電子血圧計の採用する血圧の算出方法の1つとして、生体の一部に巻いた流体袋を内包する腕帯(カフ)を加減圧することにより、圧迫された血管の容積変化から伝わる流体袋の容積変化を流体袋の圧力変化(圧脈波振幅)としてとらえ、血圧を算出するオシロメトリック法がある。
流体袋は、流体袋の圧力と流体袋の容積とが図28に示されるような関係となるような特性を備えている。すなわち、図28を参照して、A部分に示される流体袋の圧力の低い領域では、流体袋の圧力の増加に対して流体袋の容積が急激に増加する。また、B部分に示されるように、流体袋の圧力が高くなるに連れて、流体袋の圧力の増加に対して流体袋の容積の増加率が徐々に減少する。
流体袋を減圧する過程で血圧を測定する電子血圧計について説明する。このとき、図29は流体袋内の流体密度が低いとき、図30は流体袋内の流体密度が高いときの、血管の容積変化(A)に伴う、流体袋の容積変化(B)、流体袋内の流体密度の変化(C)、および流体袋の圧力変化(D)を表わす図である。また、図31は流体袋から出る流体の排出速度が速いとき、つまり単位時間当たりの排出量が多いとき、図32は流体袋から出る流体の排出速度が遅いとき、つまり単位時間当たりの排出量が少ないときの、血管の容積変化(A)に伴う、流体袋の容積変化(B)、および流体袋の圧力変化(C)を表わす図である。
図29〜図32より、流体袋を減圧する過程で血圧を測定する電子血圧計では、血管の容積変化の検出精度には、以下のような特徴があることが読取られる:
(1)流体袋の圧力が高いほど、流体袋内の流体の密度は高い、
(2)流体袋の容積が大きいほど血管の容積変化に伴う流体袋内の流体の密度変化は小さいため、血管の容積変化の検出精度は低い、
(3)流体袋の容積変化が同じ場合、流体袋の圧力が高いほど流体袋の容積変化に伴う流体袋内の流体の密度変化が大きくなるため、血管の容積変化の検出精度は高くなる、
(4)流体袋の圧力が同じであっても、流体袋内の流体の排出量によって血管の容積変化による流体袋の容積変化の大きさが変化するため、血管の容積変化の検出精度は異なる、
(5)流体袋内の流体の排出量が多いほど、血管の容積変化による流体袋の容積変化は小さくなるため、血管の容積変化の検出精度は低くなる。
そのため、オシロメトリック法を用い、流体袋を減圧する過程で血圧を測定する電子血圧計では、血管の容積変化の検出精度は、流体袋内の流体の密度、および流体袋からの流体の排出量に依存する。
流体袋を一定の速度で減圧し、減圧過程で血圧を測定する血圧計は、図33に示されるように、一定の速度で減圧するために(図33の(A))、流体袋の圧力や測定部位の周長に応じて、流体袋から排出する流体の量を弁で制御していた(図33の(B))。これにより、図33の(C)に示されるように、流体袋の圧力が高い領域では血管の一定の容積変化に対する圧脈波振幅が大きく、流体袋の圧力が低い領域では血管の一定の容積変化に対する圧脈波振幅が小さくなっていた。また、流体袋の圧力変化に伴う血管の容積変化の変化量が測定部位の周長によって異なっていたため、これらが血圧測定の誤差要因となっていた。
次に、流体袋を加圧する過程で血圧を測定する電子血圧計について説明する。このとき、図34は流体袋内の流体密度が低いとき、図35は流体袋内の流体密度が高いときの、血管の容積変化(A)に伴う、流体袋の容積変化(B)、流体袋内の流体密度の変化(C)、および流体袋の圧力変化(D)を表わす図である。また、図36は流体袋への流体の流入が早いとき、つまり単位時間当たりの流入量が多いとき、図37は流体袋への流体の流入が遅いとき、つまり単位時間当たりの流入量が少ないときの、血管の容積変化(A)に伴う、流体袋の容積変化(B)、および流体袋の圧力変化(C)を表わす図である。
図34〜図37より、流体袋を加圧する過程で血圧を測定する電子血圧計では、血管の容積変化の検出精度には、以下のような特徴があることが読取られる:
(1)流体袋の圧力が高いほど、流体袋内の流体密度は高い、
(2)流体袋の容積が大きいほど流体袋の容積変化に伴う流体袋内の流体密度変化は小さいため、血管の容積変化の検出精度は低い、
(3)流体袋の容積変化が同じ場合、流体袋の圧力が高いほど流体袋の容積変化に伴う流体袋内の流体密度変化が大きくなるため、血管の容積変化の検出精度は高くなる、
(4)流体袋の圧力が同じであっても、流体袋への流体の流入量によって血管の容積変化による流体袋の容積変化の大きさが変化するため、血管の容積変化の検出精度は異なる、
(5)流体袋への流体の流入量が多いほど、血管の容積変化による流体袋の容積変化は小さくなるため、血管の容積変化の検出精度は低くなる。
そのため、オシロメトリック法を用い、流体袋を加圧する過程で血圧を測定する電子血圧計では、血管の容積変化の検出精度は、流体袋内の流体の密度、および流体袋への流体の流入量に依存する。
流体袋を一定の速度で加圧し、加圧過程で血圧を測定する血圧計は、図38に示されるように、一定の速度で加圧するために(図38の(A))、流体袋の加圧速度や測定部位の周長に応じて、流体袋に注入する流体の量をポンプで制御している。このとき、流体袋に注入する流体の量は、流体袋の圧力や測定部位の周長に応じて変化していた(図38の(B))。これにより、図38の(C)に示されるように、流体袋の圧力が高い領域では血管の容積変化に対する圧脈波振幅が大きく、流体袋の圧力が低い領域では血管の一定の容積変化に対する圧脈波振幅が小さくなっていた。また、流体袋の圧力変化に伴う圧脈波振幅の変化量が測定部位の周長によって異なっていたため、これらが血圧測定の誤差要因となっていた。
また、流体袋を加圧するためのポンプの駆動電圧を一定にして加圧する血圧計では、図39に示されるように、流体袋の加圧速度が流体袋の圧力や測定部位の周長に応じて変化していた(図39の(A))。また、流体袋に注入する流体の量が流体袋の圧力に応じて変化していた(図39の(B))。これにより、図39の(C)に示されるように、流体袋の圧力が高い領域では血管の一定の容積変化に対する圧脈波振幅が大きく、流体袋の圧力が低い領域では血管の一定の容積変化に対する圧脈波振幅が小さくなっていた。また、流体袋の圧力変化に伴う血管の容積変化の変化量が測定部位の周長によって異なっていたため、これらが血圧測定の誤差要因となっていた。
