JP5221067B2 - 摺動構造 - Google Patents

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本発明は、相互に摺動する摺動面のうち少なくとも一方の摺動面に硬質炭素被膜が形成された一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に存在する潤滑油と、を備えた摺動構造に係り、特に、一対の摺動部材の摩擦係数の低減及び耐摩耗性の向上を図ることできる摺動構造に関する。
近年、機械を取り巻くエネルギー問題や環境問題に関心が集まっている。エネルギー源を石油や原子力に依存する現在社会において、エネルギー資源の枯渇は危惧すべき問題である。20世紀は大量生産・大量消費の時代であったが、21世紀は限りあるエネルギーをいかに効率よく使用するかが重要である。
機械におけるエネルギー損失の1つに摩擦損失がある。機械には、必ず摺動面が存在し摩擦が生じており、摩擦を減少させることはエネルギーの消費を減少させることに繋がる。摩擦の低減は潤滑油によって2面間の直接接触を妨げ、せん断抵抗を減少させることにより達成される。現在も多くの機械で潤滑油が使用され、潤滑油に関する研究は盛んに行われている。
一方、摩擦を低減させる材料として、非晶質炭素被膜、窒化炭素被膜、ダイヤモンド被膜などの硬質炭素被膜が注目されており、該被膜を摺動面に適用することにより摺動部材の摩擦の低減・耐摩耗性の向上が期待されている。
しかし、前記機械を構成する部品として、例えば自動車エンジン部品は、近年、高出力及び高回転による高性能化が著しい。これに伴い、エンジンで使用される摺動部材において、摺動面に前記硬質炭素被膜を適用したのみでは、その性能向上は限界がある。よって、摺動部材と潤滑油の最適な組み合わせを考慮して、より摺動特性に優れた摺動構造を提案する必要があった。
その一例として、表面にDLCが被覆された摺動部材と、該摺動部材の表面に供給される、植物油、動物油、又は合成油などのベースオイルに有機モリブデン化合物を添加した潤滑油と、を備えた摺動構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。本発明によれば、添加剤である有機モリブデン化合物が摺動時に固体潤滑剤として作用することにより、摺動部材の摩擦の低減、及び、耐摩耗性の向上を図ることができる。
特開平2004−339486号公報
これまでの研究において、硬質炭素被膜が形成された摺動部材に供給する潤滑油に、特許文献1に示すベース油のみを用いた場合には、前記硬質炭素被膜の低摩擦特性が充分得られないとされており、特許文献1に記載摺動構造の如く、潤滑油に添加剤を添加することにより摺動特性を図ることが一般的であった。
しかし、前記添加剤を加えた潤滑油を用いた場合であっても、せいぜい摩擦係数は0.1程度しか期待できず、前述したエンジン等の厳しい摺動環境下では、摺動面間が高面圧となるため、その摺動特性が充分なものであるとは言い難い場合があった。また、前記潤滑剤は、効果が発揮できる適量の添加剤を潤滑剤に配合し調整せねばならず、添加剤の種類及び量が増加するに従って潤滑油のコストも増加する。さらに、潤滑油に添加される金属元素の多くは重金属であり、環境保全をベースとした開発等が盛んな今日の趨勢を鑑みた場合、前記金属元素等を含む添加剤を潤滑油に添加しないほうがより好ましいといえる。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐環境性を考慮しつつコストの低減を図ると共に、たとえ、高面圧等の厳しい摺動環境下であっても、摩擦係数を低減しかつ耐摩耗性を向上させることができる摺動構造を提供することにある。
前記課題を鑑み、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、耐環境性及びコスト低減を考慮した場合には、植物油(植物性潤滑油)を用いることが好適であると考えた。そして、潤滑油として様々な植物油を用いて実験を行った結果、特定の植物油に含まれる特定成分が潤滑油に含有することにより、金属添加剤等を添加することなく、画期的に、摩擦係数を低減させることができ、かつ、耐摩耗性を向上させることができるとの新たな知見を得た。
