JP5228955B2 - 電気光学装置及び電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクター等の電子機器の技術分野に関する。
この種の電気光学装置として、例えば一対の基板間に液晶等の電気光学物質を挟持してなる電気光学パネルに光を投射することで、パネル上に表示されている画像を視覚可能とするものがある。電気光学パネルに入射される光は、入射前に偏光板等によって位相が揃えられるが、偏光板の後段に設けられるマイクロレンズアレイ等の光学素子によって、揃えた位相にずれが生じてしまう場合がある。このような位相のずれを補正するため、電気光学パネルの表面に光学補償素子を設けるという技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、上述した光学補償素子は、接着性を有する接着層を介して、電気光学パネルに接着される場合がある(例えば、特許文献3から5参照)。
特開2008−76592号公報 特開2008−89626号公報 特開平8−271883号公報 特開平9−292518号公報 特開2002−131537号公報
しかしながら、上述した光学補償素子を接着する接着層には、時間の経過によって光学補償素子に浸透していくという特性がある。接着層が光学補償層に浸透すると、光学補償素子の光学特性が変化し、結果的に光学補償素子の補償機能が低下してしまうおそれがある。光学補償素子の補償機能が低下すると、コントラストの低下や色ムラ等が発生してしまう。即ち、上述した技術には、表示される画像の品質が低下するおそれがあるという技術的問題点がある。
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、光学補償素子の信頼性を高めることで、高品質な画像を表示可能な電気光学装置を提供することを課題とする。
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、電気光学パネルと、前記電気光学パネルの光の出射側に、無機材料が斜方蒸着されて形成された光学補償層を有する防塵用基板と、前記電気光学パネル及び前記光学補償層間に形成された第1の接着層と、前記光学補償層及び前記第1の接着層間に設けられており、前記第1の接着層が浸透しないように前記光学補償層を保護する保護層と、前記光学補償層及び前記保護層を互いに接着する第2の接着層とを備え、前記第2の接着層は、前記第1の接着層より流動性が低い。
また、前記第1の接着層は、ゲル状の接着剤を含み、前記第2の接着層は、アクリル系、オレフィン系又はPVA系の接着剤を含んでいる。

本発明の電気光学装置によれば、その動作時には、例えば投射光やバックライト等の光が電気光学パネルの表示領域(言い換えれば、画素領域)に入射されることにより、投影画像や直視画像として画像が表示される。電気光学パネルは、例えば一対の基板間に液晶等の電気光学物質が挟持されてなり、表示領域における電気光学物質がTFT(Thin Film Transistor)等によって駆動されることで、様々な画像を表示可能である。
電気光学パネルにおける光の入射面及び出射面の少なくとも一方に対向する位置には、光学補償層が設けられている。光学補償層は、屈折率異方性を有することにより、電気光学パネルに入射する、或いは電気光学パネルから出射する光の位相のずれを補償する。これにより、表示画像におけるコントラストの低下や色ムラ等の発生を低減することができる。光学補償層は、典型的には、無機材料を斜方蒸着することによって形成された部材である。尚、光学補償層の電気光学パネルと対向しない側の面には、典型的には、防塵用基板が設けられる。
上述した光学補償層は、電気光学パネルに対し、第1の接着層によって接着されている。即ち、電気光学パネルと光学補償層との間には、互いを接着するための第1の接着層が設けられている。また本発明では特に、光学補償層と第1の接着層との間には、第1の接着層が光学補償層に浸透しないようにするための保護層が設けられている。このため、電気光学パネル及び光学補償層間には、少なくとも第1の接着層及び保護層の2つの層が存在することになる。
電気光学パネル及び光学補償層を互いに接着する第1の接着層は、例えば製造上の理由からゲル状の(即ち、流動性のある)接着剤を含んで構成される。ここで仮に、光学補償層及び第1の接着層間に上述した保護層が設けられていないとすると、時間の経過と共に、流動性のある第1の接着層が光学補償層に浸透し、光学補償素子の光学特性が変化してしまうおそれがある。即ち、光学補償素子の補償機能が低下してしまうおそれがある。
しかるに本発明では特に、上述したように、光学補償層と第1の接着層との間に保護層が設けられているため、第1の接着層が光学補償層に浸透してしまうことを防止することができる。よって、光学補償層の光学特性が、第1の接着層の浸透によって変化してしまうことを防止することができる。従って、光学補償層の補償機能が低下し、表示画像の品質が低下してしまうことを防止することができる。
尚、保護層は、光学補償層に対する第1の接着層の浸透を防止できるようなものであればよく、材料や厚さ等については特に限定されない。但し、保護層が光の投射される位置に配置されることを考えれば、耐光性に優れたTAC(トリアセチルセルロース)フィルムや、オレフィン系のフィルム等を使用するのが望ましい。
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、光学補償層の信頼性が高められるため、高品質な画像を表示することが可能である。
本発明の電気光学装置の一態様では、前記光学補償層及び前記保護層を互いに接着する第2の接着層を備え、前記第2の接着層は、前記第1の接着層より流動性が低い。
この態様によれば、光学補償層及び保護層間に、互いを接着するための第2の接着層が設けられている。即ち、光学補償から見て、保護層より近い位置に第2の接着層が存在することになる。
