図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図1の例においては、家屋やオフィスビルなどの構内にフェムトセル基地局1が設置されており、フェムトセル基地局1によりフェムトセルC1が形成されている。フェムトセルC1は、半径数メートル、数十メートルなどのフェムトセル基地局1が設置されている構内の範囲を通信可能範囲としてカバーするセルである。
フェムトセル基地局1にはLAN(Local Area Network)ケーブルなどを介して図示せぬモデムが接続されている。モデムは、ADSL回線や光ファイバ回線などよりなるブロードバンド回線の宅内装置である。フェムトセル基地局1は、LANケーブル、モデム、およびブロードバンド回線を介してインターネットなどよりなるネットワークに接続され、図1に示す移動機2がフェムトセルC1に在圏している場合、移動機2が行う音声データなどの通信を中継する。
移動機2は、CDMA方式の通信に対応した携帯電話機などの端末である。図1の例においては、移動機が1台だけ示されているが、フェムトセル基地局1は最大4台などの所定の数の移動機による通信を同時に中継することができる。
また、図1の例においては、フェムトセル基地局1が設置されている建物の外に、マクロセルC2を管理する基地局であるマクロセル基地局3が設置されている。図1の例においてはフェムトセルC1と同程度の大きさで示しているが、マクロセルC2は、フェムトセルC1よりも広いセルである。移動機2においては、フェムトセル基地局1からの電波だけでなく、マクロセル基地局3からの電波も受信可能とされている。
図1にはマクロセル基地局としてマクロセル基地局3しか示していないが、フェムトセル基地局1が設置されている建物の外には、適宜、マクロセル基地局3以外のマクロセル基地局も設けられる。各マクロセル基地局からの電波は移動機2にも到達する。
図2は、図1の通信システムにおいて使用される電波の周波数帯域の例を示す図である。図2の横軸は周波数を表し、縦軸は電波の強度を表す。
CDMA方式の通信システムにおいては、通信会社に割り当てられた周波数帯域全体が所定の数の帯域に分けられ、どの周波数帯域の電波を使用するのかが各マクロセル基地局に設定されている。移動機は、自分が在圏しているマクロセルの電波の周波数帯域に合わせて、送受信する電波の周波数を選択し、無線通信を行う。
図2の例においては、ダウンリンクの周波数帯域として2150〜2170MHzが割り当てられ、その20MHzの帯域幅の周波数帯域が5MHzずつ、F1,F2,F3,F4の4つの周波数帯域に分けられている。あるマクロセル基地局は周波数帯域F1を使用し、またあるマクロセル基地局は周波数帯域F2、F3の複数を使用するといったように、各マクロセル基地局に周波数帯域が割り当てられる。
図2に示すように、周波数帯域F1の中心周波数f1は2152.6MHz、周波数帯域F2の中心周波数f2は2157.6MHz、周波数帯域F3の中心周波数f3は2162.4MHz、周波数帯域F4の中心周波数f4は2167.4MHzとなる。
周波数帯域F1乃至F4の帯域幅は5MHzであるが、f1乃至f4を中心周波数として、3.84MHz(3840kHz)の帯域幅を有する電波が各マクロセル基地局から発射される。
フェムトセル基地局1も同様に、F1,F2,F3,F4の4つの周波数帯域のうちのいずれかの周波数帯域の電波を発射し、フェムトセルC1に在圏している移動機と通信を行う。複数の周波数帯域の電波をフェムトセル基地局1が発射することについては後述する。
フェムトセル基地局1、マクロセル基地局3からの電波も含めて、図1の移動機2により受信される各基地局からの電波は図2に示すようにして表される。各電波の強度は、基地局から移動機2までの距離や、基地局と移動機2の間にある遮蔽物などによって決まる。
このような5MHzの帯域幅の周波数帯域F1,F2,F3,F4を使用して移動機2と通信を行うフェムトセル基地局1には、マクロセルに在圏している移動機2をフェムトセルC1に移行させるための在圏アシスト機能が設けられている。
移動機2が在圏しているマクロセルのEc/Noが上述したQqualmin以下になるなどして劣化した場合、移動機2においては他のセルへの移行が発生する。在圏しているマクロセルの電波が劣化したときにフェムトセル基地局1からの電波が移動機2により受信されていれば、移動機2をフェムトセルC1に移行させることが可能になる。
