(実施の形態1)
本発明の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。図1は、本発明の実施の一形態に係る液体塗布装置の概略構成を示す斜視図である。
本実施の形態にかかる膜形成装置1は、インクジェットヘッド10を備え、インクジェットヘッド10によりインクを基板20へ吐出することで、基板20の面にインクが塗布される。この膜形成装置1は、インクジェットヘッド10、基板20を保持するステージ30、吐出制御回路40、エアヒーター50、ブロアー51、観察用カメラ60、キャリッジ70、ガントリ80、および制御部90を備えている。吐出制御回路40は、インクジェットヘッド10におけるインク吐出を制御する。また、キャリッジ70は、インクジェットヘッド10、エアヒーター50、ブロアー51及び観察用カメラ60を固定する部材である。また、ガントリ80は、キャリッジ70を保持する部材である。
インクジェットヘッド10は、その液体(インク)吐出口がステージ30上に配置された基板20と対向するように、キャリッジ70に固定されている。インクジェットヘッド10は、吐出制御回路40に接続されており、吐出制御回路40から送信される吐出信号に応じて液体を吐出する。本実施の形態の膜形成装置1では、インクジェットヘッド10としてシェアモード型のインクジェットヘッドが使用されており、吐出制御回路40から送信される吐出信号として、パルス電圧が用いられている。なお、図1においては、基板20におけるインクジェットヘッド10と対向する面に対し垂直な方向をZ軸方向とし、基板20の長尺方向(長手方向)をX軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に対し垂直な方向をY軸方向としている。Y軸方向は、基板20の幅方向であるといえる。
基板20は、図示しないロボット等の搬入出手段により、ステージ30上に配置される。ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80は、制御部90に接続されている。制御部90は、ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80の位置を制御する。
ステージ30には、例えばリニアスケールを持ったステージを採用することができる。この場合、ステージ30は、エンコーダのパルス信号によって、その移動が制御される。また、制御部90には、例えばパソコン(PC)を使用することができる。
吐出制御回路40は、制御部90に接続されており、制御部90から送信された信号に応じて、吐出信号をインクジェットヘッド10へ送信する。吐出信号のパラメータは、吐出制御回路40内のメモリーに保持されている。また、吐出信号のパラメータ書き換えは、制御部90から送信されるパラメータ変更信号によって実施される。なお、パラメータ変更信号は、制御部90内で作成される。
エアヒーター50、およびブロアー51はインクジェットヘッド10と同様に、キャリッジ70に固定されている。このため、液体塗布装置1にキャリッジ70が搭載された後、インクジェットヘッド10とエアヒーター50およびブロアー51との相対位置は変わらない。
エアヒーター50は、その内部に気体供給口と気体吹出口と抵抗発熱体とK型熱電対とを有する加熱気体吹きつけ手段を備えている。K型熱電対は、抵抗発熱体近傍に配置されるとともに、図示しない温度調整用コントローラーに接続されている。また、抵抗発熱体は、K型熱電対と同様に、温度調整用コントローラーに接続されており、温度調整用コントローラーがK型熱電対から得られる起電流を読み取り、温度変換するとともにあらかじめ設定された温度になるよう、抵抗発熱体に印加する電流量を制御する。
また、エアヒーター50は図示しない気体配管に接続され、外部から例えば工場圧縮空気等の気体が供給される構成である。気体はエアヒーター50の気体供給口から供給され、内部の抵抗発熱体で加熱された後、気体吹出口から排出される。排出される気体の温度は、図示しないレギュレーター等の気体供給量調整手段と抵抗発熱体の温度により設定される。
コントローラーは、例えば制御部90などの外部制御手段に接続され、そこで温度条件が設定される。加熱の開始、終了については外部制御手段からコントローラーに信号が送信され、その信号を基に上記コントローラーが抵抗発熱体に流れる電流のON/OFFを設定する。エアヒーター50には、例えばインフリッジ工業製スーパーエアヒーターMAXを用いることができる。
ブロアー51は、気体供給口と気体吹出口とを備えた気体吹きつけ手段を備え、外部から供給される気体を基板20上に局所的に吹きつけるために設けられている。ブロアー51は、気体を吹きつけることが可能な構成であればよく、例えば配管をつないだだけの構成であってもよい。本実施の形態では、ブロアー51として、エアヒーター50と同じインフリッジ工業製スーパーエアヒーターMAXを用いることができる。
