次に、本発明のクラフト紙についての実施の形態を説明する。
本発明のクラフト紙は、クラフトパルプを主原料パルプ(全パルプ原料の50%以上)とし、2種類の染料(染料A及び染料B)と再生粒子を含有している。
〔パルプ〕
当該クラフト紙の主原料パルプであるクラフトパルプとしては、針葉樹クラフトパルプ(NKP)や広葉樹クラフトパルプ(LKP)等が用いられる。
本形態のクラフト紙は、原料パルプとして、クラフトパルプに加えて、JIS−Z8721に準拠した白色度70%以上の古紙パルプを30〜50質量%含有するとよく、より好ましくは、機械パルプの含有割合が30質量%未満であるとよい。
本発明では、後述するように退色を抑えるために、従来とは異なる退色挙動をしめす新たな染料(染料A、染料B)を添加するため、紙の明度が低下する傾向になる。この傾向が顕著になると、封筒用クラフト紙として求められる明度(70〜80%)を維持することができなくなる。
このため、使用する古紙パルプは白色度の高いもの(70%以上)を選定し、染料添加による明度ダウンに耐えうるような原紙設計にしておくのが好ましい。古紙パルプの白色度は75%以上であると、染料添加による明度ダウンに耐えうるうえでより望ましい。
また、この際、古紙パルプの配合率が30質量%未満であると、既に退色が進み、色変化が平衡状態になっている原料パルプの割合が少ないため、退色が大きくなると共に、染料による退色変化の補完が困難になり、更に近年の再資源化に反する構成となる。他方、古紙パルプの配合率が50質量%を超えると、幾度となく繰り返された再生処理により疲弊している古紙パルプでは、JIS−P3401に規定されたクラフト紙3種の品質基準(強度等)を満足することが困難となり、多量の紙力増強剤を必要とするなどコスト的に見合わないものとなるおそれがある。
本形態の原料パルプは、例えば、ワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して基紙を製造し、コーターパートにて塗工剤を基紙の少なくとも片面に塗工した後、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート、ワインダーパート等に供して目的とするクラフト紙とすることができる。
こうして得られるクラフト紙の密度は、0.5g/cm3以上で0.9g/cm3以下であることが好ましい。密度が0.5g/cm3未満であると、コシが過剰に高くなる傾向になり、特に折り曲げに関する製袋適性が悪化する傾向にある。
また、密度が0.9g/cm3を超えると、紙のコシが低下する傾向になり、製袋時の走行性が悪化する方向になり、本発明の課題を効率的に達成することが難しくなる。
密度の調整においては、抄紙工程におけるロールのニップ圧の調整、特にカレンダーでのニップ調整が用いられるが、本発明においては、後述するパルプの繊維長、ユンケル比、再生粒子等を組合せ、所定条件に規定することで、より一層効果的に本発明の課題を解決できるものである。
前記ワイヤーパートにおいて用いる抄紙機の形式には特に限定がないが、それぞれループをなす2つのワイヤー間に抄紙原料を吐出して紙層を形成するツインワイヤーフォーマーを用いることが望ましい。ツインワイヤーフォーマーを用いると、紙の表裏差を抑制することができ、表裏両面において高品位な印刷が可能になるとともに、表裏間で風合いの差が少なくなるという利点がある。このツインワイヤーフォーマーの種類にも特に限定がなく、例えば、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー等を用いることができる。
上記古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプ等があげられる。
さらに、クラフトパルプ及び古紙パルプに加えて、他のパルプを含有させることもできる。このクラフトパルプ及び古紙パルプ以外の原料パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプを古紙パルプと共に、好適に用いることができる。もちろん、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
ここで、古紙パルプとともに機械パルプを用いると、得られるクラフト紙が嵩高になるものの、機械パルプ中に含有されるリグニン成分の酸化による色調変化や、強度が低下する恐れがあるので、機械パルプは原料パルプ全量の30質量%未満となるように調整されることが好ましい。より好ましくは、5〜10質量%である。
当該原料パルプの重量平均繊維長及び平均ルンケル比を後述する以下の範囲にとなるように、原料パルプの選択、分級、叩解処理を施すことによって調整するとよい。
なお、選択とは、例えば、自然林から得られた原木を原料としたパルプに比べ、植林木を原料としたパルプはルンケル比が比較的小さいパルプ繊維が得られる等の条件を基に、原料パルプの選択を行うことを、分級とは、シックナー、スクリーン、クリーナー等を使用して分級すること、その他、一般的に紙・パルプ工場で使用されている公知のSPフィルター、ウオッシャー、エキストラクター、フィルタープレス等により、大量の水を用いて希釈しながら分級すること等を、叩解とはコニカルリファイナー、円筒型リファイナー、ディスクリファイナー等による叩解を行うことを、それぞれ意味する。
当該クラフト紙の原料となるパルプは、JIS−P8220に準拠して離解した離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm以上2.5mm以下、好ましくは1.2mm以上2mm以下であるとよい。繊維長が上記範囲であるパルプを原料とすることで、当該クラフト紙の強度を確保することができる。
より具体的には、離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm未満であると、染料歩留が向上し退色性が向上するものの、緊度が上がるため、十分な紙コシが得られず、製袋作業性が悪化する。他方、離解パルプの重量平均繊維長が2.5mmを超えると、染料歩留が低下し退色性が悪化するとともに、長繊維であるがゆえに、パルプ繊維同士の絡み合いが多くなり地合ムラが発生し、クラフト紙として、特に封筒用クラフト紙としての見た目が悪くなる。
