JP5235693B2 - 電動パワーステアリング制御装置 - Google Patents

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本発明は、モータにより操舵力を補助する電動パワーステアリング制御装置に関するものである。
一般に、電動パワーステアリング制御装置は、操舵輪と操舵ホイールとを連結する操舵軸にギアを介して接続されたモータに対して、運転者がステアリングホイールを回転させたときに生じる操舵トルクを検出し、操舵トルクに応じて補償演算部でモータに対する電流指令を演算する。また電流指令に一致するようにモータの電流を制御してトルクを発生させることで、運転者による操舵を補助するようにモータトルクを発生させている。
この補償演算部における電流指令の演算においては、車両の安定性、操舵感などを損なわないような目的から、ゲインや各種のフィルタなどを用いて電流指令の演算を行っている。その目的のために、車両速度(車速)やトルク測定値の振幅に応じてゲインやフィルタの特性を変更するといった演算も一般的に行われている。
特開平7−309250号公報 特開2002−234454号公報
特許文献1に開示されている電動パワーステアリング制御装置は、操舵トルクの検出値に対して、アシスト曲線と呼ぶ、操舵トルクの大きさや車速に応じて変化する非線形なゲインを作用させ、その結果に適応トルクフィルタと呼ぶフィルタ演算を行った結果を電流指令として出力する。またアシスト曲線の入出力の変化比に応じて、すなわち操舵トルク検出値や車速に応じて上記適応フィルタの極を変更することで、操舵トルクから電流指令までの伝達関数における極や定常ゲイン(周波数0のゲイン)を変化させている。これによって、制御系が安定な範囲で、車速や操舵トルクの大きさに応じて好適な操舵感を得るように構成している。
しかしながら、モータのトルクリプルなど、モータの回転速度すなわち操舵速度に応じた操舵感については何も考慮していないため、トルクリプルなどの外乱がステアリングホイールに伝わる影響を十分に低減することができなく、操舵感の悪化につながるという問題があった。
特許文献2に開示されている電動パワーステアリング制御装置は、電流指令あるいは操舵トルク検出値にローパスフィルタを作用させ、すなわち、操舵トルク検出値から電流指令までの制御演算において直列にローパスフィルタを挿入し、操舵トルク検出値に含まれる検出ノイズの影響を電流指令から除去するように構成している。また、このローパスフィルタの極を車速や操舵速度に応じて変更している。
しかしながら、特許文献2による技術においては、ローパスフィルタは位相を遅らせる特性となるため、制御系の安定性を保つためには制御器のゲイン、すなわちアシストゲインを十分に大きくできない、またその結果、トルクリプル等の外乱の影響を十分に低減できないという問題があった。更に、このようにローパスフィルタを用いて高周波数成分を遮断するような手法では、遮断した周波数成分の制御効果を低下させるため、検出ノイズの影響を低減することは可能なものの、遮断した周波数におけるトルクリプルなどの外乱がステアリングホイールへ伝わる影響を低減することはできないという問題があった。
つまり、従来のパワーステアリング制御装置においては、操舵速度に応じて発生するトルクリプルなどの外乱の影響を十分に抑制できないため、操舵速度に応じた操舵感を十分に向上することができないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操舵速度に応じた操舵感を向上させた電動パワーステアリング制御装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、運転者が加えた操舵トルクに対してモータによる補助を行う電動パワーステアリング制御装置において、操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、操舵速度を検出する操舵速度検出部と、少なくとも1つの極である低域極および少なくとも2つの零点である中間零点を有し、前記低域極の絶対値に対応する極周波数以下の低周波数領域においてゲインが平坦で、前記極周波数から前記2つの中間零点の相乗平均に対応する零点周波数までの中周波数領域では周波数の増大に伴ってゲインが低下し、前記零点周波数と前記零点周波数の少なくとも3倍までであってゲイン交差周波数を含む高周波数領域では周波数の増大に伴ってゲインが増大する周波数応答特性を有する伝達関数の演算を前記操舵トルク検出器が検出した操舵トルクに対して行うことによって電流指令を出力する補償演算部と、検出時の前記操舵速度の大きさの変化に応じて前記低域極または前記2つの中間零点の特性を変化させる伝達関数変更部と、前記電流指令に前記モータの電流が一致するよう前記モータの制御を行う電流制御部と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、操舵速度に応じて伝達関数の極または零点を変更するように構成したので、操舵速度に応じて変動するトルクリプル等の外乱がステアリングホイールへ及ぼす影響を操舵速度に応じて低減することができるので、操舵速度に応じた操舵感を向上させた電動パワーステアリング制御装置を得ることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明にかかる電動パワーステアリング制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置を示す構成図である。ステアリングホイール1に連結したステアリング軸2の回転に応じて左右の操舵輪6が転舵される。ステアリング軸2には操舵トルク検出器3が配置され、ステアリング軸2に作用する操舵トルクを操舵トルク信号τsとして検出する。モータ4は減速機構5を介してステアリング軸2に連結しており、モータ4が発生するモータトルクτmをステアリング軸2に付与することができる。操舵速度検出部7はモータ回転角度やモータ電圧等の検出値に基づいてステアリング軸2の回転速度すなわち操舵速度の検出を行う。制御ユニット8は操舵トルク検出器3で検出した操舵トルク信号τsと操舵速度検出器7で検出した操舵速度に基づいてモータ4の電流を制御した結果としてモータ4に電流Imを供給する。