在圏アシスト機能は、マクロセルの電波を劣化させるとともに、フェムトセル基地局1自身が発射する電波を移動機2に受信させる機能となる。
フェムトセルC1に在圏させるための方式として、例えば、コンペティング周波数方式、オーバーラップ周波数方式、妨害波方式の3つの方式が用意されている。
どの在圏方式によって移動機2をフェムトセルC1に在圏させるのかは、リスニングモードでの動作によって検出されたマクロセル基地局からの電波の状況によってフェムトセル基地局1により選択される。
リスニングモードは、マクロセル基地局などの外部の基地局が発射する電波を受信し、受信した電波の状況を検出するモードである。例えば、受信した電波が周波数帯域F1,F2,F3,F4のうちのどの周波数帯域の電波であるのか、すなわち、外部の基地局による使用済みの周波数帯域がどの周波数帯域であるのかや、電波の強度(電力)などが検出される。
リスニングモードでの動作によって、フェムトセル基地局1においては、フェムトセル基地局1の設置位置において受信可能な外部の基地局からの電波の周波数と強度が図2に示すようにして観測される。その観測結果に基づいて、コンペティング周波数方式、オーバーラップ周波数方式、妨害波方式の中から在圏方式が適宜選択され、選択された在圏方式によって、移動機2をフェムトセルC1に在圏させることが行われる。
ここで、各在圏方式について説明する。
図3は、コンペティング周波数方式の例を示す図である。
コンペティング周波数方式は、マクロセル基地局により使用されている周波数帯域と同じ周波数帯域の電波を発射することで移動機2をフェムトセルC1に在圏させる方式である。フェムトセル基地局1が発射する電波の強度は、マクロ基地局からの電波の受信強度より高い強度とされる。
リスニングモードでの動作によって、図3Aに示すように、あるマクロセル基地局からの電波として周波数帯域F3の電波を受信し、1つの周波数帯域が使用済みであることを検出した場合、フェムトセル基地局1はコンペティング周波数方式を選択する。
この場合、フェムトセル基地局1は、図3Bに示すような、使用済みの周波数帯域と同じ周波数帯域F3の電波であって、マクロセル基地局からの電波の強度より高い強度の電波を発射する。
図3A、図3Bの例においては、マクロセル基地局からの電波のフェムトセル基地局1の設置位置における強度はp1であり、フェムトセル基地局1が発射する電波を移動機2が受信する強度は、p1より高いp2である。
図3Cは、図3Aに示すマクロセル基地局からの電波と、図3Bに示すフェムトセル基地局1が発射する電波を重ねて示す図である。
フェムトセルC1が半径数メートルから数十メートルといった比較的狭い範囲であるため、マクロセル基地局からの電波は、フェムトセル基地局1の設置位置と移動機2の位置においてほぼ同じようにして受信される。
移動機2においては、図3Cに示すような形で、マクロセル基地局からの電波とフェムトセル基地局1からの電波が受信されることになる。
マクロセル基地局からの電波とフェムトセル基地局1からの電波を、図3Cに示すような状態で受信した場合、マクロセルに在圏している移動機2は、マクロセル基地局からの電波が劣化していることを検出し、高い強度で電波を受信可能なフェムトセルC1に移行する。マクロセル基地局からの電波がフェムトセル基地局1からの電波によりマスクされることによって、マクロセルのEc/NoがQqualmin以下になる。
移動機2がフェムトセルC1に在圏した場合、フェムトセル基地局1は周波数帯域F3を使用して移動機2と通信を行う。
すなわち、マクロセル基地局からの電波を劣化させるための電波が、そのまま、移動機2と通信を行うための電波として使用されることになる。これにより、在圏のアシストと通信を効率的に行うことができる。
このように、コンペティング周波数方式によれば、マクロセル基地局により使用されている周波数帯域と競合させて同じ周波数帯域を選択し、選択した周波数帯域の電波を発射することによって、移動機2をフェムトセルC1に在圏させることが可能になる。
図4は、オーバーラップ周波数方式の例を示す図である。