本発明で云う重量平均繊維長は、JIS−P8220に準拠して本クラフト紙を離解した後の離解パルプについて、カヤニオートメーション社製繊維長測定機ファイバーラボを用いて測定した値であり、単位はmmである。
以上の範囲に繊維長を調節する方法は、特に限定されず、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、分級スクリーン等の公知の方法により調整することが出来るが、植林木から得られる原料パルプは、ルンケル比が低いため好適に本発明に利用できる。
当該クラフト紙の原料となるパルプは、平均ルンケル比が0.9以下、好ましくは0.2以上0.8以下であるとよい。上記範囲のルンケル比を有するパルプを原料として用いることで、当該クラフト紙の染色を効率よくし、染料の歩留を向上させることができ、耐退色性の向上とコストダウンとを両立させることができる。
紙コシ(嵩)に寄与する要素としては、紙自体の坪量、密度のほかに、パルプ繊維自体の物理的構造がある。パルプ繊維にはルーメン(内腔)が存在し、それ自体が潰れることによって、紙全体としてのクッション機能に繋がる。内腔と外環(細胞壁)の厚みとの比率がクッション性にとって重要となる。また、クッション性の高い紙ほどマシン各所での圧力に対する嵩の復元効果が高いため、嵩高で紙コシのある製袋作業性に優れたクラフト紙を得ることが出来る。そこで本形態においては、JIS−P8220に準拠して離解した離解パルプの平均ルンケル比を調節して、クッション性を好適化するのが好ましい。ここで、ルンケル比Rとは、繊維の内腔の幅(径)Lと細胞壁の厚さtによって求められる値であり、R=2・t/Lによって表される。このルンケル比は、数値が低いほど同じ径に対して繊維壁の厚みが薄いことを意味し、繊維は柔軟性を持つ。平均ルンケル比が0.9以下であれば、十分な嵩があるため紙コシに優れた用紙を得ることができる。平均ルンケル比が0.9以下のパルプ繊維を得るには、パルプの原料となる木材として比較的若い段階で伐採した植林木や間伐材を用いるのが好ましい。なお、平均ルンケル比が0.2未満であると繊維強度が低下しすぎるため、クラフト紙の強度及び製袋適性が低下する。
本形態の原料パルプには、サイズ剤や、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留向上剤等の、通常クラフト紙に配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して用いることができる。
本形態において、基紙の坪量には特に限定がないが、目的とする封筒用クラフト紙のJIS−P8124に準拠した坪量が50〜120g/m2となるように基紙の坪量を調整するとよい。
また、当該クラフト紙のJIS−P8149(2000)に準じて測定した不透明度は95%以上98%以下であることが好ましい。不透明度が95%未満であると、本発明のクラフト紙を封筒用として使用した場合、クラフト3種に規定されている坪量において、70g/m2以下の坪量のものを封筒用として使用すると、内封した書類、文書等の文字が透けて見える恐れがある。また、98%を超えると封筒用としての不透明度としては問題ないが、本発明における染料処方において98%を超える不透明度を達成することが難しくなる。
〔染料〕
当該クラフト紙に含有する2種類の染料(染料A及び染料B)は、以下に示す条件を満足するものである。
(1)染料A:Δa*>0、Δb*>0
(2)染料B:Δa*<0、Δb*<0
上記Δa*及びΔb*は、CIELab色空間における各染料の色座標a*及びb*のJ.TAPPI No.21 A法で規定されている10時間後の差(JIS−Z8730に準拠)である。
このCIELab色空間とは、
L*=116(Y/Yn)1/3−16
a*=500[(X/Xn)1/3−(Y/Yn)1/3]
b*=200[(Y/Yn)1/3−(Z/Zn)1/3]
で定める明度L*、色座標a*及びb*を直交座標系にもつ色空間である。但しX/Xn、Y/Yn、Z/Znは、0.008856より大であり、X、Y、Zは物体の三刺激値、Xn、Yn、Znは物体色を照明する光源の三刺激値で、Yn=100に基準化されている。
上記条件でΔa*及びΔb*の変化を生じる染料Aや染料Bの選択は、白色度75%の広葉樹漂白クラフトパルプ(染料無添加)に、試用する染料をL*値が70以上80以下の範囲になるように希釈し染色を行い、J.TAPPI No.21 A法で規定されているカーボンアークフェードメーターを用い、照射温度63℃で10時間照射後に、マクベス社製カラーアナライザー「i5」(SCE方式、視野角2度、光源:CIEイルミナントC)にて変化値を測定することで行われる。すなわち、照射前のa1*、b1*値と、照射後のa2*、b2*値をそれぞれ求め、それぞれの差から、Δa*、Δb*(Δa*=a1*−a2*、Δb*=b1*−b2*)を求める。
通常クラフト紙は、塩基性染料又はカチオン性直接染料からなる黄色系、茶色系染料により染色されるが、これらの染料は、J.TAPPI No.21 A法で規定されている10時間後の退色変化において一定の色調変化を生じるものではなく、Δa*が赤から緑に、Δb*が黄から青に色相変化する等、多種多様な色調変化をきたし、クラフト紙製造直後は類似の色調を示すものの、退色変化後はあたかも元来異なる色調の封筒用クラフト紙を用いたが如く、異なった色調の封筒用クラフト紙となる。
そこで本発明者等は、J.TAPPI NO.21 A法で規定されている10時間後の退色変化を想定し、元来のクラフト紙の色調をあたかも退色変化が生じていないが如く色調を補完する様に変化する染料を用いることで、見た目の封筒用クラフト紙の色調変化が生じない封筒用クラフト紙が得られることを知見し、本発明を完成させた。
本発明者等の知見によると、あたかも退色変化が生じていないが如く、色調を補完する様に変化する染料の組み合わせとしては、前述のように下記に示す条件を満足する2種類の染料(染料A及び染料B)である。
染料A:Δa*>0、Δb*>0(Δa*が赤から緑に、Δb*が黄から青に色相変化する染料)
染料B:Δa*<0、Δb*<0(Δa*が緑から赤に、Δb*が青から黄に色相変化する染料)
