次に、本発明の実施例に係る燃料電池システムについて図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施例は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施例にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
図1は、本発明の実施例に係る燃料電池システムの全体構成を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施例に係る燃料電池システムFCSは、燃料電池モジュールFCMと、補器ユニットADUと、貯水タンクWP2と、温水製造装置HWとを備えて構成されている。
燃料電池モジュールFCMは、燃料電池FCと、改質器RFと、制御ボックスCBと、一酸化炭素検知器CODと、可燃ガス検知器GD1とを備えている。燃料電池FCは、固体電解質形の燃料電池(SOFC)であって、発電室FC1と、燃焼室FC2とを備えている。発電室FC1には複数本の燃料電池セルCEが配置されている。燃料電池セルCEは、電解質を挟んで燃料極と空気極とが設けられているものであって、燃料極側に燃料ガスを通し、空気極側に酸化剤ガスとしての空気を通すことで発電反応を起こすことができるように構成されている。
なお、本実施例に係る燃料電池FCは、固体電解質形の燃料電池(SOFC)であるので、電解質を構成する材料としては、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートといった酸素イオン導電性酸化物を用いている。
燃料極を構成する材料としては、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体といった材料が用いられる。
空気極を構成する材料としては、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀といった材料が用いられる。もっとも、電解質や燃料極及び空気極を構成する材料はこれらに限られるものではない。
発電室FC1において発電された電気は、電力取出ラインEP1によって発電電力として取り出されて利用される。燃焼室FC2は、発電室FC1に配置された燃料電池セルCEによって発電反応に利用された残余の燃料ガスを燃焼させる部分である。燃焼室FC2において燃料ガスが燃焼した結果生じる排気ガスは、改質器RFと熱交換をした後に温水製造装置HWへと供給される。温水製造装置HWへと供給された排気ガスはさらに熱交換を行い、水道水を昇温して温水とした後に外部へと排出される。
改質器RFは、例えば、都市ガス等の被改質ガスを改質して燃料ガスとし、燃料電池FCの発電室FC1へと供給する部分である。被改質ガスの改質態様としては、部分酸化改質反応(POX)、オートサーマル改質反応(ATR;Auto Thermal Reforming)、水蒸気改質反応(SR)があり、運転状況に応じて選択的に実行される(詳細は後述する)。改質器RFは、改質部RF1と、蒸発部RF2とを備えている。なお、改質器RFについての詳細は、後に詳述する。
蒸発部RF2は、補器ユニットADU側から供給される純水を蒸発させて水蒸気とし、その水蒸気を改質部RF1に供給する部分である。改質部RF1は、補器ユニットADU側から供給される被改質ガス、空気及び蒸発部RF2から供給される水蒸気を用いて被改質ガスを改質して燃料ガスとする部分である。改質部RF1には、改質触媒が封入されている。改質触媒としては、アルミナの球体表面にNiを付与したもの、アルミナの球体表面にRuを付与したもの、が適宜用いられる。本実施例の場合、これらの改質触媒は球体である。
制御ボックスCBは、燃料電池システム制御部をその内部に収納し、操作装置や表示装置、報知装置が設けられているものである。燃料電池システム制御部、操作装置、表示装置、報知装置については後述する。
一酸化炭素検知器CODは、燃焼室FC2において残余の燃料ガスの不完全燃焼が起きてしまい、一酸化炭素が燃料電池モジュールFCM内に発生していないか検知するためのセンサである。可燃ガス検知器GD1は、燃焼室FC2において残余の燃料ガスが燃え残ってしまい、いわゆる生ガスが燃料電池モジュールFCM内に発生していないか検知するためのセンサである。
続いて、補器ユニットADUについて説明する。補器ユニットADUは、燃料電池モジュールFCMに水、被改質ガス及び空気を供給するための補器を備えるユニットである。補器ユニットADUは、空気供給部として空気ブロワや流量調整弁等を含む流量調整ユニットAP1a、AP1b、及び電磁弁AP2と、燃料供給部として燃料ポンプや流量調整弁等を含む流量調整ユニットFP1、脱硫器FP2、ガス遮断弁FP4、及びガス遮断弁FP5と、水供給部として水ポンプや流量調整弁等を含む流量調整ユニットWP1と、可燃ガス検知器GD2と、を備えている。
