JP5234415B2 - 海域制御構造物 - Google Patents
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Description
(1)離岸堤は、水深が3m〜5mの海底に設置されるもので、主に異形ブロックを海岸線に沿って平行に積み上げた構造であり、長年に亘って侵食対策に多大な実績を残している。
しかしながら、この離岸堤は、天端面の高さを平均海面よりも十分に大きく(平均海面から突出する高さが1m〜2m)設定する必要があり、水面上の景観が良くない。しかも、ブロックの散乱等により漁業活動を阻害することがある。
(2)人工リーフは、水深が3m〜5mの海底に設置されるもので、主に石材を積層して天端幅(海岸線に直交する方向の幅)が広い潜堤構造(天端幅:50m〜100m)であり、没水構造であるために水面上の景観を阻害することはないが、漁業者等にとって天端が目視できず危険性があることから天端の水深を十分確保すると、天端幅をさらに広く設定する必要があり、建設コストの高騰につながる。しかも、人工リーフでは、高波浪が続くと、海岸線付近で平均水位が上昇する場合がある。
しかしながら、この有脚式離岸堤もその天端面が平均海面よりも突出しているため、景観の是正が要求されている。また、有脚式離岸堤では、ブロック体を所定海域まで運搬するため、ブロック体の大きさに準じた起重機船を手配する必要があり、しかも、離岸堤に比べて設置水深が深くなりコストが高騰するため、コストの大幅な削減が要求されている。
(4)没水型離岸堤として柔構造潜堤(フレキシブルマウンド)が、ある地域で実用化されている。
しかしながら、この柔構造潜堤では、潮位差が大きい海域や海底勾配が急な海岸では
消波効果が低下したり、堤体規模が大きくなるほど現地への適用が困難になる場合がある。
また、上述した特許文献1の透過型海域制御構造物においても、平均海面から構造物の天端が突出しており、水面上の景観の悪化を是正することはできない。また、この特許文献1の透過型海域制御構造物では、特に、堤体に傾斜壁が形成され、コスト高の要因となっている。
請求項1の発明では、中空ブロック上に箱型ブロックを配置して複数の杭で海底に固定し、箱型ブロックの陸側壁部及び沖側壁部には透過スリットが形成されると共に、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部は平均海面から突出しているので所要の消波効果を得ることができ、しかも、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部を除く天端面は没水されているために、水面上の景観が是正される。
なお、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部は、消波効果の観点からは、天端壁部の陸側の端部に、天端壁部の海岸線に沿う一辺の全範囲に亘って連続して形成される方が好ましい。
また、請求項1の発明では、有脚構造としたので、水深10m〜20m程度(離岸距離が大)に設置する海域制御構造物として耐波安定性、消波効果及びコストの観点から最適である。
さらに、請求項1の発明では、箱型ブロックの下方に中空ブロックを配置しているので、箱型ブロック及び中空ブロックを適宜の大きさに抑制でき、これら箱型ブロック及び中空ブロックを設置海域まで運搬する起重機船に要するコストを削減することが可能になる。
請求項2の発明では、各土嚢により中空ブロックを設置するための平坦な設置面を形成することができ、耐波安定性を向上させることができる。
請求項3の発明では、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部を除く天端面の平均海面からの水深と、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部が平均海面から突出する高さとは略同じに設定され、それらの値は消波対象波浪の有義波高の1/2程度に設定されているので、所要の消波効果を得ることができると共に、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部を除く天端面を水上から僅かに視認することができ、漁業者等により海域制御構造物の位置を認識することができる。
請求項4の発明では、中空ブロックの高さが水深に対して1/3〜1/2の所定値に設定されるので、所要の消波効果を得ることができ、且つコストを最大限削減することができる。
請求項5の発明では、捨石マウンドにより中空ブロックを設置するための平坦な設置面を形成することができ、しかも、捨石マウンドにより杭周りの局所洗堀を防護することができる。
