本発明は、車両用ホイールを構成するホイールリムを成形するための成形装置に関し、詳しくはフレア加工およびロール加工するための車両用ホイールリム成形装置に関する。
車両用ホイールとして、ホイールリムのドロップ部またはビードシート部の内周面に、ホイールディスクのフランジ部を溶接して構成される、いわゆる2ピースタイプのものが知られている。ここで、ホイールリムは、一般的に、所定寸法の長方形とした金属製平板から加工成形される。すなわち、長方形の金属製平板を、その短辺同士を接合することにより、円筒形素体を形成する。その後、この円筒形素体の両端開口縁を拡口して円筒形加工体を成形するフレア加工工程を行い、さらに、当該円筒形加工体を内外から所定形状の金型(トップロールとボトムロール)で挟圧するロール加工工程により所定形状のホイールリムを成形する(例えば、特許文献1)。ここで、ロール加工工程では、ロール加工中に円筒形加工体を支持固定したまま成形加工することができないため、円筒形加工体と所定の金型とを周方向に回転させながら加工を行っている。
上記したように、ホイールリムの成形工程としては、図21(A)のように、長方形の金属製平板Zを、その短辺同士を溶接して円筒形素体Xを成形する。次に、フレア加工工程としては、図21(B)のように、円筒形素体Xの両端開口縁に、切頭円錐形状のフレア加工型α、αを押圧することによって、該両端開口縁を拡口した円筒形加工体Y1を成形する。次のロール加工工程は、三工程に分けて順次実行され、徐々にホイールリム形状を整えていくように加工を施すことにより、板ヒケやシワ等の発生を抑制している。ここで、第一ロール加工工程では、図22(A)のように、ホイールリムの基本形状に成形するための第一ボトムロールβ1と第一トップロールγ1とを互いに反対方向に回転しながら、フレア加工した円筒形加工体Y1をその内外から挟圧し、第一ボトムロールβ1と第一トップロールγ1とに倣うように圧接して基本形状の円筒形加工体y2を成形する。次の第二ロール加工工程では、図22(B)のように、ホイールリムの中間形状に成形するための第二ボトムロールβ2と第二トップロールγ2とを互いに反対方向に回転しながら、第一ロール加工工程後の円筒形加工体y2をその内外から挟圧し、第二ボトムロールβ2と第二トップロールγ2とに倣うように圧接して中間形状の円筒形加工体y3を成形する。さらに次の第三ロール加工工程では、図22(C)のように、ホイールリムの完成形状に成形するための第三ボトムロールβ3と第三トップロールγ3とを互いに反対方向に回転しながら、第二ロール加工工程後の円筒形加工体y3をその内外から挟圧し、第三ボトムロールβ3と第三トップロールγ3とに倣うように圧接する。これにより、所望の形状寸法に整えられたホイールリムWを得る。
このようなフレア加工工程、第一ロール加工工程、第二ロール加工工程、第三ロール加工工程にあっては、それぞれで専用金型を使用することから、各工程毎に専用金型を装着する加工装置を夫々設置している。そして、各加工装置間で、円筒形加工体を搬送する搬送装置が設けられている。さらに、フレア加工装置の前に、円筒形素体を成形するための前工程用の装置を配置し、第三ロール加工装置の後に、真円度の調整等を行う後工程用の装置を配置することにより、金属製平板からホイールリムを成形するまでの製造ラインが構成されている。
特開平10−85881号公報(段落番号「0002」、図7)
ところで、上述した従来のホイールリムの製造ラインにあっては、各加工装置が加工順に配設されることとなるため、ライン全長が長くなっている。そのため、メンテナンス等の保全作業する場合、生産品種の変更に際して各金型を取り替える段替え作業を行う場合、加工装置に不具合が発生して修繕する場合等には、各加工装置(作業場所)への移動に労力と時間とを費やすため、総じてこれら作業が繁雑化したり、作業時間が長くなる一因となっていた。
また、従来のホイールリムの製造ラインを設置するためには、各加工装置を一列に配設する場合、長い設置スペースを必要とし、また、この製造ラインが蛇行するように各加工装置を配設したとしても、広い設置スペースを必要とする。
ホイールリムの製造ラインとして、上記した保全作業や段替え作業などの繁雑化や長時間化を抑制したり、設置スペースの省スペース化を達成するために、ライン全長を短くすることが求められている。本発明は、ホイールリム製造ラインのライン全長を短くすることが可能な車両用ホイールリム成形装置を提案するものである。
本発明は、円筒形素体の後端開口縁を拡口するための環状後部フレア加工型が装着されるものであって、環状後部フレア加工型の中心から前方へ軸前部を突出するように設けられた、該軸前部に円筒形素体をフレア加工してなる円筒形加工体をその内側から押圧するボトムロールが嵌着される片持状のボトム用回動軸を備えた後部成形基体と、該後部成形基体のボトム用回動軸を回動するボトム用駆動モータと、前縁に、ボトムロールの外径よりも内径を径大とする円筒形素体の前端開口縁を拡口するための環状前部フレア加工型が、環状後部フレア加工型の前方で同心状に対向するように装着される前部成形基体と、後部成形基体と前部成形基体とのうち少なくとも一方を、互いに前後方向に離間して円筒形素体をボトムロール前端から装脱可能とする退避位置と、該退避位置から接近する方向にボトム用回動軸に沿って移動し、ボトムロールを挿通した円筒形素体を環状後部フレア加工型と環状前部フレア加工型とにより挟圧して前後端開口縁を拡口するフレア加工位置とに位置変換移動する成形基体位置変換装置と、ボトム用回動軸と平行に自転可能に支持され、上下動可能に設けられた、フレア加工後の円筒形加工体をその外側から押圧するトップロールが嵌着される単数又は複数のトップ用回動軸と、トップ用回動軸を回動するトップ用駆動モータと、トップ用回動軸を、そのトップロールがボトムロールの上方に退避した待機位置と、ボトムロールに遊嵌したフレア加工後の円筒形加工体を該ボトムロールとトップロールとにより押圧加工するロール加工位置とに位置変換するトップロール位置変換手段とを備えたトップロール可動制御装置とを具備することを特徴とする車両用ホイールリム成形装置である。
かかる構成にあっては、フレア加工を行う一対のフレア加工型と、ロール加工を行うボトムロールおよびトップロールとを装着することにより、フレア加工とロール加工とを連続して実行できる。すなわち、後部成形基体と前部成形基体とを退避位置として、円筒形素体をボトムロールの前端から通し、後部成形基体と前部成形基体とをフレア加工位置としてフレア加工する。ここで、退避位置からフレア加工位置へ位置変換する際に、ボトムロールが環状前部フレア加工型の内側空域に挿入される。フレア加工後に、後部成形基体と前部成形基体とを離間して、ボトムロールを環状前部フレア加工型の内側空域から退出して、該ボトムロールにフレア加工した円筒形加工体を遊嵌する。そして、トップロールを待機位置から下方移動して、円筒形加工体をボトムロールとトップロールとで押圧することにより、ロール加工を行う。
このように本発明の車両用ホイールリム成形装置は、フレア加工と少なくとも該フレア加工直後のロール加工とを一台で行うようにしたものであるから、フレア加工用の加工装置と該フレア加工直後のロール加工用の加工装置とを夫々に配設する構成に比して、設置スペースを省スペース化することができる。例えば、上述した従来のフレア加工工程と第一〜第三のロール加工工程とを行う製造ラインに適用し、フレア加工と第一ロール加工とを行う装置として用いれば、製造ラインのライン長さを短縮することができる。これにより、機器の保全作業、段替え作業、不具合の修繕作業等による作業の繁雑化を抑制できると共に、該作業時間を短時間化することができ得る。
本成形装置にあって、ボトム用回動軸に装着するボトムロールとトップ用回動軸に装着するトップロールとしては、上記のように、少なくともフレア加工の直後に行われるロール加工を行うためのものである。そのため、ロール加工工程を複数工程に分けて行う場合に、その最初の工程を行うボトムロールとトップロールとを装着することを要する。例えば、上述した従来と同様に第一〜第三ロール加工工程を行う構成に適用する場合にあっては、第一ロール加工工程を行うボトムロールとトップロールとなる。これにより、従来と同様のフレア加工工程と第一ロール加工工程とを、本成形装置で実施できる。
また、本成形装置は、一対のフレア加工型を夫々装着する前部成形基体と後部成形基体とを前後方向に移動するようにし、トップロールを装着するトップ用回動軸を上下方向に移動するように配したことにより、フレア加工の加工方向とロール加工の加工方向とを夫々に異なるように設けている。そして、フレア加工する際には、環状後部フレア加工型の前方に突出したボトムロールを、環状前部フレア加工型の内側空域に挿入して、フレア加工を行うようにしている。これにより、フレア加工時には、ボトムロールとトップロールとがフレア加工工程を妨げない。また、ロール加工時には、ボトムロールを環状前部フレア加工型の内側空域から退出しているため、環状前部フレア加工型がロール加工工程を妨げない。
