以下に説明する実施形態では、撮像素子として、複数個の画素を垂直方向Dvに複数個配列した受光列L0を形成するとともに、受光列L0を水平方向Dhに複数列配列することによって、画素をマトリクス状に配列した2次元(エリア)イメージセンサを想定する。また、以下に説明する実施形態では、撮像素子を発光源と組み合わせて構成したアクティブ形の空間情報の検出装置として対象空間に存在する物体までの距離を求める測距装置を例示する。空間情報の検出装置としては、測距装置のほか、物体の反射率や空間の媒質の透過率を求める装置などにも本発明の技術思想を適用することが可能である。
(基本構造)
以下に説明する実施形態では、図1に示すように、CCDイメージセンサにおけるフレームトランスファー(以下、「FT」と略称する)方式の構成と同様に垂直転送レジスタが光電変換部D1と兼用された構造の撮像素子1を例示するが、図7に示すように、インターライントランスファー(以下、「IT」と略称する」)方式の構成と同様に光電変換部D1に隣接して垂直転送レジスタRvを配置した構造の撮像素子1においても以下の実施形態の技術を採用することが可能である。また、FT方式とIT方式との構造に適用可能であることから、フレームインターライントランスファー(以下、「FIT」と略称する)方式の構成に類似した構造であっても以下の実施形態の技術を採用することが可能である。
以下では、FT方式に類似する構造はFT型、IT方式に類似する構造はIT型、FIT方式に類似する構造はFIT型として説明する。また、FT型の場合は、光電変換部D1を備える撮像領域E1と、撮像領域E1で生成された電荷を蓄積する蓄積領域E2とを半導体に備え、蓄積領域E2は遮光されているものとする。一方、IT型の場合は、光電変換部D1を配列した領域を撮像領域E1とし、光電変換部D1に隣接して設けた垂直転送レジスタRvを蓄積領域E2とする。したがって、FT型では撮像領域E1と蓄積領域E2とが1個ずつ設けられるが、IT型では撮像領域E1と蓄積領域E2とが複数個ずつ設けられる。
撮像領域E1には、それぞれ光電変換部D1を備え電荷を生成する生成要素Pgが多数個配列され、蓄積領域E2には、撮像領域E1の各生成要素Pgで生成された電荷を積算する積算要素Pyが多数個配列される。積算要素Pyの個数は生成要素Pgの個数と一致している場合と一致していない場合とがある。生成要素Pgと積算要素Pyとの個数が異なる場合には、積算要素Pyを生成要素Pgに対して複数個ずつ対応付け、積算要素Pyを生成要素Pgの整数倍(2倍または4倍が望ましい)とする。また、図示例のように、1個の生成要素Pgが1個の撮像画素Pxとして動作する場合のほか、1個の生成要素Pgが複数個(例では2個)の撮像画素Pxとして動作する動作についても後に説明する。
蓄積領域E2には、積算要素Pyのほか転送要素Pzも設けられており、撮像画素Pxで生成された電荷は転送要素Pzが仲介して積算要素Pyに引き渡すようにしてある。蓄積領域E2は、複数個の積算要素Pyを一直線上に配列した積算列L1と、複数個の転送要素Pzを一直線上に配列した転送列L2とが半導体上において複数列ずつ形成される。積算列L1と転送列L2とは平行に配置され、積算要素Pyの側方に転送要素Pzが配置される。すなわち、複数個ずつの積算要素Pyと転送要素Pzとが、それぞれ垂直方向Dvの一直線上に配列され、隣接する積算要素Pyと転送要素Pzとは水平方向Dhの一直線上に配置される。積算要素Pyと転送要素Pzとは同数設けている。
後述する電荷秤量部D5はFT型において設けるのが望ましい構成であるが、IT型であってもCCDイメージセンサの光電変換部に相当する構造を、後述する生成要素Pgの構造に置き換えることによって、実現することができる。以下では、FT型についてのみ説明するが、上述の説明を考慮すれば、IT型やFIT型への技術の転用も容易に行うことができる。
〔構造〕
図1は撮像素子1を正面から見た全体の概略構造である。図1における縦方向を画像における垂直方向Dv、横方向を画像における水平方向Dhとする。撮像素子1は1枚の半導体に形成されており、垂直方向Dvにおいて撮像領域E1と蓄積領域E2とに2分されている。
撮像領域E1では光照射により電荷を生成し、蓄積領域E2では撮像領域E1で生成された電荷を一時的に蓄積するとともに撮像素子1の外部に電荷を取り出す。撮像領域E1では、垂直方向Dvの一直線上に多数個の生成要素Pgを配列した受光列L0を形成し、複数の受光列L0を水平方向Dhに離間させて平行に並べることにより、生成要素Pgをマトリクス状に配列してある。
図2(a)に撮像領域E1の要部の構成を示し、図2(b)に蓄積領域E2の要部の構成を示す。また、図3、図4は生成要素Pgの断面図であり、図5は積算要素Pyの断面図を示している。
図2(a)(b)を併せた構成が、撮像素子1の基本単位であって、この基本単位を半導体上に複数配列することにより撮像素子1が形成される。基本単位には、生成要素Pgと蓄積要素Pyと転送要素Pzとが複数個ずつ設けられる。
生成要素Pgは、図3、図4に示すように、第1導電形(図示例ではp形)の半導体(図示例ではシリコンを想定している)からなる素子形成層11の主表面側に、第2導電形(図示例ではn形)の半導体からなるウェル12を形成し、ウェル12の主表面に絶縁層(たとえば、酸化シリコンあるいは窒化シリコン)13を介して感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とを配列した構成を有する。また、素子形成層11においてウェル12の範囲内には、第2導電形であって不純物濃度がウェル12よりも高濃度(つまり、n++形)である保持用ウェル14が形成される。保持用ウェル14には接続線26の一端部25がオーミックに接続され、接続線26の他端部には障壁制御電極24が接続される。ただし、接続線の一端部26に電極を設け、当該電極を保持用ウェル14に対して絶縁層13を介して配置してもよい。
感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とは図2に示すように、平面視において矩形状ないし短冊状であって同寸法に形成され、幅方向(垂直方向Dv)における一直線上に配列される。つまり、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とは長手方向に直交する方向(つまり垂直方向Dv)の一直線上に中心を揃えて配列され、この方向が画素配列の垂直方向Dvになる。障壁制御電極24は1個であるが、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23とは複数個(図示例では、感度制御電極21が6個、分離電極22と蓄積電極23とがそれぞれ3個)設けられる。なお、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とは必ずしも同寸法とする必要はなく、たとえば障壁制御電極24の長手方向(水平方向Dh)を分離電極22および蓄積電極23よりも大きくしてもよい。
保持用ウェル14は、3個の分離電極22のうちの中央の分離電極22に対して画素配列の水平方向Dhの一側に隣接して配置される。また、素子形成層11には感度制御電極21および分離電極22に隣接してオーバーフロードレイン15が形成され、オーバーフロードレイン15には絶縁層13を介さずにドレイン電極(オーバーフロードレイン15と同じ部位に設けている)が直接接続される。オーバーフロードレイン15は、たとえば、ウェル12と同じ導電形で不純物濃度がウェル12よりも高濃度である領域として形成される。また、オーバーフロードレイン15は、感度制御電極21の長手方向(画素配列の水平方向Dh)の両側のうち保持用ウェル14と同じ側に形成される。この理由は後述する。素子形成層11において保持用ウェル14が形成される領域にはウェル12が張り出した形で形成されるが、ドレイン電極を形成している領域にはウェル12は形成されない。素子形成層11は、第2導電形のサブストレート10の上に形成される。
感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とのうち少なくとも感度制御電極21は透光性を有している。分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とは、透光性を有していないことが望ましいが、感度制御電極21と同時に形成されるから透光性を有している。したがって、生成要素Pgにおいて素子形成層11の主表面は、感度制御電極21に対応する領域に形成した開口窓31(図4参照)を除いて全体が遮光膜30(図3〜5参照)により覆われる。また、以下の説明では、光照射により生成される電荷のうち電子を利用する例について説明するが、電荷としてホールを利用する場合には、半導体の導電形を入れ換え、また後述する電圧の極性を入れ換えることになる。
素子形成層11およびウェル12において感度制御電極21を配置した領域は、開口窓31を通して光が照射されることにより電荷を生成する光電変換部D1として機能する。また、ウェル12において、分離電極22を配置した領域は電荷分離部D2として機能し、蓄積電極23を配置した領域は電荷蓄積部D3として機能する。ウェル12において保持用ウェル14を配置した領域は電荷保持部D4として機能する。
障壁制御電極24は、接続線26を介して保持用ウェル14と電気的に接続されている。接続線26は金属配線であり、障壁制御電極24は保持用ウェル14と同電位になる。したがって、保持用ウェル14に電荷を保持すると、保持用ウェル14の電荷量に応じた電圧が障壁制御電極24に印加される(あるいは、障壁制御電極24が保持用ウェル14の電荷量に応じて帯電する)。
保持用ウェル14には電荷が保持されるから、障壁制御電極24に負電圧を印加することができ、電荷に対するポテンシャル障壁が高くなる。つまり、分離電極22に対応する電荷分離部D2や蓄積電極23に対応する電荷蓄積部D3よりも電荷に対するポテンシャル障壁が高くなり、電荷分離部D2と電荷蓄積部D3との間にポテンシャル障壁が形成されることになる。障壁制御電極24の直下におけるポテンシャル障壁の高さは保持用ウェル14の電荷量に応じて変化する。言い換えると、ポテンシャル障壁の高さは電荷保持部D4に保持される電荷量に応じて変化する。
障壁制御電極24と保持用ウェル14との電位は電荷保持部D4に保持された電荷量で決まるが、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23とに印加する電圧は、別途に制御する必要がある。たとえば、正負2種類の電圧(+10V、−5V)を適宜のタイミングで印加する。そのため、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23とには、2本の電源配線27a,27bのいずれかがオーミックに接続される。電源配線27a,27bは金属配線を用いるのが望ましい。また、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23とについて、電源配線27a,27bを接続しない場合には、絶縁層(たとえば、酸化シリコンあるいは窒化シリコン)16を介して電源配線27a,27bとは絶縁する。
