以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスイッチング素子の温度検出装置の構成を示す回路図である。
図1に示すスイッチング素子の温度検出装置10は、IGBT素子11に一体に設けられた複数の温度検出用ダイオードD1〜D3と、各ダイオードD1〜D3に電源12の電流を供給する給電部13と、第1の差動増幅器15と、第2の差動増幅器16と、第1の三角波生成回路18と、第2の三角波生成回路19と、選択部21と、フォトカプラ(絶縁素子)22と、D/A(ディジタル/アナログ)変換部23と、CPU(演算制御手段)24とを備えて構成されている。
但し、給電部13、第1の差動増幅器15、第2の差動増幅器16、第1の三角波生成回路18、第2の三角波生成回路19及び選択部21で、変換手段が構成されている。また、IGBT素子11のエミッタEとコレクタC間にはフリーホイールダイオードDが接続されている。このIGBT素子11は、電気自動車等のモータを駆動するインバータの3相のアームを構成するスイッチング素子であるとする。また、複数の温度検出用ダイオードD1〜D3は、給電部13の出力側にアノードが接続され、アース側にカソードが接続される状態で、給電部13とアース間に直列に接続されている。この直列接続された温度検出用ダイオードD1〜D3を以降、温度検出用ダイオードDiと称す。この温度検出用ダイオードDiは、IGBT素子11の温度に応じて両端の電圧(以降、ダイオード出力電圧とも称す)Vfが変化するようになっている。このダイオード出力電圧Vfの変化は、例えば図2に直線30で示すように、IGBT素子11の温度が−40°〜150°Cに徐々に上昇するに従って低くなる。この例の場合、−40°Cの温度でダイオード出力電圧VfがVa、150°CでVcとなる。
給電部13の出力側は、第1及び第2の差動増幅器15,16の非反転入力端「+」にも接続されている。第1の差動増幅器15の反転入力端「−」とアース間には、反転入力端「−」に第1の三角波電圧Vt1を出力するように第1の三角波生成回路18が接続され、第2の差動増幅器16の反転入力端「−」とアース間には、反転入力端「−」に第2の三角波電圧Vt2を出力するように第2の三角波生成回路19が接続されている。
第1及び第2の三角波電圧Vt1,Vt2は、図3に波形を示すように、各々オフセット値及び電圧振幅値(レンジ)が異なる。第1の三角波電圧Vt1は、ダイオード出力電圧VfのVaよりも低い例えば−50°Cに対応するVa1と、Vcよりも高い例えば160°Cに対応するVc1との間隔の210°C分の幅広い温度範囲に対応するレンジとなっている。この第1の三角波電圧Vt1とダイオード出力電圧Vfとを差動増幅器15で比較して第1のパルス信号P1を得た場合、210°C分が第1のパルス信号P1のデューティ100%となるので、デューティ1%当たり2.1°Cとなる。つまり、IGBT素子11の温度検出に第1の三角波電圧Vt1を用いた場合、温度検出装置10の回路誤差等でデューティが1%ずれると検出温度が2.1°Cずれるといった低精度(又は低分解能)の温度検出精度となる。
一方、第2の三角波電圧Vt2は、ダイオード出力電圧Vfの例えば110°Cに対応する電圧Vbと、160°Cに対応するVc1との間隔の50°C分の狭い温度範囲に対応するレンジとなっている。この第2の三角波電圧Vt2と電圧Vfとを差動増幅器15で比較して第2のパルス信号P2を得た場合、50°C分が第2のパルス信号P2のデューティ100%となるので、デューティ1%当たり0.5°Cとなる。つまり、IGBT素子11の温度検出に第2の三角波電圧Vt2を用いた場合、デューティが1%ずれると検出温度が0.5°Cずれるといった温度の検出精度となる。これを高精度の温度検出精度又は高分解能の温度検出精度と称す。
選択部21は、第1のパルス信号P1又は第2のパルス信号P2を選択してフォトカプラ22へ出力する。フォトカプラ22は、選択部21から図面の左に向かうIGBT素子11側の高圧系回路と、D/A変換部23及びCPU24側の低圧系回路とを絶縁するものであり、第1のパルス信号P1又は第2のパルス信号P2をD/A変換部23へ出力する。
D/A変換部23は、第1のパルス信号P1又は第2のパルス信号P2をアナログ値に変換してCPU24へ出力する。CPU24は、第1又は第2のパルス信号P1又はP2のアナログ値を一旦ディジタル値に変換し、このディジタル値を予め定められたディジタル値とIGBT素子11の温度とが対応付けられたマップ情報に照合して温度を検出する。この検出された温度がIGBT素子11の温度であり、この温度が所定値以上となった際にIGBT素子11の温度が破壊に至る恐れがあると判断してIGBT素子11の動作を停止させる制御を行う。但し、マップ情報は、第1のパルス信号P1用のものと、第2のパルス信号P2用のものとが、CPU24に内蔵されたROMに予め格納されており、CPU24は、第1又は第2のパルス信号P1又はP2に応じたマップ情報をROMから読み出して用いるようになっている。
次に、このような構成のスイッチング素子の温度検出装置10の動作を説明する。例えば車両が走行し始めた後にIGBT素子11の温度が温度検出用ダイオードDiで検出されているとする。この場合、ダイオード出力電圧Vfが第1及び第2の差動増幅器15,16の非反転入力端「+」に供給される。第1の差動増幅器15の反転入力端「−」には第1の三角波電圧Vt1が供給されているので、第1の差動増幅器15ではそれら電圧の差分がとられて第1のパルス信号P1として出力される。また、第2の差動増幅器16の反転入力端「−」には第2の三角波電圧Vt2が供給されているので、第2の差動増幅器16ではそれら電圧の差分がとられて第2のパルス信号P2として出力される。
選択部21では、車両走行はじめでIGBT素子11の温度が低いので第1のパルス信号P1が選択されてフォトカプラ22へ出力される。フォトカプラ22では、その第1のパルス信号P1が光伝達されてD/A変換部23へ出力される。D/A変換部23では、第1のパルス信号P1がアナログ値に変換されてCPU24へ出力される。CPU24では、その第1のパルス信号P1のアナログ値が一旦ディジタル値に変換され、このディジタル値がマップ情報に照合されて温度が検出される。この場合、その検出されたIGBT素子11の温度は、少なくとも110°Cに満たない低温である。また、この際の温度検出には第1の三角波電圧Vt1が用いられているので温度検出の結果は低精度のものとなる。
その後、車両の走行が長くなってIGBT素子11の温度が少なくとも110°C以上に上昇したとする。この場合にIGBT素子11の温度が温度検出用ダイオードDiで検出され、この際のダイオード出力電圧Vfが第1及び第2の差動増幅器15,16の非反転入力端「+」に供給される。これによって第1及び第2の差動増幅器15,16から第1及び第2のパルス信号P1,P2が出力される。