上記染料A及びBによれば、染料の退色により、Δa*が赤から緑に、Δb*が黄から青に色相変化する染料と、Δa*が緑から赤に、Δb*が青から黄に色相変化する染料との組み合わせにより、見た目の退色を補うことが可能となる。
なお、染料の組み合わせ、染料の濃度、定着剤の種類、染色時間などは、それを用いて染色するクラフトパルプの色相に合わせて適宜変更することができる。
クラフト紙に用いられる染料としては、パルプ繊維に対する染色性の良好な、塩基性染料又はカチオン性直接染料が従来から好適に用いられている。
紙用途に用いられる染料において、塩基性染料としては、カチオンが色素イオンで、アニオンが塩化物または硫酸、酢酸、シュウ酸、硝酸等の塩の酸性基でなる塩が好適に用いられる。塩基性染料は、紙用途に最も多く用いられるが、この理由としては安価であること、染色が鮮明ではなやかであることがあげられる。塩基性染料は、漂白パルプよりも未漂白パルプをよく染色する特性を有し、これは、未漂白パルプ中に含まれる多量のリグニン、糖類、有機着色物質等の非繊維素分が媒染剤として作用するためと考えられる。本形態のクラフト紙は、パルプ繊維の劣化が少ない、リグニンが晒クラフトパルプより多く残留している原料パルプを用いるため、塩基性染料を好適に用いることができるが、化学構造上アミノ基又は置換アミノ基などの塩基性基を含むため、経時変化による退色の補色性が低い問題が生じる場合がある。
一方、紙用途に用いられるカチオン性直接染料は、アゾ染料にスルホン基を導入し、水溶性にした染料で、パルプ繊維に対する親和性が他の染料と比べ格段に高いものの、パルプ繊維への染色性が塩基性染料と比べて若干劣り、逆に、塩基性の染料と比べて、耐光性や摩擦などによる色落ちも殆ど生じない。本形態のクラフト紙への利用に於いて、カチオン性直接染料は、塩基性染料に比べて、残留リグニン等の影響も受けることなく、均質に染色可能であることからより好適に用いることができる。
特に直接染料は、本発明の構成において、白色度70%以上に漂白された古紙パルプに対しても、その親和性の高い特徴から均質に染色可能である。さらに直接染料によれば、JIS−P8124に準拠した坪量が50〜120g/m2で、JIS−P3401に規定されたクラフト紙3種の品質基準を満足させ得る構成であり、JIS−P8220に準拠して離解した離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm以上2.5mm以下で、かつ平均ルンケル比が0.9以下の原料パルプ繊維に対し、繊維内壁にも及ぶ染色性を有するため、耐退色性が高く、包装用紙としての優れた製袋適性(強度、紙コシ)を備えるクラフト紙を提供することを可能とする。
紙用途においては、前記塩基性染料、カチオン性直接染料の他、酸性染料、硫化染料、反応染料、特殊な用途での建染染料があるが、塩基性染料、カチオン性直接染料以外の染料は、本発明に基づく退色変化の補完には、染料品種が少なく色合わせが困難(例えば酸性染料)、暗色系が強かったり(例えば硫化染料)、価格的に高価であったりすること等から、汎用的なクラフト紙への使用は困難である。
ここで、染料A(Δa*>0、Δb*>0)となる染料としては、例えば、カヤフェクトブルーRF(直接染料)、バサゾールグリーン14L(塩基性染料)等を例示することができる。
また、染料B(Δa*<0、Δb*<0)となる染料としては、例えば、カヤフェクトブラウンF(直接染料)、カヤフェクトイエローMR(直接染料)、カヤフェクトレッドP(直接染料)、レバセルファーストイエロー(直接染料)、バサゾールレッド71L(塩基性染料)等を例示することができる。
本形態において、染料Aは、5>Δa*>0、5>Δb*>0の変化範囲が、染料Bは−5<Δa*<0、−5<Δb*<0の変化範囲が退色の補完調整に好ましい。また、上記挙動を示す染料A、染料Bであれば、それぞれ2種類以上組み合わせることも可能であり、2種類以上組み合わせることにより色の調整がより容易になる。
この2種類の染料A、染料Bによる着色処理は、これら染料を含有する塗工液を塗布することで行うのがよい。塗工液の塗布により着色処理することで、クラフト紙表面に染料を固着させることができ、より高い耐退色性及び不透明性を実現させることができる。なお、原料パルプスラリー中に染料A、染料Bを添加させることによっても着色処理することができるが、耐退色性が表面への塗布に比べて低下する。
上記2種類の染料で着色処理された当該クラフト紙のJIS−P8150に規定されたCIELab色空間によって算出したL*、a*、b*は、それぞれL*が70以上80以下、a*が2以上4以下、b*が15.0以上25.0以下である。このような色調の用紙は、未晒クラフト紙と晒クラフト紙両者の中庸な性質を有し、使用者の目にかかる負担が小さく、目の疲労度を軽減し得るものとして、従来から用いられてきた色調であり、このような薄い黄土色のクラフト紙において、上記2種類の染料の組み合わせによる耐退色性が顕著に発揮される。特に、上記範囲の薄い黄土色のクラフト紙は封筒用に好適に用いられ、当該2種類の染料の組み合わせ効果による高い耐退色性が最も効果的に発揮される。
上記2種類の染料で着色処理された当該クラフト紙のJ.TAPPI No.21 A法で規定されている10時間後の色差(JIS−Z8730)におけるΔE*は4.0以下となっている。本発明において定義する色差ΔE*は、CIE 1976 L*a*b*色空間において規定されるものである。当該クラフト紙のΔE*が4.0以下の場合、色変化(退色)がほとんど気にならず、高い耐退色性を有することとなる。
退色によるΔE*の測定に際しては、クラフト紙の表面を、まずJ.TAPPI No.21 A法で規定されているカーボンアークフェードメーターを用いて、照射する前のL1*、a1*、b1*値と、照射温度63℃で10時間照射後のL2*、a2*、b2*値をそれぞれもとめ、それぞれの差ΔL*、Δa*、Δb*(ΔL*=L1*−L2*、Δa*=a1*−a2*、Δb*=b1*−b2*)を求める。そしてこの差ΔL*、Δa*、Δb*を下式に当てはめ、ΔE*を算出することによって行われる。このΔE*を耐色性の指標とし、このΔE*の値が小さくなるほど耐色性に優れていることを示す。