オーバーラップ周波数方式は、マクロセル基地局により使用されている複数の周波数帯域のそれぞれに跨るように、3.84MHzの帯域幅の電波を発射することで移動機2をフェムトセルC1に在圏させる方式である。フェムトセル基地局1が発射する電波の強度は、マクロ基地局からの電波の受信強度より高い強度とされる。
リスニングモードでの動作によって、図4Aに示すように、マクロセル基地局からの電波として周波数帯域F3の電波と周波数帯域F4の電波を受信し、周波数軸上で隣接する2つの周波数帯域が使用済みであることを検出した場合、フェムトセル基地局1はオーバーラップ周波数方式を選択する。
この場合、フェムトセル基地局1は、図4Bに示すような、使用済みの周波数帯域の中心周波数f3とf4の中間の周波数である周波数f3.5を中心周波数として選択する。中心周波数f3.5は2164.9MHzである。
また、フェムトセル基地局1は、周波数f3.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の電波であって、マクロセル基地局からの電波の強度より高い強度の電波を発射する。図4A、図4Bの例においては、マクロセル基地局からの電波のフェムトセル基地局1および移動機2の設置位置における強度はp11であり、フェムトセル基地局1が発射する電波を移動機2が受信する強度は、p11より高いp12である。
図4Cは、図4Aに示すマクロセル基地局からの電波と、図4Bに示すフェムトセル基地局1が発射する電波を重ねて示す図である。
マクロセル基地局からの電波とフェムトセル基地局1からの電波を、図4Cに示すような状態で受信した場合、マクロセルに在圏している移動機2は、マクロセル基地局からの電波が劣化していることを検出し、高い強度で電波を受信可能なフェムトセルC1に移行する。図4Cの例においては、マクロセル基地局からの電波がフェムトセル基地局1からの電波と干渉を起こすことによって、両方のマクロセルのEc/NoがQqualmin以下になる。
移動機2がフェムトセルC1に在圏した場合、フェムトセル基地局1は、周波数f3.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の周波数帯域を使用して移動機2と通信を行う。
すなわち、オーバーラップ周波数方式においても、マクロセル基地局からの電波を劣化させるための電波が、そのまま、移動機2と通信を行うための電波として使用されることになる。これにより、在圏のアシストと通信を効率的に行うことができる。
図1の通信システムにおいては、基本的に周波数帯域F1,F2,F3,F4のうちのいずれかの周波数帯域を使用して通信が行われるが、各周波数帯域の中心周波数を基準として、200kHz間隔で中心周波数を選択し、3.84MHzの帯域幅の周波数帯域を使用して通信を行うことも可能とされている。周波数f3.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の電波をフェムトセル基地局1が発射している場合、移動機2は、受信する電波の中心周波数を周波数f3.5に合わせ、3.84MHzの帯域幅の電波を使用して通信を行う。
このように、オーバーラップ周波数方式によれば、マクロセル基地局により使用されている複数の周波数帯域に跨るような周波数帯域を有する電波を発射することによって、移動機2をフェムトセルC1に在圏させることが可能になる。
図5は、オーバーラップ周波数方式の他の例を示す図である。
リスニングモードでの動作によって、図5Aに示すように、マクロセル基地局からの電波として周波数帯域F3の電波と周波数帯域F4の電波を受信し、周波数軸上で隣接する2つの周波数帯域が使用済みであることを検出した場合、図4を参照して説明したように、フェムトセル基地局1はオーバーラップ周波数方式を選択する。図4の例においては、周波数帯域F3,F4の電波の強度がいずれもp11であるものとしたが、図5の例においては、周波数帯域F3の電波の強度はp21、周波数帯域F4の電波の強度は、p21より高いp22である。
この場合、フェムトセル基地局1は、図5Bに示すような、使用済みの周波数帯域の中心周波数f3とf4の間の周波数であって、強度が高い方の電波の周波数帯域に若干寄った周波数である周波数f3.8を中心周波数として選択する。中心周波数f3.8は2166.4MHzである。