選択部21では、車両走行時間が長くなってIGBT素子11の温度が高くなっているので第2のパルス信号P2が選択されてフォトカプラ22へ出力される。フォトカプラ22では、その第2のパルス信号P2が光伝達されてD/A変換部23へ出力され、D/A変換部23で第2のパルス信号P2がアナログ値に変換されてCPU24へ出力される。CPU24では、その第2のパルス信号P2のアナログ値が一旦ディジタル値に変換され、このディジタル値がマップ情報に照合されて温度が検出される。この場合、その検出されたIGBT素子11の温度は、少なくとも110°C以上の低温である。また、この際の温度検出には第2の三角波電圧Vt2が用いられているので温度検出の結果は高精度のものとなる。
ここで、例えばIGBT素子11を破損に至るために停止しなければならない温度が150°Cであるとする。現時点ではCPU24で高精度に温度検出結果が得られているので、IGBT素子11が150°Cとなった場合にそれが正確に検出されてIGBT素子11が停止される。
但し、上述の説明では、フォトカプラ22とCPU24との間にD/A変換部23を備えたが、D/A変換部23が無い構成としても良い。この構成の場合、フォトカプラ22から出力される第1のパルス信号P1又は第2のパルス信号P2がCPU24に入力される。CPU24は、その第1又は第2のパルス信号P1又はP2のデューティ(特徴値)を、予め定められたデューティと温度とが対応付けられたマップ情報に照合して温度を検出する。
このように第1の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10は、直流及び交流間の電力変換を行うIGBT素子(スイッチング素子)11の温度を検出するものであり、IGBT素子11に設けられ、当該IGBT素子11の温度に応じた電圧を出力する温度検出用ダイオードDiと、変換手段と、CPU24とを備えて構成したものである。
変換手段は、IGBT素子11において変化する幅広い温度に電圧振幅値が対応付けられた第1の三角波電圧Vt1、及び第1の三角波電圧Vt1よりも電圧振幅値が所定値小さく且つオフセット値が異なる第2の三角波電圧Vt2の何れか一方と、温度検出用ダイオードDiから出力されるダイオード出力電圧Vfとを比較してパルス信号P1又はP2を生成する。CPU24は、変換手段からパルス信号P1又はP2が絶縁素子としてのフォトカプラ22を介して入力され、この入力されたパルス信号P1又はP2を、パルス信号の特徴値とIGBT素子11の温度とが対応付けられたマップ情報に照合してIGBT素子11の温度を検出するようになっている。
従って、第1の三角波電圧Vt1は、IGBT素子11において変化する幅広い温度に電圧振幅値が対応付けられているので、この第1の三角波電圧Vt1とダイオード出力電圧Vfとを比較してパルス信号P1を得た場合、幅広い温度分がパルス信号P1の特徴値としてのデューティ100%となる。従って、デューティ1%当たりの温度は比較的大きな値となるので、回路誤差等でデューティが1%ずれると検出温度が比較的大きな値でずれるといった低精度の温度検出精度となる。
一方、第2の三角波電圧Vt2は、第1の三角波電圧Vt1よりも電圧振幅値が所定値小さく且つオフセット値が異なる。言い換えれば、IGBT素子11において変化する狭い温度に電圧振幅値が対応付けられているので、この第2の三角波電圧Vt2とダイオード出力電圧Vfとを比較してパルス信号P2を得た場合、狭い温度分がパルス信号P2の特徴値としてのデューティ100%となる。
従って、デューティ1%当たりの温度は小さな値となるので、回路誤差等でデューティが1%ずれると検出温度が小さな値でずれるといった高精度の温度検出精度となる。また、第2の三角波電圧Vt2は、第1の三角波電圧Vt1とオフセット値が異なる。このことから第2の三角波電圧Vt2のレベルの中間をIGBT素子11が破壊に至る温度付近としておけば、IGBT素子11が破壊に至る温度を高精度に検出することができる。破壊に至らない比較的低温の幅広い温度では第1の三角波電圧Vt1を用いて温度を検出すればよい。
また、変換手段は、第1の三角波電圧Vt1を生成する第1の三角波生成回路18と、第2の三角波電圧Vt2を生成する第2の三角波生成回路19と、第1の三角波生成回路18で生成される第1の三角波電圧Vt1と、ダイオード出力電圧Vfとの差分をとって第1のパルス信号P1を出力する第1の差動増幅器15と、第2の三角波生成回路19で生成される第2の三角波電圧Vt2と、ダイオード出力電圧Vfとの差分をとって第2のパルス信号P2を出力する第2の差動増幅器16と、第1の差動増幅器15から出力される第1のパルス信号P1及び、第2の差動増幅器16から出力される第2のパルス信号P2の何れか一方を選択して出力する選択部21とを備えて構成されている。
この構成によって、第1及び第2の三角波電圧Vt1,Vt2を各々の三角波生成回路18,19で生成するようにしたので、電圧振幅値が異なり且つオフセット値が異なる2つの三角波電圧Vt1,Vt2を適正に生成することができる。更に、この生成された各々の三角波電圧Vt1又はVt2とダイオード出力電圧Vfとを、各々異なる差動増幅器15,16で比較して各パルス信号P1又はP2を得るので、IGBT素子11の温度に対応したデューティ(特徴値)を有するパルス信号P1又はP2を得ることが出来る。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係るスイッチング素子の温度検出装置の構成を示す回路図である。
図4に示す第2の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−1が、図1に示したスイッチング素子の温度検出装置10と異なる点は、変換手段を、給電部13と、差動増幅器(第3の差動増幅器)32と、三角波生成回路(第3の三角波生成回路)33とを備えて構成したことにある。
即ち、三角波生成回路33は、生成対象の三角波電圧の振幅及びオフセット値を可変することにより、上述した第1の三角波電圧Vt1又は第2の三角波電圧Vt2を生成するようになっている。差動増幅器32は、その生成された第1の三角波電圧Vt1又は第2の三角波電圧Vt2と、ダイオード出力電圧Vfとを比較して第1のパルス信号P1又は第2のパルス信号P2をフォトカプラ22へ出力する。
このような構成のスイッチング素子の温度検出装置10−1では、例えば車両が走行し始めた後にIGBT素子11の温度が温度検出用ダイオードDiで検出されている場合、ダイオード出力電圧Vfが差動増幅器32の非反転入力端「+」に供給される。この際、三角波生成回路33からは第1の三角波電圧Vt1が生成されて差動増幅器32の反転入力端「−」に入力される。差動増幅器32では、ダイオード出力電圧Vfと第1の三角波電圧Vt1との差分がとられて第1のパルス信号P1がフォトカプラ22へ出力される。
フォトカプラ22では、その第1のパルス信号P1が光伝達されてD/A変換部23へ出力され、D/A変換部23では、第1のパルス信号P1がアナログ値に変換されてCPU24へ出力される。CPU24では、その第1のパルス信号P1のアナログ値が一旦ディジタル値に変換され、このディジタル値がマップ情報に照合されて温度が検出される。この場合、第1の三角波電圧Vt1が用いられているので温度検出の結果は低精度のものとなる。