観察用カメラ60は、インクジェットヘッド10と同様に、キャリッジ70に固定されている。このため、液体塗布装置1にキャリッジ70が搭載された後、インクジェットヘッド10とエアヒーター50、ブロアー51および観察用カメラ60との相対位置は変わらない。また、観察用カメラ60付近には、図示しないファイバーランプ等の照明手段が取り付けられている。そして、観察用カメラ60には、照明手段により照らされた基板20の反射像が撮像される。また、観察用カメラ60は、制御部90に接続されている。観察用カメラ60により撮像された画像は、制御部90内で画像処理される。そして、これにより、制御部90を通じて、基板20内のパターンのサイズ及び形状を認識することができる。
また、キャリッジ70は、ガントリ80に固定されている。ガントリ80は、ステージ30を幅方向(Y軸方向)に跨ぐように設けられている。換言すると、ガントリ80は、その長尺方向が基板20の長尺方向と直交するように配置されている。キャリッジ70は、ガントリ80の長尺方向(Y軸方向)に可動するようになっている。また、ステージ30は、その長尺方向(X軸方向)に可動するようになっている。これによって、インクジェットヘッド10、エアヒーター50、ブロアー51及び観察用カメラ60は、基板20上における任意の箇所の上方に配置されることになる。なお、本実施の形態では、膜形成装置1におけるステージ30とガントリ80との両方が移動可能になっている構成である場合について、説明する。しかしながら、膜形成装置1は、ステージ30とガントリ80とのどちらか片方が移動可能になっている構成であってもよい。
次に、本実施の形態の膜形成装置1を用いた、基板20上への膜形成方法について説明する。本実施の形態の膜形成方法では、液体を塗布する基板20として、液晶パネル等に用いるTFT基板の製造工程におけるゲート絶縁膜形成後の基板を用い、インクジェットヘッド10から吐出する液体として、絶縁材料を含むインクを用いている。そして、本実施の形態にかかる膜形成方法の一例として、絶縁膜欠損部の修正を目的とした膜形成方法について説明する。
膜形成方法においては、まず、絶縁膜欠損部を有する基板20が、図示しないロボット等の搬入出手段によりステージ30上に配置される。このとき、基板20の画素サイズ、絶縁膜欠損部の位置情報等は、図示しない外部入力手段から制御部90へ転送される。
次に、基板20の絶縁膜欠損部を観察用カメラ60で撮像し、制御部90にて撮像画像の画像処理を実施し、制御部90の図示しない表示部に表示する。これにより、基板20における絶縁膜欠損部のサイズ及び形状を認識することができ、インクジェットヘッド10によりインクを吐出・塗布する位置を決定することできる。
絶縁膜欠損に起因するパネル不良のモードは、ゲート配線−ソース配線のリークに代表される上下配線のリークにより、線欠陥になることである。このため、絶縁膜修正を目的とした膜形成方法では、後の工程で上部に配線が形成されると想定される、絶縁膜欠損部の箇所に、絶縁材料を含む液体を塗布し、乾燥させることで膜を形成する。これにより、上下配線のリークを防ぐことができる。それゆえ、インクジェットヘッド10によりインクを吐出・塗布すべき位置(修正箇所)は、ゲート線や保持容量線とソース線とが交差する交差領域(クロス部)と、絶縁膜欠損部領域とが重なった位置である。
インクジェットヘッド10によりインクを塗布すべき修正箇所の詳細な位置情報は、装置オペレータによる入力、または撮像画像の基板20のパターンに基づく自動算出によって、制御部90内に保持される。基板20の全絶縁膜欠損部について、インクジェットヘッド10でインクを塗布すべき修正箇所の詳細な位置情報の入力が完了した後、入力された修正箇所について、塗布順序及び塗布条件(レシピ)を決定する。塗布順序は、制御部90により、ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80の移動量が最小になるように決定される。塗布条件は、予め決められた条件が自動選択される。
塗布順序及び塗布条件(レシピ)を決定した後、このレシピに従い、インクジェットヘッド10のインク吐出口が修正箇所の上方にくるように、ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80を移動する。移動完了後、制御部90は、ステージ30等から送信される静定信号を受け取り、吐出制御回路40に吐出開始信号を送信する。吐出開始信号を受け取った吐出制御回路40は、内部に保持している吐出パラメータに従い、吐出信号をインクジェットヘッド10に送信する。インクジェットヘッド10は、吐出信号を受信すると、液体(インク)を吐出する。
次に、インクジェットヘッド10によりインクを吐出・塗布すべき位置(修正箇所)を決定する方法、すなわち、基板20内の絶縁膜欠損領域において、修正箇所の詳細な位置情報を割り出す方法について説明する。図2は、本実施の形態で使用した基板20のある絶縁膜欠損領域を観察用カメラ60によって撮像した画像を、模式的に示した模式図である。
図2に示すように、本実施の形態で使用する基板20を観察用カメラ60で観察したとき、配線パターン201、および絶縁膜欠陥領域としての膜欠損部202を確認することができる。なお、図2では、後の工程で形成予定のソース線203が示されている。