しかしながら、第2の接着層は、電気光学パネル及び光学補償層を接着するための第1の接着層より流動性が低い。このため、第2の接着層は、第1の接着層のように光学補償層に対して浸透しない。よって、光学補償層の光学特性が、第2の接着層の浸透によって変化してしまうことがない。従って、本態様に係る電気光学装置では、高品質な画像を表示することが可能である。尚、第2の接着層を構成する材料の例としては、アクリル系、オレフィン系、PVA(ポリビニルアルコール)系等の接着剤が挙げられる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記光学補償層及び前記保護層を互いに接着する第2の接着層を備え、前記第2の接着層に含まれる分子は、前記第1の接着層に含まれる分子より大きい。
この態様によれば、光学補償層及び保護層間に、互いを接着するための第2の接着層が設けられている。即ち、光学補償から見て、保護層より近い位置に第2の接着層が存在することになる。
しかしながら、第2の接着層に含まれる分子は、電気光学パネル及び光学補償層を接着するための第1の接着層に含まれる分子より大きい。このため、第2の接着層は、第1の接着層よりも乾燥性が良好であると共に、第1の接着層のように光学補償層に対して浸透しない。よって、光学補償層の光学特性が、第2の接着層の浸透によって変化してしまうことがない。従って、本態様に係る電気光学装置では、高品質な画像を表示することが可能である。尚、第2の接着層を構成する材料の例としては、上述した態様と同様に、アクリル系、オレフィン系、PVA系等の接着剤が挙げられる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記保護層は、位相差を有さない。
この態様によれば、保護層が位相差を有さないように構成されているため、保護層自体は光学補償層のような補償機能を有さない。このため、光学補償層及び保護層等を含む光学系全体で見た場合の位相差が、保護層の有無によって変化しない。従って、保護層を設けることで新たな位相のずれが発生し、表示画像の品質が低下してしまうことを防止することができる。
尚、保護層における位相差は完全にゼロでなくともよく、光学補償層による補償効果を極端に低下させるものでなければよい。即ち、保護層の位相差を多少なりとも小さくすることができれば、上述した本態様の効果は相応に得られる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記保護層は、位相差を有しており、前記光学補償層と共に前記光における位相のずれを補償する。
この態様によれば、保護層は位相差を有しており、位相のずれを補償する部材として機能する。即ち保護層は、光学補償層に加えて、もう一つの光学補償層として機能する。よって、光学補償層及び保護層等を含む光学系全体で見た場合の補償機能を、更に高めることができる。従って、より高品質な画像を表示させることが可能となる。
尚、上述した保護層は、光学補償層との位相差の和をより適切な値とすることで光学系全体の補償機能を高めるようなものであってもよいし、光学補償層とは異なる方向に対しての補償機能を有することで光学系全体の補償機能を高めるようなものであってもよい。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記保護層は、位相差を有する複数の層を含んでおり、前記複数の層は、互いの位相差を相殺するように配置されている。
この態様によれば、保護層が、光の位相のずれを補償するのに適していない位相差を有する層によって構成されていたとしても、位相差を相殺し、保護層全体としての位相差を適切な値にすることができる。例えば、位相差をできるだけ小さくしたい場合には、位相差を有する2つの層を遅相軸又は進相軸が直交するように配置すればよい。
上述した構成によれば、光学補償層及び保護層等を含む光学系全体で見た場合の位相差が、保護層の存在によって適切でない値となってしまうことを防止できる。従って、保護層を設けることで表示画像の品質が低下してしまうことを防止することができる。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパーなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
実施形態に係る電気光学パネルの全体構成を示す平面図である。 図1のH−H´線断面図である。 第1実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す断面図である。 比較例に係る電気光学装置の全体構成を示す断面図である。 光学補償層への第1の接着層の浸透を時系列で示す概念図である。 第1の接着層の浸透による光学補償層の正面位相差の変化を示すグラフである。 第1実施形態に係る電気光学装置のコントラスト及びその他の比較例のコントラストを示すグラフである。 第1実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図(その1)である。 第1実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図(その2)である。 第2実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す断面図である。 第2実施形態に係る電気光学装置における保護層の具体的な構成を示す概念図である。 電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクターの構成を示す平面図である。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<電気光学パネル>
先ず、本実施形態に係る電気光学装置に備えられる電気光学パネルの構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学パネルの全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。尚、以下では、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとり説明する。