ところで、素子形成層11の主表面には保持用ウェル14に対して垂直方向Dvに並んでリセットゲート電極28とリセットドレイン17とが形成される。平面視においては、リセットゲート電極28を挟んで保持用ウェル14とリセットドレイン17とが配置される。また、リセットゲート電極28とリセットドレイン17とは、保持用ウェル14に対して光電変換部D1側に配置される。リセットドレイン17は、たとえば不純物濃度が高濃度である第2導電形(つまり、n++形)の領域として形成され、リセット電極(リセットドレイン17と同じ部位に設けている)が絶縁層13を介さずに直接接続される。リセット電極には一定のリセット電圧が印加される。
さらに、分離電極22と保持用ウェル14との間には転送ゲート電極29が配置される。転送ゲート電極29に適宜の電圧を印加すれば、転送ゲート電極29の直下にチャンネルが形成され、電荷分離部D2から電荷保持部D4への電荷の移動が可能になる。
上述した分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とリセットゲート電極28と転送ゲート電極29とリセットドレイン17と電荷保持部D4とを配置した領域(図2に一点鎖線で囲んだ領域)は電荷秤量部D5を構成する。電荷秤量部D5のうち分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とは受光列L0に沿う方向(つまり、垂直方向Dv)において光電変換部D1と一直線上に配列され、電荷保持部D4とリセットゲート電極28と転送ゲート電極29とリセットドレイン17とは、光電変換部D1が配列された一直線上とは異なる部位に配置される。言い換えると、当該一直線に対して水平方向Dhにずれて位置する。
一方、蓄積領域E2は、各生成要素Pgで生成された有効電荷をそれぞれ個別に積算する積算要素Pyを備える。ここでは、撮像画素Pxと積算要素Pyとを一対一に対応付ける場合を例として説明する。ただし、1個の撮像画素Pxを2個または4個の積算要素Pyに対応付けると、異なるタイミングで受光した受光光量に相当する有効電荷を各積算要素Pxに振り分けて積算することが可能になる。この動作は、後述する空間情報の検出装置において、一定周波数で強度を変調した強度変調光の複数の位相に対応した受光光量に相当する有効電荷を各積算要素Pxに振り分けて蓄積するのに利用できる。
各積算要素Pyは、生成要素Pgから引き渡された有効電荷を積算する積算列L1と、撮像領域E1で生成された有効電荷を受け取って積算列L1に引き渡す転送列L2とをそれぞれ有している。転送列L2と光電変換部D1とは垂直方向Dvの一直線上に配列されている。また、積算列L1は転送列L2に隣接して配置され、水平方向Dhにおいて積算列L1と転送列L2とが交互に配列される。電荷秤量部D5のうちの電荷保持部D4と積算列L1とは垂直方向Dvの一直線上に配置される。
積算列L1においてはウェル12の主表面に絶縁層13を介して積算制御電極41が配置され、転送列L2においてはウェル12の主表面に絶縁層13を介して転送制御電極42が配置される。1つの積算要素Pyを構成する積算制御電極41と転送制御電極42との個数にはとくに制限はないが、本実施形態では、説明を簡単にするために積算制御電極41と転送制御電極42とを同数個設けているものとする。
また、積算制御電極41と転送制御電極42との形状および寸法についてもとくに制限はないが、本実施形態では、積算制御電極41および転送制御電極42を感度制御電極21と同形状かつ同寸法に形成しているものとする。さらに、感度制御電極21、分離電極22、蓄積電極23、障壁制御電極24と積算制御電極41および転送制御電極42との配列ピッチを等しくしてあり、FT方式のCCDイメージセンサとの形状の相違が少なくなるように構成している。
言い換えると、FT方式のCCDイメージセンサの撮像領域E1における2列分のスペースのうちの1列分に光電変換部D1などを設け他の1列分に電荷保持部D4を設けており、蓄積領域E2において光電変換部D1と同じ列を転送列L2として利用するだけではなく、光電変換部D1とは異なる列を積算列L1として利用することで、FT方式のCCDイメージセンサとの相違を少なくするとともに、撮像素子1の表面に形成されるスペースを無駄なく有効に利用しているのである。
上述のように、光電変換部D1と転送列L2とは垂直方向Dvの一直線上に配置され、分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24も光電変換部D1と垂直方向Dvの一直線上に配置されており、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24と転送制御電極42とは同形状かつ同寸法に形成されているから、これらの電極に印加する電圧を制御することにより、光電変換部D1から転送列L2に有効電荷を転送することができる。
図示例では、1個の積算要素Pyが4個の積算制御電極41を含むとともに、1個の転送要素Pzが4個の転送制御電極42を含んでおり、それぞれ4相駆動される。また、積算列L1と転送列L2との間にはポテンシャル障壁を形成する分離帯43が形成される。
分離帯43を形成するには、積算制御電極41および転送制御電極42に適宜の電圧を印加することにより、図5(a)に示すように、積算制御電極41および転送制御電極42の直下にポテンシャル井戸W1,W2を形成する。このように積算列L1と転送列L2とにそれぞれポテンシャル井戸W1,W2を形成すれば、積算列L1と転送列L2との間にポテンシャル障壁B1が形成されることになり、このポテンシャル障壁B1を分離帯43として利用することができる。
また、上述したように、第1導電形(図2の構成例ではp形)の素子形成層11の主表面に、第2導電形(n形)のウェル12を形成しており、積算制御電極41および転送制御電極42はウェル12に対して絶縁層13を介して配置しているから、図5(b)のように、積算列L1および転送列L2に対応する部位にそれぞれウェル12を設ける構成を採用すれば、積算列L1と転送列L2との間にウェル12とは導電形の異なる素子形成層11が介在することになり(上述の例ではn形−p形−n形)、素子形成層11が分離帯43として機能する。ただし、ウェル12と分離帯43との導電形が異なっていると分離帯43として形成されるポテンシャル障壁が高くなるから、図5(c)のように、分離帯43の導電形をウェル12と同じにし不純物濃度をウェル12に対して低濃度(上述の例ではn−形)にすることで、分離帯43として機能させるようにしてもよい。
上述のように分離帯43を設けることによって、撮像領域E1から転送列L2に有効電荷を転送する際に、転送列L2の有効電荷と積算列L1の有効電荷とが混合されるのを防止することができる。また、積算制御電極41と転送制御電極42とに印加する電圧の関係を制御することにより、分離帯43に形成されるポテンシャル障壁B1を引き下げて転送列L2の有効電荷を積算列L1に移動させることができる。
転送列L2から加算列L1に電荷を転送する際には、転送列L2に電荷が残らないようにすることが望ましい。そのため、積算列L1と転送列L2との間において積算列L1および転送列L2よりも不純物濃度が高濃度(たとえば、n+形)であるスリット領域(図示せず)を適宜に形成してもよい。スリット領域を設けることにより、図6(b)のように積算列L1と転送列L2とに、それぞれ他方に電荷Cを流し込むように傾斜した電位勾配を形成することができる。スリット領域は積算列L1と転送列L2との間であって、図6(b)のような電位勾配を制御することができれば、どのような形で設けてもよい。たとえば、分離帯43と積算要素Pyとの間と、分離帯43と転送要素Pzとの間との2箇所のうちの少なくとも一方にスリット領域を形成すればよい。
この場合、転送列L2の電荷Cが分離帯43のポテンシャル障壁B1を乗り越えるように、積算制御電極41と転送制御電極42との印加電圧を制御して転送列L2のポテンシャル井戸を消滅させると(転送列L2のポテンシャルをポテンシャル障壁B1の高さに近付けると)、電荷Cが分離帯43を乗り越えて積算列L1に流れ込む。上述の動作において、積算列L1のポテンシャル井戸W1は残されているから、電荷Cが逆流して転送列L2に流れ込むことはない。
上述のように積算制御電極41と転送制御電極42との印加電圧を制御して分離帯43のポテンシャルに対する積算列L1および転送列L2のポテンシャルを制御し、積算列L1と転送列L2との間で電荷移動を行う構成に代えて、図6に示すように、分離帯43に対応する移動制御電極47を設け、積算制御電極41および転送制御電極42に印加する電圧とともに、移動制御電極47に印加する電圧も調節することにより、積算列L1と転送列L2との間の電荷移動を促進するようにしてもよい。
移動制御電極47は、分離帯43となる素子形成層11の表面に絶縁層13を介して配置される。また、垂直方向Dvに隣接する2個ずつの積算要素Pyおよび転送要素Pzを対にし、対のうちの上側の積算要素Pyと転送要素Pzとの間では4個ずつの積算制御電極41と転送制御電極42との間に移動制御電極47を配置し、対のうちの下側の積算要素Pyと転送要素Pzとの間では上部の2個ずつの積算制御電極41と転送制御電極42との間に移動制御電極47を配置している。また、この構成では下部の2個の積算制御電極41と転送制御電極42との間には移動制御電極47を設けず、垂直方向Dvに並ぶ移動制御電極47を互いに分離してある。
移動制御電極47を備える構成では、図6(b)のように転送列L2に有効電荷Cが存在し、転送列L2と積算列L1との間にポテンシャル障壁B1が形成されている状態から、図6(c)のように転送制御電極42と積算制御電極41と移動制御電極47との直下のポテンシャルが等しくなるように、移動制御電極47に適宜の電圧を印加すれば、転送列L2から積算列L1に一部の有効電荷Cが移動する。なお、分離帯43は各積算制御電極41と各転送制御電極42とに対応付けて設けてあり、複数の分離帯43に跨る部位に形成した移動制御電極47のポテンシャルを変化させても、垂直方向において隣接している領域の有効電荷Cは混合されない。
