以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による舶用推進システムが搭載された船舶を示した斜視図である。図2は、本発明の一実施形態による舶用推進システムの構成を示すブロック図である。図3〜図7は、図1に示した一実施形態による舶用推進システムの構成を詳細に説明するための図である。図中、FWDは、船舶の前進方向を示しており、BWDは、船舶の後進方向を示している。まず、図1〜図7を参照して、本実施形態による船舶1および船舶1に搭載された舶用推進システムの構成について説明する。
本実施形態による船舶1には、図1に示すように、水面に浮かべられる船体2と、船体2の後部に取り付けられた船体2を推進するための2機の船外機3と、船体2を操舵するための操舵部4と、操舵部4の近傍に配置され、前後方向に回動可能なレバー部5aを含むコントロールレバー部5と、コントロールレバー部5の近傍に配置された表示部6とが設けられている。また、船外機3と、コントロールレバー部5と、表示部6とは、図2に示すように、それぞれ、共通LANケーブル7および共通LANケーブル8により接続されている。なお、船外機3、操舵部4、コントロールレバー部5、表示部6、共通LANケーブル7および共通LANケーブル8によって、舶用推進システムが構成されている。
2機の船外機3は、図1に示すように、それぞれ、船体2の幅方向(矢印X1方向および矢印X2方向)の中心に対して対称に配置されている。また、船外機3は、ケース部300に覆われている。このケース部300は、樹脂により形成されており、船外機3の内部を水などから保護する機能を有する。また、船外機3は、エンジン31と、エンジン31の駆動力を船舶1の推力に変換する2つのプロペラ32aおよび32b(図4参照)と、エンジン31により発生される駆動力を低速の減速比(約1.33:約1.00)と高速の減速比(約1.0:約1.0)とに変速した状態でプロペラ32aおよび32bに伝達可能な変速機構部33と、エンジン31および変速機構部33を電気的に制御するためのECU(エンジン電子制御器)34とを含んでいる。なお、ECU34は、本発明の「第2制御部」の一例である。また、ECU34には、エンジン31の回転数を検出するエンジン回転センサ35が接続されているとともに、後述するアクセル開度信号に基づいてエンジン31のスロットル(図示せず)のスロットル開度を制御する電子スロットル36が接続されている。エンジン回転センサ35は、エンジン31のクランク軸301(図4参照)近傍に配置されており、クランク軸301の回転数を検出するとともに、検出されたクランク軸301の回転数をECU34に伝達する機能を有する。なお、本実施形態のクランク軸301の回転数は、本発明の「エンジンの回転数」の一例である。また、電子スロットル36は、ECU34からのアクセル開度信号に基づいてエンジン31のスロットル(図示せず)のスロットル開度を制御するのみならず、スロットル開度をECU34に伝達する機能を有する。
ここで、本実施形態では、ECU34は、後述するコントロールレバー部5の制御部52により送信された変速ギヤ切替信号と、シフト位置信号とに基づいて、電磁油圧制御バルブ駆動信号を生成する機能を有する。また、ECU34には、電磁油圧制御バルブ37が接続されており、ECU34は、電磁油圧制御バルブ37に電磁油圧制御バルブ駆動信号を送信する制御を行うように構成されている。そして、この電磁油圧制御バルブ駆動信号に基づいて電磁油圧制御バルブ37が駆動されることにより、変速機構部33が制御される。なお、変速機構部33の構造および動作については、後に詳細に説明する。
また、本実施形態では、コントロールレバー部5には、後述する変速制御マップが記憶された記憶部51と、ECU34に送信する信号(変速ギヤ切替信号、シフト位置信号、アクセル開度信号)の生成などを行う制御部52とが内蔵されている。なお、制御部52は、本発明の「第1制御部」の一例である。また、コントロールレバー部5には、さらに、レバー部5aのシフト位置を検出するシフトポジションセンサ53と、レバー部5aが操作されることにより開閉されるアクセル開度を検知するアクセルポジションセンサ54とが内蔵されている。シフトポジションセンサ53は、レバー部5aが中立の位置に位置している場合、中立の位置よりも前方に位置している場合および中立の位置よりも後方に位置している場合のいずれのシフト位置であるかを検出するために設けられている。また、記憶部51と制御部52とは、互いに接続されており、制御部52は、記憶部51に記憶されている変速制御マップなどを読み出し可能に構成されている。また、制御部52は、シフトポジションセンサ53およびアクセルポジションセンサ54の両方と接続されている。これにより、制御部52は、シフトポジションセンサ53により検出された検出信号(シフト位置信号)およびアクセルポジションセンサ54により検知されたアクセル開度信号を取得することが可能である。
また、制御部52は、共通LANケーブル7と、共通LANケーブル8との両方にそれぞれ接続されている。これら共通LANケーブル7および8は、それぞれ、ECU34に接続されており、制御部52により生成された信号をECU34に伝達するとともに、ECU34により生成された信号を制御部52に伝達する機能を有する。つまり、共通LANケーブル7および8は、それぞれ、制御部52とECU34との間を通信可能に構成されている。また、共通LANケーブル8は、共通LANケーブル7とは電気的に別個独立に設けられている。なお、共通LANケーブル7は、本発明の「第1通信回線」の一例であり、共通LANケーブル8は、本発明の「第2通信回線」の一例である。
具体的には、制御部52は、シフトポジションセンサ53により検出されたレバー部5aのシフト位置信号を、共通LANケーブル7を介して、表示部6とECU34とに伝達するように構成されている。なお、制御部52は、シフト位置信号を、共通LANケーブル8を介さずに共通LANケーブル7を介してのみ伝達するように構成されている。また、制御部52は、アクセルポジションセンサ54により検知されたアクセル開度信号を、共通LANケーブル7を介さずに共通LANケーブル8のみを介してECU34に伝達するように構成されている。また、制御部52は、ECU34から送信されるエンジン回転信号を、共通LANケーブル8を介して受信可能に構成されている。
また、本実施形態では、制御部52は、ユーザによるコントロールレバー部5の操作に基づいて、変速機構部33の減速比を変速するように電気的に制御する機能を有する。具体的には、制御部52は、記憶部51に記憶されたアクセル開度とエンジン回転数とにより規定される変速制御マップに基づいて、変速機構部33を低速の減速比および高速の減速比のいずれか一方の減速比に変速するように制御する変速ギヤ切替信号を生成する機能を有する。なお、変速制御マップについては、後に詳細に説明する。そして、制御部52は、生成した変速ギヤ切替信号を共通LANケーブル7および8を介して、ECU34に送信するように構成されている。なお、制御部52が変速ギヤ切替信号を出力するのは、2機の船外機3のうち少なくともいずれか一方の船外機3の運転状態が変速の条件を満たした場合、および、2機の船外機3のうち予め特定された船外機3の運転状態が変速の条件を満たした場合のいずれか一方の場合である。
また、コントロールレバー部5のレバー部5aが前方(矢印FWD方向)(図3参照)に回動された場合に、変速機構部33は、船体2が前進可能なように制御されるように構成されている。また、コントロールレバー部5のレバー部5aのように、レバー部5aが前後方向に回動されていない場合に(図3の実線参照)、変速機構部33は、船体2を前進および後進のいずれにも推進させないニュートラル(中立)状態に制御されるように構成されている。また、コントロールレバー部5のレバー部5aが後方(矢印FWD方向とは反対方向)(図3参照)に回動された場合に、変速機構部33は、船体2が後進可能なように制御されるように構成されている。