ソース線203を図2に示すように形成する予定である場合、ソース線203と配線パターン201とが交差するクロス部204は、図2に示すように、20箇所存在することになる。これらクロス部204のうち、絶縁膜修正対象となる修正クロス部205は、膜欠損部202の領域内に存在する。図2に示された例では、修正クロス部205は3箇所である。本実施形態の膜形成方法では、これら修正クロス部205のそれぞれについて、予め設定した塗布条件、加熱条件、冷却条件で、インクの塗布処理、加熱処理、および冷却処理を実行する。
なお、本実施の形態の膜形成方法において、クロス部204の位置は、以下の手順で割り出される。まず、クロス部204の認識のために、予めソース線203が形成されたモデル画像を制御部90内で保持しておく。そして、このモデル画像に基づき、制御部90内で画像処理を行い、配線パターン201の形状から自動的にソース線203の形成予定箇所を認識する。そして、認識されたソース線203の形成予定箇所から、クロス部204の位置を割り出している。
また、修正クロス部205は、装置オペレータにより認識される。具体的には、まず、装置オペレータが膜欠損部202を観察する。そして、上記のように位置が割り出されたクロス部204のうち、膜欠損部202の領域内にあるクロス部204を、修正クロス部205として選択する。しかしながら、修正クロス部205の認識は、装置オペレータによる認識に限定されず、制御部90内での認識であってもよい。例えば、制御部90の画像処理により膜欠損部202の領域を認識し、その領域内にあるクロス部204を、修正クロス部205として認識してもよい。
図3は、クロス部204および修正クロス部205のソース線203の、形成方向の断面図であり、図3(a)は、基板20におけるクロス部204の、ソース線203の形成方向の断面図であり、図3(b)は、基板20の絶縁膜欠損部に存在する修正クロス部205の、ソース線203の形成方向の一例を示す断面図である。
図3(a)に示されるように、基板20は、ガラス基板301、下配線302、絶縁膜303、及び半導体層304を備えている。ガラス基板301の上には、下配線302が形成されている。そして、下配線302の外周を覆うように(下配線302の外周形状に沿って)、絶縁膜303が形成されている。そして、絶縁膜303の上に半導体層304が形成されている。
下配線302は、フォトリソグラフィー及びエッチングを用いて形成することが可能である。例えば、ゲート配線、または保持容量線が、下配線302に該当する。また、絶縁膜303、及び半導体層304の形成には、例えばプラズマCVD装置等の真空装置が使用される。これら絶縁膜303及び半導体層304の両層は、真空装置の同一チャンバーにて成膜される。この成膜に際し、真空装置内に含まれるパーティクル等の異物の付着により、成膜が不完全になることがある。
その結果、図3(b)に示すように、基板20では、正常に、絶縁膜303または半導体層304が形成されない箇所が発生する。このように絶縁膜303または半導体層304が正常に形成されない箇所が、上記膜欠損部202となる。
本実施の形態の膜形成方法では、膜欠損部202の領域内に存在する修正クロス部205を認識し、該修正クロス部205にインクを滴下する。これにより、上記成膜の不完全による絶縁膜303または半導体層304の欠損を修正している。
以下、本実施の形態の膜形成方法の一例として、上記修正クロス部205の修正箇所に絶縁膜を形成する方法について、図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態における絶縁膜修正方法を説明するための模式図である。
図4(a)に示すように、本実施の形態に係る膜形成方法では、まず、第1の塗布工程が実施される。第1の塗布工程では、修正クロス部205の上方にインクジェットヘッド10がくるように、ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80を移動させる。そして、予め設定された塗布条件で、インクジェットヘッド10からインク滴100を吐出し修正クロス部205に塗布液110を塗布する(塗布工程)。
1つの修正クロス部205(修正箇所)について、塗布工程が完了すると、加熱工程が実施される。加熱工程では、図4(b)に示されるように、エアヒーター50が修正クロス部205の上方にくるように、ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80を移動する。エアヒーター50の移動が完了した後、制御部90は、ステージ30等から送信される静定信号を受け取り、図示しない高さ調整機構によりエアヒーター50と基板20との距離(GAP)を任意の値に調整する。その後、エアヒーター50が接続されたコントローラーに加熱開始信号を送り、予め設定された加熱条件で修正クロス部205を加熱する。このことにより、インクジェット10から修正箇所に塗布された塗布液110の溶媒が蒸発し塗布膜120が作製される。
