JP5231264B2 - ヨウ素化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、医薬、農薬、香料等の合成原料として有用であるヨウ素化合物の製造方法に関する。
従来、アルコールを原料に用いたヨウ素化合物の製造方法としては、ヨウ素と、アルコールおよび赤リンとを用いてヨウ素化合物を製造する方法(例えば、特許文献1参照。)や、アルコールから誘導される塩素化合物または臭素化合物と、例えばヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウム等のヨウ素の無機アルカリ塩とを作用させてヨウ素化合物を製造する方法(例えば、特許文献2参照。)や、アルコールと、例えばヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムなどのヨウ素の無機アルカリ塩とをリン酸中で作用させてヨウ素化合物を製造する方法(例えば、非特許文献1参照。)や、アルコールとヨウ化水素酸とを作用させてヨウ素化合物を製造する方法(例えば、特許文献3、非特許文献2参照。)等が知られている。
また、グリコール類を原料に用いたジヨウ素化合物の製造方法としては、約67重量%ヨウ化水素酸(比重は1.94)を用いたジヨウ素化合物の合成方法(例えば、非特許文献3参照。)や、赤リンとヨウ素とを用いたジヨウ素化合物の製造方法(例えば、特許文献4参照。)が知られている。
特開2000−273057号公報(第2−4頁) 特開昭48−10007号公報(第1−4頁) 特開2000−256231号公報(第2−3頁) 特公昭41−21332号公報(第1−2頁)
オーガニック・シンシージーズ・コレクト(Organic Syntheses,Collect),1963年,Vol.4,p323 ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティ(Journal of the Chemical Society),1943年,p636−647 ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティ(Journal of the Chemical Society),1952年,p142−145
しかしながら、上述した各ヨウ素化合物の製造方法では、環境負荷が大きい問題や工業的生産を行う上で経済的に製造できない問題を有している。
例えば、特許文献1記載の製造方法は、赤リンの取り扱いおよび反応制御に注意が必要であることから、工業的な製造方法として不向きである。また、反応終了後にリン廃棄物が副生成されるため環境負荷が大きい。
特許文献2記載の製造方法は、一般的に安価なアルコールを塩素化または臭素化することにより原料の塩素化合物または臭素化合物を得るため、原料にアルコールを使用した場合よりも多工程になり製造が煩雑化してしまう。また、一般的に高価なヨウ素の無機アルカリ塩を使用するので、コストが高騰してしまい経済性に優れない。
非特許文献1記載の製造方法は、無水のリン酸を使用して反応を行わないと収率が悪化してしまう。また、反応終了後にリン廃棄物が副生成されるため環境負荷が大きい。
特許文献3記載の製造方法は、例えばシクロプロピルメタノール等の環状炭化水素基を有するシクロアルキルアルカノールを脱水剤の存在下にて57重量%ヨウ化水素酸でヨウ素化する方法である。しかし、57重量%ヨウ化水素酸中のヨウ化水素1モルに対して、例えば無水硫酸マグネシウム等の脱水剤を0.8モルから1.0モル使用しなければ、収率および反応速度が悪化する。また、環境負荷の大きなクロロホルム等のハロゲン系溶媒を共溶媒として使用するため、工業的な製造方法として不向きである。
非特許文献2記載の製造方法は、アルコールと過剰量の57重量%ヨウ化水素酸を用いてゆっくりと蒸留を行うことによりヨウ素化合物を得る方法である。しかし、3当量から4当量のヨウ化水素酸を使用しなければ収率が悪化するので、コストが高騰して経済的に優れない。
非特許文献3記載の製造方法は、高価かつ工業的に入手が困難な約67重量%ヨウ化水素酸を使用しているため、工業的な製造方法として不向きである。
特許文献4記載の製造方法は、赤リンの取り扱いおよび反応の制御に注意が必要であることから、工業的な製造方法として不向きである。また、反応終了後にリン廃棄物が副生成されるため環境負荷が大きい。
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、環境負荷が小さく、また、工業的生産を行う上で経済的にヨウ素化合物を得ることができるヨウ素化合物の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載されたヨウ素化合物の製造方法は、アルコールと、ヨウ化水素酸とを用いて、反応系内の水層のヨウ化水素酸の濃度が40重量%以上58重量%以下になるように反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行うことによりヨウ素化合物を製造するものである。