また、フェムトセル基地局1は、周波数f3.8を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の電波であって、マクロセル基地局からの電波の強度より高い強度の電波を発射する。図5Bの例においては、フェムトセル基地局1が発射する電波を移動機2が受信する強度は、p21,p22より高いp23である。
図5Cは、図5Aに示すマクロセル基地局からの電波と、図5Bに示すフェムトセル基地局1が発射する電波を重ねて示す図である。
マクロセル基地局からの電波とフェムトセル基地局1からの電波を、図5Cに示すような状態で受信した場合、マクロセルに在圏している移動機2は、マクロセル基地局からの電波が劣化していることを検出し、高い強度で電波を受信可能なフェムトセルC1に移行する。
移動機2がフェムトセルC1に在圏した場合、フェムトセル基地局1は、周波数f3.8を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の周波数帯域を使用して移動機2と通信を行う。この場合も、マクロセル基地局からの電波を劣化させるための電波が、そのまま、移動機2と通信を行うための電波として使用されることになる。
周波数f3.8は、使用済みの周波数帯域F3とF4の両方に3.84MHzの帯域幅の周波数帯域が跨り、マクロセル基地局からの周波数帯域F3の電波と周波数帯域F4の電波に対する干渉量を最大にする周波数を探索することによって選択される。
フェムトセル基地局1が発射する電波のうち、周波数帯域F3に入り込んでいる部分は、周波数帯域F3に存在するマクロセル基地局からの電波に対して干渉を与えることになる。また、周波数帯域F4に入り込んでいる部分は、周波数帯域F4に存在するマクロセル基地局からの電波に対して干渉を与えることになる。
フェムトセル基地局1が発射する電波の中心周波数を周波数f4として、強度の高い方の電波である周波数帯域F4の電波を集中的に劣化させることも考えられるが、このようにした場合、周波数帯域F3を使用しているマクロセルに移動機2が移行する可能性が残ってしまう。移動機2においては、周波数帯域F4の電波以外に、周波数帯域F3の電波も受信されている。
より確実にフェムトセルC1に移行させるためには周波数帯域F3の電波の方も劣化させる必要があり、よって、フェムトセル基地局1が発射する電波の一部は周波数帯域F3に入り込んでいる必要がある。
図6は、妨害波方式の例を示す図である。
妨害波方式は、周波数帯域F1,F2,F3,F4の全域、または一部の帯域の周波数を有する妨害波を、移動機2との通信に使用する周波数帯域F1,F2,F3,F4のうちのいずれかの周波数帯域の電波とともに発射することで移動機2をフェムトセルC1に在圏させる方式である。フェムトセル基地局1が発射する妨害波の強度は、マクロ基地局からの電波の受信強度より高い強度とされる。
リスニングモードでの動作によって、マクロセル基地局からの電波としてF1,F2,F3といったように3つ以上の周波数帯域の電波を受信した場合や、2つの周波数帯域の電波ではあるが、F1,F3といったように周波数軸上で離れた周波数帯域の電波を受信した場合、フェムトセル基地局1は妨害波方式を選択する。
3つ以上の周波数帯域や、周波数軸上で離れた周波数帯域がマクロセル基地局により使用されている場合、上述したオーバーラップ方式では全てのマクロセル基地局からの電波を劣化させることができないため、妨害波方式が選択される。
この場合、フェムトセル基地局1は、図6Aに示すように、移動機2との通信に使用する電波として例えば周波数帯域F3の電波を発射する。図6Aにおいて、周波数帯域F3の電波の強度はp31であり、周波数帯域F1,F2,F4の電波の強度は、p31より低いp32である。実際には、通信に使用されていない周波数帯域にもこのように所定の強度の電波が検出される。
また、フェムトセル基地局1は、図6Bに示すように、例えば周波数帯域F1,F2,F3,F4の全域に渡る周波数帯域を有する電波を妨害波として発射する。妨害波の強度は、強度p31より低く、p32より高いp33である。
周波数帯域F3の電波は、送信対象のデータのRF信号を変調し、変調信号をアップコンバートして出力した電波である。これに対して、妨害波は、ホワイトノイズの信号を周波数帯域F1,F2,F3,F4の全域に渡る周波数帯域の電波として発射したものである。ホワイトノイズの信号は、専用の発生器により生成される信号である。