エアヒーター50による加熱が完了すると、加熱箇所を冷却する冷却工程が実施される。図4(c)に示されるように、ブロアー51が修正クロス部205の上方にくるように、ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80を移動する。ブロアー51の移動が完了した後、制御部90は、ステージ30等から送信される静定信号を受け取り、図示しない高さ調整機構によりブロアー51と基板20との距離(GAP)を任意の値に調整する。その後、ブロアー51による気体吹きつけが開始され、修正クロス部205が冷却される。なお、ブロアー51による気体吹きつけ冷却は、予め設定された流量、時間(冷却条件)で行われる。
このようにして、1つの修正クロス部205(修正箇所;第1の塗布対象箇所)について、インクジェットヘッド10からのインクの塗布(第1の塗布工程)、エアヒーター50による加熱(加熱工程)、ブロアー51による気体吹きつけ冷却(冷却工程)が完了する。その後、インクジェットヘッド10を次の修正クロス部205(第2の塗布対象箇所)の上方に移動させて、インク滴を吐出し塗布液110を塗布する(第2の塗布工程)。
そして、すべての修正クロス部205についてインクの塗布、エアヒーター50による加熱、ブロアー51による気体吹きつけ冷却が完了すると、図示しない基板搬送手段により基板20が搬送され、次の基板20が搬入される。
上述の膜形成方法は、修正クロス部205同士の間隔Pと塗布液110の濡れ広がり径(直径)Dとの関係が下記式(1)
P ≦ D (1)
で表される条件で塗布膜120を形成する場合、特に有効である。すなわち、1つの修正クロス部205(第1の塗布対象箇所)について塗布液110を塗布する第1の塗布工程、および他の修正クロス部205(第2の塗布対象箇所)について塗布液110を塗布する第2の塗布工程との間に、加熱工程、および冷却工程を実施することで、修正クロス部205それぞれに形成された塗布膜120の膜厚・形状を均一化することができる。加熱工程により、第1の塗布工程にて塗布された塗布液110を乾燥し塗布膜120を形成しているので、この塗布膜120は、第2の塗布工程にて塗布された塗布液110により溶解せず、膜形状が変化することがない。また、第2の塗布工程にて塗布液110を塗布する前に、冷却工程を行って他の修正クロス部205を冷却し加熱前の温度に戻しているので、基板温度の影響により塗布液110の濡れ広がりや乾燥挙動が変化し膜厚・膜形状が変動することがない。それゆえ、第2の塗布工程にて塗布された塗布液110を乾燥させた塗布膜120は、先の加熱工程にて作成した塗布膜120と大差ない膜厚・膜形状になる。以下、加熱工程および冷却工程について、さらに詳述する。
図5は、加熱工程の必要性を説明するための模式図であり、図5(a)は、加熱工程を行わない場合の膜形成方法を示し、図5(b)は、図5(a)の方法で発生する問題を示し、図5(c)は、加熱工程における加熱条件が不適切で加熱が不十分である場合に発生する問題を示す。ここでは、膜形成条件として、図2に示されるように、塗布すべき修正クロス部205が隣接して複数個所存在し、かつ、これら修正クロス部205の間隔Pが、塗布されたインクのサイズ(濡れ広がり径D)よりも小さい場合について考える。また、図5(a)〜(c)においては、濡れ広がり径Dよりも小さい間隔Pで離間している修正クロス部を、修正クロス部205a・205bとしている。
図5(a)に示されるように、1つの修正クロス部205a(塗布箇所)にて塗布工程を行い、加熱工程および冷却工程を行わずに、次の修正クロス部205bにてインク滴100を吐出する。このとき、以下の問題が発生する。
図5(b)に示されるように、先の塗布工程により修正クロス部205aに塗布した塗布液110と、次の塗布工程で塗布すべき修正クロス部205bに吐出するインク滴100とが合体し一つの塗布液110となってしまう。このため、形成される塗布膜の形状が歪になるといった問題が発生する。
上記のように塗布液100同士を合体させないためには、修正クロス部205aに塗布した塗布液110が合体しないように、塗布液110表面を乾燥させてから、次に塗布すべき修正クロス部205bにインク滴100を吐出する必要がある。すなわち、図2に示されるように基板に複数の修正クロス部205が存在し、修正クロス部205毎に液体を塗布する塗布工程を行う場合において、塗布液110の塗布エリア内に他の修正クロス部205が存在するとき、塗布エリア内の塗布液110の表面が膜化した後に、他の修正クロス部205に対し塗布工程を行う必要がある。
ここで、前に塗布した液滴が次に塗布する液滴と合体しないよう乾燥させる工程を、以下に乾燥工程として説明する。
乾燥させる方法としては、所定時間以上の間隔で自然乾燥する方法の他に、強制的に乾燥する方法が挙げられる。強制的な乾燥方法としては、レーザー光や近赤外ランプなどの光を用いた乾燥方法や、気体を塗布液滴近傍に供給することで強制的に液体近傍の溶媒蒸気を遠方へ排出させ蒸発を促進させる方法、さらには供給する気体を加熱しておき加熱気体からの熱放射によって液体を加熱し乾燥させる方法が挙げられる。
しかしながら、自然乾燥させる方法、或いは非加熱の気体を供給する方法では、乾燥効率が悪く、短時間では不完全な乾燥状態になる。図5(c)に示されるように、先に修正クロス部205aに形成した塗布膜120’の乾燥状態が不完全である場合、この塗布膜120’は、後から修正クロス部205bに塗布された塗布液110によって再度溶解することになる。その結果、塗布膜120’の膜形状が変わるといった現象が見られる。