ΔE*=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
本発明においては、上記のような計算式に基づいた測定を行う色差計によってΔE*を求める。このような色差計としては、例えば、マクベス社製 カラーアナライザー「i5」等があげられる。測定はクラフト紙表面において、不特定の5箇所において行い、これの平均値を標準とする。続いて、J.TAPPI NO.21 A法で規定されている10時間後の退色変化させた試料の表面において、不特定の5箇所において測定を行い、これの平均値と先の標準値との差異から色差ΔE*を計算する。
〔再生粒子〕
次に填料として含有される再生粒子について説明する。
本発明に使用する再生粒子は、JIS−P8251(2003)に準じて測定した灰分率が、原料からの持込灰分、他に添加する再生粒子以外の填料も含め、0.3〜8.0%の範囲となるように含有されることが好ましい。灰分率が上記範囲となることで、クラフト紙として強度を維持し、不透明度を向上させることができる。灰分率が上記範囲未満であると、不透明度が低く、上記範囲を超えるとパルプ以外の填料等成分が多くなることとなり、紙の強度が低下する。
本発明における再生粒子は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とし、脱水工程と、乾燥工程と、少なくとも第1燃焼工程及び第2燃焼工程からなり、第1燃焼工程の第1燃焼炉(内熱キルン炉)で300℃〜500℃で燃焼処理を行った後、第2燃焼工程の第2燃焼炉(外熱キルン炉)で、第1燃焼炉にて燃焼された主原料を再度燃焼する2段階の燃焼工程と、粉砕工程とを経て得られる。
さらに詳述すれば、第1燃焼炉内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、500℃〜650℃の熱風を吹き込み、300℃〜500℃で燃焼処理を行い、さらに第2燃焼炉では、第1燃焼炉からの燃焼物を、550℃〜780℃の温度で燃焼処理を行うものである。
次に、本発明に係る再生粒子の製造方法の一例を、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る再生粒子の製造設備フロー図である。なお、以下に説明するように、この再生粒子の製造工程は、脱水工程、乾燥・燃焼工程、粉砕工程を有するが、さらに、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程、各工程間に分級工程等を設けてもよい。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
図示しない古紙パルプを製造する脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水される。脱水後の原料は、好ましくは40%〜90%、より好ましくは45%〜70%、最も好ましくは50%〜60%の高含水状態であることが望ましい。
かかる脱水後の原料10は、粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径に粉砕しておくことが望ましい。かかる原料10が貯槽12から切り出されて、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2%〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度としては、好ましくは300℃〜500℃、より好ましくは400℃〜500℃、最も好ましくは400℃〜450℃である。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16から乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適であり、したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の燃焼炉であることが望ましい。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて酸素濃度が、好ましくは5%〜20%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは10%〜15%となるようにして燃焼する。温度としては、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。また、第2燃焼炉32内での滞留時間は好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分で残カーボンを完全に燃焼させる。
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
以上、再生粒子の製造工程の概要を説明したがその詳細及び応用例を以下に説明する。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
本発明でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
脱墨フロスの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本実施形態における一例では、脱墨フロスは、脱水手段たる例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分を90%〜97%に脱水した脱墨フロスは例えばスクリュープレスに送り、さらに所定の水分に脱水することが好適である。
脱水後の原料10の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉14における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料10の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めにくくなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題を有する。また、脱水後の原料10の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。