また、本発明の車両用ホイールリム成形装置にあって、前部成形基体と後部成形基体とは、両者を前後方向に移動するように配設する構成、一方のみを前後方向に移動するように配設する構成のいずれとすることもできる。
また、本発明のトップロール可動制御装置として、複数のトップ用回動軸を夫々に上下動可能に設け、各トップ用回動軸にそれぞれトップロールを装着できる構成とすれば、各トップ用回動軸を順に位置変換することにより、複数工程のロール加工を行うようにすることも可能である。
尚、本発明にあって、ボトムロールとトップロールとはロール加工するためのものであるから、夫々を回動するボトム用駆動モータおよびトップ用駆動モータは、ロール加工の際に、互いに逆方向に回転し、かつボトムロールの外面とトップロールの外面との回転速度が等しくなるように駆動制御するようにしている。これは、従来のロール加工工程を行う装置と同様に制御するものとすることが可能である。
上述した車両用ホイールリム成形装置にあって、後部成形基体を固定し、かつ前部成形基体を前後方向へ移動可能に配設すると共に、成形基体位置変換装置が、前部成形基体を、退避位置とフレア成形位置とに位置変換するようにした構成が提案される。
ここで、仮に、後部成形基体を前後方向に移動する構成であれば、ボトム用回動軸に装着されるボトムロールも前後方向に移動するため、ロール加工を行う毎に、ボトムロールとトップロールとの相対的な前後方向位置関係を正確に定めるようにすることを要する。これは、比較的正確な駆動制御を要することから、この制御を望ましくは省略できる方が装置として簡略化でき、かつ安定した成形を行い得る。また、前後方向に繰り返し移動すれば、その摺動部位の摩耗などによって位置制御に狂いが生ずる懸念もある。
このような問題を生じないように、かかる構成としては、前部成形基体のみを前後方向へ移動制御するようにしたものである。そのため、ボトムロールを装着するボトム用回動軸の嵌着部位とトップロールを装着するトップ用回動軸の嵌着部位との前後方向位置を予め定めておくことにより、該ボトムロールとトップロールとによるロール加工を一層精度良くかつ安定して行うことができる。したがって、ロール加工時に、ボトムロールとトップロールとの前後方向位置がずれることにより生ずる不具合品の発生を抑制することができるため、加工不良率を低減でき、結果として不良品を廃棄するロスをも低減でき得る。
さらに、上述した車両用ホイールリム成形装置にあって、本発明は、円筒形素体を支持し、該ボトム用回動軸の中心線に沿って前後方向に移動可能に設けられたワーク支持部材を備え、該ワーク支持部材を、成形基体位置変換装置により退避位置とした前部成形基体と後部成形基体との間に位置する受渡位置と、ボトムロール前端から挿通された円筒形素体を環状前部フレア加工型と環状後部フレア加工型とによりフレア加工するフレア加工付与位置と、フレア加工後の円筒形加工体をボトムロールに遊嵌するロール加工付与位置とに位置変換するワーク移送装置を備えているものである。
本発明の車両用ホイールリム成形装置は、後部フレア成形型とボトムロールとが前後に配設される構成であるため、フレア加工する位置とロール加工する位置も相対的に前後する。かかる構成のワーク移送装置は、フレア加工する位置(フレア加工付与位置)とロール加工する位置(ロール加工付与位置)とに、円筒形素体およびフレア加工した円筒形加工体を移送するものである。これにより、円筒形素体をフレア加工に適したフレア加工付与位置に合わせることがことができると共に、フレア加工した円筒形加工体をロール加工付与位置に正確に合わせることができる。特に、ロール加工では円筒形加工体の径方向(上方)から押圧されるため、該円筒形加工体とボトムロール(およびトップロール)との前後位置関係を正確に合わせることにより、ロール加工の精度を安定して維持することができ得る。
ここで、ワーク移送装置が、成形基体位置変換装置に連繋され、前部成形基体の退避位置からフレア加工位置への前進に連動してワーク支持部材を受渡位置からフレア加工付与位置に移動し、さらに、前部成形基体のフレア加工位置からの後退に連動して、ワーク支持部材のフレア加工付与位置からロール加工付与位置に移動するようにした構成が提案される。
かかる構成にあっては、前部成形基体と後部成形基体とのうち少なくとも一方の前後方向移動に連動して、ワーク移送装置による円筒形素体(又は円筒形加工体)の位置変換作動を行うようにしたものである。これにより、円筒形素体をフレア加工に合わせてフレア加工付与位置に、円筒形加工体をロール加工に合わせてロール加工付与位置に夫々にタイミング良く位置変換することができる。
ここで、ワーク移送装置は、独自に駆動手段(モータや油圧シリンダ等)を備え、成形基体位置変換装置の駆動手段と連動するように駆動制御するようにした構成とすることができる。又は、駆動手段を独自に備えておらず、成形基体位置変換装置の駆動手段により駆動する構成としても良い。これは、すなわち、成形基体位置変換装置の駆動手段が、ワーク移送装置の駆動手段も兼ねるようにしたものである。
本発明の車両用ホイールリム成形装置は、上述したように、後部成形基体と前部成形基体とをフレア加工位置に位置変換することにより環状後部フレア加工型と環状前部フレア加工型とにより円筒形素体をフレア加工し、その後に円筒形素体をフレア加工してなる円筒形加工体をボトムロールに遊嵌して、トップ用回動軸をロール加工位置に位置変換することにより該ボトムロールとトップロールとによって円筒形加工体をロール加工するものであり、当該装置一台でフレア加工と少なくとも該フレア加工直後のロール加工とを連続して行い得る。本発明の車両用ホイールリム成形装置を、ホイールリムを生産するための製造ラインに適用することによって、該製造ラインのライン長さを、上述した従来の各加工工程毎に加工装置を配設した構成に比して短くすることができる。したがって、機器の保全作業、段替え作業、不具合の修繕作業等による作業の繁雑化を抑制できると共に、該作業時間を短時間化することができるため、総じてホイールリムの生産性を向上でき得る。
また、成形基体位置変換装置が、前部成形基体のみを前後方向へ移動することにより退避位置とフレア成形位置とに位置変換するようにした構成にあっては、前部成形基体のみを移動するために、フレア加工位置への位置変換を安定して行うことができる。また、後部成形基体に装着されるボトムロールを前後方向に不動とするために、トップロールとボトムロールとのロール加工を精度良くかつ安定して行うことができる。したがって、ロール加工時の加工不良率を低減でき、結果として不良品を廃棄するロスをも低減でき得る。
また、円筒形素体および円筒形加工体を支持するワーク支持部材を、受渡位置とフレア加工付与位置とロール加工付与位置とに位置変換するワーク移送装置を備えた構成にあっては、後方に位置するフレア加工付与位置に円筒形素体を合わせることができると共に、前方に位置するロール加工付与位置に円筒形加工体を正確に位置決めすることができる。このロール加工付与位置への正確な移送によって、ロール加工の精度を安定して維持することができ、当該ロール加工による加工不良の発生率を低減する効果が一層向上する。
また、ワーク移送装置が、成形基体位置変換装置に連動して、ワーク支持部材を受渡位置、フレア加工付与位置、ロール加工付与位置に移動するようにした構成にあっては、円筒形素体をフレア加工に合わせてフレア加工付与位置に、円筒形加工体をロール加工に合わせてロール加工付与位置に夫々にタイミング良く位置変換することができる。
本発明の各実施例を添付図面を用いて詳述する。
実施例1は、フレア加工工程、第一〜第三のロール加工工程を行う製造ラインにあって、フレア加工工程とホイールリムの基本形状を成形するための第一ロール加工工程とを一台の装置により行うようにした車両用ホイールリム成形装置1である。一方、実施例2は、フレア加工工程から全てのロール加工工程を一台で実行する車両用ホイールリム成形装置101である。
本実施例1の車両用ホイールリム成形装置1は、図1〜3のように、ボトム用回動軸11を自転可能に支持した後部成形基体9と、ボトム用回動軸11に沿って前後方向へ移動可能に設けられた前部成形基体30と、該前部成形基体30を前後方向へ移動する成形基体位置変換装置39と、トップ用回動軸61を備えたトップロール可動制御装置60とを備えている。さらに、円筒形素体Xおよびフレア加工した円筒形加工体Y1を前後方向へ移送するワーク移送装置40を備えている。
上記した後部成形基体9は当該成形装置1に固定されており、前後方向に移動不能に配設されている。この後部成形基体9には、図3のように、ボトム用回動軸11が前後方向に沿って水平となるように、自転可能に支持されている。このボトム用回動軸11は、その軸前部11aを後部成形基体9の前縁から突出するようにしており、該軸前部11aを支持しない所謂片持状に支持して設けられている。また、後部成形基体9には、軸前部11aが突出する前縁部位に、該ボトム用回動軸11と同心状に環状後部フレア加工型21aが固着されている。環状後部フレア加工型21aを取り付けた状態で、ボトム用回動軸11の軸前部11aが該環状後部フレア加工型21aの内側を貫通して前方へ突出するように配設されている。尚、環状後部フレア加工型21aは所定ボルト等で後部成形基体9に固定され、交換可能としている。