この現象は、インクジェットで使用するインクの性質と相反する現象である。すなわち、自然乾燥させる方法、或いは非加熱の気体を供給する方法により効率良くインクの乾燥をすすめるためには、蒸発の速いインクを使用する必要がある。しかし、蒸発の速いインクを使用した場合、インクジェットヘッドのノズル部でのインクの乾燥が顕著になり、ノズル詰まりを発生させる確率が高くなる。言い換えれば、インクジェットで使用するインクを、自然乾燥させる方法、或いは非加熱の気体を供給する方法により短時間で乾燥させることは困難である。また、自然乾燥させる方法、或いは非加熱の気体を供給する方法の生産装置等への適応は、乾燥のための処理時間(タクト)が長くなるため、非効率的であり、実用に供し得ない。このため、加熱工程でのインクの乾燥は、自然乾燥させる方法、或いは非加熱の気体を供給する方法よりも、光を用いた乾燥方法、あるいは加熱気体を供給する方法が好ましい。
光を用いた乾燥方法、あるいは加熱気体を供給する方法では、塗布液滴も加熱されるため、蒸発速度が速くなり、結果としてインクの乾燥時間を速くすることができる。その一方で、液滴とともに基板、ステージ等の温度も上昇するため、次の液滴を塗布したとき、塗布液の濡れ広がりが小さくなる。その結果、塗布膜の膜厚が厚くなるといった、膜厚変動が発生する。特に、後工程の制約条件などから、膜厚に許容範囲があるプロセスでは、膜厚変動は大きな問題となる。本実施形態の膜形成方法では、1つの修正クロス部205について塗布液110を塗布する第1の塗布工程、および他の修正クロス部205について塗布液110を塗布する第2の塗布工程の間に、加熱工程を行い、さらに基板温度を加熱前の温度に極力近づける冷却工程を実施する。このため、上記膜厚変動を防止することができる。
また、加熱工程で使用される加熱方法は、加熱気体を供給する方法が好ましい。具体的には、エアヒーター50としてインフリッジ工業製スーパーエアヒーターMAXを使用する。例えば図1に示される膜形成装置を用いた場合、加熱工程−冷却工程を繰り返すことは、ステージ30等に熱ストレスを加えることになる。特に、ランプ等の光を用いた乾燥方法では、基板20がガラス等の透明材料で構成されていると、ステージ30による光吸収をさけることができず、ステージ30の瞬間的な温度上昇が発生する。このため、ステージ30に大きな熱ストレスが印加され、ステージ30の疲労・破壊等の原因となる。一方、加熱気体を供給する方法では、ステージ30よりも先に基板20が加熱される。そして、その後の熱伝導によりステージが加熱されるが、光吸収に対する温度上昇よりも、加熱温度の調整が容易なため、より熱付加が小さい条件で加熱させることができる。
ここで、加熱工程における加熱条件、および冷却工程における冷却条件の調整方法について説明する。まず、加熱工程における加熱条件の調整方法について説明する。
加熱工程における加熱は、エアヒーター50によって行われる。エアヒーター50による乾燥条件は、抵抗発熱体に図示しないK型熱電対を取り付け、熱電対を図示しない温度調整用コントローラーに接続し、流れる電流量を調整することで設定され、予め設定された温度を保つように調整される。コントローラーは、例えば制御部90などの外部制御手段に接続され、そこで温度条件が設定される。加熱の開始、終了については外部制御手段からコントローラーに信号が送信され、その信号を基に上記コントローラーが抵抗発熱体に流れる電流のON/OFFを設定する。
風量はエアヒーター50に接続している図示しないレギュレーター等の風量調整手段により制御される。気体の供給については、例えば電磁弁等の自動開閉手段を制御部90などの外部制御手段に接続し、開閉を制御する。冷却工程で使用されるブロアー51についても同様の構成である。
次に、エアヒーター50の取り付け位置と、加熱乾燥位置との調整について以下に説明する。調整時には図示しない調整エリアに配置された調整用基板内の温度測定器の略直上にエアヒーター50を配置する。調整用基板としては、例えば本実施形態で使用した基板20と同材質であり、その上に温度測定器としてK型熱電対を取り付けた基板などが用いられる。また、位置調整では、まず、機械座標の読み取りにより、エアヒーター50の直下に熱電対が配置されるようにキャリッジ70を移動し、エアヒーター50を加熱し温度が安定した状態の熱電対の値を読み取る。次に、エアヒーター50の加熱を止め、基板温度が加熱前の温度に戻った後、エアヒーター50または調整用基板を微小移動させ、その相対位置を変化させる。その後、再度加熱し温度を測定する。これを繰り返すことにより、エアヒーター50と調整用基板との相対位置関係と、温度との関係を測定することができ、最も温度が高くなる位置関係を実際の加熱工程で用いている。
エアヒーター50による加熱温度は、高ければ高いほど塗布液110の乾燥速度が速くなるため好ましい。その一方で、必要以上の加熱は基板20やステージ30にダメージを与える。また、加熱温度が低すぎると塗布液110の乾燥速度が遅くなり、タクトが長くなる、あるいは乾燥が不十分な状態で次の塗布液110が接触し、再溶解するといった問題が発生する。このため、加熱温度の調整が必要である。