外部の空気供給源から供給される空気は、電磁弁AP2が閉じていれば流量調整ユニットAP1a、AP1bに供給されず、電磁弁AP2が開いていれば流量調整ユニットAP1a、AP1bに供給される。流量調整ユニットAP1aによって流量調整された空気は改質用空気として、ヒータAH1によって昇温され、被改質ガスとの混合部MVに供給される。流量調整ユニットAP1bによって流量調整された空気は発電用空気として、ヒータAH2によって昇温され、発電室FC1に供給される。発電室FC1に供給された発電用空気は、燃料電池セルCEの空気極に供給され、燃料電池セルCEの発電に用いられる。
外部の燃料供給源から供給される都市ガスは、2連電磁弁であるガス遮断弁FP4及びガス遮断弁FP5によってその流入が制御される。ガス遮断弁FP4、FP5の両者が開いていれば、都市ガスは脱硫器FP2に供給され、ガス遮断弁FP4、FP5のいずれか一方が閉じていれば、都市ガスは遮断される。脱硫器FP2に供給された都市ガスは、硫黄成分を除去されて被改質ガスとなり、流量調整ユニットFP1に供給される。流量調整ユニットFP1によって流量調整された被改質ガスは、改質用空気との混合部MVに供給される。混合部MVにおいて混合された被改質ガスと改質用空気とは、改質器RFに供給される。
外部の水供給源から供給される水道水は、純水とされてから貯水タンクWP2に貯水される。貯水タンクWP2に貯水されている純水は、流量調整ユニットWP1によって流量が調整されて改質器RFへと供給される。
可燃ガス検知器GD2は、燃料供給部としての系統であるガス遮断弁FP5、ガス遮断弁FP4、脱硫器FP2、流量調整ユニットFP1において、ガス漏れが発生していわゆる生ガスが外部に放出されないか検知するためのセンサである。
次に、図2を参照しながら本実施例の燃料電池システムFCSの制御的な構成について説明する。図2は、燃料電池システムFCSの制御的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、燃料電池システムFCSは、燃料電池モジュールFCMと、燃料電池モジュールFCMに空気を供給する空気供給部APと、燃料電池モジュールFCMに燃料ガスとなる被改質ガスを供給する燃料供給部FPと、燃料電池モジュールFCMに水を供給する水供給部WPと、燃料電池モジュールFCMから電力を取り出す電力取出部EPとを備えている。空気供給部AP、燃料供給部FP、水供給部WP、及び電力取出部EPは補器ユニットADUに収められている。
燃料電池モジュールFCM、空気供給部AP、燃料供給部FP、水供給部WP、及び電力取出部EPは、燃料電池システム制御部CSから出力される制御信号に基づいて制御される。燃料電池システム制御部CSは、CPU、ROM及びRAMといったメモリ、及び制御信号やセンサ信号を授受するためのインターフェイスによって構成されている。燃料電池システム制御部CSには、操作装置CS1、表示装置CS2、及び報知装置CS3が取り付けられている。操作装置CS1から入力される操作指示信号は、燃料電池システム制御部CSに出力され、燃料電池システム制御部CSは、その操作指示信号に基づいて、燃料電池モジュールFCM等を制御する。燃料電池システム制御部CSが制御した情報や、所定の警告情報は、表示装置CS2及び報知装置CS3に出力される。操作装置CS1、表示装置CS2、及び報知装置CS3の具体的なハードウェア構成は特に限定されるものではなく、必要となる機能に応じて最適なハードウェア構成が選択される。一例としては、操作装置CS1として、キーボード、マウス、タッチパネルといったハードウェアが用いられる。表示装置CS2としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイといった表示系のハードウェアが用いられる。報知装置CS3としては、スピーカー、点灯器といったハードウェアが用いられる。燃料電池システム制御部CS、操作装置CS1、表示装置CS2、報知装置CS3は、制御ボックスCBに収められている。
燃料電池システム制御部CSには、燃料電池システムFCSの各所に設けられたセンサからセンサ信号が出力される。燃料電池システム制御部CSに信号を出力するセンサとしては、改質器温度センサDS1、スタック温度センサDS2、排気温度センサDS3、改質器内圧力センサDS4、水位センサDS5、水流量センサDS6、燃料流量センサDS7、改質用空気流量センサDS8、発電用空気流量センサDS9、電力状態検出部DS10、貯湯状態検出センサDS11、一酸化炭素検出センサDS12、可燃ガス検出センサDS13が設けられている。
