同様な挙動により、この流れf2は、側壁3Bに衝突し、盛り上がり、流れ落ちる流れf3となる。流れf3は側壁3Bに衝突し、盛り上がり、流れ落ちる流れf3となる。流れf3は、側壁3Aに衝突し、盛り上がり、流れ落ちる流れf4となる。流れf4は側壁3Dに衝突し、盛り上がり、流れ落ちる流れf1となる。
これと同時に、流れf1の先端側は流れf2の下に潜り込むような流れとなる。これと同様の挙動により、流れf2の先端側は流れf3の下に潜り込むような流れとなる。流れf3の先端側は流れf4の下に潜り込むような流れとなる。流れf4の先端側は流れf1の下に潜り込むような流れとなる。
このような流れf1−f4の渦巻き回転をなすアルミニウム溶湯に、渦室1の上方からアルミニウム切粉を投入すると、アルミニウム切粉は渦巻き回転動作中のアルミニウム溶湯中にかき混ぜられるように溶け込み、効率よく溶解する。
つまり、上述の構成の角型の渦室1内にアルミニウム切粉を投入することにより、回転するアルミニウム切粉の上に高温の原アルミニウム溶湯が被いかぶさることとなり、連続的に効率よくアルミニウム切粉の溶解を行うことができる。
また、流入する原アルミニウム溶湯は、図3からも分かるように、渦室1の内壁に平行に流入するため、多くは内壁に沿って流れることになるが、溶湯排出口15は渦室中央に位置しているため、角型の渦室内では上述のような巻き込み渦が形成される。この段階でアルミニウム切粉等見かけ比重の小さなアルミニウム屑を投入すれば、効率よく溶解される。
以上の説明では、渦室1として、横断面が正4角形の角型のものを説明したが、この形状に限るものではなく、長方形状であっても良く、さらには、4角形以外の多角形、例えば、3角形、5角形等とすることもできる。
図4、図5は、第2の実施形態を示す。この第2の実施形態が、図1、図2の実施形態と異なる点は、溶湯排出口15を渦室1の底壁3Eの中央に直接設けるようにしたとこ口にある。その他の構成、つまり、その他の各部品の配置は図1および図2と同じである。よって、同等の部材に同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
次に、第3の実施形態(図6―図7)及び第4の実施形態(図8)として、実炉に、上述の角型アルミニウム急速溶解炉20を装備した例を説明する。
図6−図7は大型溶解炉(溶解炉、保持炉、第2溶解炉)30外に上述の第1の実施形態の変形例の角型アルミニウム急速溶解炉20を付設した場合を示す。図8は大型溶解炉30内に上述の第1の実施形態の角型アルミニウム急速溶解炉20を組み込んだ場合を示す。
図6―図7の第3の実施形態の実炉において、大型溶解炉30の1つの側壁に、前記アルミニウム急速溶解炉20が付設状態に設けられている。より具体的には、アルミニウム急速溶解炉20のうちの渦室1が大型溶解炉30に隣接状態に設けられ、アルミニウム溶湯搬送装置10うちの永久磁石13が大型溶解炉30と渦室1との間における外部位置に設けられている。
そして、この実施形態の実炉は、特に図7から分かるように、大型溶解炉30内のアルミニウム溶湯が大型溶解炉30の上側の流出口30A1から流出してアルミニウム急速溶解炉20内に流入し、アルミニウム急速溶解炉20内で渦を描いて回転しながら下降し、アルミニウム急速溶解炉20の下側から流出して、流入口30A2から大型溶解炉30へ再び流入する、環流を行うように構成されている。
