以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態では、発泡促進樹脂部と発泡抑制樹脂部とを有する発泡樹脂成形品として、車両の車体側部を構成するインナーパネルの一部を別体で形成したドアモジュールプレートを例に、前記発泡樹脂成形品の成形について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る発泡樹脂成形品としてのドアモジュールプレートを備えた車両の車体側部を示す断面説明図であり、図2は、前記ドアモジュールプレートを示す正面説明図、図3は、前記ドアモジュールプレートとインナーパネルとの取付部を示す断面説明図である。なお、図3では、ドアモジュールプレートとインナーパネルとが取り付けられた状態を断面図で示している。
図1に示すように、車両の車体側部1は、アウターパネル2とインナーパネル3とが組み合わせられて構成されており、アウターパネル2とインナーパネル3との間にはドアガラス4が昇降可能に取り付けられ、インナーパネル3の車室内側にはドアトリム5が取り付けられている。
また、インナーパネル3には開口部6が形成され、この開口部6に、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂から成形されるドアモジュールプレート7が取り付けられる。このように、インナーパネル3の主要部を構成するドアモジュールプレート7を発泡性樹脂からなる発泡樹脂成形品とすることにより、インナーパネル3の軽量化及び寸法精度並びに重量に対する剛性の向上を図ることができる。
図2に示すように、ドアモジュールプレート7は、略矩形状に成形され、その周縁部に複数の取付部8が形成されている。ドアモジュールプレート7は、図3に示すように、取付部8において、該取付部8に設けられる貫通穴部9に挿入される締結ボルト10と該締結ボルト10と締結されるナット11とを用いてインナーパネル3に取りつけられる。このドアモジュールプレート7は、前述したように発泡性樹脂によって発泡状に形成されているが、取付部8など強度等の物性を向上させることが望まれる部分について部分的に発泡性樹脂の発泡が抑制され、発泡性樹脂の発泡が促進された発泡促進樹脂部7aと発泡性樹脂の発泡が抑制された発泡抑制樹脂部7bとを有するように成形される。
次に、ドアモジュールプレート7のように発泡促進樹脂部と発泡抑制樹脂部とを有する発泡樹脂成形品の成形について説明する。
図4は、前記発泡樹脂成形品を成形するための第1の実施形態に係る成形装置を示す概略説明図である。この図に示すように、第1の実施形態に係る成形装置15は、開閉可能な成形型20と、成形型20内に発泡性樹脂を注入する注入手段としての射出装置30と、成形型20のキャビティ23を規定する成形型20のキャビティ面を冷却する冷却手段としての冷却装置40とを備えている。
成形型20は、固定型21と可動型22とによって構成され、固定型21と可動型22とを型閉めすることにより、成形型20内に発泡樹脂成形品の所望形状に応じたキャビティ23が形成される。可動型22は、キャビティ23の一部を規定する固定コア部24とキャビティ23の一部を規定しキャビティ23の容積を拡大させるように矢印X1方向に移動可能な移動コア部25とを有している。
図4に示すように、固定コア部24と移動コア部25とは、型開閉方向に垂直な方向に隣接して設けられ、固定コア部24のキャビティ面24aと移動コア部25のキャビティ面25aとは、これに限定されるものではないが、成形型20の型開閉方向に垂直な方向に略面一状に配置されている。
可動型22は、固定コア部24と移動コア部25とが一体的に型開閉方向に移動可能に構成されるとともに、固定型21と可動型22とを型閉めした状態で、成形型20のキャビティ23の容積を拡大させるように可動型22の移動コア部25のみを型開き方向(矢印X1方向)へ移動させることができるようになっている。なお、移動コア部25は、図示しない移動コア部駆動機構によって成形型20のキャビティ23の容積を拡大させる方向へ移動される。
射出装置30は、発泡性樹脂31を成形型20のキャビティ23に注入するものであり、樹脂32を混錬溶融させるシリンダ33を備え、シリンダ33の内部にはスクリュー34が備えられている。また、スクリュー34の後端には、スクリュー駆動機構及び射出機構(共に不図示)が連結されている。
射出装置30では、シリンダ33の周囲に設けられた加熱ヒータ(不図示)とスクリュー34とによって、シリンダ33に投入された樹脂32を順次加熱するとともに混錬溶融させる。そして、混錬溶融された樹脂32に対し、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを含むボンベ35から超臨界流体発生装置36を介して超臨界状態にされた前記不活性ガスが、超臨界流体注入装置37によって注入され、樹脂32に発泡剤を含有させた発泡性樹脂31が形成される。
シリンダ33内の発泡性樹脂31は、スクリュー34が前記スクリュー駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって射出されることによって成形型20のキャビティ23に注入される。成形型20、具体的には固定型21には、発泡性樹脂31を成形型20内に注入するための注入経路26が設けられている。なお、前記樹脂として、例えばポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡材あるいは化学発泡剤を使用することも可能である。