その後、車両の走行が長くなってIGBT素子11の温度が少なくとも110°C以上に上昇したとする。この場合にIGBT素子11の温度が温度検出用ダイオードDiで検出され、この際のダイオード出力電圧Vfが差動増幅器32の非反転入力端「+」に供給されたとする。この場合、三角波生成回路33からは第2の三角波電圧Vt2が生成されて差動増幅器32の反転入力端「−」に入力される。これによって差動増幅器32から第2のパルス信号P2がフォトカプラ22へ出力される。
フォトカプラ22では、その第2のパルス信号P2が光伝達されてD/A変換部23へ出力され、D/A変換部23で第2のパルス信号P2がアナログ値に変換されてCPU24へ出力される。CPU24では、その第2のパルス信号P2のアナログ値が一旦ディジタル値に変換され、このディジタル値がマップ情報に照合されて温度が検出される。この場合、第2の三角波電圧Vt2が用いられているので温度検出の結果は高精度のものとなる。
ここで、例えばIGBT素子11を破損に至るために停止しなければならない温度が150°Cであるとする。現時点ではCPU24で高精度に温度検出結果が得られているので、IGBT素子11が150°Cとなった場合にそれが正確に検出されてIGBT素子11が停止される。
但し、D/A変換部23が無い構成としても良い。この構成の場合、CPU24は、第1又は第2のパルス信号P1又はP2のデューティを、予め定められたデューティと温度とが対応付けられたマップ情報に照合して温度を検出する。
このように第2の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−1は、変換手段を、第1の三角波電圧Vt1又は第2の三角波電圧Vt2を生成する三角波生成回路33と、三角波生成回路33で生成された第1の三角波電圧Vt1又は第2の三角波電圧Vt2と、ダイオード出力電圧Vfとの差分を差動増幅器32でとって第1又は第2のパルス信号P1又はP2を出力するように構成した。
この構成によって、第1の三角波電圧Vt1又は第2の三角波電圧Vt2を1つの三角波生成回路33で生成するようにしたので、第1及び第2の三角波電圧Vt1,Vt2を各々生成する2つの三角波生成回路を用いる場合よりも、温度検出装置10−1を安価に構成することができる。
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係るスイッチング素子の温度検出装置の構成を示す回路図である。
図5に示す第3の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−2が、図1に示したスイッチング素子の温度検出装置10と異なる点は、変換手段に、更に切換指示部(切換指示手段)35を備えたことにある。切換指示部35は、ダイオード出力電圧Vfを検出し、この検出したダイオード出力電圧Vfが予め定められた閾値電圧Vth以上又は閾値電圧Vth未満となった場合に選択部21にワンショットパルスの切換指示信号J1を出力する。選択部21は、切換指示信号J1が入力された際に、現在選択中のパルス信号以外のパルス信号を選択して出力する。例えば現在第1のパルス信号P1を選択中に切換指示信号J1が入力された場合、他方の第2のパルス信号P2を選択してフォトカプラ22へ出力するようになっている。
このようなスイッチング素子の温度検出装置10−2の特徴動作を説明する。但し、切換指示部35には、IGBT素子11の温度110°Cに応じたダイオード出力電圧Vfが閾値電圧Vth−110として設定されているとする。
現在、ダイオード出力電圧VfがIGBT素子11の温度90°Cに応じた電圧であり、この際、選択部21では低分解能の第1の三角波電圧Vt1に応じた第1のパルス信号P1が選択されているとする。IGBT素子11の温度が徐々に上昇して温度110°Cとなり、これに応じたダイオード出力電圧Vfになったとする。この場合、切換指示部35では、ダイオード出力電圧Vfが閾値電圧Vth−110以上となったことが検出され、この検出によって切換指示信号J1が選択部21へ出力される。選択部21では、その切換指示信号J1が入力されると、他方の第2のパルス信号P2が選択されてフォトカプラ22へ出力される。
フォトカプラ22では、その第2のパルス信号P2が光伝達されてD/A変換部23へ出力され、D/A変換部23で第2のパルス信号P2がアナログ値に変換されてCPU24へ出力される。CPU24では、その第2のパルス信号P2のアナログ値が一旦ディジタル値に変換され、このディジタル値がマップ情報に照合されて温度が検出される。この場合、第2の三角波電圧Vt2が用いられているので温度検出の結果は高精度のものとなる。
一方、ダイオード出力電圧VfがIGBT素子11の温度120°Cに応じた電圧であり、この際、選択部21では高分解能の第2の三角波電圧Vt2に応じた第2のパルス信号P2が選択されているとする。IGBT素子11の温度が徐々に下降して温度109°Cとなり、これに応じたダイオード出力電圧Vfになったとする。この場合、切換指示部35では、ダイオード出力電圧Vfが閾値電圧Vth−110未満となったことが検出され、この検出によって切換指示信号J1が選択部21へ出力される。選択部21では、その切換指示信号J1が入力されると、他方の第1のパルス信号P1が選択されてフォトカプラ22へ出力される。この場合、第1の三角波電圧Vt1が用いられているのでCPU24での温度検出の結果は低精度のものとなる。
このように第3の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−2は、第1の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10の変換手段に、更に、ダイオード出力電圧Vfが上昇して予め定められた閾値電圧Vth以上となった場合、又はダイオード出力電圧Vfが下降して閾値電圧Vth未満となった場合に、選択部21に切換指示信号J1を出力する切換指示部35を備えた。そして、選択部21が切換指示信号J1の入力時に現在選択中と異なる第1又は第2の三角波電圧Vt1又はVt2に対応するパルス信号P1又はP2を選択するようにした。
これによって、IGBT素子11が予め定められた温度となった際のダイオード出力電圧Vfを閾値電圧Vthと定めておき、ダイオード出力電圧Vfが上昇して閾値電圧Vth以上となった場合に切換指示部35から選択部21へ切換指示信号J1を出力することで、選択部21は、現在選択中と異なる例えば第2の三角波電圧Vt2に対応する第2のパルス信号P2を選択する。一方、ダイオード出力電圧Vfが下降して閾値電圧Vth未満となった場合に切換指示部35から選択部21へ切換指示信号J1を出力することで、選択部21は、現在選択中と異なる例えば第1の三角波電圧Vt1に対応する第1のパルス信号P1を選択することになる。従って、第1の三角波電圧Vt1に対応する第1のパルス信号P1、又は第2の三角波電圧Vt2に対応する第2のパルス信号P2を自動で切り換えることが可能となる。