本発明は、前記新たな知見に基づくものであり、本発明に係る摺動構造は、相互に摺動する摺動面のうち少なくとも一方の摺動面に硬質炭素被膜が形成された一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に存在する潤滑油と、を備えた摺動構造であって、前記潤滑油は、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸のうち少なくとも1種を含む植物性潤滑油であることを特徴とする。
本発明に係る摺動構造は、互いに摺動する1対の摺動部材の少なくとも一方の摺動面に、硬質炭素被膜が形成されている。さらに、硬質炭素被膜が形成された摺動部材の摺動面と、該摺動面に摺動する摺動部材の摺動面との間には、潤滑油が存在する構成となっている。本発明にいう「相互に摺動する」とは、少なくとも一方の摺動部材が他方の摺動部材に対して相対的に摺動することをいい、相対的な摺動とは、直線運動、回転運動、又はこれらの運動の組み合わせにより摺動することをいう。
そして、発明者らの後述する実験からも明らかなように、前記潤滑油として、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸の不飽和脂肪酸うち少なくとも1種の不飽和脂肪酸を含む植物性潤滑油を用いることにより、硬質炭素被膜が形成された摺動部材の摩擦係数を低減すると共に耐摩耗性を向上させることができる。オレイン酸、リノール酸、又はリノレン酸は、不飽和の分子構造であり、かつ極性をもった分子構造であり、該分子構造が、摩擦係数の低減及び耐摩耗性を向上させる一因になると考えられる。また、植物性潤滑油、すなわち植物油を潤滑油に用いることにより、環境にやさしく、さらには、これらの植物油は安価に入手し易く経済的である。
植物性潤滑油としては、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、大豆油、とうもろこし油、ナタネ油、パーム油、ひまわり油、サフラワー油、こむぎ胚芽油、やし油、落花生油、またはアマニ油等を挙げることができ、これらの植物油を混合した混合油であってもよい。また、より好ましくは、これらの不飽和脂肪酸のうち少なくとも一種を主剤として含む、後述するオリーブ油、サフラワー油、アマニ油等である。
本発明に係る摺動構造は、前記硬質炭素被膜として、例えばダイヤモンド被膜などの炭素が結晶化した被膜、非晶質炭素被膜などのアモルファス構造を含む被膜など、被膜を被覆する基材に比べて硬質な炭素被膜であれば得に限定されるものではない。しかし、より好ましい硬質炭素被膜は、非晶質炭素被膜(Diamond Like Carbon からなる被膜:DLC被膜)又は窒化炭素被膜(CNx被膜)である。また、窒化炭素被膜のうち非晶質窒化炭素被膜がより好ましい。該被膜は、非晶質炭素被膜に比べて、摺動面となる表面がより活性であるため、摺動時に、より強固な境界潤滑膜を形成することができると考えられる。この結果、非晶質炭素被膜に比べてさらに低い摩擦係数を得ることができる。
前記に示した硬質炭素被膜を摺動部材の基材表面に成膜するにあたっては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビームミキシングなどを利用した物理気相成長法(PVD)により成膜してもよく、プラズマ処理などを利用した化学気相成長法(CVD)により成膜してもよく、これらの方法を組み合わせた方法により成膜してもよい。また、DLC被膜の一種である非晶質窒化炭素被膜を成膜する場合、窒化炭素被膜(CNx被膜)を成膜する場合には、より安定した低摩擦特性を得るために、被膜形成とイオン注入とを同時に行うダイナミクスミキシング法によるイオンビーム法により、これら被膜を形成することがより好ましい。また、このような成膜時において硬質炭素被膜中に、Si、Ti、Cr、Fe、Mo、W、Bなどの添加元素を含有させてもよく、このような元素を添加することにより、被膜の表面硬さを調整することもできる。
さらに、硬質炭素被膜を摺動部材の表面に成膜するにあたっては、摺動部材の基材とこの被膜との間の密着力を高めるために、ケイ素(Si)からなる中間層を設けてもよく、さらにケイ素の代わりに、クロム(Cr)、チタン(Ti)またはタングステン(W)を用いてもよい。
さらに、この硬質炭素被膜を表面に成膜する基材は、摺動時において硬質炭素被膜との密着性を確保することができるような材質および表面硬さであれば、鉄、非鉄金属等と特に限定されるものではなく、この摺動部材と摺動する他方の摺動部材も、この硬質炭素被膜に対して極端に表面硬さが低く、摺動時に摩耗し易いものでなければ、その材質は特に限定されるものではない。