次に、制御ユニット8の要部とその動作の概略について図2を用いて説明する。制御ユニット8、補償演算部9、電流制御部10、および制御定数変更部120を備えている。制御定数変更部(伝達関数変更部)120は操舵速度検出部7で検出した操舵速度に基づいて、補償演算部9の制御定数の設定値を演算する。補償演算部9は操舵トルク検出器3で検出した操舵トルク信号τsと車速検出器(図示せず)で検出した車速、および制御定数変更部120で設定した制御定数に基づいて、後述する演算を行った結果として電流指令Irを出力する。電流制御部10は補償演算部9で演算した電流指令Irにモータ4の電流Imが一致するように制御を行う。なお、実際の補償演算部9へ入力する操舵トルク信号τsは、物理的な操舵トルクを操舵トルク検出器3で検出した信号、またそれに補正を加えた信号である場合もあるが、以下では補償演算部9への入力を単に操舵トルクτsと記述する。
次に、補償演算部9の演算動作について説明する。補償演算部9は操舵トルクτsを低域増幅部102に入力する。低域増幅部102は、一般にルックアップテーブルの読み出し等で決定するアシスト曲線と呼ばれる関数と、操舵速度に応じて後述のように制御定数変更部120で設定した制御定数とに基づいて操舵トルクτsを増幅した信号を出力する。
低域フィルタ101は低域増幅部102の出力に対してローパスフィルタの演算を行った結果を低域補償トルクτlとして出力する。低域フィルタ101の周波数応答特性は、操舵速度に応じて後述のように決定された制御定数である低域フィルタ周波数ωl[rad/s]より低い周波数でゲインが概ね1で平坦な特性、低域フィルタ周波数ωlより高周波数領域でゲインが低下する特性を持つ。なお、ここで言う平坦とは、定常的なゲインとの差が小さな値(例えば6[dB])以下でほぼ一定であることを指す。
ここで、前記のようにアシスト曲線を用いた低域増幅部102において、その増幅比は操舵トルクτsや車速に応じて変化する非線形なものが用いられるが、説明の簡単化のために単に低域ゲインKl1の比率で増幅するものとして説明する。操舵トルクτsに対する低域補償トルクτlの伝達関数Gl1(s)は次式のようにゲインKl1とローパスフィルタを乗じた特性を持つ。
Gl1(s)=Kl1・ωl/(s+ωl) (式1)
また、補償演算部9は操舵トルクτsを比例補償部103に入力し、比例補償部103は入力に対して、後述のように制御定数変更部120で決定された制御定数である比例ゲインKpで増幅する演算を行い、その結果を比例補償トルクτpとして出力する。比例補償部103の伝達関数Gp(s)は次式となる。
Gp(s)=Kp (式2)
また、補償演算部9は操舵トルクτsを微分補償部104に入力し、微分あるいは擬似微分演算と所定の制御定数である微分ゲインKdを乗じる演算を行い、微分補償トルクτhとして出力する。説明の簡単化のために上記の演算において純粋な微分を用いたとすると、微分補償部104の伝達関数Gd(s)は次式となる。
Gd(s)=Kd・s (式3)
また、補償演算部9の内部において加算器105は低域補償トルクτlと比例補償トルクτpと微分補償トルクτhとを加算した結果をノイズフィルタ106に入力する。
ノイズフィルタ106はその入力に対し、所定の制御定数であるノイズ遮断周波数ωn[rad/s]より高い周波数成分を遮断するような、次式のFn(s)で表すローパスフィルタ演算を行い、電流指令Irを出力する。
Fn(s)=1/(s/ωn+1) (式4)
上記の結果、補償演算部9は、その全体で次式の伝達関数C(s)で表す演算を行っている。
C(s)=Fn(s)・{Gl1(s)+Gp(s)+Gd(s)} (式5)
また上記(式5)は次の(式6)〜(式9)に変換される。
C(s)={b2・s^2+b1・s+g0・ωl}/{(s+ωl)・(s/ωn+1)} (式6)
g0=Kp+Kl1 (式7)
b1=Kp+Kd・ωl (式8)
b2=Kd (式9)
ここで、仮に検出ノイズ等が無視できると想定した場合、ノイズ除去を目的としたノイズフィルタ106は用いなくてもよい、すなわちノイズフィルタの極ωnは無限大として無視できるため、本実施の形態1における補償演算部9は本質的に、絶対値がωlである1つの極(後述の低域極)と、2次の分子多項式の根である2つの零点(後述の中間零点)を持つ伝達関数の演算を行っている。
次に、補償演算部9に望まれる特性、特に補償演算部9の伝達関数C(s)と、それを用いた結果である制御系の閉ループ特性との対応について図3を用いて説明を行う。なお、ここでは説明の簡単化のために操舵速度検出部7および制御定数変更部120は省略して説明する。
まず電動パワーステアリング制御装置全体の動特性について説明する。図3は図1および図2に示した電動パワーステアリング制御装置の動特性を表すブロック図であり、以下においては電動パワーステアリング制御装置の動特性を図1に示した構成と対応付けて説明する。