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係るスイッチング素子の温度検出装置の構成を示す回路図である。
図6に示す第4の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−3が、図1に示したスイッチング素子の温度検出装置10と異なる点は、CPU24は、IGBT素子11の検出温度が予め定められた閾値温度以上又は閾値温度未満となった場合に、当該CPU24からフォトカプラ37を介してIGBT素子11へ出力される連続パルス状の素子駆動信号K1の周波数を一定時間変化させるようにした。その素子駆動信号K1はIGBT素子11の駆動を制御するものであるが、当該素子駆動信号K1を選択部21にも入力するようにした。そして、選択部21が、そのフォトカプラ37を介して入力される素子駆動信号K1の周波数の変化を検知した際に、現在選択中のパルス信号(例えばP1)以外のパルス信号(P2)を選択してフォトカプラ22へ出力するようにしたことにある。
このようなスイッチング素子の温度検出装置10−3の特徴動作を説明する。但し、CPU24には、閾値温度として110°Cが設定されているとする。
現在、CPU24でのIGBT素子11の検出温度が90°Cであり、IGBT素子11の温度が徐々に上昇して検出温度が110°Cとなったとする。この場合、CPU15の制御によって素子駆動信号K1の周波数が一定時間変化させられる。選択部21では、その素子駆動信号K1の周波数の変化が検知されるので、この際に、現在選択中の例えば第1のパルス信号P1以外の第2のパルス信号P2が選択されてフォトカプラ22へ出力される。
その第2のパルス信号P2は、フォトカプラ22、D/A変換部23を経由してCPU24へ出力されるので、CPU24では、第2のパルス信号P2に応じてIGBT素子11の温度が検出される。この場合、第2の三角波電圧Vt2が用いられているので温度検出の結果は高精度のものとなる。
一方、CPU24でのIGBT素子11の検出温度が120°Cであり、IGBT素子11の温度が徐々に下降して検出温度が109°Cとなったとする。この場合、CPU15の制御によって素子駆動信号K1の周波数が一定時間変化させられ、選択部21で、その周波数の変化が検知され、これによって現在選択中の例えば第2のパルス信号P2以外の第1のパルス信号P1が選択されてフォトカプラ22へ出力される。この場合、第1の三角波電圧Vt1が用いられているので温度検出の結果は低精度のものとなる。
このように第4の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−3において、CPU24は、検出したIGBT素子11の温度が予め定められた閾値温度以上又は閾値温度未満となった場合に、CPU24からフォトカプラ37を介してIGBT素子11に供給され、当該IGBT素子11の駆動を制御する素子駆動信号K1の周波数を一定時間変化させる制御を行い、選択部21は、素子駆動信号K1の周波数の変化を検知した際に現在選択中と異なる第1又は第2の三角波電圧Vt2に対応するパルス信号P1又はP2を選択するようにした。
これによって、予め閾値温度が設定されたCPU24においてIGBT素子11の検出温度が閾値電圧以上となると素子駆動信号K1の周波数が一定時間変化するように制御される。選択部21は、その素子駆動信号K1の周波数の変化を検知すると、現在選択中と異なる例えば第2の三角波電圧Vt2に対応する第2のパルス信号P2を選択する。一方、CPU24においてIGBT素子11の検出温度が閾値電圧未満となると素子駆動信号K1の周波数が一定時間変化するように制御される。選択部21は、その周波数の変化が検知されると、現在選択中と異なる例えば第1の三角波電圧Vt1に対応する第1のパルス信号P1を選択することになる。従って、第1又は第2の三角波電圧Vt2に対応するパルス信号P1又はP2を自動で切り換えることが可能となる。
この第4の実施形態の応用例として、CPU24は、検出したIGBT素子11の温度が閾値温度以上又は閾値温度未満となった場合に素子駆動信号K1の振幅値を一定時間変化させる制御を行い、選択部21は、素子駆動信号K1の振幅値の変化を検知した際に現在選択中と異なる第1又は第2の三角波電圧Vt2に対応するパルス信号P1又はP2を選択するようにしてもよい。この場合も、第1又は第2の三角波電圧Vt2に対応するパルス信号P1又はP2を自動で切り換えることが可能となる。
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態に係るスイッチング素子の温度検出装置の構成を示す回路図である。
図7に示す第5の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−4が、図1に示したスイッチング素子の温度検出装置10と異なる点について説明する。変換手段は650V等の高電圧で動作する高圧系の回路であるが、この高圧系の変換手段に2次側から電圧を供給するトランス(変圧器)41の1次側の低圧電圧(12V等)を、CPU24からの温度検出精度の切換制御信号L1でレベルの異なる2種類の電圧に切り換える。この切換で変化する2次側電圧の2種類の電圧に対応して「H」又は「L」レベルに変化する切換指示信号J2を選択部21に入力する。選択部21がその切換指示信号J2の「H」又は「L」に応じて第1のパルス信号P1又は第2のパルス信号P2を選択するようにしたことにある。
即ち、変換手段は、非反転入力端「+」にトランス41の2次側コイル41cの一端が接続され、反転入力端「−」に2次側コイル41cの他端が閾値用電源43を介して接続され、また、切換指示信号J2を出力する出力端が選択部21に接続された差動増幅器44を更に有する。
なお、変換手段は、それら差動増幅器44及び閾値用電源43を備えると共に、給電部13、第1の差動増幅器15、第2の差動増幅器16、第1の三角波生成回路18、第2の三角波生成回路19及び選択部21を備える回路構成が1つのIC(集積回路)で形成され、このICにトランス41の2次側から給電が行なわれるようになっている。なお、差動増幅器44及び閾値用電源43で、第2の切換指示手段が構成されている。
トランス41の1次側の一方のコイル41aの両端には、分圧用の直列接続された抵抗器R1,R2が接続され、これら抵抗器R1,R2同士の接続点と一端が接地された抵抗器R2の他端との間に、オン/オフ用のスイッチ45を介して抵抗器R3が接続されている。スイッチ45は、CPU24からの切換制御信号L1に応じてオン/オフする。CPU24は、IGBT素子11の検出温度が予め定められた閾値温度(例えば110°C)未満の場合に「L」レベルの切換制御信号L1を出力し、閾値温度以上の場合に「H」レベルの切換制御信号L1を出力する。スイッチ45は、切換制御信号L1の「L」の供給時にオン、「H」の供給時にオフとなり、オフ時に抵抗器R3が切り離され、オン時に抵抗器R3が抵抗器R2に並列接続される状態となる。