改質器温度センサDS1は、改質器RFの温度を測定するためのセンサであって、本実施例の場合は2つ設けられている。スタック温度センサDS2は、発電室FC1に配置されている燃料電池セルCEの温度を測定するためのセンサであって、複数の燃料電池セルCEからなる燃料電池セルスタック近傍に配置されている。排気温度センサDS3は、燃焼室FC2から排出される排気ガスの温度を測定するためのセンサであって、燃焼室FC2から改質器RF近傍を通って温水製造装置HWに至る経路に配置されている。改質器内圧力センサDS4は、改質器RF内の圧力を測定するためのセンサである。なお、ここでは改質器RF内の圧力をセンサで測定するようにしているが、改質器RFの前段で燃料と水が混合される部分の圧力を検出するものであってもよい。
水位センサDS5は、貯水タンクWP2の水位を測定するためのセンサであって、本実施例の場合は4つ設けられている。水流量センサDS6は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される純水の流量を測定するためのセンサである。燃料流量センサDS7は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される被改質ガスの流量を測定するためのセンサである。改質用空気流量センサDS8は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMの改質器RFへと供給される改質用空気の流量を測定するためのセンサである。発電用空気流量センサDS9は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される発電用空気の流量を測定するためのセンサである。
電力状態検出部DS10は、センシング手段の集合体であって、燃料電池モジュールFCMから取り出す発電電力の状態を検出する部分である。貯湯状態検出センサDS11は、センシング手段の集合体であって、温水製造装置HWの貯湯状態を検出する部分である。
一酸化炭素検出センサDS12は、一酸化炭素検知器CODに備えられているセンサであって、燃料電池モジュールFCM内における一酸化炭素の発生を検出するセンサである。可燃ガス検出センサDS13は、可燃ガス検知器GD1、GD2に備えられているセンサであって、可燃ガス検知器GD1においては、燃料電池モジュールFCMの燃焼室FC2において残余の燃料ガスが燃え残ってしまい、いわゆる生ガスが排気ガスとして外部に放出されないか検知し、可燃ガス検知器GD2においては、燃料電池モジュールFCM及び補器ユニットADU内における可燃ガスの漏洩を検出するセンサである。
続いて、燃料電池システムFCSの起動時(起動モード)における各種改質反応の切り替えについて図3を参照しながら説明する。図3は、燃料電池システムFCSの起動モードにおける各部の温度や各部の制御電圧を示すグラフである。
本実施例における燃料電池システムFCSの起動モードにおいては、燃焼運転と、部分酸化改質反応(POX)と、第1オートサーマル改質反応(ATR1)と、第2オートサーマル改質反応(ATR2)と、水蒸気改質反応(SR)とを順次切り替えながら改質反応を進行している。図3を説明するのに先立って、各改質反応について説明する。
部分酸化改質反応(POX)は、改質器SRに被改質ガスと空気とを供給して行う改質反応であって、化学反応式(1)に示す反応が進行する。
CmHn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
この部分酸化改質反応(POX)は発熱反応であるので起動性が高く、燃料電池システムFCSの起動当初において好適な改質反応である。但し、部分酸化改質反応(POX)は、水素収率が理論上少なく、発熱反応を制御するのも難しいことから、燃料電池モジュールFCMへ熱供給が必要な起動当初においてのみ利用されるのが好ましい改質反応である。なお、部分酸化改質反応(POX)のみに着目すれば、空間速度を高く設定するので、例えば改質器RFを分割形成して部分酸化改質反応(POX)専用の改質器を設ける場合には、その専用の改質器を小型化することができる。
水蒸気改質反応(SR)は、改質器SRに被改質ガスと水蒸気とを供給して行う改質反応であって、化学反応式(2)に示す反応が進行する。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