より詳しくは、大型溶解炉30はバーナー32、32を備え、内部のアルミニウム溶湯を加熱、昇温し、品質を保持している。この大型溶解炉30の側壁30Aには、アルミニウム溶湯が、アルミニウム急速溶解炉20へ流出する流出口30A1と、アルミニウム急速溶解炉20から流入する流入口30A2が形成されている。流出口30A1は、アルミニウム急速溶解炉20の溶湯流入口4と連通しており、流入口30A2は開口5と連通している。つまり、アルミニウム溶湯搬送装置10の搬送路11が流入口30A2から大型溶解炉30内に入り込んでいる。
これにより、大型溶解炉30から原アルミニウム溶湯が渦室1へ流入し、アルミニウム切粉を溶かし込んで再び大型溶解炉30内に環流する。
この動きを簡単に解析する。アルミニウム溶湯搬送装置10が停止している場合は、大型溶解炉30内の原アルミニウム溶湯のレベルHと、渦室1内の溶湯レベルH´は等しい。今アルミニウム溶湯搬送装置10が運転を始めると、渦室1内の溶湯が排出されH1>H2となる。これに伴い、大型溶解炉30から角型の渦室1内に元アルミニウム溶湯が流れ込む。このときの流速は 2g(H1−H2)である。このため、H1−H2の位置水頭(位置エネルギー)でアルミニウム溶湯が回転し、且つアルミニウム溶湯は大型溶解炉30と渦室1との間で循環する。そのときの大型溶解炉30から渦室1への流入速度は 2g(H1−H2)となる。前に説明したように、この状態の時に、角型の渦室1内にアルミニウム切粉を連続的に投入すれば効率よく溶解が行われる。
図8は、第4の実施形態としての実炉を示す。この実施形態においては、大型溶解炉30内に第1実施形態のアルミニウム急速溶解炉20を設けた例を示している。つまり、アルミニウム急速溶解炉20のうちの渦室1を大型溶解炉30内に設け、アルミニウム溶湯搬送装置10を、図7と同様に、大型溶解炉30の底壁外部に設けている。その他の構成は図6の実施形態と同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
このように、本発明の各実施形態によれば、作業環境改善、メンテナンスフリー、消費電力およびランニングコストの抑制、さらに既設炉に容易に設置可能な、角型アルミニウム急速溶解炉を提供することができる。
本発明の実施形態の効果
本発明者は本発明の実施形態による効果を確認すべく実験を行った。その結果を以下に示す。実験は、比較のために、従来型円形渦室を用いた場合と本発明の角型の渦室を用いた場含とで行い、これによってアルミニウム切粉の溶解速度の比較を行った。
尚、円形渦室の寸法は内径280mm×深さ250mm、角型の渦室の寸法は一辺250mm×深さ250mmとした。
原料:アルミニウム切粉10kg
溶解時間(秒)
円形渦室 角型渦室
テスト1 55 42
テスト2 61 35
テスト3 53 30
平均 56.3 35.5
溶解速度(kg/時間) 640 1008
但し、実験中のアルミニウム溶湯温度は、実験開始時760℃、実験終了時735℃であった。
この実験結果から、本発明の実施形態の角型の渦室によれば、従来型の円形渦室に比べて、1008/640=1.56倍の溶解速度を得ることができたことがわかる。もち口ん溶解には十分な熱量が供給されることが必要条件であるが、そのために、例えば、本発明の発明にかかる特開2007−021539号公報に記載のアルミニウム溶湯搬送装置を使用して、強力にアルミニウム溶湯を循環させることが不可欠である。
アルミニウム溶湯を側壁の下方から排出させるようにした角型のアルミニウム急速溶解炉の平面図。 アルミニウム溶湯を側壁の下方から排出させるようにした角型のアルミニウム急速溶解炉の正面図。 渦室におけるアルミニウム溶湯の回転挙動を示す説明図。 アルミニウム溶湯を底壁中央から排出させるようにした角型アルミニウム急速溶解炉平面図。 アルミニウム溶湯を底壁中央から排出させるようにした角型アルミニウム急速溶解炉正面図。 大型溶解炉外にアルミニウム急速溶解炉を組み込んだ溶解炉システムの平面図。 大型溶解炉外にアルミニウム急速溶解炉を組み込んだ溶解炉システムの部分縦断面図。 大型溶解炉内にアルミニウム急速溶解炉を組み込んだ溶解炉システムの平面図。