ボトム用回動軸11の軸前部11aには、ボトムロール23が嵌着される。ボトムロール23は、所定の取付具(図示省略)によってボトム用回動軸11に固結され、該ボトム用回動軸11と一体的に回動するようになっている。そして、交換可能である。このボトムロール23は、ホイールリムの基本形状を成形するためのものであり(図11参照)、その外径が、後述する環状前部フレア加工型21bの内径に比して小径となるように形成されている。尚、ボトムロール23は、円筒形素体Xなどを遊嵌可能である。
さらに、このボトム用回動軸11には、その後端部に、回動ギア12が接合されている。また、ボトム用回動軸11の下方には、ボトム用駆動モータ14が配設されており、該ボトム用駆動モータ14の駆動軸に接合した駆動ギア13が、ボトム用回動軸11の回動ギア12の鉛直下方位置となるようにしている。そして、回動ギア12と駆動ギア13とに、所定無端状の伝達ベルト15がかけられている。ボトム用駆動モータ14を駆動することにより、伝達ベルト15を介してボトム用回動軸11を回動する。
ここで、ボトム用駆動モータ14は、図1のように、モータ駆動制御装置16に接続されている。そして、モータ駆動制御装置16により、ボトム用駆動モータ14の回動開始停止の制御、回動方向の制御、回動速度の制御を行っている。さらに、このモータ駆動制御装置16には、後述するトップ用駆動モータ65も接続されており、同様に駆動制御する。
一方、上記した前部成形基体30は、図3,4のように、後部成形基体9の前方に位置し、前後方向に移動可能に配設されている。この前部成形基体30の後部に、環状後部フレア加工型21aと一対の環状前部フレア加工型21bが、該環状後部フレア加工型21aと同心状に対向するように固着されている。環状前部フレア加工型21bが固着された状態で、上記したボトムロール23およびボトム用回動軸11の軸前部11aを、該環状前部フレア加工型21bの内側空域31に挿入可能としている(図8参照)。尚、この環状前部フレア加工型21bにあっても、所定ボルトなどで前部成形基体30に固定され、交換可能としている。
本実施例にあっては、上記した環状後部フレア加工型21aと環状前部フレア加工型21bとは、切頭円錐形状に形成されている。
この前部成形基体30は、上記した後部成形基体9のボトム用回動軸11と平行に設けられた案内レール35,35に摺動可能に支持されている(図4参照)。すなわち、前部成形基体30は、案内レール35,35に従って前後方向に移動可能となっている。また、この前部成形基体30の前方には、油圧シリンダ37a,37bが上下に並設されており、前部成形基体30の前端に上下に並んで接続されている。油圧シリンダ37a,37bは、ボトム用回動軸11の中心線と平行に前後方向へ伸縮駆動するように設けられており、その駆動により、前部成形基体30を前後方向へ移動する。この油圧シリンダ37a,37bにオイルを流出入するための所定の油圧回路と該油圧回路を制御する制御手段とを設けた駆動制御装置38が配設されており(図1参照)、油圧シリンダ37a,37bの伸縮駆動を制御する。詳述すると、駆動制御装置38は、油圧シリンダ37aの伸縮と、油圧シリンダ37bの伸縮とを共に同期させる制御を行う。油圧シリンダ37aは、油圧シリンダ37bに比して、断面積の大きい大容量のため、押圧力が強い。一方、油圧シリンダ37bは、油圧シリンダ37aに比して、微妙な位置決めを行うことができる。そのため、駆動制御装置38は、フレア加工時には、油圧シリンダ37aの伸縮駆動制御を主として、油圧シリンダ37a,37bの伸縮を同期制御する。一方、駆動制御装置38は、前部成形基体30の前後方向の位置決めを行いたい時には、油圧シリンダ37bの伸縮駆動制御を主として、油圧シリンダ37a,37bの伸縮を同期制御する。
このように前部成形基体30を前後方向へ移動制御するための、案内レール35,35、油圧シリンダ37a,37b、駆動制御装置38により、本発明にかかる成形基体位置変換装置39を構成している。ここで、成形基体位置変換装置39は、前部成形基体30を後退(前方移動)した場合に、環状前部フレア加工型21bとボトム用回動軸11の軸前部11aとが前後に離間して生じる空域を介して、円筒形素体Xをボトムロール23に通すことができると共に、ロール加工後の円筒形加工体Y2をボトムロール23から取り出すことができるように、前方停止位置を設定している(図8(A)参照)。この前方停止位置が、本発明にかかる退避位置h1である。また、前部成形基体30を退避位置h1から前進(後方移動)することにより、ボトムロール23を挿通した円筒形素体Xを環状後部フレア加工型21aと環状前部フレア加工型21bとで挟圧して、該円筒形素体Xの前後端開口縁を拡口するフレア加工を行う。このフレア加工する後方位置が、本発明にかかるフレア加工位置h2である(図8(B)参照)。
尚、本実施例にあって、前部成形基体30の前進および後退としては、該前部成形基体30を主体とする作動で示している。すなわち、前部成形基体30の前進は、車両用ホイールリム成形装置1の構成からみれば後方移動であり、また、前部成形基体30の後退は、車両用ホイールリム成形装置1の構成からみれば前方移動である。
尚、本実施例1にあっては、後部成形基体9を当該成形装置1に固設し、前部成形基体30を成形基体位置変換装置39により前後方向へ移動するようにした構成である。
次に、上記したワーク移送装置40について図5,6により説明する。
車両用ホイールリム成形装置1の左右両側部に、上記した案内レール35,35と平行に移送用案内レール41,41が配設されている。この移送用案内レール41,41には、上記した前部成形基体30に連結された移送中継部材42,42が摺動可能に配されていると共に、該移送中継部材42,42の後方に同様に摺動可能な移送受動部材43,43が配されている。ここで、移送中継部材42と移送受動部材43とは、いわゆる送りねじ機構により連動するように設計されている。すなわち、移送中継部材42には、ボールネジにより雌ねじを構成した中継ナット45が接合されており、該中継ナット45に噛み合う中継ねじ軸46が、自転可能に支持されて移送用案内レール41に並設されている。この中継ねじ軸46の後方には、同心状に受動ねじ軸47が自転可能に支持されており、中継ねじ軸46と受動ねじ軸47とが継ぎ手機構48を介して連結されている。この継ぎ手機構48は、中継ねじ軸46と受動ねじ軸47とを一体的に回転するようにしている。そして、ボールネジにより雌ねじを構成した受動ナット49が、受動ねじ軸47と噛み合う構成として、移送受動部材43に接合されている。この送りねじ機構により、移送中継部材42が前後方向に移動するに従って、中継ナット45が連結された中継ねじ軸46が回動する。そして、中継ねじ軸46の回動が継ぎ手機構48を介して伝達されて受動ねじ軸47が回動することにより、受動ナット49と共に移送受動部材43が、移送中継部材42と同方向に移動する。尚、本実施例にあっては、移送中継部材42の移動量に対して、移送受動部材43の移動量が所定割合少なくなるように、中継ねじ軸46と受動ねじ軸47のピッチを夫々設定している。
また、移送受動部材43,43には、夫々の上端に差し渡された架台50が配設されている。そして、この架台50の中央部位に、上下方向に伸縮駆動するエアシリンダ51が配設されており、該エアシリンダ51に昇降支持台52が接合されている。この昇降支持台52は、エアシリンダ51の伸縮駆動により昇降動する。さらに、昇降支持台52上には、二個のロールを遊転可能に並設してなるワーク支持部材53が配設されている。このワーク支持部材53は、そのロールを回転軸線が前後方向に平行とするように構成されており、該二個のロール上に円筒形素体X等を乗載して支持するものである。
ここで、ワーク支持部材53は、円筒形素体X等を乗載した場合に、該円筒形素体Xの中心線とボトム用回動軸11の中心線とを鉛直上下方向で平行となるように設けられている。そして、エアシリンダ51の伸縮駆動により昇降動し、乗載した円筒形素体X等の中心線がボトム用回動軸11の中心線と一致する位置に位置決めすることができるようになっている。
さらに、上記した架台50には、管端支持板55,55が、ワーク支持部材53の前後でボトム用回動軸11と直交するように夫々並設されている。この管端支持板55,55は、その間隔を変更可能とし且つ所定間隔で保持可能とするように設けられており、円筒形加工体Y1や円筒形加工体Y2の幅寸法より若干広い間隔となるように設定している。ここで、管端支持板55,55は、矩形状板の中央上部を略半円形状に欠損した形状に形成されており、その欠円端部が、上記した前後のフレア加工型21a,21bと接触せず、且つ支持位置m1としたワーク支持部材53にフレア加工後の円筒形加工体Y1を支持している場合に、該円筒形加工体Y1の拡口端と当接する寸法形状に設定されている。さらに、管端支持板55,55は、その欠円形状により、円筒形素体Xを上述したワーク支持部材53に支持位置m1で支持している場合に、該円筒形素体Xとも接触しない。尚、この管端支持板55,55は、成形するホイールリムに応じて、夫々に準備する必要がある。