図6Cは、図6Aに示す通信に使用する電波と、図6Bに示す妨害波を重ねて示す図である。
フェムトセル基地局1からの電波を、図6Cに示すような状態で受信した場合、マクロセルに在圏している移動機2は、マクロセル基地局からの電波が劣化していることを検出し、高い強度で電波を受信可能なフェムトセルC1に移行する。
図6Cの例においては、点線で示すマクロセル基地局からの周波数帯域F1の電波と周波数帯域F3の電波が、フェムトセル基地局1からの電波のうちの妨害波の成分によってマスクされ、マクロセルのEc/NoがQqualmin以下になる。
移動機2がフェムトセルC1に在圏した場合、フェムトセル基地局1は、周波数帯域F3を使用して移動機2と通信を行う。
このように、妨害波方式によれば、マクロセル基地局が発射する電波を妨害波によって劣化させることができ、妨害波とは別に発射している電波によって移動機2をフェムトセルC1に在圏させ、通信を行うことが可能になる。
妨害波方式は、図3Aに示すように使用済みの周波数帯域が1つである場合にも、図4Aに示すように使用済みの周波数帯域が複数である場合にも用いることが可能であるが、実際に通信に使用する電波ではない、いわば不要な電波を発射することになるため、コンペティング周波数方式、オーバーラップ方式と比べて、優先度は低くなる。
コンペティング周波数方式、オーバーラップ方式を妨害波方式より優先的に選択することにより、不要な電波の発射を抑えることが可能になる。
また、移動機2がフェムトセルC1に在圏したタイミングで、妨害波の発射を停止させるようにしてもよい。これによっても、不要な電波の発射を抑えることが可能になる。
図7は、妨害波方式の他の例を示す図である。
図6の例においては、ホワイトノイズの信号が妨害波の生成の元になる信号として用いられるものとしたが、ダミーシグナルが妨害波の生成の元になる信号として用いられるようにしてもよい。ダミーシグナルは、例えば、全部0の値、全部1の値といったような、送受信されるデータ中には現れないビットの並びからなる信号である。
図7Bは、ダミーシグナルを変調し、変調信号を周波数帯域F1,F2,F3,F4の全域に渡る周波数帯域の電波として発射した妨害波を示す図である。図7Cは、図7Aに示す通信に使用する電波と、図7Bに示す電波を重ねて示す図である。
これによっても、図7Cに点線で示すマクロセル基地局からの周波数帯域F1の電波と周波数帯域F3の電波を、フェムトセル基地局1からの電波のうちの妨害波の成分によってマスクし、劣化させることが可能になる。
以上のような3つの在圏方式を用いて移動機2をフェムトセルC1に在圏させるフェムトセル基地局1の処理については後述する。
[フェムトセル基地局1の構成例]
図8は、フェムトセル基地局1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図8に示すように、フェムトセル基地局1は、ネットワーク通信部21、制御部22、無線通信部23、アンテナ24、および妨害信号生成部25から構成される。
ネットワーク通信部21はネットワークのインタフェースであり、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)などの所定のプロトコルに従って、ネットワークに接続されるサーバなどとモデムを介して通信を行う。
ネットワーク通信部21は、交換機としての機能を有するサーバであるCSCF(Call Session Control Function)から送信され、モデムから転送されてきた音声データを無線通信部23に出力し、一方、無線通信部23から供給された、フェムトセルC1に在圏している移動機2からの音声データをモデムに出力してCSCFに送信させる。
制御部22はCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)などよりなり、所定のプログラムを実行してフェムトセル基地局1の全体の動作を制御する。
例えば、制御部22は、リスニングモードでの動作を行い、無線通信部23から供給された信号に基づいて、マクロセル基地局からの電波の状況を検出する。また、制御部22は、在圏方式を選択し、無線通信部23と妨害信号生成部25を制御して在圏方式に応じた電波を発射させる。
無線通信部23は、W-CDMA、CDMA2000などの方式でフェムトセルC1に在圏している移動機2と無線通信を行う。無線通信部23は送信部31と受信部32から構成される。