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。尚、画像表示領域10aは、画素領域の一例である。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
<電気光学装置>
次に、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成について、図3から図11を参照して説明する。尚、以下では2つの実施形態を例に挙げて説明する。
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る電気光学装置の構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、第1実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す断面図である。尚、図3以降の図では、説明の便宜上、図1及び図2に示した詳細な部材を適宜省略している。また、電気光学装置を構成する各層の厚さについても、適宜縮尺を変更して図示してある。
図3において、第1実施形態に係る電気光学装置は、上述した電気光学パネル100と、光学補償層200と、防塵用基板300と、第1の接着層410と、第2の接着層420と、保護層500とを備えて構成されている。
光学補償層200は、例えば無機材料を斜方蒸着することによって構成されており、位相差(言い換えれば、屈折率異方性)を有することにより、電気光学装置から出射される光源光の位相のずれを補償可能とされている。
防塵用基板300は、例えば石英等の透明な基板であり、電気光学パネル100に対して塵や埃が直接付着してしまうことを防止する。上述した光学補償層200は、典型的には、この防塵用基板300と一体的に構成されている。
第1の接着層410は、例えば流動性のあるゲル状の接着剤を含んで構成されており、電気光学パネル100及び光学補償層200を互いに接着している。第1の接着層410には、典型的には、電気光学パネル100及び光学補償層200を互いに貼り合わせた後に熱等による硬化処理が施されるが、完全には硬化しない。
第2の接着層420は、第1の接着層410とは異なる接着剤を含んで構成されており、光学補償層200及び後述する保護層500を互いに接着している。第2の接着層420は、例えば第1の接着層410に含まれる接着剤と比べて、流動性の低い又は構成する分子の大きさが大きい接着剤(例えば、アクリル系、オレフィン系、PVA系等の接着剤)を含んでいる。
保護層500は、例えばTACフィルムやオレフィン系フィルムによって構成されており、第1の接着層410が光学補償層200に浸透するのを防止する。即ち、保護層500は、第1の接着層410が浸透しないような材料によって構成されている。
尚、ここでの図示は省略しているが、電気光学装置に対する光の入射側及び出射側には、典型的には、一対の偏光板が配置される。また、光の利用効率を高めるためのマイクロレンズアレイなど、他の光学部材が配置されていてもよい。
ここで、比較例に係る電気光学装置について、図4から図6を参照して説明する。ここに図4は、比較例に係る電気光学装置の全体構成を示す断面図である。また図5は、光学補償層への第1の接着層の浸透を時系列で示す概念図であり、図6は、第1の接着層の浸透による光学補償層の正面位相差の変化を示すグラフである。
図4において、比較例に係る電気光学装置では、電気光学パネル100及び光学補償層200が、第1の接着層410によって直接接着されている。即ち、比較例に係る電気光学装置には、図3に示した第1実施形態に係る電気光学装置が備えている、保護層500及び保護層500を接着するための第2の接着層420が備えられていない。
図5において、比較例に係る電気光学装置では、光学補償層200及び第1の接着層420が直接接触しているため、時間の経過と共に第1の接着層410が光学補償層200に浸透する。これによって、光学補償層200における第1の接着層410が浸透した部分200aは、光学特性が変化した状態となってしまう。
図6において、本願発明者の研究によれば、比較例に係る電気光学装置では、光学補償層200の正面位相差(即ち、正面からの光を補償する能力)が、時間の経過と共に低下してしまうことが判明している。具体的には、装置の製造時(即ち、第1の接着層410による接着を行ったばかりの状態)の光学補償層200の正面位相差は、2週間後の段階で半分程度にまで低下してしまう。
続いて、第1実施形態に係る電気光学装置の効果について、図7を参照して説明する。ここに図7は、第1実施形態に係る電気光学装置のコントラスト及びその他の比較例のコントラストを示すグラフである。
図7において、Aで示すグラフは、電気光学パネル100単体のコントラストを示している。即ち、光学補償層200が設けられていない状態でのコントラストを示している。
Bで示すグラフは、電気光学パネル100から離れた位置に光学補償層200を設けた場合のコントラストを示している。この場合は、電気光学パネル100及び光学補償層200を互いに接着する第1の接着層410が不要であるため、光学補償層200の光学特性は変化しない。よって、比較的高いコントラストを維持することができる。但し、電気光学パネル100と光学補償層200との間に距離が空いてしまう分、配置スペースが増加してしまう。
Cで示すグラフは、図4に示した比較例に係る電気光学装置の製造から2週間後のコントラストを示している。比較例に係る電気光学装置では、上述したように第1の接着層410が光学補償層200に浸透してしまうため、光学補償層200の補償機能が低下し、コントラストが顕著に低下してしまう。
Dで示すグラフは、図3に示した第1実施形態に係る電気光学装置のコントラストを示している。第1実施形態に係る電気光学装置では、保護層500によって、第1の接着層410が光学補償層200に浸透するのを防止することができるため、電気光学パネル100及び光学補償層200を一体的に構成した場合でも、極めて高いコントラストを得ることができる。