次に、加熱工程におけるエアヒーターによる加熱の一例について、説明する。本実施の形態においては、一例として、使用されるステージ30の耐熱温度が220℃であることから、安全を見越し200℃を超えない条件で加熱する。また、本実施の形態で使用されるエアヒーター50は口径6mmであり、加熱は、風量5L/min、基板との距離(GAP)10mmの条件で行われた。また、エアヒーター50の発熱体に取り付けられた熱電対による指示温度は290℃であり、この際の基板面の温度はおよそ180℃である。なお、図6は、エアヒーター50の温度と時間との関係を示すグラフである。図6に示されるように、エアヒーター50による加熱開始から45秒経過後、温度変化が比較的安定し基板面は180℃に維持されている。本実施の形態では、基板面の温度として、エアヒーター50による加熱開始から45秒経過後の温度を採用している。
また、エアヒーター50による加熱時間は、塗布膜120が再溶解しないためには長く設定したほうが望ましい。その一方で、加熱時間を必要以上に長くするとタクトが長くなり、生産効率が悪くなるといった問題がある。このため、加熱時間として、生産プロセス上問題のない条件を採用する必要がある。ここで問題となるのは、乾燥不十分による再溶解等のために発生する塗布膜120の形状変化である。それゆえ、エアヒーター50による加熱時間は、乾燥時間に対する膜形状の変化量から決定される。
以下に、加熱時間を決定した方法について説明する。図7は、本実施の形態におけるエアヒーター50の加熱条件で乾燥させた場合の、加熱時間と最大膜厚との関係を示すグラフである。各加熱条件について、膜欠損のないクロス部204にインクジェットヘッド10を用いてインク滴100を吐出し、塗布膜120のサンプルを作製した。さらに、各サンプルの断面形状を接触式段差計により測定することで、各加熱条件での塗布膜120の最大膜厚を測定した。さらに、各加熱条件のサンプルの断面形状を測定後、ホットプレートにより180℃で1時間追加加熱した。追加加熱した後の塗布膜120のサンプルについても、同様の方法で断面形状を測定した。
図7からわかるように、加熱時間が50秒までの塗布膜120のサンプルは、ホットプレートによる追加加熱により最大膜厚が変化している。これは、塗布膜内にインク滴100の溶媒成分が残存していることを意味し、塗布膜120の乾燥が不十分な状態であると考えられる。つまり、この条件(加熱時間が50秒未満の条件)下では、塗布膜120の再溶解の危険性があることがわかる。よって、本実施の形態では、塗布膜120が再溶解しない信頼性の高い条件で乾燥させるため、加熱時間を90秒に設定した。
次に、冷却工程における冷却条件の調整方法について説明する。
ブロアー51についても同様に、エアヒーター50と調整用基板との関係を任意の一条件で固定したまま、エアヒーター50によって加熱させた調整用基板を最も速く冷却できるブロアー51と調整用基板との位置関係を見積もる。そして、見積もられた位置関係を本実施の形態の冷却条件として用いている。なお、ブロアー51は口径6mmのものを用いて、風量50L/min、基板20との距離(GAP)30mmで使用している。エアヒーター50を風量5L/min、基板との距離(GAP)10mmで使用しているのは、可能な限り加熱エリアを小さくするとともに、風量を抑制して風による膜形状の歪みを抑制しているからである。また、エアヒーター50に対してブロアー51はできるだけ広域を短時間で冷却する必要がある。このから、ブロアー51は、エアヒーター50による加熱条件に比べ、基板との距離(GAP)を広げ風量を上げている。
なお、ブロアー51の気体吹きつけ手段としてエアヒーター50と同じものを用いる場合には、位置調整の際のみ抵抗発熱体を加熱し、エアヒーター50と同じ位置調整方法をとってもよい。
図8は、エアヒーター50で加熱後、自然放熱させた場合とブロアー51で強制冷却した場合との調整用基板の温度変化を示すグラフである。なお、加熱前の基板温度は23℃であり、エアヒーター50の加熱条件等の他の条件は先に述べたとおりである。
図8に示すように、自然放熱により冷却した場合では、60秒経過後でも基板温度が40℃未満になっていない。これに対し、ブロアー51で強制冷却した場合、20秒経過後には基板温度が30℃以下になり、その後ゆるやかに温度低下している。しかしながら、完全に加熱前の温度に戻るには60秒以上の時間が必要である。このため、プロセスタクト、および塗布マージン等を考慮して、冷却条件を設定する必要がある。
図9は、基板温度に対する、インク滴100の濡れ広がりおよび塗布膜120の膜厚の関係を示すグラフである。図9は、基板温度が23℃であるときの濡れ広がりおよび膜厚を基準とし、各温度での濡れ広がりおよび膜厚の変動率を測定した結果を示すグラフである。
図9からわかるように、基板温度が30℃のときの変動率は、濡れ広がりおよび膜厚ともに5%以内であり、プロセスとして許容できる変動幅であった。しかしながら、基板温度が40℃のときの変動率は、膜厚で20%を超えている。仮にブロアー51による強制冷却を行わなかった場合、1分間自然放熱させた後にインク塗布プロセス(第2の塗布工程)を実行しても、20%以上膜厚が厚い塗布膜が形成されることになる。本実施の形態では、膜厚が厚くなりすぎると、対向のCF基板と接触する、塗布箇所の液晶層が薄くなり液晶ムラが発生する等の問題があり、厳密に膜厚を管理しなければならないプロセスには不適切である。このため、本実施の形態では、ブロアー51により強制的に冷却される冷却工程を導入し、冷却時間を30秒と設定した。