また、トランス41の1次側の他方のコイル41bには、12V等の低圧電源46と、MOSトランジスタ47を介して2次側電源制御部48とが接続されている。2次側電源制御部48には低圧電源46が接続され、またMOSトランジスタ47のゲート端子が接続され、更にフィードバック端子FBに、各抵抗器R1,R2の接続点が接続されている。この2次側電源制御部48は、スイッチ45のオン/オフに応じて変化する抵抗器R1,R2,R3による分圧抵抗値でフィードバック端子FBへの印加電圧が変化した際に、MOSトランジスタ47のゲート端子への印加電圧を制御することによって、フィードバック端子FBへの印加電圧が一定となるようにトランス41の1次側電圧を制御し、この制御によってトランス41の2次側電圧のレベルの切り換わりを安定動作させるようになっている。なお、これら分圧用の抵抗器R1,R2,R3と、スイッチ45と、低圧電源46と、MOSトランジスタ47と、2次側電源制御部48とを備えて電圧制御手段が構成されている。
更に、スイッチ45がオン時には、トランス41の1次側電圧が所定値未満と低くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧(第2の閾値電圧)よりも低くなるので、切換指示信号J2が「L」となって選択部21へ供給される。選択部21は、その「L」の供給時に低分解能側の第1のパルス信号P1を選択してフォトカプラ22へ出力するようになっている。一方、スイッチ45がオフ時には、トランス41の1次側電圧が所定値以上と高くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧よりも高くなるので、切換指示信号J2が「H」となって選択部21へ供給される。選択部21は、その「H」の供給時に高分解能側の第2のパルス信号P2を選択してフォトカプラ22へ出力する。
このようなスイッチング素子の温度検出装置10−4の特徴動作を説明する。但し、CPU24には、閾値温度として110°Cが設定されているとする。
現在、CPU24でのIGBT素子11の検出温度が90°Cであるとすると、検出温度は110°Cの閾値温度未満なので、CPU24からの切換制御信号L1は「L」となっている。この場合、スイッチ45はオンとなり、このオンによって抵抗器R3が抵抗器R2に並列接続されるので、この際の抵抗器R1との分圧抵抗値によりトランス41の1次側電圧が所定値未満と低くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧よりも低くなる。これによって差動増幅器44から出力される切換指示信号J2が「L」となって選択部21へ供給される。選択部21では、その「L」の供給に応じて低分解能側の第1のパルス信号P1を選択し、これをフォトカプラ22へ出力する。その第1のパルス信号P1は、フォトカプラ22、D/A変換部23を経由してCPU24へ出力されるので、CPU24では、第1のパルス信号P1に応じてIGBT素子11の温度が検出される。この場合、CPU15での温度検出の結果は低精度のものとなる。
一方、IGBT素子11の温度が徐々に上昇して検出温度が110°Cとなったとする。この場合、検出温度が閾値温度以上となったので切換制御信号L1が「H」とされる。この切換制御信号L1の「H」がスイッチ45に供給されると、スイッチ45はオフとなる。このオンによって抵抗器R3が切り離されるので、この際の抵抗器R1との分圧抵抗値によってトランス41の1次側電圧が所定値以上と高くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧よりも高くなる。これによって差動増幅器44から出力される切換指示信号J2が「H」となって選択部21へ供給される。選択部21では、その「H」の供給に応じて高分解能側の第2のパルス信号P2を選択し、これをフォトカプラ22へ出力する。その第2のパルス信号P2は、フォトカプラ22、D/A変換部23を経由してCPU24へ出力されるので、CPU24では、第2のパルス信号P2に応じてIGBT素子11の温度が検出される。この場合、CPU15での温度検出の結果は高精度のものとなる。
このように第5の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−4において、CPU24は、IGBT素子11の検出温度が予め定められた閾値温度未満又は閾値温度以上であることを示す切換制御信号L1を出力する制御機能を備える。変換手段にトランス41で2次側電圧を供給する構成の際に当該トランス41の1次側にあって、CPU24からの切換制御信号L1が閾値温度未満であることを示す場合、トランス41の1次側電圧を、2次側電圧が予め定められた第2の閾値電圧よりも低くなる電位とし、切換制御信号L1が閾値温度以上であることを示す場合、トランス41の1次側電圧を、2次側電圧が第2の閾値電圧よりも高くなる電位とする電圧制御手段を備える。
変換手段は、閾値用電源43の電圧である第2の閾値電圧よりも、トランス41の2次側電圧が高いか低いかを示す第2の切換指示信号J2を選択部21へ出力する第2の切換指示手段としての差動増幅器44を更に備える。
選択部21は、第2の切換指示信号J2が、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が低いことを示す場合に第1のパルス信号P1を選択し、第2の切換指示信号J2が、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が高いことを示す場合に第2のパルス信号P2を選択するようになっている。
これによって、CPU24でIGBT素子11の検出温度が閾値温度未満であることが検出され、この閾値温度未満を示す切換制御信号L1が電圧制御手段へ出力されたとする。電圧制御手段ではトランス41の1次側電圧を、2次側電圧が第2の閾値電圧よりも低くなる電位とする。これによって第2の切換指示手段は、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が低いことを示す第2の切換指示信号J2を選択部21へ出力する。この第2の切換指示信号J2を受けた選択部21は第1のパルス信号P1を選択する。第1のパルス信号P1はIGBT素子11の温度検出を低精度で行うものなので、CPU24では温度検出が低精度に行なわれる。
一方、CPU24でIGBT素子11の検出温度が閾値温度以上であることが検出され、この閾値温度以上を示す切換制御信号L1が電圧制御手段へ出力されたとする。電圧制御手段ではトランス41の1次側電圧を、2次側電圧が第2の閾値電圧よりも高くなる電位とする。これによって第2の切換指示手段は、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が高いことを示す第2の切換指示信号J2を選択部21へ出力する。この第2の切換指示信号J2を受けた選択部21は第2のパルス信号P2を選択する。第2のパルス信号P2はIGBT素子11の温度検出を高精度で行うものなので、CPU24では温度検出が高精度に行なわれる。従って、低圧系の電圧制御手段からの切換制御信号L1をそのまま利用して、高圧系の変換手段における選択部21の選択動作を制御することが出来る。