水蒸気改質反応(SR)は、水素収率が最も高く、高効率な反応である。ただし、水蒸気改質反応(SR)は、吸熱反応であるので熱源が必要であり、燃料電池システムFCSの起動当初よりはある程度温度が上昇した段階において好適な改質反応である。なお、水蒸気改質反応(SR)のみに着目すれば、空間速度を低く設定するので、改質器RFが大型化する傾向にある。
第1オートサーマル改質反応(ATR1)と第2オートサーマル改質反応(ATR2)とからなるオートサーマル改質反応(ATR)は、部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)とが併用された改質反応であって、改質器RFに被改質ガスと空気と水蒸気とを供給して行われる改質反応であり、化学反応式(3)に示す反応が進行する。
CmHn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
オートサーマル改質反応(ATR)は、水素収率が部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)との併用であり、反応熱のバランスが取りやすく、部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)とを繋ぐ反応として好適な改質反応である。本実施例の場合は、水を少なく供給して部分酸化改質反応(POX)により近い第1オートサーマル改質反応(ATR1)を先に行い、温度が上昇した後に水を増やすように供給して水蒸気改質反応(SR)により近い第2オートサーマル改質反応(ATR2)を後に行っている。
次に、燃料電池システムFCSの起動モードについて説明する。図3は、横軸に起動開始後の経過時間を取り、左縦軸には各部の温度を取っている。制御電圧であるため特段の目盛りは付していないが、改質用空気を供給するための流量調整ユニットAP1aに含まれる改質用空気ブロワの制御電圧、発電用空気を供給するための流量調整ユニットAP1bに含まれる発電用空気ブロワの制御電圧、被改質ガスを供給するための流量調整ユニットFP1に含まれる燃料ポンプの制御電圧、及び純水を供給するための流量調整ユニットWP1に含まれる水ポンプの制御電圧は、図中上方に行くほど電圧が高くなる(供給量が増える)ように示している。図3には、改質器RFの温度、燃料電池セルCEのスタック温度、燃焼室FC2の温度(改質器RFの温度等から推定している)、流量調整ユニットAP1aに含まれる改質用空気ブロワの制御電圧、流量調整ユニットAP1bに含まれる発電用空気ブロワの制御電圧、流量調整ユニットFP2に含まれる燃料ポンプの制御電圧、流量調整ユニットWP1に含まれる水ポンプの制御電圧を示している。
まず、改質用空気を増やすように流量調整ユニットAP1a、電磁弁AP2、ヒータAH1、及び混合部MVを制御し、改質器RFに空気を供給する。また、被改質ガスの供給を増やすように流量調整ユニットFP1、ガス遮断弁FP4、FP5、及び混合部MVを制御し、改質器RFに被改質ガスを供給する。このように、空気と被改質ガスを供給し、イグナイタによって着火して燃焼運転を実行する。また、燃焼運転の実行は、燃焼室FC2の温度を上昇させて、空気と被改質ガスを自然着火させることで行ってもよい。なお、発電室FC1上方の燃焼室FC2においては、改質器RFを通過した燃料ガスと発電用空気とが混合して燃焼しており、燃焼室FC2の温度が徐々に上昇する。
続いて、改質器RFの温度が約300℃程度になった際に、改質器RFが部分酸化改質反応運転(POX運転)可能な状態になることから、改質器RFが300℃前後になった時に成行きで部分酸化改質反応(POX)が進行する。部分酸化改質反応(POX)は発熱反応なので、各部の温度が上昇する。部分酸化改質反応(POX)を開始してから所定時間が経過した後、改質用空気の供給量をさらに増やして部分酸化改質反応(POX)をより進行させる。
続いて、改質器RFの温度が約600℃以上になり、且つ燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度が約250℃を超えたことを条件として、第1オートサーマル改質反応ATR1へと移行させる。第1オートサーマル改質反応ATR1では、改質器RFに供給する改質用空気の流量を減らし、改質器RFに供給する被改質ガスの流量はそのまま維持し、極微量な純水を改質器RFに供給する。オートサーマル改質反応(ATR)は、部分酸化改質反応(ATR)と水蒸気改質反応(SR)とを混合した反応であって、熱的に内部バランスが取れるので改質器RF内では熱自立しながら反応が進行する。また、第1オートサーマル改質反応(ATR1)は、空気が比較的多く部分酸化改質反応(POX)に近い反応であり、発熱が支配的な反応となっている。なお、第1オートサーマル改質反応(ATR1)中において、燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度は約250〜約400℃である。