更に、保護層500が光学補償層200のように、光の入射方向に位相差を有することにより、保護層500においても、光源光の位相のずれが補償される。即ち、第1実施形態に係る電気光学装置では、光学補償層200及び保護層500の両方で位相のずれが補償される。このため、保護層500の設けられていないBのグラフと比べても、第1実施形態に係る電気光学装置を示すDのグラフのコントラストは高くなっている。尚、保護層500が位相差を有さない場合であっても、Bのグラフと同程度のコントラストを実現することが可能である。
次に、第1実施形態に係る電気光学装置の変形例について、図8及び図9を参照して説明する。ここに図8及び図9は夫々、第1実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。
図8に示すように、光学補償層200が、電気光学パネル100における光の入射側(即ち、対向基板20側)に設けられる場合であっても、光学補償層200と第1の接着層410との間に保護層500を配置すれば、第1の接着層410の浸透を防止することができる。
図9に示すように、光学補償層200が、電気光学パネル100における光の入射側及び出射側の両方に設けられる場合も同様である。
また、電気光学パネル100における光の入射側又は出射側に複数の光学補償層200が設けられる場合であっても、光学補償層200と浸透する可能性のある接着層との間に保護層500を配置すれば、同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る電気光学装置によれば、光学補償層200の信頼性が高められるため、高品質な画像を表示することが可能である。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置について、図10及び図11を参照して説明する。ここに図10は、第2実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す断面図であり、図11は、第2実施形態に係る電気光学装置における保護層の具体的な構成を示す概念図である。尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、保護層の構成が異なり、その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
図10において、第2実施形態に係る電気光学装置では、保護層500が、第1保護層510及び第2保護層520の2つの層が積層されることによって構成されている。
第1保護層510及び第2保護層は、夫々位相差を有する層である。そして特に、第1保護層510と第2保護層520とは、互いの位相差を相殺するように配置されている。
図11において、第1保護層510及び第2保護層520は、例えば各々の補償方向が直交するように配置される。このように配置すれば、第1保護層510及び第2保護層の正面位相差が相殺され、保護層500全体としての位相差をゼロに近付けることができる。よって、仮に第1保護層510及び第2保護層520の有する位相差が、光源光の位相のずれを補償するのに適切な値でなかったとしても、保護層500に起因して表示画像の品質は低下しない。
また、第1保護層510及び第2保護層520の有する位相差は完全に相殺されなくともよく、部分的に相殺することで、保護層500全体としての位相差が光源光の位相のずれを補償するのに適切な値となるようにしてもよい。
尚、ここでは、保護層500が第1保護層510及び第2保護層520の2つの層によって構成される場合について説明したが、保護層500がより多くの層によって構成される場合も、互いの位相差を相殺するように配置すれば、同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、第2実施形態に係る電気光学装置によれば、上述した第1実施形態と同様に、光学補償層200の信頼性が高められるため、高品質な画像を表示することが可能である。
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図12は、プロジェクターの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクターについて説明する。
図12に示されるように、プロジェクター1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。
尚、図12を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、50…液晶層、100…電気光学パネル、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、200…光学補償層、300…防塵用基板、410…第1の接着層、420…第2の接着層、500…保護層、510…第1保護層、520…第2保護層

Claims (3)

  1. 電気光学パネルと、
    前記電気光学パネルの光の出射側に、無機材料が斜方蒸着されて形成された光学補償層を有する防塵用基板と、
    前記電気光学パネル及び前記光学補償層間に形成された第1の接着層と、
    前記光学補償層及び前記第1の接着層間に設けられており、前記第1の接着層が浸透しないように前記光学補償層を保護する保護層と、
    前記光学補償層及び前記保護層を互いに接着する第2の接着層とを備え、
    前記第2の接着層は、前記第1の接着層より流動性が低いことを特徴とする電気光学装置。
  2. 前記第1の接着層は、ゲル状の接着剤を含み、前記第2の接着層は、アクリル系、オレフィン系又はPVA系の接着剤を含んでいることを特徴とする請求項に記載の電気光学装置。
  3. 請求項1又は2に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
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