JP5228819B2 - 衝突エネルギ吸収部材 - Google Patents
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Description
すなわち、自動車衝突時の衝突エネルギを吸収する衝突エネルギ吸収部材において、プレス加工された薄鋼板を閉断面形状に組合わせ溶接してなる外枠部材(いわゆるフレーム)内に、円管(丸パイプ)または角管(角パイプ)からなる第1種の内挿部材またはプレス加工された薄鋼板を閉断面形状に組合わせ溶接してなる第2種の内挿部材を一または複数個収納し、該内挿部材からなる隔壁を形成してなる部材であって、この衝突エネルギ吸収部材は、主に、車体の前端または後端に取付けられて、クラッシュカンとして用いられる。
この従来構造によると、衝突荷重を受けた際に、フレーム内のパイプ部材もフレームと同様に、軸方向に座屈変形するため、衝突エネルギの吸収量が増加する。特に、フレーム内にパイプ部材が収納されていることから、座屈変形の際には、パイプ部材が相互に干渉し合うことになり、衝突エネルギの吸収量がさらに増加する。
この点、上記従来の衝突エネルギ吸収部材では、大型断面のフレームと小型断面のパイプ部材を同時に座屈変形させることになるが、座屈変形は、断面を囲む辺の長さや直径の大きさ等によって、潰れ周期(潰れ変形の山折れと谷折れの繰返し周期)が変化するため、フレームとパイプ部材との間で、潰れ周期が異なり、変形の位相がズレるといった現象が生じる。
また、円管の軸方向に交互に三角形を形成するためには、隣接する円管相互を接続する短絡連結部が必要であって、この短絡連結部の配置や肉厚により連続した三角形に変形することが判明した。
上記構成によれば、数値シミュレーションの結果、上記外側の厚さの安定範囲を見出して、この厚さを、円管外径で除した値が0.43以下となるように設定したので、隣接する円管との変形の連携が強くなって安定して、連続変形が生ずる。なお、上記外側の厚さが過大になると、正三角形断面の生起が阻害される。
上記構成によれば、数値シミュレーションにより内側の厚さの限界数値を求め、この内側の厚さを、円管外径で除した値が0.13以下となるように設定したので、隣接する円管との変形の連携が強くなって安定して、連続変形が生ずる。因に、上記内側の厚さが過大になり、狭窄空間側への厚みを所定値以上に増すと、正三角形断面の生成が阻害される。
上記構成によれば、短絡連結部の上記長さを、円管外径の1/7以下の長さに設定したので、隣接する円管への荷重伝達を確実に行なうことができる。因に、短絡連結部の上記長さが、この数値以上に長くなると、隣接する円管への荷重伝達が不充分かつ不安定となる。
換言すれば、上記短絡連結部にアールを形成したものである。
また、AlまたはAl合金の熱間押し出し成形により衝突エネルギ吸収部材を形成する場合、上記アールがないと、押し出し成形時に面圧が高くなり、AlまたはAl合金が押し出し成形用の金型に凝着するが、上述の如くアールを設けているので、押し出し成形時の良好な成形性を確保することができる。
図面は衝突エネルギ吸収部材を示し、図1は該衝突エネルギ吸収部材を車両のクラッシュカンとして使用した車体前部構造を示す斜視図、図2は図1の要部拡大斜視図、図3はクラッシュカンの正面図である。
また、上述の各パイプ9…を合計5本集合させた集合パイプ体の四隅部分には、パイプ先端部への衝突荷重入力時に、所定方向としての上下方向に対して交差する左右方向に、パイプ9の基端部が曲がるのを抑止する曲げ抑止手段としてのリブ5…が一体的に設けられている。
特に、このクラッシュカン7は、5本のパイプ9A,9B,9C,9D,9Eを同時に座屈変形させるため、衝突荷重の吸収量を従前のクラッシュカンに対して大幅に高めることができ、エネルギ吸収量を多くすることができる。
一方、クラッシュカン7には、図3に示すように隣り合うパイプ9,9同士を短絡連結する複数の短絡連結部11〜16が設けられている。
また、短絡連結部14はパイプ9A,9D間を上下方向に短絡連結し、短絡連結部15はパイプ9A,9E間を上下方向に短絡連結し、短絡連結部16はパイプ9D,9E間を横方向に短絡連結して、パイプ9A,9D,9E間に逆向き略正三角形の狭窄空間10を形成すべく構成している。
この対称構造は、パイプ9の座屈変形時の変形挙動を考慮して、このように設定するものである。