続いて、改質器RFの温度が600℃以上となり、且つ燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度が約400℃を超えたことを条件として、第2オートサーマル改質反応(ATR2)へと移行させる。第2オートサーマル改質反応(ATR2)では、改質器RFに供給する改質用空気の流量を減らし、改質器RFに供給する被改質ガスの流量も減らし、微量な純水を改質器RFに供給する。第2オートサーマル改質反応(ATR2)は、空気が比較的少なく水が多いため水蒸気改質反応(SR)に近い反応であり、吸熱が支配的な反応となっている。しかしながら、発電室FC1内の温度を示すセルスタック温度が約400℃を超えているため、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を招くことはない。なお、第2オートサーマル改質反応(ATR2)中における蒸発部RF2の温度は約100℃以上である。
続いて、改質器RFの温度が650℃以上となり、且つ燃料電池セルCEによって構成されるセルスタックの温度が約600℃を超えたことを条件として、水蒸気改質反応(SR)へと移行させる。水蒸気改質反応(SR)では、改質器RFに供給する改質用空気は遮断し、改質器RFに供給する被改質ガスの流量を減らし、所定量の純水を改質器RFに供給する。この水蒸気改質反応(SR)は、吸熱反応であるので、燃焼室FC2からの燃焼熱による熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、既に起動の最終段階であるため、発電室FC1内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応を主体としても大幅な温度低下を招くことはない。また水蒸気改質反応(SR)が進行しても燃焼室FC2では継続して燃焼反応が持続する。
上述したように着火から燃焼工程の進行に合わせて改質工程を切り替えていくことで、発電室FC1内の温度が徐々に上昇する。発電室FC1の温度(セルスタックの温度)が、燃料電池モジュールFCMを安定的に作動させる定格温度(約700℃)よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュールFCMを含む電気回路を閉じる。それにより、燃料電池モジュールFCMは発電を開始し、回路に電流が流れて外部に電力を供給することができる。燃料電池セルCEの発電により、燃料電池セルCE自体も発熱し、更に、燃料電池セルCEの温度が上昇する。その結果、燃料電池モジュールFCMを作動させる定格温度、例えば700〜800℃になる。
その後、定格温度を維持するために、燃料電池セルCEで消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い量の燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室FC2での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応(SR)で発電が進行する。水蒸気改質反応(SR)自体は、厳密には400〜800℃程度で行われるが、燃料電池セルCEとの組み合わせにおいては500〜700℃程度で反応が進行する。
次に、図4を参照して、本実施例に係る燃料電池モジュールについてさらに詳細に説明する。図4は、本実施例に係る燃料電池モジュール付近の構成をさらに具体的に示す概略構成図である。
図4に示すように、本実施例に係る燃料電池モジュールFCMは、発電室FC1と、分散室DBと、燃焼室FC2と、水蒸気改質器RFSと、予熱器PHと、蒸発部RF2と、部分酸化改質器RFPとを備えており、発電室FC1と、分散室DBと、燃焼室FC2と、水蒸気改質器RFSと、予熱器PHと、蒸発部RF2は同一の容器C内に収容されており、部分酸化改質器RFPは、容器Cの外部に配設されている。