また、コントロールレバー部5のレバー部5aが図3のFWD1まで回動された際に、エンジン31の図示しないスロットルが全閉状態(アイドリング状態)でシフトイン(ニュートラル状態の解除)するように構成されている。また、コントロールレバー部5のレバー部5aが図3のFWD2まで回動された際に、エンジン31の図示しないスロットルが全開状態になるように構成されている。
また、コントロールレバー部5のレバー部5aが矢印FWD方向に回動された場合と同様に、レバー部5aが矢印FWD方向とは反対方向である図3のBWD1まで回動された場合には、エンジン31の図示しないスロットルが全閉状態(アイドリング状態)でシフトイン(ニュートラル状態の解除)するように構成されている。また、コントロールレバー部5のレバー部5aが図3のBWD2まで回動された際に、エンジン31の図示しないスロットルが全開状態になるように構成されている。
また、表示部6は、船舶1の航行速度を示す速度表示部61と、コントロールレバー部5のレバー部5aが位置しているシフト位置を示すシフト位置表示部62と、変速機構部33が接続されているギヤを示すギヤ表示部63とを含んでいる。速度表示部61に表示される船舶1の航行速度は、エンジン回転センサ35およびエンジン31の吸気状態などに基づいてECU34により算出される。そして、算出された船舶1の航行速度のデータは、共通LANケーブル7および8を介して表示部6に伝達されるように構成されている。また、シフト位置表示部62に表示されるシフト位置は、コントロールレバー部5の制御部52より送信されるシフト位置信号に基づいて表示されるように構成されている。また、ギヤ表示部63に表示される変速機構部33が接続されているギヤは、コントロールレバー部5の制御部52より送信される変速ギヤ切替信号に基づいて表示されるように構成されている。つまり、表示部6は、ユーザ(操船者)に対して船舶1の航行状況を把握させる機能を有する。
次に、エンジン31および変速機構部33の構造について説明する。図4に示すように、エンジン31には、軸線L1を中心に回転するクランク軸301が設けられている。このエンジン31は、このクランク軸301が回転されることにより駆動力が発生されるように構成されている。また、クランク軸301には、変速機構部33の上部伝達軸311の上側部分が接続されている。この上部伝達軸311は、軸線L1上に配置されているとともに、クランク軸301が回転するのに伴って、軸線L1を中心に回転するように構成されている。
変速機構部33は、エンジン31の駆動力が入力される上記した上部伝達軸311を含み、船舶1を高速航行および低速航行のいずれか一方で航行可能に変速される上部変速部310と、船舶1が前進航行および後進航行のいずれか一方で航行可能に変速する下部変速部330とにより構成されている。つまり、変速機構部33は、エンジン31により発生される駆動力を、前進航行において低速の減速比(1.33:1)と高速の減速比(1:1)とに変速された状態でプロペラ32aおよび32bに伝達可能に構成されているとともに、後進航行において低速の減速比と高速の減速比とに変速された状態でプロペラ32aおよび32bに伝達可能に構成されている。
上部変速部310は、図5に示すように、上記した上部伝達軸311と、上部伝達軸311の駆動力を減速可能な遊星歯車部312と、遊星歯車部312の回転を制御するクラッチ部313およびワンウェイクラッチ314と、上部伝達軸311の駆動力が遊星歯車部312を介して伝達される中間軸315と、複数の部材により上部変速部310の外形部を構成する上部ケース部316とを含んでいる。そして、上部変速部310は、クラッチ部313が接続状態である場合に、中間軸315が上部伝達軸311の回転数と比べて実質的に減速されることなく回転するように構成されている。その一方、上部変速部310は、クラッチ部313が切断状態である場合には、遊星歯車部312が回転されることにより上部伝達軸311の回転数よりも減速された回転数で、中間軸315が回転されるように構成されている。
具体的には、上部伝達軸311の下側部分には、リングギヤ317が設けられている。また、中間軸315の上部には、フランジ部材318がスプライン嵌合されている。このフランジ部材318は、リングギヤ317の内側(軸線L1側)に配置されており、フランジ部材318のフランジ部318aには、図5および図6に示すように、4つの軸部材319が固定されている。これら4つの軸部材319には、それぞれ、4つのプラネタリアギヤ320が回転可能に取り付けられており、これら4つのプラネタリアギヤ320は、それぞれ、リングギヤ317に噛合されている。また、4つのプラネタリアギヤ320は、それぞれ、軸線L1を中心に回転可能なサンギヤ321に噛合されている。このサンギヤ321は、図5に示すように、ワンウェイクラッチ314により支持されている。また、ワンウェイクラッチ314は、上部ケース部316に取り付けられているとともに、A方向のみに回転可能に構成されている。これにより、サンギヤ321は、一方向(A方向)のみに回転されるように構成されている。
また、クラッチ部313は、湿式多板クラッチにより構成されている。クラッチ部313は、ワンウェイクラッチ314にA方向のみに回転可能に支持されている外ケース部313aと、外ケース部313aの内周部分に互いに所定の間隔を隔てて配置された複数のクラッチプレート313bと、少なくとも一部が外ケース部313aの内側に配置された内ケース部313cと、内ケース部313cに取り付けられ、複数のクラッチプレート313bのそれぞれの間の空間に配置された複数のクラッチプレート313dとにより主に構成されている。そして、クラッチ部313は、外ケース部313aのクラッチプレート313bと、内ケース部313cのクラッチプレート313dとが互いに接触している場合に、外ケース部313aと内ケース部313cとが一体的に回転する接続状態になるように構成されている。その一方、クラッチ部313は、外ケース部313aのクラッチプレート313bと、内ケース部313cのクラッチプレート313dとが互いに離間している場合に、外ケース部313aと内ケース部313cとが一体的に回転しない切断状態になるように構成されている。
具体的には、外ケース部313aには、外ケース部313aの内周面に対して摺動可能なピストン部313eが配置されている。このピストン部313eは、外ケース部313aの内周面に対して摺動された際に、外ケース部313aの複数のクラッチプレート313bを、それぞれ、ピストン部313eの摺動方向に移動するように構成されている。また、外ケース部313aには、圧縮コイルばね313fが配置されている。この圧縮コイルばね313fは、ピストン部313eを、外ケース部313aのクラッチプレート313bと内ケース部313cのクラッチプレート313dとが離間する方向に付勢するように配置されている。また、ピストン部313eは、上述した電磁油圧制御バルブ37により、上部ケース部316のオイル通路316aを流通するオイルの圧力が上昇された際に、圧縮コイルばね313fの反力に抗して外ケース部313aの内周面に対して摺動するように構成されている。これにより、上部ケース部316のオイル通路316aを流通するオイルの圧力を、上昇および降下させることにより、外ケース部313aのクラッチプレート313bと、内ケース部313cのクラッチプレート313dとを接触および離間させることが可能となるので、クラッチ部313を接続および切断することが可能となる。
また、内ケース部313cの上側部分には、4つの軸部材319の下端部が取り付けられている。つまり、内ケース部313cは、4つの軸部材319の各上部が取り付けられているフランジ部材318と4つの軸部材319を介して接続されている。これにより、内ケース部313cと、フランジ部材318および軸部材319とを、軸線L1を中心に同時に回転させることが可能である。