請求項2に記載されたヨウ素化合物の製造方法は、請求項1に記載のヨウ素化合物の製造方法において、アルコールは、一般式R−OHで示され、式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であり、反応式(1):R−OH+HI→R−I+HOに従って、一般式R−Iで示され、式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であるヨウ素化合物を製造するものである。
請求項3に記載されたヨウ素化合物の製造方法は、請求項1記載のヨウ素化合物の製造方法において、アルコールは、一般式HO(CHOHで示され、式中のnは2以上12以下の整数のグリコールであり、反応式(2):HO(CHOH+2HI→I(CHI+2HOに従って、一般式I(CHIで示され、式中のnは2以上12以下の整数であるジヨウ素化合物を製造するものである。
請求項4に記載されたヨウ素化合物の製造方法は、請求項1ないし3のいずれかに記載のヨウ素化合物の製造方法において、反応終了時の水層のヨウ化水素酸の濃度が40重量%以上45重量%以下になるように反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行うものである。
請求項1に記載された発明によれば、アルコールとヨウ化水素酸とを用い、ヨウ素化反応を行ってヨウ素化合物を製造することにより、副生成物は水のみであるので、環境負荷を小さくできる。また、反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行ことにより、ヨウ化水素酸濃度の低下による反応速度の減少を抑えることができるので、工業的生産を行う上で経済的にヨウ素化合物を得ることができる。
また、反応系内の水層のヨウ化水素酸の濃度が40重量%以上58重量%以下になるように水を留去しながらヨウ素化反応させることにより、ヨウ化水素酸の使用量を抑えられるため、より経済的にヨウ素化合物を得ることができる。
請求項2に記載された発明によれば、アルコールは、一般式R−OHで示され式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であり、反応式(1)R−OH+HI→R−I+HOに従ってヨウ素化反応を行うことにより、一般式R−Iで示され式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であるヨウ素化合物をより確実に得ることができる。
請求項3に記載された発明によれば、アルコールは、一般式HO(CHOHで示されるグリコールであり、反応式(2)HO(CHOH+2HI→I(CHI+2HOに従ってヨウ素化反応を行うことにより、一般式I(CHIで示されるヨウ素化合物をより確実に得ることができる。
請求項4に記載された発明によれば、反応終了時の水層のヨウ化水素酸の濃度が40重量%以上45重量%以下になるように反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行うことにより、留去した水にヨウ化水素が含まれる量を制限できる。
以下、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
本発明のヨウ素化合物の製造方法は、アルコールとヨウ化水素酸とを用いて、反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行うことにより、ヨウ素化合物を製造するものである。
原料のアルコールは、目的とするヨウ素化合物と同じ炭素鎖を有するアルコールを使用する。また、反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行うため、原料のアルコールとしては、ヨウ化水素と水との共沸点(約127℃)よりも沸点の高いアルコールが使用できる。
アルコールとしては、具体的に、一般式R−OHで示され、式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素であるアルコール、または、一般式HO(CHOHで示され式中のnは2以上12以下の整数であるグリコールを使用することが好ましい。
また、有利なアルコールは、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等を挙げることができる。
なお、その他のアルコールとしては、OH基を3つ含有するグリセリン等の3価のアルコール、フェニル基等の芳香族炭化水素基を含有するベンジルアルコール等のアルコール等が挙げられる。