次に、この第5の実施形態の変形例の構成を図8に示し、その説明を行う。図8に示すスイッチング素子の温度検出装置10−4aが、図7に示した装置10−4と異なる点は、変換手段であるICが、IGBT駆動電圧レギュレータ(スイッチング素子駆動制御手段)51を備え、更に、スイッチ45が、切換制御信号L1の「L」の供給時にオフ、「H」の供給時にオンとなるようにしたことにある。
従って、スイッチ45がオフ時には、トランス41の1次側電圧が所定値以上と高くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧(第2の閾値電圧)よりも高くなるので、切換指示信号J2が「H」となって選択部21へ供給される。選択部21は、その「H」の供給時に低分解能側の第1のパルス信号P1を選択してフォトカプラ22へ出力する。一方、スイッチ45がオン時には、トランス41の1次側電圧が所定値未満と低くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧よりも低くなるので、切換指示信号J2が「L」となって選択部21へ供給される。選択部21は、その「L」の供給時に高分解能側の第2のパルス信号P2を選択してフォトカプラ22へ出力するようになっている。
また、IGBT駆動電圧レギュレータ51は、トランス41の2次側電圧に係わらず一定の電圧をIGBT素子11のゲート端子に供給してIGBT素子11を駆動制御する。なお、ゲート端子に供給される電圧をゲート電圧と称す。このIGBT駆動電圧レギュレータ51は、トランス41の2次側電圧とゲート電圧との電位差を吸収するようになっているが、その電位差が大きい程に発熱を伴う。例えば、ゲート電圧が15Vで、トランス41の2次側電圧が20Vの場合、IGBT駆動電圧レギュレータ51は、20V−5V=15Vとする制御を行う。また、トランス41の2次側電圧が16Vの場合、16V−1V=15Vとする制御を行う。この制御時の2次側電圧とゲート電圧との電位差が大きい程に発熱を伴う。このIGBT駆動電圧レギュレータ51の発熱に応じて変換手段ICも発熱する。更に、この変換手段ICの発熱は近傍のIGBT素子11の発熱とも相乗効果を奏する。
そこで、IGBT素子11の温度が閾値温度よりも低い場合は、2次側電圧とゲート電圧との電位差を大きくして、IGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を大きくする。一方、IGBT素子11の温度が閾値温度よりも高い場合は、2次側電圧とゲート電圧との電位差を小さくしてIGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を小さくする。つまり、IGBT素子11の温度が低い場合は、IGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を大きくしても、IGBT素子11の温度が低いので変換手段ICの温度上昇は少ない。一方、IGBT素子11の温度が高い場合は、IGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を大きくすると、この制御による発熱とIGBT素子11の高温との双方によって変換手段ICの温度がより上昇する。そこで、IGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を小さくして制御負荷による発熱を少なくする。
このようなスイッチング素子の温度検出装置10−4aの特徴動作を説明する。但し、CPU24には、閾値温度として110°Cが設定されているとする。
現在、CPU24でのIGBT素子11の検出温度が90°Cであるとすると、検出温度は110°Cの閾値温度未満なので、CPU24からの切換制御信号L1は「L」となっている。この場合、スイッチ45はオフとなっているので、各抵抗器R1,R2による分圧抵抗値によってトランス41の1次側電圧が所定値以上と高くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧よりも高くなる。これによって差動増幅器44から出力される切換指示信号J2が「H」となって選択部21へ供給される。選択部21では、その「H」の供給に応じて低分解能側の第1のパルス信号P1を選択し、これをフォトカプラ22へ出力する。その第1のパルス信号P1は、フォトカプラ22、D/A変換部23を経由してCPU24へ出力されるので、CPU24では、第1のパルス信号P1に応じてIGBT素子11の温度が検出される。この場合、CPU15での温度検出の結果は低精度のものとなる。
この場合、IGBT素子11の温度が低いので、トランス41の2次側電圧を高くしてIGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を大きくしても、IGBT素子11の温度が低いので変換手段ICの温度上昇は少ない。
一方、IGBT素子11の温度が徐々に上昇して検出温度が110°Cとなったとする。この場合、検出温度が閾値温度以上となったので切換制御信号L1が「H」とされる。この切換制御信号L1の「H」がスイッチ45に供給されると、スイッチ45はオンとなる。このオンによって抵抗器R3が抵抗器R2に並列接続されるので、この際の抵抗器R1との分圧抵抗値によってトランス41の1次側電圧が所定値未満と低くなって2次側電圧が閾値用電源43の電圧よりも低くなる。これによって差動増幅器44から出力される切換指示信号J2が「L」となって選択部21へ供給される。選択部21では、その「L」の供給に応じて高分解能側の第2のパルス信号P2を選択し、これをフォトカプラ22へ出力する。その第2のパルス信号P2は、フォトカプラ22、D/A変換部23を経由してCPU24へ出力されるので、CPU24では、第2のパルス信号P2に応じてIGBT素子11の温度が検出される。この場合、CPU15での温度検出の結果は高精度のものとなる。
この場合、IGBT素子11の温度が高いので、トランス41の2次側電圧を低くしてIGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を小さくし、制御負荷による発熱を少なくする。これによって、変換手段ICの温度上昇が少なくなる。
このように第5の実施形態の変形例のスイッチング素子の温度検出装置10−4aにおいて、CPU24は、IGBT素子11の検出温度が予め定められた閾値温度未満又は閾値温度以上であることを示す切換制御信号L1を出力する制御機能を備える。変換手段にトランス41で2次側電圧を供給する構成で且つその2次側電圧をこれと異なる一定電圧に制御してIGBT素子11の駆動電圧とするIGBT駆動電圧レギュレータ51を当該変換手段に備える構成の場合に、トランス41の1次側にあって、CPU24からの切換制御信号L1が閾値温度未満であることを示す場合、トランス41の1次側電圧を、2次側電圧が予め定められた第2の閾値電圧よりも高くなる電位とし、切換制御信号L1が閾値温度以上であることを示す場合、トランス41の1次側電圧を、2次側電圧が第2の閾値電圧よりも低くなる電位とする電圧制御手段を備える。