これらの問題を解消するための技術として、以下のような方法が開示されている。すなわち、特開平6−245911号公報(特許文献1)は、測定部位の周長に応じて弁の排出量を調整する技術、あるいは流体袋と連通する流体格納部を備え、流体袋の測定部位への巻きつけ周長に応じて流体袋と流体格納部との容積和を一定にして制御する技術を開示している。これにより、測定部位の周長が異なっても減圧速度を一定に保つことを実現している。
また、特許第3113737号公報(特許文献2)は、流体袋の圧力に対する流体袋の容積変化特性を予め備えておき、流体袋の圧力変化の信号を容積変化へと換算しなおし、それを用いて血圧値を計測する方法を開示している。
また、特開平4−250133号公報(特許文献3)は、脈波出現区間においては、流体袋内の流体を排出する弁を閉じて流体袋の容積変化に伴う血管の容積変化の減衰を防ぐ方法を開示している。
特開平6−245911号公報
特許第3113737号公報
特開平4−250133号公報
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態として、流体袋を減圧する過程で血圧を測定する血圧測定装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる血圧測定装置である血圧計1のハードウェア構成の具体例を示すブロック図である。図1を参照して、血圧計1は、本体2と、測定部位に巻付けるカフ5とを備え、それらがチューブ10で接続される。本体2の正面には、スイッチ等の操作部3と、測定結果等を表示する表示部4とが配備される。操作部3には、電源のON/OFFを指示するための電源スイッチ31、測定の開始を指示するための測定スイッチ32、測定の停止を指示するための停止スイッチ33、および記録されている測定値を呼出して表示させるための記録呼出スイッチ34などが含まれる。カフ5には流体袋13が配置される。流体袋13に注入され、流体袋13から排出される流体は、たとえば空気が該当する。カフ5を測定部位に巻付けることで流体袋13が測定部位に押付けられる。測定部位としては、たとえば上腕または手首などが挙げられる。
流体袋13は、流体袋13の内圧変化を測定する圧力センサ23、流体袋13に対する流体の注入/排出を行なうポンプ21、および弁22に接続される。圧力センサ23、ポンプ21、および弁22は、各々、発振回路28、ポンプ駆動回路26、および弁駆動回路27に接続され、さらに、発振回路28、ポンプ駆動回路26、および弁駆動回路27は、各々、血圧計1全体を制御するCPU(Central Processing Unit)40に接続される。
CPU40には、さらに、表示部4と、操作部3と、CPU40で実行されるプログラムを記憶したりプログラムを実行する際の作業領域となったりするメモリ6と、測定結果等を記憶するメモリ7と、電源53とが接続される。
CPU40は、電源53から電力供給を受けて駆動する。CPU40は周長情報取得部41および弁駆動電圧決定部43を含む。これらは、CPU40が操作部3から入力される操作信号に基づいてメモリ6に記憶されている所定のプログラムを実行することで、CPU40に形成される。周長情報取得部41は測定部位のサイズである周長情報を取得し、弁駆動電圧決定部43に入力する。弁駆動電圧決定部43は周長情報に基づいて弁22を駆動させるための電圧(以下、駆動電圧Ev)を決定する。CPU40は、弁駆動回路27に、弁駆動電圧決定部43で決定された駆動電圧Evに応じた制御信号を出力する。また、CPU40は、操作部3から入力される操作信号に基づいてメモリ6に記憶されている所定のプログラムを実行しポンプ駆動回路26に制御信号を出力する。
ポンプ駆動回路26および弁駆動回路27は、制御信号に従ってポンプ21および弁22を駆動させる。ポンプ21は、CPU40からの制御信号に従ったポンプ駆動回路26によってその駆動が制御されて、流体袋13内に流体を注入する。弁22は、CPU40からの制御信号に従った弁駆動回路27によってその開閉および開き幅(以下、ギャップと称する)が制御されて、流体袋13内の流体を排出する。
圧力センサ23は静電容量形の圧力センサであり、流体袋13の内圧変化により容量値が変化する。発振回路28は、圧力センサ23の容量値に応じた発振周波数の信号に変換され、CPU40に入力される。CPU40は、圧力センサ23から得られた流体袋13の内圧変化に基づいて所定の処理を実行し、その結果に応じてポンプ駆動回路26および弁駆動回路27に上記制御信号を出力する。また、CPU40は、圧力センサ23から得られた流体袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出し、測定結果を表示部4に表示させるための処理を行ない、表示させるためのデータと制御信号とを表示部4に出力する。また、CPU40は、血圧値をメモリ7に記憶させるための処理を行なう。
図2は、血圧計1において測定スイッチ32が操作されたタイミングで実行される処理の、第1の具体例を示すフローチャートである。図2のフローチャートに示される処理は、CPU40がメモリ6に記憶されている所定のプログラムを実行することにより実現される。
図2を参照して、CPU40は、操作部3からの操作信号の入力を監視し、測定スイッチ32が操作されたことを検知すると、ステップS101でCPU40の周長情報取得部41は、測定部位のサイズである測定部位の周長を表わす周長情報を取得する。ここでは、操作部3を構成するスイッチなどによって、測定時にたとえば「太」、「細」などの周長情報が入力されるものとし、周長情報取得部41は操作部3からの操作信号より周長情報を取得するものとする。