分散室DBは、発電室FC1の下部に配設されている。この分散室DBは、改質器RFで改質された燃料ガスを分散させ、発電室FC1内に燃料ガスを均一に供給するためのものであり、その上壁には、燃料ガスを発電室FC1内に供給する複数の穴(図示せず)が貫通形成されている。また、分散室DBの底面には、後に詳述する部分酸化改質器RFPから供給される燃料ガスを分散室DB内に導入するための導入穴(図示せず)が貫通形成されている。これにより、分散室DBの底面側(下側)から導入された燃料ガスは、ここで分散され、発電室FC1の底面側(下側)から発電室FC1内に導入され、図1及び図4に示すように、発電室FC1内に立設された燃料電池セルCEの燃料極に供給される。なお、容器Cの側壁外面と底面の外面には、断熱材HIが配設されている。
改質器RFは、前述したように、改質部RF1と、蒸発部RF2とを備えており、改質部RF1は、さらに燃料ガスの水蒸気改質を行う水蒸気改質器RFSと、燃料ガスの部分酸化改質を行う部分酸化改質器RFPとから構成されている。
水蒸気改質器RFSは、燃焼室FC2の上部に配設されている。水蒸気改質器RFSの上部には、予熱器PHが配設されており、水蒸気改質器RFSに供給される純水及び被改質ガスは、予熱器PHを介して水蒸気改質器RFSに供給される。なお、蒸発部RF2は、補器ユニットADU側から供給される純水を蒸発させて水蒸気とし、その水蒸気を水蒸気改質器RFSに供給する。この水蒸気改質器RFSは、容器C内に配設されており、且つ同じ容器C内に配設された燃焼室FC2の上方に配設されているため、燃焼室FC2で生じる熱を用いて吸熱反応を効率よく行うことができる。
部分酸化改質器RFPは、容器Cの外部下方に配設されている。この部分酸化改質器RFPは、水蒸気改質器RFSと直列に配設されており、且つ水蒸気改質器RFSの下流側に位置している。即ち、部分酸化改質器RFPは、水蒸気改質器RFSで改質された燃料ガスが流通する配管PP1に連通し、水蒸気改質器RFSで改質された燃料ガスが通過可能となっている。また、部分酸化改質器RFPには、配管PP1を介して被改質ガス、空気、純水が供給されるようになっている。そして、部分酸化改質器RFPで改質された燃料ガスは、配管PP2を介して分散室DBの底面に形成された図示しない導入穴から分散室DBに供給されるようになっている。なお、部分酸化改質器RFPは、起動モードの際と、後に詳述する運転停止モードの際に、被改質ガスに部分酸化改質を行うが、水を必要としない部分酸化改質反応(POX)時には、燃料電池システム制御部CSによって、部分酸化改質器RFPに純水が供給されないように制御される。
ここで、図3に示すように、部分酸化改質器RFPは起動モードにおいて、着火から約10分程度で約300℃となり、この時点では、セルスタックの温度は、約100℃程度であり、両者には大幅な温度差が生じている。この時、従来の燃料電池システムのように、部分酸化改質器RFPが容器C内に配設されていると、部分酸化改質器RFPの輻射熱により燃料電池セルCEが局所的に加熱され、燃料電池セルCEに熱ムラが生じて破損し易くなる。また、セルスタック全体に、局所的な高温部が偏在する温度分布が生じ、発電効率が低下する虞もある。これに対し、本実施例では、部分酸化改質器RFPを容器Cの外側下方(分散室DBの底面の外面)に配設したため、起動モードの際に、部分酸化改質器RFPの輻射熱により燃料電池セルCEが局所的に加熱されることを防止することができると共に、セルスタック全体にも局所的な高温部が偏在する温度分布が生じることを防止することができる。そしてまた、容器Cの側壁外面と底面の外面には、断熱材HIが配設されているため、起動モードの際に、部分酸化改質器RFPの輻射熱により燃料電池セルCE及びセルスタック全体が影響を受けることをさらに防止することができる。
また、配管PP1の被改質ガス、空気、純水が供給される位置より下流側には、配管PP1から分岐され、部分酸化改質器RFPを迂回するバイパス管路を構成する分岐管PP3が配設されている。なお、本実施例では、部分酸化改質器RFPは、分岐管PP3よりも容器Cから遠い位置に配設されており、その下流端は、配管PP2に連通(合流)されている。配管PP1と分岐管PP3との分岐点には、流体の流路を切り替える切替弁CNGが配設されており、燃料電池システム制御部CSから出力される制御信号に基づいてこの切替弁CNGを切り替えることで、流体の流路を変更している。
具体的には、起動モードの際は、配管PP1と部分酸化改質器RFPとが流通するように切替弁CNGを切り替え、容器C内に部分酸化改質器RFPで改質された燃料ガスが供給されるようにし、発電モードの際は、配管PP1と分岐管PP3とが流通するように切替弁CNGを切り替え、水蒸気改質器RFSで改質された燃料ガスが部分酸化改質器RFPを通らずに、分岐管PP3を介して容器C内に供給されるようにする。したがって、発電モードの際に、水蒸気改質器RFSで改質された燃料ガスが部分酸化改質器RFPを通過する場合に比べ、圧損を低減することができる。即ち、分岐管PP3(バイパス管路)は、圧損低減手段として機能する。