上記のように遊星歯車部312およびクラッチ部313を構成することによって、クラッチ部313が切断されている場合、上部伝達軸311がA方向に回転するのに伴ってリングギヤ317がA方向に回転される。この際、サンギヤ321は、A方向とは反対のB方向に回転されないので、各プラネタリアギヤ320は、図6に示すように、軸部材319を中心にA1方向に回転されながら軸部材319と共に軸線L1を中心にA2方向に移動される。これにより、フランジ部材318(図5参照)は、軸部材319がA2方向に移動されるのに伴って、軸線L1を中心にA方向に回転される。その結果、フランジ部材318にスプライン嵌合されている中間軸315を、軸線L1を中心に、上部伝達軸311の回転数よりも減速された状態でA方向に回転させることが可能となる。
また、上記のように遊星歯車部312およびクラッチ部313を構成することによって、クラッチ部313が接続されている場合、上部伝達軸311がA方向に回転するのに伴ってリングギヤ317がA方向に回転される。この際、サンギヤ321は、A方向とは反対のB方向に回転されないので、各プラネタリアギヤ320は、軸部材319を中心にA1方向に回転されながら軸部材319と共に軸線L1を中心にA2方向に移動される。このとき、クラッチ部313が接続されているため、クラッチ部313の外ケース部313a(図5参照)がワンウェイクラッチ314(図5参照)と共にA方向に回転される。これにより、サンギヤ321が軸線L1を中心にA方向に回転されるため、プラネタリアギヤ320が軸部材319を中心に実質的に回転されずに、軸部材319は、軸線L1を中心にA方向に移動される。これにより、フランジ部材318は、プラネタリアギヤ320により実質的に減速されることなく、上部伝達軸311と略同じ回転数で回転される。その結果、中間軸315を、軸線L1を中心に上部伝達軸311と略同じ回転数でA方向に回転させることが可能となる。
また、下部変速部330は、図5に示すように、上部変速部310の下方に設けられている。下部変速部330は、中間軸315に接続された中間伝達軸331と、中間伝達軸331の駆動力を減速可能な遊星歯車部332と、遊星歯車部332の回転を制御する前後切替クラッチ部333および前後切替クラッチ部334と、中間伝達軸331の駆動力が遊星歯車部332を介して伝達される下部伝達軸335と、下部変速部330の外形部を構成する下部ケース部336とを含んでいる。そして、下部変速部330は、前後切替クラッチ部333が接続状態で、かつ、前後切替クラッチ部334が切断状態である場合に、下部伝達軸335が中間軸315(上部伝達軸311)の回転方向(A方向)とは反対方向(B方向)に回転するように構成されている。この場合、下部変速部330は、船舶1を後進させることが可能なように、プロペラ32bを回転させずにプロペラ32aのみを回転させるように構成されている。その一方、下部変速部330は、前後切替クラッチ部333が切断状態で、かつ、前後切替クラッチ部334が接続状態である場合には、下部伝達軸335が中間軸315(上部伝達軸311)の回転方向(A方向)と同じ方向に回転するように構成されている。この場合、下部変速部330は、船舶1を前進させることが可能なように、プロペラ32aを船舶1を後進させる場合とは反対方向に回転させるように構成されているとともに、プロペラ32bをプロペラ32aとは反対方向に回転させるように構成されている。なお、下部変速部330は、前後切替クラッチ部333および334の両方が接続状態になることがないように構成されている。また、下部変速部330は、前後切替クラッチ部333および334の両方が切断状態である場合に、中間軸315(上部伝達軸311)の回転は、下部伝達軸335に伝達されない(ニュートラル状態になる)ように構成されている。
具体的には、中間伝達軸331は、中間軸315と共に回転するように構成されており、中間伝達軸331の下部には、フランジ部337が設けられている。このフランジ部337には、図5および図7に示すように、3つの内側軸部材338および3つの外側軸部材339が固定されている。これら3つの内側軸部材338には、それぞれ、3つの内側プラネタリアギヤ340が回転可能に取り付けられており、これら3つの内側プラネタリアギヤ340は、それぞれ、後述するサンギヤ343に噛合されている。また、3つの外側軸部材339には、それぞれ、3つの外側プラネタリアギヤ341が回転可能に取り付けられている。これら3つの外側プラネタリアギヤ341は、それぞれ、内側プラネタリアギヤ340に噛合されているとともに、後述するリングギヤ342に噛合されている。
また、前後切替クラッチ部333は、下部ケース部336の内部の上部に設けられている。この前後切替クラッチ部333は、湿式多板クラッチにより構成されており、その一部が下部ケース部336の凹部336aにより構成されている。また、前後切替クラッチ部333は、凹部336aの内周部分に互いに所定の間隔を隔てて配置された複数のクラッチプレート333aと、少なくとも一部が凹部336aの内側に配置された内ケース部333bと、内ケース部333bに取り付けられ、複数のクラッチプレート333aのそれぞれの間の空間に配置された複数のクラッチプレート333cとにより主に構成されている。また、前後切替クラッチ部333は、凹部336aのクラッチプレート333aと内ケース部333bのクラッチプレート333cとが互いに接触している場合に、内ケース部333bの回転が下部ケース部336により規制されるように構成されている。その一方、前後切替クラッチ部333は、凹部336aのクラッチプレート333aと内ケース部333bのクラッチプレート333cとが互いに離間している場合に、内ケース部333bが下部ケース部336に対して自由に回転されるように構成されている。
具体的には、下部ケース部336の凹部336aには、凹部336aの内周面に対して摺動可能なピストン部333dが配置されている。このピストン部333dは、凹部336aの内周面に対して摺動された際に、凹部336aのクラッチプレート333aをピストン部333dの摺動方向に移動するように構成されている。また、下部ケース部336の凹部336aには、圧縮コイルばね333eが配置されている。この圧縮コイルばね333eは、ピストン部333dを凹部336aのクラッチプレート333aと内ケース部333bのクラッチプレート333cとが離間する方向に付勢するように配置されている。また、ピストン部333dは、上述した電磁油圧制御バルブ37により下部ケース部336のオイル通路336bを流通するオイルの圧力が上昇された際に、圧縮コイルばね333eの反力に抗して凹部336aの内周面に対して摺動するように構成されている。これにより、下部ケース部336のオイル通路336bを流通するオイルの圧力を上昇および降下させることにより、前後切替クラッチ部333を接続および切断することが可能となる。
また、前後切替クラッチ部333の内ケース部333bには、環状のリングギヤ342が取り付けられている。このリングギヤ342は、図5および図7に示すように、3つの外側プラネタリアギヤ341に噛合されている。
また、前後切替クラッチ部334は、図5に示すように、下部ケース部336の内部の下部に設けられているとともに、湿式多板クラッチにより構成されている。また、前後切替クラッチ部334は、外ケース部334aと、外ケース部334aの内周部分に互いに所定の間隔を隔てて配置された複数のクラッチプレート334bと、少なくとも一部が外ケース部334aの内側に配置された内ケース部334cと、内ケース部334cに取り付けられ、複数のクラッチプレート334bのそれぞれの間の空間に配置された複数のクラッチプレート334dとにより主に構成されている。そして、前後切替クラッチ部334は、外ケース部334aのクラッチプレート334bと内ケース部334cのクラッチプレート334dとが互いに接触している場合に、内ケース部334cと外ケース部334aとが軸線L1を中心に一体的に回転されるように構成されている。その一方、前後切替クラッチ部334は、外ケース部334aのクラッチプレート334bと内ケース部334cのクラッチプレート334dとが互いに離間している場合に、内ケース部334cが外ケース部334aに対して自由に回転されるように構成されている。
