JP5220430B2 - ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形法において、均一な融着性を示す型内発泡成形体が得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に関する。
一般的に、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形は、(1)充填工程、(2)加熱工程、(3)冷却工程、(4)離型工程、といった一連の工程を1サイクルとして連続的に行われている。前記(2)加熱工程では、予備発泡粒子間の空気を除去する一方加熱・逆一方加熱といわれる工程と予備発泡粒子を2次発泡させて予備発泡粒子同士を融着する両面加熱工程がある。
通常、型内発泡成形方法では、この予備加熱工程及び両面加熱工程で、加熱媒体である水蒸気の圧力、加熱時間等の条件を変更することによって、得られる型内発泡成形体が綺麗な表面性を有し、融着が良好となるよう調整されている。
例えば、金型内への蒸気供給配管を大径にすると共に配管途中に設けたオリフィスにて水蒸気量を調整可能する加熱方法(例えば、特許文献1参照)、金型内から排出する水蒸気量を、ドレン弁の開度を調整する加熱方法(例えば、特許文献2参照)、あるいは、加熱水蒸気を固定型又は移動型のいずれか一方から供給して他方の型の内部から排出する一方加熱の際に、排出側の型の内部から加熱水蒸気を強制的に排出させる方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
特公平1−53179号公報 特公平7−45137号公報 特開平9−48037号公報
しかしながら、前記技術のような加熱方式の調整だけでは、厚みのある型内発泡成形体や、形状が複雑な型内発泡成形体では、水蒸気の金型内での流入進路の不均一さにより、同一型内発泡成形体の異なる部分で、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の熱履歴が異なり、型内発泡成形体の変形を生じることになる。又、金型表面で予備発泡粒子が2次発泡しすぎて、金型内へ進入する水蒸気を阻止してしまい、型内発泡成形体の表面は融着しているが、型内発泡成形体内部は融着しないといった問題があった。
本発明者らは、良好な型内発泡成形体を得る予備発泡粒子について鋭意検討をした結果、型内成形において、発泡倍率5倍以上20倍以下のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に、発泡能を付与して該ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られ、さらに0.12MPaの内圧に付与されたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形金型に充填し、いわゆる一方加熱工程、逆一方加熱工程の際の金型内面にかかる圧力が大きく上昇しない、即ち、一方加熱工程、逆一方加熱工程の際に蒸気の金型内への進入を阻害しにくいポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を用いることによって、加熱方式を変更しなくても、均一な融着性を示すこと見出した。
すなわち、本発明
ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、発泡剤を含む分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度まで加熱し、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られた発泡倍率5倍以上20倍以下のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に、発泡能を付与して該ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子であって、
固定型と移動型を備えてなる型内発泡成形装置を用いて、前記固定型と前記移動型から構成される成形空間に、0.12MPaの内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填し、予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程からなる加熱工程を行う際の
一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(A’)と、
前記成形空間にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填せずに、同時間、同加熱温度で予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程を行う際の一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(B’)が、(A’)/(B’)≦2.5の関係を満たし、かつ、
逆一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(A)と、
前記成形空間にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填せずに、同時間、同加熱温度で予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程を行う際の逆一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(B)が、(A)/(B)≦2.5の関係を満たすことを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、従来の型内発泡成形法に用いることによって、成形時の加熱条件や成形機を変更しなくても、表面が美麗で、融着が均一な型内発泡成形体を得ることができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、固定型と移動型を備えてなる型内発泡成形装置を用いて、前記固定型と前記移動型から構成される成形空間に、0.12MPaの内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填し、予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程からなる加熱工程を行う際の逆一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(A)と、