また、発電モードから運転停止モードに移行する際は、この移行を行う所定時間前に、その準備段階として、配管PP1と部分酸化改質器RFPとが流通するように切替弁CNGを切り替え、水蒸気改質器RFSで改質された燃料ガスが部分酸化改質器RFPを通過するようにし、部分酸化改質器RFPを通過した燃料ガス(水蒸気改質された燃料ガス)が容器C内に供給されるようにする。この時、部分酸化改質器RFPでは、まだ部分酸化改質反応(POX)は行わず、水蒸気改質された燃料ガスが通過するのみであり、この水蒸気改質された燃料ガスによって部分酸化改質器RFPの温度を部分酸化改質反応(POX)に適した温度に上昇させる。これにより、部分酸化改質器RFPは、発電モードから運転停止モードに移行する際に、即座に部分酸化改質反応(POX)を開始することができる状態となる。
次に、燃料電池システムFCSの発電モードから運転停止モードに移行した際の各種改質反応の切り替えについて図5を参照しながら説明する。図5は、燃料電池システムFCSの発電モード終了直前から運転停止モードにおける各部の温度や各部に供給する流体流量を示すグラフである。なお、図5は、横軸に運転停止モードの経過時間を取り、左縦軸には各部に供給する流体流量を取っている。流体流量であるため特段の目盛りは付していないが、図中上方に行くほど流量が増えるように示している。
図5には、部分酸化改質器RFPの温度、燃料電池セルCEのスタック温度、水蒸気改質器RFSへ供給する純水の流量、水蒸気改質器RFSへ供給する燃料ガスの流量、部分酸化改質器RFPへ供給する空気の流量、部分酸化改質器RFPへ供給する純水の流量、部分酸化改質器RFPへ供給する燃料ガスの流量、及び燃料電池FCの発電電流量を示している。
先ず、発電モードから運転停止モードに移行する前の準備段階として、発電モード終了時から所定時間前に、配管PP1と部分酸化改質器RFPとが流通するように切替弁CNGを切り替え、水蒸気改質器RFSで改質された燃料ガスを部分酸化改質器RFPに通過させる。この動作により、部分酸化改質器RFPの温度は、図5に示すように、水蒸気改質器RFSで改質された高温の燃料ガスの通過に伴って約300℃から約500℃に上昇し、即座に部分酸化改質反応(POX)を開始することができる状態となる。
次に、水蒸気改質反応(SR)から部分酸化改質反応(POX)を含む反応に移行するため、流量調整ユニットWP1を制御し、水蒸気改質器RFSへの純水流量を減少させる。また、水蒸気改質器RFSへ供給する被改質ガスの流量を減少させるように流量調整ユニットFP1、ガス遮断弁FP4、FP5、及び混合部MVを制御する。さらに、発電室FC1に供給する発電用空気の流量を減少させるように流量調整ユニットAP1が制御される。燃料電池FCによる発電電流は、水蒸気改質器RFSへの純水流量及び燃料ガス流量の減少に伴って減少する。なお、前記準備段階により、部分酸化改質器RFPは約500℃となっているが、この時点では、燃料電池セルCEが部分酸化改質器RFPよりも高温になっているため、部分酸化改質器RFPの温度によって、燃料電池セルCEが局所的に高温になることはない。また、前述したように、部分酸化改質器RFPは、分岐管PP3よりも容器Cから遠い位置に配設されているため、部分酸化改質器RFPから排出される流体(燃料ガス、空気、水蒸気等)が必要以上に昇温することを抑制でき、燃料電池セルの冷却を効率よく行うことができる。
次に、水蒸気改質器RFSへの純水流量及び燃料ガス流量が所定量となり、この状態で所定時間が経過し、且つ発電室FC1に供給する発電用空気の流量が所定量になったことを条件として、部分酸化改質器RFPに微量な純水を供給し、次いで、所定量の燃料ガス及び改質用空気を供給し、部分酸化改質反応(POX)を含む反応を行わせる。なお、図5に示すように、部分酸化改質器RFPへの純水、燃料ガス、改質用空気の供給初期には、水蒸気改質器RFSへの純水及び燃料ガスの供給が継続して行われているが、水蒸気改質器RFSへの純水及び燃料ガスの供給は、部分酸化改質反応(POX)を含む反応がある程度進んだ時点で停止される。この部分酸化改質反応(POX)を含む反応時には、発電室FC1に約300℃の発電用空気が供給されるため、部分酸化改質反応(POX)を含む反応の当初に950℃程度まで昇温されていたセルスタックは、主にこの発電用空気によって冷却され、部分酸化改質反応(POX)を含む反応は、セルスタック温度が約300℃になるまで行われる。また、このように、燃料電池セルCEが酸化し易いセル酸化温度領域に部分酸化改質反応(POX)を含む反応を行わせることで、燃料電池セルCEの酸化を防止することができる。