次に、本実施の形態の膜形成方法における加熱工程および冷却工程の効果について、図10〜図13を用いて説明する。加熱工程における加熱条件、および冷却工程における冷却条件は先に説明したとおりである。図10は、本実施の形態の膜形成方法を説明するための図であり、図10(a)は、加熱工程および冷却工程の効果を説明するために塗布イメージを模式的に示した模式図であり、図10(b)は、先に塗布した(第1の塗布工程にて塗布した)塗布膜121の断面形状を測定した結果を示すグラフである。
図10(a)に示されるように、本実施の形態の膜形成方法は、間隔Pだけ離間した2つのクロス部204(第1および第2の塗布対象箇所)に対して、濡れ広がり径(直径)Dの塗布液を塗布する方法である。このとき、間隔Pと濡れ広がり径Dとの関係が下記式(1)
P ≦ D (1)
で表される条件で液体を塗布する。本実施形態の膜形成方法は、上記式(1)の条件で塗布するときに、第1の塗布工程にて、一方のクロス部204(第1の塗布対象箇所)に塗布液を塗布し基板上で濡れ広がった第1の塗布領域を形成する。そして、加熱工程にて第1の塗布領域を局所的に加熱する。さらに、冷却工程にて、この第1の塗布領域を含む温度上昇した領域を冷却する。第1の塗布領域は、加熱工程および冷却工程を経て塗布膜121となる。このように塗布膜121を形成後、第2の塗布工程にて、他方のクロス部204(第2の塗布対象箇所)に塗布液を塗布し基板上で濡れ広がった第2の塗布領域を形成する。この第2の塗布領域についても、加熱工程および冷却工程を実施し塗布膜122を形成する。
ここでは、2つのクロス部204の間隔Pは180μmである。また、第1および第2の塗布工程の塗布条件では、塗布液の濡れ広がり径Dは23℃で220μmである。
図10(b)に示された断面形状は、図10(a)のA−A’方向に測定した結果であり、相対距離105μm〜115μmの場所は、塗布膜121が形成されたクロス部204近傍の膜厚変動率であり、相対距離285μm〜295μmの場所は、塗布膜122が形成されたクロス部204近傍の膜厚変動率に相当する。また、膜厚変動率は、本実施の形態の塗布条件でクロス部204を1箇所塗布したときのクロス部204の領域内で最大となる膜厚を基準とし、そこからの差分をパーセント表記した値である。
図10(c)は、図10(b)の結果を測定方向(A−A’方向)に180μmシフトさせ、第2の塗布工程で塗布し形成した塗布膜122の断面形状の測定結果をイメージしたグラフである。図10(d)は、図10(c)の2つの塗布膜121・122の断面形状を足し合わせた計算結果を示すグラフである。つまり、図10(a)に示すような塗布間隔Pおよび濡れ広がり径Dの条件で本実施形態の膜形成方法を実施した場合、形成される塗布膜121・121は、図10(d)のような断面プロファイルになると予想される。
図11は、比較のため、加熱工程にてエアヒーター50を用いず塗布液を自然乾燥させた場合における塗布膜の断面形状を測定した結果を示すグラフである。なお、図11では、図10(d)に示した計算結果を太線で示している。図11に示された断面形状は、図10(b)〜(c)と同様に、A−A’方向に測定した結果であり、相対距離105μm〜115μmの場所は塗布膜121が形成されたクロス部204近傍の膜厚変動率であり、相対距離285μm〜295μmの場所は塗布膜122が形成されたクロス部204近傍の膜厚変動率に相当する。また、図11においては、加熱工程における自然乾燥時間は90秒であり、冷却工程を実施せず、自然乾燥時間90秒経過後にすぐに第2の塗布工程を実施している。また、図11においては、加熱工程終了後から第2の塗布工程でインクが塗布されるまでの時間は20秒である。この間に、ステージ30、キャリッジ70、及びガントリ80の移動やインクジェットヘッド10の吐出前検査、吐出状況確認、パージメンテナンスが実行される。
図11からわかるように、加熱工程にて自然乾燥させた場合、図10(c)に示された計算結果と比べ、先に塗布した塗布膜121と後から塗布した塗布膜122との重なる部分の膜厚が増えており、後から塗布した塗布膜122の中心膜厚の減少が見られる。このため、単純な塗布膜同士の重なりだけでなく、塗布液122内部の溶質移動等が発生したと考えられる。それゆえ、加熱工程にて自然乾燥させた場合、後から塗布されたインクにより塗布膜121が再溶解し塗布膜122の形状が変化したものと思われる。図10(c)に示された計算結果では、塗布膜121におけるクロス部の膜厚と、塗布膜122におけるクロス部の膜厚とに大きな差は見られない。その一方で、塗布膜121と塗布膜122との重なる部分の膜厚が2倍近く増えている。このため、図10(c)に示された計算結果は、対向のCF基板と接触する、塗布箇所の液晶層が薄くなり液晶ムラが発生する等、プロセスとして大きな問題を発生させるため不適切である。