なお、捨石マウンド上に中空ブロックが設置された状態において、中空ブロックの海底からの高さは水深に対して1/3〜1/2の所定値に設定されるようにした方が好ましい。
請求項6の発明では、捨石マウンド上に箱型ブロックを配置し、箱型ブロックの陸側壁部及び沖側壁部に透過スリットが形成されると共に、箱型ブロックの天端壁部に平均海面から突出する突設部を設けているので所要の消波効果を得ることができ、しかも、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部を除く天端面は没水されているために、水面上の景観が是正される。
なお、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部は、消波効果の観点からは、天端壁部の陸側の端部に、天端壁部の海岸線に沿う一辺の全範囲に亘って連続して形成される方が好ましい。
また、請求項6の発明では、箱型ブロックの下方に捨石マウンドを配置しているので、箱型ブロックの大きさを適宜の大きさに抑制できるため、該箱型ブロックを設置海域まで運搬する起重機船に要するコストを削減することが可能になる。
さらに、請求項6の発明では、有脚構造としたので、水深10m〜20m程度(離岸距離が大)に設置する海域制御構造物として耐波安定性、消波効果及びコストの観点から最適である。しかも、捨石マウンドにより中空ブロックを設置するための平坦な設置面を形成することができ、さらには、捨石マウンドにより杭周りの局所洗堀を防護することができる。
請求項7の発明では、複数の杭の打設が容易となる。
請求項8の発明では、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部を除く天端面の平均海面からの水深と、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部が平均海面から突出する高さとは略同じに設定され、それらの値は消波対象波浪の有義波高の1/2程度に設定されているので、所要の消波効果を得ることができると共に、箱型ブロックの天端壁部に設けた突設部を除く天端面を水上から僅かに視認することができ、漁業者等により海域制御構造物の位置を認識することができる。
請求項9の発明では、捨石マウンドの高さが水深に対して1/3〜1/2の所定値に設定されるので、所要の消波効果を得ることができ、且つコストを最大限削減することができる。
しかも、請求項1の発明では、箱型ブロックの下方に中空ブロックが配置され、一方、請求項6の発明では、箱型ブロックの下方に捨石マウンドが配置されているので、箱型ブロックや中空ブロックを設置海域まで運搬する起重機船に要するコストを大幅に削減することが可能になる。
まず、本発明の第1の実施形態に係る海域制御構造物1を図1〜図10に基いて説明する。
本発明の第1の実施形態に係る海域制御構造物1は、図1に示すように、内部が空洞化されると共に下方が開放される直方体で構成され、その陸側壁部8が海岸線に沿って配置される箱型ブロック2と、該箱型ブロック2と略同じ外形の直方体で形成され、箱型ブロック2の下方に配置される中空ブロック3と、該中空ブロック3の下方で鋼管杭4が打設される複数箇所(本実施の形態では6箇所)にそれぞれ、高さ方向に複数積層される土嚢5とから構成される。
なお、箱型ブロック2の高さ(後述する突設部13を除く)は、本実施の形態では、水深10mに対して4.5mに設定されている。
そこで、図1に示すように、箱型ブロック2が中空ブロック3上に設置された状態において、該箱型ブロック2の天端壁部11に設けた突設部13以外の天端面Nの平均海面S.W.L.からの水深と、突設部13が平均海面S.W.L.から突出する高さとは略同じに設定され、本実施の形態では、水深10mに対して略50cmに設定されている。また、箱型ブロック2の天端壁部11に設けた突設部13の天端面Nからの高さは、本実施の形態では、水深10mに対して略1mに設定されており、つまり、箱型ブロック2は、天端壁部11に設けた突設部13の高さ方向略中間に平均海面S.W.L.が一致するように配置される。
なお、本実施の形態では、箱型ブロック2の天端壁部11に設けた突設部13以外の天端面Nの平均海面S.W.L.からの水深及び突設部13が平均海面S.W.L.から突出する高さは、それぞれ略50cmに設定されているが、それらの値は消波対象波浪の有義波高の1/2程度を目安に設定するようにしている。
沖側壁部9にも、該沖側壁部9に面する箱型ブロック2内の各2室に対応するように、その上部、中間部及び下部のそれぞれにその長手方向に沿って延びる幅狭の透過スリット16が形成される。沖側壁部9にも、全6個の透過スリット16が形成される。
また、十字状の仕切壁部12の内、陸側壁部8及び沖側壁部9と同じ方向に延びる一方の仕切壁部20にも、陸側壁部8及び沖側壁部9に設けた各透過スリット16と同じ位置に、且つ同じ形状の透過スリット16が形成される。