なお、周長情報取得部41での周長情報の取得方法は上述の方法には限定されない。たとえば、血圧計1において測定スイッチ32が操作されたタイミングで実行される処理の第2の具体例として図3に示されるように、上記ステップS101に替えてステップS201〜S205の処理で周長情報を取得してもよい。詳しくは、ステップS201でCPU40はポンプ駆動回路26に予め規定されてある所定の電圧でポンプ21を駆動させるための制御信号を出力し、所定の電圧でポンプ21を駆動させて流体袋13が予め規定されている所定の圧力に達するまで流体袋13を加圧する。所定の圧力に達すると(ステップS203でYES)、ステップS205でCPU40は、流体袋13が所定圧力に達するまでの加圧時間を記憶する。図4(A)に示されるように、ポンプ21を駆動させる駆動電圧が同じ場合、測定部位の周長が大きくなるほど加圧速度は小さくなる。従って、図4(B)に示されるように、測定部位の周長が大きくなるほど加圧時間は大きくなる。つまり、流体袋13が所定圧力に達するまでの加圧時間は測定部位の周長を表わす指標と言える。そこで、周長情報取得部41は、ステップS205で記憶された加圧時間を周長情報として取得する。なお、周長情報取得部41は、加圧時間に替えて、ポンプ21の回転数と流体袋13の圧力とからも、同様にして得られる。また、他の例として、流体袋13を測定部位に巻きつける手段としての布(不図示)にスライド抵抗が含まれており、周長情報取得部41は、流体袋13を測定部位に巻きつけたときの上記スライド抵抗から得られる抵抗値から周長情報を取得してもよい。
ステップS103、S105でCPU40はポンプ駆動回路26に制御信号を出力し、流体袋13が予め規定されている所定の圧力に達するまで流体袋13を加圧する。所定の圧力に達すると(ステップS105でYES)、ステップS107でCPU40はポンプ駆動回路26に制御信号を出力し、流体袋13の加圧を停止する。その後、ステップS109でCPU40の弁駆動電圧決定部43は、ステップS101またはステップS201〜S205で取得された周長情報に基づいて弁22の駆動電圧Evを決定する。ステップS111でCPU40は、ステップS109で決定された駆動電圧Evを保持して弁22を駆動させるよう制御信号を弁駆動回路27に出力し、流体袋13の減圧を開始する。ステップS113でCPU40は、減圧中に得られる流体袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。なお、上記ステップS111での減圧速度が速すぎて上記ステップS113で血圧値が算出されないときや、逆に、上記ステップS111での減圧速度が遅すぎて排出が進まないときなど(ステップS114でNO)、ステップS117でCPU40はエラーと判断して、弁22を開放させるよう制御信号を弁駆動回路27に出力し、流体袋13内の流体を急速に排出する。そうでない場合、つまり上記ステップS113で血圧値が算出された場合には(ステップS114でYES)、ステップS115でCPU40からの制御信号に従って弁22が開放され、流体袋13内の流体が排出される。
上記ステップS109の、弁駆動電圧決定部43での駆動電圧Evの決定について説明する。
ここで、駆動電圧Evを一定に保持した場合の流体袋の圧力に対する減圧速度の変化度合いは、図5に示されるように、測定部位の周長によって異なる。具体的には、図5を参照して、測定部位の周長が小さいほど減圧速度の変化度合いが大きく、測定部位の周長が大きいほど減圧速度の変化度合いが小さい。つまり、図5に示される関係より、測定部位の周長は駆動電圧Evを決定するためのパラメータであると言える。
上記ステップS109で、弁駆動電圧決定部43は上述の図5に示された関係を利用して駆動電圧Evを決定する。具体例として、弁駆動電圧決定部43は、以下の式(1)に上記ステップS101または上記ステップS201〜S205で取得された周長情報を代入することで駆動電圧Evを決定する:
駆動電圧Ev=α×周長情報+β …式(1)。
ステップS109で上述の式(1)が用いられることで、図6に示されるように、駆動電圧Evが測定部位の周長に比例した大きさで決定される。
ここで、測定部位の周長が同一であった場合の流体袋13の圧力に対する減圧速度の変化度合いは、図7に示されるように、弁22のギャップ、つまり駆動電圧の大きさによって異なる。具体的には、図7を参照して、弁22のギャップが大きくなるほど減圧速度の変化度合いが大きく、ギャップが小さくなるほど減圧速度の変化度合いが小さい。従って、図7に示される関係より、ギャップの大きさは、流体袋13の、最高血圧の算出から最低血圧の算出までの減圧速度を、所定の速度の範囲内とするような大きさが好ましい。より詳しくは、ギャップの大きさは、減圧時の最高血圧と最低血圧との間に検出できる脈拍数が所定数以上となるような減圧速度となるギャップの大きさが好ましい。より好ましくは、上記「所定数」は5である。なぜなら、本願出願人が先に出願して開示されている特許第3179873号公報にも記載されているように、減圧時の最高血圧と最低血圧との間に5程度の脈拍数が測定されるように減圧速度が制御されるよう減圧測定のアルゴリズムの性能を考慮して設定されることが妥当であるとされているためである。なお、減圧時の最高血圧と最低血圧との間に5以上の脈拍数が測定されるような減圧速度はたとえば実験等によって得られ、予めメモリ6に記憶されているものとする。その値として具体的には、好ましくは3mmHg/sec〜13mmHg/sec程度である。従って、上記式(1)の係数α,βは、流体袋13の圧力が血圧値程度の範囲における血圧減圧速度を、3mmHg/sec〜13mmHg/sec程度である目標とする減圧速度内とするような値とすることができる。このような係数α,βは、予め実験等によって求められ、血圧計1のメモリ6に記憶されているものとする。なお、上の例では、ステップS109で上記式(1)に取得された周長情報を入力して駆動電圧Evを決定するものとしているが、式(1)に替えて、メモリ6が周長情報と駆動電圧Evとの関係を規定するテーブルを記憶しておき、弁駆動電圧決定部43がそのテーブルから、取得された周長情報に対応する駆動電圧Evを読出してもよい。
[変形例]
図8は、血圧計1において測定スイッチ32が操作されたタイミングで実行される処理の、変形例を示すフローチャートである。図8に示される処理においては、図3に示された第2の具体例と同様に、ステップS201〜S205で流体袋13の圧力が所定圧力に達するまでの加圧時間に基づいて測定部位の周長が推定されると共に、その後の加圧過程において、ステップS301でCPU40は、圧力センサ23から得られた流体袋13の内圧変化に基づいて最高血圧値を推定し、ステップS303で流体袋13の加圧終了時の圧力を算出する。血圧計1は所定圧力まで流体袋13を加圧した後の減圧過程で得られる流体袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出する構成である。そのため、ステップS303では、好ましくは、CPU40は、ステップS301で推定された最高血圧値よりも所定圧力値分高い圧力値を加圧終了圧力として算出する。流体袋13の圧力がステップS303で算出された加圧終了圧力に達すると(ステップS105’でYES)、以降、図2や図3に示された処理と同様にして駆動電圧Evが決定されて、駆動電圧Evを保持して弁を駆動させるような制御が行なわれる減圧過程において血圧値が算出される。