符号の説明
1 渦室
4 溶湯流入口
10 アルミニウム溶湯搬送装置
11 搬送路
12 電極
13 磁場装置(永久磁石)
15 溶湯排出口
20 アルミニウム急速溶解炉
30 大型溶解炉

Claims (4)

  1. 上方が開放し、横断面が正方形又は長方形の、容器状の渦室であって、2つの側壁が互いに向かい合った側壁の組が2組ある、渦室と、
    この渦室内のアルミニウム溶湯を電磁力で排出させるアルミニウム溶湯搬送装置と、
    を備え、
    前記渦室は、複数の前記側壁のうちのある側壁の上部に形成された、アルミニウム溶湯の流入を許容する溶湯流入口であって、流入するアルミニウム溶湯が前記ある側壁と向かい合う側壁に対して衝突するように開口された、溶湯流入ロを備え、
    前記アルミニウム溶湯搬送装置は、
    筒状又はチャネル状の搬送路と、
    前記搬送路における向かい合う2つの側壁の内面に、アルミニウム溶湯と接した状態で対向するように、露呈状態に設けられた少なくとも一対の電極と、
    前記搬送路の外側に設けられ、前記搬送路内の前記一対の電極の間におけるアルミニウム溶湯に磁力線を透過させる、永久磁石と、
    を備え、
    記搬送路の内端側を前記渦室の1つの側壁を貫通させて、この搬送路の内端を、前記渦室の底壁の中央部において開口させて、溶湯排出口とした、
    ことを特徴とするアルミニウム溶解炉。
  2. 上方が開放し、横断面が正方形又は長方形の、容器状の渦室であって、2つの側壁が互いに向かい合った側壁の組が2組ある、渦室と、
    この渦室内のアルミニウム溶湯を電磁力で排出させるアルミニウム溶湯搬送装置と、
    を備え、
    前記渦室は、複数の前記側壁のうちのある側壁の上部に形成された、アルミニウム溶湯の流入を許容する溶湯流入口であって、流入するアルミニウム溶湯が前記ある側壁と向かい合う側壁に対して衝突するように開口された、溶湯流入ロを備え、
    前記アルミニウム溶湯搬送装置は、
    筒状又はチャネル状の搬送路と、
    前記搬送路における向かい合う2つの側壁の内面に、アルミニウム溶湯と接した状態で対向するように、露呈状態に設けられた少なくとも一対の電極と、
    前記搬送路の外側に設けられ、前記搬送路内の前記一対の電極の間におけるアルミニウム溶湯に磁力線を透過させる、永久磁石と、
    を備え、
    記搬送路の内端を、前記渦室の底壁の中央部開口に連通させた、
    ことを特徴とするアルミニウム溶解炉。
  3. アルミニウム溶湯を収納可能な第2溶解炉と、請求項1又は2に記載のアルミニウム溶解炉と、を備え、
    前記第2溶解炉の外部に前記アルミニウム溶解炉を設け、
    前記アルミニウム溶解炉における前記溶湯流入口と、前記第2溶解炉の側壁に形成した流出口と、を連通させ、
    前記アルミニウム溶解炉における前記搬送路を前記第2溶解炉の側壁に形成した流入口連通させた、
    ことを特徴とするアルミニウム溶解炉システム。
  4. アルミニウム溶湯を収納可能な第2溶解炉と、請求項1又は2に記載のアルミニウム溶解炉と、を備え、
    前記第2溶解炉の内部に、前記アルミニウム溶解炉を、前記永久磁石を除いて、設け、且つ、前記永久磁石を前記第2溶解炉の外部に設けた、
    ことを特徴とするアルミニウム溶解炉システム。
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