次に、図6(d)のように、転送列L2として形成されたポテンシャル井戸W2を消滅させるように転送制御電極42の印加電圧を制御すると、有効電荷Cは積算制御電極41と移動制御電極47との直下に移動し、さらに、移動制御電極47の直下にポテンシャル障壁B1が形成されるように移動制御電極47の印加電圧を制御すると、積算列L1として形成されたポテンシャル井戸W1に有効電荷Cが移動する。つまり、図6の手順により、転送列L2から積算列L1への電荷移動が可能になる。
上述の動作例では転送列L2から積算列L1への電荷移動について説明したが、積算制御電極41、転送制御電極42、移動制御電極47に印加する電圧の関係を制御することにより、積算列L1から転送列L2への電荷移動も可能である。
積算列L1と転送列L2との近傍には、それぞれ垂直方向Dvのオーバーフロードレイン45.46が配置される。各オーバーフロードレイン45,46は、撮像領域E1に形成したオーバーフロードレイン15と同様に、絶縁層13を介さずにドレイン電極(オーバーフロードレイン45,46と同じ部位に設けている)が直接接続される。オーバーフロードレイン45,46は、たとえば、ウェル12と同じ導電形で不純物濃度がウェル12よりも高濃度である領域として形成される。
積算要素Pyは、両オーバーフロードレイン45,46の間に形成される。つまり、積算要素Pyの両側にオーバーフロードレイン45,46が配設される。ここにおいて、水平方向Dhにおいて隣接する積算要素Pyの間のオーバーフロードレイン45,46は1本にまとめてもよい。オーバーフロードレイン45,46は、積算列L1および転送列L2において溢れた電荷を廃棄する機能を有し、いずれかの積算要素Pyにおいて飽和により溢れ出した電荷が水平方向Dhに隣接する積算要素Pyの電荷に混入されるのを防止し、結果的にスミアの発生を抑制する。
撮像領域E1に設けたオーバーフロードレイン15と、蓄積領域E2に設けたオーバーフロードレイン45,46とは電気的には独立しているから、互いの影響が生じないように、電気的に分離することが望ましい。そこで、撮像領域E1と蓄積領域E2との間にオーバーフロードレイン15,45,46を設けない緩衝領域E3(図1参照)を形成する。緩衝領域E3には積算制御電極41および転送制御電極42を設けることが可能であるが、電極を設けずに配線用のスペースとして用いるようにしてもよい。積算制御電極41および転送制御電極42を設ける場合には、10個ずつ程度設けることができる幅に形成する。また、配線用のスペースとして用いる場合には、配線の周囲の電界が撮像領域E1で生成された電荷に影響しないように、シールドなどの構成を採用するのが望ましい。
なお、撮像領域E1のオーバーフロードレイン15は電荷分離部D2における廃棄電荷の廃棄とともに光電変換部D1の残留電荷の廃棄にも用いているが、光電変換部D1の残留電荷の廃棄を行わない場合には省略し、電荷分離部D2の廃棄電荷の廃棄には電荷保持部D4と同様の技術を採用してもよい。この場合には、オーバーフロードレイン15は省略される。
ところで、積算列L1は撮像領域E1で生成された電荷を積算するために設けられたものであり、転送列L2よりも飽和電荷量を大きくする必要がある。また、転送列L2には光電変換部D1で生成された電荷が転送され、かつ各積算要素Pyは、各生成要素Pgから引き渡された有効電荷を積算するから、各生成要素Pgよりも飽和電荷量を大きくしてある。飽和電荷量を大きくするには、占有面積(体積)を大きくすることが考えられるが、撮像素子1が大型化し材料コストが増加するという問題が生じる。また、積算列L1の占有面積が大きくなれば、単位面積当たりの画素数が少なくなる。
そこで、本実施形態では、飽和電荷量を大きくするために、積算列L1の不純物濃度を転送列L2よりも高濃度にする技術を採用している。たとえば、転送列L2がn形である場合には、積算列L1をn+形にする。積算列L1の不純物濃度が転送列L2よりも高濃度であることにより、積算列L1のポテンシャル井戸W1は転送列L2のポテンシャル井戸W2よりも深くなり、電荷飽和量を大きくすることができる。しかも、不純物濃度の調整だけであるから占有面積に影響はなく、撮像素子1の大型化や単位面積当たりの画素数の低下が生じない。なお、不純物はたとえば拡散によりドープされる。
蓄積領域E2には、積算要素Pyに積算された電荷を撮像素子1の外部に取り出すための電荷取出部としてCCDイメージセンサと同様にCCDにより構成された水平転送レジスタ(転送レジスタ)Rhも設けられる。水平転送レジスタRhは、基本的には積算列L1からの電荷を読み出すために用いるが転送列L2からの電荷を読み出すこともできる。積算列L1および転送列L2と水平転送レジスタRhとは電荷の転送方向が直交する。水平転送レジスタRhを転送された電荷は、撮像素子1に設けた出力部において電荷量に応じた電圧に変換され、受光出力として撮像素子1の外部に取り出される。水平転送レジスタRhおよび出力部の構成はCCDイメージセンサにおいて知られた技術であるから、ここではとくに説明しない。
上述した構成例では、光電変換部D1を除く部位を遮光膜30で覆っているが、撮像領域E1では分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24とを覆うように遮光膜30を形成し、電荷保持部D4を遮光しない構成を採用してもよい。ただし、蓄積領域E2は全体を遮光膜30で覆う必要がある。
〔動作〕
以下に、上述した図1の構成の撮像素子1について動作を説明する。いま、ウェル12の中の電子を空乏化した状態で光を照射するものとする。ウェル12の中の電子を空乏化するには、オーバーフロードレイン15を通して光電変換部D1および電荷分離部D2に残留する電子を廃棄し、リセットゲート電極28にリセット電圧を印加して保持用ウェル14とリセットドレイン17との間にチャンネルを形成し、電荷保持部D4に残留する電子をリセットドレイン17を通して廃棄する。
また、垂直方向Dvにおいて光電変換部D1から電荷蓄積部D3に向かう向きにおいて光電変換部D1を上流側と定義すると、電荷蓄積部D3の電子は垂直方向Dvに並ぶ下流側の生成要素Pgの光電変換部D1に隣接して設けたオーバーフロードレイン15を通して廃棄することができる。
ウェル12の中の電荷を空乏化した後に、光電変換部D1の感度制御電極21に適宜の電圧を印加して光電変換部D1に電子に対するポテンシャル井戸を形成した状態で光を照射すると、ウェル12を含む素子形成層11において生成された電子とホールとのうち電子がポテンシャル井戸に集積され、ホールはサブストレート10を通して廃棄される。つまり、受光光量に応じた量の電子がポテンシャル井戸に集積される。感度制御電極21に印加する電圧の制御の具体例は後述する。
光電変換部D1において受光光量に応じた量の電子(以下、電子は斜線部で示す)を集積させた後、まず図8の期間Taのように、分離電極22に電圧を印加して電荷分離部D2にポテンシャル井戸を形成し、光電変換部D1に集積された電子を電荷分離部D2に移動させる(図8(a)参照)。つまり、光電変換部D1から電荷分離部D2に電子が移動する。また、電荷分離部D2に移動させた電子は、転送ゲート電極29に適宜の電圧を印加し、電荷分離部D2と保持用ウェル14との間にチャンネルを形成して、電荷保持部D4に移動させる(図8(b)参照)。
n形のウェル12に囲まれたn++形である保持用ウェル14では、ポテンシャルがウェル12よりも高く(電子に対するポテンシャルが低く)、ポテンシャルは電荷分離部D2よりも電荷保持部D4のほうが高くなっている。したがって、転送ゲート電極29に適宜の電圧を印加してチャンネルを形成すると、電荷分離部D2から電荷保持部D4に向かって電子が移動し、保持用ウェル14に電子が流れ込む。
保持用ウェル14に電子が流れ込むに従って保持用ウェル14の電位が低下し、保持用ウェル14に電気的に接続された障壁制御電極24の電位が低下する(図8(d)参照)。つまり、障壁制御電極24の直下にポテンシャル障壁が形成される。また、保持用ウェル14に集積された電荷の一部は障壁制御電極24に移動するから、障壁制御電極24の直下には移動した電荷量に応じた高さのポテンシャル障壁が形成される。
なお、期間Taにおいて蓄積電極23には電圧を印加せず、電荷蓄積部D3には電子が集積されないようにしておく。分離電極22に電圧を印加した後に転送ゲート電極29に電圧を印加するか、分離電極22と転送ゲート電極29とに同時に電圧を印加するかは適宜に選択することができる。
電荷保持部D4に電子が移動すると、期間Tbのように転送ゲート電極29への電圧印加を停止して電荷保持部D4に電子を保持させ、さらに、オーバフロードレイン15を制御して電荷分離部D2の電子を廃棄する(図8(b)(c)参照)。電子の廃棄の際には、分離電極22への電圧印加を停止すれば電子の廃棄を迅速に行うことができる。
上述した動作において光電変換部D1で受光した光は、受光光量に応じた受光出力を得るためではなく、障壁制御電極24の直下におけるポテンシャル障壁の高さを決めるために入射させている。上述の動作でポテンシャル障壁の高さが決まった後の動作が実際に受光出力を得る動作になる。
受光出力を求めるための光を受光する前には、期間Tcのように、まずオーバーフロードレイン15を通して、ウェル12のうち電荷保持部D4を除く部位の電子を空乏化し、光電変換部D1および電荷分離部D2から電子を除去する(図8(c)参照)。
光電変換部D1において受光光量に応じた電子を集積する際に、図9(a)のように、障壁制御電極24の直下にはポテンシャル障壁B2が形成されている。光電変換部D1で受光光量に応じた電子を集積した後、期間Tdのように、分離電極22に適宜の電圧を印加して電荷分離部D2に電子に対するポテンシャル井戸を形成するとともに、感度制御電極21への印加電圧を制御することにより、光電変換部D1から電荷分離部D2に電子を移動させる(図8(a)参照)。つまり、図9(b)のように、電荷分離部D2に電子が移動する。
その後、期間Teのように、蓄積電極23に適宜の電圧を印加して電荷蓄積部D3にポテンシャル井戸を形成した状態で、分離電極22への電圧印加を停止すると、図9(c)のように、障壁制御電極24の直下に形成されているポテンシャル障壁の高さと電荷分離部D2の大きさとにより決まる一定量の電子が不要電荷として電荷分離部D2に残され、電荷分離部D2からポテンシャル障壁を越えた電荷は電荷蓄積部D3に流れ込むことになる(図8(e)参照)。ただし、分離電極22への電圧印加を停止する前に、電荷分離部D2と光電変換部D1との間には障壁制御電極24の直下のポテンシャル障壁よりも高いポテンシャル障壁を形成するように感度制御電極21への印加電圧を制御しておく。
上述の動作によって、光電変換部D1での受光光量に応じて集積された電子から電荷分離部D2で一定量の電子が不要電荷として分離され、不要電荷を分離した残りの電荷が有効電荷として電荷蓄積部D3に蓄積される。