図3において、ステアリングホイール1の角度であるハンドル角度θhを運転者が回転させることで、ステアリング軸2が弾性変形を行い操舵トルクτsを発生する。すなわち、ハンドル角度θhと操舵角度(すなわち操舵輪6およびモータ4の回転角度)θmとの差分を表す角度差分器11によって相対角度θeが生じ、相対角度θeに対して弾性定数部12でステアリング軸2の弾性定数Ksが乗じられることで操舵トルクτsが発生する。また操舵トルクτsはステアリングホイール1へと伝達されるとともに、操舵トルク検出器3(図示せず)で操舵トルクτsを検出して制御ユニット8に入力される。制御ユニット8において演算した電流指令Irに一致するようなモータ電流Imがモータ4へと供給される。ここで、簡単化のために電流指令Irとモータ電流Imは一致するとして説明すると、制御ユニット8の伝達関数は補償演算部9の伝達関数C(s)となる。制御ユニット8からモータ4へと供給されるモータ電流Imによってモータ4でモータトルクτmが発生する。すなわちモータ電流Imに対してトルク定数部13でトルク定数Ktを乗じてモータトルクτmが発生する。次に、モータ4、減速機構5、ステアリング軸2、操舵輪6等から構成される操舵機構に対して、モータトルクτmおよび操舵トルクτsが加わり、また路面反力τdが逆方向に加わる。すなわち、トルク加算器14によってモータトルクτmならびに操舵トルクτsの加算および外乱トルクである路面反力τdの減算が行われた結果としてのトルクが操舵機構慣性部15に作用し、操舵機構慣性部15が駆動された結果として操舵角度θmが出力される。
次に、制御入力である電流指令Irあるいはモータ電流Imから検出値である操舵トルクτsまでの特性、すなわち制御対象16の特性について、簡易なモデルを用いて説明する。制御対象16の伝達関数をP(s)と記述すると、簡易なP(s)のモデルは次式で表される。なお、数式上の制御対象P(s)の出力の定義は、常用的な古典制御としての説明の便宜上、図3における操舵トルクτsと正負の符号を反転させて記述する。
P(s)=Kt・Ks/(J・s^2+D・s+Ks) (式10)
上記(式10)において、Jは操舵機構慣性部15の慣性モーメントであり、Dはステアリング軸2における変形の粘性や摩擦等の影響を表す定数で相対的に小さいものである。(式10)より、制御対象P(s)は2次共振系として表され、その共振周波数(概ね10[Hz]程度)より数分の1以下の低周波数の領域では、ゲインが周波数に対して平坦な特性となる。また共振周波数より数倍以上の高周波数の領域では、概ね2階積分系の特性に近似され、周波数増大に対してゲインが低下するとともに、位相が概ね−180[deg]で一定な特性になる。
ここで、電動パワーステアリング制御装置の主要な目的は運転者による操舵で発生する操舵トルクτsを補助することであるが、操舵に対抗する力が主に路面反力であることを考慮すると、電動パワーステアリング制御装置の目的は、図3における路面反力τdから操舵トルクτsへ伝達する力を望ましい特性で低減することと考えることができる。そこで、路面反力τdから操舵トルクτsまでの伝達関数を操舵感度Sd(s)と呼ぶことにする。
一方、この操舵感度Sd(s)は、路面反力が操舵トルクへ及ぼす影響を表すだけでなく、例えばモータ4で発生するトルクリプルなど、ステアリング軸2に加わる一般的な外乱トルクが操舵トルクへ与える影響を表している。したがって、運転者の操舵感への影響も考慮する必要があるものの、一般には操舵感度Sd(s)のゲインはなるべく広い周波数領域に渡って小さくしたいものである。
制御ユニット8すなわち補償演算部9の伝達関数C(s)および制御対象P(s)からなる開ループの伝達関数を次式のL(s)で表すと、操舵感度Sd(s)は(式12)で表される。
L(s)=C(s)・P(s) (式11)
Sd(s)=P(s)/(1+L(s)) (式12)
上記(式12)における分母の効果より、開ループ伝達関数L(s)のゲインが1(すなわち0[dB])より小さければ分母は1に近づき、操舵感度Sd(s)のゲイン低減効果を十分に得ることはできないことが解る。したがって、L(s)のゲインが0[dB]と交差するゲイン交差周波数(以下では単に交差周波数と呼ぶ)は制御系の性能を表す大きな指標となる。また一般に制御帯域と呼ばれる周波数もこの交差周波数に対応する。
ここで、上述のように、制御対象P(s)が共振周波数より低い周波数でゲインが平坦な特性となり、その定常ゲインはトルク定数Ktとなる。モータ4にてステアリング軸2で発生する操舵トルクよりも大きなモータトルクで補助を行う場合、すなわち補償演算部9の伝達関数C(s)のゲインを1/Ktより大きくする、すなわち操舵トルクτsからモータトルクτmまでのゲインを1よりも大きくすると、交差周波数は共振周波数より大きく選ぶ必要があることは容易に理解できる。言い換えると、弾性定数Ksがステアリング軸に与える動的な影響を表す共振周波数は、操舵制御装置の制御帯域に比べて低い周波数領域になるよう、交差周波数を高い周波数に選ぶ必要がある。
具体的には、制御対象P(s)の共振周波数は概ね10[Hz]程度であり、交差周波数は概ね30[Hz]よりも大きな値に選ばれる。その結果、通常選ばれる交差周波数付近においては、制御対象P(s)の位相は−180[deg]に近い値となる。
次に、制御系の安定性に大きく関係する交差周波数付近において制御系に望まれる特性について説明する。交差周波数付近の周波数領域を高周波数領域と呼ぶことにする。上記のような交差周波数の位相が−180[deg]に近い制御対象に対し、ステアリング軸2の弾性定数Ksと同様な比例要素だけで制御を行うと、バネと同様な特性で振動的になり安定性が劣化する。また実際には、制御ユニット8と制御対象16とから構成される制御ループに、電流制御部10の制御遅れや操舵トルク検出器3における検出遅れ等、簡易モデルに対するモデル化誤差に起因した位相遅れが存在するため、制御系は不安定に発散する。このようなフィードバック制御系においては、交差周波数において、L(s)の位相が−180[deg]に比べて位相余裕と呼ばれる分だけ進んでいる必要がある。なお、この位相余裕は通常は30[deg]程度以上確保する必要がある。