前記成形空間にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填せずに、同時間、同加熱温度で予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程を行う際の逆一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(B)が、(A)/(B)≦2.5の関係を満たす。
内圧が0.12MPaのポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が、
式(A)/(B)≦2.5
を満足するということは、成形空間内に予備発泡粒子を充填し水蒸気を通しても、予備発泡粒子間を水蒸気がスムーズに進入しやすい性質をポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が有していることを示しており、このような本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形に供することにより、各々の予備発泡粒子が均一に加熱され、得られる型内発泡成形体中の予備発泡粒子同士の融着が均一となる。上記式を満足していない場合は、金型内のある箇所に存在する予備発泡粒子が、2次発泡して、水蒸気の進入を妨げる性質を有しているといえ、得られる型内発泡成形体の融着は不均一である。
また、本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、前記成形空間に、0.12MPaの内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填し、予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程からなる加熱工程を行う際の一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(A’)と、前記成形空間にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填せずに、同時間、同加熱温度で予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程を行う際の一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(B’)が、(A’)/(B’)≦2.5の関係を満たすことが好ましい。
ここで、型内発泡成形の加熱工程は、予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程からなる。予備加熱工程は、図1において、固定型蒸気調整弁22、移動型蒸気調整弁32、固定型蒸気室ドレン弁23、移動型蒸気室ドレン弁33を開けて固定型蒸気室21と移動型蒸気室31に蒸気を通す工程である。一方加熱工程は、移動型蒸気室ドレン弁33と固定型蒸気調整弁22を閉じ、移動型蒸気調整弁32と固定型蒸気室ドレン弁23を開けて蒸気を通す工程である。逆一方加熱工程は、固定型蒸気室ドレン弁23と移動型蒸気調整弁32を閉じ、固定型蒸気調整弁22と移動型蒸気室ドレン弁33を開けて蒸気を通す工程であり、両面加熱工程は、固定型蒸気調整弁22と移動型蒸気調整弁32を開け、固定型蒸気室ドレン弁23と移動型蒸気室ドレン弁33を閉じて蒸気を通す工程である。
図1は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の加熱工程時の金型内面にかかる圧力(以下、単に「面圧」と表記する場合がある)の経時変化を示している。曲線2は、本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に0.12MPaの内圧を付与して、型内に充填し、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、両面加熱、水冷を行ったときの金型内面にかかる圧力を示している。曲線3は、本発明の比較例に該当するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内に充填し、同じ加熱条件にて、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、両面加熱、水冷を行ったときの金型内面にかかる圧力を示している。
一方、曲線1は、予備発泡粒子を充填せずに、同時間、同じ加熱温度で水蒸気を導入したときの金型内面にかかる圧力(B)を示している。
曲線2は、式(A)/(B)≦2.5、式(A’)/(B’)≦2.5を満足している。これは、本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内に充填して一方加熱工程・逆一方加熱工程の際の金型内面にかかる圧力の上昇が少ないことを示しており、すなわち、水蒸気が成形空間内をスムーズに進行していることがわかる。これに対し、曲線3は式を満足していない。これは、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が一方加熱工程、逆一方加熱工程において2次発泡し、金型スリットの閉塞、2次予備発泡粒子同士の融着等何らかの要因によって成形空間内への水蒸気の進入が妨げられていることが一因として推定される。
曲線2の性能を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内成形で使用すると、成形体表面が美麗で変形しない型内発泡成形体を得られる傾向にあるのに対し、曲線3の性能を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、型内発泡成形体の予備発泡粒子同士の粒間が開き、型内発泡成形体の各箇所で融着が不均一である。
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の特性を測定する装置をしては、一般的な型内発泡成形装置に金型内面にかかる圧力を測定する装置を備えていれば足り、一例としては、図2に示すごとく、固定型蒸気室21と移動型蒸気室31とよりなり、両者の間に型内発泡成形体1を成形するための固定型、移動型からなる型内発泡成形用金型6を用いる。また、上記固定型蒸気室21、移動型蒸気室31には、それぞれ加熱水蒸気導入用の蒸気調整弁22、32が、また固定型蒸気室2、移動型蒸気室3の下部には加熱水蒸気及び凝縮水排出のためのドレン弁23、33を備えている。