有効電荷を電荷蓄積部D3に蓄積した後には、期間Tfのように、電荷分離部D2に残っている不要電荷をオーバーフロードレイン15から廃棄し、さらに電荷保持部D4に保持されている電荷を廃棄するために、リセットゲート電極28に適宜の電圧を印加して保持用ウェル14とリセットドレイン17との間にチャンネルを形成し、保持用ウェル14の電子を廃棄した後にリセットゲート電極28への電圧印加を停止する(図8(c)(f)参照)。その後、電荷蓄積部D3に蓄積された電荷は、受光出力として撮像素子の外部に取り出される。
以上説明した一連の動作によって、1フレームの画像に対応した受光出力が得られる。ここに、上述の動作では1フレーム毎に保持用ウェル14の電子を廃棄することになるが、複数フレーム毎に保持用ウェル14の電子を廃棄する動作とすることも可能である。ただし、この場合には、障壁制御電極24の直下においてポテンシャル障壁B2が形成されているから、ポテンシャル障壁B2の前後で電子が移動できるように、分離電極22および蓄積電極23に印加する電圧を調節する必要がある。
ところで、上述したように、電荷分離部D2から電荷保持部D4に電子を移動させる必要がある。オーバーフロードレイン15には、電荷分離部D2から不要電荷を廃棄する機能があるから、オーバーフロードレイン15のポテンシャルは電荷分離部D2のポテンシャルよりも高く(電子に対しては低く)設定される。つまり、電荷分離部D2の周辺での電位勾配が電荷分離部D2から電荷保持部D4に電子を流す向きに傾斜することになり、電荷分離部D2から電荷保持部D4への電子の移動効率を高めることができる。
生成要素Pgでは、上述したように、不要電荷を分離して残りの電荷を有効電荷として電荷蓄積部D3に蓄積する。上述した動作によって、撮像領域E1の各生成要素Pgにおける電荷蓄積部D3に有効電荷が蓄積される。有効電荷は蓄積領域E2に転送される。有効電荷の転送にあたっては、FT方式のCCDイメージセンサと同様の動作を行う。つまり、感度制御電極21と分離電極22と蓄積電極23と障壁制御電極24と転送制御電極42とは同形状かつ同寸法に形成されているから、これらの電極に電圧を印加するタイミングを制御することにより、CCDイメージセンサと同様に有効電荷を蓄積領域E2に転送することができる。
撮像領域E1で生成された有効電荷は、蓄積領域E2における転送列L2に転送される。ここでは、撮像領域E1の各生成要素Pgと蓄積領域E2の各積算要素Pyとを一対一に対応付けている場合を例示しているから、各生成要素Pgで生成された有効電荷が、当該生成要素Pgに対応付けられた積算要素Pyの転送列L2に転送されることになる。
構成として説明したように、転送列L2と積算列L1との間にはポテンシャル障壁B1が形成されているから、有効電荷を転送列L2に転送している際には、有効電荷が積算列L1に入り込むことはない。次に、転送列L2に転送された有効電荷を積算列L1に移動させるために、積算制御電極41と転送制御電極42との印加電圧の関係を制御する。また、移動制御電極47を設けている場合には、移動制御電極47の印加電圧も併せて制御する。このような電圧制御により、転送列L2から積算列L1に有効電荷を移動させることができる。
ところで、本発明は、撮像領域E1から蓄積領域E2に有効電荷を転送するたびに有効電荷を撮像素子1の外部に取り出すのではなく、転送が複数回行われる間の有効電荷を積算し、積算後の電荷を撮像素子1の外部に取り出すために、積算列L1を設けている。つまり、撮像領域E1から転送列L2に転送された有効電荷を転送毎に積算列L1に移動させ、転送が複数回行われる間は積算列L1の電荷を保持しておく。
この動作によって、各積算要素Pyの積算列L1では、撮像領域E1から蓄積領域E2に転送された複数回分の有効電荷が積算され、1回で転送される有効電荷の量が少ない場合でも、積算列L1で有効電荷を積算することにより電荷量を増加させることができる。つまり、実質的に増感したことになる。積算列L1において積算する回数は適宜に設定されており、設定された回数分の有効電荷を積算した後には、積算列L1から水平転送レジスタRhに電荷が転送され、撮像素子1の外部に取り出される。
通常のFT型の撮像素子1であれば、撮像領域E1からの電荷を蓄積領域E2において積算することはできず、積算しようとすれば撮像素子1の外部に取り出した電荷を積算する必要があるから、増感のためには水平方向Dhの1ラインごとの電荷の読出を積算回数分だけ繰り返すことになり、応答速度の低下につながる。一方、上述の構成を採用すれば、撮像素子1からの電荷の読出を行わずに撮像素子1の内部において電荷を積算し、積算後の電荷を読み出すから、水平方向Dhの1ラインごとの電荷の読出を行う回数は1回になり、それだけ応答速度を高めることができる。そして、電荷を蓄積することにより有効電荷に対する雑音(ショットノイズなど)の相対比が低減され、信号対雑音比を向上させることができる。
撮像領域E1における生成要素Pgと、蓄積領域E2における加算要素Pyおよび転送要素Pzとの対応の付け方や加算要素Pyにおいて積算した電荷を読み出す際の手順については後述する。
〔空間情報の検出装置〕
以下では、上述した撮像素子1を利用する応用例として、撮像空間(つまり、対象空間)における物体の存否や物体の反射率を検出する検出装置と、撮像空間に存在する物体までの距離を計測する検出装置とに、上述した撮像素子を用いる例を示す。以下に説明する空間情報の検出装置は、図10に示すように、対象空間に投光する発光源2を用いたアクティブ型の検出装置であり、対象空間を上述した撮像素子1により撮像し、撮像素子1の受光出力を信号処理部3に与えて後述する演算を行うことにより、物体による反射光の光量を求めるか、対象空間に存在する物体5までの距離を求める。また、撮像素子1と発光源2との動作のタイミングは制御部4が制御する。制御部4は信号処理部3にも演算のタイミングを指示する。
発光源2は複数個の赤外線発光ダイオードを並設して構成し、撮像素子1へは赤外線透過フィルタを通して対象空間からの光を入射させる。つまり、距離の計測に用いる光として赤外線を用いることにより、撮像素子1に可視光領域の光が入射するのを抑制している。信号処理部3および制御部4は、適宜のプログラムを実行するマイクロコンピュータによって構成する。
物体5の存否や反射率を求めるには(強度検出動作)、図11(a)に示すように、発光源2を点灯させる点灯期間T1と消灯させる消灯期間T2とを設け、点灯期間T1の受光光量と消灯期間T2の受光光量との差分を求める。発光源2からの強度変調光は矩形波で変調されていることになる。
撮像素子1には、図11(b)のように、点灯期間T1において発光源2から投光され物体5で反射された信号光と対象空間に存在している環境光とが入射し、消灯期間T2において撮像素子1に環境光のみが入射する。したがって、点灯期間T1の受光光量C0と消灯期間T2の受光光量C2との差分(C0−C2)を求めると、環境光の影響を除去して物体5での光の反射の程度を評価することができる。
物体5までの距離が一定であれば、受光光量の差分(C0−C2)によって、投光した光の波長に対する物体5の反射率を求めることができる。反射率は投光した光の波長に依存性があるから、発光源2から対象空間に投光する光の波長を可変にすれば、波長に対する反射率の特性を求めることも可能である。また、環境光のみが存在する消灯期間T2と環境光に加えて信号光が存在する点灯期間T1との受光光量の差分(C0−C2)を求めているから、差分(C0−C2)が規定した閾値以上の領域には光を反射する物体5が存在すると判断することも可能である。
一方、距離の計測には(距離計測動作)、発光源2から強度を変調した光(強度変調光)を対象空間に投光し、対象空間に存在する物体5で反射され撮像素子1に入射した光の強度変化の位相と発光源2からの光の強度変化の位相との位相差を求め、この位相差を距離に換算する技術を用いている。つまり、発光源2から図12(a)(b)のように強度変調光を対象空間に投光し(図12(a)は強度変調光と露光との関係を示し、図12(b)は時間軸を引き延ばした状態を示している)、撮像素子1の1つの生成要素Pgに入射する光の強度が図12(c)のように変化しているとすると、同位相の時間差Δtは物体5までの距離Lを反映しているから、光速をc[m/s]として、時間差Δt[s]を用いると、物体5までの距離Lは、L=c・Δt/2で表される。光の強度を変調する変調信号の周波数をf[Hz]とし、位相差をφ[rad]とすれば、時間差Δtは、Δt=φ/2πfであるから、位相差φを求めることにより距離Lを求めることができる。
この位相差φは、発光源2を駆動する変調信号と撮像素子1(の各生成要素Pg)への入射光との位相差とみなしてよい。そこで、撮像素子1への入射光の受光強度を変調信号の複数の異なる位相について求め、求めた位相の関係と受光強度とから入射光と変調信号との位相差φを求めることが考えられている。実際には、撮像素子1において所定の位相幅(時間幅)を有する区間(位相区間)ごとの受光光量を検出し、この受光光量に相当する受光出力を位相差φの演算に用いる。各区間を90度間隔とすれば、変調信号の1周期について等位相間隔の4つの区間が周期的に得られ、各区間の受光光量A0〜A3を用いることによって、位相差φは、φ=tan−1{(A0−A2)/(A1−A3)}と表すことができる。
なお、受光光量A0〜A3を変調信号のどの位相に対応させるかによって、位相差φの符号は変化する。また、図12に示す例では、各区間を90度の位相幅に設定しているが、位相幅は適宜に設定することができる。さらに、必ずしも4区間の受光光量A0〜A3を用いなくとも位相差φを求めることが可能であり、3区間あるいは5区間以上の受光光量を用いて位相差φを求めてもよい。
ところで、図11に示すように、強度検出動作では、1回の露光が点灯期間T1または消灯期間T2に対応付けられ、図12に示すように、距離計測動作では、1回の露光が変調信号の複数周期(数万周期)に設定してある。
上述の演算を行うには、変調信号の各区間ごとの受光光量に応じた電子を光電変換部D1で生成する必要がある。各区間ごとの受光光量を求めるには、感度制御電極21に印加する電圧を変調信号に同期させて制御する。
この動作について説明する。制御部4は、各感度制御電極21に対してそれぞれ電圧の印加の有無を制御することができ、電圧を印加された感度制御電極21では直下にポテンシャル井戸が形成される。つまり、連続して隣り合う感度制御電極D1に電圧を印加することにより、電圧を印加した感度制御電極21の個数分に相当する開口面積(素子形成層11の主表面に沿った開口面積)を有したポテンシャル井戸が形成される。