冷却装置40は、成形型30のキャビティ面を所定温度に冷却するものであり、図4に示すように、固定コア部24のキャビティ面24aを冷却するための可動用冷却装置41と、固定型21のキャビティ面21aであって、固定コア部24のキャビティ面24aに対向する部分のキャビティ面を冷却するための固定用冷却装置51とから構成されている。
可動用冷却装置41は、冷却媒体供給源(不図示)から供給される冷却媒体としての水を所定温度の冷水として供給できるようになっており、冷水供給ホース42と冷水排出ホース43とが連結されている。冷水供給ホース42には給水開閉弁44が介設され、給水開閉弁44は、冷水供給ホース42内を流れる冷水の連通及び遮断が可能に構成されている。また、冷水排出ホース43には排水開閉弁45が介設され、排水開閉弁45は、冷水排出ホース43内を流れる冷水の連通及び遮断が可能に構成されている。
また、可動型22の固定コア部24には、冷却媒体としての水を流通させるための媒体流路27が設けられている。媒体流路27は、固定コア部24のキャビティ面24aを冷却するように配置され、媒体流路27には、冷水供給ホース42と冷水排出ホース43とが連結されている。
可動用冷却装置41では、給水開閉弁44及び排水開閉弁45を開いた状態で、可動用冷却装置41を作動させることにより、固定コア部24のキャビティ面24aを所定温度に冷却し、固定コア部24と該固定コア部24に対向する固定型21との間に位置する発泡性樹脂31を冷却することができるようになっている。
固定用冷却装置51もまた、冷却媒体供給源(不図示)から供給される冷却媒体としての水を所定温度の冷水として供給できるようになっており、固定用冷却装置51には、冷水供給ホース52と冷水排出ホース53とが連結されている。冷水供給ホース52には給水開閉弁54が介設され、給水開閉弁54は、冷水供給ホース52内を流れる冷水の連通及び遮断が可能に構成されている。また、冷水排出ホース53には排水開閉弁55が介設され、排水開閉弁55は、冷水排出ホース53内を流れる冷水の連通及び遮断が可能に構成されている。
また、固定型21には、冷却媒体としての水を流通させるための媒体流路28が設けられている。媒体流路28は、固定コア部24のキャビティ面24aに対向する部分の固定型21のキャビティ面21aを冷却するように配置され、媒体流路28には、冷水供給ホース52と冷水排出ホース53とが連結されている。
固定用冷却装置51では、給水開閉弁54及び排水開閉弁55を開いた状態で、固定用冷却装置51を作動させることにより、固定コア部24のキャビティ面24aに対向する部分の固定型21のキャビティ面21aを所定温度に冷却し、固定コア部24と該固定コア部24に対向する固定型21との間に位置する発泡性樹脂31を冷却することができるようになっている。なお、冷却媒体として冷水を用いているが、例えば冷気などその他の冷却媒体を用いるようにしてもよい。
また、成形装置15は、該成形装置15を総合的に制御する制御ユニット(不図示)を備えており、該制御ユニットは、成形型20の開閉駆動、成形型20の移動コア部25の型開き方向への移動機構、射出装置30の発泡性樹脂31の注入機構、冷却装置40の作動(給水開閉弁及び排水開閉弁の作動を含む)等の各種制御を行う。なお、前記制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
次に、前記成形装置15を用いた発泡樹脂成形品の成形について説明する。
先ず、固定コア部24のキャビティ面24aと移動コア部25のキャビティ面25aとが略面一状に配置された状態で、成形型20が型閉じされ、その後に、成形型20のキャビティ23に、樹脂32に発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂31が射出装置30から注入される。
図5は、前記成形装置に用いる成形型の第1の実施例を示す断面説明図であり、図5の(a)は、前記成形型のキャビティに発泡性樹脂が注入された状態を示し、図5の(b)は、前記キャビティの容積を拡大させるように前記成形型の移動コア部が移動された状態を示している。図5(a)に示すように、成形型20のキャビティ23に発泡性樹脂31が注入されると、次に、固定型21と可動型22とを型閉じした状態で、成形型20のキャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25が矢印X1方向に移動される。
前述したように、移動コア部25をキャビティ23の容積を拡大させるように移動させ、発泡促進樹脂部と発泡抑制樹脂部とを有する発泡樹脂成形品を成形する場合には、移動コア部25と該移動コア部25と対向する部分の固定型21との間(以下、適宜「移動コア部25側」を用いる)に位置する発泡性樹脂31の樹脂圧力の低下に伴って、固定コア部24と該固定コア部24と対向する部分の固定型21との間(以下、適宜「固定コア部24側」を用いる)に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動して発泡抑制樹脂部において発泡する畏れがあるが、本実施形態では、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31を冷却することで、かかる問題を回避する。