変換手段は、閾値用電源43の電圧である第2の閾値電圧よりも、トランス41の2次側電圧が高いか低いかを示す第2の切換指示信号J2を選択部21へ出力する第2の切換指示手段としての差動増幅器44を更に備える。
選択部21は、第2の切換指示信号J2が、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が高いことを示す場合に第1のパルス信号P1を選択し、第2の切換指示信号J2が、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が低いことを示す場合に第2のパルス信号P2を選択するようにした。
これによって、CPU24でIGBT素子11の検出温度が閾値温度未満であることが検出され、この閾値温度未満を示す切換制御信号L1が電圧制御手段へ出力されたとする。電圧制御手段ではトランス41の1次側電圧を、2次側電圧が第2の閾値電圧よりも高くなる電位とする。これによって第2の切換指示手段は、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が高いことを示す第2の切換指示信号J2を選択部21へ出力する。この第2の切換指示信号J2を受けた選択部21は第1のパルス信号P1を選択する。第1のパルス信号P1はIGBT素子11の温度検出を低精度で行うものなので、CPU24では温度検出が低精度に行なわれる。
この場合、IGBT素子11の温度は低いので、トランス41の2次側電圧を高くしてIGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を大きくしても、IGBT素子11の温度が低いので変換手段ICの温度上昇を抑制することができる。
一方、CPU24でIGBT素子11の検出温度が閾値温度以上であることが検出され、この閾値温度以上を示す切換制御信号L1が電圧制御手段へ出力されたとする。電圧制御手段ではトランス41の1次側電圧を、2次側電圧が第2の閾値電圧よりも低くなる電位とする。これによって第2の切換指示手段は、第2の閾値電圧よりもトランス41の2次側電圧が低いことを示す第2の切換指示信号J2を選択部21へ出力する。この第2の切換指示信号J2を受けた選択部21は第2のパルス信号P2を選択する。第2のパルス信号P2はIGBT素子11の温度検出を高精度で行うものなので、CPU24では温度検出が高精度に行なわれる。
この場合、IGBT素子11の温度が高いので、トランス41の2次側電圧を低くしてIGBT駆動電圧レギュレータ51の制御負荷を小さくし、制御負荷による発熱を少なくする。これによって、変換手段ICの温度上昇を抑制することができる。
(第6の実施形態)
図9は、本発明の第6の実施形態に係るスイッチング素子の温度検出装置の構成を示す回路図である。
図9に示す第6の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−5が、図1に示したスイッチング素子の温度検出装置10と異なる点は、第1の三角波生成回路18が出力する第1の三角波電圧Vt1と、第2の三角波生成回路19が出力する第2の三角波電圧Vt2とを異なる周波数とし、これに応じて異なる第1及び第2のパルス信号P1,P2の周波数の情報fをフォトカプラ22の出力側からCPU24に入力する。CPU24は、現在入力中のパルス信号が第1及び第2のパルス信号P1,P2の何れであるかを、周波数情報fから認識し、この認識結果に対応するマップ情報を用いてIGBT素子11の温度を検出するようになっている。
このようなスイッチング素子の温度検出装置10−5の特徴動作を説明する。但し、第1の三角波電圧Vt1の周波数が1.2kHz、第2の三角波電圧Vt2の周波数が2.4kHzであるとし、図10に示すように、時刻t1〜t2間に示す第1のパルス信号P1の周波数が1.2kHz、時刻t2〜t3間に示す第2のパルス信号P2の周波数が2.4kHzであり、1.2kHz又は2.4kHzの周波数情報fがCPU24に入力されるものとする。
選択部21で選択された第1又は第2のパルス信号P1又はP2が、フォトカプラ22及びD/A変換部23を介してCPU24に入力されているとする。この際、CPU24に周波数情報fとして1.2kHzが入力されているとすると、CPU24は、現在入力中のパルス信号が第1のパルス信号P1であることを認識し、この認識結果から第1のパルス信号P1に対応するマップ情報を用いてIGBT素子11の温度を検出する。一方、CPU24に周波数情報fとして2.4kHzが入力されているとすると、CPU24は、現在入力中のパルス信号が第2のパルス信号P2であることを認識し、この認識結果から第2のパルス信号P2に対応するマップ情報を用いてIGBT素子11の温度を検出する。
このように第6の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−5は、第1又は第2の三角波生成回路18,19は、各々周波数が異なる第1又は第2の三角波電圧Vt1,Vt2を生成し、この生成された第1又は第2の三角波電圧Vt1,Vt2に応じて生成される第1又は第2のパルス信号P1,P2の異なる周波数情報がCPU24に入力されるようにし、CPU24は、現在入力中のパルス信号が第1及び第2のパルス信号P1,P2の何れであるかを周波数情報から認識し、第1及び第2のパルス信号P1,P2の各々に対応付けられたマップ情報の内、認識された結果に対応するマップ情報を用いてIGBT素子11の温度を検出する。
これによって、CPU24では現在入力中のパルス信号が、第1及び第2のパルス信号P1,P2の何れであるかを認識することができるので、第1及び第2のパルス信号P1,P2の各々に対応付けられたマップ情報を適正に参照してIGBT素子11の温度を検出することが出来る。
(第7の実施形態)
図11は、本発明の第7の実施形態に係るスイッチング素子の温度検出装置の構成を示す回路図である。
図11に示す第7の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−6は、変換手段において、温度検出用ダイオードDiに異なる電流量の電流を切り換えて供給することができる第1及び第2の給電部(給電手段)13a,13bと、1種類のみの三角波電圧Vtを生成する三角波生成回路50とを備え、差動増幅器32が、第1及び第2の給電部13a,13bを切り換えて所定の電流を供給した際に異なるレベルのダイオード出力電圧Vf1又はVf2と、三角波電圧Vtとを比較して第1又は第2のパルス信号P1,P2を出力するようにした点に特徴がある。
温度検出用ダイオードDiの温度が同じ場合に、温度検出用ダイオードDiに流す電流を少なくする程にダイオード出力電圧Vfのレベルが低くなる。つまり、温度検出用ダイオードDiに流す電流値を変えることで、同温度におけるダイオード出力電圧Vfを可変することができる。
