しかしながら、上記のようにエアヒーターを用いたヒーターユニットと、インクジェットユニットとを共にガントリに搭載するような構成を採用するに際しては、以下に示す種々の課題がある。
まず、エアヒーターは、抵抗加熱タイプのヒーターに通電を行うため、所望とする設定温度のエアを安定に噴出するまでには、一定の所要時間が必要となる。所望とする基板加熱の方法にもよるが、噴出するエアのエア温度を一定として焼成を行うことが要求される場合には、エアヒーターを別ポジションにて通電開始させてエアが所定温度に到達するまでエアの噴出を待機させる機能が必要となる。
また、エアヒーターが抵抗加熱源を有するに対し、インクジェットユニットが有機溶剤を主成分とする液体(インク)を吐出するユニットであるため、引火の危険性があり、エアヒーターの高温部には有機溶剤の揮発成分が到達しない配慮が要求される。
一方、インクジェット塗布装置等で使用するガントリロボットの位置精度を高く維持するためには、搭載するインクジェットユニットおよびヒーターユニットは小型軽量である必要がある。このため、ヒーターユニットとインクジェットユニットとは極力近い位置に配置する設計が要求される。
しかし、エアヒーターは抵抗加熱源を有するために自身が高温になるとともに、高温のエアを噴出するためにヒーターユニット全体が昇温する構造である。そして該ヒーターユニットをインクジェットユニットに固定するインクジェットベース板などの部材を通じた伝熱によりインクジェットユニットも昇温することになる。そしてインクジェットヘッドを保持する保持部材の温度が変化すると、熱膨張によりインクジェットヘッドのノズル位置が変動する問題を引き起こす。
例えば、上記保持部材がアルミニウムから成ると仮定し、10cmに亘って3℃の温度変化が生じる場合は、約7ミクロンの膨張が生じる。このため、インクジェットヘッドのノズル位置がずれることによりインクジェット塗布装置の位置決め精度が大幅に低下することとなる。なお、上記の例では単純に均等に熱膨張した場合のみを考慮したが、現実には保持部材の形状や材料が異なることなどから捩れなどの成分も発生してさらなる精度低下を引き起こすおそれがある。
従って、ヒーターユニットに関して、発生する熱量を効果的に排出すること、および、インクジェットユニットなどの周辺の構成部材への伝熱を極力抑制することが小型軽量化と同時に要求される。
さらにまた、エアヒーターを採用して焼成処理を行う場合、エアヒーターに近接して配置することが要求されるインクジェットヘッドのノズル付近のインクが乾燥および固化する課題もある。
本発明は係る課題を鑑みてなされたものであり、インクジェット塗布装置等に搭載可能なヒーターユニットであって、有機溶剤等の揮発成分が当該ヒーターユニット内部へ到達することを抑制する安全な構成であり、かつ、ヒーターユニットの周囲への熱伝播を抑制するヒーターユニットを提供することにある。
本発明のヒーターユニットは、上記課題を解決するために、被処理物を加熱する加熱空気を噴出するエア噴出口を先端に有するエアヒーターと、上記エアヒーターを格納する筐体とを備えるヒーターユニットにおいて、上記筐体には、上記エア噴出口が突出可能な突出口が形成され、上記突出口には、突出口の開閉状態を変更する第1蓋部が備えられており、上記筐体内には、上記エアヒーターを移動させることによって、上記突出口およびエアヒーターの相対距離を変化させる移動手段が配置され、上記筐体には、筐体内の温度上昇を抑制する冷却ガスを筐体内に導入させるためのガス導入口、および、冷却ガスを筐体外へ排出させるためのガス排出口が形成されていることを特徴としている。
上記の発明によれば、エアヒーターが筐体に格納されている状態において、第1蓋部によって突出口を閉じることができる。また、ガス導入口から冷却ガスが筐体に導入されるため、筐体内の圧力は外部よりも高くなり、筐体の外部から有機溶剤等の揮発成分が筐体内部へ到達することを抑制できる。このため、安全な構成を実現することができる。