成形装置15では、成形型20のキャビティ23に発泡性樹脂31が注入された後に、冷却装置40を作動させ、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31に接する成形型20のキャビティ面、具体的には固定コア部24のキャビティ面24a及び該固定コア部24のキャビティ面24aに対向する部分の固定型21のキャビティ面21aを、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31に接する成形型20のキャビティ面、具体的には移動コア部25のキャビティ面25a及び該移動コア部25のキャビティ面25aに対向する部分の固定型21のキャビティ面21aより低い温度に冷却し、移動コア部25の移動方向X1と反対方向に固定コア部24のキャビティ面24aが投影される領域に位置する、具体的には固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31を、移動コア部25の移動方向X1と反対方向に移動コア部25のキャビティ面25aが投影される領域に位置する、具体的には移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31より低い温度に冷却する。なお、冷却装置40は、発泡性樹脂31のキャビティ23内への注入開始後に作動させるようにしてもよい。
図5(b)に示すように、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31を移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31より低い温度に冷却した状態で、キャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25を矢印X1方向に移動させることにより、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31の発泡を抑制した状態で、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31の発泡を促進させる。そして、発泡性樹脂31が次第に冷却されて固化し、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡促進樹脂部39aと固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡抑制樹脂部39bとを有する発泡樹脂成形品39が成形される。
成形装置15では、前記制御ユニットによって、キャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31に接する成形型20のキャビティ面の温度が移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31に接する成形型20のキャビティ面の温度より低い温度に設定されるように冷却装置40の作動が制御される。
このようにして、成形型20のキャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31より低い温度に冷却されるので、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31の流動性が低下し、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が、移動コア部25側に流動することを抑制することができる。
なお、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31を冷却する冷却装置40によって、キャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制する抑制手段が構成されている。
本実施形態においては、発泡樹脂成形品39を成形する上で、キャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制する抑制手段40を講じて、移動コア部25がキャビティ23の容積を拡大させるように移動されることにより、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31の樹脂圧力の低下に伴って固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制し、発泡抑制樹脂部39bにおいて発泡することを抑制することができ、発泡樹脂成形品39において発泡抑制樹脂部39bの物性を向上させることができる。
また、冷却装置40によって、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31より低い温度に冷却され、発泡抑制樹脂部39bにおいて発泡が直接的に抑制されるので、比較的に簡単な手段によって、前記効果を奏することができる。