また、図12は、比較のため、本実施の形態の加熱工程の後、冷却工程として自然放熱を60秒行った後に第2の塗布工程を実施した場合の、塗布膜の断面形状を測定した結果を示すグラフである。なお、断面形状の測定方法や測定位置、塗布膜121および塗布膜122のクロス部の相対距離は、図11の場合と同様である。図12に示されるように、冷却工程として自然放熱を60秒行った場合、塗布膜全体としての膜厚差は、自然乾燥の場合(図11)と比べて小さいものの、塗布膜122のクロス部の膜厚が20%程度増加していることがわかる。
図13は、本実施の形態の加熱工程、冷却工程を実施して作製した塗布膜の断面形状を測定した結果を示すグラフである。なお、断面形状の測定方法や測定位置、塗布膜121および塗布膜122のクロス部の相対距離は、図11および図12の場合と同様である。
図10(c)に示される計算結果は、図10(b)に示された塗布膜121・122同士の重なり合った部分について単純に足し合わせて計算した結果であるため、重なり部分の膜厚変動率が最も高い断面プロファイルになると予想された。それゆえ、本実施形態の膜形成方法を行っても、塗布膜121・122同士の重なり合った部分で膜厚差が生じると予想された。
図13からもわかるように、塗布膜121および塗布膜122においてクロス部の膜厚差が小さく、自然放熱の場合に比べて膜厚、形状に差がない塗布膜を作製することができることがわかる。また、上述のように、図10(d)や図11のように、塗布膜121・塗布膜122同士の重なり合った部分において膜厚が厚くなることが予想された。しかし、前記の予想に反し、塗布膜121・塗布膜122同士の重なり合った部分の膜厚は、想定外に薄くなっている。これは、先に塗布された塗布膜121が高さを持っているため、重なった部分のインクがより低い箇所へ流れ落ちた影響や、加熱工程後の塗布膜121がインク100を弾きやすくなった影響と考えられる。このため、自然乾燥の場合に比べて塗布膜全体の変動量も抑えることができ、厳密に膜厚を制御したプロセスを行うことができる。
また、本実施の形態では、加熱工程で使用する加熱手段として、エアヒーター50を使用し、冷却工程で使用する冷却手段としてブロアー51を使用した。しかしながら、本実施の形態で使用される加熱手段および冷却手段は、これに限定されない。
本実施の形態では、ブロアー51として、エアヒーター50と同じインフリッジ工業製スーパーエアヒーターMAXを使用している。この構成では、ブロアー51をエアヒーター50の予備部品として取り扱うことが可能である。例えば、エアヒーター50の使用時の電流ON/OFFによって、抵抗発熱体が熱膨張、熱収縮を繰り返し、磨耗による断線が発生し加熱できない状況に陥る。この場合、ブロアー51の抵抗発熱体を加熱し、第1の塗布工程後の加熱工程ではブロアー51により加熱乾燥させるよう、装置の制御システムや図示しないレギュレーター等の気体供給手段の気体供給量を変更する。
また、冷却工程で使用する冷却手段は、供給される気体をそのまま吹きつける構成でよいため、抵抗発熱体が断線することで加熱できないようになったエアヒーター50でも使用可能である。この場合、エアヒーター50の抵抗発熱体が断線したことで、装置の稼動を一時停止させ、エアヒーター50を交換するといった作業の発生頻度が半分になる。また、予めシステムとして、エアヒーター50およびブロアー51がその役割を代替できるように組み込んでおけば、エアヒーター50の交換に比べて装置の稼動を一時停止させる時間が短くすることができ、生産効率を向上させることができる。
以上のように、本実施の形態で説明した膜形成装置、および膜形成方法を用いることで、複数の液体塗布対象が存在し、かつ塗布エリア内に他の塗布膜が存在する場合においても、塗布された液体同士が合体することなく、また、塗布膜が再溶解し膜形状が変化することなく、短いプロセスタクトで膜厚、形状を精密に制御された塗布膜を作製することができる。
なお、本実施の形態では、説明の簡便化のためインクジェットによる絶縁膜修復プロセスについて説明したが、これに限定されるものではなく、例えばゲート絶縁膜を形成する方法に適用することができる。すなわち、インクジェットにより絶縁材料を含む液体を、ゲート線とソース線とが交差する領域、若しくは保持容量が形成される領域に滴下することにより、選択的に絶縁膜を形成する方法に、本実施の形態の膜形成方法を適用することができる。この場合、例えば、液晶パネル等に用いるTFT基板の製造工程において、ガラス基板301に対しゲート線としての下配線302が形成された基板(絶縁膜303、及び半導体層304が形成されていない基板)を液体塗布対象の基板として、インクジェットヘッド10から吐出する液体として、絶縁膜303の絶縁材料を含むインクを用いる。そして、下配線302におけるソース線203の形成予定箇所に対し、塗布工程、加熱工程、冷却工程を実行することにより、限られた塗布エリアで、局所的に、均一な塗布膜120を形成することができる。
また、図3に示されたクロス部204に、さらなる機能性膜を形成するときにも、本実施の形態の膜形成方法を適用することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。