さらに、上記構成によれば、エアヒーターが筐体に格納されている状態において、冷却ガス導入口から筐体内へ冷却ガスが導入され、排出口から冷却ガスが排出されるため、筐体内の熱を排熱することができる。このため、エアヒーターから周囲の部材への熱伝播を抑制するヒーターユニットを提供することが可能である。
また、本発明のヒーターユニットでは、上記移動手段には、移動手段によってエアヒーターが移動すると共に移動して複数のガス導入口の開閉状態を変更する第2蓋部が配置されていることが好ましい。
上記の発明によれば、第2蓋部に複数のガス導入口の開閉状態が変更されることができる。すなわち、第2蓋部の移動によって、冷却ガスが導入されるガス導入口が変更されることとなる。筐体内には、部分的に高温になる箇所が生じ得るが、上記のように冷却ガス流路が変更されることによって、冷却ガスをより広範囲に導入することができ、排熱効率がさらに向上されたヒーターユニットを提供することができる。
また、本発明のヒーターユニットでは、上記エアヒーターが上記筐体に格納されている待機状態と、上記移動手段によって、上記エア噴出口が上記突出口から筐体外へ位置している処理状態とにおいて、上記複数のガス導入口のうち少なくとも1つの開閉状態が異なることが好ましい。
上記待機状態および処理状態では、ヒーターユニットから発生する熱量の発生態様が大きく異なる。このような両状態に関して冷却ガス流路を変更することによって、排熱効率を非常に大きく向上させることができる。
また、本発明のヒーターユニットでは、上記待機状態において、加熱空気が移動するエア流路と、ガス導入口から導入される冷却ガスが移動する冷却ガス流路とが交差するように、上記ガス導入口およびガス排出口が形成されており、上記ガス導入口が、開口状態になっていることが好ましい。
これにより、高温の加熱空気が流れるエア流路に対して開口状態となっているガス導入口から冷却ガスを直接導入することができる。このため、筐体内の最も温度の高い箇所に対して、冷却ガスが速やかに導入され、筐体内の温度上昇を非常に効率的に抑制することができる。すなわち、ヒーターユニットの周囲への熱伝播を、非常に効率的に抑制することができる。
また、本発明のヒーターユニットでは、上記エア流路と交差する上記冷却ガス流路へ冷却ガスを導入するガス導入口に対向する位置にガス排出口が形成されていることが好ましい。
このため、冷却ガス流路は、ガス導入口およびガス排出口間に位置することとなる。したがって、エア流路および冷却ガス流路の交差する位置にて加熱空気と合流した冷却ガスは、速やかにガス排出口から排出される。したがって、発生する熱量を効率的に外部へ排出することが可能となる。
また、本発明のヒーターユニットでは、上記筐体が、微小液滴を吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットユニットに固定される固定部材を含んでおり、上記固定部材は、上記ガス導入口へ冷却ガスを供給するガス供給経路の少なくとも一部を形成することが好ましい。
これにより、ガス排出口からの排熱に加えて、上記固定部材へ冷却ガスが通じるため固定部材を空冷することができる。したがって、固定部材を通じて、インクジェットユニットへ熱伝導する熱量を非常に低く抑えることが可能なヒーターユニットを提供することができる。なお、当該ヒーターユニットを備えるインクジェット塗布装置によれば、特に非常に高い位置精度での液滴塗布が要求される場合などに、熱膨張などによってインクジェットヘッドの位置ずれ量を抑制させる効果を得ることができる。
本発明のインクジェット塗布装置は、上記ヒーターユニットと、微小液滴を吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットユニットとを備え、上記ヒーターユニットおよびインクジェットユニットが連結されていることを特徴としている。
当該インクジェット塗布装置は、本発明に係るヒーターユニットを備えるため、ヒーターユニットは有機溶剤等の揮発成分に対して安全である。それゆえ、エアヒーターから周囲の部材への熱伝播を抑制することが可能な、インクジェット塗布装置を提供することができる。