更に、冷却装置40によって、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31に接する成形型20のキャビティ面の温度が、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31に接する成形型20のキャビティ面の温度より低い温度に冷却され、発泡抑制樹脂部39bにおいて発泡が抑制されるので、比較的に簡単且つ確実な手段によって、前記効果を奏することができる。
また更に、発泡性樹脂31に、物理発泡剤が含有されていることにより、前記効果を有効に実現し得る発泡性樹脂を提供することができる。物理発泡剤が含有される場合には、化学発泡剤が含有される場合に比して発泡圧が高くなり発泡しやすくなるが、かかる場合においても、前記効果を有効に奏することができる。
また更に、物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることにより、前記効果をより有効に実現し得る物理発泡剤を提供することができる。物理発泡剤として超臨界状態の流体を用いる場合には、より微細な発泡セルを有する発泡樹脂成形品を成形することができ、発泡性樹脂成形品の全体的な物性をさらに向上させることができる。
また、発泡性樹脂31にさらに、該発泡性樹脂31を補強する補強繊維を含有させるようにしてもよい。発泡性樹脂31に補強繊維が含有され繊維のスプリングバック現象によって発泡性樹脂の発泡がさらに促進される場合においても、前述したような発泡樹脂成形品の成形によれば、固定コア部側に位置する発泡性樹脂を冷却することで、発泡抑制樹脂部において発泡することを抑制することができる。
前記実施形態では、発泡促進樹脂部39aと発泡抑制樹脂部39bとを有する発泡樹脂成形品39を成形するための成形型20が、固定型21と、固定コア部24及び移動コア部25を有する可動型22とによって構成されているが、固定型が、成形型のキャビティの容積を拡大させるように移動可能な移動コア部と該移動コア部に隣接する固定コア部とを有するようにしてもよい。
図6は、前記成形装置に用いる成形型の第2の実施例を示す断面説明図であり、図6の(a)は、前記成形型のキャビティに発泡性樹脂が注入された状態を示し、図6の(b)は、前記キャビティに発泡性樹脂が注入された後に前記キャビティの容積が拡大された状態を示している。図6(a)に示すように、前記成形型60は、固定型61と可動型62とによって構成され、固定型61と可動型62とを型閉めすることにより成形型60内にキャビティ63が形成されている。
固定型61は、キャビティ63の一部を規定する第1のコア部65と、キャビティ63の一部を規定し、第1のコア部65に対し可動型62の型開き方向(矢印X2方向)に移動可能な第2のコア部64とを備え、第1のコア部64と第2のコア部65とは、型開閉方向に垂直な方向に隣接し、第1のコア部64のキャビティ面64aと第2のコア部65のキャビティ面65aとは、これに限定されるものではないが、成形型20の型開閉方向に垂直な方向に略面一状に配置されている。また、第2のコア部64には、該第2のコア部64のキャビティ面64aを冷却するための冷却媒体が流通する媒体流路67が形成され、媒体流路67は、冷水供給ホース52及び冷水排出ホース53を介して固定用冷却装置51に接続されている。
一方、可動型62は、成形型60を型閉じした状態で、成形型60のキャビティ63の容積を拡大させるように、第2のコア部64とともに可動型62の型開き方向(矢印X2方向)へ移動可能に構成されている。また、可動型62には、第2のコア部64のキャビティ面64aに対向する部分の可動型62のキャビティ面62aを冷却するための冷却媒体が流通する媒体流路68が形成され、媒体流路68は、冷水供給ホース42及び冷水排出ホース43を介して可動用冷却装置41に接続されている。
成形型60においても、図6(a)に示すように、成形型60が型閉じした状態でキャビティ63に発泡性樹脂31が注入されると、冷却装置40によって、第2のコア部64と該第2のコア部64に対向する部分の可動型62との間(以下、適宜「第2のコア部64側」を用いる)に位置する発泡性樹脂31が第1のコア部65と該第1のコア部65に対向する部分の可動型62との間(以下、適宜「第1のコア部65側」を用いる)に位置する発泡性樹脂31より低い温度に冷却される。
そして、図6(b)に示すように、第2のコア部64側に位置する発泡性樹脂31を第1のコア部65側に位置する発泡性樹脂31より低い温度に冷却した状態で、キャビティ63の容積を拡大させるように第2のコア部64と可動型62とをともに矢印X2方向に移動させることにより、第1のコア部65側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡促進樹脂部69aと第2のコア部64側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡抑制樹脂部69bとを有する発泡樹脂成形品69が成形される。