また、固定型蒸気室21の側壁には、金型6内へ挿入されて、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を金型へ充填する充填機7が装着される。
金型内面にかかる圧力の測定方法を具体的に示すと、上記固定型蒸気室21を貫通して固定型に至る穴をあけ、この穴に型内発泡成形体と直接接触できるように、表面面圧計4を装着する。表面面圧計4は、例えば、隔膜式のものを使用することができる。そして、加熱工程において、金型内面にかかる圧力を、変換機5で電気信号に変換して測定する。
本発明において0.12MPaの内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が、式(A)≦(B)×2.5を満足する、本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子とするには、たとえば、(1)予備発泡粒子の基材樹脂の弾性率を高くし、2次発泡しがたくする、(2)予備発泡粒子表面に無機物を付着させて、予備発泡粒子間の摩擦を少なくする、(3)低発泡倍率の予備発泡粒子から、より高発泡倍率の予備発泡粒子に発泡させて、予備発泡粒子を構成する樹脂膜に延伸歪を残留させる、などの方法がある。中でも方法(3)はポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の構成する樹脂膜を残留歪で発泡能を抑制することが可能であるため、好ましい方法である。
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、上記方法を施す以外は、以下の方法にて製造することができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂とは、モノマーとしてオレフィンを主体とした樹脂であり、例えば、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂が挙げられる。中でも、ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。本発明で使用するポリプロピレン系樹脂とは、モノマーとしてプロピレンを主体とした樹脂であり、共重合成分としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィンなどの環状オレフィンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンを使用することが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂は融点が145℃以下であることが好ましい。ここで言う融点とは以下の測定により求めた。セイコーインスツルメンツ(株)製のDSC6200型示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事により樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度を融点として求めた。融点が145℃より高い場合、成形時の加熱成形圧が高くなり、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子内の内圧が低い場合では予備発泡粒子間の融着が不十分な場合がある。
さらに、前記ポリプロピレン系樹脂は230℃におけるメルトフローレート(MFR)が2g/10min以上であることが好ましい。ここで言うMFRの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。MFRが2g/10minより小さい場合には、型内発泡成形体の表面の粒子間隙や薄肉部の充填性が十分でない場合がある。
前記ポリオレフィン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいようにあらかじめ1軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状で、その粒子の平均粒重量が0.5〜3.0mgが好ましくは0.5〜2.0mg、更に好ましくは0.5〜1.5mgになるように成形加工される。また、必要に応じて、発泡助剤、発泡核剤、界面活性剤型もしくは高分子型の帯電防止剤、顔料、難燃性改良材、導電性改良材等を、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
前記発泡助剤は、発泡する際に気泡の大きさを調整する働きをするものであり、例えば、ポリエチレングリコールが挙げられる。ポリエチレングリコールは、エチレングリコールが重合した構造を有する非イオン性の水溶性ポリマーであり、分子量は概ね5万以下のものである。前記ポリエチレングリコールは、平均分子量が200〜9000であることが好ましく、より好ましくは200〜600である。平均分子量が9000を超えると、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が悪化し、押出機での溶融混練が困難となる傾向がある。
前記発泡核剤は、発泡の時に気泡核の形成を促す物質をいい、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ゼオライト等の無機物質、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウムなどの脂肪酸金属塩、メラミン、メラミンシアヌレート等の高融点でかつ水に完全溶解しない有機物質、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸金属塩などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、タルク、炭酸カルシウムが好ましく、特に発泡助剤としてポリエチレングリコールを使用する場合にはタルクを使用することで、ポリエチレングリコールの熱可塑性樹脂中への分散性が向上し、均一な気泡を有する発泡体を得易くなるため好適である。
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤を含む分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度、好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−25℃から融点+25℃、更に好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−10℃から融点+10℃の範囲の温度まで加熱し、発泡剤を含浸させ、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られる。