光電変換部D1で生成された電子はポテンシャル井戸に集積されるから、ポテンシャル井戸の開口面積(つまり、ポテンシャル井戸の体積)が大きいほど、電子を集積する効率が高くなる。逆に、1個の感度制御電極21にのみ電圧を印加しているときには、電子を集積する効率が低くなり、すでにポテンシャル井戸に集積されている電子を保持することができる。もちろん、1個の感度制御電極21にのみ電圧を印加して電子を保持している状態であっても、ポテンシャル井戸に電子は集積されるが、複数個の感度制御電極21に電圧を印加する場合よりも電子の集積効率が低下するから、集積された電子の量は複数個の感度制御電極21に電圧を印加している期間の受光光量を反映していることになる。なお、電子を保持するためのポテンシャル井戸を形成する感度制御電極21を遮光すれば、電荷を保持している期間における電子の集積を抑制することができる。
上述の動作から明らかなように、光電変換部D1において、変調信号の特定の区間における受光光量に相当する電子を集積するには、当該区間において電圧を印加する感度制御電極21の個数を多くし、他の区間には1個の感度制御電極21にのみ電圧を印加することで電子を保持すればよい。制御部4は、感度制御電極21への電圧の印加パターンを時間経過に伴って変化させる。たとえば、変調信号の各周期の同じ区間ごとに複数個の感度制御電極21に電圧を印加することにより、当該区間に生成される電子を複数周期に亘って累積させる動作が可能である。この動作では、変調信号の1周期の区間で得られる受光光量が少ない場合であっても、光電変換部D1において電子を累積させて電子の量を増加させることができる。もっとも、受光強度が高い場合には電子を累積させると飽和しやすくなるから、電子を累積させるか否かは使用環境に応じて適宜に定める。
信号処理部3では、各生成要素Pgごとに各区間に対応する受光出力を用い、上述した演算により位相差を求め、各生成要素Pgごとに距離を計測する。つまり、各生成要素Pgの画素値を距離とした距離画像を生成する。
ところで、上述した原理で距離を計測するには、発光源2から対象空間に投光した信号光のみを撮像素子1で検出すればよく、信号光の受光光量が多いほど距離の計測精度を高めることができると考えられる。しかし、撮像素子1に入射する光は信号光のみではなく、周囲に存在する環境光がつねに入射する。また、撮像素子1において生成される電子の量が受光光量に応じて変化する範囲には上限があり、受光光量が多くなると生成される電子の量が飽和し、受光出力が受光光量を反映しなくなる。したがって、撮像素子1の飽和を抑制しつつ信号光に相当する電子の量を増加させる必要がある。
上述した撮像素子1では、電荷保持部D4に保持した電子の量に応じた量の不要電荷を秤量して廃棄する機能を有しているから、秤量する不要電荷の量を環境光の受光光量に対応付ければ、受光光量に含まれる信号光の成分の割合に対して、電荷蓄積部D3に蓄積される電子に含まれる信号光に相当する電子の量の割合を増加させることができる。しかも、光電変換部D1で生成された電子のうちの一部を不要電荷として廃棄するから、電荷蓄積部D3に蓄積される電子が飽和する可能性を低減することができる。
このような知見に基づいて、発光源2を消灯させる環境計測期間と発光源2から強度変調光を投光する情報検出期間とを設けて対象空間に間欠的に投光する構成を採用している。環境計測期間においては、光電変換部D1で生成された電子を電荷保持部D4に保持させることにより、環境光の強度を反映した量の電子を電荷保持部D4に保持させ、電荷分離部D2で秤量する不要電荷の量を環境光の強度に対応付ける。
一方、情報検出期間には、環境計測期間の受光光量に応じたポテンシャル障壁が障壁制御電極24の直下に形成されているから、光電変換部D1において生成した電子のうち環境光の受光光量を反映した量の不要電荷を秤量して廃棄した残りの電子を電荷蓄積部D3に蓄積することができる。ここに、不要電荷として秤量される電荷量は、環境光の受光光量に比例しているとは限らないが、環境光の受光光量に応じて変化するから、環境光の増減に応じて秤量する不要電荷の量も変化する。したがって、環境光が変動しても電荷蓄積部D3に蓄積される電荷において信号光に相当する成分の割合を高い状態に保つことができる。すなわち、発光源2の情報検出期間において光電変換部D1で生成された電荷から不要電荷を分離することによって、信号光成分の情報を残しながらも信号対雑音比を増加させることができる。
上述したように、変調信号の1周期において光電変換部D1で生成される電子の量が少ない場合に、変調信号の複数周期に亘って光電変換部D1で電子を集積することによって電子を累積させることが可能であるが、光電変換部D1において電子が飽和する可能性もある。そこで、電荷蓄積部D3に蓄積した電荷をただちに受光出力として読み出す代わりに、電荷分離部D2において不要電荷を秤量する動作を複数回行う間、電荷蓄積部D3に電子を蓄積することによって、電子を累積させる技術を採用することもできる。
電荷蓄積部D3に蓄積される電子は、光電変換部D1で生成された電子から不要電荷が除去されているから、光電変換部D1において電子を集積する場合のように受光した環境光成分の電子を累積させる場合に比較すると、電子の量が少なく飽和が生じにくくなる。しかも上述のように、全電荷量に占める信号光成分の割合が多いから、信号光成分の変化に対する電荷量の変化率が大きくなり、それだけ距離の計測精度が高くなる。
制御部4では、電荷蓄積部D3に電子を流入させた後、オーバーフロードレイン15を通して電荷分離部D2から不要電荷を廃棄させる。この動作は、電荷蓄積部D3に電子を流入させるたびに行う。電荷保持部D4に保持させる電子の量を更新する場合には、リセットゲート電極28に電圧を印加し、保持用ウェル14に保持された電子をリセットドレイン17から廃棄する。電荷保持部D4の電子を廃棄するタイミングは、環境光が変動すると考えられるタイミングとすればよいから、使用環境に応じて適宜に設定すればよいが、たとえば、受光出力の読出毎とすることができる。つまり、距離画像の1フレームごとにポテンシャル障壁の高さを調整すればよい。また、不要電荷は電荷蓄積部D3に電子を流入させるたびに廃棄するが、情報検出期間から環境計測期間に移行する際にも、電荷分離部D2において電荷保持部D4に移動させた後の電子が残留しているから、環境計測期間の前にオーバーフロードレイン15を通して電荷分離部D2の電子を廃棄させる。
〔蓄積領域の動作〕
以下に説明する動作例のうち動作例1から動作例5は、強度検出動作と距離計測動作とのどちらにも適用可能であるが、強度検出動作に用いる例を主として説明する。距離計測動作に用いる場合には受光光量C0,C2を、受光光量A0(A1),A2(A3)に読み替えればよい。
(動作例1)
上述のように光電変換部D1や電荷蓄積部D3において電荷を蓄積すれば信号対雑音比は向上するが、飽和電荷量は増加しない。また、光電変換部D1や電荷蓄積部D3において電荷を蓄積する技術は、発光源2から対象空間に強度変調光を投光するアクティブ型の検出装置に採用すれば効果があるが、発光源2を用いないパッシブ型の検出装置では効果がない。面積を増加させることなく飽和電荷量を増加させるには、不純物濃度を高めることが考えられるが、撮像領域E1には、光電変換部D1のほかに、電荷分離部D2、電荷蓄積部D3、電荷保持部D4、電荷秤量部D5が設けられ、構造が複雑であるから、飽和電荷量を増加させるために不純物濃度を高める技術を採用するのは難しい。
一方、本実施形態では、撮像領域E1に比べて構造が簡単である蓄積領域E2の不純物濃度を撮像領域E1の不純物濃度よりも高めてあり、撮像画素Pxから転送要素Pzを介して転送された有効電荷を積算要素Pyにより積算する構成を採用している。つまり、蓄積領域E2の不純物濃度は撮像領域E1の不純物濃度よりも高いから、積算要素Pyの飽和電荷量は撮像画素Pxよりも大きくなっている。この構成を採用することにより、アクティブ型かパッシブ型かにかかわらず、飽和電荷量を増加させることができる。
以下では、蓄積領域E2において有効電荷を積算する動作と、積算後の有効電荷を受光出力として水平転送レジスタRhに取り出す動作とについて例示する。
まず、基本的な動作として個々の撮像画素Pxが対象空間の異なる領域に対応付けられている場合について説明する。強度検出動作では、点灯期間T1と相当期間T2との受光光量C0,C2の差分を求めるから、撮像領域E1から蓄積領域E2に有効電荷を転送する回数を少なくしようとすれば、点灯期間T1と消灯期間T2とにそれぞれ撮像画素Pxを割り当てておき、点灯期間T1と消灯期間T2とに対応する有効電荷を1回の動作で蓄積領域E2に転送することが考えられる。このような動作については後述するが、複数個の撮像画素Pxを用いて対象空間における1領域の情報(反射率や物体の存否)を求めることになるから、1個の撮像画素Pxで対象空間の1領域の情報を求める場合に比較すると、対象空間に対する分解能は低下する。
以下では、図13に示すように、1個の撮像画素Pxで対象空間の1領域の情報を求める場合を基本動作として説明する。基本動作においては、撮像領域E1の1回の露光で点灯期間T1と消灯期間T2とのいずれかの受光光量に対応する有効電荷を生成する(図では点灯期間T1に対応する動作を示している)。したがって、点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷を得るには、最低でも2回の露光が必要になる。また、基本動作では点灯期間T1と消灯期間T2とのそれぞれの受光出力を撮像素子1から取り出すものとする。すなわち、受光出力を2回取り出すことによって、点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応した受光出力が得られ、信号処理部3での演算により必要な情報を求めることができる。1回の露光での露光時間は、たとえば1msとする。また、点灯期間T1と消灯期間T2とのそれぞれの有効電荷を得るための露光回数は、たとえば5回とする。
なお、電荷保持部D4には光電変換部D1で生成した適宜の電荷を保持させ、点灯期間T1と消灯期間T2とに対応した有効電荷を得る間には電荷保持部D4の電荷量が変動しないようにして有効電荷を秤量する。
ところで、積算要素Pyは撮像画素Pxで生成した有効電荷を積算するものであり、点灯期間T1と消灯期間T2との一方の有効電荷について複数回の露光により得られた有効電荷を積算する。撮像領域E1から蓄積領域E2への電荷の転送は1回の露光ごとに行われる。これは以下の各動作においても同様である。1回の露光での露光時間は撮像画素Pxにおける飽和が生じないように比較的短い時間に設定されるが、積算要素Pyは撮像画素Pxよりも飽和電荷量が大きいから、複数回の露光で生成された有効電荷を積算することができる。
また、1個の積算要素Pyは4個の積算制御電極41を備えるから、たとえば、4個の積算制御電極41のうち2個の積算制御電極41に対応する領域にポテンシャル井戸を形成して有効電荷の積算に用いれば、有効電荷の積算に用いる部位の面積も大きくとることができることにより、飽和電荷量をより大きくとることが可能になる。なお、積算要素Pyを構成する積算制御電極41の個数および有効電荷の積算に用いる領域の大きさは適宜に設計することができる。