本発明のインクジェット塗布装置では、上記インクジェットユニットはインクジェットヘッドを昇降させる昇降手段を備えることが好ましい。
上記の構成によれば、インクジェットヘッドが微小液滴の塗布処理を終了した後に、昇降手段によってインクジェットヘッドを上昇させて退避させることが可能である。これにより、エアヒーターから噴出される加熱ガスがインクジェットヘッドに到達することを抑制できる。つまり、インクジェット塗布装置の安全性、および正常な動作が可能な状態での保持性能を向上させることが可能である。
本発明のインクジェット塗布装置では、前記インクジェットユニットは、インクジェットヘッドのノズル部を保湿するノズル保湿手段を備えることが好ましい。
上記ノズル保湿手段によって、インクジェットヘッドのノズル部を保湿することができる。すなわち、上記ノズル部でのインクの乾燥および固化を抑制することができる。
本発明のヒーターユニットは、以上のように、筐体には、エアヒーターのエア噴出口が突出可能な突出口が形成され、上記突出口には、突出口の開閉状態を変更する第1蓋部が備えられており、上記筐体内には、上記エアヒーターを移動させることによって、上記突出口およびエアヒーターの相対距離を変化させる移動手段が配置され、上記筐体には、筐体内の温度上昇を抑制する冷却ガスを筐体内に導入させるためのガス導入口、および、冷却ガスを筐体外へ排出させるためのガス排出口が形成されているものである。
それゆえ、エアヒーターが筐体に格納されている状態において、第1蓋部によって突出口を閉じることができ、ガス導入口から冷却ガスが筐体に導入されるため、筐体内の圧力は外部よりも高くなり、筐体の外部から有機溶剤等の揮発成分が筐体内部へ到達することを抑制することができる。このため、安全な構成を実現することができる。さらに、エアヒーターが筐体に格納されている状態において、冷却ガス導入口から筐体内へ冷却ガスが導入され、排出口から冷却ガスが排出されるため、筐体内の熱を排熱することができる。このため、エアヒーターから周囲の部材への熱伝播を抑制するヒーターユニットを提供することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明に関する例示であり、特許請求の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、明細書の記載でなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲に属する全ての変更を含むものである。
〔ヒーターユニットの構成〕
図1(a)はエアヒーター1が移動機構(移動手段)2によって上方に配置された状態でヒーターユニット12の筐体内に格納されている状態を示す断面図である(待機状態)。一方、図1(b)はシャッター5を開いて開口させた状態でエアヒーター1を移動機構2により下方に配置した状態を示す断面図である。
図1(a)に示すように、エアヒーター1は、ヒーターユニットベース板3、底板4およびカバー6から構成される筐体に格納されている。筐体内の固定板3aには移動機構2が固定されており、移動機構2は蓋材11と接続されている。また、蓋材11は、エアヒーター1と連結されている。
また、上記筐体には、エアヒーター1の長軸方向に対向する位置に、エアヒーター1のエア噴出口が突出可能な突出口5aが形成されており、ヒーターユニットベース板3にはガス供給口7が、カバ−6にはガス排出口10がそれぞれ形成されている。筐体外側には突出口5aに対してシャッター(第1蓋部)5が備えられている。上記エア噴出口は、被処理物を加熱する加熱空気を噴出するものである。
エアヒーター1は、筐体外部の突出口5aに沿った位置に配置される被処理物を加熱空気によって加熱できればよく、公知のエアヒーターを用いることができる。例えば、インフリッヂ工業株式会社製スーパーエアヒーターSEN、有限会社フィンテック製熱風ヒーターSAHなどを挙げることができる。