なお、本実施の形態では、陸側壁部8、沖側壁部9及び一方の仕切壁部20のそれぞれには、全6個の透過スリット16が所定位置に形成されているが、所要の消波効果を得るべく、各透過スリット16の開口幅、開口位置及び数量が適宜決定される。また、天端壁部11に設けた各スリット15は、箱型ブロック2への揚圧力の発生を防ぐために形成されたものであり、矩形状や円形状の開口部であってもよい。
なお、図1に示すように、各土嚢5上に中空ブロック3を設置した状態において、中空ブロック3の海底からの高さが水深に対して1/3〜1/2の所定値に設定され、本実施の形態では、その高さは水深10mに対して略5m(各土嚢5の高さ略1m+中空ブロック3の高さ略4m)に設定されている。
まず、海岸から所定距離離れた海底に、土嚢5を、各鋼管杭4が打設される箇所にそれぞれ2層程度積層する。
次に、各土嚢5上に中空ブロック3及び箱型ブロック2を外形が一致するようにして、且つその陸側壁部8、25が陸側を向くように海岸線に沿って設置する。
次に、6本の鋼管杭4を箱型ブロック2及び中空ブロック3に設けた各杭用貫通孔22、29に挿通して、各土嚢5を介して海底に打設して、箱型ブロック2及び中空ブロック3を海底に固定する。
最後に、箱型ブロック2及び中空ブロック30の各杭用貫通孔22、29と、各鋼管杭4とのクリアランスに充填材としてのグラウトを充填する。さらに、各鋼管杭4内にはコンクリートが充填される。
なお、本実施の形態に係る海域制御構造物1は、箱型ブロック2及び中空ブロック3の陸側壁部8、25の長手方向(海岸線が延びる方向)の長さが略15mで形成されており、この箱型ブロック2が、その陸側壁部8が陸側を向くように海岸線に沿って複数個配列されて任意長さの海域制御構造物が構築される。
さらに、第1の実施形態に係る海域制御構造物1では、箱型ブロック2と、中空ブロック3と、各土嚢5とから構成されるので、箱型ブロック2や中空ブロック3の大きさを適宜の大きさに抑制でき、これら箱型ブロック2等を設置海域まで運搬する起重機船に要するコストを大幅に削減することできる。
さらにまた、第1の実施形態に係る海域制御構造物1では、各土嚢5により中空ブロック3を設置するための平坦な設置面を形成することができる。
本発明の第2の実施形態に係る海域制御構造物1aは、図11に示すように、内部が空洞化されると共に下方が開放される直方体で構成され、その陸側壁部8が海岸線に沿って配置される箱型ブロック2と、該箱型ブロック2と略同じ外形の直方体で形成され、箱型ブロック2の下方に配置される中空ブロック3と、該中空ブロック3の下方に配置される捨石マウンド30とから構成される。
なお、本発明の第2の実施形態に係る海域制御構造物1aの箱型ブロック2及び中空ブロック3は、第1の実施形態に係る海域制御構造物1で採用された箱型ブロック2及び中空ブロック3と同一であるためここでの説明を省略する。
捨石マウンド30内で、鋼管杭4が打設される6箇所には、第1の実施形態に係る海域制御構造物1で採用された土嚢5が複数積層されている。
なお、図11に示すように、捨石マウンド30上に中空ブロック3を設置した状態において、中空ブロック3の海底からの高さは水深に対して1/3〜1/2の所定値に設定され、本実施の形態では、その高さは水深10mに対して略5m(捨石マウンド30の高さ略1m+中空ブロック3の高さ略4m)に設定されている。
まず、海岸から所定距離離れた海底に、土嚢5を、各鋼管杭4が打設される箇所にそれぞれ2層程度積層した後、各土嚢5の周りに基礎捨石31を積層して、上述したような捨石マウンド30を形成する。
次に、捨石マウンド30上に中空ブロック3及び箱型ブロック2を外形が一致するようにして、且つその陸側壁部8、25が陸側を向くように海岸線に沿って設置する。
次に、6本の鋼管杭4を箱型ブロック2及び中空ブロック3に設けた各杭用貫通孔22、29に挿通して、捨石マウンド30(土嚢5)を介して海底に打設する。
最後に、箱型ブロック2及び中空ブロック3の各杭用貫通孔22、29と、各鋼管杭14とのクリアランスに充填材としてのグラウトを充填する。さらに、各鋼管杭4内にはコンクリートが充填される。
また、第2の実施形態に係る海域制御構造物1aでは、捨石マウンド30を採用しているので、消波効果を向上させると共に、中空ブロック3の設置のための平坦な設置面を形成することができ、しかも、各鋼管杭4の打設による局所洗掘を防護することもできる。
さらに、第2の実施形態に係る海域制御構造物1aにおいて採用した捨石マウンド30に代わって、第1及び第2の実施形態に係る海域制御構造物1、1aで使用した土嚢5の処理土、すなわち、土砂とセメントと分離防止剤とを混合させた処理土を積層してマウンドを形成してもよい。この形態の場合には、第2の実施形態において、鋼管杭4が打設される6箇所に積層した土嚢5は必要としない。