成形型60を用いて発泡樹脂成形品69を成形する場合においても、第2のコア部64と可動型62とをともに移動する際に、第2のコア部64側に位置する発泡性樹脂31を冷却することで、第1のコア部65側に位置する発泡性樹脂31の樹脂圧力の低下に伴って第2のコア部64側に位置する発泡性樹脂31が第1のコア部65側に流動することを抑制し、発泡抑制樹脂部69bにおいて発泡することを抑制することができ、発泡樹脂成形品69において発泡抑制樹脂部69bの物性を向上させることができる。
なお、成形型60では、成形型60を型閉じした状態でキャビティ63の容積を拡大させるように第1のコア部65に対して第2のコア部65と可動型62とがともに矢印X2方向へ移動され、第2のコア部64と可動型62とに対して相対的に第1のコア部65が矢印X2方向と反対方向に移動されるので、第1のコア部65が成形型20における移動コア部25に相当し、第1のコア部64が成形型20における固定コア部24に相当する。
前述した実施形態では、発泡促進樹脂部と発泡抑制樹脂部とを有する発泡樹脂成形品を成形する際に、固定コア部側に位置する発泡性樹脂を冷却して、固定コア部側に位置する発泡性樹脂が移動コア部側に流動することを抑制しているが、移動コア部に隣接する固定コア部の周縁部のキャビティ面のみを冷却し、固定コア部側に位置する発泡性樹脂が移動コア部側に流動することを抑制するようにしてもよい。
図7は、前記成形装置に用いる成形型の第3の実施例を示す断面説明図であり、図7の(a)は、前記成形型のキャビティに発泡性樹脂が注入された状態を示し、図7の(b)は、前記キャビティの容積を拡大させるように前記成形型の移動コア部が移動された状態を示している。成形型70は、前述した成形型20と媒体流路の形状が異なること以外は、成形型20と同様の構成を備えているので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
成形型70では、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31を冷却するために可動型22に設けられる媒体流路77と固定型21に設けられる媒体流路78とが、移動コア部25に隣接する固定コア部24の周縁部と該固定コア部24の周縁部に対向する部分の固定型21との間(斜線ハッチングを施した領域)に位置する発泡性樹脂31aを冷却するように形成されている。
媒体流路77は、固定コア部24のキャビティ面24aの周縁部では、キャビティ面24a近傍に位置付けられ、固定コア部24のキャビティ面24aの中央部では、キャビティ面24aから離れて位置付けられている。また、媒体流路78は、固定コア部24の周縁部に対向する部分の固定型21のキャビティ面21aでは、キャビティ面21a近傍に位置付けられ、固定コア部24の中央部に対向する部分の固定型21のキャビティ面21aでは、キャビティ面21aから離れて位置付けられている。
成形型70においても、図7(a)に示すように成形型70のキャビティ23に発泡性樹脂31が注入された後に冷却装置40を作動させる。これにより、固定コア部24の周縁部と該固定コア部24の周縁部に対向する部分の固定型21との間(以下、適宜「固定コア部24の周縁部側」を用いる)に位置する発泡性樹脂31aを、固定コア部24の中央部と該固定コア部24の中央部に対向する部分の固定型21との間(以下、適宜「固定コア部24の中央部側」を用いる)に位置する発泡性樹脂31b及び移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31cより低い温度に冷却する。
そして、固定コア部24の周縁部側に位置する発泡性樹脂31aを固定コア部24の中央部側に位置する発泡性樹脂31b及び移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31cより低い温度に冷却した状態で、図7(b)に示すように、キャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25を矢印X1方向に移動させることにより、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31cからなる発泡促進樹脂部39aと固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31a、31bからなる発泡抑制樹脂部39bとを有する発泡樹脂成形品39が成形される。
このように、成形型70のキャビティ23の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に、固定コア部24の周縁部側に位置する発泡性樹脂31aが、固定コア部24の中央部側に位置する発泡性樹脂31b及び移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31cより低い温度に冷却されるので、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制し、発泡抑制樹脂部39bにおいて発泡することを抑制することができる。また、固定コア部24の周縁部側に位置する発泡性樹脂31aのみを冷却させた後に移動コア部25を移動させることができるので、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31全体を移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31より低い温度に冷却させる場合に比して、発泡樹脂成形品の成形サイクルタイムを短縮することができる。