なお、変形例においては、ステップS109で弁駆動電圧決定部43は、上述の図5に示された関係に替えて、または加えて、ステップS301で推定された最高血圧値を考慮して駆動電圧Evを決定する。具体例として、駆動電圧決定部43は、以下の式(2)に上記ステップ101または上記ステップS201〜S205で取得された周長情報を代入することで駆動電圧Evを決定する:
駆動電圧Ev=α×周長情報+β+オフセット量S、
オフセット量S=推定最高血圧値×γ …式(2)。
変形例におけるステップS109で上述の式(2)が用いられることで、図9に示されるように、駆動電圧Evが、測定部位の周長に比例した大きさで、かつ推定された最高血圧に応じた大きさで決定される。なお、上の具体例では、オフセット量Sは推定最高血圧値に基づいて算出されるものとしている。しかしながら、オフセット量Sは、推定最低血圧値、脈圧、または脈波の周期に基づいて算出されるものであってもよい。
図7を用いて説明された関係より、ギャップの大きさは、流体袋13の圧力が血圧値程度の範囲における血圧減圧速度を目標とする減圧速度内とするような大きさが好ましい。従って、上記式(2)の係数γもまた、流体袋13の最高血圧の算出から最低血圧の算出までの減圧速度を、3mmHg/sec〜13mmHg/sec程度である目標とする減圧速度内とするような値とすることができる。
上記ステップS111では、CPU40によって、上記ステップS109で決定された駆動電圧Evを保持して弁22を駆動させるよう制御される。すなわち、減圧時に弁22のギャップが一定となるよう制御される。これにより、減圧時、流体袋13の減圧速度は、流体袋13の圧力変化に伴って図10(A)に示されるように変化する。すなわち、図10(A)より、流体袋13の圧力がある圧力以下となった場合、流体袋13の減圧速度は、測定部位の周長の大小に関わらず、ほぼ同じ値で、以降の(減少する)圧力変化によってほぼ変化しなくなる。また、減圧時、流体袋13の圧力における弁22からの排出量は、流体袋13の圧力変化に伴って図10(B)に示されるように変化する。すなわち、図10(B)より、流体袋13の圧力がある圧力以下となった場合、弁22からの排出量は、測定部位の周長に応じた値で、以降の(減少する)圧力変化によってほぼ変化しなくなる。つまり、図10(A)、図10(B)に示された関係より、駆動電圧Evが一定となるように制御すること、すなわち弁22のギャップを一定とするよう制御することは、弁22からの排出量と流体袋13の減圧速度とを比例関係となるように駆動電圧Evを制御することである、と言える。
CPU40がこのように制御することで、血圧計1においては、流体袋13から出る流体の流量と減圧速度とを比例関係に近づけることができる。それにより、血管の容積変化の検出精度を一定に近づけることができ、測定精度を向上させることができる。つまり、図10(C)に示されるように、流体袋13の圧力変化に関わらず、一定の容積変化に対する圧脈波振幅を測定部位の周長に応じた値で一定とすることができる。
図11は、流体袋13の圧力と検出される脈波振幅との関係を説明するための図である。図11(A)は、流体袋13の時間経過に従った圧力変化と、動脈内圧の圧力変化とを示している。図11(A)中の点線Aは、従来の、流体袋の圧力を等速減圧するよう制御した場合の、流体袋13の圧力変化を示している。それに対して、本実施の形態にかかる血圧計1において、駆動電圧Evが一定、すなわち弁22のギャップが一定となるよう制御して減圧した場合の流体袋13の圧力変化は実線Bで示されている。血圧計1において駆動電圧Evが一定、すなわち弁22のギャップが一定となるよう制御して減圧されることで、従来では図11(B)に示されるように流体袋13の圧力変化(減圧)に従って測定される動脈内圧が、図11(C)に示されるように測定される。詳しくは、図11(C)において、図11(B)に示された動脈内圧の各測定値を結んで得られる線分が、点線で示されている。従来の、流体袋の圧力を等速減圧するよう制御される血圧計においては、図29および図30に示されたように、同じ動脈内圧であっても、流体袋の圧力が低い領域では高い領域と比較して血管の容積変化の検出精度が低くなる。それに対して、本実施の形態にかかる血圧計1では、図11(B)と図11(C)とを比較することで示されるように、流体袋13の圧力の低い領域における血管の容積変化の検出精度が、従来の、流体袋の圧力を等速減圧するよう制御される血圧計での検出精度よりも向上していることが顕著に示されている。同様に、圧力の高い領域における血管の容積変化の検出精度も向上していることが示されている。
なお、上の例では、上記ステップS111での減圧過程において、CPU40は駆動電圧Evを上記ステップS109で弁駆動電圧決定部43によって決定された駆動電圧Evに保持する、つまり駆動電圧Evを一定に保つよう制御している。しかしながら、血圧計1が上に示された構成に加えて、図12に示されるように、弁22からの排出量を測定する流量計55をさらに含んで、減圧過程において、弁駆動電圧決定部43によって、弁22からの排出量と減圧速度とが比例関係となるように駆動電圧Evが更新されてもよい。この場合、CPU40はフィードバック制御を行ない、駆動電圧Evを、所定の時間間隔等の特定のタイミングで決定される駆動電圧Evに変更して保持するよう制御する。このようなフィードバック制御がされることで、流体袋13から出る流体の流量と減圧速度とを比例関係により近づけることができる。それにより、一定の血管の容積変化に対する圧脈波振幅を一定に近づけることができ、測定精度を向上させることができる。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態として、流体袋を加圧する過程で血圧を測定する血圧測定装置について説明する。
図13は、本発明の第2の実施の形態にかかる血圧測定装置である血圧計1’のハードウェア構成の具体例を示すブロック図である。図13を参照して、第2の実施の形態にかかる血圧計1’は、図1に示された第1の実施の形態にかかる血圧計1のハードウェア構成と、ほぼ同様のハードウェア構成である。