送信部31は、制御部22による制御に従って、空中線電力が20mW以下などの所定の強度の電波をアンテナ24から発射し、ネットワーク通信部21から供給された音声データなどの所定のデータをフェムトセルC1に在圏している移動機2に送信する。
また、送信部31は、妨害信号生成部25から供給された妨害信号に基づいてアンテナ24から妨害波を発射する。
受信部32は、リスニングモードでの動作時、アンテナ24において電波が受信されることに応じて得られた信号を制御部22に出力する。また、受信部32は、アンテナ24から供給された信号に基づいて、移動機2から送信されてきた音声データなどの所定のデータを受信し、ネットワーク通信部21に出力する。
妨害信号生成部25は、制御部22による制御に従ってホワイトノイズの信号やダミーシグナルからなる妨害信号を生成し、無線通信部23に出力する。
また、妨害信号生成部25は、制御部22による制御に従って妨害信号の生成を停止し、妨害波の発射を終了させる。フェムトセルC1に移行した移動機2からは、位置登録の要求が送信されてくる。例えば、妨害波の発射は、その要求が移動機2から送信されてきたことに応じて停止される。
位置登録処理は、各移動機がどのセルに在圏しているのかを、コアネットワークなどに接続されるHSS(Home Subscriber Server)に登録する処理である。HSSは、コアネットワークなどに接続される装置であり、各移動機がどのセルに在圏しているのかを管理し、適宜、管理している情報をCSCFなどに提供するサーバである。
妨害波の発射を開始してからあらかじめ設定された所定の時間が経過したタイミングで妨害波の発射が停止されるようにしてもよい。
図9は、フェムトセル基地局1の機能構成例を示すブロック図である。
図9に示すように、フェムトセル基地局1の制御部22においては、検出部41と在圏方式選択部42が実現される。図9に示す機能部のうちの少なくとも一部は、制御部22内のCPUにより所定のプログラムが実行されることによって実現される。
検出部41は、無線通信部23の受信部32から供給される信号に基づいて、図3A、図4Aに示すような、マクロセル基地局からの電波の受信状況を検出する。
検出部41は、マクロセル基地局により使用されている周波数帯域が周波数帯域F1,F2,F3,F4のうちのどの周波数帯域であるのかを表す情報や、受信強度を表す情報を在圏方式選択部42に出力する。
在圏方式選択部42は、検出部41から供給された情報に基づいて在圏方式を選択する。
図10は、上述した在圏方式の選択のパターンをまとめて示す図である。
図10に示すように、マクロセル基地局により使用されている周波数帯域が1つの周波数帯域である場合、在圏方式選択部42はコンペティング周波数方式を選択する。
また、マクロセル基地局により使用されている周波数帯域が2つの周波数帯域であり、それらが周波数軸上で隣接している場合、在圏方式選択部42はオーバーラップ周波数方式を選択し、周波数軸上で離れている場合、妨害波方式を選択する。
マクロセル基地局により使用されている周波数帯域が3つ、または4つの周波数帯域である場合、在圏方式選択部42は妨害波方式を選択する。
フェムトセル基地局1が周波数帯域F1,F2,F3,F4のうちのいずれか1つの周波数帯域の電波しか同時には発射することができない場合、在圏方式選択部42においてはこのようにして在圏方式が選択される。
在圏方式の選択のパターンは図10に示すものに限られない。3.84MHzなどの所定の帯域幅の電波を1つの電波とすると、フェムトセル基地局1が発射可能な電波の数などに応じて、適宜、在圏方式の選択のパターンは変更される。
在圏方式選択部42は、コンペティング周波数方式を選択した場合、発射する電波の中心周波数、あるいは周波数帯域を表す情報と、電波の強度を表す情報を送信部31に出力する。
また、在圏方式選択部42は、オーバーラップ周波数方式を選択した場合、発射する電波の中心周波数を図5Cを参照して説明したようにして選択し、選択した中心周波数を表す情報と、電波の強度を表す情報を送信部31に出力する。
在圏方式選択部42は、妨害波方式を選択した場合、所定の強度の妨害波を発射することを妨害信号生成部25に指示する。また、在圏方式選択部42は、妨害波とともに発射する移動機2との通信に使用する電波の中心周波数、あるいは周波数帯域を表す情報と、通信に使用する電波と妨害波の強度を表す情報を送信部31に出力する。