上記エアヒーター1は、蓋材(第2蓋部)11を介して移動機構2に接続されている。移動機構2は、蓋材11に連結する軸部分が移動機構2の筐体内部へ移動することによって、図1(b)に示すようにエアヒーター1を突出口5aの方向へ移動させることができる。
エアヒーター1の上方には空気を供給する柔軟な配管(点線により図示)が接続されており、図示しない開閉弁によりエアヒーター1に空気を導入することができる。なお、本実施の形態に係るヒーターユニット12において、エアヒーター1の加熱した空気を噴出するエア噴出口は、エアヒーター1の下方(先端)に配置されている。
ガス供給口7には、図示しない冷却ガス配管がヒーターユニット12の外部から接続されている。さらに、ヒーターユニットベース板3には、ガス供給口7から筐体内部へ冷却ガスが導入されるガス流路が設けられており、ガス流路は、上部ガス導入口(ガス導入口)8および下部ガス導入口(ガス導入口)9に繋がっている。また、下部ガス導入口9およびガス排出口10は対向する位置に配置されている。
なお、上記冷却ガスは、筐体内の温度上昇を抑制することができればよく、例えば、アルゴンなどの不活性ガス、空気、窒素などを用いることができる。
ヒーターユニット12では、ガス供給口7は1箇所形成されているが、複数形成されていてもよい。しかしながら、図1(a)のように、蓋材11が備えられている場合、上部ガス導入口8および下部ガス導入口9の一方は、蓋材11にて覆われ得る。図1(b)のように、下部ガス導入口9が蓋材11によって覆われると、蓋材11によって覆われていない上部ガス導入口8から冷却ガスの大部分が筐体に導入されることとなる。すなわち、ガス供給口7が、上部ガス導入口8および下部ガス導入口9の両方に連結されているため、ガス流路にて内圧が不要に上昇することを回避することができる。
ヒーターユニット12では、エアヒーター1が筐体内に格納された状態において、エアヒーター1にて加熱された加熱空気が移動するエア流路は、エアヒーター1のエア噴出口から突出口5aに向かう方向Aに沿って形成される。一方、下部ガス導入口9から導入される冷却ガスが移動するガス流路は、下部ガス導入口9からガス排出口10へ向かう方向Bに沿って形成される。
本構成によれば、高温の加熱空気が流れるエア流路に対して、開口状態になっている下部ガス導入口9から冷却ガスを直接導入することができる。このため、筐体内の最も温度の高い箇所に対して、冷却ガスが速やかに導入され、筐体内の温度上昇を非常に効率的に抑制することができる。すなわち、ヒーターユニット12の周囲への熱伝播を非常に効率的に抑制することができる。なお、下部ガス導入口9が「開口状態になっている」とは、「主たるガス導入口となっている」と換言することができる。
また、ヒーターユニット12では、上記エア流路と交差する上記ガス流路に位置する下部ガス導入口9に対向する位置にガス排出口10が形成されている。このため、図1(a)に示すように、冷却ガス流路は、上部ガス導入口8およびガス排出口10間に位置することとなる。したがって、エア流路および冷却ガス流路の交差する位置にて加熱空気と合流した冷却ガスは、速やかにガス排出口10から排出される。したがって、発生する熱量を効率的に外部へ排出することが可能となる。
ヒーターユニット12は、図1(a)のように、エアヒーター1を移動機構2によって筐体内に移動させ格納することができる。そして、エアヒーター1が筐体に格納されている状態において、シャッター5は突出口5aを覆っている。また、ガス供給口7を通して、主に下部ガス導入口9から冷却ガスが筐体に導入されるため、筐体内の圧力は外部よりも高くなり、筐体の外部から有機溶剤等の揮発成分が筐体内部へ到達することを抑制することができる。このため、安全な構成のヒーターユニットを実現することができる。
さらに、上記構成によれば、エアヒーター1が筐体に格納されている状態において、筐体内へ冷却ガスが導入され、ガス排出口10から排出されるため、筐体内の熱を排熱することができる。このため、エアヒーター1から周囲の部材への熱伝播を抑制するヒーターユニット12を提供することが可能である。