また、本発明に係る摺動構造は、前記潤滑油が、オレイン酸を少なくとも含んでおり、該オレイン酸は、前記潤滑油に対して70〜85質量%含むことがより好ましい。本発明によれば、前記範囲の含有率となるようにオレイン酸を含むことにより、一対の摺動部材の摩擦係数を低減させることができ、かつ、これらの耐摩耗性を向上させることができる。前記範囲よりも少ない場合には、摩擦係数が高くなる等、より好適な摺動特性を得ることができないことがあり、前記範囲よりも多いであってもそれ以上の効果は期待できない。また、この範囲よりも多いオレイン酸を天然の植物油から得ることは難しく、製油等により製造した場合にはコストが高くなるおそれがある。なお、前記範囲含有率のオレイン酸を含む好適な植物油として例えばオリーブ油が挙げられる。
また、別の態様としては、本発明に係る摺動構造は、前記潤滑油が、リノール酸を少なくとも含んでおり、該リノール酸は、前記潤滑油に対して60〜80質量%含むことがより好ましい。本発明によれば、前記範囲の含有率となるように、リノール酸を含むことにより、一対の摺動部材の摩擦係数を低減させることができ、かつ、これらの耐摩耗性を向上させることができる。なお、リノール酸は、前記オレイン酸よりも不飽和度が大きいため、前記オレイン酸の含有率よりも低い。また、前記範囲よりも少ない場合には、摩擦係数が高くなる等、より好適な摺動特性を得ることができないことがあり、前記範囲よりも多いであってもそれ以上の効果は期待できない。さらに、この範囲よりも多いリノール酸を天然の植物油から得ることは難しく、製油等により製造した場合にはコストが高くなるおそれがある。なお、前記範囲含有率のリノールを含む好適な植物油として例えばひまわり油、サフラワー油、または、こむぎ胚芽油等が挙げられる。
さらに、別の態様としては、本発明に係る摺動構造は、前記潤滑油が、リノレン酸を少なくとも含んでおり、該リノレン酸は、前記潤滑油に対して30〜60質量%含むことがより好ましい。本発明によれば、前記範囲の含有率となるように、リノレン酸を含むことにより、一対の摺動部材の摩擦係数を低減させることができ、かつ、これらの耐摩耗性を向上させることができる。なお、リノレン酸は、前記リノール酸よりも不飽和度が大きいため、前記リノール酸の含有率よりも低い。また、前記範囲よりも少ない場合には、摩擦係数が高くなる等、より好適な摺動特性を得ることができないことがあり、前記範囲よりも多いであってもそれ以上の効果は期待できない。さらに、この範囲よりも多いリノレン酸を天然の植物油から得ることは難しい。なお、前記範囲含有率のリノレン酸を含む好適な植物油として例えばアマニ油が挙げられる。
また、本発明に係る摺動構造は、一対の摺動部材同士の間に安定的に潤滑油を存在させるために、潤滑油を摺動部材に配置させる(供給する)機構として、循環潤滑機構、ミスト潤滑機構、又は、オイルバスによる油浴潤滑機構などをさらに設けてもよく、摺動時に摺動部材間に、潤滑油が安定的に給油されるのであれば、その機構は特に限定されるものではない。さらに、前記潤滑油には、酸化防止剤、摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、金属不活性剤、清浄剤、防錆剤、泡消剤などを適宜添加することも可能である。
本発明に係る摺動構造によれば、耐環境性を考慮しつつコストの低減を図ると共に、たとえ、高面圧等の厳しい摺動環境下であっても、摩擦係数を低減しかつ耐摩耗性を向上させることができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1−1)
本発明に係る摺動構造の一対の摺動部材のうち、硬質炭素被膜を形成した一方の摺動部材として以下に示すディスク試験片を製作し、この摺動部材と摺動する他方の摺動部材として、以下に示すボール試験片を製作した。
<ディスク試験片>
硬質炭素被膜を成膜する基材として、直径50mm、厚み0.3mm、円部表面(摺動面)が鏡面状態(100面方位)となる、ディスク形状のシリコンウェハSを準備した。そして、図1に示すようなイオンビームミキシング装置10(日立製作所製 1X−30−30)を用いて、このシリコンウェハSの円部表面に非晶質の窒化炭素(CNx)被膜(硬質炭素被膜)を成膜した。なお、イオンビームミキシング法は、基材と薄膜(表面改質層)との間にミキシング層が形成されるため、従来の基材/被膜境界がなく、被膜との密着性や、被膜の組成制御性に優れた表面処理が可能な成膜方法である。
