JP5234580B2 - 回転機ロータ冷却装置および方法 - Google Patents
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Description
しかし、特許文献1に記載された冷却構造はロータ回転に対する抵抗が大きく、高速回転するロータに適用することは困難である。
しかし、特許文献2記載のロータ冷却方法では、ガス冷媒の顕熱により冷却するので、大量のガス冷媒を供給するため余分な圧縮動力を必要とし冷凍機の効率を十分向上させることができない。
高速運転するロータでは、液冷媒が強力な遠心力により冷却面に押し付けられると共に、冷却面上に貯留する量が減るため、液膜の厚さが非常に薄くなり、その結果液膜が途切れたりして、液膜流れが不安定になり、冷却性能が低下する。また、液膜の厚さを確保するために、冷媒の流入量を増加させると、ロータの動力損失を増大させる問題があった。
しかし、開示方法では、冷媒の顕熱を利用して冷却するため、大量の冷媒を循環させる必要がある。また、開示方法では、冷媒をロータ軸内に設けた軸心流路から供給するが、軸心流路が回転するため、固定部との間をシールする複雑な機構を備える必要がある。なお、実際には特許文献3に記載の通り、精密なシール機構を備える代わりに潤滑油を冷媒として利用することが推奨されると考えられる。
ロータ内部に液冷媒を導入する冷却方法では、液がロータ重量偏差の大きい側に偏るので、重量偏差を助長してさらに液層の偏りを大きくし、ロータダイナミクス上不安定な系を形成し、特に高速運転を困難にする傾向がある。
また、ロータが振れ回りするので、冷媒の偏在位置が固定化して、常時冷却されない部分が生じることになる。
ロータの冷却が不十分であると、PM(永久磁石)型電動機の場合は永久磁石が高温になって減磁する問題が生じ、また、永久磁石を用いない電動機では巻線の温度が上昇し巻線の被覆が溶けて絶縁不良が生じる。さらに、熱膨張により、軸受などのクリアランスが変化して焼き付きが生じるおそれがある。
本発明の回転機ロータ冷却構造は、電動機、発電機、過給機、工作機械等のロータ構造を有する機器に適用することができる。なお、工作機械においても、回転軸よりワークへの伝熱が加工精度を劣化させるので、本発明の冷却構造を適用してロータを冷却することが好ましい。
なお、軸方向の複数の仕切りは周に沿って等間隔に設けても、異なる幅で設けてもよい。また、軸に平行に設けても、軸に対して角度を有するようにしてもよい。
仕切りは冷媒の乗り越えを防いでロータ冷却壁の部分ごとに均質な冷却を行うために設けられるので、仕切りは端から端まで連続したものであって、高さは冷媒が遠心力で薄膜化したときの膜厚を越えていることが好ましい。
ただし、仕切りの途中に切り欠きを持たせて、冷媒の一部が仕切りを越えて流通できるようにすることもできる。
ノズルは、ごく少量ずつの冷媒を連続的に供給してロータ冷却壁の表面に均等に配分するようにすることが好ましい。
また、冷媒の温度あるいは圧力を適正に維持したり冷媒が外部に漏洩することを防ぐため、冷媒流路は密閉構造とすることが好ましい。
冷凍機の冷媒を用いてロータを冷却する機構では、冷凍機の蒸発器から液体状態の冷媒を抽出して、ノズルを介してロータ内側のロータ冷却壁に供給し、ロータの熱を奪って気化した冷媒は圧縮機の吸気側に注入される。
このような構造では、別途、ロータ冷却用冷媒の放熱処理機構を設けずに、既存の冷凍サイクルを利用して冷媒処理を行うことができる。
本発明の冷却方法によれば、簡単な構造の冷却装置を使って、回転機ロータを均等に効果的に冷却することができる。
このように、冷凍機の冷却サイクルを利用することにより、ロータ冷却機構をより単純化、小型化することができ、かつ僅かな運転費用でロータ冷却を行うことができる。