このようなワーク移送装置40は、上述したように、成形基体位置変換装置39の駆動により、移送中継部材42および移送受動部材43を介して、ワーク支持部材53を前後方向へ移動するようになっている。そして、ワーク支持部材53の前後方向への移動量は、上述した送りねじ機構の中継ねじ軸46と受動ねじ軸47とのピッチの比率により決まる。本実施例にあっては、ワーク支持部材53を、前部成形基体30を退避位置h1とした場合に、ボトムロール23と環状前部フレア加工型21bとの間で、円筒形素体Xを乗載可能であり且つトップロール24によるロール加工後の円筒形加工体Y2を取出可能とする受渡位置f1とする(図8(A)参照)。そして、ワーク支持部材53を、前部成形基体30の前進に伴って前進(後方移動)して、円筒形素体Xの前後端開口縁を環状後部フレア加工型21aと環状前部フレア加工型21bとにより押圧してフレア加工するフレア加工付与位置f2にまで移動する(図8(B)参照)。さらに、ワーク支持部材53を、前部成形基体30の後退に伴って後退(前方移動)して、環状前部フレア加工型21bの内側空域31から退出したボトムロール23に、フレア加工した円筒形加工体Y1を遊嵌するロール加工付与位置f3に移動する(図9(A)参照)。このように、ワーク支持部材53は、前部成形基体30を退避位置h1とした時に受渡位置f1とし、前部成形基体30をフレア加工を開始する位置とした時にフレア加工付与位置f2とし、前部成形基体30を環状前部フレア加工型21bの内側空域31からボトムロール23を退出しているところでロール加工付与位置f3とするように、上記した中継ねじ軸46と受動ねじ軸47とのピッチ比率を設定している。
尚ここで、ワーク支持部材53をフレア加工付与位置f2からロール加工付与位置f3に移動する場合にあっては、前後端開口縁を拡口した円筒形加工体Y1を、その後端開口縁を上記した管端支持板55により押すことにより、環状後部フレア加工型21aから離脱して、該管端支持板55に当接したまま移送する。そのため、この円筒形加工体Y1の後端を常に定めることができるから、ボトムロール23に遊嵌するロール加工付与位置f3に正確かつ安定して位置決めすることができる。
また、ワーク支持部材53は、ロール加工付与位置f3で、上記したエアシリンダ51により降動して、フレア加工後の円筒形加工体Y1を、ボトムロール23にぶら下げて支持された状態とする。このようにワーク支持部材53が、円筒形加工体Y1の下方で支持しない位置を、降下位置m2とする(図9(B)参照)。そして、ワーク支持部材53は、エアシリンダ51の昇降駆動(伸縮駆動)により、上記した支持位置m1と降下位置m2とに位置変換する。
次に、上記したトップロール可動制御装置60について説明する。
後部成形基体9の正面視右側には、図2のように、正面視L形のL形支持体66が配設され、該L形支持体66に、位置変換支軸63がボトム用回動軸11と平行となるように自転可能に支持されている(図7参照)。そして、位置変換支軸63に、可動アーム62が接合されている。可動アーム62には、位置変換支軸63の右側領域に配される端部に、油圧シリンダ64の一端が回動可能に連結されており、位置変換支軸63の接合部位に対して反対側の端部に、トップ用回動軸61が自転可能に支持されている(図10参照)。このトップ用回動軸61は、位置変換支軸63と平行に設けられている(図7参照)。尚、この可動アーム62は、後述するように、トップ用回動軸61に取り付けたトップロール24をボトムロール23上へ降動してロール加工する際に、該ボトムロール23に遊嵌した円筒形加工体Y1の最上部に上方から押圧するように、位置変換支軸63の接合部位とトップ用回動軸61の支持部位との間の長さを設定している(図10参照)。
トップ用回動軸61の前端部には、上記したトップロール24が嵌着されている。このトップロール24は、ホイールリムの基本形状に成形するためのものである(図11参照)。そして、トップロール24は、ボトムロール23との夫々の凹凸形状の幅方向位置が合うように、第一トップ用回動軸61に取り付けられている。尚、トップロール24は、所定の取付具(図示省略)によりトップ用回動軸61に固定され、交換可能となっている。
また、上記したように、油圧シリンダ64の一端部は、可動アーム62に回動可能に連結されている。そして、油圧シリンダ64の反対側の端部は、L形支持体66に回動可能に連結されている。油圧シリンダ64は、伸縮駆動するように配設されており、この駆動に従って、可動アーム62を上下に揺動し、これに伴ってトップ用回動軸61とトップロール24とが位置変換支軸63を回動中心として上下方向に円弧移動する。すなわち、油圧シリンダ64を縮退することにより、トップロール24を、右上方へ円弧移動して、ボトムロール23から右斜め上方に退避した位置(以下、待機位置t1)とする。また、油圧シリンダ64を伸長することにより、トップロール24を、待機位置t1から左下方へ円弧移動して、ボトムロール23の直上で近接する位置(ロール加工位置t2)へ動かす。尚、上述したようにトップ用回動軸61とボトム用回動軸11とは平行であることから、油圧シリンダ64の伸縮駆動によって、トップロール24は、ボトムロール23の横断面に沿って上下方向に円弧移動する。
また、トップロール可動制御装置60には、図2のように、油圧シリンダ64を伸縮駆動するシリンダ駆動制御装置59が設けられている。このシリンダ駆動制御装置59としては、油圧シリンダ64内に所定流量のオイルを流入する流入バルブと流出する流出バルブの開閉を夫々に駆動制御することにより、該油圧シリンダ64を伸縮駆動するものである。ここで、流入バルブと流出バルブの駆動制御としては、例えば、トップロール24に作用する圧力が所定閾値となると開閉する等のように設定されている。この場合には、圧力センサ(図示省略)が設けられており、該センサからえた信号に従って開閉駆動するようにしている。このように油圧シリンダ64を伸縮駆動するシリンダ駆動制御装置59にあっては、従来のロール加工工程を行う加工装置に用いられたものと同じものを用いることができ、その詳細については省略する。
本実施例1にあっては、油圧シリンダ64の駆動によりトップロール24が待機位置t1(図10(A)参照)から下方へ移動して、ボトムロール23に遊嵌してぶら下げられている円筒形加工体Y1を押圧する。そして、トップロール24を、ボトムロール23との間で円筒形加工体Y1を挟圧するロール加工位置t2(図10(B)参照)まで移動し、その後、上方へ移動して待機位置t1に戻す。ここで、ロール加工位置t2は、上述したように、トップロール24に作用する圧力により設定している。
尚、上記した位置変換支軸63、可動アーム62、油圧シリンダ64、シリンダ駆動制御装置59により、本発明にかかるトップロール位置変換手段が構成されている。また、トップロール位置変換手段、トップ用回動軸61、トップ用駆動モータ65により、本発明にかかるトップロール可動制御装置60が構成されている。
また、上記したトップ用回動軸61には、その後端部位に、トップ用駆動モータ65が連結されている。このトップ用駆動モータ65を駆動することにより、トップ用回動軸61を回動してトップロール24を回転する。このトップ用駆動モータ65は、トップ用回動軸61と一体的に円弧移動するように設けられている。尚、トップ用駆動モータ65の駆動制御は、上記したモータ駆動制御装置16により行っている。
次に、上述した車両用ホイールリム成形装置1を、第一〜第三ロール加工工程を設定したホイールリムWの製造ラインに設置した場合にあって、ホイールリムWの成形過程について説明する。
従来と同様に、所定寸法形状としたスチール製(アルミニウム合金製、マグネシウム合金製等でも良い)の金属製平板Zから円筒形素体Xを成形する(図21(A)参照)。円筒形素体Xの成形過程については省略する。この円筒形素体Xを、図示しない搬送装置により車両用ホイールリム成形装置1に搬送する。車両用ホイールリム成形装置1には、環状後部フレア加工型21a、ボトムロール23、環状前部フレア加工型21b、トップロール24が取り付けられている。そして、前部成形基体30を退避位置h1とし、トップロール可動制御装置60がトップ用回動軸61を待機位置t1とし、ワーク移送装置40がワーク支持部材53を受渡位置f1とし且つ支持位置m1としている。