第2の実施の形態にかかる血圧計1’では、CPU40には、弁駆動電圧決定部43に替えて、ポンプ駆動電圧決定部45が含まれる。周長情報取得部41およびポンプ駆動電圧決定部45は、CPU40が操作部3から入力される操作信号に基づいてメモリ6に記憶されている所定のプログラムを実行することで、CPU40に形成される。周長情報取得部41は測定部位のサイズである周長情報を取得し、ポンプ駆動電圧決定部45に入力する。ポンプ駆動電圧決定部45は周長情報に基づいてポンプ21を駆動させるための電圧(以下、駆動電圧Ep)を制御するための制御パラメータApを決定する。さらに、制御パラメータApと発振回路28を介して入力される圧力センサ23で測定される流体袋13の圧力である内圧Pとに基づいて駆動電圧Epを決定する。CPU40は、ポンプ駆動回路26に、ポンプ駆動電圧決定部45で決定された駆動電圧Epに応じた制御信号を出力する。また、CPU40は、操作部3から入力される操作信号に基づいてメモリ6に記憶されている所定のプログラムを実行し弁駆動回路27に制御信号を出力する。
図14は、血圧計1’において測定スイッチ32が操作されたタイミングで実行される処理の具体例を示すフローチャートである。図14のフローチャートに示される処理は、CPU40がメモリ6に記憶されている所定のプログラムを実行することにより実現される。
図14を参照して、第1の実施の形態において図2に示された処理のステップS101と同様にして、CPU40の周長情報取得部41は、測定部位のサイズである測定部位の周長を表わす周長情報を取得する。なお、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態において図3、図4を用いて説明されたように、流体袋13が所定圧力に達するまでの加圧時間を周長情報として取得してもよいし、先述のように、流体袋13を測定部位に巻きつける手段としての布(不図示)にスライド抵抗が含まれている場合には、上記スライド抵抗から得られる抵抗値から周長情報を取得してもよい。
ステップS401でCPU40のポンプ駆動電圧決定部45は、ステップS101で取得された周長情報に基づいてポンプ21の駆動電圧Epを制御するための制御パラメータApを決定する。
ステップS403でCPU40は、ステップS401で決定された制御パラメータApと内圧Pとを用いて駆動電圧Epを決定し、決定された駆動電圧Epでポンプ21を駆動させるよう制御信号をポンプ駆動回路26に出力し、流体袋13を加圧する。なお、ステップS403でCPU40は、上述の処理を所定のタイミングで行なって、流体袋13の内圧変化に応じて駆動電圧Epを決定してもよい。所定のタイミングとは、たとえば所定の時間間隔や、流体袋13の圧力が所定の圧力に達したタイミングなどが挙げられる。そして、ステップS113’でCPU40は、加圧中に得られる流体袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。なお、上記ステップS403での加圧速度が速すぎて上記ステップS113’で血圧値が算出されないときや、逆に、上記ステップS403での加圧速度が遅すぎて加圧が進まないときなど(ステップS114でNO)、ステップS117でCPU40はエラーと判断して、弁22を開放させるよう制御信号を弁駆動回路27に出力し、流体袋13内の流体を急速に排出する。そうでない場合、つまり上記ステップS113’で血圧値が算出された場合には(ステップS114でYES)、ステップS115でCPU40からの制御信号に従って弁22が開放され、流体袋13内の流体が排出される。
上記ステップS401のポンプ駆動電圧決定部45での制御パラメータApの決定、および上記ステップS403のポンプ駆動電圧決定部45での駆動電圧Epの決定について説明する。
図15は、駆動電圧Epを一定に保持した場合の、測定部位の周長ごとの、流体袋13の圧力と加圧速度との関係を表わす図である。図15を参照して、測定部位の周長が小さいほど全体的に加圧速度が大きい。逆に測定部位の周長が大きいほど、全体的に加圧速度が小さい。また、測定部位の周長が小さいほど加圧速度の変化度合いが大きく、測定部位の周長が大きいほど加圧速度の変化度合いが小さい。つまり、図15に示される関係より、測定部位の周長は駆動電圧Epを決定するためのパラメータであると言える。
そこで、上記ステップS401で、ポンプ駆動電圧決定部45は上述の図15に示された関係を利用して制御パラメータApを決定する。具体例として、ポンプ駆動電圧決定部45は、以下の式(3)に上記ステップS101または上記ステップS201で取得された周長情報を代入することで制御パラメータApを決定する:
制御パラメータAp=α’×周長情報+β’ …式(3)。
図16は、測定部位の周長をある大きさに固定した場合の、駆動電圧Epごとの、流体袋13の圧力と流体袋13への流体の流入速度、つまり単位時間当たりの流入量との関係を表わす図である。図16を参照して、駆動電圧Epが大きい(高い)ほど、つまりポンプ21の駆動力が大きいほど全体的に流入速度が大きい。逆に、駆動電圧Epが小さい(低い)ほど、つまりポンプ21の駆動力が小さいほど、全体的に流入速度が小さい。また、駆動電圧Epが大きいほど流入速度の変化度合いが大きく、駆動電圧Epが小さいほど流入速度の変化度合いが小さい。
そこで、上記ステップS403で、ポンプ駆動電圧決定部45は上述の図16に示された関係を利用して駆動電圧Epを決定する。具体例として、上述のようにして決定された制御パラメータApと流体袋13の内圧Pとを以下の式(4)に代入することで、駆動電圧Epを決定する:
駆動電圧Ep=制御パラメータAp×内圧P …式(4)。
ステップS401,S403で上述の式(3),(4)が用いられることで、図17に示されるように、駆動電圧Epが測定部位の周長と内圧Pに比例した大きさで決定される。さらに、上記ステップS403では、上記ステップS105で流体袋13の圧力が所定の圧力に達した段階で上述のように駆動電圧Epが決定されてさらに加圧されるのみならず、その後の所定のタイミングでさらに同様にして、駆動電圧Epが決定(更新)されてもよい。上記所定のタイミングで駆動電圧Epが決定される場合、ポンプ駆動電圧決定部45はそのときの内圧Pを上記式(3)に代入することで駆動電圧Epを決定する。