図1に示すように、イオンビームミキシング装置10は、真空チャンバ11、基板ホルダ12、アシスト用イオン源及びガス供給源14、スパッタイオン源15、クライオポンプ16を少なくとも備えており、イオン源はスパッタ用、アシスト用、共にバケット型であり、スパッタイオン源は加速電圧最大1500eV、イオン電流最大200mA、イオンビーム有効径は直径約80mmである。基板ホルダ12は成膜中回転し、またイオンビームと基板表面との角度を0°〜90°の範囲で変化させることができるように構成されている。このような装置10を用いて、以下のように成膜した。
具体的には、図1に示すように、シリコンウェハSの円部表面が支持台13上に配置された純度99.9999%のカーボンターゲットTと対向するように、真空チャンバ11内のホルダ12にシリコンウェハSを取り付けた。その後、真空チャンバ11内の圧力を、クライオポンプ16で、2.0×10−4Pa以下に減圧調整し、窒素イオンgn(加速電圧1keV,イオン電流密度μA/cm)を5分間シリコンウェハSに向けて照射して、スパッタクリーニングした。その後、真空チャンバ11内の圧力を、1.4×10−2Paに調整し、スパッタイオン源15からアルゴンイオンgaをカーボンターゲットTに照射し、カーボンターゲットTをカーボンスパッター粒子scにすると同時に、ホルダ12と共にシリコンウェハSを4rpmに回転させ、シリコンウェハの円部表面に厚さ100nmの非晶質の窒化炭素被膜(CNx被膜)を成膜した。
<ボール試験片>
直径8mm、以下の表1に示す窒化珪素球を準備し、該球の表面に同じようにして、窒化炭素被膜を200nm成膜した。
<潤滑油>
植物性潤滑油でグリセリンにリノール酸及びオレイン酸の不飽和脂肪酸が付いた構造であるアシルグリセロールを準備した。この植物性潤滑油は、ナタネ油と大豆油から得ることができる潤滑油である。
Figure 0005221067
<摩耗試験>
図2に示すピンオンディスク摩擦試験機30を用いた。尚、本発明に係る「一対の摺動部材」はディスク試験片とボール試験片を示している。
摩耗試験を行う事前準備として、ボール試験片Bをアセトンとエタノールで各10分間超音波洗浄した。その後、ボール試験片Bを試験機の本体から取り外し、ボールホルダー31に固定し、光学顕微鏡(図示せず)を用いて表面に傷が無いことを確認後、これらをデシケータ(図示せず)内に投入し、ボール試験片Bを乾燥させた。一方、ディスク試験片Dの表面に形成したCNx被膜の表面(摺動面)の埃などの異物をハンドブロー(図示せず)で取り除いた。
次に、ディスク試験片Dをディスクホルダー32に保持させると共に、ボール試験片Bが固定されたボールホルダー31をステージ33と一体となるように試験機の本体に取り付けた。そして、試験時にディスク試験片Dの表面に潤滑油Lが常時存在するように、ホルダー32に潤滑油が1mmの高さになるまで供給した。さらに、平行板ばね34に接着したひずみゲージ34(協和電業製,KF−1−120−C1−16)を用いて、ボール試験片Bがディスク試験片DのCNx被膜の表面に対して付加される荷重の値が1.0Nとなるようにステージ33を調整して、ディスク試験片Dにボール試験片Bを押付けた。
この押付け状態を保持して、モータ37を駆動して、カップリング38を介してディスクホルダー32のディスク試験片Dを、摺動速度1.26×10−2m/sとなるように回転させ、このときの摩擦力を、ひずみゲージ34で測定し、センサインターフェイス(協和電業製,PCD−300A)を介して、コンピュータ内にデータを取り込み、記録した。そして、摩擦係数を換算した。この結果を図3に示す。
(実施例1−2)
実施例1−1と同じように、ディスク試験片D、ボール試験片B、潤滑油Lを準備した。実施例1−1と相違する点は、ディスク試験片Dの表面に、プラズマCVDにより、DLC被膜(HT−DLC(厚膜、高信頼性DLC:日本アイ・ティ・エフ株式会社製)を成膜した点である。そして、実施例1−1と同様の摩擦試験条件で摩擦係数を測定した。この結果を図3に示す。
(比較例1−1〜7−1)