具体的には、外ケース部334aには、外ケース部334aの内周面に対して摺動可能なピストン部334eが配置されている。このピストン部334eは、外ケース部334aの内周面に対して摺動された際に、外ケース部334aの複数のクラッチプレート334bをピストン部334eの摺動方向に移動するように構成されている。また、外ケース部334aの内部には、圧縮コイルばね334fが配置されている。この圧縮コイルばね334fは、ピストン部334eを外ケース部334aのクラッチプレート334bと内ケース部334cのクラッチプレート334dとが離間する方向に付勢するように配置されている。また、ピストン部334eは、上述した電磁油圧制御バルブ37により下部ケース部336のオイル通路336cを流通するオイルの圧力が上昇された際に、圧縮コイルばね334fの反力に抗して外ケース部334aの内周面に対して摺動するように構成されている。これにより、下部ケース部336のオイル通路336cを流通するオイルの圧力を上昇および降下させることにより、前後切替クラッチ部334を接続および切断することが可能となる。
また、前後切替クラッチ部334の内ケース部334cには、3つの内側軸部材338および3つの外側軸部材339が固定されている。つまり、内ケース部334cは、3つの内側軸部材338および3つの外側軸部材339によりフランジ部337と接続されており、フランジ部337と共に軸線L1を中心に回転するように構成されている。また、前後切替クラッチ部334の外ケース部334aは、下部伝達軸335に取り付けられており、下部伝達軸335と共に軸線L1を中心に回転するように構成されている。
また、下部伝達軸335の上部には、サンギヤ343が一体的に形成されている。このサンギヤ343は、図7に示すように、上記したように内側プラネタリアギヤ340と噛合されており、内側プラネタリアギヤ340は、リングギヤ342に噛合されている外側プラネタリアギヤ341に噛合されている。そして、サンギヤ343は、前後切替クラッチ部333が接続されることによりリングギヤ342が回転しない場合に、中間伝達軸331が軸線L1を中心にA方向に回転されるのに伴ってフランジ部337がA方向に回転された際に、内側プラネタリアギヤ340および外側プラネタリアギヤ341を介して軸線L1を中心にB方向に回転されるように構成されている。
上記のように遊星歯車部332、前後切替クラッチ部333および334を構成することによって、前後切替クラッチ部333が接続されている場合、内ケース部333bに取り付けられているリングギヤ342は、下部ケース部336に対して固定される。なお、この時、前後切替クラッチ部334は、上記したように切断されるように構成されており、前後切替クラッチ部334の外ケース部334aと内ケース部334cとは、別々に回転可能な状態である。この場合、中間伝達軸331が軸線L1を中心にA方向に回転されるのに伴ってフランジ部337が軸線L1を中心にA方向に回転された際に、3つの内側軸部材338および3つの外側軸部材339は、それぞれ、軸線L1を中心にA方向に移動される。この際、外側軸部材339に取り付けられている外側プラネタリアギヤ341は、外側軸部材339を中心にB1方向に回転され、内側プラネタリアギヤ340は、外側プラネタリアギヤ341が外側軸部材339を中心にB1方向に回転されるのに伴って内側軸部材338を中心にA3方向に回転される。これにより、サンギヤ343は、軸線L1を中心にB方向に回転される。その結果、下部伝達軸335は、図5に示すように、内ケース部334cが軸線L1を中心にA方向に回転するのに係わらず、外ケース部334aと共に軸線L1を中心にB方向に回転される。これにより、前後切替クラッチ部333が接続状態で、かつ、前後切替クラッチ部334が切断状態である場合に、下部伝達軸335を中間軸315(上部伝達軸311)の回転方向(A方向)とは反対方向(B方向)に回転させることが可能となる。
また、上記のように遊星歯車部332、前後切替クラッチ部333および334を構成することによって、前後切替クラッチ部333が切断されている場合、内ケース部333bに取り付けられているリングギヤ342は、下部ケース部336に対して自由に回転することが可能である。なお、この時、前後切替クラッチ部334は、上記したように接続および切断のいずれの状態も取り得るように構成されており、前後切替クラッチ部334が接続されている場合について説明する。
中間伝達軸331が軸線L1を中心にA方向に回転されるのに伴ってフランジ部337がA方向に回転された場合、3つの内側軸部材338および3つの外側軸部材339は、図7に示すように、それぞれ、軸線L1を中心にA方向に回転される。この際、外側プラネタリアギヤ341に噛合されているリングギヤ342は自由に回転されるので、内側プラネタリアギヤ340および外側プラネタリアギヤ341は空転される。つまり、サンギヤ343には、中間伝達軸331の駆動力が伝達されない。その一方、前後切替クラッチ部334が接続されているので、図5に示すように、3つの内側軸部材338および3つの外側軸部材339と共に軸線L1を中心にA方向に回転可能な内ケース部334cが軸線L1を中心にA方向に回転されるのに伴って、外ケース部334aは、軸線L1を中心にA方向に回転される。これにより、下部伝達軸335は、外ケース部334aと共に軸線L1を中心にA方向に回転される。その結果、前後切替クラッチ部333が切断状態で、かつ、前後切替クラッチ部334が接続状態である場合に、下部伝達軸335を中間軸315(上部伝達軸311)の回転方向(A方向)と同じ方向に回転させることが可能となる。
また、変速機構部33の下方には、図4に示すように、減速装置344が設けられている。この減速装置344には、変速機構部33の下部伝達軸335が入力されており、減速装置344は、下部伝達軸335により入力された駆動力を減速する機能を有する。また、減速装置344の下方には、ドライブ軸345が設けられている。このドライブ軸345は、下部伝達軸335と同方向に回転されるように構成されており、ドライブ軸345の下部には、ベベルギヤ345aが設けられている。
また、ドライブ軸345のベベルギヤ345aには、内側出力軸部346のベベルギヤ346aと外側出力軸部347のベベルギヤ347aとが噛合されている。内側出力軸部346は、後方(矢印BWD方向)に延びるように配置されており、内側出力軸部346の矢印BWD方向側には、上記したプロペラ32bが取り付けられている。また、外側出力軸部347も、内側出力軸部346と同様に矢印BWD方向に延びるように配置されており、外側出力軸部347の矢印BWD方向側には、上記したプロペラ32aが取り付けられている。また、外側出力軸部347は、中空状に形成されており、外側出力軸部347の中空部分には、内側出力軸部346が挿入されている。そして、内側出力軸部346および外側出力軸部347は、それぞれ、別個独立に回転可能に構成されている。
また、ベベルギヤ346aは、ベベルギヤ345aの矢印FWD方向側に噛合されており、ベベルギヤ347aは、ベベルギヤ345aの矢印BWD方向側に噛合されている。これにより、ベベルギヤ346aが回転した際に、内側出力軸部346および外側出力軸部347は、互いに、異なる方向に回転される。
具体的には、ドライブ軸345がA方向に回転した場合に、ベベルギヤ346aは、A4方向に回転されるように構成されており、ベベルギヤ346aがA4方向に回転するのに伴って、内側出力軸部346を介してプロペラ32bは、A4方向に回転される。また、ドライブ軸345がA方向に回転した場合に、ベベルギヤ347aは、B2方向に回転されるように構成されており、ベベルギヤ347aがB2方向に回転するのに伴って、外側出力軸部347を介してプロペラ32aは、B2方向に回転される。そして、船舶1は、プロペラ32aがB2方向に回転されるとともに、プロペラ32bがA4方向(B2方向と反対方向)に回転されることによって、矢印FWD方向(前進方向)に航行される。