前述した実施形態では、冷却装置40を用いて固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制しているが、固定コア部側に位置する発泡性樹脂が移動コア部側に流動することを抑制する抑制部材を固定コア部の周縁部側に押し込むことで、固定コア部側に位置する発泡性樹脂が移動コア部側に流動することを抑制するようにしてもよい。
図8は、前記発泡樹脂成形品を成形するための第2の実施形態に係る成形装置に用いる成形型の第1の実施例を示す断面説明図である。第2の実施形態に係る成形装置は、第1の実施形態に係る成形装置15の冷却装置40に代えて、固定コア部側に位置する発泡性樹脂が移動コア部側に流動することを抑制する抑制部材を固定コア部の周縁部側に押し込む機構が成形型に設けられていること以外は、成形装置15と同様の構成を備えている。なお、第2の実施形態に係る成形装置に用いる成形型について、成形型20と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、成形型80は、固定型81と可動型82とによって構成され、固定型81と可動型82とを型閉めすることにより成形型80内にキャビティ83が形成される。可動型82は、キャビティ83の容積を拡大させるように矢印X1方向に移動可能な移動コア部25と該移動コア部25に隣接する固定コア部24とを有している。
一方、固定型81は、固定コア部24のキャビティ面24aの周縁部に対向する部分のキャビティ面81aに凹状に窪む凹部81bが設けられ、この凹部81b内に、矢印X3方向に移動可能なスライドコア85が配置されている。スライドコア85は、キャビティ83内への発泡性樹脂31の注入開始前にはスライドコア85のキャビティ面85aが固定型81のキャビティ面81aより窪んだ状態に配置され、図示しないスライドコア駆動機構によって矢印X3方向に移動されるようになっている。
図9は、前記成形型を用いた発泡樹脂成形品の成形を説明するための説明図であり、図9では、図8におけるB部について示している。発泡樹脂成形品を成形する際には、先ず、成形型80が型閉じされ、固定コア部24のキャビティ面24aと移動コア部25のキャビティ面25aとが略面一状に配置されるとともに、スライドコア85のキャビティ面85aが固定型81のキャビティ面81aより窪んだ状態でスライドコア85が凹部81b内に配置される(図9(a)参照)。
そして、成形型80のキャビティ83に発泡性樹脂31が注入され、固定型81の凹部81b内に注入された発泡性樹脂31が素早く冷却されて凝固し、凝固した発泡性樹脂31からなるリブ31dが凹部81b内に形成される(図9(b)参照)。次に、スライドコア85を矢印X3方向へ移動させ、リブ31dを固定コア部25の周縁部側に押し込み(図9(c)参照)、その後に、キャビティ83の容積を拡大させるように移動コア部25を矢印X1方向へ移動させ、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31を発泡させ、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡促進樹脂部89aと固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡抑制樹脂部89bとを有する発泡樹脂成形品89が成形される(図9(d)参照)。
このように、固定コア部24の周縁部と該固定コア部24の周縁部に対向する部分の固定型81との間に凝固した発泡性樹脂31からなるリブ31dを押し込むことにより、キャビティ83の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に、固定コア部25側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制し、発泡抑制樹脂部89bにおいて発泡することを抑制することができる。
成形型80では、固定コア部25側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制する抑制部材として、凝固した発泡性樹脂31からなるリブ31dを用いているが、キャビティの容積を拡大させるように移動コア部を移動する際に固定コア部の周縁部と該固定コア部の周縁部に対応する部分の固定型との間にインサート部材を配置するようにしてもよい。
図10は、前記発泡樹脂成形品を成形するための第2の実施形態に係る成形装置に用いる成形型の第2の実施例を示す断面説明図であり、図10の(a)は、成形型のキャビティに発泡性樹脂が注入された状態を示し、図10の(b)は、前記キャビティの容積を拡大させるように前記成形型の移動コア部が移動された状態を示している。成形型90は、前述した成形型80の凹部81b内にインサート部材95が配置されていること以外は、成形型80と同様の構成を備えているので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