より詳しくは、駆動電圧Epは、加圧時の最低血圧と最高血圧との間に検出できる脈拍数が所定数以上となるような加圧速度となる大きさが好ましい。より好ましくは、先述のように、上記「所定数」は5である。加圧時の最低血圧と最高血圧との間に5以上の脈拍数が測定されるような加圧速度は、好ましくは3mmHg/sec〜13mmHg/sec程度である。従って、上記式(3)の係数α’,β’は、流体袋13の、最低血圧の算出から最高血圧の算出までの加圧速度を、3mmHg/sec〜13mmHg/sec程度である目標とする加圧速度内とするような値とすることができる。このような係数α’,β’は、予め実験や図16に示される関係等によって求められ、血圧計1’のメモリ6に記憶されているものとする。なお、上の例では、ステップS401で上記式(3)に取得された周長情報を入力して制御パラメータApを決定するものとしているが、式(3)に替えて、メモリ6が周長情報と制御パラメータApとの関係を規定するテーブルを記憶しておき、ポンプ駆動電圧決定部45がそのテーブルから、取得された周長情報に対応する制御パラメータApを読出してもよい。同様に、式(4)に替えて、メモリ6が周長情報と駆動電圧Epとの関係を規定するテーブルを記憶しておき、ポンプ駆動電圧決定部45がそのテーブルから、取得された周長情報に対応する駆動電圧Epを読出してもよい。
上記ステップS403でCPU40は、流体袋13を加圧しながら内圧Pに応じて駆動電圧Epを更新する。これにより、加圧時、流体袋13への流体の単位時間当たりの流入量は、流体袋13の圧力変化に伴って図18(A)に示されるように制御される。このとき、流体袋13の加圧速度は、流体袋13の圧力変化に伴って図18(B)に示されるように変化(増加)する。これにより、血圧計1’においては、流体袋13に単位時間当たりに注入する流体の流量と流体袋13の加圧速度とを比例関係に近づけることができる。そのため、測定精度を向上させることができる。つまり、図18(C)に示されるように、流体袋13の圧力変化に関わらず、一定の容積変化に対する圧脈波振幅を測定部位の周長に応じた値で一定とすることができる。
図19は、流体袋13の圧力と検出される脈波振幅との関係を説明するための図である。図19(A)は、流体袋13の時間経過に従った圧力変化と、動脈内圧の圧力変化とを示している。図19(A)中の点線Aは、従来の、流体袋の圧力を等速加圧するよう制御した場合の、流体袋13の圧力変化を示している。それに対して、本実施の形態にかかる血圧計1’において、駆動電圧Epを流体袋13の圧力である内圧Pに応じて更新するよう制御して加圧した場合の流体袋13の圧力変化は実線Bで示されている。血圧計1’において加圧時にポンプ21の駆動電圧Epが流体袋13の圧力に応じて更新されることで、従来では図19(B)に示されるように流体袋13の圧力変化(加圧)に従って測定される動脈内圧が、図19(C)に示されるように測定される。詳しくは、図19(C)において、図19(B)に示された動脈内圧の各測定値を結んで得られる線分が、点線で示されている。従来の、流体袋の圧力を等速加圧するよう制御される血圧計においては、図34および図35に示されたように、同じ動脈内圧であっても、流体袋の流体密度が低い領域では高い領域と比較して血管の容積変化の検出精度が低くなる。それに対して、本実施の形態にかかる血圧計1’では、図19(B)と図19(C)とを比較することで示されるように、流体袋13の圧力の低い領域における血管の容積変化の検出精度が、従来の、流体袋の圧力を等速加圧するよう制御される血圧計での検出精度よりも向上していることが顕著に示されている。同様に、圧力の高い領域における血管の容積変化の検出精度も向上していることが示されている。
なお、上の例では、上記ステップS403での加圧過程において、CPU40は駆動電圧Epを流体袋13の圧力に基づいて更新している。しかしながら、血圧計1’が上に示された構成に加えて、図20に示されるように、流体袋13への流体の流入量を測定する流量計55をさらに含んで、加圧過程において、ポンプ駆動電圧決定部45によって、流体袋13への流体の単位時間当たりの流入量と加圧速度とが比例関係となるように駆動電圧Epが更新されてもよい。これによっても、流体袋13への流体の単位時間当たりの流入量と加圧速度とを比例関係に近づけることができる。それにより、一定の血管の容積変化に対する圧脈波振幅を一定に近づけることができ、測定精度を向上させることができる。
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態にかかる血圧計1において上述の制御がなされることで、図11(A)に示されるように、減圧過程において流体袋13の内圧が変化する。また、第2の実施の形態にかかる血圧計1’において上述の制御がなされることで、図19(A)に示されるように、加圧過程において流体袋13の内圧が変化する。図11(A)および図19(A)のいずれにも示されているように、これらの制御方法では、高圧側での速度変化が大きくなる。したがって、いずれの場合であっても、図11(C)および図19(C)のいずれにも示されているように、高圧側において取得できる脈波の数が少なくなる。つまり、いずれの制御方法でも、高圧側では低圧側ほど脈波情報を得ることができていない。
そこで、第3の実施の形態では、血圧計1、血圧計1’において、加圧過程と減圧過程との両過程において血圧測定を行なうものとする。
先に、血圧計1について説明する。図21のフローチャートに、第3の実施の形態において、血圧計1で測定スイッチ32が操作されたタイミングで実行される処理の具体例を示す。第3の実施の形態では、図2に示された第1の実施の形態での処理と比較すると、ステップS103で流体袋13が加圧されている過程において、ステップS104でCPU40は、圧力センサ23からの出力より流体袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により最高血圧値を算出する。なお、上記ステップS103での加圧は、通常の、等速加圧であってよい。そして、上記ステップS104で最高血圧値が算出された場合には(ステップS105’でYES)、上述のステップS107以降の処理が行なわれる。なお、第3の実施の形態では、上述のステップS113での処理において、つまり上述のステップS111で駆動電圧Evが一定、すなわち弁22のギャップが一定となるよう制御がなされている、流体袋13の減圧過程において、CPU40は、圧力センサ23からの出力から、所定の演算により最低血圧値を算出する(ステップS113”)。