アルコールとして、一般式R−OHで示されるアルコールを用いることにより、下記反応式(1)に従ってヨウ素化反応が行われる。
反応式(1):R−OH+HI→R−I+H
この反応式(1)に従ったヨウ素化反応により、一般式R−Iで示され、式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であるヨウ素化合物が製造される。
また、アルコールとして、一般式HO(CHOHで示されるグリコールを用いることにより、下記反応式(2)に従ってヨウ素化反応が行われる。
反応式(2):HO(CHOH+2HI→I(CHI+2H
この反応式(2)に従ったヨウ素化反応により、一般式I(CHIで示され、式中のnは2以上12以下の整数であるジヨウ素化合物が製造される。
アルコールとヨウ化水素酸とのヨウ素化反応は、含水量が少ないほど迅速に行われる。そのため、原料のヨウ化水素酸としては、40重量%以上のヨウ化水素酸が好ましく、一般的に市販されている55重量%から58重量%のヨウ化水素酸が特に好ましい。
また、反応系内の水を留去しながらヨウ素化反応を行うことにより、反応系内の水層の含水量を減らしてヨウ化水素酸の濃度を40重量%以上58重量%以下にすると、大過剰のヨウ化水素酸を用いなくても、ヨウ化水素酸の濃度の減少に伴う反応速度の低下を抑制できるので好ましい。
ここで、ヨウ化水素酸を用いたアルコールのヨウ素化反応では、反応式(1)および反応式(2)に示すように、ヨウ化水素が消費され、ヨウ素化合物の生成とともに水が生成される。すなわち、反応の進行に伴って、ヨウ化水素の消費によるヨウ化水素酸の濃度の低下と、水の生成によるヨウ化水素酸の濃度の低下とが起こる。このように、ヨウ化水素酸の濃度が低下すると、反応速度が低下してアルコールがヨウ素化され難くなり、未反応のアルコールが発生する。
そこで、反応系内から水を留去してヨウ化水素酸の濃度を40重量%以上にすることにより、反応速度の低下による未反応のアルコールの発生を防止できる。一方、ヨウ化水素と水とは共沸混合物を生成するため、ヨウ化水素酸の濃度は58重量%までしか上昇しない。したがって、反応系内のヨウ化水素酸の濃度は、40重量%以上58重量%以下が好ましい。
また、反応系内のヨウ化水素酸の濃度が、40重量%以上になると留去した水にヨウ化水素が若干含まれ、45重量%以上になると留去した水に含まれるヨウ化水素の量がさらに増加する。そのため、反応終了時の水層のヨウ化水素酸の濃度は40重量%から45重量%の範囲になっていることがより好ましい。
なお、このように水を留去しながらヨウ素化反応を行うので、例えば、ブローイングアウト法にて得られたヨウ素吸収液を用い、陰イオン交換膜として一価陰イオン選択透過膜を用いた電気透析法により得られる約10重量%から25重量%の低濃度ヨウ化水素酸等も使用できる。
アルコールとヨウ化水素酸との仕込みモル比は、アルコール中に含まれるOH基各1モルに対し、ヨウ化水素酸中のヨウ化水素を理論量の1.0モル以上使用することが好ましく、1.1モル以上2.5モル以下の範囲がさらに好ましく、1.3モル以上2.0モル以下が特に好ましい。
反応温度は、通常は還流温度である。また、一般的には100℃以上150℃以下の範囲である。
反応時間は、アルコールの種類、ヨウ化水素酸の濃度、仕込みモル比および反応温度にもよるが、通常は1時間から24時間である。
ヨウ素化反応により得られる反応容器内の反応液は、冷却することによりヨウ素化合物の油層または固層と、未反応のヨウ化水素酸を含有する水層とに二層分離するため、液液分離または固液分離等の公知の分離操作を施すことにより、目的とするヨウ素化合物の粗製品を得ることができる。また、得られた粗製品にヨウ素色が着色している場合は、還元剤で処理することによりヨウ素色を脱色できる。このような脱色の処理に用いる還元剤は、一般に入手できるものでよく、水溶性の次亜リン酸、チオ硫酸塩および亜硫酸塩等が好ましい。
また、ヨウ素化合物の粗製品分離後の未反応ヨウ化水素酸を含有する水層は、そのまままたは濃縮後、次回のヨウ素化反応に循環して使用することが可能である。
得られたヨウ素化合物の粗製品は、蒸留操作または再結晶精製を行うことにより、高純度の精製品を得ることができる。
そして、このように、アルコールとヨウ化水素酸とを用いたヨウ素化反応の反応系内において、水を留去しながらヨウ素化反応を行うことにより、特殊な原料、設備および処理を用いなくても収率が悪化し難い。したがって、工業的生産を行う上で、ヨウ素化合物を容易かつ高収率で得ることができる。
また、有機溶媒を必要とせず、反応系にて生成されるのは、ヨウ素化合物の油層または固層と、未反応ヨウ化水素酸を含有する水層とである。したがって、ヨウ素化反応による副生成物が水のみであるので、環境負荷を小さく抑えることができる。