成形型90は、成形型80と同様に、固定コア部24のキャビティ面24aの周縁部に対向する部分の固定型81のキャビティ面81aに凹部81bが設けられ、凹部81b内に矢印X3方向に移動可能なスライドコア85が配置されているが、成形型90では、凹部81b内においてスライドコア85のキャビティ83側にインサート部材95が配置されている。なお、インサート部材95は、例えば熱可塑性樹脂などの材料から成形される。
成形型90を用いて発泡樹脂成形品を成形する際には、固定コア部24のキャビティ面24aと移動コア部25のキャビティ面25aとが略面一状に配置され、スライドコア85のキャビティ83側にインサート部材95が挿入された状態で成形型90が型閉じされ、その後に、成形型90のキャビティ83に発泡性樹脂31が注入される(図10(a)参照)。
キャビティ83に発泡性樹脂31が注入されると、スライドコア85を矢印X3方向へ移動させ、インサート部材95を固定コア部25の周縁部側に押し込む。そして、インサート部材95が固定コア部25の周縁部側に押し込まれた状態で、キャビティ83の容積を拡大させるように移動コア部25を矢印X1方向へ移動させ、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡促進樹脂部99aと固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡抑制樹脂部99bとを有する発泡樹脂成形品99が成形される(図10(b)参照)。なお、固定コア部25の周縁部側へのインサート部材95の押し込みは、キャビティ83内への発泡性樹脂31の注入開始前あるいは注入中であってもよい。
このように、固定コア部24の周縁部側にインサート部材95を押し込むことにより、キャビティ83の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に、固定コア部25側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制し、発泡抑制樹脂部99bにおいて発泡することを抑制することができる。
前述した成形型80、90では、固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制する抑制部材として、凝固した発泡性樹脂31からなるリブ31dやインサート部材95を用いているが、成形型80、90のスライドコア85自体を前記抑制部材として用いるようにしてもよい。
図11は、前記発泡樹脂成形品を成形するための第2の実施形態に係る成形装置に用いる成形型の第3の実施例を示す断面説明図であり、図11の(a)は、成形型のキャビティに発泡性樹脂が注入された状態を示し、図11の(b)は、成形型のキャビティの容積を拡大させるように成形型の移動コア部が移動された状態を示している。成形型100は、スライドコア85のキャビティ面85aが固定型81のキャビティ面81aと略面一状に設けられていること以外は、成形型80と同様の構成を備えているので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
成形型100を用いて発泡樹脂成形品を成形する際においても、固定コア部24のキャビティ面24aと移動コア部25のキャビティ面25aとが略面一状に配置され、スライドコア85のキャビティ面85aが固定型81のキャビティ面81aと略面一状に配置された状態で成形型90が型閉じされた後に、成形型100のキャビティ83に発泡性樹脂31が注入される(図11(a)参照)。
キャビティ83に発泡性樹脂31が注入されると、スライドコア85を矢印X3方向へ移動させ、スライドコア85を固定コア部25の周縁部側に押し込んだ後に、キャビティ83の容積を拡大させるように移動コア部25を矢印X1方向へ移動させることにより、移動コア部25側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡促進樹脂部109aと固定コア部24側に位置する発泡性樹脂31からなる発泡抑制樹脂部109bとを有する発泡樹脂成形品109が成形される(図11(b)参照)。この発泡樹脂成形品109では、スライドコア85に対応して固定コア部24の周縁部側に溝部109cが形成されている。なお、固定コア部25の周縁部側へのスライドコア95の押し込みは、キャビティ83内への発泡性樹脂31の注入開始前あるいは注入中であってもよい。
このように、固定コア部24の周縁部と固定型81との間にスライドコア85を押し込むことにより、キャビティ83の容積を拡大させるように移動コア部25を移動する際に、固定コア部25側に位置する発泡性樹脂31が移動コア部25側に流動することを抑制し、発泡抑制樹脂部109bにおいて発泡することを抑制することができる。
本実施形態では、発泡樹脂成形品の発泡抑制樹脂部としてドアモジュールプレートの取付部を例に記載しているが、発泡促進樹脂部と発泡抑制樹脂部とを有する発泡樹脂成形品において、例えば他の部材との合わせ部などの寸法精度が要求される部分や他の部材との溶着部などを発泡抑制樹脂部として成形する場合にも適用することができる。
以上のように、本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。