JP5228223B2 - レーザ肉盛方法 - Google Patents
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Description
このレーザ肉盛加工では、肉盛りの始端部と終端部が重なり合ってできるオーバーラップ部分に、未溶着部や空孔(ブローホール等)の欠陥が生じ易いことが知られている。そこで、従来、肉盛りの開始時に、金属粉末の供給量を徐々に増加させるとともに該金属粉末の供給量に応じてレーザの出力を増加させることで、厚みを緩やかに増加させた始端部を形成する技術が知られている。この技術によれば、始端部の厚みが他の箇所に比べて薄くなるため、この始端部と終端部のオーバーラップ部分における上記欠陥の発生を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、シリンダヘッドのバルブシートに肉盛りするに当たり、肉盛り層に生じる欠陥を更に抑制可能なレーザ肉盛方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、始端部の手前からレーザの出力を増加させて終端部の形成を開始するため、レーザ照射位置での粉量の増加に合せてレーザ出力も増加されることから、終端部での欠陥の発生が抑えられる。
すなわち、始端部に押されてレーザ照射位置に入り込む残留粉の量は、始端部の傾斜に応じて徐々に増加するため、この増加に合せてレーザの出力を増加させることで、欠陥の発生を更に抑制することができる。
溝部に前記肉盛り層を形成することで、バルブシートの更なる耐摩耗性の向上が図られる。また、肉盛り時に溝部に金属粉末が溜まり易くなるものの、上記のように、残留粉の量に合せてレーザ出力が増加されることで欠陥の発生が抑制される。これにより、耐摩耗性の向上とともに欠陥の更なる抑制効果が得られる。
バルブシートの肉盛り加工においては、始端部から約270〜315度移動したタイミングで、始端部に残留粉が押されてレーザ照射位置に入り込み始めるため、この時点から上記のようにレーザ出力を増加させて終端部の形成を開始することで、欠陥の発生を抑えた肉盛りを良好に行うことができる。
また、終端部の形成時には、始端部に重なる前までに、始端部に形成された傾斜に応じて、レーザの出力を前記所定量まで徐々に増加させることで、始端部の傾斜に応じて徐々に増加するレーザ照射位置での粉末量に合せてレーザの出力が増加され、欠陥の発生を更に抑制することができる。
また、バルブシートのシート面に沿って溝部を形成し、該溝部に前記肉盛り層を形成することで、バルブシートの更なる耐摩耗性の向上が図られる。さらに、残留粉の量に合せてレーザ出力が増加されるため欠陥の発生が抑制される。
また、バルブシートの中央を中心に前記レーザ照射位置を円環状に移動させる場合、始端部から約270度〜約315度移動したタイミングで終端部の形成を開始することで、欠陥の発生を良好に抑えたバルブシートの肉盛りを行うことができる。
図1は、本実施形態に係るバルブシート16のレーザ肉盛方法で用いられるレーザクラッド装置10を示す図であり、図2は、シリンダヘッド12を示す図である。
レーザクラッド装置10は、ワークであるシリンダヘッド12における給排気用バルブ孔14(図2参照)の周囲のバルブシート16に対して、銅合金粉末(金属粉末)18を供給しながら半導体レーザのレーザ光20を照射して銅合金粉末18を溶融及び固化させてレーザ照射位置Pに肉盛り層を形成し、このレーザ照射位置P(図2参照)を環状に移動しながら肉盛りをする装置である。
また、このレーザ光20の800〜950[nm]の波長範囲は、銅合金粉末18にエネルギーが吸収され易く、銅合金粉末18を効率良く溶融させるため、半導体レーザは、1.2〜2.0[kW]程度の低出力で足り、シリンダヘッド12に対する熱影響を低減できる。しかも銅合金粉末18による溶融池は大きくなり肉盛り層の厚肉化が可能であり、例えば、5[mm]の厚さを形成することができる。
先ず、所定の手順によりテーブル22上にシリンダヘッド12を取り付け、テーブルコントローラ24の作用下に所定のバルブシート16が回転中心位置に配置されるように水平位置決めを行う。
次いで、図2に示すように、バルブシート16の周囲の一部に対してフィード機構26のノズル29から銅合金粉末18を供給するとともにレーザ発振機構部30からレーザ光20を照射し、テーブル22を回転させる。テーブル22、フィード機構26及びレーザ発振機構部30は、テーブルコントローラ24、フィードコントローラ28及びレーザコントローラ32により制御され、それぞれメインコントローラ40の作用下に同期し、同時に動作を開始する。また、シールドガスの噴出も同時に開始する。
