JP5228362B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
従来、例えばステアリングの中立感を高めるために、操舵角、操舵トルク及びモータ回転速度によって、ステアリングホイールを中立点に戻すように制御するハンドル戻り制御手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、本出願人が先に出願したハンドル戻し制御の電流演算に舵角速度の情報を取り入れることにより、収斂性制御とのバランスをとりながら操舵性能を向上させるために、舵角、舵角速度及び車速などの信号により、ハンドル戻り制御及びヨーダンパ収斂性制御を行うようにした電動パワーステアリング装置の制御装置も提案されている。
前記舵角検出手段で検出した舵角情報の状態変化を検出したときに前記舵角関連制御手段で形成される舵角関連制御情報を徐々に変化させる舵角関連制御情報徐変手段を備え、
前記舵角関連制御情報徐変手段は、前記舵角検出手段で検出した操舵角が使用可能から使用不能となったときを検出したときに、使用不能となる前の前記舵角関連制御手段で形成される舵角関連制御情報を保持し、保持した前記舵角関連制御情報を徐々に変化させることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記舵角検出手段は、操舵装置の操舵角を推定する舵角推定手段で構成されていることを特徴としている。
ここで、舵角検出手段で検出した舵角情報の状態変化としては、舵角関連制御手段による制御が開始された後に舵角情報が入力される場合と、舵角関連制御手段による制御中に、舵角検出手段で異常が発生して舵角情報が入力されていない状態とがある。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は操舵装置であり、この操舵装置1はステアリングホイール2が装着されたステアリングシャフト3と、このステアリングシャフト3のステアリングホイール2とは反対側に連結されたラックピニオン機構4と、このラックピニオン機構4にタイロッド等の連結機構5を介して連結された左右の転舵輪6とを備えている。
この制御装置14には、ステアリングシャフト3に配設された操舵トルクセンサ16で検出されたステアリングホイール2に入力される操舵トルクTが入力されていると共に、車速検出部としての車速センサ17で検出した車速検出値Vsが入力され、さらに減速機構7に組込まれた舵角検出部としての舵角センサ18で検出された舵角センサ出力値θd(n)が入力されている。
また、舵角センサ18は、図2に示すように、減速機構7を構成するステアリングシャフト3に連結されたウォームホイール7cと並列に配設された所定歯数の平歯車18aと、この平歯車18aに噛合する同一歯数の歯部18bを外周面に形成したセンサホイール18cと、このセンサホイール18cの一方の側面に形成された半円弧状に形成されたN極及びS極に着磁された一対の着磁部18d及び18eと、ギヤハウジング7aに配設された支持片18fの先端に保持されて着磁部18d及び18eの中心点位置に対向する位置に配置された磁気検出器18gと、この磁気検出器18gから出力される検出信号に基づいて舵角検出信号を演算する舵角演算部18hとで構成されている。
θd(n)=arctan(S1/S2) …………(1)
制御装置14は、例えばマイクロコンピュータで構成され、その構成は機能ブロック図で表すと図5に示すようになる。すなわち、制御装置14は、操舵トルクセンサ16で検出した操舵トルクT及び車速センサ17で検出した車速Vsが入力されこれらに基づいて電動モータ8に対する電流指令値Irefを演算する電流指令値演算部21と、この電流指令値演算部21で算出した電流指令値Irefを補償する指令値補償部22及び電流指令値Irefの位相を補償する位相補償器30と、転舵状態でステアリングホイール2への操舵力を緩めたときにステアリングホイール2を中立点位置に戻す所謂ハンドル戻し制御を行うハンドル戻し制御部23と、電流指令値演算部21の出力、指令値補償部22の出力及びハンドル戻し制御部23との出力を加算する加算部24と、この加算部24で加算された電流指令値を最大電流で制限して最終電流指令値を出力する電流制限部25と、この電流制限部25から出力される最終電流指令値Iref″とモータ電流検出部19で検出されたモータ電流Imとに基づいて電流フィードバック処理を行って電圧指令値を算出する電流フィードバック制御部26と、この電流フィードバック制御部26で算出された電圧指令値Vrefが入力されて電動モータ8を駆動制御するモータ駆動回路27と備えている。