図1は本実施例のロータ冷却装置の主要部を表す断面図、図2は本実施例における電動機ロータの冷却機構説明図、図3は電動機ロータの内側に設けた仕切りを説明する図2のIII−III面に関する断面図、図4はロータ冷却壁面の仕切りを例示する展開図である。
仕切り15の部分には冷媒膜が存在しないが、ロータ自体の熱伝導により冷却が可能であるので、仕切り15の幅を極端に狭くする必要はない。たとえば1mmから数mm程度、径の大きなロータでは数10mmまで、製作上便利な任意の幅を選択すればよい。
なお、仕切り15は、等間隔に設けるのではなく、図4(b)に示すように、隣の仕切り同士の間隔を適当に選択して配置してもよい。仕切り間の冷却面に供給される冷媒の量は仕切り間隔に比例するので、仕切り同士が平行である限り遠心力で形成される冷媒膜の厚さは均等になる。
また、図4(c)に示すように、仕切り15は軸方向に対して角度を有して螺旋状に形成するようにしてもよい。
さらに、図4(d)に示すように、仕切り15の中間に仕切りの両側を連絡する切り欠き18を備えてもよい。なお、隣の壁面区分から漏れ込んだ冷媒が直ちにさらに隣の区分まで流れ出さないように、切り欠き18は隣り合った仕切り15同士で軸方向にずれた位置に配置することが好ましい。
ロータの回転バランスは、仕切り15の取り付け加工後に通常の方法、たとえばロータ端部に凸部を設けて凸部を削ることでバランスを取る方法などにより調整することができる。
なお、図示しないが、冷媒ノズル16の先端は封止され先端部側面に軸に垂直な1方向に径1mm程度の小さなキリ穴が設けられていて、冷媒12が冷却壁面13に向けて少量ずつ連続に供給されるようになっている。1個の小孔から供給するのであれば、毎分数10ml程度の小流量でも液柱として連続的に供給することができる。なお、キリ穴は鉛直下方に向けられると冷媒ノズル16を伝わって目的外の位置に垂れることなどを防止することができる。
したがって、PM型電動機のロータの永久磁石が高温になって減磁する問題、また永久磁石を用いない電動機であっても巻線の被覆が溶けて絶縁不良が生じる問題、さらに、熱膨張により軸受などのクリアランスが変化して焼き付きが生じる問題のいずれも大きく軽減される。
図5は、冷媒の種類ごとに、ロータの回転数と冷媒薄膜の膜厚の関係を示すグラフである。普通、冷媒として使用される液体には、フロン、代替フロン、さらに自然冷媒として、炭化水素、二酸化炭素、アンモニア、水、アルコールなどがある。
いずれも、内径40mm、長さ300mm、片端開放の筒型をしたロータ冷却壁を対象として、冷媒供給量を2kg/h、3kg/h、6kg/hの場合について、1000rpmから10000rpmの範囲の回転速度に対して形成される膜厚の理論値を示すものである。
なお、(d)図には、水を3kg/hで供給する試験により得られた液膜厚さの値がプロットされていて、理論値と実験値がよく一致するということができる。
たとえば、水の場合、ロータ回転数3000rpm、水の供給量3kg/hにおける理論液膜厚は0.30mmである。
高速回転するロータ冷却壁に押し付けられて薄膜化した冷媒は、冷媒の界面領域が壁表面に密着し、また冷媒容積に対して大きい接触面積を持つことなどから、壁から吸熱する効率が高くなると考えることができる。
なお、蒸発潜熱により冷却する場合は液膜厚さは薄い方がよいが、図5からも知れるように、液膜の厚さは主として回転数により決まり、冷媒の循環量を増しても軸方向の流速が大きくなるだけで冷却壁面に形成される冷媒膜の膜厚はさして変わらないから、冷媒の供給量は蒸発量に対して十分大きな量としてよい。
このようにして、冷媒ノズルから供給される液体冷媒の一部は液体のまま冷却壁開放端側から排出されるので、冷媒循環量は蒸発分とドレン排出分を加えたものになる。したがって、冷媒循環ポンプは電動機の負荷によらず一定の運転をすればよいので、より簡易な構成とすることができる。
図6(a)は、ロータ冷却壁に仕切りが設けられていない内径40mmのロータを回転数3000rpmで運転するときに3kg/hで水を供給したときの液膜分布状況を示す断面図である。振れ回り偏差は9の方向に0.2mmある。