図22は、流体袋13の圧力と検出される脈波振幅との関係を説明するための図である。図22(A)は、流体袋13の時間経過に従った圧力変化と、動脈内圧の圧力変化とを示している。図22(B)は、上記ステップS104で流体袋13の圧力変化(加圧)に従って測定される動脈内圧を示している。上記ステップS113”で測定される動脈内圧は、図11(C)に示されるものと同様である。
次に、血圧計1’について説明する。図23のフローチャートに、第3の実施の形態において、血圧計1’で測定スイッチ32が操作されたタイミングで実行される処理の具体例を示す。第3の実施の形態では、図14に示された第2の実施の形態での処理と比較すると、ステップS403までは第2の実施の形態での処理と同様の処理が行なわれる。その後、第3の実施の形態においては、ステップS403で流体袋13が上述の加圧制御されている過程において、ステップS405でCPU40が動脈内圧を測定し、最低血圧値を算出する。ステップS301’でCPU40は、圧力センサ23から得られた流体袋13の内圧変化に基づいて最高血圧値を推定し、ステップS303で流体袋13の加圧終了時の圧力を算出する。そして、流体袋13の圧力がステップS303で算出された加圧終了圧力に達すると(ステップS105’でYES)、ステップS107でCPU40はポンプ駆動回路26に制御信号を出力し、流体袋13の加圧を停止する。その後のステップS111’で通常の等速減圧する処理が実行されて、減圧過程において動脈内圧が測定されて最高血圧値が算出される(ステップS112)。
図24は、第3の実施の形態において血圧計1’の流体袋13の圧力と検出される脈波振幅との関係を説明するための図である。図24(A)は、流体袋13の時間経過に従った圧力変化と、動脈内圧の圧力変化とを示している。図24(B)は、流体袋13の減圧過程において圧力変化(減圧)に従って測定される動脈内圧を示している。加圧で測定される動脈内圧は、図19(C)に示されるものと同様である。
図22(B)と図11(C)とを比較することで示されるように、血圧計1において、上記ステップS104で動脈内圧を測定することで、上記ステップS113またはステップS113”で動脈内圧を測定する場合と比較して、高圧側において取得できる脈波の数が増加している。同様に、図24(B)と図19(C)とを比較することで示されるように、血圧計1’において、減圧過程において動脈内圧を測定することで、加圧過程で動脈内圧を測定する場合と比較して、高圧側において取得できる脈波の数が増加している。つまり、血圧計1,1’において第3の実施の形態における測定方法で動脈内圧を測定して血圧値を算出することで、第1の実施の形態における測定方法、または第2の実施の形態における測定方法で測定するよりも、高圧側において動脈情報を多く得ることができる。その結果、最高血圧の測定精度を向上させることができる。従って、血圧計1において、第1の実施の形態で説明された制御と上述の制御とを行なうことで、流体袋13の圧力の低い領域の血管の容積変化の検出精度も、高い領域の血管の容積変化の検出精度も向上させることができる。同様に、血圧計1’において、第2の実施の形態で説明された制御と上述の制御とを行なうことで、流体袋13の圧力の低い領域の血管の容積変化の検出精度も、高い領域の血管の容積変化の検出精度も向上させることができる。
[第4の実施の形態]
さらに、流体袋13の加圧時に第2の実施の形態で説明された制御が行なわれ、減圧時に第1の実施の形態で説明された制御が行なわれてもよい。図25は、本発明の第4の実施の形態にかかる血圧測定装置である血圧計1”のハードウェア構成の具体例を示すブロック図である。図25に示されるように、血圧計1”のCPU40には、第1の実施の形態で説明された弁駆動電圧決定部43と、第2の実施の形態で説明されたポンプ駆動電圧決定部45とが含まれる。
図26は、血圧計1”において測定スイッチ32が操作されたタイミングで実行される処理の具体例を示すフローチャートである。図26のフローチャートに示される処理は、先に説明された、図2のフローチャートに示された処理、図8のフローチャートに示された処理、および図14のフローチャートに示された処理の組み合わせであって、第3の実施の形態に説明されたように、流体袋13の加圧過程および減圧過程のいずれの過程においても動脈内圧が測定されて、血圧値が算出される処理である。
詳しくは、図26を参照して、ステップS101でCPU40の周長情報取得部41は、測定部位のサイズである測定部位の周長を表わす周長情報を取得し、ステップS401でCPU40のポンプ駆動電圧決定部45が、ステップS101で取得された周長情報に基づいてポンプ21の駆動電圧Epを制御するための制御パラメータApを決定する。そして、ステップS403でCPU40は、ステップS401で決定された制御パラメータApと内圧Pとを用いて駆動電圧Epを決定し、決定された駆動電圧Epでポンプ21を駆動させるよう制御信号をポンプ駆動回路26に出力し、流体袋13を加圧する。ここまでの処理は、図14のフローチャートを用いて説明された、第2の実施の形態での処理と同様である。
第4の実施の形態では、ステップS403で流体袋13が加圧制御されている過程において、ステップS405でCPU40が動脈内圧を測定し、最低血圧値を算出する。この処理は、第3の実施の形態での処理と同様である。さらに、第4の実施の形態では、ステップS301’でCPU40は、圧力センサ23から得られた流体袋13の内圧変化に基づいて最高血圧値を推定し、ステップS303で流体袋13の加圧終了時の圧力を算出する。そして、流体袋13の圧力がステップS303で算出された加圧終了圧力に達すると(ステップS105’でYES)、ステップS107でCPU40はポンプ駆動回路26に制御信号を出力し、流体袋13の加圧を停止する。ここまでの処理は、図8のフローチャートを用いて説明された、第1の実施の形態の変形例での処理と同様である。