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図6に示して説明する。ドライバがステアリングホイール2を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ8がアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。また、その際、電動モータ8の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール1の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(1)式のような運動方程式が得られる。
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + Ts(s) − J・α(s) + Fr・sign(ωm(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ8の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωm、回転角加速度α、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを推定することができる。ここで、アシストトルクTmは電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて電流指令値Irefを適用する。
また、ハンドル戻し出力徐変部50は、ハンドル戻し制御部23の制御開始状態及び制御終了状態を検出するハンドル戻し制御状態判定部51と、このハンドル戻し制御状態判定部51の判定結果に応じてスイッチ44又は零出力部45から出力されるハンドル戻し出力HR又は前回のハンドル戻し制御部23の出力を選択する出力選択部52と、ハンドル戻し制御状態判定部51の判定結果に基づいて徐変ゲインGcを設定するゲイン設定部53と、出力選択部52の出力とゲイン設定部53で設定した徐変ゲインGcとを乗算してその乗算出力を前述した加算器24に供給する乗算器54とを備えている。
このハンドル戻し制御処理は、図9に示すように、メインプログラムに対する所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で、後述する絶対舵角演算部63で算出した絶対舵角θを読込、次いでステップS2に移行して、読込んだ絶対舵角θが有効値であるか否かを判定し、有効値である場合には、ステップS3に移行して、前回の処理時にも絶対舵角θが有効値であったか否かを判定し、前回の処理時に絶対舵角θが有効値でないときには制御開始状態であると判断してステップS4に移行する。
このステップS9では、前述した図7に示すハンドル戻し制御信号形成部40の演算処理を行ってハンドル戻し制御信号HR(n)を算出し、これを算出したハンドル戻し制御信号HR(n)に可変ゲインGcを乗算してハンドル戻し制御信号HR(=HR(n)*Gc)を算出し、これを図5の加算器24に出力してからタイマ割込処理を終了してから所定のメインプログラムに復帰する。
また、制御装置14は、ステアリングホイール2を中立位置即ち直進走行時の舵角としたときに舵角センサ18から出力される中立点検出値θd0を記憶する中立点記憶部としての不揮発性メモリ61と、この不揮発性メモリ61に記憶された中立点検出値θd0、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)及び例えば後輪駆動車両の4輪の車輪速を検出する車輪速センサ62FL〜62RRから入力される車輪速VFL〜VRRに基づいて絶対舵角θを演算する絶対舵角演算部63と、この絶対舵角演算部63で演算した絶対舵角θを微分して絶対舵角速度ωを算出する微分回路64とを備えている。
また、絶対舵角演算部63は、不揮発性メモリ61から読出した中立点検出値θd0、舵角センサ18から入力される舵角センサ出力値θd(n)及び車輪速センサ62FL〜62RRから入力される車輪速VFL〜VRRに基づいて図10の初期絶対舵角演算処理及び図11の絶対舵角演算処理を行って絶対舵角θを算出する。
sin(2θestF)=kF(VFL−VFR)/(VFL+VFR) ……(2)
tanθestR=kR(VRL−VRR)/(VRL+VRR) ……………(3)
ここで、VFLは前左車輪速、VFRは前右車輪速、VRLは後左車輪速、VRRは後右車輪速、kF及びkRは定数である。