また、ドライブ軸345がB方向に回転した場合に、ベベルギヤ346aは、B2方向に回転されるように構成されており、ベベルギヤ346aがB2方向に回転するのに伴って、内側出力軸部346を介してプロペラ32bは、B2方向に回転される。また、ドライブ軸345がB方向に回転した場合に、ベベルギヤ347aは、A4方向に回転されるように構成されている。この時、外側出力軸部347は、A4方向に回転されないように構成されており、プロペラ32aは、A4方向およびB2方向のいずれの方向にも回転されない。つまり、プロペラ32bのみがA4方向に回転される。そして、船舶1は、プロペラ32bがB2方向に回転されることによって、矢印BWD方向(後進方向)に航行される。
図8は、本発明の一実施形態による舶用推進システムの記憶部に記憶されている変速制御マップを示した図である。図9は、本発明の一実施形態による舶用推進システムの変速機構部の変速状態を説明するためのタイミングチャートである。図10は、本発明の一実施形態による舶用推進システムの変速機構部の変速を行わない期間について説明するためのタイミングチャートである。次に、図2、図3、図5および図8〜図10を参照して、本発明の一実施形態による舶用推進システムの変速制御マップについて説明する。
本実施形態による変速制御マップは、図8に示すように、エンジン31の回転数と、コントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度との関係により表わされている。すなわち、この変速制御マップの縦軸には、エンジン31の回転数が示されているとともに、横軸には、レバー部5aのレバー開度が示されている。また、変速制御マップは、低速の減速比を規定する低速領域R1と、高速の減速比を規定する高速領域R2と、低速領域R1と高速領域R2との境界に設けられる不感帯領域R3とを含んでいる。なお、低速領域R1、高速領域R2および不感帯領域R3は、それぞれ、本発明の「第1領域」、「第2領域」および「第3領域」の一例である。また、本実施形態による変速制御マップは、前進および後進動作に共通に用いられる。
また、変速制御マップの不感帯領域R3は、頻繁な変速の切り替えを防止するために設けられている。ユーザによるコントロールレバー部5のレバー部5aの操作に基づくレバー開度(アクセル開度信号)およびECU34から送信されるエンジン31の回転数(エンジン回転信号)の軌跡が不感帯領域R3に位置する場合には、減速比が変速されないように構成されている。この不感帯領域R3は、低速の減速比を規定する低速領域R1側に設けられたシフトダウン基準線Dと、高速の減速比を規定する高速領域R2側に設けられたシフトアップ基準線Uとの間に帯状に設けられている。また、不感帯領域R3は、コントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度が大きくなるのに従って、シフトダウン基準線Dのエンジン31の回転数と、シフトアップ基準線Uのエンジン31の回転数との差が大きくなるように構成されている。なお、シフトダウン基準線Dは、本発明の「第1基準線」の一例であり、シフトアップ基準線Uは、本発明の「第2基準線」の一例である。
具体的には、不感帯領域R3のアクセル開度が約0%の場合におけるシフトダウン基準線Dのエンジン31(図2参照)の回転数(約700rpm)と、シフトアップ基準線Uのエンジン31の回転数(約500rpm)との差は、約200rpmである一方で、不感帯領域R3のアクセル開度が約90%の場合におけるシフトダウン基準線Dのエンジン31の回転数(約4300rpm)と、シフトアップ基準線Uのエンジン31の回転数(約5200rpm)との差は、約900rpmである。また、この不感帯領域R3のアクセル開度が約90%の場合におけるシフトダウン基準線Dのエンジン31の回転数と、シフトアップ基準線Uのエンジン31の回転数との差(約900rpm)は、通常変速機構部33が低速の減速比から高速の減速比に変速された際に低下するエンジン31の回転数の大きさ(回転数の低下量)よりも大きい。
また、本実施形態では、制御部52は、図10に示すように、変速機構部33の変速を行った後の禁止期間(約1秒間)内には、変速を行わないように変速機構部33を制御するように、ECU34に対して変速ギヤ切替信号を送信しないように構成されている。すなわち、禁止期間(約1秒間)内に、ユーザによって、コントロールレバー部5のレバー部5aが前後方向に繰り返し回動された場合に、ユーザの操作に忠実に変速機構部33が複数回変更されるのを抑制するように構成されている。なお、図10では、低速の減速比から高速の減速比に変速された後の禁止期間を示している。
また、制御部52は、変速機構部33の変速を行った後の禁止期間(約1秒間)の終了時点における変速制御マップ上でのエンジン31の回転数(エンジン回転信号)とレバー部5aのレバー開度(アクセル開度信号)との状態に基づいて、変速機構部33を、低速の減速比および高速の減速比のいずれか一方の減速比に変速するように構成されている。この場合、制御部52は、変速機構部33の変速を行った後の禁止期間(約1秒間)の終了時点の状態に基づいて、変速機構部33が高速の減速比および低速の減速比のいずれの減速比で接続するかを判断するとともに、判断された減速比の変速ギヤ切替信号をECU34に送信する機能を有する。そして、ECU34は、制御部52により判断された変速ギヤ切替信号に基づいて、電磁油圧制御バルブ37に電磁油圧制御バルブ駆動信号を送信することにより、変速機構部33は、所定の減速比に変速される。なお、図10では、禁止期間の終了時点で低速の減速比に接続する場合を示している。
図11および図12は、本発明の一実施形態による舶用推進システムの変速機構部の変速状態を説明するためのタイミングチャートである。次に、図3、図5、図8、図9、図11および図12を参照して、本実施形態による変速制御マップを用いた変速動作について説明する。
本実施形態では、制御部52は、図2に示すように、エンジン31の回転数(エンジン回転信号)とコントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度とを用いて変速機構部33の減速比を変速する基準が表わされた変速制御マップ(図8参照)に基づいて、変速機構部33の減速比の変速を制御する。具体的には、制御部52は、変速制御マップ上における、ユーザによるコントロールレバー部5のレバー部5aの操作に基づくレバー開度(アクセル開度信号)およびECU34から送信されるエンジン31の回転数(エンジン回転信号)の軌跡P1〜P3に応じて、異なる変速制御を行う。
まず、図8の軌跡P1に示すように、ユーザがコントロールレバー部5のレバー部5aを、中立(ニュートラル)の位置(図3の実線のレバー部5aの位置)からゆっくりと全開位置(図3のFWD2)まで回動した場合の変速機構部33の変速動作について説明する。この場合、ユーザには、船体2をゆっくりと加速を行いたいという意図があると考えられる。
この場合、まず、図8に示す全閉開度の状態に至るまでの動作としては、図9に示すように、時間t1のニュートラル(中立)の状態からコントロールレバー部5のレバー部5aが、ユーザの操作により全閉位置(図3のFWD1)まで回動されて全閉開度(時間t2)の状態になる。そして、レバー部5aが図3のFWD1まで回動された時間t2の時点において、図9に示すように、変速機構部33は、低速の減速比に変速される。この場合、制御部52は、図2に示すように、変速機構部33を低速の減速比に変速させるための変速ギヤ切替信号をECU34に送信する。そして、変速ギヤ切替信号を受信したECU34は、下部変速部330の前後切替クラッチ部334(図5参照)のみが接続されるように電磁油圧制御バルブ37に電磁油圧制御バルブ駆動信号を送信する。これにより、電磁油圧制御バルブ37によりオイル通路336c(図5参照)のオイルの圧力が上昇されるのに伴ってクラッチプレート334b(図5参照)とクラッチプレート334d(図5参照)とが接触するようにピストン部334e(図5参照)が摺動されるので、前後切替クラッチ部334(図5参照)が接続状態になる。その結果、変速機構部33は、船舶1が低速の減速比により前進を行うことが可能なように変速される。