[フェムトセル基地局1の動作]
ここで、図11のフローチャートを参照して、フェムトセル基地局1の在圏アシスト処理について説明する。
この処理は、リスニングモードで起動したことをトリガとして開始される。フェムトセル基地局1は、1日に1回などの所定のタイミングでリスニングモードでの動作を行う。
ステップS1において、検出部41は、無線通信部23から供給される信号に基づいてマクロセル基地局からの電波の受信状況を検出する。
ステップS2において、在圏方式選択部42は、検出部41から供給された情報に基づいて、図10を参照して説明したようにして在圏方式を選択する。
ステップS3において、送信部31は、選択された在圏方式に従って電波を発射する。
例えば、コンペティング周波数方式が選択された場合、送信部31は、在圏方式選択部42から供給された情報に基づいて、マクロセル基地局により使用されている周波数帯域と同じ周波数帯域の所定の強度の電波を発射する。
また、オーバーラップ周波数方式が選択された場合、送信部31は、在圏方式選択部42から供給された情報に基づいて、マクロセル基地局により使用されている複数の周波数帯域のそれぞれに跨るように、3.84MHzの帯域幅の所定の強度の電波を発射する。
妨害波方式が選択された場合、送信部31は、妨害信号生成部25から供給される妨害信号に基づいて妨害波を発射し、在圏方式選択部42から供給された情報に基づいて、移動機2との通信に使用する所定の周波数帯域の電波を発射する。
その後、処理は終了され、フェムトセルC1に在圏した移動機2とフェムトセル基地局1の間で通信が行われる。
以上の処理により、他のセルに在圏している移動機2を、フェムトセルC1に移行させることができる。
また、リスニングモードでの動作が1日に1回などの所定のタイミングで繰り返し行われることにより、マクロセルの構成に変更が生じた場合であっても、その変更に対応しつつ、移動機2をフェムトセルC1に在圏させることができる。
[変形例]
以上においては、コンペティング周波数方式、オーバーラップ周波数方式、および妨害波方式の3つの方式の中からいずれかの在圏方式が選択されるものとしたが、コンペティング周波数方式と妨害波方式の2つの方式の中から選択されるようにしてもよい。
この場合、マクロセル基地局により使用されている周波数帯域が1つの周波数帯域である場合にはコンペティング周波数方式が選択され、それ以外の場合には妨害波方式が選択されることになる。
フェムトセル基地局1が2つの周波数帯域の電波を同時に発射することができる場合の在圏方式の選択について説明する。
図12は、コンペティング周波数方式の他の例を示す図である。
リスニングモードでの動作によって、図12Aに示すように周波数軸上で離れた位置にある周波数帯域F1とF3の2つの周波数帯域が使用済みであることが検出された場合、フェムトセル基地局1はコンペティング周波数方式を選択する。
この場合、フェムトセル基地局1は、図12Bに示すような、使用済みのそれぞれの電波と競合させるように周波数帯域F1の電波と周波数帯域F3の電波を発射する。フェムトセル基地局1が発射する電波の強度は、マクロセル基地局からの電波の受信強度よりも高い強度である。
これにより、図12Cに示すように、フェムトセル基地局1が発射する電波によって、両方のマクロセル基地局からの電波を劣化させることができ、移動機2をフェムトセルC1に在圏させることが可能になる。
フェムトセルC1に在圏した移動機2との間では、周波数帯域F1とF3のうちのいずれかの周波数帯域を使用して通信が行われる。
図13は、オーバーラップ周波数方式の他の例を示す図である。
リスニングモードでの動作によって、図13Aに示すように周波数軸上で隣接した周波数帯域F2,F3,F4の3つの周波数帯域が使用済みであることが検出された場合、フェムトセル基地局1はオーバーラップ周波数方式を選択する。
この場合、フェムトセル基地局1は、図13Bに示すような、使用済みの周波数帯域の中心周波数f2とf3の中間の周波数である周波数f2.5と、中心周波数f3とf4の中間の周波数である周波数f3.5を中心周波数として選択する。