そこで、第1の給電部13aは予め定められた少ない電流量の電流を温度検出用ダイオードDiに流すものとする。この際のダイオード出力電圧を第1のダイオード出力電圧Vf1とする。一方、第2の給電部13bは、第1の給電部13aよりも多い電流、即ち予め定められた多い電流量の電流を流すものであるとする。この際のダイオード出力電圧を第2のダイオード出力電圧Vf2とする。
また、第1のダイオード出力電圧Vf1は、温度検出用ダイオードDiに流す電流が例えば100μAと少ない場合に対応するものであり、差動増幅器32で第1のダイオード出力電圧Vf1と三角波電圧Vtと比較して第1のパルス信号P1を得た際に、第1のパルス信号P1で検出できる温度は例えば45°C〜90°Cと低温度範囲となる。この低温度範囲とは、IGBT素子11の予め定められた広い温度範囲(例えば−50°C〜160°C)の内、所定の狭い範囲で且つ低い温度範囲45°C〜90°Cのことである。
また、第2のダイオード出力電圧Vf2は、温度検出用ダイオードDiに流す電流が例えば280μAと多い場合に対応するものであり、差動増幅器32で第2のダイオード出力電圧Vf2と三角波電圧Vtと比較して第2のパルス信号P2を得た際に、第2のパルス信号P2で検出できる温度は例えば100°C〜150°Cと高温度範囲と成る。この高温度範囲とは、IGBT素子11の予め定められた広い温度範囲(例えば−50°C〜160°C)の内、所定の狭い範囲で且つ高い温度範囲100°C〜150°Cのことである。
次に、このような構成のスイッチング素子の温度検出装置10−6の動作を説明する。例えば車両が走行し始めた後にIGBT素子11の温度が温度検出用ダイオードDiで検出されている。この場合に第1の給電部13aから温度検出用ダイオードDiに所定の小容量の電流が流されている場合、差動増幅器32には第1のダイオード出力電圧Vf1が供給される。これによって差動増幅器32では第1のダイオード出力電圧Vf1と三角波電圧Vtとが比較されて第1のパルス信号P1が出力される。この第1のパルス信号P1は、フォトカプラ22及びD/A変換部23を介してCPU24へ入力される。CPU24では、その第1のパルス信号P1をもとにマップ情報が照合されてIGBT素子11の温度が検出される。この場合、第1のパルス信号P1で検出できる温度は、狭い範囲で且つ低い温度範囲45°C〜90°Cなので、狭い温度分がパルス信号P1の特徴値としてのデューティ100%となる。従って、デューティ1%当たりの温度は小さな値となるので、回路誤差等でデューティが1%ずれると検出温度が小さな値でずれるといった高精度の温度検出精度となる。
その後、車両の走行が長くなってIGBT素子11の温度が少なくとも110°C以上に上昇したとする。この場合に第1の給電部13aから第2の給電部13bに切り換えられ、第2の給電部13bから温度検出用ダイオードDiに所定の大容量の電流が供給されると、差動増幅器32には第2のダイオード出力電圧Vf2が供給される。これによって差動増幅器32では第2のダイオード出力電圧Vf2と三角波電圧Vtとが比較されて第2のパルス信号P2が出力される。この第2のパルス信号P2は、フォトカプラ22及びD/A変換部23を介してCPU24へ入力される。CPU24では、その第2のパルス信号P2のデューティをもとにマップ情報が照合されてIGBT素子11の温度が検出される。この場合、第2のパルス信号P2で検出できる温度は、狭い範囲で且つ低い温度範囲100°C〜150°Cなので、狭い温度分がパルス信号P2の特徴値としてのデューティ100%となる。従って、デューティ1%当たりの温度は小さな値となるので、回路誤差等でデューティが1%ずれると検出温度が小さな値でずれるといった高精度の温度検出精度となる。ここで、例えばIGBT素子11を破損に至るために停止しなければならない温度が150°Cであるとする。現時点ではCPU24で高精度に温度検出結果が得られているので、IGBT素子11が150°Cとなった場合にそれが正確に検出されてIGBT素子11が停止される。
このように第7の実施形態のスイッチング素子の温度検出装置10−6は、直流及び交流間の電力変換を行うIGBT素子11の温度を検出するものであり、IGBT素子11に設けられ、当該IGBT素子11の温度に応じたダイオード出力電圧を得る温度検出用ダイオードDiを有する。温度検出用ダイオードDiに、予め定められた小容量と、この小容量よりも多い大容量の2種類の電流量の電流を切り換えて供給する給電部13a,13bと、所定振幅を有する三角波電圧Vtを出力する三角波生成回路50を有する。また、給電部13a,13bにより2種類の電流量の電流を温度検出用ダイオードDiに供給した際に当該温度検出用ダイオードDiから得られる異なる2種類のレベルのダイオード出力電圧Vf1,Vf2と、三角波電圧Vtとを比較して2種類のパルス信号P1,P2を生成する差動増幅器32とを有し、更に、差動増幅器32から2種類の内の何れかのパルス信号P1又はP2がフォトカプラ22を介して入力され、この入力されたパルス信号P1又はP2を、パルス信号P1又はP2の特徴値とIGBT素子11の温度とが対応付けられたマップ情報に照合してIGBT素子11の温度を検出するCPU24を有して構成されている。
ここで、給電部13a,13bによる2種類の電流量の電流のうち一方が温度検出用ダイオードDiに供給された際に得られるダイオード出力電圧をVf1、他方が供給された際に得られるダイオード出力電圧をVf2とする。ダイオード出力電圧Vf1は所定の小容量の電流が供給された際のIGBT素子11の予め定められた広い温度範囲(例えば−50°C〜160°C)の内、所定の狭い範囲で且つ低い温度範囲45°C〜90°Cである。ダイオード出力電圧Vf2は、所定の大容量の電流が供給された際のIGBT素子11の予め定められた広い温度範囲(例えば−50°C〜160°C)の内、所定の狭い範囲で且つ高い温度範囲100°C〜150°Cである。
この際に、差動増幅器32でダイオード出力電圧Vf1と三角波電圧Vtとが比較されてパルス信号P1が出力されると、このパルス信号P1は所定の狭い範囲で且つ低い温度範囲45°C〜90°Cに基づくものとなる。従って、CPU24で、そのパルス信号P1をもとにIGBT素子11の低温範囲の温度が検出されると、この温度検出結果は高精度のものとなる。
一方、差動増幅器32でダイオード出力電圧Vf2と三角波電圧Vtとが比較されてパルス信号P2が出力されると、このパルス信号P2は所定の狭い範囲で且つ高い温度範囲に基づくものとなる。従って、CPU24で、そのパルス信号P2をもとにIGBT素子11の高温範囲の温度が検出されると、この温度検出結果は高精度のものとなる。このことからダイオード出力電圧Vf1,Vf2に基づくパルス信号P1,P2でIGBT素子11の温度を検出すれば、低温範囲側及び高温範囲側共に高精度に温度検出を行うことができる。従って、IGBT素子11が破壊に至る温度を高精度に検出することができる。