そして、図9に示すように、時間t2から時間t3にかけて、レバー部5aの位置が全閉位置(図3のFWD1)の状態を実質的に維持されている場合には、時間t3の時点において、変速機構部33は、高速の減速比に変速される。具体的には、制御部52は、図2に示すように、変速機構部33を高速の減速比に変速させるための変速ギヤ切替信号をECU34に送信する。そして、変速ギヤ切替信号を受信したECU34は、上部変速部310のクラッチ部313(図5参照)と下部変速部330の前後切替クラッチ部334(図5参照)との両方が接続されるように電磁油圧制御バルブ37に電磁油圧制御バルブ駆動信号を送信する。これにより、電磁油圧制御バルブ37によりオイル通路316a(図5参照)のオイルの圧力が上昇されるのに伴って、クラッチプレート313b(図5参照)とクラッチプレート313d(図5参照)とが接触するようにピストン部313e(図5参照)が摺動されるので、クラッチ部313(図5参照)が接続状態になる。なお、この時、前後切替クラッチ部334は、接続状態であるので、前後切替クラッチ部334の接続状態が維持されるように制御されている。その結果、変速機構部33は、船舶1が高速の減速比により前進を行うことが可能なように変速される。
その後、時間t3から時間t4にかけて、レバー部5aが、ユーザの操作により、全閉位置(図3のFWD1)から全開位置(図3のFWD2)まで回動される。この際、図8に示すように、レバー部5aのレバー開度とエンジン31の回転数とは、変速制御マップ上の軌跡P1のように変更される。この軌跡P1は、高速領域R2のみを移動するため、変速機構部33は、高速の減速比の状態のまま減速比が変速されない。これにより、船舶1は、エンジン31の回転数が大きくなるのを抑制しながら、前進加速することが可能となる。この場合、船舶1は、ゆっくり加速を行いたいというユーザの意図に沿った加速が行われる。
次に、図8の軌跡P2に示すように、コントロールレバー部5のレバー部5aを、中立(ニュートラル)の位置(図3の実線のレバー部5aの位置)から全開位置(図3のFWD2)まで急峻に回動した場合の変速機構部33の変速動作について説明する。この場合、ユーザには、船体2を急加速させたいという意図があると考えられる。
この場合、まず、図8に示す全閉開度の状態に至るまでの動作としては、図11に示すように、時間t1aのニュートラル(中立)の状態からコントロールレバー部5のレバー部5aが、ユーザの操作により、全開位置(図3のFWD2)まで急峻に回動されて全開開度(時間t3a)の状態になる。そして、レバー部5aが図3のFWD1まで回動された時間t2aの時点において、変速機構部33は、低速の減速比に変速される。その結果、変速機構部33は、船舶1が低速の減速比により前進を行うことが可能なように変速される。なお、この場合における詳細な説明は、図9に示した軌跡P1に対応するタイミングチャートの場合と同様なので、省略する。
そして、時間t2a(図11参照)から時間t4a(図11参照)にかけて、レバー部5aのレバー開度とエンジン31の回転数とは、図8に示すように、変速制御マップ上の軌跡P2のように変化する。この軌跡P2は、時間t2aから時間t4aにかけて、低速領域R1のみを移動するため、変速機構部33は、低速の減速比の状態のまま減速比が変速されない。その結果、変速機構部33は、船舶1が低速の減速比により前進を行うことが可能であるため、船舶1を急峻に加速させることが可能となる。
その後、時間t4a(図11参照)において、エンジン31の回転数が十分に上昇され、軌跡P2は、低速領域R1から不感帯領域R3を横切るとともに、シフトアップ基準線Uを跨ぐ。これにより、変速機構部33は、低速の減速比から高速の減速比に変速される。具体的には、制御部52は、図2に示すように、変速機構部33を高速の減速比に変速させるための変速ギヤ切替信号をECU34に送信する。そして、変速ギヤ切替信号を受信したECU34は、上部変速部310のクラッチ部313(図5参照)が接続されるように電磁油圧制御バルブ37に電磁油圧制御バルブ駆動信号を送信する。これにより、電磁油圧制御バルブ37によりオイル通路316a(図5参照)のオイルの圧力が上昇されるのに伴って、クラッチプレート313b(図5参照)とクラッチプレート313d(図5参照)とが接触するようにピストン部313e(図5参照)が摺動されるので、クラッチ部313(図5参照)が接続状態になる。なお、この時、前後切替クラッチ部334は、接続状態であるので、前後切替クラッチ部334の接続状態が維持されるように制御されている。上記のように、軌跡P2の場合には、低速の減速比により船体2を急峻に加速させた後、高速の減速比に変速されるので、船体2を急加速させたいというユーザの意図に沿った加速が行われる。
次に、図8の軌跡P3に示すように、ユーザがコントロールレバー部5のレバー部5aを、中立(ニュートラル)の位置(図3の実線のレバー部5aの位置)から全閉位置(図3のFWD1)と全開位置(図3のFWD2)との間の位置までゆっくりと回動し、その後、全閉位置と全開位置との間の位置から全開位置まで急峻に回動した場合の変速機構部33の変速動作について説明する。この場合、ユーザには、船体2をゆっくり加速させた後、急加速させたいという意図があると考えられる。
この場合、まず、図8に示す全閉開度の状態に至るまでの動作としては、図12に示すように、時間t1bのニュートラル(中立)の状態からコントロールレバー部5のレバー部5aが、ユーザの操作により、全閉位置(図3のFWD1)まで回動されて全閉開度(時間t2b)の状態になる。そして、レバー部5aが図3のFWD1まで回動された時間t2bの時点において、図12に示すように、変速機構部33は、低速の減速比に変速される。その結果、変速機構部33は、船舶1が低速の減速比により前進を行うことが可能なように変速される。なお、この場合における詳細な説明は、図9に示した軌跡P1に対応するタイミングチャートの場合と同様なので、省略する。
そして、時間t2bから時間t3bにかけて、レバー部5aの位置が全閉位置(図3のFWD1)の状態から少し全開位置側に向かって回動された程度である場合には、時間t3bの時点において、変速機構部33は、高速の減速比に変速される。これにより、変速機構部33は、船舶1が高速の減速比により前進を行うことが可能なように変速される。なお、この場合における詳細な説明は、図9に示した軌跡P1に対応するタイミングチャートの場合と同様なので、省略する。
その後、時間t3bから時間t4bにかけて、レバー部5aの位置が全閉位置と全開位置との間の全閉位置側の位置で、維持されている。この際、図8に示すように、レバー部5aのレバー開度とエンジン31の回転数とは、変速制御マップ上の軌跡P3に沿って変更される。この軌跡P3は、時間t3bから時間t5bにかけて高速領域R2のみを移動するため、変速機構部33は、高速の減速比の状態のまま減速比が変速されない。したがって、この状態では、船体2は、ゆっくりと加速される。
そして、図12に示すように、時間t4bから時間t6bにかけて、ユーザの操作により、レバー部5aの位置が全閉位置(図3のFWD1)と全開位置(図3のFWD2)との間の位置の状態から全開位置まで急峻に回動される。この場合、時間t5bにおいて、図8に示すように、軌跡P3は、高速領域R2から不感帯領域R3を横切るとともに、シフトダウン基準線Dを跨ぐ。これにより、変速機構部33は、高速の減速比から低速の減速比に変速される。具体的には、制御部52は、図2に示すように、変速機構部33を低速の減速比に変速させるための変速ギヤ切替信号をECU34に送信する。そして、変速ギヤ切替信号を受信したECU34は、上部変速部310のクラッチ部313(図5参照)が切断されるように電磁油圧制御バルブ37に電磁油圧制御バルブ駆動信号を送信する。これにより、電磁油圧制御バルブ37によりオイル通路316a(図5参照)のオイルの圧力が下降されるのに伴って、クラッチプレート313b(図5参照)とクラッチプレート313d(図5参照)とが離間するようにピストン部313e(図5参照)が摺動されるので、クラッチ部313(図5参照)が切断状態になる。なお、この時、前後切替クラッチ部334は、接続状態であるので、前後切替クラッチ部334の接続状態が維持されるように制御されている。その結果、変速機構部33は、船舶1が低速の減速比により前進を行うことが可能なように変速され、船舶1を急峻に加速させることが可能となる。