ヒーターユニット12では、筐体が上記のように、ヒーターユニットベース板3、底板4およびカバー6から構成されている。しかしながら、筐体は、ヒーターユニット12を格納し、突出口5a等の開口部が形成されていればよく、ヒーターユニットベース板3、底板4およびカバー6による構成だけに限定されない。例えば、底板4およびカバー6を一体的に構成し、後にヒーターユニットベース板3と組み合わせることによって筐体を構成してもよい。
次に、図1(b)のヒーターユニット12の状態は、エアヒーター1によって加熱された空気をヒーターユニット12の下方へ噴出するためのであり、本状態においてヒーターユニット12の下方に被処理物を配置して加熱処理を行う。
図1(b)に示すように、ヒーターユニット12は、エアヒーター1のエア噴出口を突出させるべく、移動機構2によって突出口5aの方向へ移動されている。すなわち、移動機構2は、突出口5aおよびエアヒーター1の相対距離を変化させている。上記ヒーターユニット12の移動に伴い、蓋材11も同時に移動している。
ところで、エアヒーター1が上方に位置している待機状態(図1(a)を参照)では、上部ガス導入口8は蓋材11によって開口が狭まり、主たる冷却ガスの導入口は下部ガス導入口9である。一方、エアヒーター1が下方に位置している処理状態(図1(b)を参照)では、下部ガス導入口9が蓋材11によって開口が狭まり、主たる冷却ガスの導入口は蓋材11に覆われていない上部ガス導入口8となる。すなわち、図1(a)の待機状態と、図1(b)の処理状態とにおいて、上部ガス導入口8および下部ガス導入口9の蓋材11による被覆状態は異なっている。
ヒーターユニット12では、上記のように移動機構2によってエアヒーター1が移動すると共に、蓋材11が移動して上部ガス導入口8および下部ガス導入口9の開閉状態が変更される。このように、両ガス導入口の開閉状態が変更されることによって、冷却ガス流路が変更される。筐体内には、部分的に高温になる箇所が生じ得るが、上記のように冷却ガス流路が変更されることによって、冷却ガスをより広範囲に導入することができ、排熱効率を向上させることができる。
また、上記冷却流路の変更は、上記のように、熱量の発生態様が大きく異なる両状態においてなされていることが好ましい。上記の両状態に関して冷却ガス流路を変更することによって、排熱効率を非常に大きく向上させることができる。
ヒーターユニットの変形例として、図2に示すヒーターユニット12aのように、ヒーター1およびこれを固定保持する機構部品類が、上部ガス導入口8および下部ガス導入口9の付近に配置され、エアヒーター1によって開閉状態が変更するような配置であってもよい。
図2を用いて、具体的な構成を説明する。図2(a)はエアヒーター1が移動機構(移動手段)2によって上方に配置された状態でヒーターユニット12の筐体内に格納されている状態を示す断面図である(待機状態)。一方、図2(b)はシャッター5を開いて開口させた状態でエアヒーター1を移動機構2により下方に配置した状態を示す断面図である。
図2(a)はエアヒーター1が上方に配置されている状態であり、上部ガス導入口8がエアヒーター1を保持固定する機構部品により遮蔽されており、相対的に開口状態にある下部ガス導入口9が主たるガス導入口となる。また、図2(b)はエアヒーター1が下方に降りた状態であり、下部ガス導入口9がエアヒーター1によって遮蔽され、相対的に開口状態にある上部ガス導入口8が主たるガス導入口となっている。ガス導入口の変更は異なるものの、排熱効率を向上させる効果は図1と同じであるため、排熱に関する説明を省略する。
なお、本発明に係るヒーターユニットでは、ガス導入口(上部ガス導入口および下部ガス導入口)は少なくとも1箇所形成されていれば、筐体内に冷却ガスを導入することができ、ヒーターユニットの周囲への熱伝播を抑制することが可能である。ガス導入口が1箇所である場合、蓋材11は不要である。しかしながら、排気効率の観点から、ガス導入口は3箇所以上設けられていてももちろんよい。