上記の交差周波数付近の特性は、後述する運転者の操舵感に大きく影響する低周波数領域に比べて高い周波数領域の特性を決定づけるが、上記のように開ループ伝達関数L(s)の位相を−180[deg]より進ませるためには、制御対象P(s)の位相が−180[deg]に近いため、制御ユニット8すなわち補償演算部9の伝達関数C(s)を0[deg]より進める必要がある。したがって、補償演算部9の伝達関数C(s)は、交差周波数付近の高周波数領域において微分、あるいは擬似微分に近い特性にする必要がある。その結果、交差周波数付近の高周波数領域において、補償演算部9の伝達関数のゲインは、周波数の増加に対して増大するような特性にする必要がある。
ただし実際には、信号量子化誤差等や微分によって励起するノイズ除去のためのノイズフィルタ106による位相遅れや、上述のように、モデル化誤差に起因した位相遅れが存在することにより、実現可能な交差周波数には上限があり、その限界は、制御対象16や制御ユニット8のハードウエア的な性能への依存性が高い。
次に、運転者の操舵感に大きく影響する低周波数領域の望ましい特性について説明する。一般に1Hz〜数Hzより低い低周波数領域では、路面反力の影響を自然に運転者すなわちステアリングホイール1へと伝達する必要がある。そのためには、上述の操舵感度Sd(s)が、低周波数領域で一定、すなわちゲインの周波数特性が平坦である必要がある。
ここで、交差周波数より十分に低い低周波数領域では、通常は開ループ伝達関数L(s)のゲインが0[dB]より十分に大きい。すなわち次式で表される。
|L|>>1 (式13)
(式11)、(式12)、(式13)より、低周波数領域の操舵感度Sd(s)は次式で近似される。
|Sd|≒|P|/|L|=1/|C| (式14)
(式14)より、(式13)が成り立つ低周波数領域においては、操舵感度Sd(s)のゲイン特性は補償演算部9の伝達関数C(s)のゲインの逆数に近似されることがわかる。したがって、低周波数領域において操舵感度Sd(s)のゲインを周波数に対して平坦に実現するためには、補償演算部9の伝達関数C(s)のゲインを周波数に対して平坦にする必要があることが理解できる。また一般的には、特に車速が小さい場合など、操舵トルクτsに対してモータトルクτmにより補助を行う比率であるアシスト比を大きくすることが望まれる。すなわち、伝達関数C(s)および開ループ伝達関数L(s)の定常ゲインを大きくすることで、操舵感度Sd(s)の定常ゲインを小さくすることが望まれる。
次に、上記の低周波数領域と高周波数領域(交差周波数近辺の領域)との中間にあたる中周波数領域の望ましい特性について説明する。上述のように実現可能な交差周波数には限界がある。また、上述のように、一般的には開ループ伝達関数L(s)のゲインを大きくすることが望まれる。ここで、交差周波数を、上記の操舵感に大きく影響する低周波数領域の数倍以上に大きくした場合において、中周波数領域においては、補償演算部9の伝達関数C(s)のゲインを、周波数の増大に対してゲインが減少するような特性(周波数の減少に対してゲインが増大するような特性)にすれば、交差周波数付近のゲインを大きくできなくても低周波数領域のゲインを増大させることができる。このような特性を実現するためには、補償演算部9の伝達関数C(s)を、この中周波数領域において積分特性に近似されるような特性にすればよい。すなわち、補償演算部9の伝達関数C(s)において、ゲインが平坦な特性が望まれる低周波数領域と中周波数領域との間の周波数に対応する極を持たせることで実現でき、この極を低域極、その絶対値に対応する周波数を単に極周波数と呼ぶことにする。
上記のように、中周波数領域において周波数の増大に対してゲインが減少するような積分特性に近似される特性にするとともに、交差周波数付近の高周波数領域において、周波数の増大に対してゲインが増大する微分特性に近似される特性を実現するためには、中周波数領域と高周波数領域との間に2つの零点が必要であることは容易に理解できる。この2つの零点を中間零点、また中間零点に対応する周波数を単に零点周波数と呼ぶことにする。なお、上記2つの零点は、近接した実数値、あるいは共役複素数として選ばれるものであり、零点周波数と呼ぶ周波数は、2つの零点が共役複素数の場合は各零点の絶対値(2つとも同じ値)とも同じ値である。
次に、上述した補償演算部9に望まれる特性と本実施の形態1による補償演算部9の構成との対応について説明を行う。本実施の形態1による補償演算部9の伝達関数C(s)は上記の(式6)で示され、絶対値がωlの低域極を有するとともに、その極周波数ωlより低い低周波数領域においては、C(s)のゲインが周波数の増大に対して平坦な特性を持つ。また補償演算部9の伝達関数C(s)は2次の分子多項式を持つため2つの零点すなわち中間零点を有し、(g0・ωl)/b2の平方根が各零点の相乗平均すなわち上述の零点周波数に相当する。また極周波数ωlから零点周波数までの中周波数領域では、周波数の増大に対してゲインが低下する特性に、零点周波数以上の高周波数領域では、周波数の増大に対してゲインが増大する特性となる。ここで、本実施の形態1による補償演算部9は(式6)に示したように周波数がωnであるノイズフィルタ106の極を更に有しているが、該極は、交差周波数すなわち高周波数領域での位相余裕を十分に確保するために、零点周波数の3倍以上の値に設定される。図4は補償演算部9の伝達関数C(s)の周波数応答を説明する図である。該図4に関する説明は、後ほど詳しく行う。
このように、本実施の形態1における補償演算部9は、ノイズフィルタ106によるノイズ低減効果を加えた上で、補償演算部9の伝達関数C(s)として望ましい形を実現する必要最小限の一構成例であることが分かる。