実施例1−1と同じように、ディスク試験片D、ボール試験片B、潤滑油Lを準備した。実施例1−1と相違する点は、潤滑油であり、比較例1−1〜7−1は、潤滑油の代わりに、順次、鉱物油であるベースオイル5W−30、純水、エタノール(COH)、ケロシン(灯油)、シリコン油、ホルムアルデヒド(HCONH:ギ酸のアミド)、ヘキサン(C14)を用いた点である。そして、実施例1−1と同様の摩擦試験条件で摩擦係数を測定した。この結果を図3に示す。
(比較例1−2〜7−2)
実施例1−2と同じように、ディスク試験片D、ボール試験片B、潤滑油Lを準備した。実施例1−2と相違する点は、潤滑油であり、比較例1−2〜7−2の供給する潤滑油等は、順次比較例1−1〜7−1の潤滑油等に対応している。そして、実施例1−2と同様の摩擦試験条件で摩擦係数を測定した。この結果を図3に示す。
(結果1及び考察1)
この試験結果から、CNx被膜を用いて得られる摩擦係数のほうが、DLC被膜を用いて得られる摩擦係数よりも低い傾向があることが確認された。これはCNx膜の方が、DLC被膜よりも活性が高く、より強固な境界潤滑膜が摺動時に形成されたためであると考えられる。なお、比較例4のケロシン、比較例7のヘキサンを潤滑させた場合に、CNx被膜を用いて得られる摩擦係数がDLC被膜を用いて得られるものよりも高いのは、ケロシン、ヘキサンが他のものに比べてせん断抵抗が大きいからである。
また、実施例1−1,1−2の植物性潤滑油下においては、CNx膜、DLC膜ともに低い摩擦係数が得られた。これは、実施例1−1,1−2の植物性潤滑油は、リノール酸、オレイン酸などの不飽和の分子や、極性をもった分子が、他のものに比べて多く存在しているからであると考えられる。
(実施例2〜4)
実施例1−1と同じように、ディスク試験片D、ボール試験片B、潤滑油Lを準備した。実施例1−1と相違する点は、潤滑油であり、実施例2〜4の供給する潤滑油を、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸にした点である。そして、実施例1−1と同様の摩擦試験条件で摩擦係数を測定した。実施例1−1と相違する条件は、摺動速度を3.14×10−2m/sにした点である。この結果を図4に示す。また、試験終了後、各ディスク試験片Dを試験機30から取り出して、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、CNx被膜に形成された摩耗痕の断面積を求めて、この被膜の比摩耗量を算出した。この結果を、図5に示す。
(比較例8)
比較例1−1と同じように、ディスク試験片D、ボール試験片B、潤滑油(ベースオイル)Lを準備した。そして、実施例2と同じように、摩擦係数及び比摩耗量を測定した。この結果を図4及び図5に示す。
(結果2及び考察2)
図4、5に示すように、実施例2〜4の摩擦係数が、比較例8ものに比べて、略1/3程度となり、さらに、実施例2〜4の比摩耗量は、1/20程度となった。実施例2〜4のオレイン酸、リノール酸、リノレン酸の順で不飽和度(炭素数に対する2重結合の数)は高まっており、いずれの不飽和脂肪酸であっても、摩擦係数は平均0.024〜0.035程度であった。但し、実施例2、3の比摩耗量の結果からも明らかなように、オレイン酸、リノール酸のように、不飽和度の小さい脂肪酸では、摩擦係数が他のものに比べてさらに小さかった。この結果から、不飽和度の低いものほど、摩擦係数が小さい傾向にあると考えられる。また同様に、比摩耗量の結果からしても、不飽和度の低いものほど、摩擦係数が小さい傾向にあると考えられる。
(実施例5〜7)
実施例4と同じように、ディスク試験片D、ボール試験片B、潤滑油Lを準備した。実施例4と相違する点は、潤滑油である。
具体的には、実施例5は、オレイン酸を70〜85質量%含む潤滑油としてオリーブ油を使用した。具体的には、このオリーブ油は、オレイン酸(80質量%)、パルチミン酸(10質量%)、残り他の脂肪酸(例えば飽和脂肪酸)を含んでいる潤滑油である。実施例6は、リノール酸を60〜80質量%含む潤滑油としてサフラワー油を使用した。具体的には、このサフラワー油は、リノール酸(60質量%)、オレイン酸(20質量%)、パルチミン酸(10質量%)、及び残り他の脂肪酸(例えば飽和脂肪酸)を含んでいる潤滑油である。実施例7は、リノレン酸を30〜60質量%含む潤滑油としてアマニ油を使用した。具体的には、このアマニ油は、リノレン酸(50〜60質量%)、リノール酸(15質量%)、オレイン酸(10質量%)、及び残り他の脂肪酸(例えば飽和脂肪酸)を含んでいる潤滑油である。なお、前述した、オリーブ油、サフラワー油、アマニ油の順で不飽和脂肪酸を含む割合が増加している。