前記耐圧容器には特に制限はなく、予備発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
前記発泡剤とは、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素およびそれらの混合物;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水等が例示できる。
本発明において使用する分散剤として、例えば第三リン酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミノ珪酸塩等の無機系分散剤が挙げられる。また必要に応じて、分散助剤を併用することが好ましく、分散助剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。これらの中でも、分散剤として第三リン酸カルシウム、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを併用することが好ましい。分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリオレフィン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水100重量部に対して分散剤0.2〜3重量部を配合することが好ましく、分散助剤0.001〜0.1重量部を配合することが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂粒子は、水中での分散性を良好なものにするために、通常、水100重量部に対して20〜100重量部使用するのが好ましい。
また、以上のようにして得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、いわゆる二段発泡法を利用して、さらに発泡させて発泡倍率のより高いポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子としてもよい。ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に二段発泡法を施すことで、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の構成する樹脂膜を残留歪で発泡能を抑制することが出来るため好適である。
即ち、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤発泡剤を含む分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度まで加熱し、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に、発泡能を付与して該ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を好適に使用することができる。
なお、二段発泡法を行うに際し、以下、もとのポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を「一段発泡粒子」、得られたより発泡倍率の高いポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
具体的に二段発泡法としては、一段発泡粒子を、密閉耐圧容器内に入れて、窒素、空気などの無機ガスを含浸させて発泡能を付与し、一段発泡粒子の樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させる方法が挙げられる。
二段発泡を行う際の一段発泡粒子の発泡倍率は、5倍以上20倍以下であることが好ましく、さらに好ましくは10倍以上である。一段発泡粒子の発泡倍率が5倍を下回れば、二段発泡粒子の製造の際に、予備発泡粒子を構成する樹脂膜に大きな延伸がかかり、予備加熱工程でポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は収縮し、得られる型内発泡成形体は変形しやすい傾向にある。一方、一段発泡粒子の発泡倍率が20倍を超えると、二段発泡粒子を構成する樹脂膜にかかる延伸が弱く、予備加熱工程で予備発泡粒子は2次発泡して、式を満足しないものとなる傾向があり、型内発泡成形の際に、金型スリットの閉塞、予備発泡粒子同士の融着による加熱水蒸気の進入を妨げる傾向にある。
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の平均気泡径は50〜800μmであることが好ましく、より好ましくは100〜600μm、さらに好ましくは200〜500μmである。平均気泡径が50μm未満の場合、得られた型内発泡成形体の形状が歪む、表面にしわが発生するなどの問題が生じる場合があり、800μmを越える場合、予備加熱工程で予備発泡粒子は2次発泡して、式を満足しない傾向があり、金型スリットの閉塞、発泡粒子同士の融着による加熱水蒸気の進入を妨げ、得られる型内発泡成形体の緩衝特性が低下する場合がある。
なお平均気泡径は、熱可塑性樹脂予備発泡粒子の切断面について、表層部を除く部分に長さ2mmに相当する線分を引き、該線分が通る気泡数を測定し、以後はASTM D3576に準拠して測定する。
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の2段発泡粒子の発泡倍率は、20〜40倍であることが好ましく、より好ましくは、25〜35倍である。
なお、発泡倍率は、嵩体積約50cmのポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm)を求め、発泡前の樹脂粒子の密度d(g/cm)から次式により求める。
発泡倍率=d×v/w