次に、ステップS109でCPU40の弁駆動電圧決定部43は、ステップS101で取得された周長情報に基づいて弁22の駆動電圧Evを決定する。ステップS111でCPU40は、ステップS109で決定された駆動電圧Evを保持して弁22を駆動させるよう制御信号を弁駆動回路27に出力し、流体袋13の減圧を開始する。ここまでの処理は、図2のフローチャートを用いて説明された、第1の実施の形態での処理と同様である。
第4の実施の形態では、ステップS111で流体袋13が減圧制御されている過程において、ステップS112でCPU40が動脈内圧を測定し、最高血圧値を算出する。なお、第3の実施の形態において説明されたように、第1の実施の形態で説明された減圧制御が行なわれている過程では、図11(A)に示されるように高圧側での速度変化が大きく、図11(C)に示されるように高圧側において取得できる脈波の数が少なくなる。そこで、第4の実施の形態では、ステップS111での減圧過程で高圧側での減圧速度が大きくならないように、つまり、高圧側で急速に流体袋13の減圧が進まないように、ステップS109では、第1の実施の形態における処理のステップS109で決定された駆動電圧Evで弁22を駆動させるときよりもギャップが小さくなるような駆動電圧Evを決定する。具体的には、第1の実施の形態において、減圧時に最高血圧値、最低血圧値共に算出する場合には、最高血圧と最低血圧との間に検出できる脈拍数が所定数以上となるような減圧速度となるギャップの大きさが好適な例として説明されたが、第4の実施の形態では、減圧時に最高血圧値を挟む、最低血圧値を含まない程度の所定範囲に検出できる脈拍数が所定数以上となるような減圧速度となるギャップの大きさが好ましい。第4の実施の形態での好ましい減圧速度は、第1の実施の形態と同様に、予めメモリ6に記載されていてもよい。そして、そのような減圧速度に応じた上記式(1)の係数α,βがメモリ6に記憶されていることで、第4の実施の形態において駆動電圧Evが決定されてもよい。または、第4の実施の形態では、第1の実施の形態で説明されたメモリ6に記憶されている係数α,βを所定割合異ならせて用いてもよい。
さらに、第4の実施の形態では、上記ステップS112で最高血圧値が算出された場合には(ステップS114’でYES)、ステップS115でCPU40からの制御信号に従って弁22が開放され、流体袋13内の流体が排出される。
図27は、流体袋13の圧力と検出される脈波振幅との関係を説明するための図である。図27(A)は、流体袋13の時間経過に従った圧力変化と、動脈内圧の圧力変化とを示している。図27(B)は、上記ステップS405で流体袋13の圧力変化(加圧)に従って測定される動脈内圧を示している。図27(C)は、上記ステップS112で流体袋13の圧力変化(減圧)に従って測定される動脈内圧を示している。
第4の実施の形態にかかる血圧計1”では、流体袋13の加圧過程で、第2の実施の形態において説明された、駆動電圧Epを流体袋13の内圧Pに応じて更新しながら流体袋13を加圧する制御がなされる。これにより、先述のように、特に、流体袋13の圧力の低い領域における血管の容積変化の検出精度を向上させることができる。つまり、図27(A)に示されるように、低圧側での圧力の増加が緩やかであり、図27(B)に示されるようにその領域で検出される脈波の数が多くなる。従って、加圧過程の低圧側で測定された動脈内圧より最低血圧値が算出されることで、精度の高い最低血圧値を得ることができる。
さらに、第4の実施の形態にかかる血圧計1”では、第1の実施の形態の変形例において説明された処理が実行されて、流体袋13の加圧過程で測定される動脈内圧に基づいて最高血圧値が推定され、流体袋13の圧力が推定された最高血圧値に応じた圧力に達した時点で加圧が終了している。なお、第4の実施の形態において、この処理がなされず、通常の、最高血圧値に関わらず予め規定されている圧力に達するまで加圧する処理がなされてもよい。しかしながら、上記処理が行なわれることにより、減圧時の測定のために加圧する圧力を、最高血圧値に関わらず予め規定されている圧力に達するまで加圧する場合の圧力よりも低く抑えることができる。また、最高血圧値に関わらず予め規定されている圧力に達するまで加圧する方法と比較すると、加圧時間を短縮でき、全体の血圧測定に要する時間を短縮することができる。従って、被測定者の負担を軽減することができる。
また、第4の実施の形態にかかる血圧計1”では、流体袋13の減圧過程で、第1の実施の形態において説明された、駆動電圧Evが一定、すなわち弁22のギャップが一定となるような制御がなされる。これにより、先述のように、特に、流体袋13の圧力の低い領域における血管の容積変化の検出精度を向上させることができる。さらに、第4の実施の形態では、先述のように、第1の実施の形態における処理のステップS109で決定された電圧値で弁22を駆動させるときよりもギャップが小さくなるような電圧値で駆動電圧Evを一定となるような制御がなされる。これにより、図27(A)に示されるように、高圧側での圧力の低下が緩やかになり、図27(C)に示されるようにその領域で検出される脈波の数が多くなる。従って、減圧過程の高圧側で測定された動脈内圧より最高血圧値が算出されることで、精度の高い最高血圧値を得ることができる。
さらに、第4の実施の形態にかかる血圧計1”では、先述のように加圧過程においてすでに最低血圧値が得られている。そのため、減圧過程において最高血圧値が得られた時点で流体袋13の流体を急速に排出し、測定処理を終了することができる。これにより、減圧過程において最高血圧値と最低血圧値とを得る方法と比較すると、減圧時間を短縮でき、全体の血圧測定に要する時間を短縮することができる。従って、被測定者の負担を軽減することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,1’,1” 血圧計、2 本体、3 操作部、4 表示部、5 カフ、6,7 メモリ、10 チューブ、13 流体袋、31 電源スイッチ、21 ポンプ、22 弁、23 圧力センサ、26 ポンプ駆動回路、27 弁駆動回路、28 発振回路、32 測定スイッチ、33 停止スイッチ、34 記録呼出スイッチ、40 CPU、41 周長情報取得部、43 弁駆動電圧決定部、45 ポンプ駆動電圧決定部、51 ポンプ、52 弁、53 電源、55 流量計、56 ポンプ駆動回路、57 弁駆動回路。