次いで、ステップS35に移行して、算出した舵角偏差Δθestが予め設定した設定値ΔθS以下であるか否かを判定し、Δθest>ΔθSであるときには舵角偏差Δθestが大きく従動輪となる前輪に基づく第1の推定舵角θestFの信頼性が低いものと判断して前記ステップS31に戻り、Δθest≦ΔθSであるときには舵角偏差Δθestが小さく従動輪となる前輪に基づく第1の推定舵角θestFの信頼性が高いものと判断してステップS36に移行する。
このステップS38では、前輪車輪速に基づく第1の推定舵角θestFと舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)から実際の舵角が存在する舵角存在領域Anを決定するターン数nの初期値を推定してから後述するステップS44に移行する。すなわち、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)は、図4に示した場合に、中立点検出値θd0=0°を含む−180°〜180°の範囲を中立舵角範囲A(0)として設定し、この中立舵角範囲A(0)からステアリングホイール2を右切りした舵角範囲180°〜540°の範囲を右舵角範囲A(1)とし、さらに右切りした540°を超える範囲を右舵角範囲A(2)とし、中立舵角範囲A(0)からステアリングホイール2を左切りした舵角範囲−180〜−540°の範囲を左舵角範囲A(−1)とし、さらに左切りした−540°を超える範囲を左舵角範囲A(−2)としたときに、何れかの舵角範囲Anに存在することになる。したがって、第1の推定舵角θestFと舵角センサ出力値θd(n)とにより舵角範囲A(−2)〜A(2)の何れに属するかを判定することにより、ターン数nの初期値を推定することができる。
このステップS40では、出力値偏差Δθdがターン数移行判定閾値−aより小さいか否かを判定し、Δθd<−aであるときにはターン数nが増加したものと判断してステップS41に移行し、現在のターン数nに“1”を加算した値を新たなターン数nとして設定してからステップS44に移行する。
θ=θd(n)−θd0+n×360 …………(4)
次いで、ステップS45に移行して、上記ステップS44で算出した絶対舵角θから第1の推定舵角θestFを減算した値の絶対値で表される第1の舵角偏差ΔθF(=|θ−θestF|)及び絶対舵角θから第2の推定舵角θestRを減算した値の絶対値で表される第2の舵角偏差ΔθR(=|θ−θesrR|)を算出してからステップS46に移行する。
一方、ステップS46の判定結果が、第1の舵角偏差ΔθF及び第2の舵角偏差ΔθRの何れもが設定値Δθerror未満であるときには、絶対舵角θの信頼性が高いものと判断してステップS48に移行し、現在のカウント値Cntに“1”を加算した新たなカウント値Cntを算出してからステップS49に移行する。
また、図11の絶対舵角演算処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS51で、イグニッションスイッチ12がオン状態となって第一回目の絶対舵角演算処理であるか否かを判定し、第一回目の舵角演算処理であるときにはステップS52に移行して、前述した初期絶対舵角演算処理で初期ターン数nintが確定したか否かを判定し、初期ターン数nintが確定していないときにはそのままタイマ割込処理を終了し、初期ターン数nintが確定したものであるときにはステップS53に移行して、初期ターン数nintを読込んでからステップS54に移行する。
ステップS54では、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ61に記憶された中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS55〜S50に移行して、前述した図10の初期ターン数確定処理におけるステップS40〜ステップS44と同様の処理を行って絶対舵角θを算出してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
今、車両が停止していて、イグニッションスイッチ12がオフ状態であるものとすると、この状態では、制御装置14にバッテリ11からのバッテリ電圧Vbが供給されないので、制御装置14は停止状態にあり、図5に示す操舵トルクT及び車速Vsに基づいて実行する操舵補助制御処理は実行停止状態にあり、電動モータ8が停止してステアリングシャフト3への操舵補助力の伝達は行われない。
このため、図11の絶対舵角演算処理で、第一回目の処理であり、初期ターン数nintが確定されないので、絶対舵角θを算出することなくタイマ割込処理を終了する(ステップS52)。
このとき、電動モータ8は停止状態であるので、モータ電流検出部19で検出されるモータ電流Imは“0”を維持しており、電流フィードバック制御部26から比較的大きな値の電圧指令値Vrefがモータ駆動回路27に出力され、このモータ駆動回路27から比較的大きな値のモータ駆動電流Imが電動モータ8に出力される。