このパイプ9が車両前後方向の衝突荷重を受けて座屈変形する場合には、同図の(b)に示すように、座屈変形の潰れ周期の半ピッチ毎に、断面形状が『略正三角形』と『逆向きの略正三角形』を繰返して変形する。
このように、断面形状が『略正三角形』と『逆向きの略正三角形』とを繰返しながら変形していくため、パイプ9における短絡連結部11〜16の位置は、この繰返し変形を阻害しないように設定される。
このように、上述の各短絡連結部11〜16は、パイプ9の断面形状の繰返し変形に対応して往復移動することになる。
ここで、上述の短絡連結部11〜16の移動は、パイプ9の変形を阻害することなく、また、パイプ9,9間の連結状態も維持することができるように設定される。
このように、各短絡連結部11〜16がクラッシュカン7の座屈変形を阻害しないように設定すると、図示実施例のクラッシュカン7では、全てのパイプ9が完全に座屈変形して、衝突エネルギを確実に吸収することができる。
図7の(b)に示す荷重入力初期から各パイプ9は順次座屈変形し、図7の(c)〜(e)に示す荷重入力中期にかけて各パイプ9はさらに座屈変形が進み、図7の(f)に示す荷重入力終期を経て、図7の(g)に示す荷重入力完了最終期には、同図に示すように、全てのパイプ9が規則的かつ完全に座屈変形した。
すなわち、一つのパイプ9Aについて隣接する他の2つのパイプ9B,9Cに対する一対の短絡連結部12,13は、そのパイプ9Aの中心部Zに対して鋭角、望ましくは60度の角度θ2を成すようパイプ9A外周上の位置に形成されている。
この角度θ2の関係は、他の一対の短絡連結部11〜16についても同様であって、1つのパイプ9の軸圧縮方向の潰れが、閉断面方向に関して、短絡連結部11〜16を通じて周囲の2つのパイプ9を押したり引いたりして(つまり、一方を押し、他方が押されるよう)互いに作用し合い、それぞれが略正三角形の閉断面を成すよう、この集合パイプ体(円管集合体)を塑性変形させるにあたり、上述の短絡連結部を正三角形が形成されやすい方向に配置したので、斯る変形を安定的に生起させることができる。
すなわち、この短絡連結部11は、隣接する両パイプ9B,9Cとの結合部から該短絡連結部11のパイプ連結方向中央部に向けて、その厚さが連続的に小さくなるように設定されている。
この短絡連結部11のアール形状の構成については、他の短絡連結部12〜16についても同様に形成されるものである。
この場合、Lout=14.7mm、パイプ外径D=34mmであるので、Lout/D=14.7/34=0.432となり、余裕をもって条件設定するためにLout/D≦0.43としたものである。
このように、パイプ9を略正三角形状に断面変形させるためには、狭窄空間10として略正三角形の充分な空間を確保し、ある程度の変形自由度をもたせておく必要がある。
換言すれば、1つのパイプ9Aについて隣接する他の2つのパイプ9B,9Cに対する一対の短絡連結部12,13の狭窄空間10に対面する側の部分が、そのパイプ9Aの中心部Zに対して所定角度θ1を成すようパイプ9Aの外周上の位置に形成されたもので、Lin/D≦0.13を満たす所定角度θ1は32度以上となる。
なお、上述の内側の厚さ(Lin)が過大になり、狭窄空間10側への厚みが所定値以上に増加すると、狭窄空間10が過度に小さくなって、パイプ9の正三角形断面の生成が阻害されるものである。
図17〜図19は円筒間距離(パイプ外径間の距離)Xを7mm(図17)、11mm(図18)、15mm(図19)にそれぞれ変化させると共に、各短絡連結部11〜16の外側の厚さ(Lout)を、Lout=4.8mm、Lout=8.5mm、Lout=12mm、Lout=14.7mmに変化させて、この厚さ(Lout)に対する平均荷重/重量の特性をシミュレーションした比較例の結果を示す。
以上の結果により、X/D=5/34=0.147となるため、円筒間距離Xの目安はパイプ外径Dの1/7以下となる。
この構成によれば、数値シミュレーションの結果、上記外側の厚さ(Lout)の安定範囲を見出して、この厚さ(Lout)を、円管外径Dで除した値が0.43以下となるように設定したので、隣接する円管との変形の連携が強くなって安定して、連続変形が生ずる。なお、上記外側の厚さ(Lout)が過大になると、正三角形断面の生起が阻害される。
この構成によれば、数値シミュレーションにより内側の厚さ(Lin)の限界数値を求め、この内側の厚さ(Lin)を、円管外径Dで除した値が0.13以下となるように設定したので、隣接する円管(パイプ9)との変形の連携が強くなって安定して、連続変形が生ずる。因に、上記内側の厚さ(Lin)が過大になり、狭窄空間10側への厚みを所定値以上に増すと、正三角形断面の生成が阻害される。