その後、時間t7bにおいて、エンジン31の回転数が十分に上昇され、軌跡P3は、低速領域R1から不感帯領域R3を横切るとともに、シフトアップ基準線Uを跨ぐ。これにより、変速機構部33は、低速の減速比から高速の減速比に変速される。その結果、変速機構部33は、船舶1が高速の減速比により前進を行うことが可能なように変速される。なお、この場合における詳細な説明は、図9に示した軌跡P1に対応するタイミングチャートの場合と同様なので、省略する。上記のように、軌跡P3の場合は、高速の減速比により、船体2がゆっくりと加速された後、低速の減速比により船体2が急峻に加速されるので、船体2をゆっくり加速させた後、急加速させたいというユーザの意図に沿った加速が行われる。
本実施形態では、上記のように、エンジン31により発生される駆動力を少なくとも低速の減速比と高速の減速比とに変速された状態でプロペラ32aおよび32bに伝達可能な変速機構部33を設ける。このように、変速機構部33を、低速の減速比に変速した状態でエンジン31により発生される駆動力をプロペラ32aおよび32bに伝達可能に構成することによって、低速度における加速度性能を向上させることができる。また、変速機構部33を、高速の減速比に変速された状態でエンジン31により発生される駆動力をプロペラ32aおよび32bに伝達可能に構成することによって、最高速度を大きくすることができる。その結果、加速度と最高速度との両方性能をユーザが所望する性能に近づけることができる。
また、本実施形態では、制御部52を、エンジン31の回転数(エンジン回転信号)とコントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度(アクセル開度信号)とを用いて変速機構部33の減速比を変速する基準が表わされた変速制御マップに基づいて、変速機構部33の減速比の変速を制御するように構成することによって、ユーザにより操作されるレバー部5aのレバー開度の大きさに対してエンジン31の回転数が小さい時、エンジン31の回転数を上昇させるために変速機構部33の減速比を低速の減速比に変速するように制御することができる。すなわち、ユーザが急加速することを意図して、コントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度を急激に大きくした場合に、加速度性能を向上させるために変速機構部33の減速比を低速の減速比に変速することにより、プロペラ32aおよび32bの回転数を迅速に大きくすることができる。これにより、ユーザの意図に従って船舶1(船体2)の加速を行うことができる。また、ユーザがゆっくりと加速することを意図して、コントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度をゆっくりと大きくした場合には、プロペラ32aおよび32bの回転数をゆっくりと大きくするために、変速機構部33の減速比を高速の減速比に変速するように制御することができる。これにより、エンジン31の回転数が大きくなるのを抑制することができるので、エンジン31により燃料が消費されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52を、変速制御マップ上における、ユーザによるコントロールレバー部5のレバー部5aの操作に基づくレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡P3が、変速制御マップの高速領域R2から不感帯領域R3を介して低速領域R1に入った場合に、低速の減速比に変速する制御を行うように構成している。これにより、変速機構部33が高速の減速比のままの場合と比べて、エンジン31の回転数を再上昇させることができるので、航行加速度が低下するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52を、変速制御マップ上における、ユーザによるコントロールレバー部5のレバー部5aの操作に基づくレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡P2またはP3が、変速制御マップの低速領域R1から不感帯領域R3を介して高速領域R2に入った場合に、高速の減速比に変速する制御を行うように構成している。これにより、変速機構部33が低速の減速比のままの場合と比べて、船舶1の最高速度を向上させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52を、コントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡が帯状の不感帯領域R3に位置している場合に、変速機構部33を変速しないように制御するように構成している。このように低速領域R1と高速領域R2との間に帯状の不感帯領域R3を設けることによって、レバー部5aのレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡が低速領域R1から高速領域R2側に少し移動しただけで、変速機構部33が低速の減速比から高速の減速比に変速されることがなくなる。また、レバー部5aのレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡が高速領域R2から低速領域R1側に少し移動しただけで、変速機構部33が高速の減速比から低速の減速比に変速されることがなくなる。つまり、レバー部5aのレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡が、低速領域R1または高速領域R2のいずれか一方の領域から外れた際に直ちに変速されてしまうのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52を、変速制御マップ上においてコントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡が不感帯領域R3のシフトダウン基準線Dを跨ぐことにより低速の減速比を規定する低速領域R1に入った場合に、変速機構部33を低速の減速比に変速する制御を行うように構成している。これにより、変速制御マップに基づいて、容易に、変速機構部33を低速の減速比に変速することができる。また、制御部52を、コントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度およびエンジン31の回転数の軌跡が不感帯領域R3のシフトアップ基準線Uを跨ぐことにより高速の減速比を規定する高速領域R2に入った場合に、変速機構部33を高速の減速比に変速する制御を行うように構成している。これにより、変速制御マップに基づいて、容易に、変速機構部を高速の減速比に変速することができる。