以上のようにして得られた本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子から型内発泡成形体を成形する方法としては、公知の方法を使用することが出来、たとえばあらかじめポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を耐圧容器内で空気加圧し、粒子中に空気を圧入することにより内圧を、0.18MPa以上付与し、これを閉鎖しうるが密閉し得ない成形型内に充填し、一方加熱、逆一方加熱工程を経て、0.2〜0.4MPa程度の加熱水蒸気圧で3〜30秒程度の両面加熱工程を実施し、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子同士を融着させ、このあと成形金型を水冷により型内発泡成形体取り出し後の型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却した後、金型を開き、型内発泡成形体を得る方法、が挙げられる。
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔予備発泡粒子の発泡倍率〕
嵩体積約50cmのポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm)を求め、発泡前の樹脂粒子の密度d(g/cm)から次式により求めた。
発泡倍率=d×v/w
〔金型内面にかかる圧力の測定〕
ダイセン株式会社製ポリオレフィン発泡成形機KD−345を用い、縦300mm×横400mm×厚み50mmの金型に、あらかじめ粒子内圧が,0.12MPaになるように調整したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填し、予備加熱10秒、一方加熱10秒、逆一方加熱10秒を行い、固定型に取り付けた面圧計(電圧読み取り方式)を用いて、加熱工程時の面圧の変化を測定した。一方加熱終了時の面圧(面圧(A’))、逆一方加熱終了時の面圧(面圧(A))を読み取った。
また、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填せずに、同じ水蒸気圧で予備加熱10秒、一方加熱10秒、逆一方加熱10秒を行い、加熱工程時の面圧の変化を測定した。一方加熱終了時の面圧(面圧(B’))、逆一方加熱終了時の面圧(面圧(B))を読み取った。
〔型内発泡成形体の製造〕
ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、耐圧容器内にて空気で加圧し、0.20MPaの内圧とし、型内発泡成形を行い、0.25MPaの水蒸気で厚み方向に5%圧縮して加熱成形させることにより、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得た。得られた型内発泡成形体は1時間室温で放置した後、75℃の恒温室内で3時間養生乾燥を行い、再び室温に取出してから室温で1時間放置した。
〔表面性評価〕
得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面を観察し、10cm当たりの粒子間の1mm以上の陥没や間隙の平均個数を求めて以下の判定とした。
○・・・・100箇所未満
×・・・・100箇所以上
〔融着性評価〕
得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を、カッターナイフで型内発泡成形体の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から型内発泡成形体を破断し、破断面を観察して、破壊された予備発泡粒子の割合を求めて以下の判定とした。
○・・・・60%以上
×・・・・60%未満
〔融着の均一性評価〕
融着の評価で観察した破断面について、型内発泡成形体の表層部と内部の各々を指で5回擦り、予備発泡粒子が型内発泡成形体から脱離する度合いから、以下の判定とした。
○・・・・破断面の表層部、内部の共に、予備発泡粒子が脱離しない。
×・・・・破断面の表層部、内部のいずれかで、予備発泡粒子が脱離する。
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体:エチレン含有率3.0%、MI=7g/10分、融点137℃)100重量部に対し、ポリエチレングリコール(平均分子量300、ライオン(株)製)を0.5重量部プリブレンドし、次にしてタルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.02重量部を加えブレンドした。50φ単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧密閉容器に投入したのち、脱気し、攪拌しながら炭酸ガス6.3重量部を密閉容器内に入れ、142℃に加熱した。このときの圧力は2.6MPaであった。10分後、炭酸ガスを圧入し、発泡圧力を3.0MPaに調整し、すぐに密閉容器下部のバルブを開いて、分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、炭酸ガスで圧力を保持した。
得られた一段発泡粒子の発泡倍率10倍、気泡の均一性に優れ、平均気泡径160μmであった。
ここで得た一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させたのち、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を0.4MPaにしたのち、約0.08MPaの蒸気と接触させることで二段発泡させ、発泡倍率30倍、平均気泡径220μmの二段発泡粒子を製造した。
得られた二段発泡粒子を、耐圧容器にて加圧空気を含浸させて、内圧0.12MPaにしたのち、型内発泡成形装置を用いて、面圧の評価を行った。
二段発泡粒子を、耐圧容器にて加圧空気を含浸させ、内圧0.2MPaにしたのち、型内発泡成形装置で型内発泡成形体を得、表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価をした。
Figure 0005220430
(実施例2)
発泡圧力3.3MPaとした以外は実施例1と同様の操作を行い、発泡倍率13倍、平均気泡径150μmの一段発泡粒子を得た。得られた一段発泡粒子は、実施例1と同様の操作にて二段発泡をおこない、発泡倍率30倍、平均気泡径210μmの二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子について面圧の評価を行い、実施例1と同様に型内発泡成形を行って得られた型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価をした。