なお、レーザ光20の出力Wの制御方法は、例えば、所定時間毎の供給量Sをタイマを用いて測定し、該供給量Sに合せて出力Wを制御するとよい。
これにより、レーザ照射位置Pでは、銅合金粉末18の供給量Saに加えて残留粉の分だけ増加するため、銅合金粉末18の粉量とレーザ光20の出力Wのバランスが崩れる。このため、何ら対策を施さなければ、図6に示すように、レーザ照射位置Pが始端部50に至る手前(回転角度が約−90[deg])の位置から始端部50にかけた肉盛り層で欠陥が集中的に発生する。
特に、本レーザ肉盛り方法では、バルブシート16の肉盛り用のU字溝部17に沿ってレーザ肉盛りを行っているため、該U字溝部17に残留粉が溜まり易くなる。
詳述すると、始端部50の傾斜面がゾーンK1の残留粉をレーザ照射位置Pに押し込むことから、押し込みの量の時間的変化は傾斜面の緩急に応じて変化する。すなわち、始端部50の傾斜面が緩やかなほど、レーザ照射位置PへのゾーンK1の残留粉の押し込み量も緩やかに増加する。そして、レーザ照射位置Pへの残留粉の押し込み量の時間的変化に合せてレーザ光20の出力Wが徐々に高められることで、欠陥の発生が更に抑制される。
そこで本レーザ肉盛り方法では、レーザ照射位置Pが始端部50に重なった後も、レーザ光20の出力Wを所定量Wbまで高めた状態で、オーバーラップ部54の形成を行う((III−A)オーバーラップ部形成工程)。この結果、上記ゾーンK2で粉末の粉量が増加しても、レーザ光20の出力Wが高められているため、欠陥の発生が良好に抑制される。
さらにこの後、肉盛りの処理が行われていない他のバルブシート16に対しても同様の肉盛り処理を順次行う。
これにより、始端部50の傾斜に応じて、レーザ照射位置Pで徐々に増加する残留粉の粉量に合せてレーザ光20の出力Wが増加することとなり、欠陥の発生を更に抑制して終端部52を形成することができる。
例えば、始端部形成工程及び終端部形成工程では、レーザ光20の出力Wを、図3に示したように、回転角度に比例的に増加させるものとして説明したが、ステップ状に段階的に増加させるようにしてもよい。出力Wを段階的に変更することにより、レーザコントローラ32は印加電圧のリアルタイム的な制御が不要となり、簡便な手順で肉盛り処理を行うことができる。
12 シリンダヘッド
14 給排気用バルブ孔
16 バルブシート
16A シート面
17 U字溝部
18 銅合金粉末(金属粉末)
20 レーザ光
29 ノズル
50 始端部
51 通常部
52 終端部
54 オーバーラップ部
60 溶融池
P レーザ照射位置
Wb 所定値
K1、K2 ゾーン
Claims (4)
- シリンダヘッドのバルブシートに金属粉末を供給しながらレーザを照射することでレーザ照射位置に肉盛り層を形成しつつ、該レーザ照射位置を前記バルブシートに沿って円環状に移動させて肉盛りするレーザ肉盛方法において、
前記肉盛りの開始時に、前記金属粉末の供給量を徐々に増加させながら該金属粉末の供給量に応じてレーザ出力を増加させて肉盛りの始端部を形成し、
前記金属粉末の供給量及び前記レーザの出力を一定に維持して肉盛りの通常部を形成し、
前記始端部の手前から前記金属粉末の供給量を一定のままで前記レーザの出力を所定量まで増加させて肉盛りの終端部を形成し前記始端部に重ねる
ことを特徴とするレーザ肉盛方法。 - 前記終端部の形成時には、前記始端部に重なる前までに、前記始端部に形成された傾斜に応じて、前記レーザの出力を前記所定量まで徐々に増加させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ肉盛方法。
- 前記バルブシートのシート面に沿って溝部を形成し、該溝部に前記肉盛り層を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ肉盛方法。
- 前記バルブシートの中央を中心に前記レーザ照射位置を円環状に移動させる場合、前記始端部から約270〜315度移動したタイミングで前記終端部の形成を開始することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレーザ肉盛方法。
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