回転中心22からの距離が長い部分には最大0.25mmの厚さの液膜が生じるが、回転中心22からの距離が短い部分の冷却壁面には液膜切れが生じる。このように、冷却効果に偏在が生じ、液膜切れ部分は十分に冷却されない。
仕切りの効果で、液膜は全ての分割領域に維持され、最大厚0.28mm、最小厚0.14mmであった。
このように、仕切りの存在により、液膜はほぼ均等に分布して液膜切れは生ぜず、液膜偏りによるロータダイナミクスの悪化もない。
図8に示すように、外径50mm、内径25mmのロータの外周に、先端から10mmのところから110mmの幅で電熱ヒータを巻き、電熱ヒータ先端から20mmの位置(T1,T2)と後端から20mmの位置(T4,T5)で、それぞれ回転軸を挟んで対称の表面位置に温度検出端を貼付して、ロータを回転させながら加熱して連続的に温度測定した。
なお、冷媒を供給しないときは、発熱量100Wでもロータ温度が100℃以上に上昇し続け、運転が不能になる。
空調用ターボ冷凍機30は、蒸発器31、ターボ圧縮機32、凝縮器33、膨張弁34を主機として構成される。
蒸発器31には冷水配管が取り込まれていて、蒸発器内の冷媒が蒸発することにより冷水が冷やされ、冷やされた冷水が空調負荷36に運ばれて冷熱を放出して負荷を冷却する。
凝縮器33には冷却水が供給され、ターボ圧縮機32から供給された高圧の気体冷媒を凝縮して液体冷媒に戻す。凝縮器33の液体冷媒は膨張弁34を通して蒸発器31に供給される際に、断熱膨張により温度が下がる。
すなわち、蒸発器31の液体冷媒を循環ポンプ35で引き出し、冷媒ノズル16を介してロータ冷却壁11の冷却壁面13に供給する。
冷却壁面13で蒸発した冷媒は、ターボ圧縮機32の吸引側に供給し、ターボ圧縮機32で元の空調用冷媒と合わせて昇圧し、凝縮器33に送られる。
冷却壁面13に押し付けられ溢れてドレンになる液体冷媒は、電動機ケーシングの底に設けられたドレン溜17に集められ、蒸発器31に戻される。
なお、蒸発器31から重力で冷媒ノズル16に冷媒を供給することができる場合は、循環ポンプ35を省略してもよい。
代替フロン(R134a)はオゾン層破壊係数がゼロで、作動圧力が高く機器を小さくすることができるが、地球温暖化係数はフロンと差が無いため、地球温暖化防止の観点から適切に回収・廃棄する必要がある。
なお、炭化水素、アンモニアなどの自然冷媒は、オゾン層破壊係数がゼロで、地球温暖化係数も小さく、作動圧力も比較的高く機器を小さくすることができ、冷凍機に利用することができるが、可燃性、毒性、爆発性があるので取扱いに注意がいる。
このとき、冷凍機の冷媒として代替フロン(R134a)、イソブタン、アンモニアの各冷媒を使ったときに、40℃の凝縮器と3℃の蒸発器における冷媒圧力は、それぞれ、代替フロン(R134a)で1.0MPaと0.33MPa、イソブタンで0.53MPaと0.18MPa、アンモニアで1.6MPaと0.48MPaと大気圧より高いが、水の場合はそれぞれ7.3kPaと0.73kPaと大気圧よりかなり低い状態になる。
しかも、ロータ冷却装置10の冷媒は冷凍機30の冷媒の一部を流用するもので、使用後は全て元の冷媒と一緒にされて冷凍機30の冷媒処理装置で処理されるので、ロータ冷却装置10の側に特別な処理装置を備える必要がない。
また、冷媒に水を用いるターボ冷凍機に適用する場合は、水の蒸発潜熱が2520J/gと大きいことから循環量0.71kg/hの水で冷却することができ、さらに大幅に循環量を減少させることができる。
表には、代替フロン、イソブタン、アンモニアを使用する場合は、オゾン層破壊の防止に貢献すること、小型の冷凍機を構成すること、ロータ冷却壁における冷媒膜を極めて薄くできること、イソブタンとアンモニアは地球温暖化係数が小さいこと、取扱いに注意が必要なこと、などが示されている。