〔インクジェット塗布装置〕
次に、本実施の形態に係るインクジェット塗布装置14について説明する。図3は、インクジェット塗布装置14を示す斜視図である。図3に示すように、インクジェット塗布装置14は、基板15を載置するステージ16、基板15にインクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットユニット13、ヒーターユニット12b、インクジェットユニット13をx軸方向に移動させる駆動部17a、および、インクジェットユニット13をy軸方向に移動させる駆動部17bを備えている。
また、図4は、図3におけるインクジェットユニット13の内部構造を示す透過斜視図である。図4に示すように、インクジェットユニット13は、インクジェットヘッド18、インクジェットヘッド18を上下方向に昇降させる昇降機構(昇降手段)19を基本構成とし、さらにノズル保湿部(ノズル保湿手段)20が、ノズル保湿部20を駆動させるノズル保湿部駆動機構21上に搭載されている。
さらに、インクジェットユニット13に隣接してヒーターユニット12bが配置されており、昇降機構(昇降手段)19が設置されているインクジェットユニットベース板(固定部材)22の裏面にヒーターユニット12bのヒーターユニットベース板3が固定されている。上記ヒーターユニット12bとインクジェットユニット13とは連結されている。
なお、図4に示す配置構成においては、ヒーターユニット12へ冷却ガスを導入するためのガス供給口7に図示しない冷却ガス配管が接続できるように、インクジェットユニットベース板22にはガス供給口23が設けられている。これによりガス供給口23を通じて上記冷却ガス配管がヒーターユニット12bへと接続可能である。上記のように、図1にて説明したヒーターユニット12とは異なり、ガス供給口7は、ヒーターユニットベース板3に設けられていない構成とすることもできる。
インクジェットユニット13に連結されたヒーターユニット12bについて、以下説明する。図5は、ヒーターユニット12bを示す断面図である。ヒーターユニット12bは、ヒーターユニット12と基本的な構成が同じであり、共通する部材については同一の部材番号を付してその説明を省略する。ヒーターユニット12bの筐体は、微小液滴を吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットユニットに固定されるインクジェットユニットベース板22を含んでおり、インクジェットユニットベース板22は、ガス導入口である上部ガス導入口8および下部ガス導入口9へ冷却ガスを供給するガス供給経路の少なくとも一部を形成している。
上記の構成によれば、ヒーターユニット12bが待機状態となった際に、エアヒーター1が空気を加熱するに従って、筐体内に加熱空気が生じる。しかしながら、ガス排出口10からの排熱に加えて、ガス供給口23から供給される冷却ガスがインクジェットユニットベース板22を空冷することができる。これらの作用によって、インクジェットユニットベース板22を通じて、熱伝導する熱量を非常に低く抑えることが可能である。従って、インクジェット塗布装置14によれば、特に高精度の位置精度で液滴塗布が要求される場合などに、熱膨張などによってインクジェットヘッド18の位置ずれ量を抑制させる効果を得ることができる。
或いは、図6のヒーターユニット12cのように、ガス供給口23は複数あってもよい。図6は、ヒーターユニット12cを示す断面図である。図6においてはガス供給口23が上下2箇所配置され、点線で示すガス経路が分岐して2箇所のガス供給口23にそれぞれ接続されている。
次に、図3および図4を参照して、インクジェット塗布装置14の処理動作を説明する。図示しないコントロールユニットからの制御信号に基づいて、x軸方向に移動させる駆動部17aおよびy軸方向に移動させる駆動部17bが駆動してインクジェットヘッド18が移動し、所望の処理位置上、すなわち、基板15上の被処理物の位置上となるようにインクジェットユニット13が移動する。上記コントロールユニットは、CPU(central controlling unit)などから構成された公知の制御ユニットを用いることができる。