円筒形素体Xは、図8(A)のように、ワーク移送装置40のワーク支持部材53に乗載されて支持される。その後、成形基体位置変換装置39の油圧シリンダ37a,37bを駆動制御することにより、前部成形基体30を前進し、これに伴いワーク支持部材53を前進する。この移動により、円筒形素体Xをボトムロール23の前端から通し、さらにボトムロール23を環状前部フレア加工型21bの内部空域31へ挿入する。そして、図8(B)のように、ワーク支持部材53をフレア加工付与位置f2に移動し、前部成形基体30をフレア加工位置h2に移動することにより、円筒形素体Xをフレア加工する。このフレア加工によって、円筒形素体Xの前後端開口縁を拡口した円筒形加工体Y1を得る。
ここで、成形基体位置変換装置39は、容量の大きい油圧シリンダ37aを主として制御し、容量の小さい油圧シリンダ37bを従として制御することにより、フレア加工に必要な押圧力を確保する。そして、フレア加工を終了する直前に、容量の小さい油圧シリンダ37bを主として制御し、容量の大きい油圧シリンダ37aを従として制御することにより、前部成形基体30の前後方向の位置決めを正確に行うようにしている。これにより、加工に要する押圧力を確保すると共に、正確にフレア加工することができるようにしている。
フレア加工の後に、成形基体位置変換装置39の油圧シリンダ37a,37bを駆動制御して、前部成形基体30を後退し、これに伴いワーク支持部材53を後退する。ここで、円筒形加工体Y1は、その後端を管端支持板55に当接して環状後部フレア加工型21aから外れ、その当接したままワーク支持部材53により前方へ移送される。そして、前部成形基体30の後退によって、図9(A)のように、ボトムロール23が環状前部フレア加工型21bの内部空域31から退出し、該ボトムロール23に円筒形加工体Y1を遊嵌するロール加工付与位置f3にワーク支持部材53を位置決めして停止する。尚、このロール加工付与位置f3は、円筒形加工体Y1の後端を基準として、容量の小さい油圧シリンダ37bの駆動制御によって精度良く位置決めすることができる。その後、ワーク移送装置40のエアシリンダ51を降動(縮退)することにより、図9(B)のように、ワーク支持部材53を下方移動して、該ワーク支持部材53が円筒形加工体Y1を支持しない状態とする。この場合、円筒形加工体Y1は、その上部内面をボトムロール23の上部外面により支持された、所謂ぶら下げられた状態となる。
次にモータ駆動制御装置16により、ボトム用駆動モータ14とトップロール可動制御装置60のトップ用駆動モータ65を駆動開始する。ここで、ボトム用駆動モータ14とトップ用駆動モータ65とは、互いに逆方向に回動し、かつボトムロール23の外面の回転速度とトップロール24の外面の回転速度とが同じとなるように、各モータの回動速度を夫々制御している。
その後、トップロール可動制御装置60の油圧シリンダ64を駆動して、トップロール24を待機位置t1から下方に円弧移動する。そして、トップロール24が、ボトムロール23にぶら下がっている円筒形加工体Y1の最上部分に上方から圧接し、さらに押し付けていく。ここで、円筒形加工体Y1は、トップロール24とボトムロール23とにより挟まれることにより、両者の回動に従って回転し、周方向に亘ってほぼ均一に押圧加工が施されていく。そして、トップロール24とボトムロール23とに倣うように圧接して、該トップロール24に作用する圧力が所定閾値になると、油圧シリンダ64を駆動停止する。この停止位置が上記したロール加工位置t2であり、図10(B),図11のように、トップロール24とボトムロール23とにより挟圧して、ホイールリムの基本形状である円筒形加工体Y2を成形する。その後、油圧シリンダ64を逆方向へ駆動して、トップロール24をロール加工位置t2から上方へ円弧移動して待機位置t1に戻す。そして、ボトム用駆動モータ14とトップ用駆動モータ65を回動停止する。このように、円筒形加工体Y1をホイールリムの基本形状の円筒形加工体Y2に成形する第一ロール加工が行われる。
上記の第一ロール加工が終了すると、ワーク移送装置40のエアシリンダ51を昇動(伸長)して、そのワーク支持部材53を支持位置m1として円筒形加工体Y2を乗載して支持する。その後、成形基体位置変換装置39により後部成形基体30を後方移動して退避位置h1とすると共に、これに伴って、ワーク支持部材53が後方移動して受渡位置f1とする。円筒形加工体Y2を、図示しない搬送装置により、当該車両用ホイールリム成形装置1から取り出して、次の第二ロール加工を行う加工装置(図示省略)へ搬送する。
ホイールリムの基本形状に成形した円筒形加工体Y2は、次の加工装置により第二ロール加工されてホイールリムの中間形状に成形される。その後、第三ロール加工を行う加工装置に搬送され、ホイールリムの完成形状に成形される。さらに、エキスパンダ加工を行う加工装置に搬送されて、真円に成形される。このようにして、所望のホイールリムWを得る。尚、第二ロール加工、第三ロール加工、エキスパンダ加工については、従来構成の加工装置をより行うことができるため、それらについては詳細を省略する。
このように、本実施例の車両用ホイールリム成形装置1は、従来別々の装置で行っていたフレア加工と第一ロール加工とを行うことができるものであり、本装置1台で、上述した従来構成のフレア加工工程と第一ロール加工工程とを実施できる。車両用ホイールリム成形装置1にあって、前後のフレア加工型21a,21bを前後方向に移動するフレア加工の際には、ボトムロール23を環状前部フレア加工型21bの内部空域31に一時的に収容することにより、当該フレア加工を妨げず、また、トップロール24を上下方向に移動するロール工程の際には、前後のフレア加工型21a,21bが前後に離間することにより、当該ロール加工を妨げない。このような構成とすることにより、フレア加工とロール加工とを当該装置一台で行うことができるようにしている。
車両用ホイールリム成形装置1を、金属製平板からホイールリムを成形する製造ラインに設置することにより、当該製造ラインのライン長を、上述した従来の各加工工程毎に加工装置を配設した製造ラインに比して、短縮することができる。そのため、メンテナンス作業や、トップロールやボトムロールなどを交換する段替え作業等を行う場合に、その作業を行う作業者の移動距離を抑制でき、作業の効率化と短時間化を実現できる。また、上述した従来の各加工工程毎に加工装置を配設した場合に比して、製造ラインの設置スペースを省スペース化することができる。
実施例2の車両用ホイールリム成形装置101にあっては、上述した従来構成のフレア加工工程および第一〜第三ロール加工工程に相当する成形加工を、当該装置一台で行うようにしたものである。
車両用ホイールリム成形装置101は、図12,13のように、上述した実施例1の車両用ホイールリム成形装置1と同じ構成の、後部成形基体9と、前部成形基体30とを備えている。さらに、前部成形基体30を前後方向へ移動制御する成形基体位置変換装置39と、ワーク移送装置40とにあっても、実施例1と同じ構成としている。
ここで、本実施例2にあっては、後部成形基体9のボトム用回動軸11の軸前部11aに、ホイールリムの完成形状を成形するためのボトムロール123を嵌着する。
一方、本実施例2にあっては、図12,13のように、第一トップ用回動軸161を備えた第一トップロール可動制御装置160と、第二トップ用回動軸171を備えた第二トップロール可動制御装置170とが夫々に設けられている。ここで、第一トップ用回動軸161には、その前端部位に、ホイールリムの予備中間形状を成形するための第一トップロール124aを嵌着する(図18参照)。この予備中間形状としては、ホイールリムの完成形状を略体化した形状であって、該完成形状に至るまでの中間的な形状として予め設定している。また、第二トップ用回動軸171には、その前端部位に、ホイールリムの完成形状を成形する第二トップロール124bを嵌着する(図20参照)。尚、この第二トップロール124bは、上記したボトムロール123と対を成すものである。
第一トップロール可動制御装置160にあっては、上述した実施例1のトップロール可動制御装置60と同様に、図13のように、L形支持体166が後部成形基体9の正面視右側方に配設され、このL形支持体166にボトム用回動軸11と平行に第一位置変換支軸163が自転可能に支持されている(図14参照)。この第一位置変換支軸163に第一可動アーム162が接合されており、該第一可動アーム162の、第一位置変換支軸163の右側領域となる端部に第一油圧シリンダ164の一端が回動可能に連結されている。さらに、この第一可動アーム162の、第一油圧シリンダ164の連結部の反対側の端部に、第一トップ用回動軸161が自転可能に支持されている。この第一トップ用回動軸161は、第一位置変換支軸163と平行に設けられ、その前端部に、上記した第一トップロール124aが嵌着されている(図14参照)。そして、第一油圧シリンダ164を伸縮駆動制御することにより、第一トップ用回動軸161(および第一トップロール124a)を、第一位置変換支軸163を回動中心として上下方向に円弧移動する(図16,17参照)。また、第一トップ用回動軸161の後端には、第一トップ用駆動モータ165が連結されており、該トップ用駆動モータ165を駆動することにより第一トップロール124aを回転する。尚、第一トップ用駆動モータ165の駆動制御は、上述した実施例1と同様に、モータ駆動制御装置16により行っている。