さらに、撮像画素Pxから有効電荷が転送要素Pzに転送された後に、転送要素Pzの並ぶ転送列L2とは異なる積算列L1において有効電荷を積算するから、撮像領域E1から蓄積領域E2に有効電荷を転送する動作の影響を受けることなく、蓄積要素Pyの有効電荷を保持することができる。つまり、撮像領域E1から蓄積領域E2に有効電荷を転送する際に転送列L2に電荷が存在していると、その電荷は転送列L2を移動して水平レジスタRhに排出されるから、転送列L2では有効電荷を積算することができない。これに対して、転送列L2とは別に積算列L1を設け、積算列L1において有効電荷を積算する構成を採用していることにより、有効電荷の積算が可能になるのである。
また、FT方式のCCDイメージセンサと比較すると、撮像画素Pxにおいて垂直レジスタの2列分の幅を用いているから、本実施形態の転送列L2に相当する領域のみを利用するとすれば、積算列L1に相当する領域が無駄になるが、本実施形態では積算列L1として用いることで撮像素子1を形成する半導体の主表面を無駄なく有効利用することができる。
一方、距離計測動作で言えば、本動作例は、各撮像画素Pxごとに距離を求めることに相当する。距離計測動作では4区間の受光光量A0〜A3を求めるから、4区間に対応した有効電荷を得る間には電荷保持部D4の電荷量が変動しないように電荷を保持させ、その電荷を用いて4区間における有効電荷を秤量する。距離計測動作では、変調信号の複数周期の時間を1回の露光時間とする。また、環境光のみを受光する短い期間を設けて、この期間に光電変換部D1で生成した電荷を電荷保持部D4に保持させる。この電荷を秤量に用いている期間では、環境光のみを受光する期間は設けなくてもよい。
(動作例2)
上述した動作では、点灯期間T1と消灯期間T2との一方の有効電荷を積算するたびに受光出力を取り出すから、空間情報を求める演算を行うためには受光出力を2回(距離計測動作では4回)取り出すことが必要である。受光出力を取り出すには電荷を垂直方向Dvに転送するのに加えて、水平転送レジスタRhにより電荷を水平方向Dhにも転送する必要があるから、空間情報を求める演算を行うのに必要な受光出力が得られるまでに比較的長い時間を要することになる。
本動作例では、図14に示すように、撮像領域E1の動作は上述した動作と同様であって、1回の露光に際しては、すべての撮像画素Pxが点灯期間T1と消灯期間T2との一方の有効電荷を生成する。動作例1では点灯期間T1と消灯期間T2との一方の有効電荷を積算するたびに受光出力を取り出しているが、本動作例では点灯期間T1と消灯期間T2との両方の有効電荷を積算した後に受光出力を取り出すようにしている。この動作により、受光出力を2回読み出すだけで空間情報を求める演算を行うのに必要な情報が得られるようになっている。
上述の動作を可能とするために、上下に隣接する2個の積算要素Pyを1組とし、2組4個(この個数は一例であり、連続して並ぶ複数個ずつを組にして2組設け、各組における各積算要素Pyをそれぞれ撮像画素Pxに一対一に対応付けてあればよい)の積算要素Pyを用い、上の組と下の組とでそれぞれ点灯期間T1と消灯期間T2との電荷を積算する。
ここでは、2組の積算要素Pyのうちの上の組を点灯期間T1の受光光量C0に対応する有効電荷を積算するために用い、下の組を消灯期間T2の受光光量C2に対応する有効電荷を積算するために用いる。4個の積算要素Pyを区別するために、各積算要素Pyに(1)〜(4)の符号を付記する。
まず1回目の露光においては、各撮像画素Pxで点灯期間T1の受光光量C0に対応する有効電荷を生成した後、垂直方向Dvにおいて隣接する2個の撮像画素Pxで生成された有効電荷を、それぞれ積算要素Py(1)(2)に隣接する転送要素Pzまで転送し、転送列L2から積算列L1に電荷を移動させる。この動作により、垂直方向Dvにおいて隣接する2個の撮像画素Pxで生成された受光光量C0に相当する有効電荷を、垂直方向Dvにおいて隣接して組になっている2個の積算要素Py(1)(2)に保持させることができる。
2回目の露光においても1回目の露光の際と同様であるが、点灯期間T1の受光光量C0ではなく各撮像画素Pxで消灯期間T2の受光光量C2に対応する有効電荷を生成する。その後、垂直方向Dvにおいて隣接する2個の撮像画素Pxで生成された有効電荷を、それぞれ積算要素Py(3)(4)に隣接する転送要素Pzまで転送し、転送列L2から積算列L1に電荷を移動させる。この動作により、垂直方向Dvにおいて隣接する2個の撮像画素Pxで生成された受光光量C2に相当する有効電荷を、垂直方向Dvにおいて隣接して組になっている2個の積算要素Py(3)(4)に保持させることができる。
以後も同様にして、奇数回目には1回目と同様の動作を行い、偶数回目には2回目と同様の動作を行って、両動作を交互に複数回(たとえば、5回)ずつ繰り返すと、5回ずつの露光において得られた受光光量C0,C2に対応する有効電荷が、積算要素Py(1)(2)と積算要素Py(3)(4)とに振り分けて積算される。
上述の動作を図15に示す。奇数回目の露光は点灯期間T1に対応付けてあり、点灯期間T1には受光光量C0に相当する電荷を撮像画素Pxで生成し、点灯期間T1から消灯期間T2への移行期に受光光量C0に相当する電荷を積算要素Py(1)(2)に移動させる。また、偶数回目の露光は消灯期間T2に対応付けてあり、消灯期間T2には受光光量C2に相当する電荷を撮像画素Pxで生成し、消灯期間T2から点灯期間T1への移行期に受光光量C2に相当する電荷を別の積算要素Py(3)(4)に移動させる。この動作を複数回(たとえば、5回)ずつ繰り返して受光光量C0と受光光量C2とに対応する電荷を、積算要素Pyに蓄積する。
5回ずつの露光の終了後には、積算列L1では受光光量C0,C2に対応する有効電荷が垂直方向Dvに並んで保持されているから、積算列L1に保持された有効電荷を水平転送レジスタRhに転送し、撮像素子1から受光出力として読み出せば、点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応する有効電荷を出力することができる。ただし、転送列L2には受光出力に用いる電荷が存在しないから、撮像素子1を駆動するクロック信号に同期させて受光出力を取り出すと、有効電荷を取り出す期間と有効電荷が存在しない期間とが交互に生じることになる。また、垂直方向Dvに並ぶ2個ずつの撮像画素Pxで得られた有効電荷が並んでいるから、点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応した有効電荷を交互に取り出すことができない。
そこで、積算列L1に保持された有効電荷を水平転送レジスタRhに出力する前に、図16に示すように、各積算要素Py(1)(2)に保持されている有効電荷(積算要素Py(3)(4)に保持されている有効電荷でもよい)を転送列L2に移動させ、さらに積算列L1において同じ撮像画素Pxから得られた有効電荷を保持している積算要素Py(3)(4)と水平方向Dhにおいて同じ位置に並ぶように、転送列L2の有効電荷を転送する。
この動作によって、同じ撮像画素Pxで点灯期間T1と消灯期間T2とに得られた有効電荷が水平方向Dhにおいて並ぶから、順に水平転送レジスタRhに送り出して転送することにより、点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応した有効電荷が受光出力として交互に取り出される。ここで、同じ撮像画素Pxで点灯期間T1と消灯期間T2とに得られた有効電荷を水平方向Dhにおいて並べた状態では、積算列L1および転送列L2において、有効電荷を保持する積算要素Pyおよび転送要素Pzが垂直方向に2個ずつ隣接している領域と、有効電荷を保持していない領域とが交互に生じる。したがって、積算列L1および転送列L2から水平転送レジスタRhに有効電荷を送る際に、有効電荷を保持していない領域からは受光出力を取り出すことができない。
本実施形態では、有効電荷を保持していない領域が水平転送レジスタRhに対応している期間には水平転送レジスタRhでは電子の転送を行わず、有効電荷を保持している領域から有効電荷が引き渡されたときにのみ電子の転送を行うようにすることにより、受光出力として点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応した有効電荷が交互に取り出されるようにしてある。
さらに詳しく説明すると、水平転送レジスタRhは、積算列L1と転送列L2とに対応付けて、それぞれ電子を保持する転送セルPuを1個ずつ備え、隣接する2個の転送セルPuに、1個の撮像画素Pxから得られる点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応した有効電荷がそれぞれ保持される。したがって、水平レジスタRhの全体では水平方向Dhの1ライン分の撮像画素Pxから得られた点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応した有効電荷が交互に保持され、これを水平方向Dhに転送して撮像素子1から読み出すことによって、受光光量C0,C2に対応する受光出力が交互に出力されるのである。
撮像素子1から取り出された受光出力を順に減算すれば、空間情報の演算に必要な(C0−C2)の演算を行うことができる。つまり、撮像素子1の外部で受光出力を保持しなくとも受光光量C0,C2の差を容易に求めることが可能になる。
(動作例3)
上述した動作例では、1回の露光において、すべての撮像画素Pxが点灯期間T1と消灯期間T2との一方の有効電荷を生成している。これに対して、本動作例では、図17に示すように、垂直方向Dvで隣接する2個の撮像画素Pxが、1回の露光において、点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷を生成する動作例を説明する。1回の露光時間は変調信号の1周期以上の時間とし、垂直方向Dvにおいて隣接する2個の撮像画素Pxを点灯期間T1と消灯期間T2とに対応付け、各撮像画素Pxにおいて点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷をそれぞれ個別に生成することにより、1回の露光において、点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷を、それぞれ異なる撮像画素Pxで生成する。