また、本実施形態では、上記のように、不感帯領域R3のシフトダウン基準線Dのエンジン31の回転数とシフトアップ基準線Uのエンジン31の回転数との差を、変速機構部33が低速の減速比から高速の減速比に変速された際に低下するエンジン31の回転数の大きさよりも大きくする。これにより、変速機構部33が低速の減速比から高速の減速比に変速された際のエンジン31の回転数の低下により回転数の軌跡がシフトダウン基準線Dを下回ることに起因して高速の減速比に変速された変速機構部33が、再度、低速の減速比に変速されてしまうのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、変速制御マップの不感帯領域R3を、コントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度が大きくなるのに従って、シフトダウン基準線Dのエンジン31の回転数とシフトアップ基準線Uのエンジン31の回転数との差が大きくなるように構成している。これにより、変速制御マップのエンジン31の回転数が大きく変化しやすいレバー開度(アクセル開度)が大きい部分においても、変速した際に変化するエンジン31の回転数が不感帯領域R3の回転数の幅を越えるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52を、ユーザによるコントロールレバー部5のレバー部5aの操作に基づいて、変速機構部33をニュートラルの状態から高速の減速比に変速する際に、一旦(約1秒間)、低速の減速比に変速した後、高速の減速比に変速する制御を行うように構成している。これにより、エンジン31が小さい回転数で回転されている状態で、ニュートラルから変速する(ギヤを入れる)ことができるので、変速された際のシフトショックを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52およびECU34を、変速機構部33の変速を行った後の禁止期間内(約1秒間)には、変速を行わないように変速機構部33を制御するように構成している。これにより、ユーザにより、短時間(たとえば、約1秒間)の間にレバー部5aが前後方向に繰り返し回動された場合にも、レバー部5aの動きに合わせて変速機構部33が変速されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52およびECU34を、所定の期間(約1秒間)の終了時点における変速制御マップ上でのエンジン31の回転数とコントロールレバー部5のレバー部5aのレバー開度との状態に基づいて、変速機構部33を低速の減速比および高速の減速比のいずれか一方の減速比により接続する制御を行うように構成している。これにより、所定の期間(約1秒間)の終了時点のユーザが所望する減速比により、変速機構部33を変速することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部52とECU34との間を通信するための共通LANケーブル7と、制御部52とECU34との間を通信するために共通LANケーブル7とは別個独立の共通LANケーブル8とを設けることによって、制御部52とECU34との間を通信する信号を分散することができるので、制御部52とECU34との間を通信するケーブルが1つである場合と異なり、ケーブルを介して通信されるデータ量が飽和するのを抑制することができる。また、制御部52とECU34との間を通信するために共通LANケーブル7とは別個独立の共通LANケーブル8を設けることによって、共通LANケーブル7および共通LANケーブル8のいずれか一方のケーブルに不具合が発生した場合に、共通LANケーブル7および共通LANケーブル8のいずれか他方のケーブルを用いて船舶1の航行に最低限必要なデータ通信を行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、変速制御マップが記憶された記憶部51を設けることによって、容易に、変速制御マップを備えた舶用推進システムを得ることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、舶用推進システムの一例としてエンジンおよびプロペラが船体の外側に配置された2機の船外機を備えた例を示したが、本発明はこれに限らず、エンジンが船体に固定されたスタンドライブ、エンジンおよびプロペラが船体に固定された船内機などを備えた他の舶用推進システムにも適用可能である。また、1機の船外機を備えた舶用推進システムにも適用可能である。
また、上記実施形態では、舶用推進システムの一例として2つのプロペラが設けられた船外機を備えた例について示したが、本発明はこれに限らず、1つ、または、3つ以上のプロペラが設けられた船外機などを備えた他の舶用推進システムにも適用可能である。
また、上記実施形態では、船舶が後進する際の変速制御マップを、船舶が前進する際の変速制御マップと同様の構成にした例について示したが、本発明はこれに限らず、前進専用の変速制御マップおよび後進専用の変速制御マップの2つの変速制御マップを設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、制御部とECUとを共通LANケーブルにより接続することにより通信可能に構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、制御部とECUとを無線通信により通信可能に構成してもよい。
また、上記実施形態では、シフト位置信号を、共通LANケーブル7を介してのみ制御部からECUに伝達するとともに、アクセル開度信号を、共通LANケーブル8を介してのみ制御部からECUに伝達するように制御した例について示したが、本発明はこれに限らず、シフト位置信号およびアクセル開度信号の両方の信号を同じ共通LANケーブルにより制御部からECUに伝達するように制御してもよい。また、シフト位置信号を、共通LANケーブル8を介してのみ制御部からECUに伝達するとともに、アクセル開度信号を、共通LANケーブル7を介してのみ制御部からECUに伝達するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、エンジンの回転数の一例としてクランク軸の回転数を用いたが、本発明はこれに限らず、たとえば、プロペラおよび出力軸など、エンジン内のクランク軸が回転するのに伴って回転するクランク軸以外の部材(軸)の回転数をエンジンの回転数として用いてもよい。
また、上記実施形態では、コントロールレバー部5のレバー部5aを操作することにより、電気的に(電子制御により)アクセル開度および変速機構部33の減速比などを制御するように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、レバー部5aにワイヤを接続するとともに、レバー部5aの開度をワイヤの操作量および操作方向として船外機3に機械的に伝達するように構成することにより、アクセル開度および変速機構部33の減速比を制御するようにしてもよい。なお、この場合、ワイヤの操作量および操作方向は、レバー部5aと船外機3内のECU34との間で電気信号に変換されるとともに、変換された電気信号は、ECU34に伝達される。また、この場合、変速制御マップは、船外機3内に設けられたECU34に記憶されるとともに、ECU34から変速制御部33を制御するための制御信号(たとえば電磁油圧制御バルブ駆動信号)が出力される。
また、上記実施形態では、コントロールレバー部5に内蔵した記憶部51に、変速制御マップが記憶されるとともに、変速機構部33に対して減速比を変速するための制御信号は、コントロールレバー部5に内蔵された制御部52から出力されるように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、船外機3内に設けたECU34に変速制御マップを記憶させてもよい。また、この場合には、変速制御マップが記憶されたECU34から制御信号を出力するように構成してもよい。なお、この場合、エンジンを制御するECU34とは別のECUを船外機内に設け、このECUに変速制御マップを記憶させたり、このECUから制御信号を出力するようにしてもよい。また、本変形例は、コントロールレバー部5のレバー部5aが上記のようにワイヤにより機械的にアクセル開度および変速機構部33の減速比などを制御する構成の場合にも、適用可能である。
また、上記実施形態では、前進、中立、後進の切り替えをECUによって電気的に制御された下部変速部330によって行うようにした例を示したが、本発明はこれに限らず、前進、中立、後進の切り替えを、上記特許文献1に開示された船外機のように、一対のベベルギヤとドッグクラッチとから構成される機械式の前後進切換機構によって行うようにしてもよい。