この第一トップロール可動制御装置160には、図15のように、第一油圧シリンダ164を駆動制御するための油圧回路191と位置制御装置192とを備えている。
油圧回路191は、正逆回転するポンプ195と、ポンプ195を駆動するサーボモータ196とを備えている。第一油圧シリンダ164内のヘッド側領域167aと、ポンプ195の一端とがオイル流路193によって接続されており、第一油圧シリンダ164内のロッド側領域167bとポンプ195のもう一端とがオイル流路194によって接続されている。また、サーボモータ196の回転角および回転速度と、ポンプ195の回転角および回転速度とが対応するように構成されている。詳述すると、サーボモータ196を正回転させると、ポンプ195が正回転し、ヘッド側領域167aへオイルを供給し、第一油圧シリンダ164を伸長させるようになっている。また、サーボモータ196を逆回転させると、ポンプ195が逆回転し、ロッド側領域167bへオイルを供給し、第一油圧シリンダ164を縮退させるようになっている。そして、位置制御装置192により、サーボモータ196の回転方向(正逆方向)と回転角と回転速度とを制御することによって、第一油圧シリンダ164のヘッド側領域167aとロッド側領域167bとに流動するオイル量を精度良く制御し、該第一油圧シリンダ164を精密かつ正確に伸縮駆動する制御を行うことができるように構成されている。
この油圧回路191は、ポンプ195の駆動によりヘッド側領域167aとロッド側領域167bとの間でオイルのやり取りをするように設けられており、いわゆる閉鎖された回路に構成されている。ただし、ヘッド側領域167aとロッド側領域167bとの間でオイルのやり取りをする場合には、ロッド164a(第一油圧シリンダ164のロッド)におけるロッド側領域167b内に位置する部分の体積分に相当するオイルが足りなくなったり、余ったりする現象が起こる。この対策として、油圧回路191は、シャトルバルブ197と、タンク198とを備えている。詳述すると、シャトルバルブ197は、いわゆる低圧優先型シャトルバルブである。シャトルバルブ197は、第一吸排口197a、第二吸排口197b、第三吸排口197cを備えている。第一吸排口197aはオイル流路193に接続され、第二吸排口197bはオイル流路194に接続され、第三吸排口197cはタンク198に接続されている。オイル流路193内の圧力がオイル流路194内の圧力よりも高い場合には、シャトルバルブ197は、第一吸排口197aを閉鎖すると共に第二吸排口197bとタンク198とを連通させるようになっている。逆に、オイル流路194内の圧力がオイル流路193内の圧力よりも高い場合には、シャトルバルブ197は、第二吸排口197bを閉鎖すると共に第一吸排口197aとタンク198とを連通させるようになっている。そのため、ポンプ195が正回転すると、オイル流路193内の圧力がオイル流路194内の圧力よりも高くなり、第一吸排口197aが閉鎖され、第二吸排口197bとタンク198とが連通する。そして、ポンプ195の正回転により、ロッド側領域167b内のオイルがポンプ195を通過してヘッド側領域167aへ供給され、第二吸排口197bからは足りない分のオイル(ロッド164aにおけるロッド側領域167b内に位置する部分の体積分)のみがポンプ195を通過してヘッド側領域167aへ供給される。この結果、第一油圧シリンダ164が伸長する。一方、ポンプ195が逆回転すると、オイル流路194内の圧力がオイル流路193内の圧力よりも高くなり、第二吸排口197bが閉鎖され、第一吸排口197aとタンク198とが連通する。そして、ポンプ195の逆回転により、ヘッド側領域167a内のオイルがポンプ195を通過してロッド側領域167bへ供給され、ヘッド側領域167a内で余ったオイルは第一吸排口197aを介してタンク198へ排出される。この結果、第一油圧シリンダ164が縮退する。つまり、タンク198の容量は、ロッド164aにおけるロッド側領域167b内に位置する部分の体積分よりも少しだけ多ければよく、タンク198を小型化できる。また、シャトルバルブ197は、ノーマルオープンのため、圧油は常時大気圧となっている。そのため、ポンプ195を停止すると、例えば第一トップロール124aの自重などにより動いてしまうことを防ぐことができ、その停止位置で正しく保持でき得る。
このように、第一油圧シリンダ164を油圧回路191と位置制御装置192とにより伸縮駆動制御していることにより、第一トップ用回動軸161を正確かつ安定して移動し停止する制御を行うことができる。すなわち、位置制御装置192によって、サーボモータ196(ポンプ195)の回転角と回転速度とを制御することにより、第一トップ用回動軸161の位置制御や移動速度制御を行っている。
尚、上述した実施例1の油圧シリンダ64を駆動するためのシリンダ駆動制御装置59(上述した従来構成と同じもの)にあっては、油圧シリンダ64にオイルを流入出するバルブの開閉制御するようにした構成であるため、当該油圧シリンダ64によりトップロール24を位置変換することが可能な単位は、せいぜいミリ単位である。これに対して、上記した本実施例の油圧回路191と位置制御装置192とによる駆動制御では、1/100ミリ単位の位置変換が可能である。そして、この位置変換可能な単位が精密であることにより、移動速度の制御も精密に行うことができる。
尚、本実施例にあっては、油圧シリンダ37bの伸縮駆動制御を行う駆動制御装置38にも、上記油圧回路191及び位置制御装置192と同様の油圧回路及び位置制御装置を備えている。そのため、駆動制御装置38の伸縮駆動制御によって油圧シリンダ37bの伸縮長さを正確に制御し、前部成形基体30の前後方向の位置決めを正確に行うことができる。
上述したように第一油圧シリンダ164の駆動制御により、第一トップ用回動軸161の位置変換を正確かつ安定して制御できることに基づいて、該第一トップ用回動軸161に取り付けた第一トップロール124aが、ボトムロール123に遊嵌した円筒形加工体Y1を押圧して停止する位置を設定している。この第一トップ用回動軸161の停止位置は、第一トップロール124aとボトムロール123との最短距離をフレア加工した円筒形加工体Y1の板厚以上とした、該第一トップロール124aがボトムロール123から所定間隙をおいた位置となる位置(以下、第一ロール加工位置s2)である(図18参照)。尚、この所定間隙は、円筒形加工体Y1の板厚以上に設定された微細な間隙である。この所定間隙とする第一ロール加工位置s2に、第一トップロール124aをボトムロール123の上方に退避した第一待機位置s1から円弧移動して停止保持する(図16,17参照)。これにより、ボトムロール123に遊嵌した円筒形加工体Y1を、第一トップロール124aにより押圧して円筒形加工体Y2’に加工する。ここで、第一ロール加工位置s2では、図18のように、円筒形加工体Y2’がボトムロール123との間で複数箇所で部分的に圧接する(以下、予備圧接するという)。この部分的に予備圧接した状態では、ボトムロール123と圧接した夫々の圧接域が比較的狭く、各圧接域の間に空隙が生じている。この停止位置まで第一トップ用回動軸161を移動して第一トップロール124aでロール加工することにより、該円筒形加工体Y1を主に第一トップロール124aに倣うように変形する。これにより、第一トップロール124aに倣って予備中間形状である円筒形加工体Y2’に成形する。
ここで、第一トップロール124aをボトムロール123から所定間隙をおいた停止位置で保持することから、第一トップロール124aとボトムロール123とが互いに噛み合わない形状であっても、ロール成形することができる。尚、第一トップ用回動軸161を、第一トップロール124aとボトムロール123との間に所定間隙を隔てて停止する停止位置が、本発明にかかる第一ロール加工位置s2である。
このように、第一トップロール可動制御装置160は、第一油圧シリンダ164を駆動制御する油圧回路191および位置制御装置192とを配設した以外の構成は、上述した実施例1のトップロール可動制御装置60と同様の構成であり、その詳細については省略している。
一方、上記した第二トップロール可動制御装置170にあっては、図13のように、上述した第一トップロール可動制御装置160と同様の構成をなし、後部成形基体9に対して左右対称となるように、該後部成形基体9の正面視左側に配設されている。すなわち、後部成形基体9の左側に配設されたL形支持体176に、ボトム用回動軸11と平行に第二位置変換支軸173が自転可能に支持され(図14参照)、該第二位置変換支軸173に、第二可動アーム172が接合されている。第二可動アーム172には、第二位置変換支軸173の左側領域に配される端部に、第二油圧シリンダ174の一端が回動可能に連結されており、第二位置変換支軸173の接合部位に対して反対側の端部に、第二トップ用回動軸171が自転可能に支持されている。第二トップ用回動軸171は、第二位置変換支軸173と平行となるように支持されており、その前端部に上記した第二トップロール124bが嵌着されている(図14参照)。この第二トップ用回動軸171(および第二トップロール124b)は、第二油圧シリンダ174を伸縮駆動制御することにより、第二位置変換支軸173を回動中心として上下方向に円弧移動する。また、第二トップ用回動軸171の後端に第二トップ用駆動モータ175が連結されており、該第二トップ用駆動モータ175の駆動により、第二トップロール124bを回転する。