さらに、反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行うため、反応系内における含水量を少なくでき、大過剰のヨウ化水素酸を使用しなくても、ヨウ化水素酸濃度の低下による反応速度の減少を抑えることができる。したがって、ヨウ化水素酸を多く用いることなく反応に要する時間を短くでき、ヨウ素化合物を経済的に得ることができる。
一般式R−OHで示され式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であるアルコールと、ヨウ化水素酸とを用いて、反応系内から水を留去しながら、ヨウ素化反応を行うことにより、反応式(1)R−OH+HI→R−I+HOに従ってより確実にヨウ素化反応が行うことができる。したがって、一般式R−Iで示され式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であるヨウ素化合物をより確実に得ることができる。
一般式HO(CHOHで示され式中のnは2以上12以下の整数であるグリコールと、ヨウ化水素酸とを用いて、反応系から水を留去しながら、ヨウ素化反応を行うことにより、反応式(2)HO(CHOH+2HI→I(CHI+2HOに従ってより確実に行うヨウ素化反応を行うことができる。したがって、一般式I(CHIで示され式中のnは2以上12以下の整数であるジヨウ素化合物をより確実に得ることができる。
反応系内の水層のヨウ化水素酸の濃度が40重量%以上58重量%以下になるように水を留去しながらヨウ素化反応させることにより、反応系内における含水量を減少できる。この含水量の減少により、大過剰のヨウ化水素酸を使用しなくても、反応速度を迅速化できる。したがって、ヨウ化水素酸の使用量を抑えられるため、経済的かつ高効率でヨウ素化合物を得ることができる。また、低濃度のヨウ化水素酸を用いても高収率でヨウ素化合物を得ることができる。
ヨウ素化合物の粗製品分離後の未反応ヨウ化水素酸を含有する水層を次回のヨウ素化反応に循環して使用することにより、未反応のヨウ化水素酸を無駄なく使用できるので、ヨウ化水素酸基準でのヨウ素化合物収率を実質的に非常に高くでき、より経済的にヨウ素化合物を得ることができる。
以下、本発明のヨウ素化合物の製造方法の実施例および比較例について説明する。
[実施例1]
実施例1は、反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行ったものである。攪拌機と温度計と還流冷却器付き分留頭とを付した50mL三ツ口フラスコに、1−ペンタノール9.0g(0.10モル)、57重量%ヨウ化水素酸33.7g(0.15モル)を秤取した。また、このフラスコをオイルバスにて加熱し、水を留去しながら2時間反応を行った。この間、フラスコ内の温度は100℃から130℃まで上昇した。
反応終了後、反応液を室温まで冷却したところ、水層と褐色油状物との二層に分離したので分離操作を行った。
分離した水層は、重量が15.4gであり、ヨウ化水素酸の濃度が41重量%であった。
一方、分離した褐色油状物を、水、5重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させることにより、19.1gの淡黄色油状物を得た。この淡黄色油状物の組成をガスクロマトグラフで分析した結果、1−ペンタノール0%、1−ヨードペンタン99.2%であった。したがって、仕込みの1−ペンタノールに対する1−ヨードペンタンの収率は96%であった。
[比較例1]
比較例1は、反応系内から水を留去しないでヨウ素化反応を行ったものである。攪拌機と温度計と還流冷却器とを付した50mL三ツ口フラスコに、1−ペンタノール9.0g(0.10モル)、57重量%ヨウ化水素酸33.7g(0.15モル)を秤取した。このフラスコをオイルバスにて加熱し、3時間全還流を行った。
反応終了後、反応液を室温まで冷却したところ、水層と褐色油状物との二層に分離したので分離操作を行った。
分離した水層は、ヨウ化水素酸濃度が35重量%であった。
一方、分離した褐色油状物を、水、5重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させることにより、16.4gの淡黄色油状物を得た。この淡黄色油状物の組成をガスクロマトグラフで分析した結果、1−ペンタノール12.6%、1−ヨードペンタン86.8%であった。したがって、仕込みの1−ペンタノールに対する1−ヨードペンタンの収率は72%であった。
比較例1は、上記実施例1と比較して、反応系内から水を留去しない以外は、条件が殆ど同じであるが、実施例の1−ヨードペンタンの収率が96%であるのに対し、比較例1の収率は72%である。