次に、上記の補償演算部9における演算で用いる定数、すなわち制御定数変更部120で設定される制御定数について説明する。微分ゲインKdおよびノイズフィルタ周波数ωnの設定は、上述のようにハードウエア的条件で決まる要因が大きいため、ここでは固定したものとして説明する。また、電動パワーステアリング制御装置の特性として一般にはアシスト比を大きくすることが要求されるため、低域ゲインKl1すなわち(式6)におけるg0を大きく設定したものとして説明する。
補償演算部9の制御定数として異なる値を設定した3つの場合について、図4に補償演算部9の伝達関数C(s)の周波数応答を、図5に開ループ伝達関数L(s)の周波数応答を、図6に操舵感度Sd(s)のゲインの周波数応答を示す。これらのシミュレーションに用いた制御対象P(s)は、例として共振周波数が8[Hz]のものを用いている。また、制御対象P(s)に含まれる位相遅れを考慮して交差周波数が約40[Hz]になるように設定されている。各図において、実線は標準的な設定を示し、以下では標準設定と呼ぶ。また、各図において鎖線は標準設定に比べて制御定数である低域フィルタ101の低域フィルタ周波数ωlだけを大きく設定したものを示し、以下では低域強調設定と呼ぶ。また、各図における破線は標準設定に比べて(式6)におけるb1だけを大きく設定することで中間零点の特性を変化させたもの、すなわち(式8)に基づいて比例補償部103の比例ゲインKpを大きくするとともに、(式6)におけるg0が一定になるように、(式7)に基づいて低域増幅部102の低域ゲインKl1を小さくしたものを示し、以下では中間強調設定と呼ぶ。
ここで、図4、図5、図6に実線で示した標準設定は、図5に示した開ループ伝達関数L(s)において交差周波数での位相余裕が小さくなり過ぎず、また図6に示した操舵感度Sd(s)のゲインが特定の周波数で大きくなり過ぎずに滑らかに変化するよう、各制御定数を決定したものである。
一方、鎖線で示した低域強調設定では、図4に示すように、補償演算部9の伝達関数C(s)における極周波数(白抜き菱形)を、標準設定の極周波数(黒塗り菱形)よりも大きくしている。その結果、図4に示すよう比較的低い周波数領域(1[Hz]〜10[Hz]程度)において、標準設定に比較して補償演算部9の伝達関数C(s)のゲインが大きくなり、その周波数領域において、図6に示した操舵感度Sd(s)のゲインが低減されていることが分かる。
また破線で示した中間強調設定では、図4に示すように、零点周波数の前後の周波数領域(3[Hz]〜30[Hz])において、補償演算部9の伝達関数C(s)のゲイン(白抜き三角)が標準設定のゲイン(黒塗り三角)より大きくなるとともに、図6に示すように操舵感度Sd(s)のゲインが低減されていることが分かる。
ここで、図6に示した操舵感度Sd(s)の周波数応答ゲインは、Bodeの感度積分の定理に基づいて、制御定数を変更しても操舵感度Sd(s)のゲインを全周波数に渡って積分した値は不変であることが知られている。すなわち、ある周波数の操舵感度Sd(s)を低減すると、他の周波数の操舵感度Sd(s)が大きくなることが知られている。上述の図6の例においては、鎖線で示した低域強調設定とした場合は、操舵感度Sd(s)が上述のように比較的低周波数の領域で低減されているものの、交差周波数より少し低い周波数である20[Hz]付近にて標準設定より大きくなっていることが分かる。また、点線で示した中間強調設定においては、操舵感度Sd(s)が上述のように零点周波数近辺では低減されているものの、交差周波数である40[Hz]付近において標準設定より大きくなっていることが分かる。これらの結果、操舵感度Sd(s)のゲインは、図6に示した第1の境界周波数より低い周波数領域においては、低域強調設定が最も小さく、第1の境界周波数から第2の境界周波数の領域においては、中間強調設定が最も小さく、第2の境界周波数より高い周波数領域においては標準設定が最も小さい結果となっていることが分かる。
次に、本実施の形態1による制御定数変更部120の動作について説明する。制御定数変更部120はモータのトルクリプルなど、モータの回転速度すなわち操舵速度に応じた周波数の外乱が操舵感に及ぼす影響を低減する目的のものである。概略としては、モータのトルクリプルの周波数(リプル周波数)はモータの回転速度に比例した周波数で発生するため、リプル周波数に応じて、すなわち操舵速度に応じて補償演算部9の制御定数の変更を行うことで、リプル周波数における操舵感度Sd(s)をより低減し、トルクリプルが操舵トルクに伝わる影響を低減するものである。
次に、制御定数変更部120の動作の詳細について説明する。制御定数変更部120は操舵速度検出部7で検出した操舵速度に基づき、操舵速度に比例したリプル周波数が図6に示した第1の境界周波数より低い場合には、補償演算部9の制御定数を上述の低域強調設定として設定する。すなわち、低域フィルタ101の極周波数ωlを標準設定に比べて大きい値に設定する。
次に、操舵速度が大きくなり、リプル周波数が図6の第1の境界周波数と第2の境界周波数の間にある場合には、制御定数変更部120は補償演算部9の制御定数を上述の中間強調設定として設定する。すなわち、リプル周波数が第1の境界周波数より大きくなるよう操舵速度が大きくなるに従って極周波数ωlを小さくして標準設定の値にする。これと同時に(式6)におけるb1が大きくなるように補償演算部9の制御定数を設定する。具体的な動作としては、比例補償部103における比例ゲインKpを大きくするとともに、KpとKl1の和が同じになるように低域増幅部102における低域ゲインKl1を小さくする。ここで、KpとKl1との和が同じようにしているのは、補償演算部9の伝達関数C(s)の定常ゲインすなわち(式6)におけるg0が変化しないようにし、定常的なアシスト比を一定にすることで操舵感を保つためである。