また、フェムトセル基地局1は、周波数f2.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の電波と、周波数f3.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の電波を発射する。フェムトセル基地局1が発射する電波の強度は、マクロセル基地局からの電波の強度より高い強度である。
これにより、図13Cに示すように、フェムトセル基地局1が発射する電波によって、3つのマクロセル基地局からの電波を劣化させることができ、移動機2をフェムトセルC1に在圏させることが可能になる。
フェムトセルC1に在圏した移動機2との間では、周波数f2.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の周波数帯域と、周波数f3.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の周波数帯域のうちのいずれかの周波数帯域を使用して通信が行われる。
図14は、コンペティング周波数方式とオーバーラップ周波数方式を組み合わせた在圏方式の例を示す図である。
リスニングモードでの動作によって、図14Aに示すように、周波数帯域F1と、周波数軸上で隣接した周波数帯域F3とF4の3つの周波数帯域が使用済みであることが検出された場合、フェムトセル基地局1はコンペティング周波数方式とオーバーラップ周波数方式を組み合わせた在圏方式を選択する。
この場合、フェムトセル基地局1は、図14Bに示すような、使用済みの周波数帯域F1の電波と競合させるように周波数帯域F1の電波を発射する。フェムトセル基地局1が発射する電波の強度は、マクロセル基地局からの電波の受信強度よりも高い強度である。
また、フェムトセル基地局1は、図14Bに示すような、使用済みの周波数帯域の中心周波数f3とf4の中間の周波数である周波数f3.5を中心周波数として選択し、3.84MHzの帯域幅を有する、マクロセル基地局からの電波の強度より高い強度の電波を発射する。
これにより、図14Cに示すように、フェムトセル基地局1が発射する電波によって、3つのマクロセル基地局からの電波を劣化させることができ、移動機2をフェムトセルC1に在圏させることが可能になる。
フェムトセルC1に在圏した移動機2との間では、周波数帯域F1と、周波数f3.5を中心周波数とする3.84MHzの帯域幅の周波数帯域のうちのいずれかの周波数帯域を使用して通信が行われる。
フェムトセル基地局1が2つの周波数帯域の電波を同時に発射することができる場合、使用済みの周波数帯域が3つあり、1つの周波数帯域が他の2つの隣接する周波数帯域と周波数軸上で離れているときであっても、コンペティング周波数方式とオーバーラップ周波数方式を組み合わせた在圏方式によって移動機2をフェムトセルC1に在圏させることが可能になる。
フェムトセル基地局1が2つの周波数帯域の電波を同時に発射することができる場合、周波数軸上で離れた位置にある2つの周波数帯域が使用済みであるときにはコンペティング周波数方式が選択され、周波数軸上で隣接した3つの周波数帯域が使用済みであるときにはオーバーラップ周波数方式が選択され、周波数軸上で隣接した2つの周波数帯域と、その2つの周波数帯域と離れた位置にある1つの周波数帯域のあわせて3つの周波数帯域が使用済みであるときには、コンペティング周波数方式とオーバーラップ周波数方式を組み合わせた在圏方式が選択され、それ以外(4つの周波数帯域が全て使用済み)のときには妨害波方式が選択されることになる。
このように、在圏方式の選択のパターンは、フェムトセル基地局1が電波を同時に発射可能な周波数帯域の数などに応じて変更可能である。
以上においては、CDMA方式の通信システムにおいて移動機の在圏をアシストする場合について説明したが、上述した在圏のアシストは、複数の周波数帯域を使用して移動機と通信を行う他の通信方式の通信システムにも適用可能である。
フェムトセル基地局1に替えて、「ピコセル」、「マイクロセル」と呼ばれる小型セルを形成する基地局が設けられ、その基地局により、以上のようにして自身が管理するセルに対する在圏のアシストが行われるようにしてもよい。小型基地局は、フェムトセル、ピコセル、マイクロセル等の小型セルを形成する基地局である。
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。