また、第二油圧シリンダ174を駆動制御するための油圧回路191および位置制御装置192が配設されている。この油圧回路191と位置制御装置192とは、上述した第一トップロール可動制御装置160と同じ構成のものであり、その説明を省略する(図15参照)。そして、第二油圧シリンダ174を駆動制御することにより、第二トップ用回動軸171を円弧移動して、第二トップロール124bがボトムロール123の右上方に退避する第二待機位置r1(図16参照)と、該ボトムロール123の直上で近接する第二ロール加工位置r2(図19参照)とに位置変換する。ここで、第二ロール加工位置r2としては、図20のように、ボトムロール123に遊嵌した予備中間形状の円筒形加工体Y2’を、第二トップロール124bとボトムロール123とよって、所望のホイールリム板厚に圧縮する位置である。この第二ロール加工位置r2に停止保持することにより、円筒形加工体Y2’を所望のホイールリムの完成形状(ホイールリムW)に加工し、該第二トップロール124bとボトムロール123に倣うように圧接する位置である。この第二ロール加工位置r2では、第二トップロール124bとボトムロール123との間隙が、ホイールリム板厚とほぼ同じであり、上記した第一ロール加工位置s2に比して狭くなっている。
第二油圧シリンダ174を駆動制御する油圧回路191および位置制御装置192にあっても、上述したように、第二トップ用回動軸171を正確かつ安定して移動し停止する制御を行うことができる。これにより、第二トップ用回動軸171を上記した第二ロール加工位置r2で停止保持するようにしている。
尚、第一位置変換支軸163、第一可動アーム162、第一油圧シリンダ164、油圧回路191、位置制御装置192により、本発明にかかるトップロール位置変換手段が構成されており、さらに、このトップロール位置変換手段、第一トップ用回動軸161、第一トップ用駆動モータ165により、第一トップロール可動制御装置160が構成されている。また、第二位置変換支軸173、第二可動アーム172、第二油圧シリンダ174、油圧回路191、位置制御装置192により、本発明にかかるトップロール位置変換手段が構成されており、さらに、このトップロール位置変換手段、第二トップ用回動軸171、第二トップ用駆動モータ175により、第二トップロール可動制御装置170が構成されている。
一方、後部成形基体9の左右両側には、図12,13のように、サイドロール可動装置180,180が夫々に配設されている。このサイドロール可動装置180,180は、図13のように、サイドロール181,181と該サイドロール181,181を進退移動するエアシリンダ183,183とを備えており、これらをボトムロール23の左右斜め上方となる位置に夫々配設している。そして、エアシリンダ183,183の伸縮駆動により、サイドロール181,181を、ボトムロール123から夫々に左右斜め上方へ退避した待機位置(図示省略)と、該待機位置から進出してボトムロール123に遊嵌した円筒形加工体Y1の斜め上部に当接する保持位置(図示省略)とに夫々進退移動するものである。ここで、サイドロール181,181は、それぞれ、切頭円錐形の二個のロールが互いに対向するように遊転可能に設けられている。この二個のロールがボトムロール123に遊嵌した円筒形加工体Y1の両端斜め上部に斜め上方から当接することにより、該円筒形加工体Y1を、その内面上部がボトムロール123の外面上部に当接した状態で保持できるようにしている。尚、サイドロール可動装置180,180は、サイドロール181,181およびエアシリンダ183,183とを、その待機位置と保持位置とへ進退作動しても、上記した第一トップロール124aおよび第二トップロール124bに接触しないように設けられている。
次に、本実施例2の車両用ホイールリム成形装置101を、ホイールリムWの製造ラインに設置した場合にあって、該ホイールリムWの成形過程について説明する。
従来と同様に、所定の金属製平板Zから円筒形素体Xを成形する(図21(A)参照)。この円筒形素体Xを、図示しない搬送装置により車両用ホイールリム成形装置101に搬送する。車両用ホイールリム成形装置101には、所望のホイールリムWを成形するための環状後部フレア加工型21a、ボトムロール123、環状前部フレア加工型21b、第一トップロール124a、第二トップロール124bが取り付けられている。そして、前部成形基体30を退避位置h1とし、第一トップロール可動制御装置160が第一トップ用回動軸161を第一待機位置s1とし、第二トップロール可動制御装置170が第二トップ用回動軸171を第二待機位置r1としている。そして、ワーク移送装置40は、そのワーク支持部材53を受渡位置f1とし且つ支持位置m1としている。また、サイドロール可動装置180,180は、そのサイドロール181,181を待機位置としている。
円筒形素体Xが、ワーク移送装置40のワーク支持部材53に乗載されて支持されると、上述した実施例1と同様に、成形基体位置変換装置39により前部成形基体30を前進してフレア加工位置h2とし、これに伴って、ワーク支持部材53をフレア加工付与位置f2とする(図8参照)。これにより、円筒形素体Xをフレア加工する。その後、実施例1と同様に、成形基体位置変換装置39により、前部成形基体30の後退に伴って、ワーク支持部材53をロール加工付与位置f3とする(図9(A)参照)。さらに、ワーク移送装置40により、ワーク支持部材53を降動して降下位置m2とする(図9(B)参照)。これにより、フレア加工した円筒形加工体Y1を、ボトムロール123にぶら下げた状態とする。
次に、モータ駆動制御装置16によりボトム用駆動モータ14と第一トップ用駆動モータ165とを駆動し、ボトムロール123と第一トップロール124aとが互いに逆方向へ回転し、且つ夫々の外面の回転速度がほぼ等しくなるようにする駆動制御する。さらに、ボトム用駆動モータ14の駆動に伴い、サイドロール可動装置180,180のエアシリンダ183,183を駆動して、サイドロール181,181により円筒形加工体Y1をその左右斜め上方から押え、円筒形加工体Y1をボトムロール123に対して前後方向へ移動しないようにすると共に、振動を抑制するようにしている。そして、サイドロール181,181が当接すると、円筒形加工体Y1はボトムロール123の回動に従って回転する。
その後、第一トップロール可動制御装置160の油圧シリンダ164を油圧回路191と位置変換装置192とにより駆動制御し、第一トップ用回動軸161を第一待機位置s1(図16参照)から第一ロール加工位置s2(図17参照)まで円弧移動して該第一ロール加工位置s2で保持する。これにより、円筒形加工体Y1は、第一トップロール124aとボトムロール123との間で押さえ付けられて回転し、周方向に亘ってほぼ均一に押圧されてロール加工される。このロール加工は、円筒形加工体Y1を第一ロール加工位置s2まで押圧して上記した予備圧接することにより、第一トップロール124aに倣うように変形する。ここで、第一ロール加工位置s2では、円筒形加工体Y2’とボトムロール123との間に空隙を有したところまでしか押圧されないため、図18のように、当該ロール加工による変形にある程度余裕を持たせることができる。そのため、円筒形加工体Y1の直状胴部を予備中間形状に変形するという、比較的大きな変形量を生じさせるロール加工にあっても、シワやヒケ等の発生を抑制でき得る。
第一トップロール124aを第一ロール加工位置s2で停止した後、円筒形加工体Y1が少なくとも一周回すると、第一油圧シリンダ164を駆動して、第一トップロール124aを上方へ円弧移動して第一待機位置s1に戻す。このようにして、ホイールリムの予備中間形状をなす円筒形加工体Y2’を得る。
次に第二トップ用駆動モータ175を、ボトム用駆動モータ14と逆回転し且つ第二トップロール124bとボトムロール123との各外面の回転速度がほぼ等しくなるように、駆動する。その後、第二トップロール可動制御装置170の油圧シリンダ174を、油圧回路191と位置変換装置192とにより駆動制御して、第二トップ用回動軸171を第二待機位置r1(図16参照)から第二ロール加工位置r2(図19参照)まで円弧移動して該第二ロール加工位置r2で保持する。これにより、円筒形加工体Y2’は、第二トップロール124bとボトムロール123とにより押さえ付けられて回転し、両者の間で挟圧されてロール加工される。このロール加工では、円筒形加工体Y2’が、所望のホイールリム板厚に圧縮されて、図20のように、第二トップロール124bとボトムロール123とに倣うように圧接してホイールリムの完成形状(ホイールリムW)に成形する。そして、第二トップロール124bを第二ロール加工位置r2で停止後、ホイールリムWが少なくとも一周回すると、第二油圧シリンダ174を駆動して第二待機位置r1に戻す。このようにして、円筒形加工体Y2’からホイールリムWを成形する。