この状態では、車両が停止状態を維持しているので、舵角センサ18からステアリングホイール2の操舵角に応じた舵角センサ出力値θd(n)が出力されるが、車輪速センサ62FL〜62RRから出力される車輪速VFL〜VRRが“0”を維持するので、ステップS31及びS32を繰り返す待機状態を継続し、図11の舵角演算処理では、第一回目の処理であり、初期ターン数nintが確定していないので、絶対舵角θの算出が停止されている。
このため、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRが略等しい値となるので、両者の推定舵角偏差Δθestも略“0”となり、設定値ΔθS未満となるので、ステップS35からステップS36に移行し、舵角センサ18から舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ61から中立点検出値θd0を読込む。
このため、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRと絶対舵角θとの偏差ΔθF及びΔθRも略“0”となり、共に許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満となるので、ステップS46からステップS48に移行して、カウント値Cntに“1”を加算してCnt=1とする。
このため、新たなターン数nの推定は行われず、車両が直進走行状態を継続している場合には、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)が前回の舵角センサ出力値θd(n-1)と略等しく両者の偏差Δθdが略“0”となるため、Δθd≧−aとなり、且つΔθd≦+aとなるので、ステップS40からステップS42を経てステップS44に移行し、絶対舵角θを算出する。
この状態を繰り返して、カウント値Cntが所定値Kに達すると、ステップS49からステップS50に移行して、そのときのターン数n即ちn=0が初期ターン数nintとして確定される。
すなわち、例えばステアリングホイール2を右切り(又は左切り)して右操舵状態(又は左操舵状態)とし、これによって舵角センサ18で検出される舵角センサ出力値θd(n)が中立点検出値θd0と略等しい状態から増加(又は減少)して舵角センサ出力値θd(n)が180°(又は−180°)を超える状態となると、図12(a)に示すように舵角センサ出力値θd(n)が最大値θdMAXから最小値θdMINに(又は図12(b)に示すように最小値θdMINから最大値θMAXに)変化する。
このため、ステップS60で絶対舵角θを演算することにより、絶対舵角θが180°から例えば181°に(又は−180°から例えば−181°に)連続して増加(又は減少)され、正確な絶対舵角θを高分解能でリニアリティ良く算出することができる。
このため、ステップS19で算出されるハンドル戻し制御信号HRは前回値HR(n-1)に近い値となり、ハンドル戻し制御信号HRが急減することを確実に防止することができる。
このため、次の処理が開始されたときに、絶対舵角θが有効値ではない状態を継続したときにステップS2からステップS12に移行してステップS1に戻ることになり、ハンドル戻し制御信号HRが出力されることはなく、ハンドル戻し制御が中断される。
なお、上記第1の実施形態においては、車輪速に基づいて初期絶対舵角を推定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、セルフアライニングトルクSAT及び車速Vsに基づいて初期舵角を推定するようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態を図13〜図16について説明する。
すなわち、第2の実施形態においては、図13に示すように、前述した第1の実施形態におけるハンドル戻し制御部23を省略し、これに代えて車両のヨー収斂性を制御するヨーダンピング制御部70及びモータ角速度ωmをフィードバックする角速度フィードバック制御部90とを適用したことを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、第1の実施形態との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
このヨーダンピング制御部70は、図14に示すように、モータ角速度演算部31で算出した操舵角速度ωに応じたヨーダンピング基本電流Idを演算する基本電流演算部71、車速Vsに応じたゲインGvを設定するゲイン設定部72、ヨーダンピング基本電流Id及びゲインGvを乗算してヨーダンピング制御信号Iyを算出する乗算器73及びヨーダンピング出力徐変部74を備えている。