また、水の場合は、オゾン層破壊を行わないこと、地球温暖化係数がゼロであること、不燃性で無害であり取扱いが容易であること、一方、0℃で凍るため冷凍領域での利用はできないこと、作動圧力が極めて低く冷凍機が大型になること、などが示されている。
11 ロータ冷却壁
12 液体冷媒
13 冷却壁面
14 中心軸
15 仕切り
16 冷媒ノズル
17 ドレン溜
18 切り欠き
20 電動機
21 電動機ロータ
22 ロータ回転軸
23 動力軸
24 ステータ
30 ターボ冷凍機
31 蒸発器
32 ターボ圧縮機
33 凝縮器
34 膨張弁
35 循環ポンプ
36 空調負荷
Claims (12)
- 回転機のロータの内側に少なくとも一端が開放されたシリンダ面で構成されたロータ冷却壁を有し、該ロータ冷却壁の開放端側から挿入された、冷媒を供給するノズルを備え、前記ロータ冷却壁の面に前記ロータの中心軸に平行に該ロータ冷却壁の一端から他端まで前記冷媒が遠心力で薄膜化したときの膜厚より高い複数の仕切りが設けられて、該ノズルから該ロータ冷却壁の面に供給される該冷媒の蒸発潜熱を使って該ロータを冷却する回転機ロータ冷却装置。
- 前記仕切りが0.28mm以上の高さを有することを特徴とする請求項1に記載の回転機ロータ冷却装置。
- 前記仕切りが前記ロータ冷却壁に6個以上設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機ロータ冷却装置。
- 前記ロータ冷却壁面に設けられた仕切りが、該仕切りの両側を連絡する切り欠きを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転機ロータ冷却装置。
- 前記冷媒は密閉流路内を循環して作動することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転機ロータ冷却装置。
- 前記冷媒は炭化水素、アンモニアもしくは水であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の回転機ロータ冷却装置。
- 前記回転機は蒸気圧縮型冷凍機における圧縮機を駆動する回転機であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の回転機ロータ冷却装置。
- 前記冷媒は前記冷凍機の冷媒の一部であって、該冷凍機の蒸発器から抽出して液体冷媒として前記ノズルに供給され、前記ロータ冷却壁で蒸発した気体冷媒は該冷凍機の圧縮機の吸気側に供給されることを特徴とする請求項7記載の回転機ロータ冷却装置。
- 回転機のロータの内側に少なくとも一端が開放されたシリンダ面で構成され前記ロータの中心軸に平行に該ロータ冷却壁の一端から他端まで前記冷媒が遠心力で薄膜化したときの膜厚より高い複数の仕切りが設けられたロータ冷却壁を備えたロータを使用し、該ロータの回転中に前記ロータ冷却壁に液体冷媒を連続的に供給し、供給された冷媒の蒸発潜熱を使って該ロータを冷却する回転機ロータ冷却方法。
- 前記ロータ冷却壁面に設けられた仕切りが、該仕切りの両側を連絡する切り欠きを有することを特徴とする請求項9記載の回転機ロータ冷却方法。
- 前記回転機は蒸気圧縮型冷凍機における圧縮機を駆動する回転機であって、前記冷媒は該蒸気圧縮型冷凍機の作動冷媒の一部であって該冷凍機の蒸発器から抽出して前記ロータ冷却壁に供給され、該ロータ冷却壁で蒸発した気体冷媒は該蒸気圧縮型冷凍機の圧縮機の吸気側に供給されることを特徴とする請求項9または10に記載の回転機ロータ冷却方法。
- 前記冷媒は炭化水素、アンモニアもしくは水であることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の回転機ロータ冷却方法。
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