尚、第一トップロール可動制御装置160と第二トップロール可動制御装置170とに夫々設けられた油圧回路191および位置制御装置192は、上述したように、実施例1のシリンダ駆動制御装置59(従来構成と同様のもの)に比して、精密な位置変換制御を行いえることから、各油圧シリンダ164,174の駆動速度も制御できる。そのため、本実施例2にあっては、第一トップロール124aと第二トップロール124bとによるロール加工の際の移動速度を、実施例1の場合に比して低速とすることにより、シワやヒケ等の発生を一層抑制できる。
第二トップロール124bを第二待機位置r1に戻すと、サイドロール可動装置180,180のエアシリンダ183,183を駆動して、サイドロール181,181を左右斜め上方へ退避する。そして、ボトム用駆動モータ14を駆動停止する。その後、ワーク移送装置40のエアシリンダ51を駆動して、ワーク支持部材53を降下位置m2から支持位置m1へ昇動して、ホイールリムWを乗載して支持する。そして、成形基体位置変換装置39により、前部成形基体30を前方移動して退避位置h1とし、これに伴ってワーク支持部材53を受渡位置f1とする。受渡位置f1でワーク支持部材53に支持されているホイールリムWを、図示しない搬送装置により次のエキスパンダ工程へ搬送する。尚、エキスパンダ工程は、従来と同様に行うため、詳細は省略する。
このように、本実施例2の車両用ホイールリム成形装置101にあっては、フレア加工するためのフレア加工型21a,21bと、ロール加工するための二個のトップロール124a,124bおよび一個のボトムロール123とを装着することにより、当該装置一台で、円筒形素体XからホイールリムWを成形できるようにしたものである。本実施例2の車両用ホイールリム成形装置101を用いることにより、ホイールリムを製造するための製造ライン長を、大幅に短縮することが可能である。これにより、メンテナンス作業を行う場合、異なる品種のホイールリムを成形するための段替え作業を行う場合などにあって、これら作業を行う作業者の移動距離を短縮することができ、作業の効率化と短時間化を実現可能である。また、各加工装置を順次配置した従来構成の製造ラインに比して、各装置の設置スペースを省スペース化することもできる。
また、上述した実施例1および実施例2の構成にあっては、前部成形基体30のみを前後方向へ移動制御するようにした構成であるが、その他の構成として、後部成形基体9と前部成形基体30との両方を前後方向に移動制御する構成や、後部成形基体9のみを前後方向に移動制御する構成とすることも可能である。
また、ワーク移送装置40は、前部成形基体30の油圧シリンダ37a,37bの駆動により連動するようにした構成であるが、その他の構成として、独自に移動するための駆動手段(油圧シリンダ)を備えたものとしても良い。
また、上述した実施例2にあって、第一トップロール可動制御装置160と第二トップロール可動制御装置170とに夫々設けられた油圧回路191および位置制御装置192とは、所謂サーボ機構として油圧シリンダ164,174を駆動制御するようにしている。サーボ機構としては、上記した油圧回路191に限定されず、油圧シリンダ164,174を精度良く駆動制御する構成のものであれば良い。また、油圧回路191、位置制御装置192、油圧シリンダ164,174に代わる他の構成として、例えば、ボールネジを用いた送りねじ機構を可動アームに連結し、ネジを回動するサーボモータと、該サーボモータを制御する制御装置とを備えた構成とすることもできる。この構成では、サーボモータの回転角および回転速度を制御することにより、送りねじ機構を介して可動アームの揺動を正確かつ安定して制御でき、上述した実施例と同様の作用効果を発揮し得る。尚、このような送りネジ機構を実施例1の構成に適用することも可能である。
実施例1の車両用ホイールリム成形装置1の側面図である。
同上の車両用ホイールリム成形装置1の、図1のL−L縦断面図である。
後部成形基体9、前部成形基体30を示す縦断面図である。
後部成形基体9、前部成形基体30を示す横断面図である。
ワーク移送装置40を拡大した側面図である。
ワーク移送装置40の、図5のM−M縦断面図を示す縦断面図である。
トップロール可動制御装置60の、トップ用回動軸61と位置変換支軸63とを表す横断面図である。
前部成形基体30の(A)退避位置h1と、(B)フレア加工位置h2とを示す説明図である。
ワーク移送装置40がワーク支持部材53をロール加工付与位置f3で、(A)支持位置m1と(B)降下位置m2とした状態を示す説明図である。
トップロール可動制御装置60のトップ用回動軸61を、(A)待機位置t1と、(B)ロール加工位置t2とした状態を示す説明図である。
図10(B)の第一ロール加工位置s2における、トップロール24とボトムロール23とにより押圧した状態を示す説明図である。
実施例2の車両用ホイールリム成形装置101の平面図である。
同上の車両用ホイールリム成形装置101の、図12のN−N縦断面図である。
第一トップロール可動制御装置160の第一トップ用回動軸161と第一位置変換支軸163、および第二トップロール可動制御装置170の第二トップ用回動軸71と第二位置変換支軸173を表す横断面図である。
第一トップロール可動制御装置160と第二トップロール可動制御装置170とに夫々配設された油圧回路191および位置制御装置192を示す概念図である。
第一トップロール可動制御装置160の第一トップ用回動軸161を第一待機位置s1とし、第二トップロール可動制御装置170の第二トップ用回動軸171を第二待機位置r1とした状態を示す説明図である。
第一トップロール可動制御装置160の第一トップ用回動軸161を第一ロール加工位置s2に位置変換した状態を示す説明図である。
図17の第一ロール加工位置s2における、第一トップロール124aにより予備圧接した状態を示す説明図である。
第二トップロール可動制御装置170の第二トップ用回動軸171を第二ロール加工位置r2に位置変換した状態を示す説明図である。
図19の第二ロール加工位置r2における、第二トップロール124bにより本圧接した状態を示す説明図である。
従来の、(A)金属製平板Zから円筒形素体Xを成形する工程と、(B)円筒形素体Xをフレア加工する工程とを示す説明図である。
従来の、(A)第一ロール加工工程におけるロール加工している状態と、(B)第二ロール加工工程におけるロール加工している状態と、(C)第三ロール加工工程におけるロール加工している状態とを示す説明図である。
符号の説明
1,101 車両用ホイールリム成形装置
9 後部成形基体
11 ボトム用回動軸
11a 軸前部
14 ボトム用駆動モータ
21a 環状後部フレア加工型
21b 環状前部フレア加工型
23,123 ボトムロール
24 トップロール
30 前部成形基体
39 成形基体位置変換装置
40 ワーク移送装置
53 ワーク支持部材
59 シリンダ駆動制御装置(トップロール位置変換手段)
60 トップロール可動制御装置
61 トップ用回動軸
62 可動アーム(トップロール位置変換手段)
63 位置変換支軸(トップロール位置変換手段)
64 油圧シリンダ(トップロール位置変換手段)
65 トップ用駆動モータ
124a 第一トップロール(トップロール)
124b 第二トップロール(トップロール)
160 第一トップロール可動制御装置(トップロール可動制御装置)
161 第一トップ用回動軸(トップ用回動軸)
162 第一可動アーム(トップロール位置変換手段)
163 第一位置変換支軸(トップロール位置変換手段)
164 第一油圧シリンダ(トップロール位置変換手段)
165 第一トップ用駆動モータ(トップ用駆動モータ)
170 第一トップロール可動制御装置(トップロール可動制御装置)
171 第一トップ用回動軸(トップ用回動軸)
172 第二可動アーム(トップロール位置変換手段)
173 第二位置変換支軸(トップロール位置変換手段)
174 第二油圧シリンダ(トップロール位置変換手段)
175 第二トップ用駆動モータ(トップ用駆動モータ)
191 油圧回路(トップロール位置変換手段)
192 位置制御装置(トップロール位置変換手段)
f1 受渡位置
f2 フレア加工付与位置
f3 ロール加工付与位置
h1 退避位置
h2 フレア加工位置
s1 第一待機位置(待機位置)
s2 第一ロール加工位置(ロール加工位置)
r1 第二待機位置(待機位置)
r2 第二ロール加工位置(ロール加工位置)
t1 待機位置
t2 ロール加工位置
X 円筒形素体
Y1,Y2,Y2’ 円筒形加工体
W ホイールリム