セルスタックの温度が、約300℃になったことを条件として、部分酸化改質器RFPに対する空気の供給を停止し、次いで、燃料ガスの供給、純水の供給を順に停止する。この動作に伴って、セルスタック温度が徐々に低下し、部分酸化改質器RFPの温度は、燃料ガスの供給が停止された時点から低下し、100℃以下となる。セルスタックの温度及び部分酸化改質器RFPの温度が100℃以下になってから所定時間経過後、発電用空気の供給を停止する。
なお、本実施例では、発電モード中に切替弁CNGを切り替えていたが、これに限らず、切替弁CNGは、発電が終了した直後に切り替えてもよい。発電終了直後では燃焼室FC2の熱がまだ高く、水蒸気改質器RFSがその熱を受けることができるため、上記実施例同様に部分酸化改質器RFPの温度を部分酸化改質反応(POX)の温度に適した温度に上昇させることができる。また、その際には、さらに緊急停止時における燃料電池セルの酸化防止に寄与することができる。
なお、本実施例では、配管PP1の下流側を分岐させて、部分酸化改質器RFPを迂回する分岐管PP3(バイパス管路)を配設した場合について説明したが、これに限らず、部分酸化改質器RFPが、容器Cの外部に配設されると共に、水蒸気改質器RFSの下流側に、水蒸気改質器RFSと直列に配設されていれば、分岐管PP3は必ずしも配設しなくてもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムFCSは、例えば、図6に示すように、容器C内の外部に配設した部分酸化改質器RFPを、起動モードの際に部分酸化改質反応(POX)を行う起動用部分酸化改質器RFP1と、運転停止モードの際に部分酸化改質反応(POX)を行う停止用部分酸化改質器RFP2とから構成してもよい。図6に示す構成では、停止用部分酸化改質器RFP2が、配管PP1を介して水蒸気改質器RFSと直列に配設されているため、発電モードから運転停止モードに移行させる前に、水蒸気改質器RFSで昇温された燃料ガスを停止用部分酸化改質器RFP2に導入し、停止用部分酸化改質器RFP2を部分酸化改質反応に適した温度に予め昇温させておくことができ、発電モードから運転停止モードに効率よく円滑に移行させることができる。なお、起動用部分酸化改質器RFP1には、配管PP4を介して、空気、燃料ガス、純水が供給される。
また、図6に示す構成では、停止用部分酸化改質器RFP2を、起動用部分酸化改質器RFP1よりも容器C内から遠い位置に配設している。この構成により、起動モードの際には、起動用部分酸化改質器RFP1からの放熱を効率よく防止して、容器C内の加熱を促進させ、運転停止モードの際は、容器C内に、起動モードの際よりも低温の流体を供給することができるため、燃料電池セルCEをさらに効率よく冷却させることができる。
そしてまた、本発明に係る燃料電池システムFCSは、例えば、図7に示すように、部分酸化改質器RFPの下流側に、部分酸化改質器RFPと容器Cとを連通させる複数(図7に示す構成では2つ)の配管PP5及びPP6を配設し、切替弁CNGを切り替えることによって、部分酸化改質器RFPから配管PP5を通って容器C内に到達する流路と、部分酸化改質器RFPから配管PP6を通って容器C内に到達する流路を選択するようにしてもよい。図7に示す構成の場合、配管PP6が配管PP5よりも容器Cから遠い位置に配設されているため、配管PP6の流路の長さは、配管PP5の流路の長さよりも長く構成されるため、配管PP6の方が配管PP5よりも放熱し易い構成、即ち、配管PP6が放熱手段を備えた構成となる。したがって、容器C内の加熱を促進させたい起動モードの際には、部分酸化改質器RFPから排出された流体が、放熱の少ない配管PP5を介して容器C内に供給されるように、燃料電池システム制御部CSによって切替弁CNGを切り替え、燃料電池セルCEを効率よく冷却させたい運転停止モードの際は、部分酸化改質器RFPから排出された流体が配管PP6で放熱されて容器C内に供給されるように、燃料電池システム制御部CSによって切替弁CNGを切り替えることで、燃料電池システムFCSの効率を向上することができる。
なお、図7に示す構成では、配管PP6の長さを配管PP5よりも長くすることで配管PP6からの放熱量を大きくし、これを放熱手段とした場合について説明したが、これに限らず、例えば、容器Cから最も遠い位置に配設されている配管(図7では配管PP6)を構成する材料の熱伝導率を高くする等、容器Cから最も遠い位置に配設されている配管に他の放熱手段を配設してもよい。