このとき、エアヒーター1およびインクジェットヘッド18は待機状態にある。すなわち、エアヒーター1は移動機構2に、インクジェットヘッド18は昇降機構19にそれぞれ移動されてヒーターユニット12およびインクジェットユニット13内に格納されている。なお、インクジェットユニット13においては、ノズル保湿部20がインクジェットヘッド18下面のノズル部(図示せず)付近へとノズル保湿部駆動機構21により移動することができる。ノズル保湿部20がインクジェットヘッド18に対向する位置に設置されることによって、上記ノズル部でのインクの乾燥および固化を抑制することができる。
本実施の形態に係るノズル保湿部20は、特に限定されるものではなく、例えば、インクジェットヘッド18で使用されるインクの主溶媒を蓄える構造物であって、インクジェットヘッド18のノズル面と対向する位置において、上記主溶媒蒸気が発生する機能を有していればよい。例えばPVA(ポリビニルアルコール)スポンジ等の多孔質部材を溶媒吸収部材としてノズル保湿部20に配置し、該溶媒吸収部材に主溶媒を蓄えて上部から蒸気が発生する構造を用いればよい。また、上記主溶媒を定期的に供給するための配管および溶媒供給システムを別に備えていてもよいし、上記溶媒吸収部材下に溶媒貯留空間が設けられた溶媒を溜め込む構造を備え、溶媒補給の頻度を下げる構造としてもよい。上記ノズル保湿部20によってインクジェットヘッド18のノズル部を保湿する保湿方法は、インクジェット技術に係る公知の保湿手法を用いればよい。また、必要に応じて予備吐出の検査を行うことのできる機能をノズル保湿部20に付与してもよい。
そして、インクジェットユニット13が所望の位置に移動した後に、昇降機構19を用いて、インクジェットユニット底板24の開口部25から下方へインクジェットヘッド18を降下させて、図示しないインク供給システムによりインクをインクジェットヘッド18へ供給するとともに、インクジェットヘッド18を動作することにより、基板15へ微小液滴を吐出して所望の塗布動作を行う。
上記インクジェットヘッド18を用いた塗布動作が完了した後は、再度待機状態に戻せばよい。すなわちインクジェットヘッド18を再度上昇させ、ノズル保湿部20をインクジェットヘッド18のノズル面付近に対向するように配置させておく。
一般的なインクジェット技術においては、インクジェットヘッドと基板等の対象物とのギャップは1mm以下程度の狭ギャップに設定した状態で微小液滴を吐出する。この状態でエアヒーターから高温のガスを基板上の被処理物に吹き付けた場合、高温のガスがインクジェットヘッドへと到達して引火の危険がある、或いはインクジェットヘッドのノズル付近のインクが乾燥して正常な吐出動作が可能な状態を保持することができない、という問題が発生し得る。
インクジェット塗布装置14では、インクジェットヘッド18を昇降させる昇降機構19を備えており、インクジェットヘッド18が微小液滴の塗布処理を終了した後にインクジェットヘッド18を上昇させて退避させることが可能である。これにより、エアヒーター1から噴出される高温のガスがインクジェットヘッドに到達することを抑制することができる。つまり、インクジェット塗布装置14の安全性、および正常な動作が可能な状態での保持性能を向上させることが可能である。
かかる待機状態へ戻る動作と並行して、或いは動作が完了した後に、x軸方向に移動させる駆動部17a、y軸方向に移動させる駆動部17bによりエアヒーター1を上記液滴塗布位置上に配置させる。
また、上記移動動作と並行して、或いは動作が完了した後に、ヒーターユニット12のエアヒーター1にエアを供給すると共に、エアヒーター1への通電を開始させ、温度上昇させる。