ここで、上記のリプル周波数が第1の境界周波数より大きく変化したときの制御定数変更部120の動作は、極周波数ωlが小さくなるよう、対応する低域極を変化させると同時に、(式6)におけるb1を大きく設定することで分子多項式の根すなわち中間零点の特性を変化させている。分母分子を併せた伝達関数の表現の自由度を考慮し、また安定性に大きく関係する微分ゲインKdすなわちb2はなるべく大きく設定することを考慮した上で前述の中間零点の変化を言い換えると、2つの零点(中間零点)を根として持つ2次多項式、すなわちC(s)の分子多項式における1次係数b1の2次係数b2に対する比を大きくしている。
次に、操舵速度が更に大きくなり、リプル周波数が図5における第2の境界周波数より大きくなった場合には、制御定数変更部120は補償演算部9の制御定数を上述の標準設定として設定する。すなわち、リプル周波数が第1の境界周波数と第2の境界周波数との間にあるときに比べて、(式6)におけるb1が小さくなるように補償演算部9の制御定数を設定する。具体的には、比例補償部103における比例ゲインKpを小さくするとともに、KpとKl1の和が同じになるように低域増幅部102における低域ゲインKl1を大きくする。言い換えると、リプル周波数が第2の境界周波数より大きくなるよう操舵速度が増大するに従い、零点周波数に対応する2つの零点(中間零点)を根として持つ2次多項式における1次係数b1の2次係数b2に対する比を小さくするよう中間零点の特性を変更する。
上記において、リプル周波数が第1の境界周波数および第2の境界周波数の前後に変化する場合の動作は、制御定数ωl、Kp、Kl1が連続的に変化するように徐々に変化させてもよい。また、リプル周波数が第1の境界周波数および第2の境界周波数を越える時点で不連続に制御定数を変更してもよいが、Kpを不連続に変化させると電流指令Irが急峻に変化してショックを生じてしまう。それを防ぐためにKpを切り換える時点において、電流指令Irが急変しないよう、言い換えると加算器105の出力が連続的になるよう、補償演算部9における低域フィルタ101の状態変数の値を不連続に変更することで、電流指令Irが急峻に変化して操舵感に悪影響を与えることなく制御定数を切り換えることができる。
上記のように制御定数変更部120が動作することにより、補償演算部9の伝達関数C(s)は、リプル周波数が第1の境界周波数より小さい場合は低域強調設定、第1の境界周波数と第2の境界周波数の間にあるときは中間強調設定、第2の境界周波数より大きい場合は標準設定に変更され、操舵感度Sd(s)のゲインは、リプル周波数の変化に対して常に図6に示した最も小さいものとなる。したがって、操舵速度に応じて周波数が変化するトルクリプルのステアリングホイールへの伝達を操舵速度に応じて低減することができ、操舵速度に応じた操舵感を向上することが可能になる。
上記の説明では、低域強調設定、中間強調設定、標準設定の3つの異なる設定に変更するように記載したが、低域強調設定と標準設定の2つの組合せだけでも同様な効果が得られることも容易に理解できる。この場合、図6に示した第3の境界周波数よりリプル周波数が低い操舵速度においては上述の低域強調設定を設定し、それより高い周波数においては標準設定を設定すればよい。またこの場合の制御定数変更部120の動作は、操舵速度の増大に従って、低域フィルタ101の極周波数ωlが小さくなるよう、対応する低域極の特性を変更する。
また、中間強調設定と標準設定の2つの組合せだけでも同様な効果が得られることも容易に理解できる。この場合、図6に示した第2の境界周波数よりリプル周波数が低い操舵速度においては上述の中間強調設定を設定し、それより高い周波数においては標準設定を設定すればよい。またこの場合は、操舵速度の増大に応じてb1を小さく設定する。具体的には、操舵速度の増大に応じて比例補償部103の比例ゲインKpを小さくするとともに、Kpとの和が一定になるよう、低域増幅部102の低域ゲインKl1を大きく設定する。言い換えると、2つの零点(中間零点)を根に持つ2次多項式における1次係数b1の2次係数b2に対する比を小さく設定するよう中間零点の特性を変更する。
上記の説明では、操舵速度に応じた補償演算部9の制御定数の設定についてのみ記載したが、特許文献1に記載されているように、車速や操舵トルクに応じて補償演算部9の制御定数を変更しても良いことは言うまでも無い。
上記の説明では、操舵速度検出部7が操舵速度を検出するものとして記述したが、例えば閾値を基準とした操舵速度の大小のみの判断を行うようにしても良い。
また、上記の説明では補償演算部9として図2に記載した構成に即して説明したが、(式6)に示した伝達関数を実現するものであれば様々な構成で実現できることは明らかであり、例えば特許文献1と同様に遅れ進みフィルタの形で(式6)を実現してもよいことは言うまでもない。更に、補償演算部9について図2に示した構成および(式6)の伝達関数は、最小限で簡単な演算で実現可能なものであるが、これを冗長な構成として、(式6)に対して更に極と零点が同数だけ付加された伝達関数を持つものに関しても、付加された極と零点が近接したもの(2倍以下)であれば、実質的に本実施の形態によるものと変わりが無いことも明らかである。
以上述べたように、本発明の実施の形態1によれば、制御定数変更部(伝達関数変更部)120が操舵速度に応じて補償演算部9の伝達関数C(s)の低域極または中間零点を変化させるように構成したので、操舵速度に応じて変動するトルクリプル等の外乱がステアリングホイールへ及ぼす影響を操舵速度に応じて低減することができるので、操舵速度に応じた操舵感を向上させることが可能になる。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2に関わる電動パワーステアリング制御装置について説明する。その全体構成は図1に示したものと同じであり、説明を省略する。図7は本実施の形態2における制御ユニット8の構成を表すブロック図であり、実施の形態1と同一部分には同一符号を記す。本実施の形態2の実施の形態1との相違は、補償演算部9の内部において、低域増幅部202の設定が実施の形態1における低域増幅部102と異なり、また低域フィルタ201の入力が実施の形態1における低域フィルタ101と異なるものである。またそれに応じて制御定数変更部220の動作を変更したものである。