ヨーダンピング制御状態判定部81は、絶対舵角演算部63から出力される絶対舵角θが有効値であるか無効値であるかに基づいてヨーダンピング制御の開始及び終了を検出し、ヨーダンピング制御が開始されたときに“1”の制御状態フラグFcを出力選択部82及びゲイン設定部83に出力し、ヨーダンピング制御が終了されたときに“0”の制御状態フラグFcを出力選択部82及びゲイン設定部83に出力する。
この図16のヨー収斂制御処理は、メインプログラムに対する所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS61で、絶対舵角演算部63で演算した絶対舵角θを読込み、次いでステップS62に移行して、絶対舵角θが有効値であるか否かを判定し、絶対舵角θが有効値であるときにはステップS63に移行して、絶対舵角θを微分して操舵角速度ωを算出する。
このステップS68では、制御開始経過時間Tsをもとに図8(a)に示す制御開始ゲイン算出マップを参照して可変ゲインGcを算出し、次いでステップS69に移行して、算出した可変ゲインGcが“1”であるか否かを判定し、可変ゲインGcが“1”であるときにはステップS70に移行して、制御開始状態フラグFsを“0”にリセットしてからステップS71に移行し、可変ゲインGcが“1”未満であるときには直接ステップS71に移行する。
IY=Iy*Gc+Iω*(1−Gc) …………(2)
一方、前記ステップS64の判定結果が絶対舵角θが前回も有効値であるときにはステップS74に移行して、制御開始状態フラグFsが“1”にセットされているか否かを判定し、制御開始状態フラグFsが“1”にセットされているときには制御開始状態であると判断して前記ステップS67に移行し、制御開始状態フラグFsが“0”にリセットされているときには制御継続状態であると判断してステップS75に移行して、可変ゲインGcを“1”に設定してから前記ステップS71に移行する。
今、前述した第1の実施形態と同様に、イグニッションスイッチ12をオン状態としてバッテリ11から制御装置14に電源を投入すると、これに応じて制御装置14で、前述した図10の初期ターン数確定処理及び図11の絶対舵角演算処理が実行開始されると共に、図16のヨー収斂性制御処理が実行開始される。
このとき、車両が停止状態で且つステアリングホイール2が操舵されていない状態であるものとすると、電動モータ8が停止状態にあると共に、操舵トルクセンサ16で検出される操舵トルクTが“0”であるので、電流指令値演算部21から出力される電流指令値Irefも“0”となると共に、指令値補償部22で算出される指令値補償値Icomも“0”となり、角速度フィードバック制御信号Iωも“0”となり、モータ電流検出部19で検出されるモータ電流Imも“0”であるので、電流フィードバック制御部26から出力される電圧指令値Vrefも“0”となり、モータ駆動回路27からモータ駆動電流が出力されず、電動モータ8は停止状態を継続する。
このため、角速度フィードバック処理によって算出される角速度フィードバック制御信号Iωのみによってヨー収斂性制御出力IYが決定されるが、据え切り時の車速Vsが“0”であることにより、フィードバックゲインGfが“0”となり、角速度フィードバック制御信号Iωも“0”となることから、ヨー収斂性制御出力IYは“0”を維持する。
このようにして、電動モータ8が回転駆動されると、これに応じてモータ角速度演算部31からモータ角速度ωmが出力され、これが収斂制御部33及び角速度フィードバック制御部90に供給されると共に、モータ加速度演算部32で算出されるモータ加速度αが慣性補償部34に供給されて、指令値補償部22から指令値補償出力Icomが算出されるが、角速度フィードバック制御部90では車速Vsが“0”であることからフィードバックゲインGfが“0”となり、角速度フィードバック制御信号Iωも“0”となる。
その後、車両を発進させると、前述した第1の実施形態と同様に、絶対舵角演算部63の初期ターン数確定処理で、初期ターン数nintが確定され、絶対舵角演算処理で、絶対舵角θが算出されると絶対舵角θが有効値となることから、図16のヨーダンピング制御処理で、ステップS62からステップS63に移行して、絶対舵角θを微分して操舵角速度ωを算出し、前回の絶対舵角θが有効値ではないので、ヨーダンピング制御の開始と判断されて制御開始状態フラグFsが“1”にセットされると共に制御開始経過時間Tが“0”にクリアされ(ステップS65)、次いでヨーダンピング制御状態フラグFcが“1”にセットされ(ステップS66)、次いで制御開始経過時間Tsがインクリメントされる(ステップS67)。