以上の説明で明らかにしたように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度を下げる問題を惹き起こす。
脱墨フロスの脱水工程は、本発明における再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径が、好ましくは40mm以下、より好ましくは3mm〜30mm、最も好ましくは5mm〜20mmの範囲になるように調整される。さらには、平均粒子径が40mm以下の割合が70質量%以上になるように粉砕しておくことがより望ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化をきたさない燃焼処理を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、40mmを超える平均粒子径では、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難な問題を有するためである。
前記平均粒子径と粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した。各燃焼工程における粒子径は、JIS−Z8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定する。
〔第1燃焼工程〕(乾燥、燃焼工程)
かかる原料10が貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。内熱キルン炉加熱手段は、熱風発生炉20にて生成された熱風を第1燃焼炉14の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれる。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する第1燃焼炉14によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼が行え、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また乾燥を別工程に分割し吹き上げ式の乾燥機を入れることもできる。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風においては、酸素濃度が好ましくは0.2%〜20%、より好ましくは1%〜17%、最も好ましくは7%〜15%となるようにされている。
酸素濃度は、原料10の燃焼(酸化)により消費されるため、燃焼の状況により酸素濃度に変動を生じる。酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難である。第1燃焼炉14内の酸素は、原料10の燃焼等によって消費され酸素濃度が低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで酸素濃度を維持、調節可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで第1燃焼炉14内の温度を細かく調節可能になり、原料10をムラなく万遍に燃焼することができる。
第1燃焼炉14の炉内温度としては、好ましくは300℃〜500℃、より好ましくは400℃〜500℃、最も好ましくは400℃〜450℃である。第1燃焼炉14においては容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑える目的から燃焼温度300℃〜500℃の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、熱風の温度が500℃を超す場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と内部の未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16から、乾燥・燃焼に供した排ガスが、再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合され再利用される。
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に熱風発生炉20に送り、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられて排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようになっている。
第1燃焼炉14は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、前記条件で30分〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。また、有機物の燃焼と生産効率の面で40分〜80分がより好ましく、さらに恒常的な品質を確保する面から50分〜70分が最も好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。燃焼時間が90分を超えると原料10の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子が極めて硬くなる。
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率を2質量%〜20質量%に乾燥・燃焼することが好ましく、より好ましくは5〜17質量%、最も好ましくは7質量%〜12質量%である。
未燃率を、2質量%〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を短時間に効率よく行うことができるとともに、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く白色度が80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。未燃物が2質量%未満では、先の第1燃焼炉14におけるエネルギーコストが高いものとなるとともに、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉32出口における白色度の低下等の品質低下をきたす場合がある。