そして、実施例5〜7についても、実施例4と同じように、摩擦係数及び比摩耗量を測定した。この結果を図6及び図7に示す。
(結果3及び考察3)
図6、7に示すように、実施例5〜7の摩擦係数が、比較例8ものに比べて小さく、特に、オリーブ油とアマニ油においては、摩擦係数が0.017、0.018と、他のものに比べて小さい値となった。また、実施例5〜7に示すように、オリーブ油、サフラワー油、アマニ油の順で不飽和脂肪酸を含む割合が増加するにしたがって、比摩耗量は増加した。
このように実施例5〜7は摩擦係数及び比摩耗量が低減されていることから、不飽和度の大きさが大きくなるに従って、含有させる不飽和脂肪酸の量は少量でもよいと考えられる。そして、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸を、天然の植物油から採取するには、それぞれ上記に示した範囲であることが好ましく、さらに、それぞれ不飽和脂肪酸に対して、上記範囲よりも少ない場合には、摩擦係数が高くなる等、より好適な摺動特性を得ることができないことがあり、上記範囲よりも多いであってもそれ以上の効果は期待できない可能性があると考えられる。
以上、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
たとえば、本実施例では、一方の摺動部材の基材としてシリコンウェハに硬質炭素被膜を成膜したが、硬質炭素被膜が摺動時において剥離、亀裂の発生等がないのであれば、鉄等の金属材料に被覆してもよい。また、一対の摺動部材の双方の摺動面に硬質炭素被膜を形成する必要はなく、いずれか一方の摺動面にのみ硬質炭素被膜を成膜してもよい。
実施例に係るイオンミキシングビーム装置を説明するための図。 実施例に係るピンオンディスク摩擦試験機を説明するための図。 実施例1−1,1−2,比較例1−1〜7−1,及び比較例1−2〜7−2に係る摩擦係数の結果を示した図。 実施例2〜4及び比較例8に係る摩擦係数の結果を示した図。 実施例2〜4及び比較例8に係る比摩耗量の結果を示した図。 実施例5〜7及び比較例8に係る摩擦係数の結果を示した図。 実施例5〜7及び比較例8に係る比摩耗量の結果を示した図。
符号の説明
10:イオンビームミキシング装置、11:真空チャンバ、12:ホルダ、13:支持台,14:アシスト用イオン源及びガス供給源,15:スパッタイオン源、16:クライオポンプ、30:ピンオンディスク摩擦試験機、31:ボールホルダー、32:ディスクホルダー、33:ステージ、34:ひずみゲージ、35:平行板ばね,37:モータ、38:カップリング、B:ボール試験片(摺動部材)、D:ディスク試験片(摺動部材)、S:シリコンウェハ(基材)、T:カーボンターゲット

Claims (4)

  1. 相互に摺動する摺動面のうち少なくとも一方の摺動面に硬質炭素被膜が形成された一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に存在する潤滑油と、を備えた摺動構造であって、
    前記潤滑油は、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸のアシルグリセロールのうち少なくとも1種を含む植物性潤滑油であり、前記硬質炭素被膜は、窒化炭素被膜(CNx被膜)であることを特徴とする摺動構造。
  2. 前記潤滑油は、オレイン酸を少なくとも含んでおり、該オレイン酸は、前記潤滑油に対して70〜85質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の摺動構造。
  3. 前記潤滑油は、リノール酸を少なくとも含んでおり、該リノール酸は、前記潤滑油に対して60〜80質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の摺動構造。
  4. 前記潤滑油は、リノレン酸を少なくとも含んでおり、該リノレン酸は、前記潤滑油に対して30〜60質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の摺動構造。
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