すなわち、受光光量C0,C2に相当する有効電荷を垂直方向Dvにおいて隣接する2個の撮像画素Pxにおいて生成する。生成された有効電荷を転送列L2において垂直方向Dvに転送すると、組になっている2個の転送要素Pzに、点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に相当する電荷を保持させることができる。得られた電荷を転送列L2から積算列L1に移動させると、垂直方向Dvにおいて隣接し組になっている2個の転送要素Pzに、点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応する電子が移動する。この動作を繰り返すことによって、垂直方向Dvにおいて隣接して組になっている2個の転送要素Pzにおいて、点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応する電子を積算することになる。
上述した動作によって、積算列L1において垂直方向Dvに並ぶ各積算要素Pyには点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷が交互に保持される。したがって、積算列L1に保持された有効電荷を水平転送レジスタRhに転送して撮像素子1から受光出力として取り出せば、点灯期間T1と消灯期間T2とに対応する有効電荷を交互に出力することができる。
本動作例は、動作例2と同様に、積算列L1からのみ有効電荷を読み出すと、有効電荷の存在しない転送セルPuと有効電荷の存在する転送セルPuとが交互に生じる上に、点灯期間T1と消灯期間T2との電荷を水平転送レジスタRhに転送する際に、有効電荷を転送列L1から水平転送レジスタRhに転送する処理が2回必要である。
そこで、図18に示すように、動作例2と同様に、組である2個の積算要素Pyのうちの一方の有効電荷を積算列L1から転送列L2に移動させるとともに、積算列L1と転送列L2との有効電荷を水平方向Dhにおいて横並びになるように移動させる。この動作により受光光量C0,C2に対応する有効電荷が水平方向Dhにおいて横並びになるから、水平転送レジスタRhに有効電荷を1回の引き渡すだけで、点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷を水平転送レジスタRhに引き渡すことができる。しかも、水平転送レジスタRhには、点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷が交互に並ぶから、動作例2と同様に、撮像素子1から取り出された受光出力を順に減算すれば、空間情報の演算に必要な(C0−C2)の演算を行うことができる。つまり、撮像素子1の外部で受光出力を保持しなくとも受光光量C0,C2の差を容易に求めることが可能になる。
(動作例4)
動作例3では、垂直方向Dvに並ぶ2個の撮像画素Pxの一方において受光光量C0に相当する有効電荷を生成し他方において受光光量C2に相当する有効電荷を生成している。したがって、受光光量C0と受光光量C2とは、対象空間において隣接している領域とはいえ異なる領域から求めていることになる。この動作では、たとえば、対象空間において2個の撮像画素Pxに対応する領域の間に段差があると、受光光量C0,C2から空間情報を正確に求めることができなくなる。
本動作例では、図19に示すように、2個の撮像画素Pxで点灯期間T1の有効電荷を生成するか消灯期間T2の有効電荷を生成するかを露光毎に交換している。具体的に言えば、奇数回目の露光の際に、2個の撮像画素Pxのうち上の撮像画素Pxで受光光量C0に相当する有効電荷を生成し、下の撮像画素Pxで受光光量C2に相当する有効電荷を生成するとすれば、偶数回目の露光の際に、上の撮像画素Pxで受光光量C2に相当する有効電荷を生成し、下の撮像画素Pxで受光光量C0に相当する有効電荷を生成するのである。この動作によって、2個の撮像画素Pxのいずれにおいても受光光量C0,C2に相当する有効電荷を生成することができる。
この動作の場合には、奇数回目の露光で得られた有効電荷は、2個の撮像画素Pxに対応付けた組の積算要素Pyの位置まで転送してから積算列L1に移動させる。このとき、組である積算要素Pyのうちの上の積算要素Pyに受光光量C0に対応する有効電荷が積算され、下の積算要素Pyに受光光量C2に対応する有効電荷が積算される。一方、偶数回目の露光で得られた有効電荷は、2個の撮像画素Pxのうちの下の撮像画素Pxで受光光量C0に対応する有効電荷が生成され、上の撮像画素Pxで受光光量C2に対応する有効電荷が生成される。
したがって、撮像領域E1で生成された受光光量C0に対応する有効電荷を、まず積算列L1において受光光量C0に対応する有効電荷を保持している積算要素Pyの位置まで転送して、転送列L2から積算列L1に移動させる。その後、撮像領域E1で生成された受光光量C2に対応する有効電荷を、積算列L1において受光光量C2に対応する有効電荷を保持している積算要素Pyの位置まで転送して、転送列L2から積算列L1に移動させる。
上述のように、奇数回目の露光の際の有効電荷は転送列L2から積算列L1に1回の操作で移動させ、偶数回目の露光の際の有効電荷は2回に分けて転送列L2から積算列L1に移動させる。この操作により点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷をそれぞれ組になる積算要素Pyにおいて積算することができる。また、撮像領域E1において垂直方向Dvに隣接している2個の撮像画素Pxの有効電荷を点灯期間T1と消灯期間T2とで個別に積算するから、対象空間において両撮像画素Pxに対応する領域の間に段差が存在していても両撮像画素Pxの有効電荷が積算により平均化され、異常値の発生が防止される。
上述の動作を図20に示す。本動作では1回の露光に点灯期間T1と消灯期間T2とを繰り返し、組になる2個の撮像画素Pxの一方を点灯期間T1に対応付けて受光光量C0に相当する電荷を生成し、他方を消灯期間T2に対応付けて受光光量C2に相当する電荷を生成する。つまり、1回の露光において、組になる2個の撮像画素Pxで、それぞれ点灯期間T1と消灯期間T2との電荷を生成し、かつ各撮像画素Pxにおいて電荷の集積と保持とを複数回ずつ繰り返す。その後、1回の露光から次の露光までの移行期に2個の撮像画素Pxで生成した電荷を2個の積算要素Pyに移動させる。次の露光では2個の撮像画素Pxの前記一方を消灯期間T2に対応付けて受光光量C2に相当する電荷を生成し、前記他方を点灯期間T1に対応付けて受光光量C0に相当する電荷を生成する。
すなわち、組になる2個の撮像画素Pxを1回の露光では、それぞれ点灯期間T1と消灯期間T2とに対応付けて撮像画素Pxで電荷を生成し、露光毎に点灯期間T1に対応付ける撮像画素Pxと消灯期間T2に対応付ける撮像画素Pxとを入れ換える。積算要素Pyは撮像画素Pxと同数設けてあり、点灯期間T1と消灯期間T2とに生成された電荷を振り分けて積算要素Pyに積算する。この動作を複数回(たとえば、5回)ずつ繰り返して受光光量C0と受光光量C2とに対応する電荷を、積算要素Pyに蓄積する。
組になる2個の積算要素Pyに点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷をそれぞれ積算した後は、動作例3と同様に、組になる積算要素Pyのうちの上の積算要素Pyで積算された有効電荷を転送列L2に移動させ、さらに下の積算要素Pyと水平方向Dhにおいて並ぶ位置に移動させ、点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷を横並びにして水平転送レジスタRhに引き渡す。この操作によって、点灯期間T1と消灯期間T2とにおける受光光量C0,C2に対応する有効電荷を受光出力として交互に取り出すことが可能になる。
(動作例5)
動作例4では、垂直方向Dvに隣接する2個の撮像画素Pxにおいて露光毎に点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷を生成し、積算要素Pyにおいては両撮像画素Pxで生成された有効電荷を点灯期間T1と消灯期間T2とのそれぞれについて積算しているが、本動作例では、図21に示すように、1個の撮像画素Pxに対して2個ずつの積算要素Pyを設け、組になる2個の撮像画素Pxに対して2組4個の積算要素Pyを用いることにより、両撮像画素Pxで生成された有効電荷を積算要素Pyで積算せずに個々に積算する。つまり、動作例4では偶数回目の露光の際には有効電荷を転送列L1から積算列L2に移動させるために2回の操作を必要としているが、本動作例では奇数回目と偶数回目との露光で利用する積算要素Pyの位置は異なっていても転送列L2から積算列L1への電荷の移動はそれぞれ1回ずつの操作になる。
本動作例では、図22に示すように、積算列L1において垂直方向Dvに並ぶ4個の積算要素PyにC0(奇),C2(奇),C2(偶),C0(偶)のような順で有効電荷が保持される(C0,C2は点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量に対応する有効電荷を意味し、括弧内の奇、偶の文字は奇数回目と偶数回目との露光を表す。以下、同様である)。そこで、2組のうちの上の組の積算要素Pyの有効電荷を転送列L2に移動させるとともに、下の列の積算要素Pyと水平方向Dhに並ぶように移動させた後に、積算列L1および転送列L2から水平転送レジスタRhに引き渡せば、C2(奇),C0(偶)の順の受光出力と、C0(奇),C2(偶)の順の受光出力とを得ることができる。各受光出力について撮像素子1の外部でC0−C2を求めて加算すれば、動作例4の受光出力からC0−C2を求めた場合と同じ値が得られる。
(動作例6)
動作例3、動作例4、動作例5は、いずれも1回の露光で点灯期間T1と消灯期間T2との受光光量C0,C2に対応する有効電荷を生成するものであり、点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷を積算した後に受光出力として撮像素子1から取り出している。すなわち、受光出力を1回取り出すと点灯期間T1と消灯期間T2との有効電荷が得られる。一方、本動作例は、図23に示すように、受光出力を1回取り出すと4区間の有効電荷が得られるようにしたものである。動作例1から動作例5はいずれも強度検知動作と距離計測動作とのいずれにも採用することができる技術であるが、本動作例は距離計測動作に採用するものである。
本動作例では、2組4個の積算要素Pyにそれぞれ異なる区間の有効電荷を積算する。また、撮像領域E1では1回の露光で2区間の有効電荷を生成し、たとえば奇数回目の露光では2個の撮像画素Pxを用いて受光光量A0,A2に対応する有効電荷を生成し、偶数回目の露光では2個の撮像画素Pxを用いて受光光量A1,A3に対応する有効電荷を生成する。