〔第2燃焼工程〕
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する、外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。
この第2燃焼炉32では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、原料10の炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
第2燃焼炉32における燃焼においては、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉14において供給される原料10の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径が好ましくは10mm以下、さらに好ましくは1mm〜8mm、最も好ましくは1mm〜5mmとなるように調整される。
第2燃焼炉32入り口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径が10mmを超える粒子径では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下する問題を惹き起こす。第2燃焼炉32での安定生産を確保するためには、平均粒子径が1mm〜8mmの燃焼物が70%以上になるように粒子径を調整することが好ましい。従って、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化の可能性の面で有益である。さらに、本実施形態のように、分級を乾燥後とすると小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
第2燃焼炉32での外熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適であり、したがって、電気ヒーターによる第2燃焼炉32であることが望ましい。
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かくかつ内部の温度を均一にコントロール可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉14を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉32で炭酸カルシウムの分解をきたすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度が好ましくは5%〜20%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは10%〜15%となるように設定される。酸素濃度は、第2焼成炉(外熱キルン炉)32に適宜の手段により酸素または空気投入量のコントロールによって行うことができる(具体的な実施形態の図示は省略してある)。
第2燃焼炉32内の酸素濃度が、5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない問題を生じる。温度としては、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。
第2燃焼炉32は、先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させることが好ましく、燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、燃焼温度が780℃を超える場合は、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなる問題が生じる。
また、滞留時間は好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分である。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する問題が生じる。
さらに、燃焼物の安定生産を行うにおいて滞留時間を60分以上、過燃焼の防止、生産の確保のため240分以下で燃焼させることが好適である。
この第2燃焼炉32から排出される燃焼物の平均粒子径は、好ましくは10mm以下、より好ましくは1mm〜8mm、最も好ましくは1mm〜5mmに調整される。
燃焼が終了した再生粒子は好適には凝集体(再生粒子凝集体)であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料10として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものの燃焼品であってもよい。
〔粉砕工程〕
本実施形態に基づく再生粒子の製造方法においては、必要に応じ、さらに公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒子径に微細粒化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。
一例では、燃焼後に得られた粒子は、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。填料、顔料用途等への最適な粒子径については、本実施形態の再生粒子は、平均粒子径2〜5μmであるのが好ましい。
これは、従来の炭酸カルシウムよりも平均粒子径が大きいため、嵩高効果が向上するためと考えられる。タルクやクレーは再生粒子より平均粒子径が大きく、嵩高効果が期待できるが、酸性抄紙となるために黄変化しやすくなり、実用的ではない。
粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社製)により体積平均粒子径を測定した。
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるためには、再生粒子の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