エアヒーター1から噴出させる加熱空気は、エア噴出口付近に設置された図示しない熱電対により温度を計測し、通電量を制御することで所望とする設定温度に到達させ、温度を保持させる。そして噴出する空気が所定の温度に到達して安定した後に、シャッター5を動作させて開口状態とし、ついで移動機構2によりエアヒーター1を降下させる。上記操作は、熱電対の温度に係る出力信号を受信した上記図示しないコントロールユニットによって制御がなされる。
これにより、塗布した微小液滴に対して所定温度に加熱した熱風を吹き付けることができ、上記微小液滴を加熱して溶質成分の焼成を行うことができる。なお、ヒーターユニット12に導入する冷却ガスは、ガス供給口23から常時供給しておけばよい。以上のように本実施の形態に係るインクジェット塗布装置14においては、インクジェットヘッド18による微小液滴の特定位置への高精度の塗布動作と、塗布した微小液滴をエアヒーター1により直接的に焼成する動作との2つの処理動作を行うことが可能となる。
上記のように液滴の塗布動作は、インクジェットヘッド18によって行う。一方、塗布動作の間、基板15上にインクの主要な溶媒成分が揮発して蒸気濃度が高くなっている状態では、エアヒーター1をヒーターユニット12b内に格納して退避させておくことができる。
ここで、ヒーターユニット12bに冷却ガスを常時供給しておけば、ヒーターユニット12bの内部は、圧力が外部よりも常に高くなり、外部へとガスが流れ出ることとなる。つまり、ヒーターユニット12bに対して加圧防爆を施していることになるので、上記インクの主要な溶媒成分がヒーターユニット12bの内部に侵入することを抑制する効果がある。
また、上記の一連の処理動作においてはエアヒーター1をヒーターユニット12b内に格納した状態にて、エアヒーター1への通電を開始する。このような通電を従来のエアユニットで行った場合、エアヒーターから徐々に高温のガスがヒーターユニット12bの内部に噴出する事態が発生することが想起される。
しかしながら、本実施の形態に基づくヒーターユニット12bにおいては、以下に示す効果により、効果的に熱量を排熱する或いは、伝熱による周辺の構造物への熱伝導を抑制する効果がある。
すなわち、本実施の形態に基づくヒーターユニット12bでは、エアヒーター1が格納されている状態で、冷却ガスは下部ガス導入口9を主たるガス導入口としてヒーターユニット12内に導入される。このとき、冷却ガスのガス流路は下部ガス導入口9に対向して配置されるガス排出口10へと直線的に形成される。エアヒーター1から噴出される高温のエアが形成する流路は、冷却ガスの冷却ガス流路と交差して、加熱空気と冷却ガスとの混合が生じ、ガス温度を低下させる。
さらに、エアヒーター1から噴出する高温の加熱空気の流量よりも十分に多量の冷却ガスを導入すれば、冷却ガスのガス流路をほぼ変化させず、冷却ガスをガス排出口10に到達させて外部に排出することができる。つまり、冷却ガスによって、エアヒーター1から噴出する高温のガスを短距離でガス排出口10へと押し流して外部に放出することができるので、排熱の効果が高く、ヒーターユニット12bの温度上昇を抑制させることができる。
また、エアヒーター1を降下させて焼成処理を行っている状態では、主たるガス導入口として上部ガス導入口8から冷却ガスがヒーターユニット12内に導入される。本処理状態では、エアヒーター1から噴出する高温の加熱空気はヒーターユニット12bの外部に放出されるので、ヒーターユニット12の温度を上昇させる熱量成分として無視してよい。本処理状態では、エアヒーター1の抵抗加熱部が配置される付近の筒側面部が主要な熱量発生部となる。
本実施例に基づくヒーターユニット12では上部ガス導入口8から導入された冷却ガスは、エアヒーター1の長手方向に沿って下方に進み、ガス排出口10から放出されるので、上記主要な熱量発生部に沿って冷却ガスを流すことで効果的に排熱することが可能となる。またヒーターユニット12内の空間の温度分布としては、上部空間の温度が高くなるが、本状態により、効率的に排熱を行うことが可能である。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。