制御ユニット8は補償演算部9と制御定数変更部220と電流制御部10から構成され、操舵トルク検出器3で検出した操舵トルクτsと操舵速度検出部7で検出した操舵速度を補償演算部9に入力する。補償演算部9は以下で述べる演算を行った結果として電流指令Irを出力する。電流制御部10は補償演算部9で演算した電流指令Irにモータ4の電流Imが一致するように制御を行う。
次に、補償演算部9の演算動作について説明する。補償演算部9は操舵トルクτsを低域増幅部202に入力する。低域増幅部202は、操舵トルクτsに基づき、一般にルックアップテーブルの読み出し等で決定するアシスト曲線と呼ばれる関数に基づいて増幅した信号を出力する。この増幅比を低域ゲインKl2とする。
また、補償演算部9は操舵トルクτsを比例補償部103に入力し、比例補償部103は実施の形態1と同様に、制御定数変更部220で設定した制御定数である比例ゲインKpで操舵トルクτsを増幅する演算を行い、その結果を比例補償トルクτpとして出力する。比例補償部103の伝達関数Gp(s)は(式2)に示したとおりである。
また、補償演算部9は低域増幅部202の出力から比例補償部103の出力を減算した信号を低域フィルタ201に入力し、低域フィルタ201は入力された値に対してローパスフィルタの演算を行った結果を低域補償トルクτlとして出力する。低域フィルタ201の伝達関数は実施の形態1における低域フィルタ101と全く同様なローパスフィルタであり、上記の演算の結果、操舵トルクτsから低域補償トルクτlまでの伝達関数Gl2(s)は次式となる。
Gl2(s)=(Kl2−Kp)ωl/(s+ωl) (式15)
また、補償演算部9は操舵トルクτsを微分補償部104に入力し、微分補償部104は実施の形態1と同様な演算により微分補償トルクτhとして出力する。微分補償部104の伝達関数Gd(s)は(式3)に示したとおりである。
また、ノイズフィルタ106は実施の形態1と同様に(式4)に示した演算を行う。上記の結果、補償演算部9は、その全体で次式の伝達関数C(s)で表す演算を行っている。
C(s)=Fn(s)・{Gl2(s)+Gp(s)+Gd(s)} (式16)
また(式16)は次の(式17)〜(式20)に変換される。
C(s)={b2・s^2+b1・s+g0・ωl}/{(s+ωl)・(s/ωn+1)} (式17)
g0=Kl2 (式18)
b1=Kp+Kd・ωl (式19)
b2=Kd (式20)
上記において(式17)は実施の形態1における(式6)と全く同じ形をしており、その係数に関しても、(式19)および(式20)に示したb1、b2は実施の形態1における(式8)および(式9)と全く同じであることがわかる。また、(式7)と(式18)との比較より、実施の形態1における、低域増幅部102の低域ゲインKl1と比例補償部103の比例ゲインKpとの和を、本実施の形態2における、低域増幅部202の低域ゲインKl2だけに置き換えれば、本実施の形態2は実施の形態1と全く同様に動作することが分かる。したがって、このように置き換えを行えば、実施の形態1と全く同様に、図4、図5、図6に示した標準設定、低域強調設定、中間強調設定として補償演算部9における制御定数の設定を行うことができる。
次に、制御定数変更部220の動作について説明する。制御定数変更部220は操舵速度検出部7で検出した操舵速度に基づき、操舵速度に比例したリプル周波数が図6に示した第1の境界周波数より低い場合には、補償演算部9の制御定数を上述の低域強調設定として設定する。すなわち、低域フィルタ201の極周波数ωlを標準設定に比べて大きい値に設定する。
次に、操舵速度が大きくなり、リプル周波数が図6の第1の境界周波数と第2の境界周波数の間にある場合には、制御定数変更部220は補償演算部9の制御定数を上述の中間強調設定として設定する。すなわち、リプル周波数が第1の境界周波数より大きくなるよう操舵速度が大きくなるに従って、極周波数ωlを小さくして標準設定の値にする。またこれと同時に(式17)におけるb1が大きくなるように補償演算部9の制御定数を設定する。具体的には比例補償部103における比例ゲインKpを大きくする。すなわち、零点周波数に対応する2つの零点(中間零点)を根として持つ2次多項式における1次係数b1の2次係数b2に対する比を大きくする。ここで、実施の形態1においては補償演算部9の伝達関数C(s)の定常ゲインが変化しないように低域増幅部102における低域ゲインKl1を同時に変更していたが、本実施の形態2においては、(式17)および(式18)に示したように、補償演算部9の伝達関数C(s)の定常ゲインg0は低域増幅部202における低域ゲインKl2だけで決定されるため、比例ゲインKpを変更しても低域増幅部202の低域ゲインKl2を変更する必要はない。
次に、操舵速度が更に大きくなり、リプル周波数が図5における第2の境界周波数より大きくなった場合には、制御定数変更部220は補償演算部9の制御定数を上述の標準設定として設定する。すなわち、リプル周波数が第1の境界周波数と第2の境界周波数との間にあるときに比べて、(式17)におけるb1が小さくなるように補償演算部9の制御定数を設定する。具体的には、比例補償部103における比例ゲインKpを小さくする。
言い換えると、零点周波数に対応する2つの零点(中間零点)を根として持つ2次多項式における1次係数b1の2次係数b2に対する比を小さくするよう零点の特性を変更する。