本製造方法の原料10としては、再生粒子の原料となり得るもの以外は予め除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、さらに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
さらに、本実施形態に基づく再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で好ましくは30〜82:9〜35:9〜35、より好ましくは40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、最も好ましくは60〜82:9〜20:9〜20である。
カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程における脱水性が良好であり、乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。
本実施形態の割合に調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
また、本製造方法で得られる再生粒子は、示差熱熱質量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、本実施形態に基づいて脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができるので好ましい。
〔第2燃焼炉(外熱キルン炉)のリフターについて〕
第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで原料10の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
この第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32には、図2(a)にその内部構造を、図2(b)にその内面の展開図で示すような公知の回転式燃焼装置が好適に用いられる。
すなわち、この第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部に投入部32aが、他端部に排出部(図示せず)が設けられ、他端には筒状本体32b内に燃焼ガスを導入する燃焼バーナー20A(図示せず)が配設されている。筒状本体32bの投入部32a側における耐火壁32cの内面には筒状本体32bの軸心に対して45°〜70°の傾斜角で傾斜した複数条の螺旋状リフター32dがブラケット32eを介して等間隔に突設されており、この他端側には筒状本体32bの軸心に対して平行な適当な長さの平行リフター32fが周方向に等間隔置きに複数、軸心方向に複数列ブラケット32gを介して突設されている。
なお、耐火壁32cは、耐火キャスタブルあるいは耐火レンガで構成されることが好ましく、また、螺旋状リフター32dと平行リフター32fを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすることにより、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとは、上記のとおり、被燃焼物の投入部32a側から排出側に向けてこの順で配設するのが望ましい。
上記のとおり構成されたこの第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32によれば、投入部32a側から投入された内容物が、まず螺旋状リフター32dにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料10に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフター32fにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター32dにて平行リフター32fに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター32f部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上できる。
なお、上記実施形態では螺旋状リフター32dと平行リフター32fとを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。
以上のようにして得られた再生粒子は白色度が75〜85%、さらに好ましい状態では80〜85%と高く、白色度の変動が少ない。また、上記に記載の製造方法によって得られた再生粒子を用いた当該クラフト紙は、従来公知の再生粒子および市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、白色度が高く、嵩高であり、印刷時の紙剥けがないクラフト紙とすることができる。
なお、本発明に係る製造方法によって得られた再生粒子は、平均粒子径が従来既知の炭酸カルシウムの平均粒子径(1〜2μm)より大きい。従って、当該再生粒子が繊維間に定着することで嵩高効果が向上し、また、再生粒子のアルミニウムがカチオン性であるために繊維への定着性が強く、炭酸カルシウムよりも配合量を低減できるため、灰分率を下げることができ、嵩高効果及び表面強度が向上し、その結果、印刷時の紙剥けを低減できるものと考えられている。
本発明で得られるクラフト紙は、再生粒子から持ち込まれる無機物を合わせた全無機物の内、酸化アルミニウムの含有率が、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜25質量%であることが望ましい。酸化アルミニウムの含有量が10%未満の場合には定着性の向上が少なくなる。一方で酸化アルミニウムの含有率が35%を超えると、カチオン性が強くなりすぎて抄紙薬品と反応し、凝集物が発生したり、ピッチなどの黒色異物が発生したりする場合がある。