比較例1は、反応初期ではヨウ化水素酸の濃度が高く、アルコールがヨウ素化され易い状態だが、反応の経過に伴ってヨウ化水素酸の濃度が低下し、反応後期ではアルコールがヨウ素化され難い状態になる。その結果比較例1の生成物中に未反応のアルコールを含有し、実施例1に比べて収率が悪化すると考えられる。
したがって、このような工業的な生産を行う上で、容易であり、環境負荷が小さいヨウ素化合物の製造方法であっても、反応系内の水を留去しながらヨウ素化反応を行うことにより、経済的でありかつ高収率にヨウ素化合物である1−ヨードペンタンを得ることができる。
[実施例2]
実施例2は、水を留去しながらヨウ素化反応を行ったものである。攪拌機と温度計と還流冷却器付き分留頭とを付した50mL三ツ口フラスコに、実施例1にて分離したヨウ化水素酸濃度41重量%の未反応ヨウ化水素酸含有の水層15.4g(0.049モル)、1−ペンタノール9.0g(0.05モル)、57重量%ヨウ化水素酸22.5g(0.10モル)を秤取した。このフラスコをオイルバスにて加熱し、水を留去しながら3時間反応を行った。この間、フラスコ内の温度は100℃から130℃まで上昇した。
反応終了後、反応液を室温まで冷却したところ、水層と褐色油状物との二層に分離したので分離操作を行った。
分離した水層は、重量が15.3gであり、ヨウ化水素酸の濃度が41重量%であった。
一方、分離した褐色油状物を、水、5重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させることにより、19.0gの淡黄色油状物を得た。この淡黄色油状物の組成をガスクロマトグラフで分析した結果、1−ペンタノール0%、1−ヨードペンタン99.1%であった。したがって、仕込みの1−ペンタノールに対する1−ヨードペンタンの収率は95%であった。
このように、上記実施例1において分離した未反応ヨウ化水素酸含有の水層を使用しても、高収率でヨウ素化合物である1−ヨードペンタンを得ることができる。
したがって、未反応のヨウ化水素酸を循環利用して無駄なく使用できるので、ヨウ化水素酸基準でのヨウ素化合物収率を実質的に非常に高くでき、より経済的にヨウ素化合物を得ることができる。
[実施例3から実施例8]
原料のアルコール種と、ヨウ化水素酸の仕込みモルを変えた以外は、実施例1と同様にヨウ素化反応を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0005231264
表1に示すように、種々のアルコールを使用し、ヨウ化水素酸のモル比を変えても、高収率でヨウ素化合物を得ることができる。
[実施例9から実施例14]
原料のアルコール種をグリコール類とし、原料のヨウ化水素酸を50重量%ヨウ化水素酸とし、ヨウ化水素酸の仕込みモル比を変えた以外は、実施例1と同様にヨウ素化反応を行った。その結果を表2に示す。なお、表2中の転化率は原料であるグリコール類の反応転化率であり、選択率および収率は対応するジヨード体の選択率および収率である。
Figure 0005231264
表2に示すように、種々のグリコールを使用し、ヨウ化水素酸を50重量%ヨウ化水素酸とし、ヨウ化水素酸の仕込みモル比を変えても、高収率でヨウ素化合物を得ることができる。

Claims (4)

  1. アルコールと、ヨウ化水素酸とを用いて、反応系内の水層のヨウ化水素酸の濃度が40重量%以上58重量%以下になるように反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行うことによりヨウ素化合物を製造する
    ことを特徴とするヨウ素化合物の製造方法。
  2. アルコールは、一般式R−OHで示され、式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であり、
    反応式(1):R−OH+HI→R−I+H
    に従って、一般式R−Iで示され、式中のRは炭素数5以上12以下の整数の直鎖状の炭化水素基であるヨウ素化合物を製造する
    ことを特徴とする請求項1記載のヨウ素化合物の製造方法。
  3. アルコールは、一般式HO(CHOHで示され、式中のnは2以上12以下の整数のグリコールであり、
    反応式(2):HO(CHOH+2HI→I(CHI+2H
    に従って、一般式I(CHIで示され、式中のnは2以上12以下の整数であるジヨウ素化合物を製造する
    ことを特徴とする請求項1記載のヨウ素化合物の製造方法。
  4. 反応終了時の水層のヨウ化水素酸の濃度が40重量%以上45重量%以下になるように反応系内から水を留去しながらヨウ素化反応を行う
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のヨウ素化合物の製造方法。
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