本発明の第3の実施形態に係る海域制御構造物1bは、図12に示すように、内部が空洞化されると共に下方が開放される直方体で構成され、陸側壁部8が海岸線に沿って配置される箱型ブロック2と、該箱型ブロック2の下方に配置される捨石マウンド33とから構成される。
なお、本発明の第3の実施形態に係る海域制御構造物1bの箱型ブロック2は、第1及び第2の実施形態に係る海域制御構造物1、1aで採用された箱型ブロック2と同一であるためここでの説明を省略する。
捨石マウンド33は、50〜200kg/個程度の基礎捨石31を積層して形成されており、沖側の傾斜面には1t/個の被覆石34が傾斜面に沿って複数配列されている。
また、捨石マウンド33内で、鋼管杭4が打設される6箇所には、第1及び第2の実施形態に係る海域制御構造物1、1aで採用した土嚢5が複数積層されている。
まず、海岸から所定距離離れた海底に、土嚢5を、各鋼管杭4が打設される箇所にそれぞれ2層程度積層した後に、各土嚢5の周りに基礎捨石31を積層し、この工程を4、5回程度繰り返して上述したような捨石マウンド33を形成する。
次に、捨石マウンド33上に箱型ブロック2をその陸側壁部8が陸側を向くように海岸線に沿って設置する。
次に、各鋼管杭4を箱型ブロック2に設けた各杭用貫通孔22に挿通して、捨石マウンド33(土嚢5)を介して海底に打設する。その後、箱型ブロック2の各杭用貫通孔22と鋼管杭4とのクリアランスに充填材としてのグラウトが充填される。さらに、各鋼管杭4内にはコンクリートが充填される。
また、第3の実施形態に係る海域制御構造物1bでは、捨石マウンド33を採用しているので、消波効果を向上させると共に、箱型ブロック2の設置のための平坦な設置面を形成することができ、しかも、各鋼管杭4の打設による局所洗掘を防護することもできる。
Claims (9)
- 海岸から離れた海底に、海岸線に沿って配置される海域制御構造物であって、
該海域制御構造物は、内部が空洞化されると共に下方が開放される直方体で構成され、陸側壁部が海岸線に沿って配置される箱型ブロックと、該箱型ブロックと略同じ外形で、前記箱型ブロックの下方に配置される中空ブロックとが複数の杭によって海底に固定され、
前記箱型ブロックの陸側壁部及び沖側壁部には透過スリットが形成されると共に、その天端壁部には開口部が形成され、また、前記箱型ブロックの天端壁部に平均海面から突出する突設部が形成されることを特徴とする海域制御構造物。 - 前記中空ブロックの下方で、前記複数の杭が打設される箇所に土嚢がそれぞれ配設されることを特徴とする請求項1に記載の海域制御構造物。
- 前記箱型ブロックの天端壁部に設けた前記突設部以外の天端面の平均海面からの水深と、前記突設部が平均海面から突出する高さとは略同じに設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の海域制御構造物。
- 前記各土嚢上に前記中空ブロックを設置した状態で、該中空ブロックの海底からの高さが水深に対して1/3〜1/2の所定値に設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の海域制御構造物。
- 前記中空ブロックの下方に捨石マウンドが備えられることを特徴とする請求項1に記載の海域制御構造物。
- 海岸から離れた海底に、海岸線に沿って配置される海域制御構造物であって、
該海域制御構造物は、内部が空洞化されると共に下方が開放される直方体で構成され、陸側壁部が海岸線に沿って配置される箱型ブロックが、該箱型ブロックの下方に配置される捨石マウンドを介して複数の杭によって海底に固定され、
前記箱型ブロックの陸側壁部及び沖側壁部には透過スリットが形成されると共に、その天端壁部には開口部が形成され、また、前記箱型ブロックの天端壁部に平均海面から突出する突設部が形成されることを特徴とする海域制御構造物。 - 前記捨石マウンド内で前記複数の杭が打設される箇所にはそれぞれ土嚢が積層されることを特徴とする請求項6に記載の海域制御構造物。
- 前記箱型ブロックの天端壁部に設けた前記突設部以外の天端面の平均海面からの水深と、前記突設部が平均海面から突出する高さとは略同じに設定されることを特徴とする請求項6または7に記載の海域制御構造物。
- 前記捨石マウンドの海底からの高さは、水深に対して1/3〜1/2の所定値に設定されることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の海域制御構造物。
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