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂100重量部対し、メラミン(日産化学社製)を0.5重量部、タルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.03重量部を加えブレンドした以外は、実施例1と同様の操作を行い、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。発泡圧力3.4MPa以外は実施例1と同様の操作を行い、発泡倍率12倍、平均気泡径150μmの一段発泡粒子を得た。得られた一段発泡粒子は、実施例1と同様の操作にて二段発泡し、発泡倍率30倍、平均気泡径230μmの二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子の面圧の評価を行い、実施例1と同様に型内発泡成形を行って得られた型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価をした。
(比較例1)
発泡圧力3.6MPa以外は実施例1と同様の操作を行い、発泡倍率18倍、平均気泡径150μmの一段発泡粒子を得た。得られた一段発泡粒子は、実施例1と同様の操作にて二段発泡し、発泡倍率30倍、平均気泡径200μmの二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子の面圧について評価を行い、実施例1と同様に型内発泡成形を行って得られた型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価をした。
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体:エチレン含有率3.0%、MI=7g/10分、融点137℃)100重量部に対し、タルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.01重量部を加えブレンドした。実施例1と同様の操作により、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧密閉容器に投入したのち、脱気し、攪拌しながらイソブタンガス20重量部を密閉容器内に入れ、130℃に加熱した。このときの圧力は1.7MPaであった。10分後、イソブタンガスを圧入し、発泡圧力を2.2MPaに調整し、すぐに密閉容器下部のバルブを開いて、水分散物を直径4mmのオリフィスを通じて大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、窒素ガスで圧力を保持した。
発泡倍率30倍、気泡の均一性に優れ、平均気泡径300μmであった。このポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の面圧を評価し、実施例1と同様に型内発泡成形を行って得られた型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価をした。
(比較例3)
発泡圧力1.8MPa以外は比較例1と同様の操作を行い、発泡倍率22倍、平均気泡径245μmの一段発泡粒子を得た。得られた一段発泡粒子は、実施例1と同様の操作にて二段発泡し、発泡倍率30倍、平均気泡径290μmの二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子の面圧を評価し、実施例1と同様に型内発泡成形を行って得られた型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価をした。
加熱工程における面圧の経時変化の一例を示す図である。 本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の面圧を求める型内発泡成形装置の一例を示す構成図である。
符号の説明
1 型内発泡成形体、
4 表面面圧計
5 変換機
6 金型
7 充填機
21 固定型蒸気室
22 固定型蒸気調圧弁
23 固定型蒸気室ドレン弁
31 移動型蒸気室
32 移動型蒸気調圧弁
33 移動型蒸気室ドレン弁

Claims (1)

  1. ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、発泡剤を含む分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度まで加熱し、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られた発泡倍率5倍以上20倍以下のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に、発泡能を付与して該ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子であって、
    固定型と移動型を備えてなる型内発泡成形装置を用いて、前記固定型と前記移動型から構成される成形空間に、0.12MPaの内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填し、予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程からなる加熱工程を行う際の
    一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(A’)と、
    前記成形空間にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填せずに、同時間、同加熱温度で予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程を行う際の一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(B’)が、(A’)/(B’)≦2.5の関係を満たし、かつ、
    逆一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(A)と、
    前記成形空間にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填せずに、同時間、同加熱温度で予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程を行う際の逆一方加熱工程終了時における金型内面にかかる圧力(B)が、(A)/(B)≦2.5の関係を満たすことを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
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