本実施形態では、上記の再生粒子を単独で使用することもできるし、かかる再生粒子と内添用填料として通常使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる少なくとも1種の填料を併用することもできる。もちろん、これらの2種以上と併用することもできる。
このように上述したように、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とし、脱水工程と、乾燥工程と、少なくとも第1燃焼工程及び第2燃焼工程からなり、第1燃焼工程の第1燃焼炉(内熱キルン炉)で300℃〜500℃で燃焼処理を行った後、第2燃焼工程の第2燃焼炉(外熱キルン炉)で、第1燃焼炉にて燃焼された主原料を再度燃焼する2段階の燃焼工程と、粉砕工程とを経て得られた再生粒子を添加し、さらに、CIELab色空間における明度L*が70以上80以下、色座標a*が2以上4以下、色座標b*が15以上25以下であり、J.TAPPI No.21 A法で規定されている10時間後の色差ΔE*が4以下であり、不透明度が95%以上98%以下とし、原料パルプとして、白色度が70%以上の古紙パルプを30質量%以上50質量%以下とすることで耐退色性を高めることができ、原料パルプの重量平均繊維長としては1.0mm以上2.5mm未満で、かつ平均ルンケル比が0.9以下であり、上記繊維長及びルンケル比を有するパルプから成形されていることにより、包装用紙として特に優れた強度等製袋性を発揮させることができ、本発明の課題を効果的に達成できる。言い換えれば、本発明によると2種類の染料及び再生粒子を含有することで、耐退色性及び不透明度が高く、嵩高さを備え、さらには包装用紙としての優れた製袋適性(強度や紙コシ)を備えるクラフト紙を提供することができる。特に、本発明によれば封筒用途に適した封筒用クラフト紙を提供することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。離解・脱墨・漂白処理を行ったCSF400mLの古紙パルプ(DIP)と、CSF600mLに叩解したNBKP(クラフトパルプ)と、CSF600mLに叩解した機械パルプ(MP)を、表1記載の質量比となるように配合したパルプスラリーに、中性ロジンサイズ剤(品番:NS74、ハリマ化成(株)製)、紙力増強剤(品番:星光PMC社製、DS4350製)、及び填料を内添し、ワイヤーパート、プレスパート、プレドライヤーパート、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート及びワインダーパートを含む製紙システムを用いて実施例1〜31のクラフト紙を得た。各クラフト紙を得るにあたっては、表1中に記載のとおり、適宜染料を内添あるいは塗布した。表1中の染料Aとしてバサゾールグリーン14L(A1)、はカヤフェクトブルーRF(A2)を使用し、染料BとしてカヤフェクトブラウンF(B1)、バサゾールレッド71L(B2)を使用した。これらの染料は、L*75、a*:2.5、b*:22.5、希釈倍率1000倍としたうえで、種箱において原料パルプ中に添加、あるいは表面に塗布した。この際、カレンダーの出側に設ける既設のいわゆるBM計の近傍にカラーセンサ(ハネウェル社製MxOpen型カラーセンサ又は2000ETカラーセンサ、マクベス社製定点測定用カラーセンサ)を設けて、その色調に基づき、種箱に添加する染料量の調整(イエロー、ブラック、マゼンタの配合及び添加量の調整)を行った。
なお内添した填料は、原料として脱墨フロス(古紙パルプを製造する古紙処理工程より得られた脱墨フロス)を用い、表2に示す条件にて脱水工程、第1燃焼工程(乾燥・燃焼工程)第2燃焼工程を経て、湿式粉砕処理を施して填料としての再生粒子を得た。
また、比較例として、表1に示す条件にて比較例1〜9に係るクラフト紙を得た。表に示されない他の条件は実施例と同様のものである。
結果を表3に示す。なお、測定方法は、以下のとおりである。
(重量平均繊維長)
本クラフト紙をJIS−P8220に準拠して離解した離解パルプをJ.TAPPI NO.52に準拠し、カヤニオートメーション社製繊維長測定器ファイバーラボにて測定した。
(ルンケル比)
本クラフト紙をJIS−P8220に準拠して離解した離解パルプをカヤニオートメーション社製繊維長測定機ファイバーラボにて測定し、繊維内径、繊維外径から算出した。
(灰分)
JIS−P8251に準拠して測定した。
(坪量)
JIS−P8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(密度)
JIS−P8118に準拠して測定した。
(不透明度)
JIS−P8149に記載の方法に準拠して測定した。
(色差(退色性))
J.TAPPI No.21 A法で規定されている、カーボンアークフェードメーターを用い照射温度63℃で、10時間照射後に、マクベス社製 カラーアナライザー「i5」(SCE方式、視野角2度、光源:CIEイルミナントC)にて変化値を測定し、JIS−P8150に規定されたCIELab色空間による色差式により算出した。
(引張強さ)
JIS−P8113に準拠して測定した。
(引裂強さ)
JIS−P8116に準拠して測定した。
(製袋適性<紙のコシ>)
自動製袋機(型番:FFDW−3/G−1、冨士製袋工業(株)製)を使用し、クラフト紙から長型4号封筒を加工することにより加工速度の状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:加工状態が全体的に均一で、従来のクラフト紙と同等の速度で加工できる
○:加工状態がやや劣るものの、従来のクラフト紙と同等の速度で加工できる
△:加工状態が低下する傾向が見られるため従来のクラフト紙と比べ、加工速度を低下させる必要がある。糊付け部分に波打ちが認められる
×:加工状態が均一でなく、加工速度を大幅に落としても改善が見られない
表3に示された結果から、実施例1〜31のクラフト紙は、密度、不透明度及びΔE*がいずれも特定の値を満足するので、嵩高さ、不透明度、耐退色性のいずれにも優れており、かつ強度及び製袋適性も優れた、各種特性を兼備したものであることがわかる。
これに対して、比較例1〜9のクラフト紙は、少なくともいずれか1つが特定の値を満足していないため、嵩高さ、不透明度、耐退色性等、全ての特性を具備するものではないことがわかる。