その後、絶対舵角θが有効値である状態を継続するので、図16のステップS64からステップS74に移行するが、制御開始状態フラグFsが“1”にセットされているので、ステップS67に移行し、制御開始経過時間Tsの増加に応じて可変ゲインGcが徐々に大きくなる。これに応じて操舵角速度ωに基づいて算出されるヨーダンピング制御信号の基本電流Idが大きくなり、車速Vsが設定車速Vs1を超えるとゲインGvが“0”より増加するので、ヨーダンピング制御信号Iyによる収斂性成分が増加し、この増加分だけ角速度フィードバック制御信号Iωによる収斂性成分が減少する。
このため、ステアリングホイール2の操舵したときに、適正な回頭性を確保して良好なコーナリング走行を行うことができる。
このように、絶対舵角θが有効値でない状態から有効値となってヨーダンピング制御部でヨーダンピング制御を開始したときに、そのときの操舵角速度ωが大きな値で、ヨーダンピング制御信号Iyが急増した場合でも、可変ゲインGcが徐々に増加されることにより、角速度フィードバック制御信号Iωからヨーダンピング制御信号Iyへの切り換えを徐々に行うことができ、最終電流指令値Iref″が急変することがないので、電動モータ8の駆動を滑らかに行って、運転者に違和感を与えることを確実に防止することができる。
そして、可変ゲインGcが“0”に達すると、ステップS83からステップS84に移行して、ヨーダンピング制御状態フラグFcが“0”にリセットされ、以後は角速度フィードバック制御信号Iωのみによってヨー収斂性制御出力IYが決定される。
また、上記第2の実施形態においては、ヨーダンピング制御部70の制御状態を判断して出力選択部82及びゲイン設定部83を制御するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、直接絶対舵角演算部63で算出される絶対舵角θが有効であるか否かを判断して、出力選択部82及びゲイン設定部83を制御するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、舵角センサ18としてGMR素子を有する磁気検出器18gを有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ポテンショメータ又はロータリエンコーダと中立位置(直進走行位置)を検出する中立位置センサとを設けて中立位置と舵角とを検出する舵角センサ、車輪速を検出して検出した車輪速に基づいて舵角を推定する舵角推定手段、モータ角速度ωmから操舵角速度を推定する操舵角速度推定手段等の任意のセンサを適用することができる。
Claims (5)
- 車両の操舵装置に対して操舵補助力を発生する電動モータと、該電動モータを操舵トルクに基づいて制御する操舵補助制御手段と、前記操舵装置の舵角を検出する舵角検出手段と、該舵角検出手段で検出した舵角情報に基づいて前記操舵補助制御手段で使用する舵角関連制御情報を形成する舵角関連制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記舵角検出手段で検出した舵角情報の状態変化を検出したときに前記舵角関連制御手段で形成される舵角関連制御情報を徐々に変化させる舵角関連制御情報徐変手段を備え、
前記舵角関連制御情報徐変手段は、前記舵角検出手段で検出した操舵角が使用可能から使用不能となったときを検出したときに、使用不能となる前の前記舵角関連制御手段で形成される舵角関連制御情報を保持し、保持した前記舵角関連制御情報を徐々に変化させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記舵角検出手段は、操舵装置の操舵角を直接検出する舵角センサで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記舵角検出手段は、操舵装置の操舵角を推定する舵角推定手段で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記舵角関連制御手段は、前記操舵装置のステアリングホイールを転舵している状態で当該ステアリングホイールへの操舵力を緩めたときに当該操舵装置を中立点位置に戻すハンドル戻し制御手段で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記舵角関連制御手段は、車両のヨー収斂性を制御するヨーダンピング制御手段で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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