この構成によれば、短絡連結部11〜16の上記長さ(円筒間距離X参照)を円管外径Dの1/7以下の長さに設定したので、隣接する円管(パイプ9)への荷重伝達を確実に行なうことができる。因に、短絡連結部11〜16の上記長さ(円筒間距離X参照)が、この数値以上に長くなると、隣接する円管(パイプ9)への荷重伝達が不充分かつ不安定となる。
換言すれば、上記短絡連結部11〜16にアールを形成したものである。
また、AlまたはAl合金の熱間押し出し成形により衝突エネルギ吸収部材(クラッシュカン7参照)を形成する場合、上記アールがないと、押し出し成形時に面圧が高くなり、AlまたはAl合金が押し出し成形用の金型に凝着するが、上述の如くアールを設けているので、押し出し成形時の良好な成形性を確保することができる。
この発明の衝突エネルギ吸収部材は、実施例のクラッシュカン7に対応し、
以下同様に、
円管は、パイプ9,9A〜9Eに対応し、
短絡連結部の円管連結方向の長さは、円筒間距離Xに相当するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
9…パイプ(円管)
9A…中央パイプ(中央管)
9B,9C,9D,9E…周辺パイプ(周辺管)
10…狭窄空間
11〜16…短絡連結部
D…外径
CL…中心線
Lout…外側の厚さ
Lin…内側の厚さ
X…円筒間距離(短絡連結部の円管連結方向の長さ)
Z…中心部
Claims (6)
- 少なくとも3本以上の直線状の略同径の円管が、これらのうちの3つの円管に周囲三方を囲まれた狭窄空間を形成するよう、互いに軸方向が平行に隣接して配置され、
各円管は、隣接する円管と最も近接する部位の近傍で円管の軸方向に連続する板状の短絡連結部で連結されて一体となされ、
軸方向の端部から入力された荷重により軸方向に塑性変形して圧縮される金属製の衝突エネルギ吸収部材であって、
一つの円管についての隣接する他の二つの円管に対する一対の上記短絡連結部は、
これら円管が車両前後方向の荷重を受けて座屈変形する場合に、一つの円管の軸方向の圧縮潰れが、閉断面方向に関して、上記一方の短絡連結部を押し、上記他方の短絡連結部を引いて互いに作用し合い、各円管がそれぞれ略正三角形の閉断面を成すよう、これら円管の集合体を塑性変形させるために、
その円管中心部に対して鋭角を成すよう円管外周上の位置に形成された
衝突エネルギ吸収部材。 - 上記衝突エネルギ吸収部材は5本であって、
中央に位置する中央管としての中央パイプの上側に2個の略同径の周辺パイプが配置されるとともに、該中央パイプの下側に2個の略同径の周辺パイプが配置され、
上記中央パイプと上側2個の周辺パイプ、並びに、上記中央パイプと下側2個の周辺パイプは、短絡連結部で上下方向に連結され、
上記中央パイプの上側および下側において隣接する各2個の周辺パイプ同士が、短絡連結部で横方向に連結され、
これら中央パイプおよび上下の周辺パイプが車両前後方向の荷重を受けて座屈変形する場合に、
各パイプの短絡連結部による短絡連結状態を維持した状態で、各パイプの集合体の座屈変形を許容すべく、上記中央パイプと上側2個の周辺パイプとの間に略正三角形の狭窄空間が形成されると共に、上記中央パイプと下側2個の周辺パイプとの間に、上記略正三角形の狭窄空間と上下対称となる逆向きの略正三角形の狭窄空間が形成された
請求項1記載の衝突エネルギ吸収部材。 - 上記短絡連結部は、隣接する円管の中心相互を結ぶ中心線より外側の厚さを、
円管外径で除した値が0.43以下に設定された
請求項1または2に記載の衝突エネルギ吸収部材。 - 上記短絡連結部は、隣接する円管の中心相互を結ぶ中心線より内側の厚さを、
円管外径で除した値が0.13以下に設定された
請求項1〜3の何れか1項に記載の衝突エネルギ吸収部材。 - 上記短絡連結部の円管連結方向の長さを、上記円管外径の1/7以下の長さに設定した
請求項1〜4の何れか1項に記載の衝突エネルギ吸収部材。 - 上記短絡連結部は、隣接する両円管との結合部から該短絡連結部の円管連結方向中央部に向けて、その厚さが連続的に小さくなるように設定された
請求項1〜5の何れか1項に記載の衝突エネルギ吸収部材。
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