上述の動作により2回の露光により4区間の有効電荷を生成することができるから、4個の転送要素Pzを用いて各区間ごとの有効電荷をそれぞれ積算する。ここで、組にする4個の転送要素Pzについて上から順に受光光量A2,A0,A3,A1に対応する有効電荷を積算しておけば、水平転送レジスタRhを通して撮像素子1の受光出力として取り出すときに、図24に示すように、受光光量A1,A3,A0,A2に対応する有効電荷を順に取り出すことができるから、撮像素子1から受光出力を1回取り出すだけで、A1−A3、A0−A2を求め、(A0−A2)/(A1−A3)を求めることができる。この演算は別の演算回路で行う。なお、どの区間の有効電荷をどの転送要素Pzに対応付けるかは適宜に選択することができるが、位相が180度異なる区間の有効電荷を隣接する2個の転送要素Pzに対応付けることが望ましい。
上述の動作例では2回の露光を1サイクルとしているが、4回の露光を1サイクルとして、奇数回目のうち(4n−3)回目と(4n−1)回目とでは区間と撮像画素Pxとの対応関係を入れ替え、偶数回目のうち(4n−2)回目と4n回目とでは区間と撮像画素Pxとの対応関係を入れ替えるようにしてもよい(nは正の整数)。
たとえば、1回目の露光時に、垂直方向Dvに隣接する2個の撮像画素Pxのうち上の撮像画素Pxで受光光量A0に相当する有効電荷を生成し、下の撮像画素Pxで受光光量A2に相当する有効電荷を生成するとすれば、3回目の露光時には上の撮像画素Pxで受光光量A2に相当する有効電荷を生成し、下の撮像画素Pxで受光光量A0に相当する有効電荷を生成する。この動作であれば、動作例4と同様に、隣接する2個の撮像画素Pxに対応付けられる対象空間の異なる領域の間に段差が存在していても異常値が発生するのを防止することができる。
この動作を図25に示す。本動作では変調信号の周波数を10MHz程度として、強度変調光の複数周期(たとえば、1万周期)を1回の露光時間としている。また、4回の露光のうちの1回目では、たとえば、組になる2個の撮像画素Pxの一方で受光光量A0に相当する電荷を生成し、他方で受光光量A2に相当する電荷を生成する。1回の露光においては、上述した各動作例と同様に、各撮像画素Pxにおいて電荷の集積と保持とを複数回ずつ繰り返す。2個の撮像画素Pxで生成した電荷は、各区間に対応付けた4個の積算要素Pyのうちの対応する区間の積算要素Pyに対して、2回目の露光への移行期に移動させる。
2回目の露光では、2個の撮像画素Pxのうち1回目の露光で受光光量A0に相当する電荷を生成した撮像画素Pxにおいて受光光量A1に相当する電荷を生成し、1回目の露光で受光光量A2に相当する電荷を生成した撮像画素Pxにおいて受光光量A3に相当する電荷を生成する。生成された電荷は、1回目とは異なる積算要素Pyに移動させる。
3回目の露光では、2個の撮像画素Pxのうち1回目の露光で受光光量A0に相当する電荷を生成した撮像画素Pxにおいて受光光量A2に相当する電荷を生成し、1回目の露光で受光光量A2に相当する電荷を生成した撮像画素Pxにおいて受光光量A0に相当する電荷を生成する。生成された電荷は、1回目とは異なる積算要素Pyに移動させる。
4回目の露光では、2個の撮像画素Pxのうち2回目の露光で受光光量A1に相当する電荷を生成した撮像画素Pxにおいて受光光量A3に相当する電荷を生成し、2回目の露光で受光光量A3に相当する電荷を生成した撮像画素Pxにおいて受光光量A1に相当する電荷を生成する。生成された電荷は、1回目とは異なる積算要素Pyに移動させる。
要するに、4回の露光のうち1回目と3回目とでは、各撮像画素Pxに受光光量A0,A2に相当する電荷を生成させるとともに、撮像画素Pxに対応付ける区間を入れ換え、同様に2回目と4回目とでは、各撮像画素Pxに受光光量A1,A3に相当する電荷を生成させるとともに、撮像画素Pxに対応付ける区間を入れ換える。
上述の動作を行うために、積算要素Pyの個数は撮像画素Pxの個数の2倍にして各区間ごとの積算要素Pyを設けておき、各撮像画素Pxで生成された電荷を各区間ごとに振り分けて積算要素Pyに積算する。この動作を複数回(たとえば、5回)繰り返して受光光量A0と受光光量A2とに対応する電荷を、積算要素Pyに蓄積する。
上述の動作例では、水平転送レジスタRhの各転送セルPuを、積算列L1と転送列L2にそれぞれ1個ずつ対応付けて設けているが、図26に示すように、積算列L1と転送列L2とにそれぞれ2個ずつの転送セルPuを対応付けた構成を採用してもよい。どちらの構成を採用する場合でも、4区間の有効電荷を順に取り出すことができるから、4区間の有効電荷を保持するレジスタ(ラインバッファ)を設けるだけで、他に記憶手段を設けることなく受光出力を1回読み出す間に(A0−A2)/(A1−A3)の演算を行うことが可能になる。
ただし、積算列L1と転送列L2とにそれぞれ2個ずつの転送セルPuを設けた構成では、4区間の有効電荷を水平転送レジスタRhに引き渡し、4区間の有効電荷を水平転送レジスタRhで保持することができる。したがって、以後は水平転送レジスタRhによる転送の操作を行うだけで4区間の有効電荷を受光出力として順に取り出すことができるのである。
なお、4個の転送セルPuの有効電荷を同時に読み出して受光出力とする構成を水平転送レジスタRhにおける有効電荷の取出部に設けてもよい。つまり、転送セルPuの4個の分の有効電荷を一度に読み出すように水平転送レジスタRhを4ビットパラレルで読み出すようにすればよい。
上述した各動作例のうち積算列L1と転送列L2とにそれぞれ2個ずつの転送セルPuを設けた構成以外は、各区間の有効電荷と撮像画素Px、蓄積要素Py、転送要素Pzとをどのように対応付けるかという動作が異なるだけで、撮像素子1の構成は同じである。したがって、各区間の有効電荷を生成する動作、有効電荷を撮像領域E1から蓄積領域E2に転送する動作、蓄積領域E2において有効電荷を転送列L2と積算列L1との間で移動させる動作、積算列L1と転送列L2から水平転送レジスタRhに有効電荷を引き渡す動作、水平転送レジスタRhから受光出力を取り出す動作については、いずれの動作例においても共通している。
上述した各動作例において、撮像画素Pxと積算要素Pyとを対応付ける個数は1対1または1対2の関係とし、また撮像画素Pxや積算要素Pyを組にする場合に2個1組としているが、これらの個数は一例であって個数は適宜に選択することができる。
また、上述した構成例では、1個の生成要素Pgが1個の撮像画素Pxとして機能する例を示したが、1個の生成要素Pgを複数個の撮像画素Pxとして機能させる構成を採用することもできる。以下では、1個の生成要素Pgを2個の撮像画素Pxとして機能させる例を説明する。上述したように光電変換部D1には6個の感度制御電極21を設けているから、図27に示すように、3個ずつの感度制御電極21を1個の撮像画素Pxとして用いることが可能である。
感度制御電極21はウェル12に絶縁層13を介して配置されているから(図3等参照)、感度制御電極21に電圧を印加することによりポテンシャル井戸Wa,Wbを形成することができる。図示例では、ウェル12の主表面に沿ったポテンシャル井戸Waの開口面積をポテンシャル井戸Wbよりも大きくし、かつポテンシャル井戸Waをポテンシャル井戸Wbよりも深くなるように、感度制御電極21に電圧を印加している。ポテンシャル井戸Waは開口面積が大きくかつ深いから、ポテンシャル井戸Wbよりも容積が大きく、光照射により生成された電荷(電子e)がポテンシャル井戸Wbよりも多く集積される。一方、ポテンシャル井戸Wbでは、光照射により生成された電荷(電子e)の集積率はポテンシャル井戸Waよりも低く電荷が保持される。図示例では、ポテンシャル井戸Wbをポテンシャル井戸Waよりも浅くしているが、両者が同じ深さ場合でも相対的には電荷の集積と保持とが行われることになる。つまり、ポテンシャル井戸Wa,Wbの開口面積を変化させることにより、電荷の集積と保持とを行うことができる。各撮像画素Pxにおいて電荷の集積と保持とを複数回ずつ繰り返した後に、撮像領域E1から蓄積領域E2に電荷を転送する。
ところで、図27に示す例では、上述したように、1個の生成要素Pgにおいて、3個ずつの感度制御電極21を備えた2個の撮像画素Pxを形成している。以下の例では、1個の生成要素Pgに設けた2個の撮像画素Pxを組にして用いるものとする。また、各感度制御電極21を区別するために、各感度制御電極21に(1)〜(6)の数字を付与して区別する。すなわち、組になる2個の撮像画素Pxのうちの一方は感度制御電極(1)〜(3)を備え、他方は感度制御電極(4)〜(6)を備える。
ポテンシャル井戸Wa,Wbの開口面積を変化させるには、電圧を印加する感度制御電極21の個数を変化させる。図示例では、1個の撮像画素Pxの3個の感度制御電極21に電圧を印加することによりポテンシャル井戸Waを形成し、1個の撮像画素Pxのうちの中央の感度制御電極21に電圧を印加することによりポテンシャル井戸Wbを形成している。また、ポテンシャル井戸Wbを形成する際に感度制御電極21に印加する電圧は、ポテンシャル井戸Waを形成する際に感度制御電極21に印加する電圧よりも小さくしている。
したがって、強度変調光の特定の区間において、図27(a)に示すように、感度制御電極(1)〜(3)からなる撮像画素Pxでは3個の感度制御電極(1)〜(3)のすべてに同電圧である制御電圧を印加して電荷を集積するポテンシャル井戸Waを形成し、感度制御電極(4)〜(6)からなる撮像画素Pxでは中央の感度制御電極(5)にのみ電圧を印加して電荷を保持するポテンシャル井戸Wbを形成する。また、別の区間において、図27(b)に示すように、感度制御電極(1)〜(3)からなる撮像画素Pxでは中央の感度制御電極(2)にのみ電圧を印加して電荷を保持するポテンシャル井戸Wbを形成し、感度制御電極(4)〜(6)からなる撮像画素Pxでは3個の感度制御電極(4)〜(6)のすべてに同電圧である制御電圧を印加して電荷を集積するポテンシャル井戸Waを形成する。
図27(a)と図27(b)との動作を繰り返すことにより、異なる2区間について電荷の集積と保持とを繰り返すことが可能になる。たとえば、上述した受光光量A0に対応する区間と受光光量A2に対応する区間との2区間に対応付けて、図27(a)と図27(b)との状態を交互に繰り返すことにより、感度制御電極(1)〜(3)からなる撮像画素Pxで受光光量A0に相当する電荷を生成し、感度制御電極(4)〜(6)からなる撮像画素Pxで受光光量A2に相当する電荷を生成することができる。
上述の動作からわかるように、12個の感度制御電極21を用いれば、4区間の電荷の生成も行うことが可能である。要するに、感度制御電極21を用いてポテンシャル井戸の開口面積を変化させることにより、電荷の生成と電荷の保持とを行うことができる。この動作は、各動作例においても用いている。ここで、ポテンシャル井戸Wbで電荷を保持している期間でも光照射により生成された電荷がポテンシャル井戸Wbに集積されるが、空間情報を検出する際の演算により、この間の電荷の影響は除去される。