なお、本実施の形態2においても実施の形態1と同様に、リプル周波数が第1の境界周波数および第2の境界周波数の前後に変化する場合の動作は、制御定数ωl、Kpが連続的に変化するように徐々に変化させてもよい。また、リプル周波数が第1の境界周波数および第2の境界周波数を越える時点で不連続に制御定数を変更してもよいが、Kpを不連続に変化させると電流指令Irが急峻に変化してショックを生じてしまう。それを防ぐためにKpを切り換える時点において、電流指令Irが急変しないよう、補償演算部9における低域フィルタ201の状態変数の値を不連続に変更することで、電流指令Irが急峻に変化して操舵感に悪影響をあたえることなく制御定数を切り換えることができる。
本実施の形態2は上記のように構成しているので、実施の形態1と同様に、操舵速度に応じて変動するトルクリプル等の外乱がステアリングホイールへ及ぼす影響を操舵速度に応じて低減することができるので、操舵速度に応じた操舵感を向上させることが可能になる。
以上のように、本発明にかかる電動パワーステアリング制御装置は、モータにより操舵力を補助する電動パワーステアリング制御装置に適用して好適である。
実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置の構成を示す図である。 実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置における制御ユニットの構成を示すブロック図である。 実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置の動特性を表すブロック図である。 実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置における制御ユニットの周波数応答を表す図である。 実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置を用いた開ループ伝達関数の周波数応答を表す図である。 実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置を用いた操舵感度の周波数応答ゲインを表す図である。 実施の形態2による電動パワーステアリング制御装置における制御ユニットの構成を示すブロック図である。
1 ステアリングホイール
2 ステアリング軸
3 操舵トルク検出器
4 モータ
5 減速機構
6 操舵輪
7 操舵速度検出部
8 制御ユニット
9 補償演算部
10 電流制御部
11 角度差分器
12 弾性定数部
13 トルク定数部
14 トルク加算器
15 操舵機構慣性部
16 制御対象
101 低域フィルタ
102 低域増幅部
103 比例補償部
104 微分補償部
105 加算器
106 ノイズフィルタ
120 制御定数変更部
201 低域フィルタ
202 低域増幅部
220 制御定数変更部

Claims (6)

  1. 運転者が加えた操舵トルクに対してモータによる補助を行う電動パワーステアリング制
    御装置において、
    操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、
    操舵速度を検出する操舵速度検出部と、
    少なくとも1つの極である低域極および少なくとも2つの零点である中間零点を有し、前記低域極の絶対値に対応する極周波数以下の低周波数領域においてゲインが平坦で、前記極周波数から前記2つの中間零点の相乗平均に対応する零点周波数までの中周波数領域では周波数の増大に伴ってゲインが低下し、前記零点周波数と前記零点周波数の少なくとも3倍までであってゲイン交差周波数を含む高周波数領域では周波数の増大に伴ってゲインが増大する周波数応答特性を有する伝達関数の演算を前記操舵トルク検出器が検出した操舵トルクに対して行うことによって電流指令を出力する補償演算部と、
    検出時の前記操舵速度の大きさの変化に応じて前記低域極または前記2つの中間零点の特性を変化させる伝達関数変更部と、
    前記電流指令に前記モータの電流が一致するよう前記モータの制御を行う電流制御部と、
    を備えることを特徴とする電動パワーステアリング制御装置。
  2. 前記伝達関数変更部は、検出時の前記操舵速度の大きさの増大に伴って前記極周波数が減少するように前記低域極を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置。
  3. 前記伝達関数変更部は、検出時の前記操舵速度の大きさの増大に伴って前記2つの中間零点を根に持つ2次多項式における1次係数の2次係数に対する比が減少するように変化させることによって前記2つの中間零点の特性を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置。
  4. 前記伝達関数変更部は、検出時の前記操舵速度の大きさの増大に伴って、前記極周波数が減少するように前記低域極を変化させるとともに、前記中間零点を根に持つ2次多項式における1次係数の2次係数に対する比が増加するように変化させることによって前記中間零点を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置。
  5. 前記伝達関数は、制御定数に基づいて前記低域極および前記2つの中間零点が変更可能に構成され、前記伝達関数変更部は、前記制御定数を変更することによって前記低域極または前記2つの中間零点の特性を変化させる、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電動パワーステアリング制御装置。
  6. 前記伝達関数変更部は、前記制御定数を不連続に変更するとともに、前記電流指令が急変しないように補償演算部の状態変数を不連続に変更することを特徴とする請求項5に記載の電動パワーステアリング制御装置。
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